説明

鳥類精原幹細胞の培養方法及びこれにより収得した鳥類精原幹細胞

本発明は、(a)鳥類の精巣を収得する段階;(b)前記精巣から精巣細胞ポピュレーションを分離する段階;及び(c)前記精巣ポピュレーションに含まれた精原幹細胞を、基底細胞上で、細胞成長因子の含まれた培地で培養する段階を含む鳥類精原幹細胞の長期培養方法、鳥類精原幹細胞のポピュレーション、及び形質転換鳥類の生産方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥類精原幹細胞の長期培養方法、鳥類精原幹細胞のポピュレーション(population)及び形質転換鳥類の生産方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
精子形成過程は、雄の精巣の精原細胞が分裂と分化、細胞死滅化(apoptosis)過程を経ながら精子を形成する過程である。従って、精子形成過程は、非常に複雑であり、組織的且つ効率的な生産体系を有する。鶏の精子形成過程は、哺乳動物と非常に類似しており、哺乳動物と同様に、精細管(seminiferous tubule)と間質細胞(interstitial cell)の二つの器官が複雑な方式で相互作用してなる。
【0003】
鳥類の精原細胞は、始原生殖細胞(Primordial Germ Cells, PGCs)由来であって、 外胚葉(epiblast)から発生し、原始線(primitive streak)の形成初期段階の間、下部層から徐々に移動し始め、内胚葉(hypoblast)を経由し、胚子外部の生殖半月部位(germinal crescent)に集まるようになる。その後、血管系が発達しながら、始原生殖細胞(PGC)は、血管を通じて循環して生殖腺に移動し、精巣内で精原細胞(spermatogonia)に発達する。
【0004】
一方、精原幹細胞は、自己再生((self-renewal)と、精子を生産できる能力を有する(Morrisonら、1997)、マウスの場合、一つの精原幹細胞が精母細胞(spermatocyte)となるために、約10回の分裂をする。即ち、一つの幹細胞(stem cell)が1024個の精母細胞(spermatocytes)となり、一連の減数分裂を経ると、4096個の精子(spermatozoa)が形成される。勿論、この中の75〜90%は、細胞死滅化(apoptosis)過程を通じてなくなる(Russellら、1990)。
【0005】
精巣内に存在する精原幹細胞は、極めて少ない数が存在するが、マウスの場合、精巣内に約108個の細胞があり、この中でほぼ2×104個が幹細胞(stem cell)であると推論される(Meistrich & Beek, 1993; Tegelenbosch & de Rooij, 1993)。精原細胞の中でも関心の対象となる細胞は、自己再生能力(self-renewing)と、成体の全期間に亘って精子形成能力を有する精原幹細胞(spermatogonial stem cell)である。
【0006】
分離した生殖細胞を利用して、体外で精子形成過程を再現しようとする数多い試みがあったが、成功に至らず、マウスの未成熟生殖細胞をセルトリ細胞(Sertoli cell)と共培養して、半数体の精子細胞(spermatid)に分化させるに成功したが(Rassoulzadeganら、1993)、体外での精子形成は、まだ技術的な限界を有している。現在まで、体外培養(in vitro culture)システムは、数週以上を超えることが難しいと報告されており(Ogawa, 2001; Dirmaiら、1999; Naganoら、1998)、マウスの場合、約4ヶ月間維持して受容体に移植し、 正常的な精子形成過程が起こることを報告した(Naganoら、1998)。従って、精原細胞の分離は制限的であり、培養時、多い数の精原細胞が死んでしまうため、精原細胞の培養が難しく、特に、精原幹細胞と分化された精原細胞との区別が可能な形態学的、生化学的なマーカーがないということが最も大きい問題である(Naganoら、1998; van Peltら、2002)。
【0007】
一方、Shinoharaら(1999)は、α6−インテグリン及びβ1−インテグリン抗体がマウス精原幹細胞に、他の組織とは区別されるように反応し、標識マーカーとして利用可能であることを報告し、牛では、レクチン類のDBA(Dolichos biflorus agglutinin)が精巣の生殖細胞(gonocyte)と精原細胞とに対して生後30週齢まで特異的な反応を示し、特異マーカーとして使用可能であることを立証した(ErtlとWrobel、1992)。
【0008】
マウスを始めとした哺乳動物の培養を通じての精原細胞株に対する報告はないが、mTERT(mouse telomerase catalytic component)(Fengら、 2002)、SV40 large T抗原(van Peltら、2002)などを利用したマウス及びラットの精原細胞株の確立が報告されている。
【0009】
牛、豚及び馬のような家畜の精巣細胞(testicular cell)を培養してマウス精巣に移植するか(Dobrinskiら、2000)、牛のtype A精原細胞を長期間(約150日)培養しながら、精原細胞株の分裂及び分化様相を報告した例があり(Izadyarら、2003)、人間の場合は、精原細胞に対する培養は、主に、無精子症のような疾患に対する治療の目的で試みられているが、精子細胞(spermatid)まで分化させた後、受精した時、桑実胚(morula)まで発達できず、性染色体異常のような問題を有している(Sousaら、2002)。
【0010】
しかしながら、鶏を始めとした鳥類の精原細胞の培養及び利用に対する研究は、哺乳動物に比べ、ほとんどなされていない状態であり、最近、形質転換鳥類生産のための道具として関心が集中されている。このような精原細胞株は、精子形成過程の分子機作を明かせる重要な道具であり、遺伝子操作及び変更を通じて、形質転換個体の生産及び生殖細胞の遺伝子治療にも活用することができる。
【0011】
本明細書全体にかけて多数の論文が参照されて、その引用が表示されている。引用された論文の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、上述のような当業界の要求を解決するために鋭意研究した結果、鳥類精原幹細胞の培養方法を構築し、これを通じて収得した鳥類精原幹細胞の特性を糾明することにより、本発明を完成した。
【0013】
したがって、本発明の目的は、鳥類精原幹細胞の長期培養方法を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、精原幹細胞の特性を示す鳥類細胞を含む鳥類精原幹細胞のポピュレーション(population)を提供することにある。
【0015】
本発明のまた他の目的は、精原幹細胞を利用して形質転換鳥類の生産方法を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲、及び図面により、さらに明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一様態によると、本発明は、(a)鳥類の精巣を収得する段階;(b)前記精巣から精巣細胞ポピュレーションを分離する段階;及び(c)前記精巣細胞ポピュレーションに含まれた精原幹細胞を、基底細胞上で、細胞成長因子の含まれた培地で培養する段階を含む鳥類精原幹細胞の長期培養方法を提供する。
