説明

黄斑変性、糖尿病性網膜症および糖尿病黄斑浮腫の予防および治療のための組成物および方法

細胞組織の細胞外基質、特にブラッフ膜においてコラーゲン原線維を安定化させ、ブルッフ膜の網膜色素上皮細胞を安定化させる方法が開示される。安定化と組織化は、デコリンのように、コラーゲン原線維を架橋結合および組織化するタンパク質により細胞組織を処理することにより影響される。安定化および組織化の方法は、ブルッフ膜およびブルッフ膜の網膜色素上皮細胞の崩壊の進行を予防、遅延または制限するために、乾燥型黄斑変性の診断の前、間、または後、網膜組織の治療、糖尿病性網膜症および糖尿病性黄斑浮腫の初期段階の診断を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I 関連出願
本願は、2009年12月4日提出の米国仮出願第61/266,705号および2010年4月29日提出の米国仮出願第61/329,410号に基づき優先権を主張するものであり、これらの出願の開示内容を援用する。
【0002】
II 本発明の分野
本発明は、組織安定化をもたらす網膜組織の細胞外基質構造の強化、組織または再変性のための、ならびに、黄斑変性、糖尿病性網膜症および糖尿病黄斑浮腫の発症の遅延または予防するためにブルッフ膜の網膜色素上皮細胞層の安定化および保護のための、目の網膜組織への適用に適する化学組成物に関する。さらに詳細には、本発明は、ブルッフ膜の細胞外基質構造の強化および組織、ならびに脈絡膜と網膜の間の隔壁を維持および強化するためのブルッフ膜の網膜上皮層の安定化および保護に適する化学組成物に関し、(1)網膜上皮細胞の脱離および死滅、(2)脈絡膜血管新生の発症、および(3)加齢黄斑変性の前進的発症を導くブルッフ膜の崩壊を阻害する。
【背景技術】
【0003】
加齢黄斑変性(AMD)は、最も一般的な、慢性の変性黄斑疾患である。加齢黄斑変性は米国の65歳を超える年齢の人の法的盲の第一原因であり、52歳を超える年齢の人では10%、および75歳を超える人では33%に存在する。
【0004】
世界で2000万〜2500万人がAMDに冒されており、老齢人口では急速に増加し続けているとの報告がある。その数は30〜40年後には3倍になると予想される。
【0005】
AMDには、滲出型(滲出性または血管性)および乾燥型(非滲出性、萎縮性または非血管新生性)の2つの型が存在する。滲出型は乾燥型より一般的ではなく、酸素を欠乏した網膜組織へ血液の供給を向上させるために新しい血管が形成されるときに生じる。しかしながら、新しい血管は非常に繊細であり、また容易に破損し、出血して周囲の組織に損傷を与える。中心視力の喪失は突然生じ得、治療しなかった場合、いわゆる円板状変性の原因になります。他の症状としては、歪み、コントラスト感度の低下および色覚の減少があげられる。加齢黄斑変性は、滲出型AMDは、乾燥型AMDと関連するブルッフ膜の生化学的および構造的な変化に起因すると考えられている。
【0006】
乾燥型ははるかに一般的であり、ドルーゼンと網膜における色素の欠乏によって特徴付けられる。ドルーゼンは、ブルッフ膜上やブルッフ膜の周囲に形成される、小さな黄色の付着物である。視力の損失は、滲出型に比べてより緩やかで重篤ではない。しかしながら、乾燥型黄斑変性患者の少数は、最終的に網膜色素上皮の地図状萎縮を現し、最良矯正視力の実質的な減少と関連する乾燥型AMDとなる。
【0007】
残念なことに、乾燥型AMDのための実績のある治療法はない。最近のいくつかの臨床試験の結果は、乾燥型AMDへのレーザーの使用を支持するものではない。医師は通常、より危険な滲出型AMDに進行する最初の兆候として乾燥型AMDを観察するかモニターする。上記のように、滲出型AMDの治療は早い段階で行うと最も成功する。適切な治療法を同定することができれば、AMDの発症を予防することさえ可能であると考えられる。
【0008】
AMD
上述したように、AMDには滲出型と乾燥型の2つの異なる型が存在する。乾燥型は滲出型よりも一般的であり、AMD患者の約90%が乾燥型AMDと診断される。滲出型AMDは通常より深刻な視力低下につながる。
【0009】
