説明

鳥害防止装置

【課題】柱上変圧器に対する営巣を防止すること。
【解決手段】軸を中心として回転可能に設けられた鳥害防止部130と、鳥害防止部130が回転可能な状態で軸を支持するアーム部120と、アーム部120が設けられ、電柱102に固定されるバンド部110と、を備えた鳥害防止装置100を構成した。この鳥害防止装置100によれば、鳥害防止装置100を柱上変圧器101に直接固定あるいは接触させることなく、柱上変圧器101に対する営巣を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、柱上変圧器上への営巣を防止する鳥害防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラスなどの野鳥は、電柱に取り付けられた腕金や変圧器あるいは開閉器など、送配電用の設備に営巣することがあった。送配電用の設備に営巣された巣に金属製のハンガーなどの導電性を有する材料が含まれている場合、これらの導電性を有する材料が送配電用の設備に接触し、地絡・短絡事故を発生させることがあった。このため、従来、高圧線腕金などへ取り付けることによって、送配電用の設備に対する営巣を防止するための各種技術があった。
【0003】
具体的には、従来、たとえば、円筒状カバー本体の一端の開口端に接合片を対向して横設し、該接合片の下部に開口部を対設し、該開口部の周辺に抑止舌片を複数個対設して開放自在に前記接合片を接合し、他端側には縦方向の蛇腹を配設し、下端周縁には内方に向けてフランジを周設して成り、変圧器のブッシング外周に装着されて該ブッシング下端の凹部を安全かつ強固に被覆するようにした技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【0004】
また、具体的には、従来、たとえば、ブッシングの外側面に接して電線に外装させる水平状をなす筒体の上下両側で長手方向におのおの直線状の切断部を設けるとともに、これらの各切断部を挟んで筒体外側に係合辺を対設して電線カバーを形成し、該電線カバーの先端にブッシングの外周に接する立ち壁を設けるとともに該電線カバーの先端下部にブッシングの下部に設けられた凹部の内壁に周接する円筒状の遮蔽壁を立設し、さらに該遮蔽壁の上部に鋸歯状に凹凸を設けて屈撓自在のひれ片を形成するとともに該遮蔽壁の下端には断面C状の保形部を周設するようにした技術があった(たとえば、下記特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61−131819号公報
【特許文献2】実開昭62−089107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術は、電線や電柱の腕金に対する営巣を防止するために当該電線や腕金などに取り付けることを想定した構成であるため、柱上変圧器に適用することは難しい。また、上述した従来の技術は、電線や腕金などに直接取り付けることを想定した構成であるため、仮に、吊り替えなどに際して配電線工事をおこなう必要がある柱上変圧器に上述した従来の技術を適用した場合、柱上変圧器にかかわる配電線工事に支障をきたしてしまうという問題があった。このように、現状は、柱上変圧器に対する営巣を確実に防止する有効な技術がないという問題があった。
【0007】
そして、柱上変圧器に対する営巣を確実に防止する有効な技術がないために、当該柱上変圧器の設置場所周辺の住民(周辺住民)が、当該柱上変圧器に営巣した鳥によるひどい糞害への対応に苦慮しているという問題があった。特に、ゴミを漁るなど住民の生活環境に悪影響をあたえる習性を持ったカラスなどの鳥が柱上変圧器に営巣した場合は、周辺住民が、カラスによってゴミが散らかされないような対策を施したり、カラスによって散らかされたゴミを片付けたりしなくてはならず、煩わしいという問題があった。
【0008】
柱上変圧器に営巣された場合にも、巣材などが高圧電線に接触しなければ配電線事故が発生する可能性は低いため、配電線事故の発生防止を目的とした場合は柱上変圧器に営巣された巣からヒナが巣立つまで残置するという対応が考えられるが、上記のように、柱上変圧器に営巣した鳥による糞害やゴミによる被害がひどいために、柱上変圧器に営巣された巣を放置しておくことは難しいという現状があった。
【0009】
また、上述した従来の技術は、効果的な防巣対策が難しいため、柱上変圧器に営巣された巣を撤去しても同一場所に再度営巣されることも多く、柱上変圧器に営巣された巣を撤去する作業者は同様な撤去作業を繰り返しおこなわなくてはならず煩わしいという問題があった。また、周辺住民は、柱上変圧器に営巣した鳥による糞害やゴミによる被害を継続して受けるという問題があった。
【0010】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、柱上変圧器に対する営巣を防止することができる鳥害防止装置を提供することを目的とする。
【0011】
