説明

鶏卵包装用容器とその製造方法

【課題】 包装作業工程中に鶏卵のサイズ規格に対応する色彩標識を施す作業経費を省いて、生産価格の低減を図る目的で、色彩標識相当部分に前もって着色部を形成した合成樹脂シートを使用することで、安価な鶏卵包装用容器を製造し且つ提供すること。
【解決手段】 合成樹脂シート素材を膨出成型させた、鶏卵収容凹部11を備えた容器本体1と折り曲げ部3を介して該容器本体1と一連に形成される蓋体2とからなる容器であって、成型用の合成樹脂シート素材の製造時に、多色押し出し成型法又は多層押し出し成型法又は表面印刷によって、収容された鶏卵の大きさを表示する色彩標識13が前もって形成されている合成樹脂シート素材5を使用して、所定形状に整形加工された鶏卵包装用容器と、該容器の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に知られている合成樹脂製のシート素材を膨出成型させてなる鶏卵容器に関するもので、容器に収容される鶏卵の大きさに対応して識別用として所定の色彩マークが施されている鶏卵包装用容器と、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる合成樹脂シート素材を膨出成型させてなる鶏卵包装用容器は、周知の如く容器本体と蓋体とが折り曲げ部を介して一連として形成され、容器本体及び蓋体には鶏卵をガタツキなく保持するための鶏卵の外形に沿った収納凹部が形成され、同時に容器の補強のための大小のリブや凹凸が前記収納凹部の壁面や上下面等に設けられている。所定数の収納凹部が纏めて設けられている部位の周囲には、容器本体、蓋体共に周縁鍔部が形成されて、包装工程に於いて折り曲げ部で折り曲げて容器本体の上に蓋体を覆い被せ、容器本体の周縁鍔部と蓋体の周縁鍔部とを当接させて閉蓋し、テープ又は溶接等の手段で封止する。包装工程では封止の前後で名称、生産者、賞味期限、卵重即ち大きさ等の諸情報規格を表示したラベルを封止したり貼着したりするが(特許文献1)、特に卵重については流通時の便宜上LL,L,M等の規格に対応して、包装容器の一部分に色彩標識を施して流通させている。
【特許文献1】特開平2004−75182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の鶏卵包装用容器の色彩標識は、通常、容器本体と蓋体との境界部である折り曲げ部に線状に表示されているものが一般的で、容器の完成後に手書き又は印刷によって施されているが、この手段では包装工程で表示のための作業が一工程増加し、製造経費が増加するとともに、成型後の凹凸に富んだ容器に手書き又は印刷によって色彩標識を施すのは容易ではなく、生産性の観点から非効率的であるという欠点があった。又、包装容器の製造価格引き下げの立場から、原材料のシート素材の厚さは薄くなる一方であるが、度外れた厚さの減少は包装容器の強度低下となり、流通時の事故の原因となると言う解決すべき課題を有していた。
【0004】
そこで、本発明は、成型して鶏卵包装用容器とする前段階の合成樹脂シート素材の状態の時に、成型後に所定の位置に色彩標識が形成されるようなシート素材上の特定部位に前もって彩色を施しておくことで、色彩表示のための余分の工程を無くすると共に、必要に応じ彩色部分によって強度を補充することで、従来の課題を解消し得る鶏卵包装用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明を実施例を示す図面と共通の符号を用いて説明すると、本発明の鶏卵包装用容器は、合成樹脂シート素材を膨出成型させた、鶏卵収容凹部11を備えた容器本体1と、折り曲げ部3を介して該容器本体1と一連に形成されている鶏卵収容凹部22を備えた蓋体2とからなる鶏卵包装用容器であって、容器本体1と蓋体2とを折り曲げ部3で折り曲げて夫々の外周部に形成された容器本体1の周縁鍔部12と蓋体2の周縁鍔部22とを相互に当接させて閉蓋する構造となっており、容器本体1の周縁鍔部12及び/又は蓋体2の周縁鍔部22の一部分又は折り曲げ部3に、合成樹脂シート素材の製造時に多色押し出し成型法又は多層押し出し成型法によって形成されたか、又は表面印刷法によって形成された鶏卵の大きさを表示する色彩標識13が形成されている構成としたものである。