滲出型AMDは、AMDの人の約10%が発症するが、AMDによる重篤な視力喪失のすべてのうちの約90%を占める(米国国立眼学研究所:National Eye Institute)。
【0010】
滲出型AMDでは、新たな、不完全に形成された血管が(脈絡膜から)網膜の下に成長し、網膜と網膜下腔に血液および体液が漏れる。この漏れは、網膜細胞を死滅させ、中心窩(中心黄斑)の瘢痕化を促進し、瘢痕化は、中心視力の盲点を形成する。
【0011】
乾燥型は、ドルーゼンと網膜の色素の損失によって特徴付けられる。ドルーゼンは、ブルッフ膜の膜状または周囲に由来する小さな黄色の付着物によって特徴づけられる。
【0012】
網膜は、杆体錐体からなる感光層ならびに、光を収集し、視神経、その下の網膜色素上皮およびその下のブルッフ膜と呼ばれる基底板によって送達される電気的な神経インパルスに変換するそれら神経の結合である、二つの区画であると機能的に考えられる複雑な多層構造であり、脈絡膜と網膜の間の隔壁の強度の維持に共に働く。主要な血管膜である、脈絡膜は、網膜と強膜の間にみられ、網膜の外側半分に対し、主要な血液供給源を提供する。
【0013】
加齢とAMD
加齢は眼を含む身体全体の生物学的変化、関連付けられる。加齢変化がAMDに関連する、しないを問わず、加齢により生じる網膜色素上皮とブルッフ膜との間の結合の変化を認識することが特に重要である。加齢が細胞外マトリックス(ECM)の組成と構造の変化に関連することが知られる。ブルッフ膜の薄膜は、4つのECM層からなり、それぞれコラーゲン、グリコサミノグリカンおよび糖タンパク質を含む。加齢の間に、ブルッフ膜では、内部コラーゲン層の全体的な肥厚、ならびにコラーゲン含量とコラーゲンの空間組織における変化を含む変化が生じる。黄斑した(submacular)ブルッフ膜における非コラーゲンタンパク質の増加を伴う架橋の増加がみられる。いくつかの調査では、グリコサミノグリカンのサイズと含量の増加が報告されている。全体として、ブルッフ膜の組成および構造の変化は、この膜の透過性と拡散性の変化につながる。全体として、AMDの目の異常なECMは、基底層の付着物、基底線(basal linear)の付着物およびその臨床的に明らかな症状であるソフトドルーゼンによって特徴付けられる。
【0014】
糖尿病性網膜症
糖尿病性網膜症は、網膜の微小血管障害であり、毛細血管の漏出と網膜の虚血を含む。複数の生化学的経路は、新血管新生を引き起こす血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の産生を含む血管透過性の増加、および血液網膜障壁の崩壊に関与している。糖尿病性網膜症の進行は加齢に関連し、ブルッフ膜(BM)の構造変化および生化学的変化を伴う
【0015】
1型および2型の糖尿病患者における失明の主要原因である糖尿病性網膜症(DR)、は、網膜内の血管への損傷を生む糖尿病の合併症である。糖尿病性網膜症には、(1)軽度の非増殖性網膜症であり、網膜の血管の毛細血管瘤が生じるもの、(2)中等度の非増殖性網膜症であり、網膜へ血液を供給する血管のいくつかが阻害されるもの、(3)重篤な非増殖性網膜症であり、網膜への多くの血管が阻害され、網膜のいくつかの領域で血液供給が欠乏するもの;および(4)増殖性網膜症であり、新しい異常な薄肉かつ脆い壁の血管が成長して網膜へ血液を供給するが、この新しい血管は血液の漏れを生じ、重症の視力喪失および失明をもたらすもの、の4つの段階がある。出血は、しばしば睡眠中に、複数回発生し得る。液体はまた、糖尿病性網膜症のどの段階でも黄斑の中心に漏れ得、黄斑浮腫および視力障害を引き起こす。糖尿病と診断されたアメリカ人の約40〜45パーセントには糖尿病性網膜症のいくつかの段階があり、増殖性網膜症の人の約半分は黄斑浮腫もある。
【0016】
糖尿病性網膜症および加齢関連黄斑変性などの眼疾患と関連する病因および失明は、不要な血管新生の直接的結果である。眼組織では、血管新生は失明の最も一般的な原因である。増殖性糖尿病性網膜症は、硝子体への網膜血管の侵入によって特徴付けられる。加齢関連黄斑変性は黄斑性の疾患であり、ブルッフ膜を貫通する、脈絡膜血管の上皮増殖による滲出型と区別される。
【0017】