また、この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、柱上変圧器にかかわる作業性を低下させることなく当該柱上変圧器に対する営巣を防止することができる鳥害防止装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、柱上変圧器に対する営巣を容易かつ確実に防止することができる鳥害防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる鳥害防止装置は、軸部材を中心として回転可能な鳥害防止具を備えた鳥害防止部と、前記鳥害防止具が回転可能な状態で前記鳥害防止部を支持するアーム部と、柱上変圧器を支持する所定の送配電設備に固定可能であって前記アーム部を支持するバンド部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる鳥害防止装置は、上記の発明において、前記アーム部が、前記柱上変圧器の上方において前記鳥害防止具が回転可能な状態で前記鳥害防止部を支持することを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる鳥害防止装置は、上記の発明において、前記アーム部が、前記鳥害防止部と前記バンド部とを分離可能な状態で前記鳥害防止部を支持することを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる鳥害防止装置は、上記の発明において、前記鳥害防止具が、風力を受ける羽根部材を備え、当該羽根部材に風力が加えられた場合に回転することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明にかかる鳥害防止装置によれば、電柱に設けられた柱上変圧器に対する営巣を防止することができるという効果を奏する。
【0018】
また、この発明にかかる鳥害防止装置によれば、電柱に設けられた柱上変圧器にかかわる作業性を低下させることなく当該柱上変圧器に対する営巣を防止することができるという効果を奏する。
【0019】
また、この発明にかかる鳥害防止装置によれば、電柱に設けられた柱上変圧器に対する営巣を容易かつ確実に防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置を示す説明図(その1)である。
【図2】この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置を示す説明図(その2)である。
【図3】この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置の設置環境の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる鳥害防止装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
(鳥害防止装置の構成)
まず、この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置の構成について説明する。図1および図2は、この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置を示す説明図である。
【0023】
図1においては、この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置を、使用状態における側方から見た状態を示している。図2においては、この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置の一部を、使用状態における鉛直方向上側から見た状態を示している。
【0024】
図1および図2において、この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置100は、バンド部110とアーム部120と鳥害防止部130とを備えている。バンド部110は、略環形状とされた帯(バンド)状部材111と、当該帯状部材111がなす環形状の内径を調節可能な締結部材112と、を備えて構成されている。
【0025】
バンド部110は、柱上変圧器101が設けられた電柱102に帯状部材111を巻き付けた状態で、締結部材112によって帯状部材111がなす環形状の内径を小さくして電柱102を締め付けることによって当該電柱102に固定される。バンド部110は、電柱102に固定されるものに限らず、電柱102に類似する柱状体全般、帯状部材111を巻き付けることが可能な径の送配電設備に固定することができる。締結部材112については、たとえば、電柱102にリング状部材を取り付ける際に用いる公知の締付具と同様の構成の部材によって実現することが可能であるため説明を省略する。
【0026】
バンド部110は、第1の円筒部材113を備えている。第1の円筒部材113は、略円筒形状をなし、軸心方向が電柱102の軸心方向と平行になる状態で帯状部材111に固定されている。第1の円筒部材113の内側には、略棒形状をなすアーム部120の一端部に設けられた連結用軸部材121が挿入される。第1の円筒部材113の内側に挿入された連結用軸部材121の先端121aは、第1の円筒部材113の下端から第1の円筒部材113の外に突出する。
【0027】
