説明

鹸味を有するグミキャンディ組成物

【課題】ゼラチン特有の弾力のある食感とジューシーさとを有しながら、断続的な鹸味を同時に味わうことができ、食している間、甘味と鹸味とのコントラストを楽しむことができるグミキャンディ組成物及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】タブレット部とグミキャンディ部とを含有するグミキャンディ組成物であって、タブレット部がグミキャンディ部中に点在しており、タブレット部の主成分がイソマルトであり、タブレット部が食塩を4〜30重量%含有し、グミキャンディ部が水分14〜22重量%であり、グミキャンディ部がゼラチンを5〜13重量%含有し、グミキャンディ組成物が食塩を0.05〜5重量%含有することを特徴とするグミキャンディ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鹸味を有するグミキャンディ組成物に関する。さらに詳しくは無機塩類を含有するタブレットを含有するグミキャンディ組成物に関する。また、本発明は無機塩類を含有するタブレットを含有するグミキャンディ組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グミキャンディは20世紀初頭にドイツで果汁をゼラチンで固めた菓子として発明されて以来、広く人々に親しまれている。現在では主に精製された糖類をベースとし、ゼラチン以外のゲル化剤も使用されるようになり、食感やフレーバーなどに関して多様な商品が開発されてきた。しかし、糖類をベースとすることから全てのグミは甘味を主としている。また、現在も市場の殆どのグミはゼラチンを主なゲル化剤としている。これはゼラチン特有の弾力のある食感のゲルは依然として人気が高いことによる。
【0003】
甘味を主とする食品において、甘味をより強く感じさせたり、飽きさせない味にしたりするためには、鹸味とのコントラストを感じさせることが有効であり、食塩に代表される無機塩類が使用される。好適な例として株式会社ロッテ製塩キャラメルは単品で年間3億円という好調な売上を示している。(非特許文献1参照)
【0004】
ゼラチンはゲル化に際して無機イオンの影響を大きく受けるため、グミキャンディの炊き上げに無機塩類を一定濃度以上で使用した場合はゲル強度が下がり、また弾力が低下してグミキャンディの特徴である噛み応えが低下したり、離水してしまったり、場合によってはグミキャンディの体をなさなくなってしまう。また、無機塩類を配合した場合には無機塩類の吸湿性により“泣き”といわれる現象が起こる。”泣き”とは特許文献1にあるように、特に柔らかいグミキャンディで顕著に問題となる。無機塩類はその吸湿性により”泣き”を起こりやすく、又は助長する傾向にある。
【0005】
上記を理由として、グミキャンディにおいて鹸味を発現させるために無機塩類を使用する場合は、ゲル化剤を多量に使用するか、水分値を極端に下げるか、ゲル化した後に十分に乾燥したグミキャンディの表面に無機塩類を含む組成物を付着させる方法でしか行われて来なかった。しかし、ゼラチンを主なゲル化剤としたグミキャンディの魅力は、その特有の弾力のある食感とジューシーさにあり、これは一定量の水分とゼラチンの存在により発現するものであるため、上記のような方法ではその魅力を失ってしまう。また、”泣き”に関しては依然として問題を残していた。
【0006】
前出の塩キャラメルは前述の通り甘味と鹸味のコントラストを楽しめるが、食塩がソフトキャンディ中に溶解しているため常に甘味と鹸味は同時に発現する。より好適にコントラストを楽しむには鹸味が断続的に発現する程度であることが好ましい。また、該塩キャラメルは、好適に甘味と鹸味とのコントラストを楽しめるが、これはミネラルが均一に存在しているソフトキャンディであり、ゼラチンを含むものの5重量%未満であり、また水分値も低いため弾力性に乏しいことからジューシーさの点で十分満足なものとはいいにくい。
【0007】