【0018】
本発明は、鳥類において、精原幹細胞の培養条件の確立及び特性糾明を最初に成功した発明である。
【0019】
以下、本発明の方法をそれぞれの段階に沿って詳細に説明する。
【0020】
段階1:鳥類の精巣を収得する段階
本発明が鶏に適用される場合、精原幹細胞の培養のための鶏は、発生後70週齢、好ましくは、発生後20週齢、より好ましくは、2〜10週齢の雄を利用する。鶏の精巣は、頚椎骨を分離した後、切開して得られる。
【0021】
段階2:精巣から精巣細胞ポピュレーションを分離する段階
前記過程により分離した精巣の周りの結締組織及び膜などを除去し、精巣組織を覆っている白膜を除去する。次いで、精巣を、解剖用メスを利用して細かく切断した後、様々な分解方法により分解した後、精巣細胞を分離する。
【0022】
本明細書において、用語‘精巣細胞(testicular cell)’は、精原幹細胞、精原幹細胞由来の全ての生殖細胞を含む精原細胞、セルトリ細胞、間質細胞、そしてその他の結締組織に係る筋肉細胞などを含む精巣組織内の細胞群を意味し、用語‘精巣細胞ポピュレーション’と混用される。
【0023】
精巣組織の分解は、当業界に公知された多様な方法により行うことができ、好ましくは、精巣から精巣細胞を分離する段階は、コラゲナーゼ、トリプシン、またはこれらの混合物を前記収得した精巣の組織に処理することにより行われる。さらに好ましくは、後述する2段階酵素処理方法、van Pelt(1996)方法、またはコラゲナーゼ−トリプシン処理方法により行われて、最も好ましくは、コラゲナーゼ−トリプシン処理方法により行われる。
【0024】
イ.2段階酵素処理方法
この方法は、Ogawaら(1997)の方法及びその変形された方法により行われる。コラゲナーゼタイプIの溶解されたHBSS(Hank's Balanced Salt's solution)に前記精巣組織を添加して、一定時間反応した後、トリプシンで処理する。
【0025】
ロ.van Pelt(1996)方法
コラゲナーゼタイプI、トリプシン、ヒアルロニダーゼII、及びDNase Iが溶解されたDMEM培地で前記精巣組織を分解する。
【0026】
ハ.コラゲナーゼ−トリプシン処理方法
コラゲナーゼタイプI及びトリプシンの溶解されたHBSSで精巣組織を分解し、ピペッティングにより精巣組織の分解をさらに促進させる。
【0027】
このように分解された精巣組織分解物を適した細胞濾過器(孔径約70μm)で濾過し、精巣細胞を回収する。
【0028】
段階3:精巣細胞のポピュレーションに含まれた鳥類精原幹細胞を培養する段階
前記過程により収得した精巣細胞を、基底細胞上で、細胞成長因子の含まれた培地で培養し、精巣細胞のポピュレーションに含まれている鳥類精原幹細胞を培養する。
【0029】
精原幹細胞の培養においては、基底細胞が必須的に利用されて、精原幹細胞は、基底細胞層に付着されて増殖し、コロニーを形成する。本発明の好ましい具現例によると、前記基底細胞は、繊維芽細胞、生殖器基質細胞、精巣基質細胞、またはマウスSTO細胞株(SIM mouse embryo-derived, Thioguanine- and Quabain-resistant fibroblast cell line)であって、より好ましくは、生殖器基質細胞または精巣基質細胞であり、最も好ましくは、生殖器基質細胞である。本発明の方法が鶏に適用される場合、前記繊維芽細胞、生殖器基質細胞、及び精巣基質細胞は、鶏由来のものを利用することが好ましい。
【0030】
前記基底細胞は、培地の含有されたディッシュまたはプレートの底部に位置し、培地に移された精原幹細胞は、基底細胞層に付着されて増殖する。
【0031】
一方、精原幹細胞の培養に利用される培地は、必須成分として細胞成長因子を含むが、好ましくは、繊維芽細胞成長因子(fibroblast growth factor;例えば、塩基性繊維芽細胞成長因子)、インシュリン様成長因子−1(insulin-like growth factor-1)、幹細胞因子(stem cell factor)、神経膠由来の神経栄養因子(glial derived neurotrophic factor)、またはこれらの組み合せを含み、より好ましくは、繊維芽細胞成長因子、インシュリン様成長因子−1、幹細胞因子、またはこれらの組み合せを含み、最も好ましくは、繊維芽細胞成長因子及びインシュリン様成長因子−1の混合物を含む。好ましくは、本発明に利用される培地は、分化抑制因子をさらに含み、最も好ましくは、白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor)を含む。したがって、本発明の培地に含有される最も好ましい成長因子及び分化抑制因子は、繊維芽細胞成長因子、インシュリン様成長因子−1、及び白血病抑制因子の混合物である。
【0032】
また、本発明の培養に利用される培地は、鳥類血清(例えば、鶏血清)、哺乳類血清(例えば、牛胎児血清)、またはそれらの混合物を含むことが好ましい。その他にも、抗酸化剤(例えば、β−メルカプトエタノール)、抗生剤−抗ミコバクテリア剤(antibiotics-antimycotics)、非必須アミノ酸(例えば、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、及びセリン)、緩衝剤(例えば、Hepes緩衝液)、またはそれらの混合物を含むことが好ましい。
【0033】
本発明の培養段階において、培養温度は、約37℃が最も好ましい。鳥類の体温が41℃であることを考慮すると、前記最適の培養温度は、特異であると言える。
【0034】
一方、上述の培養段階に先立って、精原幹細胞の初期培養(primary culture)を追加的に行うことができる。
【0035】
段階4:鳥類精原幹細胞の同定段階
前記過程により培養された鳥類精原幹細胞が真正なものであるか否かを確認するために、同定段階を行う。
【0036】
前記同定は、(i)PAS(Periodic Acid Shiff's)染色、(ii) STA(Sojanum tuberosum agglutinin)染色、(iii) α6−インテグリン抗体染色、(iv)β1−インテグリン抗体染色、(v)SSEA−1抗体染色、(vi)SSEA−3抗体染色、(vii)SSEA−4抗体染色、(viii)DBA(Doliclos bifflrus agglutinin)染色、または(ix)前記染色方法の組み合せにより行うことができる。好ましくは、同定の信頼性を高めるために、以下の染色方法の組み合せを実施する。
【0037】
(i)PAS染色
培養した精原幹細胞を固定液(例えば、リン酸塩緩衝液、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、及びMgCl2を含む)に固定した後、過ヨード酸溶液に反応させ、次いでシフ試薬(Schiff's reagent)に反応させて染色する。細胞質が濃い紫色に染色された場合、即ち陽性反応を示した場合、鳥類精原幹細胞として判定できる。
【0038】
(ii)STAまたはDBA染色
精原幹細胞に固定液を処理して固定した後、レクチン類の一つであるSTA(Solanum tubersum agglutinin)またはDBA(Doliclos bifflrus agglutinin)に蛍光物質(例えば、FITC(fluorescein isothiocyanate))を接合してなるFITC−STAまたはFITC−DBAと反応させる。次いで、蛍光顕微鏡で観察する。細胞表面で蛍光が観察される場合、即ち、陽性反応を示す場合、鳥類精原幹細胞として判定できる。
