説明

鳥獣撃退装置

【課題】 従来の鳥獣撃退装置は、多数種類の鳥獣を満遍なく撃退することができず、また、鳥獣の音への慣れによる効果低減もあった。
【解決手段】 本発明の鳥獣撃退装置は、所定周波数の電気信号を発振する発振器と、発振器から発振される電気信号を掃引する掃引器と、発振器から発振された電気信号を増幅する増幅器2と、増幅器出力を出力するスピーカ3を備え、前記発振器は発振周波数を所定時間内に連続的又は不連続的に高低変化させ、その発振が連続的に或いは所定時間間隔で繰り返し行なわれるようにしてある。また、発振器の動作条件を設定する設定部4と、設定条件を記憶する記憶部5を備え、発振器並びに掃引器が記憶された設定条件に従って自動的に作動するか、又は外部からの駆動信号の入力により随時作動させることができるようにすることができる。更に、発振器から発振される電気信号を方形波信号とすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農地、観光地、住宅地、ごみ集積所等の屋外や屋内に設置して、鼠、烏、猿、熊、猪、鹿といった鳥獣の接近や侵入を防止する鳥獣撃退装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鳥獣が人間の生活区域に接近、侵入することによる被害を防止するため、各種鳥獣撃退装置が開発されている。例えば、発振器とスピーカを備え、スピーカから特定の鳥獣が嫌う特定周波数の音を継続して発生させて鳥獣を追い払うものや、発振器とスピーカを複数備え、夫々のスピーカから夫々の鳥獣が嫌う特定周波数の音を発生させ、複数種類の鳥獣を追い払うものがある(共に、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−107893
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1記載の鳥獣撃退装置は次のような課題がある。
(1)単一周波数の音のみしか発生させられないため、その周波数の音を嫌わない鳥獣を撃退することはできない。また、その周波数の音を嫌う鳥獣であっても、初めは撃退効果があるが、長期間、同じ音を出していると次第にその音に慣れてしまい撃退効果が低減してしまう。
(2)発振器とスピーカとを複数備える場合は、一つの鳥獣撃退装置で数種の鳥獣を撃退できるが、夫々のスピーカからは一定周波数の音しか発生しないため、その周波数の音を嫌う鳥獣であっても、初めは撃退効果があるが次第に音に慣れてしまい、効果が低減してしまう。また、複数種の周波数の音を発生させるために発振器及びスピーカを複数備えなければならず、装置が大型化し、運搬や設置の労力負担が大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一つの発振器と一つのスピーカであっても多種類の撃退音を発生して多種類の鳥獣を撃退することができ、音への慣れによる鳥獣撃退効果の低減をも防止できる鳥獣撃退装置を提供するものである。
【0006】
本件出願の鳥獣撃退装置は、請求項1記載のように、所定周波数の電気信号を発振する発振器と、発振器から発振される電気信号を掃引する掃引器と、発振器から発振された電気信号を増幅する増幅器と、増幅器出力を出力するスピーカを備え、前記発振器は発振周波数を所定時間内に連続的又は不連続的に高低変化させ、その発振が連続的に或いは所定時間間隔で繰り返し行なわれるようにしてある。この鳥獣撃退装置は請求項2記載のように、発振器の動作開始時刻、動作停止時刻、動作日、発振周波数、掃引時間といった動作条件を設定する設定部と、設定条件を記憶する記憶部を備え、発振器並びに掃引器が記憶された設定条件に従って自動的に作動するか、又は外部からの駆動信号の入力により随時作動させることができるようにすることができる。この場合、請求項3記載のように、発振器から発振される電気信号を方形波信号とすることもできる。
【発明の効果】
【0007】
本件出願の請求項1記載の鳥獣撃退装置は、発振周波数が時間経過に伴って連続的又は不連続的に高低変化する電気信号が発振されるので、鳥獣が嫌う各種周波数の音及びその周辺の周波数の音がスピーカから時間と共に変化して出力され、一台で数種類の鳥獣を追い払うことができる。また、鳥獣が音に慣れにくくなるため撃退効果が長期に亘って持続する。