特許文献2には長期保存可能な可食性ゼラチンゲルを使用した吸湿性粉末密封用ゲル容器と吸湿性粉末入り食品が提案されているが、該吸湿性粉末入り食品においては食塩を封入する部位が限定されており、初めに噛んだ一度だけ鹸味が発現する。構造を改良しようとしても、人間の通常の一口の大きさの中に複数凹部を設けるのはグミキャンディ部の製造上非常に困難である。また、凹部、蓋部の2通りのグミキャンディ部を作成し、凹部に粉末を入れた後に蓋部を接合させるという非常に複雑な手順を要するため生産性に問題がある。また、該文献における該吸湿性粉末入り食品の長期間の保存とは20℃における7日間程度の耐久性であり、粉末状の食塩をグミキャンディに接触させた場合は食塩に水分が移行してそれより長期の耐久性には問題がある。また、該吸湿性粉末入り食品におけるグミキャンディ部はノンシュガーに限定されており、糖組成にも制約がある。
【0008】
特許文献3にはゼリー状菓子の表面に食塩の結晶粒を付着してなる食品が提案されているが、食塩の結晶粒がゼリー状菓子に埋入しているものの付着性を高める程度のものであって表層に過ぎない。そのため、口に入れてすぐに鹸味が感じられるものの、直ちに消失してしまう。また、該ゼリー状菓子部の水分値が高い場合には、食塩に水分が移行してしまうため製品の耐久に問題がある。
【0009】
特許文献4にはミネラル含有ソフトキャンディが提案されているが、これはミネラルが均一に存在しているソフトキャンディであり、ゼラチンが1〜5重量%、水分が4.5〜6.5重量%であることから、弾力の発現は困難で、鹸味を有するグミを得るために応用することはできない。
【0010】
特許文献5では、食塩を含有させることができる(〔0063〕)グミキャンディの形態(〔0066〕)が記載されているが、前述の通り、ゼラチン特有の弾力のある食感を損なったり、”泣き”の問題があるため、僅かしか配合できないし、単純に配合しただけでは、均一に鹸味を発現してしまうので、好適に甘味と鹸味とのコントラストを楽しむことはできない。
【0011】
特許文献6では食塩を含有するグミキャンディが提案されているが、ゼラチンを主なゲル化剤としないため、ゼラチン特有の弾力のある食感を実現できない。
【特許文献1】特開平10−257854号公報
【特許文献2】特開平8−9901号公報
【特許文献3】特開2003−157号公報
【特許文献4】特開2006−6171号公報
【特許文献5】特開2005−350483号公報
【特許文献6】特開2008−118988号公報
【非特許文献1】2009年食品マーケティング便覧No.2(富士経済)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来の技術を鑑みて、ゼラチン特有の弾力のある食感とジューシーさとを有しながら、断続的な鹸味を同時に味わうことができ、食している間、甘味と鹸味とのコントラストを楽しむことができるグミキャンディ組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の状況を鑑みて、鋭意研究を重ねた結果、鹸味を発現するタブレットをグミ組成物中に点在させることで、ゼラチン特有の弾力のある食感とジューシーさを持ちながら、甘みと、断続的に鹸味を同時に味わうことができ、甘みと鹸味のコントラストが楽しめる菓子を得られることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の(1)〜(3)の3項に関する。
(1)タブレット部とグミキャンディ部とを含有するグミキャンディ組成物であって、
該タブレット部がグミキャンディ部中に点在しており、且つ、該タブレット部の主成分がイソマルトであり、且つ、該タブレット部が食塩を4〜30重量%含有し、且つ、
該グミキャンディ部が水分14〜22重量%であり、且つ、該グミキャンディ部がゼラチンを5〜13重量%含有し、且つ、
該グミキャンディ組成物が食塩を0.05〜5重量%含有することを特徴とするグミキャンディ組成物、