【0039】
(iii)α6−インテグリン抗体染色
精原幹細胞に一次抗体であるα6−インテグリン抗体を処理し、標識物質例えば、蛍光物質(TRITC(tetramethyl rhodamine isothiocyanate))が接合されている二次抗体(抗体のFcドメインに結合する抗体であって、例えば、ヤギ抗−マウスIgG)と反応させた後、蛍光顕微鏡で観察する。細胞表面で蛍光が観察される場合、即ち、陽性反応を示す場合、鳥類精原幹細胞として判定できる。
【0040】
(iv)β1−インテグリン抗体染色
前記α6−インテグリン抗体方法と同様に行うが、一次抗体として、β1−インテグリン抗体を使用する。
【0041】
(v)SSEA−1、SSEA−3、またはSSEA−4抗体染色
精原幹細胞に、一次抗体であるSSEA−1、SSEA−3、またはSSEA−4抗体を処理し、発色反応触媒(例えば、alkaline phosphatase)の結合された二次抗体を処理する。次いで、前記触媒の基質を添加し反応させて、発色様相を観察する。発色反応が観察される場合、即ち、陽性反応を示す場合、鳥類精原幹細胞として判定できる。
【0042】
本発明の方法は、多様な鳥類、好ましくは、鶏、鶉、七面鳥、鴨、鵞鳥、雉、または鳩、最も好ましくは、鶏に適用できる。
【0043】
本発明の方法によると、鳥類精原幹細胞を、少なくとも2ヶ月、好ましくは少なくとも3ヶ月、より好ましくは少なくとも4ヶ月、最も好ましくは少なくとも5ヶ月まで培養することができる。
【0044】
本発明の培養方法に従う場合は、信頼性高く鳥類精原幹細胞を得ることができる。従って、本発明の他の様態によると、本発明は、精原幹細胞の特性を示す鳥類細胞を含む鳥類精原幹細胞のポピュレーション(population)を提供する。
【0045】
本明細書において、用語‘鳥類精原幹細胞のポピュレーション’は、鳥類精原幹細胞を必須として構成されている細胞のポピュレーションを意味する。即ち、本発明の鳥類精原幹細胞のポピュレーションは、完全に鳥類精原幹細胞のみから構成された細胞ポピュレーションだけではなく、他の細胞、例えば精原細胞などが微量含有されている細胞ポピュレーションも含む。
【0046】
前記精原幹細胞の特性は、(i)PAS(Periodic Acid Shiff's)染色、(ii) STA(Sojanum tuberosum agglutinin)染色、(iii) α6−インテグリン抗体染色、(iv)β1−インテグリン抗体染色、(v)SSEA−1抗体染色、(vi)SSEA−3抗体染色、(vii)SSEA−4抗体染色、(viii)DBA(Doliclos bifflrus agglutinin)染色、または(ix)前記染色方法の組み合せにおいて陽性反応を示すことを意味する。
【0047】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、(a)前記本発明の鳥類精原幹細胞のポピュレーションに外来遺伝子を転移させる段階;(b)前記鳥類精原幹細胞のポピュレーションを受容体の精巣に移植する段階;及び(c)前記受容体の子孫を得て、形質転換鳥類を生産する段階を含む形質転換鳥類の生産方法を提供する。
【0048】
本発明の方法において、鳥類精原幹細胞に外来遺伝子を転移させることは、当業界で通常的に公知された遺伝子転移方法により行うことができる。例えば、電気穿孔法(electroporation)、リポソーム媒介転移方法(Wongら、1980)、及びレトロウイルス媒介転移方法(Chenら、1990; Kopchickら、1991; Lee & Shuman、1990)がある。前記電気穿孔法は、本発明者らが開発した方法により行うことが最も好ましい(参照:大韓民国特許第305715号)。
【0049】
本発明の好ましい具現例によると、前記外来遺伝子は、選択マーカーとして抗生剤耐性遺伝子を含み、前記(a)段階の後に、抗生剤耐性を示す精原幹細胞を選択する段階がさらに含まれて、前記(b)段階は、抗生剤耐性を示す精原幹細胞により行われる。本発明で利用できる選択マーカーは、真核細胞に抗生剤を付与する遺伝子であれば何でもよく、例えば、ネオマイシン、プロマイシン及びゼオマイシン耐性遺伝子を含む。
【0050】
鳥類精原幹細胞を受容体の精巣に移植する段階は、精巣細管に精原幹細胞を微細注入することが好ましい。
【0051】
次いで、受容体を他の個体と交配することにより子孫を得て、外来遺伝子を含有した子孫が形質転換鳥類となる。
【発明の効果】
【0052】
本発明は、鳥類精原幹細胞の長期培養方法、鳥類精原幹細胞のポピュレーション及び形質転換鳥類の生産方法を提供する。本発明の方法に従う場合は、信頼性をもって鳥類精原幹細胞を得ることができる。また、得られた鳥類精原幹細胞は、精子形成過程の分子遺伝学的理解、そして遺伝子操作による形質転換鳥類の生産に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって自明なことであろう。
【実施例】
【0054】
[実験材料及び方法]
1)供与鶏及び精巣分離
精原幹細胞の培養のための鶏は、(株)アビコアー生命工学研究所で飼育された雄の白色レグホーン種を利用した。鶏の精巣は、供与鶏の頚椎骨を分離した後、切開して得て、鶏の週齢別体重及び精巣の重量を測定した。
【0055】
2)精巣組織の分解方法の比較
分離した精巣は、精巣の周りの結締組織及び膜などを除去し、微細ピンセットを利用して、精巣組織を覆っている白膜(tunica albuginea)を除去した。精巣は、解剖用メスを利用して、実体顕微鏡下で細かく切断した後、多様な分解方法を利用して比較分析した。
【0056】
イ.2段階酵素処理方法(Two- step enzymatic digestion)による分離方法
この方法は、Ogawaら(1997)の方法を少し変形して行った。即ち、上記のように用意した精巣組織を、HBSS(Hank's Balanced Salt's solution, Invitrogen)にコラゲナーゼタイプI(1mg/ml、Sigma)を溶解した後、37℃振とう培養機(shaking incubator)で15分間処理した。HBSSで洗浄した後、0.25%トリプシン−1mM EDTA(Invitrogen)で15分間処理した。分解した精巣細胞は、70μm細胞濾過機(cell strainer, Falcon 2350)で濾過した後、トリパンブルーを利用して生存率及び細胞数を測定した。
【0057】
ロ.van Pelt(1996)方法による分離
DMEM(Invitrogen)培地にコラゲナーゼタイプI(1mg/ml、Sigma)、トリプシン(1 mg/ml、Sigma)、ヒアルロニダーゼII(1mg/ml、Sigma)及びDNase I(5μg/ml、BMS)を溶解した後、前記培地で、細かく切られた精巣組織を15分間150サイクル/分で分解した。次いで、DMEM培地で3回洗浄した後、2回目の分解を、コラゲナーゼタイプI(1 mg/ml)、ヒアルロニダーゼII(1mg/ml、Sigma)及びDNase I(5μg/ml、BMS)の溶解されたDMEM培地で約30分間行って、精巣組織を完全に分解した。その後、70μm細胞濾過機で濾過した後、生存率及び細胞数を測定した。
【0058】
ハ.コラゲナーゼ−トリプシン処理方法
