説明

魚類ワクチン

本発明は、魚類における細菌感染に対抗するための混合ワクチン、そのようなワクチンの製造のための細菌の使用、そのようなワクチンの製造方法、およびパーツ・キット(kit−of−parts)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類における細菌感染に対抗するための混合ワクチン、そのようなワクチンの製造のための細菌の使用、そのようなワクチンの製造方法、およびパーツ・キット(kit−of−parts)に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年の間に、世界中で魚類の消費量の著しい増加が認められる。これは、サケ、ターバット(turbot)、オヒョウおよびタラのような冷水魚ならびにアジアシーバス(Asian sea bass)、ティラピア、サバヒー、ブリ、アンバージャック(amberjack)、ハタ、フエダイおよびスギのような熱帯魚の消費量でも同じである。その結果として、市場の需要の増大を満たすために、養魚場の数および大きさの増大が見られる。
【0003】
例えば畜産学から公知のとおり、過密状態で一緒に住む多数の動物はあらゆる種類の疾患に罹りやすく、また、大規模商業的飼育の時代の前にはほとんど知られておらず認識されていなかった又は更には未知であった疾患にさえも罹りやすい。養魚の場合にも、これと同じことが言える。魚類に対して病原性であることが判明している細菌は、とりわけ、ノカルジア(Nocardia)属、ビブリオ(Vibrio)属、パスツレラ(Pasteurella)属、フォトバクテリウム(Photobacterium)属、テナシバクラム(Tenacibaculum)属、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属、フレキシバクター(Flexibacter)属、サイトファガ(Cytophaga)属、フランシセラ(Francisella)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属またはエドワージエラ(Edwardsiella)属に属する。
【0004】
ノカルジア(Nocardia)属種のうち、ノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)は温水魚において慢性的な問題を引き起こす。ノカルジア感染により養魚業において引き起こされる損害は長年にわたって増大している。特に、ブリ(セリオレ・クインクエラジアタ(Seriolae quinqueradiata)、アンバージャック(セリオレ・デュメレルリ(Seriolae dumerelli))、シーバス(sea bass)(ラテオラブラクス・ジャポニクス(Lateolabrax japonicus))、イエロークローカー(yellow croacker)(ラミチクチス・クロセア(Lamitichthys crocea))、シマガツオ(Pomfret)(パムプス・アーゲンテウス(Pampus argenteus))、ツバメコノシロ(エリューセロネマ・テトラダクチルム(Eleutheronema tetradactylum))、フエダイ(snapper)(ルトジャヌス(Lutjanus)属種)、ハタ(grouper)(エピネフェルス(Epinephelus)属種)およびカイワリ(trevalli)(カランクス・セクスファシアツス(Caranx sexfasciatus))がノカルジア感染に冒されている。
【0005】
海洋ノカルジア症としばしば称される該疾患は無症状感染として始まる。該細菌は脾臓、肝臓および腎臓のような主要臓器内で増殖する。
【0006】
低い増殖速度のため、いずれかの視認症状が生じる前に該細菌は魚類組織内で長期にわたって増殖しうる。したがって、該疾患は慢性とみなされる。慢性特性の結果として、該突発的発生が明白になる前に既に魚類の体重が300〜100gになっていることだけからも、経済的損失は著しい。病気に罹った幼魚(生ノカルジアが予め注射されたもの)と水槽空間を共有するブリは、3ヶ月の同棲の後、最終的に内部病変(それらの脾臓における肉芽腫)を示すことを、研究は示している。海洋養魚においては、ノカルジア感染は、水温が24℃以上に達する夏季に、より急速に進行するようであるが、ノカルジアによる致死は、秋季および初冬に、より頻繁に見られる。なぜなら、魚は新たな環境に順応しなければならず、その免疫系が弱まるからである。
【0007】
ノカルジアは、それ自体に対する免疫系の、非常に乏しい誘導因子であるらしい。なぜなら、該疾患の非常に遅い進行にもかかわらず、免疫系は該感染をうまく排除できないからである。これは、ノカルジア感染に対する有効なワクチンが存在しないことの説明にもなりうる。生弱毒化または不活化細菌を含むワクチンは自然感染を或る程度模擬するが、自然感染でさえも適度な免疫応答を誘導しない場合には、ワクチンがそれより良好に働くことは期待されないであろう。有効なワクチンが大いに必要とされていることは明らかである。
【0008】
ノカルジア(Nocardia)感染に対抗するための有効なワクチンを提供することが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0009】
驚くべきことに、ノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)だけでなく、さらに少なくとも、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、フォトバクテリウム・ダムセレ(Photobacterium damselae)亜種ピスシシデ(piscicidae)(=パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida))およびビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)種の細菌をも含む混合ワクチンが、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)およびビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)に対して高レベルの防御をもたらすだけでなく、ノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)感染に対しても、単価ノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)ワクチンにより得られるものより高い予想外のレベルの防御をもたらすことが、本発明において見出された。
【0010】
したがって、本発明の第1の実施形態は、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)、ビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)種の細菌と医薬上許容される担体とを含むことを特徴とする、魚類におけるノカルジア(Nocardia)感染に対抗するための混合ワクチンに関する。
【0011】
そのようなワクチンの製造では、該細菌の状態(生または不活化)はそれほど重要ではない。重要なのは、ノカルジアに対する魚類におけるノカルジア特異的免疫の刺激因子が尚も存在することである。これは、とりわけ、全細菌調製物を使用することにより保証されうる。前記のとおり、該調製物中の細菌が生きているか、死んでいるか、または更には(例えばフレンチプレスを用いることにより)断片化されていることは重要ではない。不活化のために用いられる方法は該細菌の活性にそれほど重要ではない、と当業者は理解するであろう。UV照射、ガンマ線照射、ホルマリンでの処理、二成分エチレン−イミン、チメロサールなどのような、全て当技術分野でよく知られている不活化のための古典的な方法が適用可能である。例えばフレンチプレスを用いる物理的ストレスによる細菌の不活化は、本発明のワクチンの製造のための同等に適した出発物質を与える。したがって、不活化細菌は、必ずしも、不活化全細胞の形態である必要はなく、該細胞は破壊されていてもよい。生弱毒化細菌と比べて、不活化細菌は、非常に安全であるという利点を有する。後記実施例によると、本発明の混合ワクチンの一部として使用されるノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)細菌ワクチンは容易に製造可能であり、有効に働く。
【0012】
したがって、本発明の好ましい形態においては、本発明は、該細菌種が不活化されている、本発明の混合ワクチンに関する。
【0013】
生弱毒化細菌も非常に好適である。なぜなら、それは、本質的に、ノカルジアに対する交差特異的免疫を刺激する因子を担持するからである。そして、不活化細菌と比べて、生弱毒化細菌は、アジュバントを伴わずに投与された場合に特に、それが不活化細菌より有効であるという利点を有する。さらに、それは、免疫系により阻止されるまで或る程度は複製され、その結果として、より少数の細胞の投与が可能である。生弱毒化細菌は、その野生型対応物ほどは病原性ではないが有効な免疫応答を尚も誘導する細菌である。弱毒化株は、当技術分野において古くから公知の古典的な方法、例えば連続継代、温度順応、化学的突然変異誘発、UV照射など、または部位特異的突然変異誘発により入手可能である。