(2)前記タブレット部の木屋式硬度計による硬度が8kg重以上である前記(1)記載のグミキャンディ組成物、
(3)前記タブレット部に使用される食塩の80重量%以上がイソマルトキャンディで被覆されている前記(1)又は(2)に記載のグミキャンディ組成物、
(4)グミキャンディベースを水分が15〜30重量%になるように調整する工程、80℃以下の上記グミキャンディベースに、イソマルトを主成分とし、且つ、食塩を4〜30重量%含有し、木屋式硬度計による硬度が8kg重以上のタブレットをグミキャンディベースとタブレットの合計重量あたり0.2〜20重量%混合する工程、
上記混合工程後直ちに混合物を充填・冷却する工程、
グミキャンディ部の水分が14〜22重量%になるように乾燥する工程
とからなることを特徴とする前記(1)〜(3)いずれかに記載のグミキャンディ組成物の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のグミキャンディ組成物では、弾力のある食感とジューシーさとを有したグミキャンディ部と、鹸味を発現するタブレット部とを断続的に、同時に味わうことができ、甘味と鹸味とのコントラストを楽しむことができる。タブレット部はグミキャンディ部中に点在しているため、鹸味が断続的に発現し、食している間、長時間にわたって甘味と鹸味とのコントラストを楽しむことができる。また、上記の鹸味を発現する食塩はタブレット中に封入してあるので、水分値の高いグミキャンディ部と接触するものが少ないため、吸湿の影響をうけにくく、長期の保存が可能である。
また、本発明によれば、通常のグミキャンディの製造方法に比して複雑な工程を要せず、上記のグミキャンディ組成物を効率よく生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のグミキャンディ組成物は、タブレット部とグミキャンディ部とを含有する。
【0016】
(タブレット部)
本発明に用いられるタブレット部は、主成分がイソマルトであり、且つ、食塩を4〜30重量%含有するものである。
【0017】
前記イソマルトは、水素添加したパラチノースであればよく、三井製糖(株)からパラチニット、還元パラチノースとして販売されているものでもよい。
イソマルトは吸湿への耐性が高いため、タブレット部の主成分とした場合、該タブレットをグミキャンディに混合した際の耐久性が高くなるという利点がある。
イソマルトのタブレット部中における含有量としては、50〜95重量%が好ましく、70〜95重量%がより好ましい。
【0018】
また、前記タブレット部の耐久性は、タブレット部の硬度にも依存し、硬度が高いほど高くなる傾向がある。前記タブレット部の木屋式硬度計による硬度が8kg重以上であることが好ましく、8〜30kg重がより好ましく、10〜25kg重がさらに好ましい。
前記木屋式硬度計とは秤の付いた試料台に試料をのせ、ハンドルを回して加圧アタッチメントを徐々におろして試料を挟み込んでいき、一定の力が加わって試料が圧砕された瞬間の加重(最大加圧重)で、試料の破壊硬度を示す硬度計である。本発明では瞬間の加重を測定するため、硬度計での加圧時のハンドル操作はゆっくりおこなう。勢いよく操作した場合には計測値が大きくでてしまう場合がある。
また、本発明において、前記タブレット部の硬度は、直径5mm、高さ2.0mmの円柱状のタブレットを、その側面部である局面部分を加圧するように木屋式硬度計の試料台に設置して測定されることで得られる値をいう。
【0019】
なお、タブレット部分においてイソマルト以外のものが主成分である場合、あるいはイソマルトが主成分であっても木屋式硬度計による硬度が8kg重未満である場合には、製造中にタブレット部が溶解してしまい、含有していた食塩の作用によりゼラチンゲルの形成を阻害してしまい、所望する食感が、場合によってはグミキャンディ自体が得られない傾向がある。
【0020】
