説明

麺生地用ミキサー及び麺生地のミキシング方法

【課題】 麺類等の麺生地の混練作業工程において、少加水率から多加水率までの麺生地の混練を一台のミキサーで最適に行うことができるようにする。
【解決手段】 底部を半円筒状に形成した攪拌槽の左右の側壁に、左右の回転軸の軸心が一致し且つ左右の回転軸のそれぞれの端部が攪拌槽内に若干突出するようにそれぞれの回転軸を回転自在に支持し、左右の回転軸の攪拌槽内の端部には対向させて回転軸に対して垂直に両方向に延ばした腕木をそれぞれ配設し、左右の腕木の両方向の先端部にはそれぞれ攪拌棒脱着部を設けこの脱着部において左右の対向する腕木の間に攪拌棒を回転自在に支持できるようにするとともに、前記左右の腕木の両方向の脱着部には、螺旋型の攪拌棒Aと平板突出型の攪拌棒Bと十字型の攪拌棒Cと丸棒形状の攪拌棒Dを任意の組み合わせで取り付けられるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、麺類等の製造工程における生地製造の混練工程に使用するミキサーとミキシング方法に関するものであり、特に加水率に応じて小麦粉と水を最適な状態で混合することができる構造とした麺生地用ミキサーと、このミキサーを使用した加水率に応じた適切な麺生地のミキシング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
麺生地の製造に際し、ミキサーを使用して小麦粉と水をミキサーで混練することは従来広く行われているところである。
【0003】
また、加水率に応じてミキサーの構造や攪拌体も工夫されており、その製造しようとする麺類に応じて適当なミキサーを利用するようにしている。
【特許文献1】特開平07−213214号公報
【特許文献2】特開平09−220047号公報
【特許文献3】特開平10−136868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のものはミキサーごとに使用可能な加水率が限定されており、少加水率のものから多加水率のものまでの麺生地を一台のミキサーで適切に混練することはできなかった。また、場合によっては混練過程を2段階として2台の構造の異なるミキサーを使い分けるような方法もとられていた。
【0005】
したがって、加水率の異なる麺生地を製造するためには複数台のミキサーを揃える必要があり、同一箇所において加水率の異なる多種類の麺生地を製造するためには非常に効率が悪かった。
一台のミキサーで少加水率から多加水率までの麺生地の混練を最適に行うことができるようになれば、基本的に必要とするミキサーは一台で済み、非常に効率的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこでこの発明に係る麺生地用ミキサー(請求項1)は前記の課題を解決するために、底部を半円筒状に形成した攪拌槽の左右の側壁に、左右の回転軸の軸心が一致し且つ左右の回転軸のそれぞれの端部が攪拌槽内に若干突出するようにそれぞれの回転軸を回転自在に支持し、左右の回転軸の攪拌槽内の端部には対向させて回転軸に対して垂直に両方向に延ばした腕木をそれぞれ配設し、左右の腕木の両方向の先端部にはそれぞれ攪拌棒脱着部を設けこの脱着部において左右の対向する腕木の間に攪拌棒を回転自在に支持できるようにするとともに、前記左右の腕木の両方向の脱着部には下記A〜Dの攪拌棒を任意の組み合わせで取り付けるようにしたものである。
A:攪拌棒を螺旋状に形成するとともに、その螺旋が略中央部から左右に逆向きとなっているもの(攪拌棒A)
B:攪拌棒のほぼ全長にわたり、板状凸部を設けたもの(攪拌棒B)
C:攪拌棒に所望間隙をおいて、複数の十字型の凸部を設けたもの(攪拌棒C)
D:攪拌棒は任意の直径の円柱状の丸棒であるもの(以下「攪拌棒D」と称する場合がある。)
【0007】
またこの発明に係る麺生地のミキシング方法は、前記課題を解決するために上記ミキサーを使用し加水率に応じて、多加水麺(加水率40%〜50%前後)用の生地を製造する場合は攪拌棒Aと攪拌棒Bを使用して混練(請求項2)し、中加水麺(加水率30%〜42%)用の生地を製造する場合は攪拌棒Aと攪拌棒Aを使用(請求項3)し、また少加水麺(加水率26%〜34%)用の生地を製造する場合は攪拌棒Aと攪拌棒Cを使用して混練(請求項4)するようにしたものである。ここで加水率とは、麺用小麦粉の質量を100%とした際、そこに加える水の質量%を言う。
【発明の効果】