【0014】
したがって、もう1つの好ましい形態においては、本発明は、該細菌種の少なくとも1つが生弱毒化形態である、本発明の混合ワクチンに関する。
【0015】
本発明のワクチンは、当業者によく知られた技術に従う細菌培養から製造されうる。魚類ワクチンおよびそれらの製造に関する総説としては、とりわけ、Sommerset,L,Krossoy,B.,Biering,E.およびFrost,P.,Expert Review of Vaccines 4:89−101(2005)、Buchmann,K.,Lindenstrom,T.およびBresciani,J.Acta Parasitologica 46:71−81(2001)、Vinitnantharat,S.,Gravningen,K.およびGreger,E.,Advances in veterinary medicine 41:539−550(1999)ならびにAnderson,D.P.,Developments in Biological Standardization 90:257−265(1997)が挙げられる。
【0016】
本発明のワクチンは、基本的には、本発明の細菌の有効量と、医薬上許容される担体とを含む。本明細書中で用いる「有効」なる語は、野生型ノカルジアでの感染の後、同一条件下で未ワクチン接種魚類で見られる病理発生の50%未満である病理発生のレベルをもたらす、標的魚類において免疫応答を誘導するのに十分な量と定義される。
【0017】
投与すべき細胞の量は、とりわけ、使用する各抗原の細菌の量、該細菌の状態、弱毒化生形態であるか又は不活化形態であるか、アジュバントの存在、および投与経路に左右される。
【0018】
商業的に入手可能なワクチンから出発する場合には、その製造業者がこの情報を提供するであろう。そうでなければ、当業者は、前記参考文献、および後記の情報、特に実施例における情報から、十分な指針を見出す。
【0019】
前記のとおり、本発明のワクチンは、当業者によく知られた技術に従う細菌培養から製造されうる。実施例において、本発明のワクチンの製造の具体例を示す。
【0020】
一般的に言えば、不活化細菌に基づく、本発明に従い製造されたワクチンは、一般に、10〜1010、好ましくは、10〜10、より好ましくは、10〜10細菌の投与量で投与されうる。1010細菌を超える用量は、免疫学的には適しているが、経済的な理由から、それほど魅力的でないであろう。
【0021】
生弱毒化細菌に基づく、本発明に従い製造されたワクチンは、より低い用量で投与されうる。なぜなら、該細菌は投与後の或る時間にわたって複製され続けるからである。生弱毒化細菌に基づく、本発明に従い製造されたワクチンは、一般に、10〜10、好ましくは、10〜10細菌の投与量で投与されうる。
【0022】
本発明のワクチンにおいて特に好適な医薬上許容される担体の具体例としては、塩類液(食塩水)、水性バッファー、例えばPBSなどが挙げられる。また、本発明のワクチンは、後記のとおり、アジュバント、安定剤、抗酸化剤などのような他の添加剤を含みうる。
【0023】
本発明に記載されているとおりに製造されたワクチンは、好ましい形態においては、免疫刺激物質、いわゆるアジュバントを含有しうる。アジュバントは、一般に、宿主の免疫応答を非特異的に増強する物質を含む。多種多様なアジュバントが当技術分野で公知である。魚類および甲殻類の養殖において頻繁に使用されるアジュバントの具体例としては、ムラミルジペプチド、リポ多糖、いくつかのグルカンおよびグリカンならびにカルボポール(Carbopol)(登録商標)が挙げられる。魚類および甲殻類ワクチンに適したアジュバントの広範な概要が、Jan Raa(Reviews in Fisheries Science 4(3):229−288(1996))による総説に記載されている。該ワクチンは、いわゆる「ビヒクル」をも含みうる。ビヒクルは、それに共有結合することなく細菌が付着する化合物である。そのようなビヒクルとしては、とりわけ、バイオ−マイクロカプセル、マイクロ−アルギナート、リポソームおよびマクロゾールが挙げら、これらは全て、当技術分野で公知である。抗原がビヒクル中に部分的に包埋された、そのようなビヒクルの特別な形態として、いわゆるISCOM(欧州特許EP 109.942、EP 180.564、EP 242.380)が挙げられる。また、該ワクチンは、1以上の適当な界面活性化合物または乳化剤、例えばSpanまたはTweenを含みうる。
【0024】
したがって、この実施形態の、より好ましい形態においては、本発明の混合ワクチンはアジュバントを含む。
【0025】
本発明の混合ワクチンでは、通常、油アジュバントが若干、より効率的であることが判明している。油中水型エマルションにおける使用に適した油アジュバントとしては、例えば、鉱油または代謝可能な油が挙げられる。鉱油としては、例えば、Bayol(登録商標)、Marcol(登録商標)およびDrakeol(登録商標)が挙げられる。代謝可能な油としては、例えば植物油、例えばラッカセイ油およびダイズ油、動物油、例えば魚油スクアランおよびスクアレン、ならびにトコフェロールおよびその誘導体が挙げられる。適当なアジュバントとしては、例えば、w/oエマルション、o/wエマルションおよびw/o/w二重エマルションが挙げられる。非常に好適なo/wエマルションとしては、例えば、5〜50% w/w 水相および95〜50% w/w 油アジュバント、より好ましくは、20〜50% w/w 水相、および80〜50% w/w 油アジュバントが挙げられる。
【0026】
したがって、この実施形態の、より一層好ましい形態においては、本発明の混合ワクチンは、油アジュバントであるアジュバントを含む。
【0027】
前記のとおり、大まかに、油アジュバントは、鉱油を含むアジュバントと、非鉱油を含むアジュバントとに分類されうる。鉱油は、食物安全性の観点およびそれが引き起こす病変の両方から、幾分かは魅力に欠けるかもしれない。したがって、好ましい油アジュバントは非鉱油を含む。
【0028】
より好ましい非鉱油としては、例えば、SEPPIC Franceから商業的に入手可能なISA 763A VG油が挙げられる。
【0029】
添加されるアジュバントの量はアジュバント自体の性質に左右され、そのような量に関する情報はその製造業者により提供されるであろう。
【0030】
しばしば、例えば、分解し易いタンパク質の分解を防ぐため、該ワクチンの貯蔵寿命を改善するため、または凍結乾燥効率を改善するために、該ワクチンは安定剤と混合される。有用な安定剤としては、とりわけ、SPGA(Bovarnikら;J.Bacteriology 59:509(1950))、炭水化物、例えばソルビトール、マンニトール、トレハロース、デンプン、スクロース、デキストランまたはグルコース、タンパク質、例えばアルブミンまたはカゼインあるいはそれらの分解産物、およびバッファー、例えばリン酸アルカリ金属が挙げられる。
【0031】
好ましくは、記載されているワクチンは凍結乾燥形態で提供される。
【0032】
また、該ワクチンは、生理的に許容される希釈剤に懸濁されうる。言うまでもなく、アジュバント化、ビヒクル化合物もしくは希釈剤の添加、乳化またはタンパク質の安定化のための他の方法も本発明に含まれる。
【0033】
当技術分野で全て公知である多数の投与方法が適用されうる。記載されているワクチンは、好ましくは、注射、例えば腹腔内注射または筋肉内注射により、あるいは他の経路、例えば液浸、噴霧、浸漬または経口経路により、魚類に投与される。しかし、投与経路はワクチンのタイプにも左右されうることに留意されるべきである。該ワクチンが生弱毒化ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)、ビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)細菌を含む場合、それは浸漬により容易に投与されうるであろう。一方、該ワクチンが不活化細菌の形態のラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)、ビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)細菌を含む場合、あるいはより一般的に言えば、アジュバントを配合することにより該ワクチンが改善されうる場合には、好ましい投与方法は腹腔内経路であろう。免疫学的観点からは、不活化細菌の場合には疑いなく、腹腔内ワクチン接種が魚類における有効なワクチン接種経路である。なぜなら、それはアジュバントの取り込みを可能にするからである。
【0034】