HBSS(Invitrogen)にコラゲナーゼタイプI(1mg/ml、Sigma)と0.25%トリプシン(Sigma)を溶かした組織分解培地で、次のような方法により細胞を分離した。37℃振とう培養機(shaking incubator)で30分間、150rpmで組織を分解しながら、5分間隔でピペッティングして、精巣組織を分解した。酵素の活性を停止するために、FCS(fetal calf serum)10%を添加した後、細胞濾過機(cell strainer、70μm、Falcon 2350)を利用し、分解した細胞を回収した。300×gで5分間遠心分離し、精巣細胞(testicular cell)を確保した後、トリパンブルーを利用して、生存率及び細胞数を測定した。
【0059】
3)精巣組織内精原幹細胞の分布
鶏の週齢別精巣組織の形態及び精原幹細胞の分布様相を観察するために、組織分析を実施して、精巣組織の特性を分析し、STA(Solanum tuberosum agglutinin)を利用して、精原幹細胞の数を測定した。
【0060】
鶏を始めとした鳥類の精巣組織内の精原幹細胞の数は、まだ報告されていない。精原幹細胞の数を測定するために、約3週齢の白色レグホーン(White Leghorn)種の精巣をコラゲナーゼ−トリプシンにより分解した後、0.5%パラホルムアルデヒドを利用して精巣細胞を約5分間固定した。精原幹細胞に特異的なレクチン類の一つであるFITC−接合STA(Solanum tuberosum agglutinin, Sigma)を利用して、精巣細胞に反応させた。2時間反応した後、STAと反応して蛍光を発する細胞を測定し、全体の精巣細胞の中で占める精原幹細胞の分布を計算した。
【0061】
4)基底細胞の比較
初期培養した精巣細胞は、約7〜10日間培養した後、適宜な基底細胞(feeder layer)に移して培養しなければならないため、鶏の精原細胞培養のための最適な基底細胞の比較試験を行った。まず、精巣細胞の初期培養のために、2〜4週齢の雄のヒヨコから精巣組織を分離した後、上記例のコラゲナーゼ−トリプシンの処理方法により精巣組織を分解した。分解した精巣組織は、細胞数及び生存率を測定した後、培養ディッシュ(100mm)当たり2×106の精巣細胞を接種して、8〜10日間培養した。この際、培地の組成は、基底細胞が含まれていないことを除いては、下記の精原幹細胞の培地の中で最も好ましいものと等しい。
【0062】
6−ウェルプレート(TPP、EU)に、基底細胞として試験する鶏繊維芽細胞(CEF, chicken embryonic fibroblast)、鶏生殖器基質細胞(GSC, gonadal stroma cell)、または鶏精巣基質細胞(TSC, testicular stroma cell)を培養(6〜8×104/well)した。マウスSTO細胞株(ATCC CRL-1503)は、ミトマイシンC(10μg/ml)を処理して細胞分裂を抑えた後、使用した。前記過程により初期培養された精原幹細胞は、ウェル当たり1×105の細胞を用意した基底細胞上で、8〜10日間5%CO2培養器で37℃に培養した後、細胞数を測定して統計処理した。
【0063】
5)培養液組成による培養条件の確立
鶏精原幹細胞の培養液組成による培養条件の確立のために、次のような培養液組成で精原幹細胞の培養様相を比較した。
【0064】
(i)DMEM−B(基本培養液)
基本培養液の組成のために、DMEM(Invitrogen)培地に10%(v/v)ES細胞用牛胎児血清(FBS, Hyclone, Logan UT)及び1x抗生剤−抗ミコバクテリア剤(Invitrogen)を添加して、培地を組成した。
【0065】
(ii)DMEM−C(添加剤)
上記の基本培養液DMEM−B培地に2%鶏血清(Invitrogen)、10mM非必須アミノ酸(Invitrogen)、10mM Hepes緩衝液(Invitrogen)、及び0.55mMβ−メルカプトエタノール(Invitrogen)を添加して、培養液を組成した。
【0066】
(iii) 精原幹細胞は、24−ウェルプレートにパッセージ1の細胞(1×104/well)とGSC基底細胞(8×103/well)を使用して、5%CO2培養器で9日間37℃で5回繰り返して共培養した後、コロニー数を測定した。
【0067】
6)添加物に対する最適培養条件の確立
それぞれの成長因子に対する鶏精原幹細胞の培養様相を比較することにより、精原幹細胞の最適培養条件を確立するために、添加剤の含まれた培養液を対照区として、各成長因子に対する培養パターンを比較した。
【0068】
(i)DMEM−C(対照区)培養液は、上記で使用した培養液組成と同じであり、これに、それぞれの成長因子、即ち10ng/mlの人間白血病抑制因子(Sigma)、10ng/mlの人間塩基性繊維芽細胞成長因子(Sigma)、100ng/mlの人間インシュリン様成長因子−1(sigma)、20ng/mlの人間幹細胞因子(Sigma)、及び100ng/mlの人間神経膠由来の神経栄養因子(R&D system, USA)を添加して、5%CO2培養器で37℃に培養した。
【0069】
(ii)精原幹細胞は、24ウェルプレートにパッセージ1の細胞を利用し(1×104/well)、GSC基底細胞(8×103/well)を使用して、9日間3回繰り返して培養した後、コロニー数を測定した。
【0070】
7)精原幹細胞培養に対する培養温度の効果
鶏精原幹細胞培養のための最適の培養温度条件を確立するために、鳥類の体温温度である41℃と、一般的な培養温度である37℃で温度効果を比較した。培養培地は、SSC培地、即ちDMEM−C(対照区)培養液にそれぞれの成長因子、即ち2ng/mlの人間白血病抑制因子(Sigma)、5ng/mlの人間塩基性繊維芽細胞成長因子(Sigma)、及び10ng/mlの人間インシュリン様成長因子−1(Sigma)を添加し、5%CO2培養器で培養した。3週齢の白色レグホーンの精巣細胞を初期培養して、10日間培養した後、精原幹細胞を回収して、細胞数を測定した。
【0071】
8)鶏精原幹細胞の成長曲線
鶏精原幹細胞の体外培養のために、確立された培養温度、培養液、そして基底細胞を利用して、初期精巣分解の後から培養しながら、培養日数による精原幹細胞の数の変化を測定した。即ち、初期分解の後、約2.0×106/dish(100mm)の精巣幹細胞を精原細胞培養液とGSC基底細胞とで培養しながら、約10日間隔で継代(subculture)して、精原幹細胞の数を測定した。
【0072】
9)免疫細胞化学的方法を利用した精原幹細胞の特性の糾明
精巣組織から培養した鶏精原幹細胞の特性を糾明するために、PAS(Periodic Acid Schiff's)染色キット(Sigma)、STA(Sigma)、鶏抗−インテグリンβ1抗体(Sigma)、及び鶏抗−インテグリンα6抗体(Chemicon International. Inc, USA)を利用して培養した精原幹細胞における様相を観察した。
【0073】
(i)PAS(Periodic Acid Shiff's)染色
培養した精原幹細胞を固定液(50mMリン酸塩緩衝液、2%グルタルアルデヒド、2%ホルムアルデヒド、及び2mM MgCl2)に10分間固定した後、PBSで3回洗浄した。過ヨード酸溶液に5分間反応させた後、PBSで再び3回洗浄した。シフ試薬(Schiff's reagent、Sigma)を10分〜15分間入れておいて、PBSで洗浄した後、顕微鏡で観察した。
【0074】