前記タブレット部が含有する食塩は4〜30重量%であり、4重量%未満の場合はタブレット部自身に発現する鹸味が微弱で、グミキャンディ中に点在させても、十分な味覚効果を得られない。含有する食塩が30重量%を超える場合は食塩の吸湿性により製造中にタブレットが溶解してしまい、含有していた食塩の作用によりゼラチンゲルの形成を阻害してしまい、所望する食感が、場合によってはグミキャンディ自体が得られない。
【0021】
本発明に用いる食塩は、食用の塩として流通しているものであればよく、例としては極めて純度の高い塩化ナトリウムが最も多く流通している。塩化ナトリウムは味質の面で優れているが、他の無機イオン化合物を含有するものであってよい。天然塩、すなわち海塩や、岩塩など、多種類のミネラルを含有するミネラル塩も使用できるし、人工的に配合されたものでも構わない。上記無機イオン化合物の例としては塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。
【0022】
また、前記食塩の内、80重量%以上が、表面がイソマルトキャンディに90%以上被覆されたものであることが好ましい。前記食塩のうち80重量%以上をイソマルトキャンディで被覆することで、吸湿性の高い食塩にバリアを施すと共に、タブレット部の硬度を高くしやすくなり、タブレット部の耐久性の一助となる。
前記イソマルトキャンディは、イソマルトを主成分とした通常のハードキャンディでよく、通常のキャンディの製法で作製することができる。例えば、イソマルトを主成分とする混合物を加熱溶解し、必要であれば濃縮し、水分値を1重量%以下にしたものを冷却することで得られる。
食塩のイソマルトキャンディによる被覆は、どのような方法でもかまわないが、例えば、前記イソマルトキャンディの製法において、加熱溶解した混合物に粒径の小さい食塩を分散させるという工程を加えることによってなされ、得られた食塩含有キャンディを粉砕することでイソマルトキャンディに被覆された食塩を得ることができる。
なお、食塩の表面がイソマルトキャンディによって被覆されている状態は、顕微鏡によって目視で確認できる。また、前記のような製造方法で作製されたものであれば得られる食塩の表面はほぼ全面がイソマルトキャンディで被覆されたものとなり、少なくとも90%以上が被覆されたものとなる。
【0023】
前記タブレット部の水分含量は、2重量%未満であることが好ましい。
【0024】
前記タブレット部の製造方法は、通常のタブレットの製造方法に準じて、イソマルト及び食塩を含む原料を圧縮成形すればよいが、タブレット部の硬度はその配合や使用する粉末の状態、打錠時の圧力などによって影響を受けるので、必要な硬度を得るために適宜選択してやればよい。例えば、タブレット部の硬度を上げるために、増粘多糖類や、澱粉や加工澱粉、デキストリンや、修飾された食物繊維などが併用できるが、逆に例えば打錠用として販売されているイソマルトの粉末に食塩を規定量添加し、1〜3重量%程度の脂肪酸エステル、あるいは脂肪酸塩を滑沢剤として添加して均一に混合し、得られた混合物を回転式打錠機にて圧縮成形したものが使用できるが、前述の通りグミの食感や味に影響しない程度にとどめる必要がある。
【0025】
さらに耐久性を高めるためには、打錠後のタブレット部にコーティングを施しても良い。例えば、疎水性の物質が特に好適で、蜜蝋などの油脂や、シェラックなどの樹脂を挙げることができる。
【0026】
また、製造に問題ない範囲でタブレット部の形状や大きさも適宜選択できるが、一般的な錠剤の形状、即ち半径3〜10mm程度、高さ3〜10mm程度の円筒型に近いものが製造やハンドリング面で特に簡易である。
【0027】
(グミキャンディ部)
本発明で用いられるグミキャンディ部は、水分15〜20重量%であり、且つ、該グミキャンディ部がゼラチンを5〜13重量%含有する。
【0028】
弾力のある食感を発現するため、またジューシーさを供するためのグミキャンディ部の水分は15〜20重量%であり、好ましくは17〜19重量%である。水分値が15重量%未満であると弾力に乏しく、ジューシーさにも欠ける傾向がある。水分値が20重量%を超える場合はグミが緩くなって、弾力が乏しくなると同時に、歯付きにより食感が悪くなったり、耐久性に問題が発生したりするだけでなく、水分移行によりタブレットが溶けてしまう傾向がある。