糖尿病性黄斑浮腫
糖尿病性黄斑浮腫(DME)は、網膜の肥厚および/または網膜の中心の1乳頭径以内の硬性白斑として記述される。DMEおよび糖尿病性網膜症(DR)は糖尿病患者の微小血管合併症であり、視力を衰弱させ最終的には失明につながる。DRの患者はDMEを発症し、DMEは拡張型透過性亢進毛細血管(dilated hyperpermeable capillaries)の漏れおよび小動脈瘤による血液網膜関門の破壊後に生じる。DRと同様に、DMEは損傷したまたは乱れたブルッフ膜を貫通する脈絡膜新生血管と関連する。
【0018】
血管形成
血管形成(血管新生とも称する)とは、新しい血管が形成されるプロセスのことである。血管形成は通常胚形成および発生中に生じ、十分に発達した器官においては、創傷治癒および胎盤の発生時に生じる。さらに、血管新生は、糖尿病性網膜症および血管新生に起因する黄斑変性などの眼疾患を含め、さまざまな病的状態で生じる。最近の研究では、RPE細胞の細胞外マトリックスの変化を伴うブルッフ膜の変化は、脈絡膜血管新生の患者におけるVEGFの産生の増加に寄与することが示唆されている(Kwak, et al)。さらに、動物実験により、正常なRPE細胞およびインタクトのブルッフ膜は、脈絡膜からの血管浸潤への物理的または生化学的な障壁を提供することが確認されている(Kwak, et al)。
【0019】
ブルッフ膜
ブルッフ膜は、RPE基底膜、内部コラーゲン層、中間弾性層とおよび外部コラーゲン層で構成される5層構造である。網膜色素上皮(RPE)細胞と脈絡膜との間の細胞外基質の網目構造は、厚みが2〜4μmであり、加齢の間に構造変化および化学的再構成を受けることが知られている。ブルッフ膜は、心臓リズムで変動する脈絡膜流量の結果として圧力誘起応力の一定の周期下にあり、ブルッフ膜の機械的特性はその生理機能に臨界的であり、付着RPEと血管化脈絡膜との間の効果的な障壁として機能し得る。研究により、ブルッフ膜の弾力性は、21歳を超えると加齢とともに年間およそ1%直線的に減少することが示されている。
【0020】
ブルッフ膜と網膜色素上皮細胞
通常の目では、網膜色素上皮(RPE)は、脈絡毛細管(choroiocapillaris)(脈絡膜)から神経網膜を分離するブルッフ膜の内部に六角形の単細胞層を形成する。RPEは、神経網膜、脈絡毛細管およびブルッフ膜の完全性の維持に責めを負う。RPE層の完全性は、ブルッフ膜への適切な付着がある限り維持される。ブルッフ膜における年齢関連性の構造変化とRPEにおける細胞の変化との相関性は知られていないが、ブルッフ膜における構造変化は、RPEにおける細胞の変化に10年または20年先行し得、上層のRPEの付着性、生存性、増殖性および遺伝子発現のプロファイルにおける変化を誘導し得る。この時点では、ブルッフ膜のどの構造的または化学的な変化がRPEの年齢依存性の影響に責めを負うか具体的に知られていない。異常なタンパク質および脂質の堆積、タンパク質基質構造の組織分布の再構成ならびに細胞接着に必要なリガンド結合部位における変化を含む加齢によるブルッフ膜での多くの変化が知られている。
【0021】
ブルッフ膜を修飾するための治療
全身的な透析によりブルッフ膜を改変する試み(Fell, AJ, et. al.)や、正常なバリア機能とRPEの付着性を増加させるためにブルッフ膜を修復する試み(Del Priore, L)または再構築する試み(Tezel, TH, et. al.)がなされている。成功した場合は、ブルッフ膜は、脈絡膜新血管新生(CNV)を防止する能力を取り戻すと考えられる。
【0022】
この数年にわたる、中心網膜(黄斑)の異常な血管を排除するための戦略により、加齢関連黄斑変性症(AMD)の滲出型の患者を有意な比率で救うことができることが分かった。残念なことに、ブルッフ膜の根本的な構造的欠陥が修復されないために、これら血管はしばしば再発する。さらに、(異常な血管のない)乾燥型のAMD患者の網膜色素上皮(RPE)を修復する治療法も、インタクトな単層を変性するためにRPE細胞がこの構造に付着するのを妨げるブルッフ膜の根本的な欠陥のために存在しない。いずれの場合も、宿主細胞または移植細胞で新生血管の異形および/またはRPE単層の再構成を妨げるブルッフ膜の完全性を局所的に修復するための方法が必要である。