(ii)STA(Sojanum tuberosum agglutinin)染色
精原幹細胞に固定液を処理して固定した後、レクチン類の一つであるFITC−STA(Sigma)を10〜2に希釈して、50μg/mlとなるようにした後、約1時間常温で反応した。次いで、PBSで3回洗浄し、蛍光顕微鏡(Nikon TE2000-U, Japan)で観察した。
【0075】
(iii)α6−インテグリン及びβ1−インテグリン染色
精原幹細胞に固定液を処理した後、PBSで洗浄し、2%ノルマルヤギ血清でブロッキングするために、常温で約1時間培養した。一次抗体であるα6−インテグリン(Chemicon Int.)及びβ1−インテグリンの抗体(Sigma)をそれぞれ20μg/mlの濃度に希釈し、室温で1時間ずつ反応した。二次抗体としては、TRITC(tetramethyl rhodamine isothiocyanate)付きヤギ抗−マウスIgG(Jackson Lab)を使用し、室温で1時間培養した後、蛍光顕微鏡で観察した。
【0076】
(iv)SSEA−1、SSEA−3、及びSSEA−4染色
精原幹細胞に固定液を処理した後、PBSで洗浄し、レバミゾール(Levamisole)を処理した。二次抗体の非特異的結合を最少化するために、5%ヤギ血清により常温で30分間ブロッキングした。次いで、1:100に希釈された一次抗体の抗−SSEA−1(MC-480)または抗−SSEA−4、1:200 に希釈された抗−SSEA−3(MC-631)(MC-813-70; Developmental Studies Hybridoma Bank, Iowa, IA)を処理して、室温で1時間反応した。その後、二次抗体のヤギ抗−マウスIgM−AP(AK-5010, Vector Laboratories, Inc., Burlingama, CA)を処理した。その後、試料をABC溶液及びBCIP/NBT(Sigma)基質でそれぞれ30分間反応させた後、10mM EDTA(pH 8.0)を添加して反応を停止した。
【0077】
(v)二重免疫染色
精原幹細胞に抗−SSEA−1、抗−SSEA−3、または抗−SSEA−4を処理した後、二次抗体としてロダミン(TRITC)−接合ヤギ抗−マウスIgG(115-025-003, Jackson ImmunoResearch Laboratories. Inc, Bar Harbor, ME)を処理した。次いで、PBSで3回洗浄した後、FITC−STAを1時間処理し、蛍光顕微鏡で観察した。
【0078】
[実験結果]
1)精巣細胞の分離方法の比較
鶏の精巣組織の分解のための酵素処理方法は、コラゲナーゼとトリプシンを主成分として分解したが、2段階酵素処理方法(Ogawaら、1997)とvan Pelt(1996)方法、そしてコラゲナーゼとトリプシンとを混合した方法の三つの方法を利用して分離した。分離した精巣細胞は、生殖細胞(germ cell)及びその他の体細胞から構成されており、トリパンブルーを利用して細胞の生存率を測定した(参照:表1及び図1)。三つの精巣細胞分離方法の比較結果、処理3の方法、即ちコラゲナーゼ(1mg/ml)及びトリプシン(0.25%)を利用した分離方法が最も高い細胞生存率を示し、また、2段階酵素処理方法やvan Pelt方法に比べ、簡単で且つ時間もかからないことから、処理3の方法が鶏の精巣組織分解のための最も効率的な方法であることが分かった。
【0079】
[表1]
鶏精巣組織の分解方法による精巣細胞の生存率及び細胞数

【0080】
2)精巣組織内の精原幹細胞の分布
未だに、鶏を始めとした鳥類の精巣内の精原幹細胞数に対する報告はなく、ただ、極めて少ない数が存在すると知られている。マウスの場合、精巣内に約108個の細胞があるが、この中で約2×104個が幹細胞であると推論される(Meistrich & Beek, 1993; Tegelenbosch & de Rooij, 1993)。鶏の精巣組織内の精原幹細胞の数を測定するために、約3週齢の白色レグホーン種の精巣を分解した後、レクチン類の一つであるSTA−FITC接合体を利用して、蛍光を発する細胞を測定し、全体精巣細胞の中で占める精原幹細胞の分布を計算した(参照:表2)。
【0081】
哺乳動物と同様に、鶏のような鳥類も、精原幹細胞を区分できる確実な形態学的、分子化学的マーカーがないため、多様な種類(STA, WGA, DBA, ConA)のレクチンを利用して実験した結果、FITC−STA(Sojanum tuberosum agglutinin)が精原幹細胞に特異的に反応することが分かった。従って、STAを利用して測定した結果、鶏の場合、約0.8%が精原幹細胞であると推論される。品種及び週齢により差があるが、2〜3週齢白色レグホーン種の場合、精巣内の総細胞数が約107個であるが、この中で略8×104個が幹細胞であると判断される。これは、マウスの0.02%に比べ、約40倍多い量であって、このような多い数の精原幹細胞は、鶏の精原幹細胞の体外培養、細胞株の確立、そして遺伝子操作などに非常に有用に使用できる。
【0082】
[表2]
精巣細胞内の、FITC−STAと特異的に反応する精原幹細胞の数

【0083】
3) 精原細胞の培養のための最適の基底細胞の確立
鶏を始めとした鳥類の精原幹細胞の培養に関する研究は、報告されたものがなく、培養条件もマウスなどの精原細胞の培養と異なる方法を試みた。基本的に、精原幹細胞は、PGC由来の細胞であるため、EG培養液を一部変更して培養液として使用し(Parkら、2000)、PGC、胚芽生殖細胞(Embryonic germ cell)、そして精原細胞も基底細胞依存型(dependent)であるため、最適の基底細胞を探すために、鶏繊維芽細胞(CEF)、鶏生殖器基質細胞(GSC)、鶏精巣基質細胞(TSC)、及びマウスSTO細胞株などを利用して比較した(参照:図2)。
【0084】
初期培養(primary culture)後、再び1次培養した精原幹細胞を基底細胞と共に培養して、精原幹細胞数を測定して比較した。測定の結果、TSCと統計的な有意差はなかったが、GSC基底細胞と共に培養した精原幹細胞の数が最も高く表れて、CEFとSTO細胞株の場合、最も少ない数値を表した。したがって、GSCを基底細胞として共培養することが、精原幹細胞の培養に最も適合しているという結果を得た。即ち、精巣細胞の多くの部分を占めるセルトリ細胞と共に培養することが、精原幹細胞の増殖及び発達に必要な成長因子を供給する栄養細胞(nurse cell)としての役割をすることができるが(Sousaら、2002; van der Weeら、2001; Rassoulzadeganら、1993)、TM4とSF7のようなセルトリ細胞由来の細胞株と共培養時、セルトリ細胞の特殊な機能、即ち、精原幹細胞の分化を誘導する機能により、却って、他の細胞株と共に培養する場合より精原幹細胞の生存率を落としてしまう結果を招来する虞があるということが分かった(Naganoら、2003)。
【0085】
TSCの場合、3週齢以下のヒヨコの精巣組織から分離した細胞が最も好ましく、CEFは、早く育ちすぎて巻かれる傾向があり、またコロニーを分離する時、CEFが共に分離される短所があった。STOは、マウス及び哺乳動物の幹細胞の立派な基底細胞であるにもかかわらず、ミトマイシン−Cを処理して培養時、コロニー形成が他の基底細胞に比べ劣り、細胞が少しずつ離れ続ける現象を示した。
【0086】
4)培養液組成による培養条件の確立