【0029】
弾力のある食感を発現するためのグミキャンディ部のゼラチン含有量は、5〜13重量%であり、好ましくは8〜11重量%である。含有量が5重量%より低いと弾力に乏しいだけでなく、場合によっては保形性を持たない傾向がある。また、含有量が13重量%を超える場合は、固すぎて食感に劣ってしまう傾向がある。
【0030】
本発明において、前記グミキャンディ部は、一般的なグミキャンディと同様の原料、製法を用いて得られるものであればよく、例えば、糖質を溶解させたキャンディベースに、ゼラチンを溶解させ、必要があれば味や、香り、色をつけることによって製造される。なお、前記キャンディベースにゼラチン等を溶解させて得られるものをグミキャンディベースという。
【0031】
前記糖質は味質の面を鑑みると砂糖が優れるが、特に制限されず、粉末や水飴など様々な形態の、単糖、二糖、少糖、多糖、澱粉や、澱粉加水分解物などの糖類やその還元(水素添加)物、食物繊維やその誘導体が1種類あるいは2種類以上組み合わせて使用できるが、弾力を損なわない範囲で使用する必要がある。例えば、エリスリトールなどの結晶性の高い糖質を使用する場合は、結晶の析出によって弾力のある食感を損なわないために、使用量を少なくしたり、結晶を阻害する他の糖質などを添加したりする必要がある。また、澱粉などの弾力を低下させる多糖も使用量を少なくする必要がある。
【0032】
本発明で用いられるゼラチンは、コラーゲンを含む物質(動物の皮・骨・結合組織など)から抽出・精製されたものであればなんでもよく、由来生物に関しては特に制限されない。例えば、牛骨、豚骨、鶏骨などの獣由来ゼラチンに加えて、水生生物(淡水・海水)由来のゼラチン等が挙げられる。また、ゲル化能力があれば特にブルームも制限されないが、例えば100〜350ブルームのものも使用できる。
【0033】
なお、上記ブルーム値とは、ゼリー強度を示すもので、ゼラチンの6.67重量%水溶液を規定のカップに入れ10±0.1℃の恒温槽で16〜18時間冷却ゼリー化して、ブルーム式ゼリー強度計のプランジャー(直径12.7mm)を4mmだけゼリー中に押し込むのに要する散弾の重さ(g)を測り、この重量をブルーム値として表したものである。
【0034】
また、弾力のある食感を有する範囲内で、食感を調整するためにゼラチン以外のゲル化剤を併用することができる。例えば、ペクチン、寒天、蒟蒻粉、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、アラビアガム、ジェランガム、などの多糖類や、乳・大豆等を由来とするタンパク質などが、1種類または2種類以上併用できるが、いずれも固くなりすぎたり、弾力を低下させてしまったりしない範囲で使用する必要がある。
【0035】
(グミキャンディ組成物)
本発明のグミキャンディ組成物は、前記タブレット部が前記グミキャンディ部中に点在したものであるが、本発明における点在とはタブレット部の成分がグミキャンディ部の水分によって溶解することのないまま、グミキャンディ部と混合した状態を言う。本発明のグミキャンディ組成物は、食塩を含有するタブレット部の点在によって、食塩を0.05〜5.0重量%含有する。グミキャンディ組成物中における食塩の含有量が0.05重量%に満たない場合は、発現する鹸味が微弱で、十分な味覚効果を得られない。また、5.0重量%を超える場合には、発現する鹸味が強すぎて、甘味との相乗効果を得られない。
【0036】
また、本発明において、製造の効率化や、製品の耐久性、官能面での品質向上を目的として、必要があれば種々の食品材料が使用できる。
例としては、小割合の、油脂、香料、呈味料、調味料、酸味料、着色料、乳化剤、酸化防止剤、吸湿防止剤、固結防止剤、食物繊維やその誘導体などが単体やあるいは二種類以上を組み合わせて任意に併用できる