【0008】
本件出願の請求項2記載の鳥獣撃退装置は、動作条件を設定できる設定部を備えているので、スピーカから発生する音を自在に変化させ、設定することができる。また、設定条件に従って自動的に動作するようにすれば、人が操作しなくとも設定時に自動的に始動、停止し、手間が掛からない。また、条件設定時間外であっても、鳥獣の接近や侵入を見つけたときに随時、人為的又は自動的に外部信号を入力して発振器及び掃引器を始動、停止させて鳥獣を撃退することができる。
【0009】
本件出願の請求項3の鳥獣撃退装置は、発振器から方形波信号が発振されるため、基本と同時に数次の高調波も出力され、一度に二以上の周波数の音が出るため様々な鳥獣を効果的に追い払うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施形態1)
本発明の鳥獣撃退装置の実施形態の一例を図1〜図4に基づいて詳細に説明する。この鳥獣撃退装置は発振周波数を時間経過に伴って連続的に高低変化(スイープ)させながら鳥獣が嫌う音を発生させて鳥獣を追い払い、しかも発生する音を変えることによりその音に鳥獣が慣れないようにしてある。図2の概略ブロック図に示すように、発振器、掃引器、などの発振と発振周波数の可変に必要な機器を備えた発振部1、発振器から発振される電気信号を増幅する増幅器2、増幅器出力を音で出力するスピーカ3、発振条件を設定する設定部4、入力された条件を記憶する記憶部5、記憶部5に記憶された条件で発振部1を自動的に作動させるための時計付きタイマーとか関連機器を備えた駆動部6、記憶部5に記憶された条件外で発振部1を作動、停止させるための駆動信号を外部から入力する外部入力部7を備えている。
【0011】
本願の鳥獣撃退装置の外観の一例は図1に示すように、スピーカ3、設定部4、電源スイッチ8、電源表示LED9が筺体10の外部に露出して設けられ、発振部1、記憶部5等の他の部品類は筺体10に内蔵されている。これら機器や部品は防水構造とし、外部に設置しても雨水の浸入を防止できるようにしてある。筺体10にはハンドル11を設けて持ち運びに便利なようにしてある。
【0012】
発振部1は図3に示すようなデューティ比1:1の方形波信号(パルス)を発振させるものであって、例えば、マイクロコンピュータや発振器に制御装置を備えたもの等を用いることができる。発振周波数は鳥獣類を撃退できるものであればそのようなものであってもよいが、例えば1kHz〜50 kHz程度が適する。本実施形態の発振部1には掃引器が備えられ、発振パルスのデューティ比を1:1に保ったまま掃引器によって発振周波数を所定時間内に連続的に高低変化(スイープ)させるようにしてある(図4参照。)。図4の発振パルスは時間T1(2秒間)内に周波数が15kHzから50kHzまで連続的に上昇し、次の時間T2(2秒間)内で50kHzから15kHzまで連続的に下降させて一周期内の波形が時間経過と比例して連続的且つ滑らかにスイープされて三角形に高低変化し、その三角波が周期ごとに繰り返し連続するようにしてある。スピーカ3からはこの電気信号が音となって発生される。
【0013】
増幅器2は、前記発振部1が発振した電気信号を増幅するものである。
【0014】
スピーカ3は増幅器2で増幅された電気信号を音に変換して出力するものであり、図4に示すようにスイープされて連続的に変化する周波数の音が出る。発生する音はその周波数により人間にとっては可聴音となったり不可聴音となったりしても、鳥獣に対しては常に可聴音であり、しかも、鳥獣が嫌う周波数の音及びその周辺の周波数の音である。また、この音の周波数は周期的に変化するものでも、不規則に変化するものでもよいが、不規則に変化するものとすることにより鳥獣が音に慣れにくく、鳥獣の撃退効果が長期に亘って持続されるようにするのがよい。
【0015】