鶏精原幹細胞の培養液組成による培養条件の確立のために、基本培地(DMEM-B)と添加物の入っている培地(DMEM-C)とで9日間培養した後、コロニー数を測定して比較した。測定の結果、鶏精原幹細胞のコロニー形成が、DMEM−Cの方がDMEM−Bに比べ約14倍高く現れた(参照:表3及び図3)。
【0087】
これは、DMEM−C培養液に添加された添加物による結果であると見なされ、鶏血清、代謝関連物質である非必須アミノ酸、緩衝剤であるHepes緩衝液、そして抗酸化剤であるβ−メルカプトエタノールなどが複合的に作用したと判断される。一方、Naganoら(2003)が発表した論文では、基本培地と、代謝基質と緩衝剤などが添加された培地とにおけるマウス精原幹細胞の培養に差がないと報告しているが、本発明では、両培地間の効果の差が大きくあらわれた。
【0088】
細胞の状態は、DMEM−Bの場合、大部分の細胞が一つの細胞状態に留まっている細胞が多く、細胞サイズが小さくなるパターンを示した(図4のa及びb)。その反面、DMEM−Cで育った細胞の場合、コロニー形成が旺盛で、細胞の大きさや形態において、P0での精原幹細胞と同様な様相を示した(図4のc及びd)。
【0089】
[表3]
培養液組成によるコロニー数の比較

【0090】
5)添加物に対する最適の培養条件の確立
それぞれの成長因子に対する鶏精原幹細胞の培養様相を比較することにより、精原細胞の最適の培養条件を確立するために、培養添加物の含まれた培養液を対照区として、各成長因子に対する培養様相を比較した。幹細胞因子(SCF)と、白血病抑制因子(LIF)と、塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)とは、既に、PGCの維持及び増殖を促進させると報告されており(Matsuiら、1992; Resnickら、1992)、GDNFも、in vivoで精原幹細胞の分化を調節する重要な要素であることが立証された(Mengら、2000; Naganoら、2003)。
【0091】
それぞれの成長因子に対する効果を観察するために、24ウェルプレートで約9日間培養した後、コロニー数を測定して比較した。
(i) DMEM−C(対照区)
(ii) DMEM−C+LIF(10ng/ml)
(iii) DMEM−C+bFGF(10ng/ml)
(iv) DMEM−C+SCF(20ng/ml)
(v) DMEM−C+IGF−1(100ng/ml)
(vi) DMEM−C+GDNF(100ng/ml)
【0092】
各ウェルの精原幹細胞コロニーを測定した結果、成長因子の含まれていない対照区の培養液が却って、LIF、bFGF、IGF−1、及びGDNFを添加したものに比べ、多いコロニーを形成し、SCFを添加したものが最も多いコロニーを形成したことが観察された(参照:表4及び図5)。これは、SCFが精原幹細胞の分裂を刺激したというよりは、却って何ら影響を及ぼさなかったと判断される(Ohtaら、2000)。LIF、bFGF、またはIGF−1の添加が、成長因子無しに培養したものと比較してみると、却って精原幹細胞の分裂や成長に影響を及ぼさないことが分かった。このような結果は、マウスの精原幹細胞における結果と、ある程度一致することが分かる(Naganoら、2003)。その反面、GDNFは、精原幹細胞の分化を抑制して、未分化された精原幹細胞の蓄積を起こすと知られており(Mengら、2000)、マウス精原幹細胞において、他の成長因子に比べ有意的に高く現れた反面、本実験では、却って最も低い結果を示した(参照:表4及び図5)。各成長因子に対する培養様相を見ると、大きな差は見つからないが、対照区の場合、コロニーの形成及び数が良子である反面、LIF、IGF−1、GDNFが添加された精原細胞は、コロニーの形成が不良で、その数も対照区に比べ劣る。
【0093】
[表4]
成長因子による精原幹細胞のコロニー数の比較

【0094】
それぞれの成長因子は、他の因子と相互作用して相乗効果を誘発するが、LIFの場合、鳥類胚芽幹細胞、始原生殖細胞、及び胚芽生殖細胞の長期間培養に必ず必要な要素であり、bFGF、SCFなどと共に培養時、高い効果が期待できる(Painら、1996; Parkら、2000)。本実験から分かるように、それぞれの成長因子に対する効果は、SCFを除いては、対照区(DMEM-C)に比べ低かったが(図5)、LIF、bFGF、IGF−1、及びSCFを共に添加して培養した時は、却って対照区より高度の有意的な増加傾向を示し(SCF未添加:2.8倍、SCF添加:2.2倍)、全体的に成長因子間の効果が認められたが、鶏精原幹細胞の場合、SCF添加時、添加しなかった処理区に比べ、低い結果を示し、SCFが鶏精原幹細胞の分化または細胞死滅化(apoptosis)を誘導すると判断される(表5、図6)。
【0095】
[表5]
成長因子の組み合せによる鶏精原幹細胞の培養

【0096】
6)精原幹細胞培養に対する培養温度の効果
鶏を始めとした鳥類は、哺乳類と違って、体温が高く(41℃)、精巣が体内に存在する。したがって、正常的な細胞培養温度である37℃と、鶏の体温である41℃とで精巣細胞を培養して、精原幹細胞の数の変化を観察した結果、37℃で精原幹細胞が約2.2倍よく培養されることが確認された(参照:表6、図7)。これは、マウスの場合、37℃と体外精巣最適温度の32℃とにおいて有意的な差がなかったこととは対照的である(Naganoら、2003)。
【0097】
[表6]
培養温度による鶏精原幹細胞の数

【0098】
7)鶏精原幹細胞の成長曲線
マウスを始めとした哺乳動物の精原細胞は、分離時、制限された数の細胞を分離するしかなく、体外培養時、多い精原細胞が死んでしまうため、精原細胞の培養が難しい。鶏を始めとした鳥類の精原幹細胞も同様な様相を示すが、ただ、マウスよりは多い数の精原幹細胞を分離することができるという長所がある。鶏の精原幹細胞は、基底細胞依存型であるため、生殖器基質細胞(GSC)と共に培養し、マウスの場合よりは相対的に多い数の精原幹細胞が存在する(約0.08%)ため、例え培養中に少なくない数の精原幹細胞が死んでも、細胞の数を測定することができた。
【0099】
約10日間隔に培養しながら継代した結果、3回の継代までは、細胞の数が漸進的に増加したが、その後は、多い数の精原幹細胞が死ぬことが分かった(参照:図8)。実際に、パッセージ4以後は、多い数の精原幹細胞が細胞死滅化過程を経ることにより、全体細胞数は減少し、一部の精原幹細胞のみが継続的に分裂する現象を示した。
【0100】
8)鳥類精原幹細胞の長期培養条件の確立
鶏を始めとした鳥類の精原幹細胞の培養、特に長期培養に関する研究は、全くない状態であって、ただ、マウス(Naganoら、2001; Kanatsu-Shinoharaら、2003)と牛(Izadyarら、2003)などの精原幹細胞を約5ヶ月間培養したという報告が全てである。一方、大部分の精原幹細胞は、培養初期に多い数が死んでしまうため、培養に困難がある。
【0101】
鶏の精原幹細胞培養のために、初期培養時、全体精巣細胞を培養皿で約10日間培養した後(参照:図9のa及びb)、コロニーの形成された精原幹細胞を分離し、基底細胞の用意された培養皿で培養する方法を取った(図9のc及びd)。培養初期には、主にセルトリ細胞などが先に育ち始めながら、3〜4個の細胞から構成された小さなコロニーを形成したが(図9のb)、精原幹細胞を回収して生殖器基底細胞(GSC)と共に培養した時、精原幹細胞の数が急激に増加した(図9のc)。また、継代後にもコロニーを形成しながら成長して、3ヶ月以上の長期間の体外培養が可能であることを確認した(図9のd)。したがって、基底細胞及び分離する鶏の週齢により培養期間または精原細胞の状態に少し差があるが、本発明により、約5ヶ月間の長期培養が可能になる。即ち、2〜4週齢の鶏から分離した精原幹細胞が、5〜8週齢から分離した精原幹細胞に比べ、細胞の培養様相が異なって長期培養が難しいが、これは、5週齢以後から起こるタイプB精原細胞への分化と関連があると判断される。