第1の円筒部材113の上端部には、連結機構140の一部をなす第1の連結部材141が設けられている。第1の連結部材141は、アーム部120が備える連結用軸部材121に設けられた第2の連結部材142とともに連結機構140を構成し、第1の円筒部材113に対するアーム部120の位置を規定する。第1の連結部材141および第2の連結部材142は、第1の円筒部材113の内側に連結用軸部材121を挿入した状態において、鉛直方向に沿って配置され、連結機構140を構成する。
【0028】
連結機構140を構成した状態における第2の連結部材142は、自重により、下面を第1の連結部材141の上面に当接している。第1の連結部材141における第2の連結部材142への対向面(上面)は、菊座形状とされている。第2の連結部材142における第1の連結部材141への対向面(下面)は、菊座形状とされている。
【0029】
第1の連結部材141および第2の連結部材142は、それぞれの菊座形状部分を互いにかみ合わせた状態で当接している。連結機構140は、それぞれの菊座形状部分を互いにかみ合わせた状態で第1の連結部材141および第2の連結部材142を当接させることによって、第1の連結部材141と第2の連結部材142との位置関係を固定する。連結機構140は、水平面内における、バンド部110に対するアーム部120の位置を固定する。
【0030】
連結用軸部材121の先端121aには、ネジ山が設けられている。このネジ山には、連結用軸部材121が第1の円筒部材113の内側に挿入された状態において、第1の円筒部材113の下側から第1の円筒部材113に当接する方向に向かってナット103が螺合される。連結用軸部材121の先端121aに設けられたネジ山および当該ネジ山に螺合されるナット103は、鉛直方向におけるバンド部110に対するアーム部120の位置を固定する。
【0031】
アーム部120は、連結用軸部材121が設けられている端部とは反対側の端部に、第2の円筒部材122を備えている。第2の円筒部材122は、略円筒形状をなし、連結用軸部材121が第1の円筒部材113の内側に挿入された状態において、軸心方向が電柱102の軸心方向と平行(第1の円筒部材113の軸心方向と平行)になるように設けられている。
【0032】
鳥害防止部130は、軸部材131と、軸部材131の一端側に連結された鳥害防止具132とを備えている。鳥害防止装置100の取り付けに際して、軸部材131は、第2の円筒部材122の内側に挿入される。また、軸部材131の先端131aは、第2の円筒部材122の内側に挿入された状態において、第2の円筒部材122の下端から第2の円筒部材122の外に突出する。
【0033】
軸部材131の先端には、ネジ山が設けられている。このネジ山には、軸部材131が第2の円筒部材122の内側に挿入された状態において、第2の円筒部材122の下側からナット104が螺合される。軸部材131の先端に設けられたネジ山および当該ネジ山に螺合されるナット104は、鉛直方向におけるアーム部120に対する鳥害防止具132の位置を固定する。
【0034】
鳥害防止具132は、羽根部材132aを備えている。羽根部材132aは、軸部材131側の一部が当該軸部材131に連結されており、軸部材131から離間する側は自由端とされている。鳥害防止具132は、羽根部材132aに対して風が吹き付けた場合など、鳥害防止具132に対して外力が加えられた場合に、羽根部材132aが軸部材131を中心とする円周上を移動(回転)する構成とされている。
【0035】
鳥害防止部130は、たとえば、風向きに対する依存性がなく、鳥害防止具132に対してどの方向の風が吹き付けた場合にも当該鳥害防止具132の回転を可能とする、いわゆる「垂直軸型」の風車に準じた構造とすることができる。鳥害防止具132の回転方式を「垂直軸型」とすることにより、鳥害防止部130に対してどの方向から吹き付ける風であっても鳥害防止具132によって受け止め、鳥害防止具132を回転させることができる。「垂直軸型」の風車に準じた構造を採用した鳥害防止部130とすることにより、季節や時間帯で風向きが変動した場合にも、鳥害防止部130を効率よく回転させることができる。
【0036】
垂直軸型の風車は、具体的には、たとえば、ダリウス型、ジャイロミル型、直線翼型、サボニウス型、パドル型、クロスフロー型、S型ロータ型などのように、風力発電に用いられる各種の風車と同様の構成とすることができる。図1および図2においては、パドル型の風車に準じた構造の鳥害防止具132を備えた鳥害防止装置100を示している。
【0037】
なお、鳥害防止部130は、軸心方向に略平行な方向に沿って吹く風の風力を受けた場合に鳥害防止具132を回転させる(すなわち風車の回転面が風上に向いている場合に鳥害防止具132が回転する)、いわゆる「水平軸型」の風車を採用した構造であってもよい。「水平軸型」の風車に準じた構造を採用した鳥害防止部130を備えた鳥害防止装置100は、たとえば、海側から陸側に向けて風が吹くことが多い浜辺など、風向きがほぼ一定である場所に設置された柱上変圧器101に対する営巣防止に適している。
【0038】
上記のアーム部120は、電柱102に設けられた柱上変圧器101の上方において、鳥害防止具132が回転可能となる状態で鳥害防止部130を支持する。アーム部120は、鳥害防止部130とバンド部110とを分離可能な状態で鳥害防止部130を支持している。
【0039】