本発明のワクチンの簡便な製造方法は、商業的に入手可能なワクチンを利用することによるものである。ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)ワクチン、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)ワクチンおよびビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)ワクチンは商業的に入手可能であり、および/または、それらの製造方法は文献に記載されている。該ワクチンのノカルジア(Nocardia)成分として、好ましくは、不活化ノカルジアバクテリン、より好ましくは、ノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)バクテリンが使用される。
【0035】
投与手法は標準的なワクチン接種の慣例に従い最適化されうる。
【0036】
ノカルジア感染に対しては、明らかに、早い段階でワクチン接種することが望まれるであろうが、ワクチン接種される魚類の年齢は決定的には重要でない。多数のワクチンの場合、魚類が10〜35グラムの体重を有する時にそれらが投与される。これは、ノカルジアに対してワクチン接種するための非常に好適な時期でもある。
【0037】
経口投与の場合、好ましくは、該ワクチンを、例えば経口投与用の適当な担体、例えばセルロース、食事または代謝可能な物質、例えばアルファ−セルロースまたは植物もしくは動物由来の種々の油と混合する。また、魅力的な方法はバイオカプセル化による該ワクチンの投与であり、この場合、生きた飼料生物を高濃度の該ワクチンにさらし、ついでその生きた飼料生物を魚類に給餌する。本発明のワクチンの経口運搬のための特に好ましい食事担体は、該ワクチンを被包(カプセル化)する生きた飼料生物である。適当な生きた飼料生物には、プランクトン様非選択的濾過飼料用動物、好ましくは、ワムシ綱のメンバー、アルテミア(Artemia)などが含まれる。非常に好ましいのは、海水シュリンプであるアルテミア属種(Artemia sp.)である。
【0038】
魚類に対して病原性であるウイルスおよび生物が多数存在することを考慮すれば、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)、ビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)細菌と共に、1以上の他の魚類病原性細菌またはウイルス、それらの細菌もしくはウイルスの抗原、またはワクチンの製造のためのそのような抗原をコードする遺伝物質をも投与することが有益であろう。
【0039】
有名な商業的に重要な魚類病原体の具体例としては、タイ国特許出願TH 92840に記載されている、ビッグ・ベリー(Big Belly)症候群を引き起こす最近見出された細菌(この新規細菌の一例(BB E3F1)はCollection Nationale de Cultures de Microorganisms(CNCM),Institut Pasteur,25 Rue du Docteur Roux,F−75724 Paris Cedex 15,Franceに受託番号CNCM 1−3257として寄託されている)、テナシバクラム・マリチマム(Tenacibaculum maritimum)、フラボバクテリウム・コルムナレ(Flavobacterium columnare)、フレキシバクター・マリチマス(Flexibacter maritimus)(テナシバクラム・マリチマムの旧名)、ストレプトコッカス・イニエ(Streptococcus iniae)、ストレプトコッカス・ディフィシレ(Streptococcus difficile)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ(Streptococcus dysgalactiae)、エドワージエラ・タルダ(Edwardsiella tarda)、エドワージエラ・イクタルリ(Edwardsiella ictaluri)、マイコバクテリウム・マリチマム(Mycobacterium maritimum)、フランシセラ属種(Francisella sp.)およびウイルス、例えばノダウイルス、イリドウイルス、コイヘルペスウイルス、チャネルキャトフィシュ(channel catfish)ウイルスが挙げられる。
【0040】
そのような混合ワクチンの利点は、それがノカルジア(Nocardia)、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)およびビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)感染に対する防御をもたらすだけでなく、他の疾患に対する防御をももたらすことである。
【0041】
したがって、好ましい実施形態においては、本発明の混合ワクチンは、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)、ビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)種の細菌に加えて、魚類に病原性である少なくとも1つの他の微生物またはウイルス、あるいはそのような微生物もしくはウイルスの他の抗原の1つ又はそのような他の抗原をコードする遺伝物質を含む。
【0042】
より好ましい実施形態においては、魚類に病原性である前記の少なくとも1つの他の微生物またはウイルスは、ビッグ・ベリー(Big Belly)症候群を引き起こす細菌、フラボバクテリウム・コルムナレ(Flavobacterium columnare)、テナシバクラム・マリチマム(Tenacibaculum maritimum)、ストレプトコッカス・イニエ(Streptococcus iniae)、ストレプトコッカス・ディフィシレ(Streptococcus difficile)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ(Streptococcus dysgalactiae)、エドワージエラ・タルダ(Edwardsiella tarda)、エドワージエラ・イクタルリ(Edwardsiella ictaluri)、マイコバクテリウム・マリチマム(Mycobacterium maritimum)、フランシセラ属種(Francisella sp.)、ノダウイルス、イリドウイルス、コイヘルペスウイルス、チャネルキャトフィシュ(channel catfish)ウイルスよりなる細菌の群から選ばれる。
【0043】
本発明の更にもう1つの実施形態は、魚類におけるノカルジア感染に対抗するための本発明の混合ワクチンの製造方法に関する。そのような方法は、生弱毒化または不活化形態のラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)、ビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)細菌と医薬上許容される担体とを混合する工程を含む。
【0044】
この実施形態の好ましい形態は、アジュバントの混合を更に含む方法に関する。
【0045】
前記のとおり、単価(一価)ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)およびビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)ワクチンは現在、商業的に入手可能である。したがって、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)およびビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)ワクチン成分のために既製ワクチンを使用する場合、投与前にそれらをノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)ワクチンと混合することが可能である。それらを経口投与したい場合には、投与前の混合が、好ましい選択であろう。該ワクチンを注射により投与する場合、同時投与のためには、それらを混合することが可能であり、また、それらを別々に又は連続的に一連の連続的な注射により投与することも可能である。
【0046】
いずれかの商業的に入手可能なラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)ワクチン、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)ワクチンおよびビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)ワクチン、または実施例に記載されているとおりに製造されるワクチン(例えば、実施例に記載されているノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)ワクチン)が使用されることにかかわらず、当業者は、該細菌種のそれぞれに対する免疫応答を誘導するために必要な該細菌のそれぞれの量を使用することを好むであろう。単なる一例として示すと、本発明の混合ワクチンにおけるラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)細菌の量は、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)感染に対する免疫応答を誘導するのに十分なものである。