【0006】
又、本発明の鶏卵包装用容器の製造方法は、収容された鶏卵の大きさを表示する色彩標識13がなされている鶏卵包装用容器の製造方法であって、多色押し出し成型法又は2層押し出し成型法によるか、又は表面印刷法によって、容器成型後に前記色彩標識13となるシート上の相当部位に着色部52が形成された合成樹脂シート素材5を得る押し出し成型工程Aと、該合成樹脂シート素材5を、所定形状の容器本体1と蓋体2とが一組となった開蓋状態の鶏卵包装用容器相当部51が多数組連続した状態とする容器成型工程Bと、容器成型後の合成樹脂シート素材5から前記鶏卵包装用容器相当部51を切断分離して鶏卵包装用容器Pcを得る外形切断工程Cとからなる構成としたものである。
【発明の効果】
【0007】
以上の説明から既に明らかなように、本発明の鶏卵包装用容器は、該合成樹脂シート素材の製造時に多色押し出し成型法又は多層押し出し成型法によるか、又は表面印刷法によってシート素材の表面に着色部が形成されているので、シート素材の価格上昇は従来と比較して微少であり、又、大面積のシート素材から一度に多数の開蓋状態の鶏卵包装用容器を製造することができるので、鶏卵包装用容器一枚あたりの製造価格の上昇分は僅少であり、従来の容器成型後の色彩表示等にかかっていた経費と比較して殆ど無視し得る程度であり、極めて低コストで所望する規格の色彩標識付きの鶏卵包装用容器を提供するとともに、全体としての鶏卵の生産経費節減に大きく寄与することが出来る。更に、容器の周縁鍔部又は折り曲げ部に、2層押し出し成型法によって色彩表示が成されている場合、容器のシート素材に強度限界に近い薄い素材を使用しても色彩標識部分の強度補充作用により、破損等の流通時の事故を防止するという効果も有するに至ったのである。
【0008】
また、本発明の鶏卵包装用容器の製造方法によると、該合成樹脂シート素材の製造時に多色押し出し成型法又は多層押し出し成型法によるか、又は表面印刷法によってシート素材の表面に着色部を形成する構成であるので、シート素材の価格上昇は従来と比較して微少であり、又、大面積のシート素材から一度に多数の開蓋状態の鶏卵包装用容器を製造する構成であるので、鶏卵包装用容器一枚あたりの製造価格の上昇分は僅少であり、従来の容器成型後の色彩表示等にかかっていた経費と比較して殆ど無視し得る程度であり、極めて低コストで所望する規格の色彩標識付きの鶏卵包装用容器を提供するとともに、全体としての鶏卵の生産経費節減に大きく寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施するに当たって、原料樹脂はいかなる種類の合成樹脂であってもよいが、通常一般に大量に使用されているPET,PC,PS等が適している。鶏卵包装用容器の基本構造は、鶏卵収容凹部11が形成されている容器本体1と鶏卵収容凹部21が形成されている蓋体2とが折り曲げ部3によって連結されて、複数個の鶏卵を収容する容器を形成する。この鶏卵包装用容器の製造設備は、一般に使用されている多色押し出し成型機、多層押し出し成型機、或いは押し出し成型機と表面印刷機を使用する。後述する第1実施例では図1に示すように、合成樹脂シート素材を製造する押し出し成型工程Aでは多色押し出し成型機を使用する。図は説明のための模式図であるから成型機の本体部分は省略され、押し出し幅も狭く、ノズルNの部分のみが示されている。図ではノズルNはN1からN5まで5分割され、幅の狭いN1,N3,N5からは着色された原料樹脂が押し出され、N2,N4からは基体となる透明な原料樹脂が押し出される。シート状に押し出された樹脂は相互に隣接する着色部52と透明部53との境界部が容着して、所定部分に帯状に着色部52と透明部53とが形成された合成樹脂シート素材5となる。多層押し出し成型機を使用した場合は、着色部52の部位は着色層と透明層との2層構造となり、微少な肉厚状態となって容器として成型されたときに剛性増大に寄与することになる。着色部52が表面印刷法により形成された場合は印刷層が薄いために剛性増大は期待できないが、印刷パターンに変化を持たせ、込み入ったデザインとすることが可能である。この表面印刷による着色部52には、更にその表面にPET又はPC、PS等の薄層を形成被覆してもよい。図2は、製造直後で容器成型工程前の合成樹脂シート素材5の一部拡大斜視図である。同図には容器成型工程後の鶏卵包装用容器相当部51が仮想線aで記入されている。