鳥害防止部130は、たとえば、連結用軸部材121に螺合されているナット103を外し、第1の円筒部材113から連結用軸部材121を引き抜くことによって、バンド部110から分離することができる。これにより、たとえば、柱上変圧器101上への鳥害防止装置100の取り付け作業に際しては、鳥害防止部130とバンド部110とを分離した状態で、当該鳥害防止装置100の取り付け作業場所まで運搬することができる。
【0040】
この場合、さらに、軸部材131に螺合されているナット104を外し、第2の円筒部材122から軸部材131を引き抜くことによって、鳥害防止部130とアーム部120とを分離した状態で、当該鳥害防止装置100の取り付け作業場所まで運搬するようにしてもよい。また、鳥害防止部130は、たとえば、軸部材131に螺合されているナット104を外し、第2の円筒部材122から軸部材131を引き抜くことによって、バンド部110から分離することができる。この場合、鳥害防止部130は、一体とされているバンド部110およびアーム部120から分離される。
【0041】
鳥害防止装置100の取り付けに際しては、鳥害防止装置100を構成する各部材を電柱102上の作業位置まで運搬し、バンド部110を電柱102に固定する。つぎに、アーム部120を、バンド部110に固定する。アーム部120をバンド部110に固定する際には、第1の円筒部材113を連結用軸部材121に挿入し、第1の円筒部材113に挿入された連結用軸部材121の先端121aにナット103を締める方向に螺合させる。
【0042】
アーム部120をバンド部110に固定する際には、連結機構140における第1の連結部材141と第2の連結部材142とを離間させた状態で、第1の円筒部材113の内側に挿入された連結用軸部材121を中心としてアーム部120を回動させることによって、電柱102に設けられた柱上変圧器101に対する第2の円筒部材122の位置を調整することができる。
【0043】
つぎに、鳥害防止部130の軸部材131を第2の円筒部材122に挿入し、当該軸部材131の先端にナット104を螺合させる。これによって、軸部材131および鳥害防止具132によって構成される鳥害防止部130を、アーム部120に取り付けることができる。電柱102にバンド部110を取り付け、このバンド部110にアーム部120を取り付け、さらにこのアーム部120に鳥害防止部130を取り付けることによって、鳥害防止部130を柱上変圧器101上に設置することができる。
【0044】
(鳥害防止装置100の設置環境の一例)
ここで、この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置100の設置環境の一例について説明する。図3は、この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置100の設置環境の一例を示す説明図である。
【0045】
図3において、電柱102に、この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置100を取り付けた(設置した)場合、柱上変圧器101の上側の空間301が、鳥害防止部130によって占有される。鳥害防止部130は、立体的であり、柱上変圧器101の上側に、カラスなどの鳥が営巣するには不十分な空間301を形成する。これによって、柱上変圧器101の上側における営巣を防止することができる。
【0046】
また、鳥害防止部130は、風を受けて回転する鳥害防止具132を備えている。そして、鳥害防止具132は、風の有無や風力の強弱によって回転速度に緩急の変化を生じるため、柱上変圧器101の上側であって鳥害防止部130によって占有される空間301は、風の有無や風力の強弱によって常に変動する、不安定な状況とされる。これによって、柱上変圧器101の上側における営巣を一層効果的に防止することができる。
【0047】
この実施の形態の鳥害防止装置100は、電柱102に対する鳥害防止装置100の取り付け時、および、電柱102に対して鳥害防止装置100を取り付けた後に、柱上変圧器101に対する鳥害防止部130の位置を調整することができる。この場合、まず、第1の円筒部材113に挿入された連結用軸部材121の先端121aからナット103を外し(あるいは、緩め)、その後、第1の円筒部材113の内側に挿入された連結用軸部材121を中心としてアーム部120を回動させる。このとき、鳥害防止具132をアーム部120に取り付けた状態で、当該アーム部120を回動させることができる。
【0048】
つぎに、鳥害防止具132を任意の位置に位置づけた状態で、第1の円筒部材113に挿入された連結用軸部材121の先端121aにナット103を締め付ける。これによって、バンド部110に対するアーム部120の位置、すなわち、鳥害防止具132を任意の位置に位置づけた状態で固定することができる。これによって、柱上変圧器101に対する第2の円筒部材122の位置、すなわち柱上変圧器101に対する鳥害防止具132の位置を調整することができる。
【0049】