【0047】
該混合ワクチンにおけるラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)、ビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)種の細菌は同時に、別々に又は連続的に投与されうる。それでも尚、それらは、短い間隔で投与されるのであれば、後記で説明されるとおり、混合ワクチンとみなされうる。同時投与は、好ましくは混合物として注射される、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)、ビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)細菌の、時間的に同一の瞬間における投与である。取り扱いの容易さのため、勿論、これが好ましい投与方法であろう。別々の投与は、(部分的または完全な)ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)、ビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)細菌の、好ましくは時間的に同一の瞬間における、2以上の異なる注射部位における別々の投与である。連続的投与は、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)、ビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)細菌が時間的に異なる瞬間において投与される投与である。別々の又は連続的な注射が行われる場合、これらは、好ましくは、同じ日に、より好ましくは、12、10、8、6、4、2または1時間(その順に好ましい)以内に行われることが明らかである。より一層好ましいのは、互いの投与の後の50、40、30、20、10または5分以内の投与である。該混合ワクチンの全ワクチンの投与が10分以内、より一層好ましくは5分以内に行われる場合には、各魚類の取り扱いのための単一の機会で十分であり、それは、ほぼ即時的で完全な、免疫系の惹起を可能にするであろう。
【0048】
本発明のもう1つの実施形態は、魚類におけるノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)感染に対抗するための混合ワクチンの製造のための、少なくともラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)、ビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)種の細菌の使用に関する。
【0049】
この実施形態の好ましい形態においては、ノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)感染の防御対象である魚類、およびそのように製造される該ワクチンの対象である魚類は、ブリ(セリオレ・クインクエラジアタ(Seriolae quinqueradiata)、アンバージャック(セリオレ・デュメレルリ(Seriolae dumerelli))、シーバス(sea bass)(ラテオラブラクス・ジャポニクス(Lateolabrax japonicus))、イエロークローカー(yellow croacker)(ラミチクチス・クロセア(Lamitichthys crocea))、シマガツオ(Pomfret)(パムプス・アーゲンテウス(Pampus argenteus))、ツバメコノシロ(エリューセロネマ・テトラダクチルム(Eleutheronema tetradactylum))、フエダイ(snapper)(ルトジャヌス(Lutjanus)属種)、ハタ(grouper)(エピネフェルス(Epinephelus)属種)およびカイワリ(trevalli)(カランクス・セクスファシアツス(Caranx sexfasciatus))種に属する。
【0050】
この実施形態のもう1つの好ましい実施形態においては、該製造に使用される細菌種の少なくとも1つは生弱毒化形態である。
【0051】
この実施形態の更にもう1つの好ましい形態においては、該製造に使用されるノカルジア種は不活化されている。
【0052】
この実施形態の更にもう1つの好ましい形態においては、該製造に使用される細菌種は不活化されている。
【0053】
この実施形態のより好ましい形態においては、該ワクチンの製造のために、魚類に病原性である更に少なくとも1つの他の微生物もしくはウイルス、またはそのような微生物もしくはウイルスの他の抗原の1つ、またはそのような他の抗原をコードする遺伝物質が使用される。
【0054】
この実施形態のより一層好ましい形態においては、前記の他の微生物またはウイルスは、ビッグ・ベリー(Big Belly)症候群を引き起こす細菌、テナシバクラム・マリチマム(Tenacibaculum maritimum)、フラボバクテリウム・コルムナレ(Flavobacterium columnare)、ストレプトコッカス・イニエ(Streptococcus iniae)、ストレプトコッカス・ディフィシレ(Streptococcus difficile)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ(Streptococcus dysgalactiae)、エドワージエラ・タルダ(Edwardsiella tarda)、エドワージエラ・イクタルリ(Edwardsiella ictaluri)、マイコバクテリウム・マリチマム(Mycobacterium maritimum)、フランシセラ属種(Francisella sp.)、ノダウイルス、イリドウイルス、コイヘルペスウイルス、チャネルキャトフィシュ(channel catfish)ウイルスよりなる細菌の群から選ばれる。
【0055】
最後に、もう1つの実施形態はパーツ・キット(kit of parts)に関する。該キットは少なくとも2つのワクチンバイアルを含み、これらの少なくとも2つのバイアルは全体として、魚類におけるノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)感染に対抗するためのラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)、ビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)種の細菌と医薬上許容される担体とを含む。単なる一例として示すと、該キットが、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)、ビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)種の細菌を全体として含む2つのバイアルを含む場合、これは、これらの4つの種類の細菌のそれぞれが該バイアルの少なくとも1つに存在することを意味する。その結果、それらの4つの種類の細菌は全て、該キット中に存在する。この例では、一方のバイアルがラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)を含み、他方のバイアルがパスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)、ビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)を含みうるであろう。あるいは、一方のバイアルがラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)およびパスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)を含み、他方のバイアルがビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)を含みうるであろう。該キットが例えば4つのバイアルを含む場合、各種類の細菌が1つのバイアルに存在しうる。
【0056】
(実施例)
【実施例1】
【0057】
動物の管理:
試験系
動物
種:ブリ(セリオレ・クインクエラジアタ(Seriolae quinqueradiata)
起源:野生捕獲幼魚
実験開始時の平均体重:約20g
該魚は野生捕獲幼魚であったため、それらはどのようなワクチン接種をも予め受けていなかった。該魚を、それらが該実験のための適切なサイズになるまで、到着直後に隔離タンク内に配置した。
【0058】
参加−除外基準
健常動物のみを使用した。ワクチン接種後は、病気の動物の治療も動物の除外も行わなかった。
【0059】