【0010】
次いで、この合成樹脂シート素材5は、容器成型工程Bで、図3に示すように鶏卵包装用容器相当部51が周縁鍔部12,22及び折り曲げ部3を含めて密に連続して形成される。この場合の容器成型法は真空成型であっても圧空成型であってもよい。次いで外形切断工程Cで、図4に示すように鶏卵包装用容器相当部51と周縁鍔部12,22と共に所定の形状に打ち抜かれて、鶏卵包装用容器Pcとなる。図5にこの製造方法により製造された鶏卵包装用容器を開蓋状態で示す。
【0011】
上記で説明した模式図面では、合成樹脂シート素材5には鶏卵包装用容器相当部51が横方向4列に形成され、縦方向に連続して成型されるので、合成樹脂シート素材5の幅及び着色部52の条数は横方向の列数に合わせて狭くなっている。しかし合成樹脂シート素材5の幅をもっと広くし、横方向の列数も多くして生産性を高めるための工夫をしてもよい。
【0012】
製造された鶏卵包装用容器は、合成樹脂シート素材5の成型時において、着色部(52)が、鶏卵包装用容器の容器本体(1)の周縁鍔部(12)に相当する部位に施されている、より詳しくは、容器本体(1)の折り曲げ部3の反対側の周縁鍔部12に相当する部位に施されているので、鶏卵を収容して閉蓋した状態では周縁鍔部の折り曲げ部3の反対側に色彩標識13となっている最も基本的な形状を有するが、合成樹脂シート素材5を押し出し成型するときに、容器成型後に折り曲げ部3となる位置に着色部52を形成することにより鶏卵包装用容器の折り曲げ部3の部位を色彩標識13とすることが出来る。着色部を表面印刷法により施した場合には任意の部位を色彩標識13とする事が出来ると共に、先述のごとく色彩標識13と印刷パターンに変化を持たせ、込み入ったデザインとすることが可能である。
【実施例】
【0013】
以下本発明の詳細を図に示した実施例に基づき説明する。図1は本発明の第1実施例である鶏卵包装用容器の製造方法を説明するための総括的な概略模式図。図2は同実施例における押し出し成型工程後の合成樹脂シートを示す拡大斜視図。図3は同、容器成型工程後の合成樹脂シートの状態を示す拡大斜視図。図4は同、外形切断工程中の合成樹脂シートと鶏卵包装用容器との状態を示す拡大斜視図。図5はこの製造方法により製造した鶏卵包装用容器の開蓋状態の参考斜視図である。
【0014】
図1に第1実施例の鶏卵包装用容器の製造方法の全体像を概略模式図で示す。Aは多色押し出し成型工程であって、同図は説明のための模式図であるから本体部分は省略され、押し出し幅も狭く、ノズルNの部分のみが示されている。図ではノズルNは5分割され、幅の狭いN1,N3,N5からは着色された原料樹脂が押し出され、N2,N4からは基体となる透明な原料樹脂が押し出される。シート状に押し出された樹脂は相互に隣接する着色部52と透明部53との境界部が容着して、所定部分に帯状に着色部52と透明部53とが形成された合成樹脂シート素材5となる。図2にこの状態のシート素材の一部を拡大して示す。図には次工程で圧空成型されて鶏卵包装用容器相当部51となる状態が仮想線aで示されている。
【0015】
次いで、この合成樹脂シート素材は、容器成型工程Bで、圧空成形法を用いて、図3に示すように鶏卵包装用容器相当部51が周縁鍔部12,22及び折り曲げ部3を含めて密に連続して形成される。そして、次の外形切断工程Cで、図4に示すように鶏卵包装用容器相当部51及び周縁鍔部12,22と共に所定の形状に打ち抜かれて、鶏卵包装用容器Pcとなる。
【0016】
図5にこの製造方法により製造された鶏卵包装用容器を開蓋状態で示す。形状は10個の鶏卵を5列2段に配列収容する容器であって、容器本体1と蓋体2とからなり、容器本体1には鶏卵収容凹部11と周縁鍔部12とが形成され、蓋体2には鶏卵収容凹部21と周縁鍔部22とが形成されている。容器本体1の周縁鍔部12には色彩標識13が形成されている。色彩標識13の色彩は収容する鶏卵のサイズにより決定されており、本実施例では鶏卵サイズがL寸に対応して橙色であるが、鶏卵サイズに対応して決定すれば良く、サイズがLL寸の場合はピンク、L寸の場合は橙、M寸の場合は緑、寸法不揃いの場合は黄と制定されている。