設定部4は発振条件を設定するためのものであり、図1に示すように各種条件入力部15を筺体10の外部に設けて操作し易くしてあり、また、液晶画面などのディスプレイ14を筺体10の外部から見えるように配置して、それに表示される設定条件を見易くしてある。条件入力部15としては現在の日時、発振器の作動日時、発振開始時刻、発振終了時刻、最高発振周波数(図4のH)、最低発振周波数(図4のL)、掃引器のスイープ時間(T1、T2)などの各種発振条件、掃引条件を設定可能な設定ボタン等が設けられている。この条件入力部15は前記した設定ボタンに限られず他の条件設定用ボタンを備えたり、押しボタン、回転式摘み、タッチパネルを備える等、設定条件を入力できるものであれば任意の構成とすることができる。
【0016】
記憶部5は前記設定部4から入力した諸条件を記憶しておくものであり、例えば、記憶されている設定時刻になるとタイマーを作動させて発振部1(発振器、掃引器)を作動させたり、作動開始から所定時間経過後にその作動を停止させたりするためのものである。この記憶部5はすでに完了した動作に関する各種記憶を消去することもできるようにしてある。
【0017】
前記駆動部6は時計付きタイマーや関連機器を備え、設定部4で設定された条件で発振部1を作動させられるようにしてある。この時計付きタイマーは現在時刻を表示できると共に、前記設定部4で設定された時刻になると発振部1を作動させたり、所定時刻になると作動を停止させたりするためのものであり、既存のタイマー或いはそれらを改良したタイマー等を使用することができる。
【0018】
外部入力部7は人為的に随時駆動信号を入力したり、図示しないセンサ等の検知手段によって鳥獣の接近や侵入が検知されると駆動信号を入力したりして前記設定部4で設定された条件とは別に発振部1を作動させるためのものである。前記検知手段は筺体10に装備したり、筺体10から離して鳥獣撃退装置の設置場所に設置したりすることができる。検知手段には音センサ、監視カメラ等を使用することができる。検知手段の数は一つに限らず任意の数とすることもできる。また、人為的に随時駆動信号を入力する場合、信号の入力をリモコン操作によって行うこともできる。
【0019】
(実施形態2)
本発明において発振されるパルス波のデューティ比は1:1にすると発振周波数が安定するが、デューティ比は2:1、3:1といった任意比とすることができる。デューティ比を変えるとスピーカから発生される音の質(音質)が変化する。デューティ比を2:1や3:1などにすると発振されるパルス波に種々の周波数成分が含まれ易くなり、所望周波数帯域の音以外の音も発生し易くなる。パルス波のデューティ比は発振中常に一定にしておく必要はなく時間経過に伴って変化させることもできる。発振部1から発振されるパルス波の周波数変化も図4のように連続的に行なうのではなく、不連続に行うこともできる。その場合、例えば、周波数を1秒間で15kHzから20 kHzまで上昇させ、その後の1秒間は20kHzを連続発生させ、その後に1秒間で20 kHzから25 kHzまで上昇させたりすることができる。
【0020】
(実施形態3)
本発明の鳥獣撃退装置では、発振周波数の変化を図4に示す15kHz〜50kHzよりも広くすることも狭くすることもできる。また1周期の時間(T1+T2)も4秒間ではなくそれよりも長くすることも短くすることもでき、半周期T1、T2の時間も2秒間より短くすることも長くすることもでき、さらには、半周期の時間T1、T2を異なる時間とすることもできる。発振部1から発振されるパルスの出力レベルも任意に変化させることができる。発振される電気信号はパルス以外の波形の電気信号、例えば、正弦波、鋸歯波等であってもよいが、パルス波の場合は基本波と同時にその数次の高調波も発生し易くなり、それら数種の周波数の電気信号が同時に発生し、その周波数分の音が出るため、多種類の鳥獣を撃退することができる。
【0021】
(実施形態4)
発振部1から発振されるパルスは二以上の系統に分けて、いずれかの系統のパルスを分周するなどしてそれら複数の系統から異なる周波数のパルスを出力させ、それらパルスを別々の増幅器で別々に増幅して別々のスピーカから同時に出力することもできる。この場合は周波数の異なる複数の音が同時に出力されるため、種類の異なる鳥獣を同時に撃退することができる。
【0022】
(実施形態5)
本発明の鳥獣撃退装置を広い屋外に設置する場合は利得の大きな増幅器2を使用するとか、二以上を従属接続して使用するとかしてスピーカ3の出力音を大きくするとかスピーカ3を二以上設置して広いエリアに音が行き届くようにすることもできる。