【0023】
したがって、ブルッフ膜の局所黄斑の回復は、RPE単層の修復、および視力に必須である隣接する光受容体(杆体および錐体)の保護に重要である。今までは、ブルッフ膜を修復するための実験的な試みは数々の重大な課題によって阻まれてきた。これらの課題としては、網膜および/またはRPEの下に移植した時に炎症または異物生体反応を誘導しない材料の要求、覆う視細胞外節の正確な機構を混乱させずにRPE細胞を付着させ変更のない単層として成長させる材料構成の要求、黄斑の正常な構造的関係を維持するため、および脈絡膜、RPEと網膜との間の生理的に重要な分子の拡散ために十分に薄く多孔性の材料であることの要求、十分な弾性をもつ弾力のある材料であり、網膜下腔に外科的にそのまま送達できるよう過度にもろい材料でないことの要求が挙げられる。他の望ましい品質は生分解性である。
【0024】
米国特許出願公開第2009/0306772号明細書は、RPEとその下の脈絡毛細管板との間の一時的な構造上の障壁の移植を開示しており、その足場は、これら宿主構造を新しい基底膜構造に載せ、維持させる鋳型として機能し、もとのブルッフ膜に有効に類似する。この発明はブルッフ膜のin situな修復のための方法を開示し、当該構造は目のRPEを覆い、滲出性の(滲出型)AMDおよび萎縮性(乾燥型)AMDの両方において初期の基本的な損傷の部位を構成する。特定の態様において、本発明は、被験者の網膜下腔(例えば、ヒト対象)にこれらの構造体の移植を介して網膜疾患の治療のための高分子足場を採用する。RPEとその下の脈絡毛細管板との間の一時的な構造上の障壁を形成することにより、その足場は、これら宿主構造を新しい基底膜構造に載せ、維持させる鋳型として機能し、もとのブルッフ膜に有効に類似する。
【0025】
眼の外側の層でECMの構成
細胞外基質組織は、ブルッフ膜、網膜の光受容体と網膜色素上皮の下にある多層結合組織において優勢である。ブルッフ膜は、コラーゲン、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、および糖タンパク質で構成されている。コラーゲンとしては、タイプI、III、IV、V、およびVIが挙げられる。プロテオグリカンとしては、デコリンが挙げられる。グリコサミノグリカンとしては、コンドロイチン硫酸とデルマタン硫酸が挙げられる。糖タンパク質としては、ラミニン、フィブロネクチンが含まれる。
【0026】
デコリンは、網膜組織と、ブルッフ膜で同定されており、ブルッフ膜の発達において重要であること(Hirabayashi, et. al., Medical Electron Microscopy, 36: 136-146, 2003)および網膜神経節細胞の分化において重要であること(Inatani, et. al., Investigative Ophthalmology & Visual Sci.,40: 1783-1791, 1999)が報告されている。
【0027】
小型ロイシンリッチプロテオグリカン
角膜コラーゲン原線維は、タイプXII、XIV、およびXXコラーゲンなどの線維付随性コラーゲン(FACIT)や、デコリン、ルミカン、ケラトカン、フィブロモジュリンおよびエピフィカンなどの小ロイシンリッチリピートプロテオグリカン(SLRP)を含む天然結合巨大分子と関連づけられている。これらの巨大分子は、コラーゲン線維と相互作用することにより、繊維の直径を制御し、ECM組織を安定化する。また、これらは繊維同士の結合に関わることにより、繊維の能力を制限し、互いを滑る。これらのブリッジは、幾分かの柔軟性を許可するが、繊維が移動できる距離を制限する。ECMにデコリンを添加してコラーゲン繊維間にブリッジを形成し、ECMを安定化することが可能かもしれない。プロテオグリカンの添加により、事前のプロテオグリカンの除去に起因する異常なコラーゲン原線維の「成長」を防止することが示されている。
【0028】
デコリン