【0102】
9)免疫細胞化学的方法を利用した精原幹細胞特性の糾明
鶏を始めとしたマウス及びラット、そして哺乳動物のタイプA精原幹細胞を区別できる確実な形態学的、分子化学的マーカーがないため、多様な研究が試みられている。マウスにおいて、生殖細胞(gonocyte)と精原細胞(spermatogonia)とに特異的なα6−インテグリン及びβ1−インテグリン表面マーカーに対する報告があり(Shinoharaら、1999)、これに基づき、鶏のα6−インテグリン及びβ1−インテグリンに対する抗体とPAS染色、そしてレクチン類であるSTAを利用し、初期分離した精巣細胞と培養された精原幹細胞とを利用して反応様相を観察した。
【0103】
(i)PAS染色
鶏の始原生殖細胞(PGC)及び胚芽生殖細胞(EG cell)の場合、細胞質内に存在する多量のグリコーゲンのため濃い紫色に染色されて、他の細胞との区別が可能である(Meyer、1964; Parkら、2000)。特に、胚芽生殖細胞の場合、長期間培養の後もPASに特異的に染色される傾向がある。
【0104】
たとえ同じ発生学的段階ではないものの、鶏の精原幹細胞も始原生殖細胞由来の細胞であるため、PASキットを利用して染色した結果、PGCやEG cellのように濃い紫色に染色された。特に、4週齢と9週齢との異なる精巣から分離して継代し、継代した後も精原幹細胞に特異的に染色される様相を示し、他のセルトリ細胞や基底細胞との区別が可能であることを示した(参照:図10)。
【0105】
(ii)STA−FITC及びDBA−FITC染色反応
レクチン類に対する鶏精原幹細胞の特異的な反応様相を糾明するために、DBA(Doliclos bifflrus agglutinin)、STA(Solanum tubersum agglutinin)WGA(Triticum vulgaris agglutinin)、ConA(Canavalia ensiformis agglutinin)などのレクチンを利用した結果、WGAは、精原幹細胞と基底細胞に、そしてConAは、ほとんどが基底細胞に反応した。特に、STAは、基底細胞ではなく、精原幹細胞に特異的に反応したが、長期間の培養後にも(パッセージ8)同一な染色様相を示し、精原幹細胞の特異マーカーとして使用が可能であると判断される(参照:図11a)。このような結果は、STAが認識する(N−アセチルグルコサミン)3が鶏精原幹細胞に特異的に存在するということを意味する。また、DBAも精原幹細胞に特異的に反応したが、長期間の培養後にも(パッセージ3)同一な染色様相を示し、精原幹細胞の特異マーカーとして使用が可能であると判断される(参照:図11b)。
【0106】
一方、Izadyarら(2002)が、同じレクチン類であるDBAが牛の精原幹細胞に特異的に反応して、精原幹細胞の純水分離及び異種間移植後に種間区別マーカーとして使用できることを立証したように、本実験の結果から、STA及びDBAレクチンは、鶏の精原幹細胞の純水分離及び異種間移植後の種間区別マーカーとして使用できると期待される。
【0107】
(iii)鶏精原幹細胞のα6−インテグリン及びβ1−インテグリン反応
α6−インテグリン及びβ1−インテグリンは、一般細胞においてヘテロダイマーを成して、細胞内外の信号伝達に中枢的な機能を担当する。特に、α6−インテグリン及びβ1−インテグリンは、マウスの精原幹細胞の表面から発現する特異的なマーカーとしての利用が可能である(Shinoharaら、1999)。
【0108】
一方、鶏のα6−インテグリン及びβ1−インテグリンを精原幹細胞に適用した結果、鶏の精原幹細胞においても特異性を示し、精原幹細胞のマーカーとしての可能性を示した(参照:図12及び13)。特に、α6−インテグリンの場合、β1−インテグリンに比べ、細胞面にさらに特異的に染色される様相を示した。精原幹細胞の細胞膜透過タンパク質であるα6−インテグリン及びβ1−インテグリンにより、基底細胞から分泌される成長因子または抑制子の影響を受けて、精原幹細胞の全般的な信号伝達、即ち、分化または細胞死滅化の信号伝達に影響を及ぼすと考えられる。
【0109】
(iv)SSEA−1、SSEA−3、及びSSEA−4染色
SSEA−1、SSEA−3、及びSSEA−4は、マウスの精原幹細胞に対するマーカーとして既に知られているが、鶏精原幹細胞に対する特異マーカーとしての用途は、知られていない。図14から分かるように、鶏精原幹細胞は、SSEA−1、SSEA−3、及びSSEA−4を発現することが観察されて、TSC(testicular stromal cell)は、抗−SSEA−1、抗−SSEA−3、及び抗−SSEA−4により、全く免疫染色されないことが観察された。したがって、SSEA−1、SSEA−3、及びSSEA−4は、鶏精原幹細胞に対する特異マーカーとして利用できることが分かる。
【0110】
(v)二重免疫染色
図15から分かるように、鶏精原幹細胞は、抗−SSEA−1及びFITC−STAにより二重染色された。
【0111】
上述した培養過程及び同定過程により鶏精原幹細胞として糾明された細胞をchSSCと命名し、韓国細胞株研究財団に2003年6月14日付にて寄託して、寄託番号KCLRF−BP−00080を付与された。
【0112】
以上、本発明の特定な部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、これらに本発明の範囲が限定されないことは明らかであって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。
【0113】
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【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】鶏精巣組織の分解方法条件による細胞生存率を示すグラフであって、処理1は、2段階酵素処理方法、処理2は、van Pelt(1996)方法、処理3は、コラゲナーゼ−トリプシン処理方法である。
【図2】基底細胞による鶏精原幹細胞の培養様相を示すグラフである。2次培養した精原幹細胞をそれぞれの基底細胞と共に共培養した後、8日目に精原幹細胞の数を観察して比較した。
【図3】培養液組成による鶏精原幹細胞のコロニー数を比較したグラフである。
【図4】培養液組成による鶏精原幹細胞の培養形態を示す写真である。a〜bは、DMEM−B培地、c〜dは、DMEM−C培地における精原幹細胞に該当する(a,c:100X、c,d:200X)。
【図5】それぞれの成長因子による鶏精原幹細胞のコロニー形成数を比較したグラフである(*:P<0.05)。
【図6】成長因子の組み合せによる鶏精原幹細胞数の変化を示すグラフである(*:P<0.001)。
【図7】培養温度による鶏精原幹細胞数の変化を示すグラフである。
【図8】体外培養時、鶏精原幹細胞の成長曲線に該当するグラフである。