【0008】
攪拌作用の特性が異なる攪拌棒A,攪拌棒B,攪拌棒C及び攪拌棒Dの4種類の形状の攪拌棒を用意し、これらの攪拌棒をミキサーの腕木の両方向の先端に脱着可能に取り付けることができるようにしたので、これらの攪拌棒を適当に組み合わせることにより、一台のミキサーでありながら少加水率から多加水率まで広い範囲の加水率に応じて適切なミキシングを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
攪拌槽の左右の側壁に、左右の回転軸の軸心が一致し且つ左右の回転軸のそれぞれの端部が攪拌槽内に若干突出するようにそれぞれの回転軸を回転自在に支持する。そして、左右の回転軸の攪拌槽内の端部には対向させて回転軸に対して垂直に両方向に延ばした腕木をそれぞれ配設し、左右の腕木の両方向の先端部にはそれぞれ攪拌棒脱着部を設ける。そしてこの脱着部において左右の対向する腕木の間に攪拌棒を回転自在に支持できるようにする。
【0010】
また、攪拌棒としては螺旋型の攪拌棒Aと平板突出型の攪拌棒Bと十字型の攪拌棒Cと丸棒形状のDを用い、これらを製造しようとする加水率に応じて、多加水麺用の生地の場合は攪拌棒Aと攪拌棒Bを使用し、中加水麺用の生地の場合は攪拌棒Aと攪拌棒Aを使用し、また少加水麺用の生地の場合は攪拌棒Aと攪拌棒Cを使用してミキシングする。なお、攪拌棒A〜Dの組み合わせは前記に限定されるものではなく、求める生地により適宜任意に組み合わせ可能である。また、ミキサーとしては常に攪拌棒A〜Dの4種類を準備する必要はなく、そのうちの必要な組み合わせのみを用いればよい。
【実施例1】
【0011】
次に、この発明に係る麺生地用ミキサーの一実施例を図面に基づいて述べる。1は底部2を半円筒状に形成した攪拌槽であり、3は攪拌槽1の左右の側壁である。これらは通常のミキサーと同じである。左右の側壁3には側壁3を貫通してそれぞれの端部4が攪拌槽1内に若干突出するようにした回転軸5が回転自在に支持してある。そして、左右の回転軸5はその軸心が一致するようにしてある。
【0012】
6は左右の回転軸5の端部4に配設した腕木であり、この腕木6は回転軸5に対して垂直であり、また回転軸5を挟んで両方向に延出してある。なお、この延出長さは両方向で等しくてもよく、あるいは異なるようにしておいてもよい。これは後述する攪拌棒7の回転軌跡に影響することになる。また、左右の腕木6は2本の攪拌棒7が平行となるようにするために相対峙するように対向させてある。また腕木6は両方向へ直線状(180度)に設けることを基本とするが、従来公知のように両方向の腕木6を直線状とせずに角度(140度〜160度)をもたしてもよい。
【0013】
左右の腕木6の両方向の先端部には対向させてそれぞれ攪拌棒7の脱着部8が設けてあり、この脱着部8において左右の対向する腕木6の間に攪拌棒7を回転自在に支持できるようにしてある。すなわち、脱着部8は攪拌棒7の両端の軸9の軸受部ともなる。脱着部8としては通常の半割りの軸押えが適用可能であるが、一例を図8に示すと、攪拌棒7の両端の軸9は腕木6の先端を半円筒状とした軸受け部10と半円筒状の軸押え11により回転可能に支持されるようになっている。また、ボルト12により軸押え11は取り外すことができ攪拌棒7が交換可能となっている。なお、必要に応じて軸受け部10と軸押え11と攪拌棒7の軸9の間にブッシュをかましてもよい。13は攪拌槽1の底部2付近の所望位置に配設した突起であり、攪拌棒7との間で混練を補助するとともに、グルテンの発生を促進する役割をする。
【0014】
なお、左右の回転軸5はその回転を同期させるために、それぞれの回転軸5を動力源に連結し、左右の回転軸5(腕木6)が同位相で回転するようする。但し、片方の回転軸5のみを動力源に連結し、他方の回転軸5はフリーにしておいてもよい。この場合は、攪拌棒7の回転により他方の腕木6は回転することになり、この腕木6の回転によりフリーの回転軸5も回転することになるので、左右の回転軸5に若干の位相差が生じ、攪拌棒7が若干捩じれたような形で攪拌槽1内を回転することになる。
【0015】
攪拌棒7の一例を図3〜図7に示す。図3は攪拌棒Aであり、攪拌棒全体を螺旋14状に形成してあるとともに、その螺旋14が略中央部から左右に逆向きとなっている。そして、脱着部8に取り付ける際には、腕木6の回転により攪拌棒Aが麺生地を混練する際に攪拌棒Aの回転により麺生地が攪拌棒Aの両サイドより中心方向に移動する方向に螺旋14の向きが向くようにする。