柱上変圧器101に対する第2の円筒部材122の位置は、たとえば、柱上変圧器101に対するメンテナンス作業をおこなう場合に調整する。具体的には、たとえば、柱上変圧器101に対するメンテナンス作業、より詳細には、柱上変圧器101の蓋の開放をともなう作業に際して、柱上変圧器101の上方を開放するために、柱上変圧器101に対する第2の円筒部材122の位置を調整する。また、柱上変圧器101に対する第2の円筒部材122の位置は、たとえば、柱上変圧器101の吊り替え作業をおこなう場合に調整する。
【0050】
上記のように柱上変圧器101に対する第2の円筒部材122の位置を調整し、鳥害防止具132を柱上変圧器101上から退避させた状態で、メンテナンス作業が完了した後は、上記と同様にして柱上変圧器101に対する第2の円筒部材122の位置を調整し、鳥害防止具132を柱上変圧器101上に位置づけた状態で連結用軸部材121の先端121aにナット103を締め付ける。
【0051】
上記のように、この実施の形態の鳥害防止装置100は、バンド部110とアーム部120との連結状態を調整することによって柱上変圧器101に対する第2の円筒部材122の位置を調整することができるので、鳥害防止装置100の取り付け作業を電柱102においておこなうことができる。このように、この実施の形態の鳥害防止装置100によれば、作業者は、安定した広い足場の確保が難しい高所においても、安定した送配電設備である電柱102に身を預けた状態で作業をおこなうことができる。
【0052】
また、この実施の形態の鳥害防止装置100は、バンド部110とアーム部120との連結状態を調整することによって柱上変圧器101に対する第2の円筒部材122の位置を調整することができるので、柱上変圧器101に対するメンテナンス作業、柱上変圧器101の吊り替え作業などの各種作業に際して、それぞれの作業の支障とならない位置に鳥害防止部130を容易に移動させることができる。
【0053】
アーム部120の連結機構140においては、第1の連結部材141の上面と第2の連結部材142の下面とにそれぞれ設けられた菊座形状部分を互いにかみ合わせることによって、鳥害防止具132を柱上変圧器101上に固定しておきたい場合(通常時)はバンド部110に対してアーム部120を堅牢に固定することができる。また、アーム部120の連結機構140においては、第1の連結部材141の上面と第2の連結部材142の下面とにそれぞれ設けられた菊座形状部分のかみ合わせを調整することによって、柱上変圧器101のメンテナンス作業や柱上変圧器101の吊り替え作業などの各種作業に際しては、バンド部110に対するアーム部120の位置を容易に変更することができる。これによって、バンド部110に対するアーム部120の固定にかかる確実性、および、柱上変圧器101に対する作業性の双方を確保することができる。
【0054】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置100は、軸を中心として回転可能に設けられた鳥害防止部130と、鳥害防止部130が回転可能な状態で軸を支持するアーム部120と、アーム部120が設けられ、電柱102に固定されるバンド部110と、を備えたことを特徴としている。
【0055】
この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置100によれば、鳥害防止装置100を柱上変圧器101に直接固定あるいは接触させることなく、柱上変圧器101に対する営巣を防止することができる。これにより、鳥害防止装置100を設けることによって、柱上変圧器101に対する配線工事や柱上変圧器101の蓋を開けておこなう作業などの各種作業に支障をきたすことがない。これによって、柱上変圧器101にかかわる作業性を低下させることなく当該柱上変圧器101に対する営巣を防止することができる。
【0056】
また、この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置100によれば、安定した構造物である電柱102に体を預けた状態で、作業者が電柱102から離れることなく、鳥害防止装置100の取り付け作業をおこなうことができる。これによって、柱上変圧器101上への鳥害防止装置100の取り付け作業にかかる安全性を確保することができる。また、この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置100によれば、柱上変圧器101に接近しなくても電柱102上で作業をおこなうことができるため、柱上変圧器101上への鳥害防止装置100の取り付け作業にかかる作業者の作業負担の軽減を図ることができる。
【0057】
また、この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置100は、アーム部120が、電柱102に設けられた柱上変圧器101の上方において鳥害防止部130が回転可能な状態で軸を支持することを特徴としている。この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置100によれば、可動式の鳥害防止部130を備えることによって、柱上変圧器101の上方に固定的な部材を設けた場合と比較して営巣防止効果の向上を図ることができる。これによって、柱上変圧器101に対する営巣を容易かつ確実に防止することができる。
【0058】