・塩度:天然海水25〜35ppt
・温度:ワクチン接種後は24℃+/−2℃、チャレンジ後は26℃+/−2℃。
【0060】
給餌
前処理期間中は、1日数回、任意量の飼料を与えた。十分な数の魚が約20gの所望の体重に達し、感染していないことが示されたら直ちに、それらを実験タンクに移した。実験期間(ワクチン接種後)中は、該魚の体重の2〜4%の飼料を与えた(毎週調節)。体重1kg当たりの飼料の量は、ワクチン接種魚と模擬ワクチン接種魚とで可能な限り類似するよう維持された。週間隔で、1群当たり10〜15匹の魚を群において秤量して、飼料量の再計算のために平均魚体重を決定した。注射による内臓への損傷を予防するために胃腸管が完全に空になることが保証されるよう、ワクチン接種前の24時間にわたって魚類を絶食させた。チャレンジ後は、体重の1〜4%の飼料を魚に与えた。
【0061】
タンク
実験開始時に、該魚を群分けし、ワクチン接種または模擬ワクチン接種し、ついで500Lタンクに移した。魚の群を、該タンクを半分に分けるよう該タンクの中央部に垂直に配置された網により分離した。タンクの2分割部分をタンク番号および文字(AまたはB)により特定した。チャレンジ後、魚を50Lタンク内に収容した。
【0062】
群分け及び投与
ワクチン接種
魚の側面、すなわち、胸びれのほぼ末端部におけるIP注射により、ワクチン接種を行った。1回使用用の小さな皮下注射針および1回使用用のシリンジを使用した。対照魚にSVDB(標準ワクチン希釈バッファー=PBS)で模擬ワクチン接種した。
【0063】
チャレンジ
チャレンジ物質の調製
野生型ノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)のチャレンジシード(challenge seed)を−50℃未満の冷凍庫から取り出し、解凍した。バイアルの内容物をユーゴン(Eugon)ブロス内に1%(v/v)の比率で接種し、150RPMに設定された振とう速度の回転振とう機上、26℃で約64〜71時間インキュベートした。培養のOD660nmは、典型的には、10〜10 CFU/mlの概算生細胞数に対応する1.5〜1.6であった。チャレンジ懸濁液を調製するために、後期対数期に相当するこの懸濁液を使用した。1.5%食塩水を使用して3〜5×10の最終cfu/mlまで該培養の希釈を行うことにより、チャレンジ懸濁液を調製した。適当な希釈を食塩水中で行い、注射に使用した。
【0064】
チャレンジ
チャレンジをIP注射により行った。実験群からの魚に0.1mlの標準化細菌懸濁液を注射した。各群を、鎮静するまでAQUI−Sで麻酔し、胸びれの先端のちょうど裏側の身体の左側面に腹腔内注射した。注射直後に、該魚をそれらの割り当てられたタンクに移し、回復を見守った。胃腸管が完全に空になることが保証されるよう、該魚をチャレンジ前の24時間にわたり絶食させた。
【0065】
結果の評価
該ワクチン製剤のそれぞれに関して行ったチャレンジの結果を、対照の致死率が60%以上に達した日に対照群との比較において各群ごとに相対生存率(RPS)値を計算することにより評価した。
【0066】
また、2×2分割表およびフィッシャー正確確率検定(片側、Stat Soft Inc(2004),Statistica,data analysis Software system,version 6)を用いて、処理群とそれぞれの対照群との間の最終確認累積致死率に関して統計分析を行った。
【0067】
以下の式に従い、RPS値を計算した。
【0068】
【数1】