【0016】
攪拌棒Aはその螺旋14の作用により混練時に麺生地が中央部に移動するようになるため、麺生地をむらなく混練することができる。また、螺旋14には大きな凹凸があるために、麺生地に手揉み風の強弱を加えることができ、グルテンを良く発生させることができる。これは特に、ラーメンに適しており、力強いグルテンを発生させることができる。また、攪拌棒Aの直径を大きくしておくと、麺生地に強い力がかかり、より腰の強い麺生地が得られる。
【0017】
図4と図5は攪拌棒Bであり、攪拌棒全長にわたり、板状凸部15が設けてある。攪拌棒Bはできるだけ攪拌槽1の底部2との間隙を小さくして使用することを目的としているため、板状凸部15には突起13を逃がすための凹部16が形成してある。なお、攪拌槽1の底部2に突起13がない場合には凹部16は不要である。
【0018】
攪拌棒Bを高速回転させると、遠心力により板状凸部15は、回転軸5の回転中心に対し遠心方向を向いて回転する。そのため、攪拌スタート時に水と小麦粉の混ぜ合わせを素早く均一にでき、多加水率の麺生地を調製する場合には特に有効に作用する。小麦粉に均一に水が逸早く混ざることが小麦粉内のタンパク質がグルテンに変化するための必須条件であるからである。
【0019】
図6と図7は攪拌棒Cであり、攪拌棒(円柱状の丸棒)に所望間隙をおいて複数の十字型の凸部17が設けてある。
【0020】
攪拌棒Cは麺生地の加水率が34%程度より少ないときに適するものであり、所望間隔をおいて十字型の凸部17が設けてあるため、攪拌槽1の底部2と十字型の凸部17先端の間隙を5mm程度まで狭くすると、少加水率の麺生地(少加水の場合、麺生地は、バラバラでボソボソである)でも底部2に付着している麺生地を攪拌している間に削り取るため、全く底部に未加水の粉が残らず全体に万遍なく加水することができる。また、底部2に小麦粉が付着していなければ攪拌棒Cと攪拌棒Aを併用することによって、力を小麦粉に加えることができるので、タンパク質をグルテンに変化させることができる。
【0021】
なお、十字型の凸部17は、図示したように小さな四角形の板を十字型に配したものに限られるものではない。例えば、小さな四角形の板の代わりに小さな半球状や円筒状の突起を十字型に攪拌棒(丸棒)の四方に配置したようなものであってもよい。
【0022】
攪拌棒Dはミキサーに従来使用されている丸棒のものである。なお、直径が大きなものほど麺生地に強い力がかかるので、製麺上要望するグルテンの形状によって40mm〜80mmの範囲で適当な直径のものを選択して使用する。そして、攪拌棒Dのみの組み合わせで使用してもよく、あるいは攪拌棒Dを他の攪拌棒A〜Cと組み合わせて使用してもよい。
【0023】
次に、上記した麺生地用ミキサーを使用した本発明の麺生地のミキシング方法を以下説明する。なお、以下のミキシング方法における回転数と時間は小麦粉2袋(50kg)用のミキサー(攪拌槽の大きさ:半径300mm、横幅800mm)の例を示したものであり、攪拌槽の半径に対応した腕木の長さが異なると回転数や時間も異なる。攪拌棒の周速が異なるからである。但し、加水率が高いほど相対的に回転数を低くすることには変わりない。
【実施例2】
【0024】
多加水麺用麺生地のミキシング方法(請求項2)
多加水麺とは加水率がおおよそ40%〜50%程度のものをいうが、以下の実施例では加水率40%〜45%の場合のミキシング方法について説明する。
【0025】
ミキサーに攪拌棒Aと攪拌棒Bを取り付ける。そして、攪拌槽に小麦粉50kgと所定量の水並びにその他必要な材料を入れ、以下(1)〜(4)の要領で混練する。
【0026】
(1)120回転で2分
(2) 60回転で3分
(3) 30回転で3分
(4) 10回転で4分
【0027】
多加水麺の場合、混練棒Bにより特に混練初期において小麦粉と水を均一に混ぜることができ、小麦粉と水が均一に混ざった後は回転数を落とし攪拌棒Aによりグルテンを発生させるようにする。
【実施例3】
【0028】
中加水麺用麺生地のミキシング方法(請求項3)
中加水麺とは加水率がおおよそ30%〜42%程度のものをいうが、以下の実施例では加水率35%〜40%の場合のミキシング方法について説明する。
【0029】
ミキサーに攪拌棒Aと攪拌棒Aを取り付ける。そして、攪拌槽に小麦粉50kgと所定量の水並びにその他必要な材料を入れ、以下(1)〜(4)の要領で混練する。
【0030】
(1)120回転で2分