また、この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置100は、アーム部120が、鳥害防止部130とバンド部110とを分離可能に軸を支持することを特徴としている。この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置100によれば、柱上変圧器101上への鳥害防止装置100の取り付け作業に際して、鳥害防止装置100を複数の部材に分離した状態で、当該鳥害防止装置100の取り付け作業場所まで運搬することができる。これによって、鳥害防止装置100を構成する各部材どうしの連結にかかる作業者の作業負担の軽減を図ることができる。
【0059】
また、この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置100によれば、鳥害防止装置100を構成する各部材どうしを分離可能に連結する構造とすることにより、鳥害防止装置100の取り付け後に鳥害防止装置100の周辺で作業をおこなう場合にはアームの延出方向を容易に変更することができる。これによって、柱上変圧器101上に鳥害防止装置100を取り付けた後であっても、十分な作業スペースを容易かつ確実に確保することができる。
【0060】
また、この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置100は、鳥害防止部130が、風力を受ける鳥害防止具132を備え、当該鳥害防止具132に風力が加えられた場合に回転することを特徴としている。この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置100によれば、鳥害防止部130を回転させる動力源を風力とすることにより、電源などの動力源を別途設けることなく柱上変圧器101上における営巣を防止することができる。これによって、鳥害防止装置100、特に、鳥害防止部130の点検などのメンテナンスコストを抑えることができる。
【0061】
また、この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置100によれば、鳥害防止部130を回転させる動力源を別途設ける必要がないので、仮に鳥害防止部130が破損した場合にも充電部分が発生しない。これによって、感電/漏電などの二次被害の発生を抑えることができるので、安全性を損なうことなく、柱上変圧器101上における営巣を防止することができる。
【0062】
このように、この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置100によれば、柱上変圧器101上における営巣を減少させることができるため、営巣された巣に含まれる導電性の巣材が送配電設備に接触することによる配電線事故の可能性を抑えることができる。これによって、送配電設備に対する作業者および顧客の信頼性の向上を図ることができる。
【0063】
また、この発明にかかる実施の形態の鳥害防止装置100によれば、柱上変圧器101上における営巣を減少させることができるため、営巣された送配電設備の周辺住民に対する鳥害(糞害、ゴミの被害など)を減少させ、送配電設備の管理を担う電力会社に対する周辺住民の満足度の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、この発明にかかる鳥害防止装置は、送配電設備に対する営巣を防止する鳥害防止装置に有用であり、特に、電柱に設けられた柱上変圧器上への営巣を防止する鳥害防止装置に適している。
【符号の説明】
【0065】
100 鳥害防止装置
101 柱上変圧器
102 電柱
110 バンド部
120 アーム部
130 鳥害防止部
131 軸部材
132 鳥害防止具
132a 羽根部材
140 連結機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材を中心として回転可能な鳥害防止具を備えた鳥害防止部と、
前記鳥害防止具が回転可能な状態で前記鳥害防止部を支持するアーム部と、
柱上変圧器を支持する所定の送配電設備に固定可能であって前記アーム部を支持するバンド部と、
を備えたことを特徴とする鳥害防止装置。
【請求項2】
前記アーム部は、前記柱上変圧器の上方において前記鳥害防止具が回転可能な状態で前記鳥害防止部を支持することを特徴とする請求項1に記載の鳥害防止装置。
【請求項3】
前記アーム部は、前記鳥害防止部と前記バンド部とを分離可能な状態で前記鳥害防止部を支持することを特徴とする請求項1または2に記載の鳥害防止装置。
【請求項4】
前記鳥害防止具は、風力を受ける羽根部材を備え、当該羽根部材に風力が加えられた場合に回転することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の鳥害防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−5376(P2012−5376A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142018(P2010−142018)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】