【0069】
本実施例における抗原濃度は、しばしば、ODU/mlで表されている。ODU/mlは以下のとおりに決定される:抗原濃度(ODU/ml)=(((OD660).1+(OD660).2)/2)−0.2118)/0.0018DF10(ここで、(OD660).1+(OD660).2は2回のOD660測定のOD660値であり、DFは希釈因子である)。
【0070】
ここに記載されている全ての単価ワクチンはホルマリン不活化ノカルジア・セリオレ(N.seriolae)抗原に由来し、油アジュバント化ワクチンとして製剤化されたものである。0.05の注射容量を用いて、ワクチンV1およびV2を注射した。0.1mlの注射およびワクチン希釈剤と等容量のワクチンを混合した後、ワクチンV3、V4およびV5を注射した。
【0071】
試験品
ワクチン1: 種類:単価ノカルジア・セリオレ(N.seriolae)/油アジュバント化
製剤 1.0×10 ODU/ml(5.0×10 ODU/魚)
ワクチン2: 種類:単価ノカルジア・セリオレ(N.seriolae)/油アジュバント化
製剤 1.0×10 ODU/ml(5.0×10 ODU/魚)
ワクチン3: 種類:単価ノカルジア・セリオレ(N.seriolae)/油アジュバント化
製剤 1.0×10 ODU/ml(5.0×10 ODU/魚)
ワクチン4: 種類:単価ノカルジア・セリオレ(N.seriolae)/油アジュバント化
製剤 1.0×10 ODU/ml(5.0×10 ODU/魚)
ワクチン5: 種類:単価ノカルジア・セリオレ(N.seriolae)/油アジュバント化
製剤 1.0×10 ODU/ml(5.0×10 ODU/魚)
ワクチン希釈剤
種類:油中の標準ワクチン希釈バッファー
SVDB
種類:標準ワクチン希釈バッファー(SVDB)
処理群、第3週および第6週に行ったチャレンジのための魚の個体数
【0072】
【表1】