場合によっては各種の、野菜、穀類、果実、海藻類、茸類、鳥獣類、魚類、乳加工品、卵、酵母、香草、香辛料やこれらの加工品、これらの抽出物などの食品素材を単体やあるいは二種類以上を組み合わせて任意に併用できる
これらの食品材料は、前記タブレット部又は前記グミキャンディ部のいずれかに含まれていればよく、各部の製造時に原料としてベース中に配合すればよいが、得られるグミキャンディ組成物の食感や味、タブレット部の耐久性を大きく低下させることがない範囲にとどめる必要がある。
【0037】
本発明のグミキャンディ組成物の製造方法は、次の4つの工程を含むことを特徴とする。
・グミキャンディベースを水分が15〜30重量%になるように調整する工程
・80℃以下の上記グミキャンディベースに、イソマルトを主成分とし、且つ、食塩を4〜30%含有し、且つ、木屋式硬度計による硬度が8kg重以上のタブレットを、グミキャンディベースとタブレットの合計重量あたり0.2〜20重量%混合する工程
・上記混合工程後直ちに混合物を充填・冷却する工程
・グミキャンディ部の水分が15〜20重量%になるように乾燥する工程
【0038】
上記グミキャンディベースは公知の方法で製造できる。例えば、あらかじめ水で膨潤・溶解させておいたゼラチンを、別に用意した糖液と混合することによって得られる。必要であれば、果汁や、酸味料、香料、着色料の添加を行うが、工程中に熱や酸によりゼラチンが劣化し、弾力を失うことのないように注意が必要である。
【0039】
本発明の特徴の一つは、混合後のグミキャンディベースの水分が15〜30重量%になるように調整することにあるが、そうすることによって効率よく、本発明のグミキャンディ組成物を製造することができる。水分が15重量%に満たない場合はグミキャンディベースの混合や充填等のハンドリングが困難になる傾向がある、30重量%を越える場合には製造中にタブレットが溶解してしまい、含有していた食塩の作用によりゼラチンゲルの形成を阻害してしまい、所望する食感が、場合によってはグミキャンディ自体が得られない傾向がある。
【0040】
また、本発明の特徴の一つは、タブレットを混合する際のグミキャンディベースの温度を80℃以下に、且つ、タブレットの硬度を8kg重以上にすることにあり、このようにすることで、製造時のタブレットの溶解を防ぐことができる。
【0041】
また、タブレットをグミキャンディベース中にグミキャンディベースとタブレットの合計重量あたり0.2〜20重量%混合することで、得られるグミキャンディ組成物に所望する鹸味を発現させることができるし、混合や充填等におけるハンドリングの問題もクリアできる。
【0042】
前記混合後は得られた混合物を所望の形状をした容器等に充填して成型することができる。また、充填後に混合物を高温で長時間置いておくとタブレット溶解の危険性が高まるので、直ちに充填し、冷却する。例えば、70℃で混合・充填し、30分以内に40℃程度まで冷却すると、タブレットの溶解を防ぐことができる。本発明においては、混合後直ちに冷却を開始することが好ましい。また、冷却には冷蔵庫・冷凍庫などを使用することができるが、単に室温中で静置しても冷却できる。冷却温度としては、4〜25℃が好ましい。
【0043】
充填・冷却後はグミキャンディ部の水分が15〜20重量%となるように乾燥することで、所望する食感を得ることができる。グミキャンディ部中の水分含量は、グミキャンディ組成物から、グミキャンディ部のみを切り出して、該グミキャンディ部を常法によって確認できる。例えば、真空度750mmHg、80℃の真空乾燥庫にて6時間の乾燥を行い、その前後の質量を測定することで得られる乾燥減量を水分含量としてみなすことができる。
【0044】
以上のようにして、通常のグミキャンディの製造方法に比して複雑な工程を要せず、効率よく本発明のグミキャンディ組成物を得ることができる。
【0045】
本発明のグミキャンディ組成物は、食塩を0.05〜5重量%含有するものであるが、甘味とのコントラストを鑑みると0.5〜4重量%が好ましい。5重量%を超えると塩分の取りすぎにつながってしまう。