【図9】鶏精原幹細胞の培養様相を示す写真である(200X)。(a)初期培養3日目、(b)初期培養7日目、(c)2次培養(パッセージ1)5日目、(d)約3ヶ月培養した精原幹細胞(パッセージ6の後、20日間培養)
【図10】体外培養した鶏精原幹細胞のPAS(Periodic Acid Shiff's)染色様相を示す写真である(200X)。(a)4週齢鶏の精原幹細胞(パッセージ2)、(b)9週齢鶏の精原幹細胞(パッセージ2)。
【図11a】体外培養した鶏精原幹細胞のFITC−STA染色様相を示す写真である(400X)。3週齢鶏の精原幹細胞(パッセージ2)を利用して、FITC−STA反応した結果、細胞表面にSTAが強く反応し、蛍光を発している。(a):蛍光写真、(b):位相差顕微鏡写真。
【図11b】体外培養した鶏精原幹細胞のFITC−DBA染色様相を示す写真である。(a)及び(b)は、パッセージ0の鶏精原幹細胞に対するものであり、(c)及び(d)は、パッセージ3の鶏精原幹細胞に対するものである。(a)及び(c)は、蛍光写真であり、(b)及び(d)は、位相差顕微鏡写真である。
【図12】体外培養した鶏精原幹細胞のα6−インテグリン抗体に対する反応様相を示す写真である(200X)。3週齢鶏の精原幹細胞(パッセージ1)。
【図13】体外培養した鶏精原幹細胞のβ1−インテグリン抗体に対する反応様相を示す写真である(200X)。3週齢鶏の精原幹細胞(パッセージ1)。
【図14】体外培養した鶏精原幹細胞のSSEA−1、SSEA−3、及びSSEA−4免疫染色結果写真である。Pは、パッセージ数を示し、TSCは、鶏精巣基質細胞を示す。
【図15】体外培養した鶏精原幹細胞をFITC−STA及び抗−SSEA−1抗体で二重染色した結果の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の段階を含む鳥類精原幹細胞の長期培養方法:
(a) 鳥類の精巣を収得する段階;
(b) 前記精巣から精巣細胞ポピュレーション(population)を分離する段階;及び
(c) 前記精巣細胞ポピュレーションに含まれた精原幹細胞を、基底細胞上で、細胞成長因子の含まれた培地で培養する段階。
【請求項2】
前記段階(b)は、コラゲナーゼ、トリプシン、またはこれらの混合物を、前記収得した精巣の組織に処理して行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記段階(b)は、コラゲナーゼ及びトリプシンの混合物を、前記収得した精巣の組織に処理して行われることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記段階(c)において、基底細胞は、繊維芽細胞、生殖器基質細胞、精巣基質細胞、またはマウスSTO細胞株であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基底細胞は、生殖器基質細胞または精巣基質細胞であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基底細胞は、生殖器基質細胞であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞成長因子は、繊維芽細胞成長因子、インシュリン様成長因子−1、幹細胞因子、神経膠由来の神経栄養因子、及びこれらの組み合せからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記培地は、分化抑制因子をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記分化抑制因子は、白血病抑制因子であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記培地は、繊維芽細胞成長因子、インシュリン様成長因子−1、及び白血病抑制因子の混合物を含む補足物を含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記培地は、血清及び抗酸化剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記段階(c)の培養温度は、約37℃であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記鳥類は、鶏、鶉、七面鳥、鴨、鵞鳥、雉、または鳩であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記段階(c)の後に、鳥類の精原幹細胞を同定する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記鳥類精原幹細胞の同定は、(i)PAS(Periodic Acid Shiff's)染色、(ii) STA(Sojanum tuberosum agglutinin)染色、(iii) α6−インテグリン抗体染色、(iv)β1−インテグリン抗体染色、(v)SSEA−1抗体染色、(vi)SSEA−3抗体染色、(vii)SSEA−4抗体染色、(viii)DBA(Doliclos bifflrus agglutinin)染色、または(ix)前記染色方法の組み合せにより行うことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
精原幹細胞の特性を示す鳥類細胞を含むことを特徴とする鳥類精原幹細胞のポピュレーション。
【請求項17】
前記精原幹細胞の特性は、(i)PAS(Periodic Acid Shiff's)染色、(ii) STA(Sojanum tuberosum agglutinin)染色、(iii) α6−インテグリン抗体染色、(iv)β1−インテグリン抗体染色、(v)SSEA−1抗体染色、(vi)SSEA−3抗体染色、(vii)SSEA−4抗体染色、(viii)DBA(Doliclos bifflrus agglutinin)染色、または(ix)前記染色方法の組み合せの陽性反応であることを特徴とする、請求項16に記載の鳥類精原幹細胞のポピュレーション。
【請求項18】
前記鳥類精原幹細胞のポピュレーションは、請求項1〜15のいずれかに記載の方法により得られることを特徴とする、請求項16に記載の鳥類精原幹細胞のポピュレーション。
【請求項19】
次の段階を含む形質転換鳥類の生産方法:
(a) 請求項16〜18のいずれかに記載の鳥類精原幹細胞のポピュレーションに外来遺伝子を転移させる段階;
(b) 前記鳥類精原幹細胞のポピュレーションを受容体の精巣に移植する段階;及び
(c) 前記受容体の子孫を得て、形質転換鳥類を生産する段階。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−501625(P2007−501625A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523124(P2006−523124)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001992
【国際公開番号】WO2005/014802
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(506038154)アビコアー バイオテクノロジー インスティチュート インク (2)
【出願人】(506045679)ソウル ナショナル ユニバーシティー インダストリー ファンデーション (2)
【Fターム(参考)】