【0073】
結果:RPS値
最小抗原試験における種々のワクチン条件での第3週および第6週のチャレンジのRPS60
【0074】
【表2】

【0075】
該条件はいずれも、対照と有意には異ならなかった(片側フィッシャー正確確率検定,p<0.05)。この表によれば、この実施例において使用した単価ノカルジアワクチンはノカルジア攻撃に対して有意な防御をもたらさない。
【実施例2】
【0076】
動物の管理:
試験系
動物
実施例1と同様。
【0077】
参加−除外基準
実施例1と同様。
【0078】

実施例1と同様。
【0079】
給餌
実施例1と同様。
【0080】
タンク
実施例1と同様。
【0081】
群分け及び投与
ワクチン接種
実施例1と同様。
【0082】
チャレンジ
チャレンジ物質の調製
実施例1と同様。
【0083】
チャレンジ
実施例1と同様。
【0084】
結果の評価
実施例1と同様。
【0085】
試験品:
ワクチン1:
種類:4価ビブリオ・アンギララム(V.anguillarum)/ラクトコッカス・ガルビエ(L.garviae)6.8×10 細胞/ml、パスツレラ・ピスシシダ(P.piscicida)1.36×10 細胞/ml、ノカルジア・セリオレ(N.seriolae)(1.0×10 ODU/ml)/油アジュバント化。全ての細菌はホルマリン不活化体であった。
【0086】
注射:0.05ml
ワクチン2:
種類:4価ビブリオ・アンギララム(V.anguillarum)/ラクトコッカス・ガルビエ(L.garviae)6.8×10 細胞/ml、パスツレラ・ピスシシダ(P.piscicida)1.36×10 細胞/ml、ノカルジア・セリオレ(N.seriolae)(1.0×10 ODU/ml)/油アジュバント化。全ての細菌はホルマリン不活化体であった。
【0087】
注射:0.05ml
【0088】
【表3】

結果:RPS値
Nsチャレンジ後のRPS。(n=10〜15)。**はワクチンと対照との間の統計的差を示す(片側フィッシャー正確確率検定,p<0.05)。
【0089】
【表4】

【0090】
この表によれば、ビブリオ・アンギララム(V.anguillarum)/ラクトコッカス・ガルビエ(L.garviae)/パスツレラ・ピスシシダ(P.piscicida)ワクチンと組合された実施例1のノカルジア(Nocardia)ワクチンを含む混合ワクチンはノカルジアチャレンジに対する驚くほど高いレベルの防御をもたらす。
【実施例3】
【0091】
動物の管理:
試験系
動物
実施例1と同様。
【0092】
参加−除外基準
実施例1と同様。
【0093】

実施例1と同様。
【0094】
給餌
実施例1と同様。
【0095】
タンク
実施例1と同様。
【0096】
群分け及び投与
ワクチン接種
実施例1と同様。
【0097】
チャレンジ
チャレンジ物質の調製
実施例1と同様。
【0098】
チャレンジ
実施例1と同様。
【0099】
結果の評価
実施例1と同様。
【0100】
試験品:
ワクチン:
種類:4価ビブリオ・アンギララム(V.anguillarum)/ラクトコッカス・ガルビエ(L.garviae)6.8×10 細胞/ml、パスツレラ・ピスシシダ(P.piscicida)1.36×10 細胞/ml、ノカルジア・セリオレ(N.seriolae)(1.0×10 ODU/ml)/油アジュバント化。全ての細菌はホルマリン不活化体であった。
【0101】
注射:0.1ml(混合後)
SVDB−油希釈剤
種類:SEPPIC Franceから入手されたISA 763A VG油中の標準ワクチン希釈バッファー
SVDB
種類:PBSバッファー:標準ワクチン希釈バッファー(SVDB)
該ワクチンは、等容量のワクチンをSVDB−油希釈剤と混合することにより製造した。
【0102】
【表5】

【0103】
結果:RPS値
Nsチャレンジ後のRPS。(n=20)。はワクチンと対照との間の統計的差を示す(片側フィッシャー正確確率検定,p<0.05)。
【0104】
【表6】

【0105】
この表によれば、ビブリオ・アンギララム(V.anguillarum)/ラクトコッカス・ガルビエ(L.garviae)/パスツレラ・ピスシシダ(P.piscicida)ワクチンと組合された実施例1のV1またはV3によるノカルジア(Nocardia)ワクチンを含む混合ワクチンはノカルジアチャレンジに対する驚くほど高いレベルの防御をもたらす。この実験は実施例2の結果を証明している。
【実施例4】
【0106】
動物の管理:
試験系
動物
実施例1と同様。
【0107】
参加−除外基準
実施例1と同様。
【0108】

実施例1と同様。
【0109】
給餌
実施例1と同様。
【0110】
タンク
実施例1と同様。
【0111】
群分け及び投与
ワクチン接種
実施例1と同様。
【0112】
チャレンジ
チャレンジ物質の調製
実施例1と同様。
【0113】
チャレンジ
実施例1と同様。
【0114】
結果の評価
実施例1と同様。
【0115】
試験品:
ワクチン:
種類:4価ビブリオ・アンギララム(V.anguillarum)/ラクトコッカス・ガルビエ(L.garviae)6.8×10 細胞/ml、パスツレラ・ピスシシダ(P.piscicida)1.36×10 細胞/ml、ノカルジア・セリオレ(N.seriolae)(1.0×10 ODU/ml)/油アジュバント化。全ての細菌はホルマリン不活化体であった。
【0116】
注射:0.1ml(混合後)
SVDB−油希釈剤
種類:油中の標準ワクチン希釈バッファー
SVDB
種類:標準ワクチン希釈バッファー(SVDB)
該ワクチンは、等容量のワクチンをSVDB−油希釈剤と混合することにより製造した。
【0117】
【表7】

【0118】
結果:RPS値
Nsチャレンジ後のRPS。(n=15)。はワクチンと対照との間の統計的差を示す(片側フィッシャー正確確率検定,p<0.05)。
【0119】
【表8】