【0023】
(実施形態6)
本発明の鳥獣撃退装置は設定部4、記憶部5、駆動部6、外部入力部7をいずれも省略して、電源を入れると即座にスピーカ3から音が出力され、電源を切ると音が停止するようにすることもできる。また、設定部4、記憶部5、駆動部6を省略して、外部入力部7から駆動信号を入力したときだけ作動させたり、手動で作動を停止させたりすることもできる。これとは逆に、外部入力部7を設けずに前記設定部4で設定した条件でのみ動作が開始したり、停止したりするようにすることもできる。
【0024】
(実施形態7)
本発明ではスピーカ3を筺体10から離して所望の場所に配置することもできる。従って、例えば、広い農地等への鳥獣の接近、侵入を防止する場合等において、複数個のスピーカ3を所望位置に配置すれば屋外の広いエリアで鳥獣撃退が可能となる。
【0025】
(実施形態8)
本発明で発振する信号は前記パルスに限らず、鳥獣を撃退可能な周波数、音質などであれば他の波形の電気信号や規則性のない雑音(ノイズ)などであってもよい。
【0026】
(実施形態9)
本発明の鳥獣撃退装置では、発振部1から発振されるパルスをD/A変換して正弦波信号に変換し、バンドパスフィルタを通して可聴域周波数をカットし、取り出された周波数の音を出力させることにより、鳥獣にとっては撃退音となっても人間にとって雑音、騒音となることがなく住宅の近くのゴミだし場などで使用するのに適する。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の鳥獣撃退装置は、鳥獣の嫌う音を発生させる鳥獣撃退用のみならず、鳥獣の好む音を発生させて特定の鳥獣を誘引する鳥獣誘引用や、動植物の発育を促進する音を発生させて動植物の発育を促進する動植物発育用の音発生装置としても応用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の鳥獣撃退装置の外観を示す斜視図。
【図2】本発明の鳥獣撃退装置の全体構成を示す概略ブロック図。
【図3】本発明の鳥獣撃退装置の発振部が発振する低周波域の方形波信号(パルス)を示す波形図。
【図4】本発明の鳥獣撃退装置が時間経過に伴って連続的に周波数を高低変化させた音を出力する様子を示す説明図。
【符号の説明】
【0029】
1 発振部
2 増幅器
3 スピーカ
4 設定部
5 記憶部
6 駆動部
7 外部入力部
8 電源スイッチ
9 電源表示LED
10 筺体
11 ハンドル
14 ディスプレイ
15 条件入力部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の電気信号を発振する発振器と、発振器から発振される電気信号を掃引する掃引器と、発振器から発振された電気信号を増幅する増幅器と、増幅器出力を出力するスピーカを備え、前記発振器は発振周波数を所定時間内に連続的又は不連続的に高低変化させ、その発振が連続的に或いは所定時間間隔で繰り返し行なわれることを特徴とする鳥獣撃退装置。
【請求項2】
請求項1記載の鳥獣撃退装置において、発振器の動作開始時刻、動作停止時刻、動作日、発振周波数、掃引時間といった動作条件を設定する設定部と、設定条件を記憶する記憶部を備え、発振器並びに掃引器が記憶された設定条件に従って自動的に、又は外部からの駆動信号の入力により作動することを特徴とする鳥獣撃退装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の鳥獣撃退装置において、発振器から発振される電気信号が方形波信号であることを特徴とする鳥獣撃退装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−11777(P2008−11777A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186020(P2006−186020)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(394007942)有限会社明産電子工業 (1)
【出願人】(306021376)株式会社モハラテクニカ (2)
【Fターム(参考)】