【0046】
また、本発明のグミキャンディ組成物中におけるタブレット部の含有量は0.3重量%〜20重量%、グミキャンディ部の含有量は75〜99重量%が好ましい。
【0047】
なお、本発明のグミキャンディ組成物は、食塩を含む特定の組成・物性を有するタブレット部をグミキャンディ部中に点在させている点に特徴がある。
例えば、タブレット部のかわりに食塩そのものをゼラチングミに分散しても添加した場合、グミキャンディ部からの水分によって溶ける可能性があり、保存性の点で問題があるだけでなく、食していてもすぐに食塩は溶けてしまい甘味と鹸味とのコントラストを楽しむことはできにくい。
また、ハードキャンディ中に食塩を含有させて、グミキャンディ部中に点在させた場合には、ハードキャンディへの水分移行によりキャンディ部の耐久性に問題が生じる。
さらに、前記ハードキャンディをシェラックなどでコーティングした場合でも、シェラックなどのコーティング剤に由来する食感、味が感じやすいため、グミキャンディ組成物全体の味を落としてしまうことになる。
したがって、本発明のグミキャンディ組成物は、前記のようなタブレット部を用いることで、初めて、グミキャンディを食している間、甘味と鹸味のコントラストを継続的に楽しむことができるという優れた効果が奏される。
【実施例】
【0048】
以下に本発明を具体的に説明するための実施例を記載するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
【0049】
<タブレットの作製>
タブレットTa〜Thについて、表1に示す割合で原材料を均一に混合し、回転式打錠機PCR−25(ドットボナパーチェ製)にて、打錠直径5mmの平杵(市橋精機製)を使用して打錠した。各タブレットの硬度は打錠の圧力によって調整した。表1の「タブレット部硬度」の欄に、任意の3標本を木屋式硬度計(藤原製作所製)によって測定した平均硬度として示してある。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例1
砂糖(三井製糖製)100重量部と水分25重量%の水飴(日本コーンスターチ製)100重量部とを混合してから加熱し、砂糖が溶解した後水分値8重量%になるまで加熱を続けた。その後、品温が90℃を下回ったのを確認してから、あらかじめ220ブルームのゼラチン(新田ゼラチン製)20重量部を24重量部の水で膨潤・溶解させておいたゼラチン液を添加し、よく攪拌混合した後、クエン酸(ユング製)4重量部とレモン香料(小川香料製)とを混合し、よく攪拌混合した後、加水によって水分を20重量%に調整してグミキャンディベースとした。
上記グミキャンディベース95重量部にタブレットTa5重量部を混合し、直ちにトレイに流し込み、冷却後、室温で20時間乾燥したところ、グミキャンディ部の水分18重量%のグミキャンディ組成物を得た。前記製造条件については、表1に示す(以下の実施例2〜3、比較例1〜5も同様)。
得られたグミキャンディ組成物は弾力のある食感とジューシーさとを有しながら、断続的な鹸味を同時に味わうことができ、食している間長時間にわたって甘味と鹸味とのコントラストを楽しむことができるグミキャンディ組成物であった。また、該グミキャンディ組成物を30℃の恒温槽にて2ヶ月保管したところ、製造直後と変わらぬ外観と食味を有していた。
【0052】
比較例1
タブレットの塩分を2重量%に減量し、変わりにイソマルトを増量した(タブレットTb)他は実施例1と同様に行った。弾力のある食感とジューシーさを有する甘いグミキャンディ部ではあったが、鹸味を殆ど感じられなかった。
【0053】
実施例2
タブレットの塩分を8重量%に増量し、変わりにイソマルトを減量した(タブレットTc)他は実施例1と同様に行った。弾力のある食感とジューシーさを有する甘いグミキャンディ部を味わいながら、断続的に好適な鹸味を同時に味わうことができ、食している間長時間にわたって甘味と鹸味とのコントラストを楽しむことができるグミキャンディ組成物であった。