【0120】
この表によれば、ビブリオ・アンギララム(V.anguillarum)/ラクトコッカス・ガルビエ(L.garviae)/パスツレラ・ピスシシダ(P.piscicida)ワクチンと組合された、比較的低い用量の実施例1のV2またはV4によるノカルジア(Nocardia)ワクチンを含む混合ワクチンでさえも、ノカルジアチャレンジに対する驚くほど高いレベルの防御をもたらす。この実験は実施例2の結果を証明している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)、ビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)種の細菌と医薬上許容される担体とを含むことを特徴とする、魚類におけるノカルジア(Nocardia)感染に対抗するための混合ワクチン。
【請求項2】
該細菌種の少なくとも1つが生弱毒化形態であることを特徴とする、請求項1記載の混合ワクチン。
【請求項3】
該細菌種が不活化されていることを特徴とする、請求項1記載の混合ワクチン。
【請求項4】
アジュバントを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の混合ワクチン。
【請求項5】
該アジュバントが油アジュバントであることを特徴とする、請求項4記載の混合ワクチン。
【請求項6】
該アジュバントが非鉱油アジュバントであることを特徴とする、請求項5記載の混合ワクチン。
【請求項7】
該アジュバントがISA 763A VGであることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか1項記載の混合ワクチン。
【請求項8】
魚類に病原性である少なくとも1つの他の微生物またはウイルス、あるいはそのような微生物もしくはウイルスの他の抗原の1つ又はそのような他の抗原をコードする遺伝物質を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の混合ワクチン。
【請求項9】
前記の少なくとも1つの他の微生物またはウイルスが、ビッグ・ベリー(Big Belly)症候群を引き起こす細菌、テナシバクラム・マリチマム(Tenacibaculum maritimum)、フラボバクテリウム・コルムナレ(Flavobacterium columnare)、ストレプトコッカス・イニエ(Streptococcus iniae)、ストレプトコッカス・ディフィシレ(Streptococcus difficile)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ(Streptococcus dysgalactiae)、エドワージエラ・タルダ(Edwardsiella tarda)、エドワージエラ・イクタルリ(Edwardsiella ictaluri)、マイコバクテリウム・マリチマム(Mycobacterium maritimum)、フランシセラ属種(Francisella sp.)、ノダウイルス、イリドウイルス、コイヘルペスウイルスおよびチャネルキャトフィシュ(channel catfish)ウイルスよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項8記載の混合ワクチン。
【請求項10】
ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)、ビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)種の細菌を医薬上許容される担体と混合する工程を含んでなることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載の混合ワクチンの製造方法。
【請求項11】
魚類におけるノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)感染に対抗するための混合ワクチンの製造のための、少なくともラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)、ビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)種の細菌の使用。
【請求項12】
該魚類が、ブリ(セリオレ・クインクエラジアタ(Seriolae quinqueradiata)、アンバージャック(セリオレ・デュメレルリ(Seriolae dumerelli))、シーバス(sea bass)(ラテオラブラクス・ジャポニクス(Lateolabrax japonicus))、イエロークローカー(yellow croacker)(ラミチクチス・クロセア(Lamitichthys crocea))、シマガツオ(Pomfret)(パムプス・アーゲンテウス(Pampus argenteus))、ツバメコノシロ(エリューセロネマ・テトラダクチルム(Eleutheronema tetradactylum))、フエダイ(snapper)(ルトジャヌス(Lutjanus)属種)、ハタ(grouper)(エピネフェルス(Epinephelus)属種)およびカイワリ(trevalli)(カランクス・セクスファシアツス(Caranx sexfasciatus))種に属することを特徴とする、請求項9記載の使用。
【請求項13】
該細菌種の少なくとも1つが生弱毒化形態であることを特徴とする、請求項11または12記載の使用。
【請求項14】
該細菌種が不活化されていることを特徴とする、請求項11または12記載の使用。
【請求項15】
該ワクチンの製造のために、さらに、魚類に病原性である少なくとも1つの他の微生物またはウイルス、あるいはそのような微生物もしくはウイルスの他の抗原の1つ又はそのような他の抗原をコードする遺伝物質を使用することを特徴とする、請求項11〜14のいずれか1項記載の使用。
【請求項16】
前記の他の微生物またはウイルスが、ビッグ・ベリー(Big Belly)症候群を引き起こす細菌、テナシバクラム・マリチマム(Tenacibaculum maritimum)、フラボバクテリウム・コルムナレ(Flavobacterium columnare)、ストレプトコッカス・イニエ(Streptococcus iniae)、ストレプトコッカス・ディフィシレ(Streptococcus difficile)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ(Streptococcus dysgalactiae)、エドワージエラ・タルダ(Edwardsiella tarda)、エドワージエラ・イクタルリ(Edwardsiella ictaluri)、マイコバクテリウム・マリチマム(Mycobacterium maritimum)、フランシセラ属種(Francisella sp.)、ノダウイルス、イリドウイルス、コイヘルペスウイルスおよびチャネルキャトフィシュ(channel catfish)ウイルスよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項15記載の使用。
【請求項17】
少なくとも2つのワクチンバイアルを含んでなるパーツ・キットであって、該バイアルが全体として、魚類におけるノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)感染に対抗するためのラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garviae)、パスツレラ・ピスシシダ(Pasteurella piscicida)、ビブリオ・アンギララム(Vibrio anguillarum)およびノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)種の細菌と医薬上許容される担体とを含むことを特徴とする、パーツ・キット。

【公表番号】特表2011−502972(P2011−502972A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531535(P2010−531535)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064805
【国際公開番号】WO2009/056629
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【Fターム(参考)】