【0017】
以上本発明の代表的と思われる実施例について説明したが、本発明は必ずしもこれらの実施例構造のみに限定されるものではなく、本発明にいう構成要件を備え、本発明にいう目的を達成し、前項に記載した効果を有する範囲内において適宜改変して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の鶏卵包装用容器は、製造価格は従来の鶏卵包装用容器と殆ど同等に安価であり、包装工程に於いて色彩表示のための余分の工程を無くすることが出来るので、全体としての鶏卵の生産経費節減に大きく寄与することが出来る。従って、従来の鶏卵包装容器に代えて使用される可能性はきわめて高い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施例である鶏卵包装用容器の製造方法を説明するための概略模式図。
【図2】同実施例に於ける押し出し成型工程後の合成樹脂シートを示す拡大斜視図。
【図3】同、容器成型工程後の合成樹脂シートの状態を示す拡大斜視図。
【図4】同、外形切断工程中の合成樹脂シートと鶏卵包装用容器との状態を示す拡大斜視図。
【図5】同、製造方法により製造された鶏卵包装用容器の開蓋状態の参考斜視図。
【符号の説明】
【0020】
1 容器本体
11 同、鶏卵収容凹部
12 同、周縁鍔部
13 色彩標識
14 透明部
2 蓋体
21 同、蓋体の鶏卵収容凹部
22 同、周縁鍔部
3 折り曲げ部
5 合成樹脂シート素材
51 容器成型工程後の鶏卵包装用容器相当部
52 着色部
53 透明部
a 仮想線
Pc 鶏卵包装用容器
A 押し出し成型工程
N 同、工程の押し出しノズル先端部
B 容器成型工程
C 外観切断工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂シート素材を膨出成型させた、鶏卵収容凹部(11)を備えた容器本体(1)と、折り曲げ部(3)を介して該容器本体(1)と一連に形成されている鶏卵収容凹部(22)を備えた蓋体(2)とからなる鶏卵包装用容器であって、容器本体(1)と蓋体(2)とを折り曲げ部(3)で折り曲げて夫々の外周部に形成された容器本体(1)の周縁鍔部(12)と蓋体(2)の周縁鍔部(22)とを相互に当接させて閉蓋する構造となっており、容器本体(1)の周縁鍔部(12)及び/又は蓋体(2)の周縁鍔部(22)の一部分又は折り曲げ部(3)に、合成樹脂シート素材の製造時に多色押し出し成型法又は多層押し出し成型法によって形成されたか、又は表面印刷法によって形成された鶏卵の大きさを表示する色彩標識(13)が形成されている鶏卵包装用容器。
【請求項2】
収容された鶏卵の大きさを表示する色彩標識(13)がなされている鶏卵包装用容器の製造方法であって、多色押し出し成型法又は2層押し出し成型法によるか、又は表面印刷法によって、容器成型後に前記色彩標識(13)となるシート上の相当部位に着色部(52)が形成された合成樹脂シート素材(5)を得る押し出し成型工程(A)と、該合成樹脂シート素材(5)を、所定形状の容器本体(1)と蓋体(2)とが一組となった開蓋状態の鶏卵包装用容器相当部(51)が多数組連続した状態とする容器成型工程(B)と、容器成型後の合成樹脂シート素材(5)から前記鶏卵包装用容器相当部(51)を切断分離して鶏卵包装用容器(Pc)を得る外形切断工程(C)とからなる鶏卵包装用容器の製造方法。
【請求項3】
前記着色部(52)が、鶏卵包装用容器の容器本体(1)の周縁鍔部(12)に相当する部位に施されている請求項2に記載の鶏卵包装用容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−216968(P2007−216968A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35996(P2006−35996)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000124166)
【Fターム(参考)】