【0054】
実施例3
タブレットの塩分を20重量%に増量し、変わりにイソマルトを減量し、且つ、タブレット部の硬度を8kg重にした(タブレットTd)他は実施例1と同様に行った。弾力のある食感とジューシーさを有する甘いグミキャンディ部を味わいながら、断続的に好適な鹸味を同時に味わうことができ、食している間長時間にわたって甘味と鹸味とのコントラストを楽しむことができるグミキャンディ組成物であった。
【0055】
比較例2
タブレットの塩分を40重量%に増量し、変わりにイソマルトを減量し、且つ、タブレットの硬度を8kg重にした(タブレットTe)他は実施例1と同様に行った。工程中、タブレット部投入後、1分ほどでタブレット部が溶解し始めてしまった。得られたグミキャンディ組成物は、タブレット部が殆ど溶解していた。また、グミキャンディ部も鹸味を有し、且つ、弾力に劣っていた。また、表面にべた付きも認められた。
【0056】
実施例4
タブレットの硬度を15kg重にした(タブレットTf)他は実施例1と同様に行った。弾力のある食感とジューシーさを有する甘いグミを味わいながら、断続的に鹸味を同時に味わうことができ、食している間長時間にわたって甘味と鹸味とのコントラストを楽しむことができるグミキャンディ組成物であった。
【0057】
比較例3
タブレットの主成分をイソマルトからソルビトール(メルク製)に変更した(タブレットTg)他は実施例1と同様に行った。工程中、タブレット部投入後、1分ほどでタブレット部が溶解し始めてしまった。得られたグミキャンディ組成物は、タブレット部が殆ど溶解していた。また、グミキャンディ部も鹸味を有し、且つ、弾力に劣っていた。
【0058】
比較例4
タブレットの主成分をイソマルトから砂糖(三井製糖製)に変更した(タブレットTh)他は実施例1と同様に行った。工程中、タブレット部投入後、1分ほどでタブレット部が溶解し始めてしまった。得られたグミキャンディ組成物は、タブレット部が殆ど溶解していた。また、グミキャンディ部も鹸味を有し、且つ、弾力に劣っていた。
【0059】
比較例5
工程中、タブレットTa投入温度を88℃で行う他は実施例1と同様に行った。タブレット部投入後、1分ほどでタブレット部が溶解し始めてしまった。得られたグミキャンディ組成物は、タブレット部が殆ど溶解していた。また、グミキャンディ部も鹸味を有し、且つ、弾力に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タブレット部とグミキャンディ部とを含有するグミキャンディ組成物であって、
該タブレット部がグミキャンディ部中に点在しており、且つ、該タブレット部の主成分がイソマルトであり、且つ、該タブレット部が食塩を4〜30重量%含有し、且つ、
該グミキャンディ部が水分14〜22重量%であり、且つ、該グミキャンディ部がゼラチンを5〜13重量%含有し、且つ、
該グミキャンディ組成物が食塩を0.05〜5重量%含有することを特徴とするグミキャンディ組成物。
【請求項2】
前記タブレット部の木屋式硬度計による硬度が8kg重以上である請求項1記載のグミキャンディ組成物。
【請求項3】
前記タブレット部に使用される食塩の80重量%以上がイソマルトキャンディで被覆されている請求項1又は2に記載のグミキャンディ組成物。
【請求項4】
グミキャンディベースを水分が15〜30重量%になるように調整する工程、80℃以下の上記グミキャンディベースに、イソマルトを主成分とし、且つ、食塩を4〜30重量%含有し、木屋式硬度計による硬度が8kg重以上のタブレットをグミキャンディベースとタブレットの合計重量あたり0.2〜20重量%混合する工程、
上記混合工程後直ちに混合物を充填・冷却する工程、
グミキャンディ部の水分が14〜22重量%になるように乾燥する工程
とからなることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のグミキャンディ組成物の製造方法。