(2) 60回転で3分
(3) 40回転で3分
(4) 30回転で4分
【0031】
中加水麺の場合、攪拌棒Aのみ一対でも混練初期において小麦粉と水を均一に混ぜることができ、したがってミキシングを攪拌棒A一対のみでもって行うことができる。
【実施例4】
【0032】
少加水麺用麺生地のミキシング方法(請求項4)
少加水麺とは加水率がおおよそ26%〜34%程度のものをいうが、以下の実施例では加水率26%〜30%の場合のミキシング方法について説明する。
【0033】
ミキサーに攪拌棒Aと攪拌棒Cを取り付ける。そして、攪拌槽に小麦粉50kgと所定量の水並びにその他必要な材料を入れ、以下(1)〜(4)の要領で混練する。
【0034】
(1)120回転で2分
(2) 80回転で3分
(3) 60回転で3分
(4) 40回転で3分
【0035】
少加水麺の場合、攪拌棒Cにより攪拌槽1の底部2の麺生地を攪拌すると同時に削り取るために、バラバラでボソボソしている麺生地を次第に一つにまとめることができる。そして麺生地が一つにまとまった後は攪拌棒Aによりタンパク質をグルテンに変化させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る麺生地用ミキサーは、中華麺生地は勿論のこと、その他うどん,そばなどの麺類等、各種加水率の麺生地混練用に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の麺生地用ミキサーの攪拌槽の側面断面図である。
【図2】図1のA′−A′線断面図である。
【図3】攪拌棒Aの正面図である。
【図4】攪拌棒Bの正面図である。
【図5】攪拌棒Bの側面図である。
【図6】攪拌棒Cの正面図である。
【図7】攪拌棒Cの側面図である。
【図8】図2の腕木と脱着部の拡大図である。
【符号の説明】
【0038】
1 攪拌槽
2 底部
3 側壁
4 端部
5 回転軸
6 腕木
7 攪拌棒
8 脱着部
9 軸
10 軸受け部
11 軸押え
12 ボルト
13 突起
14 螺旋
15 板状凸部
16 凹部
17 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部を半円筒状に形成した攪拌槽の左右の側壁に、左右の回転軸の軸心が一致し且つ左右の回転軸のそれぞれの端部が攪拌槽内に若干突出するようにそれぞれの回転軸を回転自在に支持し、左右の回転軸の攪拌槽内の端部には対向させて回転軸に対して垂直に両方向に延ばした腕木をそれぞれ配設し、左右の腕木の両方向の先端部にはそれぞれ攪拌棒脱着部を設けこの脱着部において左右の対向する腕木の間に攪拌棒を回転自在に支持できるようにするとともに、前記左右の腕木の両方向の脱着部には下記A〜Dの攪拌棒を任意の組み合わせで取り付けるようにしたことを特徴とする麺生地用ミキサー。
A:攪拌棒を螺旋状に形成するとともに、その螺旋が略中央部から左右に逆向きとなっているもの(以下「攪拌棒A」と称する場合がある。)
B:攪拌棒のほぼ全長にわたり、板状凸部を設けたもの(以下「攪拌棒B」と称する場合がある。)
C:攪拌棒に所望間隙をおいて、複数の十字型の凸部を設けたもの(以下「攪拌棒C」と称する場合がある。)
D:攪拌棒は任意の直径の円柱状の丸棒であるもの(以下「攪拌棒D」と称する場合がある。)
【請求項2】
多加水麺(加水率40%〜50%前後)用の生地を製造する場合は、請求項1の麺生地用ミキサーにおいて攪拌棒Aと攪拌棒Bを使用して混練することを特徴とする麺生地のミキシング方法。
【請求項3】
中加水麺(加水率30%〜42%)用の生地を製造する場合は、請求項1の麺生地用ミキサーにおいて攪拌棒Aと攪拌棒Aを使用して混練することを特徴とする麺生地のミキシング方法。
【請求項4】
少加水麺(加水率26%〜34%)用の生地を製造する場合は、請求項1の麺生地用ミキサーにおいて攪拌棒Aと攪拌棒Cを使用して混練することを特徴とする麺生地のミキシング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−345788(P2006−345788A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177143(P2005−177143)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(599157158)株式会社ムロフシ (6)
【Fターム(参考)】