デコリンは、小型ロイシンリッチリピートプロテオグリカンまたはSLRPSのファミリーのメンバーである。デコリンは、40kDaのコア蛋白質と1コンドロイチン硫酸またはデルマタン硫酸グリコサミノグリカン鎖からなる約100kDaプロテオグリカンである。デコリンは、コラーゲンタイプIおよびII、フィブロネクチン、トロンボスポンジンとTGFβと相互作用する。市販のデコリンまたは動物から抽出したデコリンは、Sigma Chemical Companyその他のバイオケミカル供給業者より入手できる。しかし、本発明者らは、Catalentファーマソリューションズから遺伝子組換えヒトデコリンの蛋白質(Galacorin(登録商標)として知られている)を調達した。最近、デコリンのコアタンパク質が、4〜6個のコラーゲン分子と相互作用し(Orgel, et. al., PlosOne, 4:1-10, 2009)、細胞外マトリックスの構造の間の線維組織を安定させることが示された。
【0029】
デコリンは、組織の安定剤および組織化剤として機能する。デコリンは、人間の角膜のコラーゲン原線維に結合する馬蹄型プロテオグリカンであって、原線維中または隣り合う原線維中の2つの隣接するコラーゲン分子に結合する二座配位子を形成し、原線維の安定化および原線維発生を配向させる(Scott, JE, Biochemistry, 35: 8795, 1996)。デコリンは、コラーゲン線維を特異的結合部位で結合する、細胞外基質に遍在する成分であるようである(Scott, JE, et. al., Exp. Cell Res., 243: 59-66, 1998)。角膜の透明性は、角膜基質におけるコラーゲン線維のサイズと配置に依存する。デコリン結合は、コラーゲン線維の成長を制限し、コラーゲン線維の配列を制御することにより透明性を生成するのに重要である(Rada, JA, et. al., Exp Eye Res., 56: 635, 1993.)。in vitroコラーゲン原線維発生におけるコラーゲンの影響についての研究により、コラーゲン線維の増殖阻害およびコラーゲン線維の直径の増大が示されている(Kuc, IM and Scott, PG, Connective Tissue Res., 36: 287, 1997)。
【0030】
また、デコリンは、いくつかの生物学的/生理学的特性を有し、EGF受容体と細胞増殖の可能性調節のための生物学的リガンド(Iozzo, RV, et. al., J. Biol. Chem., 274: 4489, 1999)、TGFβのダウンレギュレーション(Giri, SN, et. al., Biochem. Pharmacol., 54: 1205, 1997; Westergen-Thorsson, G., et. al., J. Clin. Invest., 92: , 632, 1993)、細胞接着および可能な抗接着効果の阻害(Gu, J. and Wada, Y., J. Biochem (Tokyo), 119: 743, 1996)、癌細胞の阻害(Nash, MA, et. al., Cancer Res., 59: , 6192, 1999)および血管新生の阻害(Grant, et.al., Oncogene, 21: 4765-4777, 2002; Sulochana, et. al., J. Biol. Chem. 280:27935-27948, 2005)などが挙げられる。
【0031】
AMDの治療
上述したように、乾燥型AMDのための実証済みの治療法は無い。しかし、いくつかのアプローチが検討されており、カプセル化された毛様体神経栄養因子(CNTF)産生細胞を用いた光受容体と網膜色素内皮細胞の損失を防止、POT−4(補体成分C−3を阻害)およびエクリズマブ(静脈注入により阻害)を使用して補体カスケードを阻害、血液フィルターを使用するレオフェレーシス血治療による血液治療により、血液から大きい蛋白質、脂肪および他の物質などの過剰分を血液から除去し、黄斑への血流を改善し、潜在的に視力を改善することなどが挙げられる。乾燥型AMDの治療のための他の提案手法としては、抗酸化物質と亜鉛サプリメントの消費が挙げられる。
【0032】
乾燥型AMDと異なり、滲出型AMDについては、FDAによって承認されたまたは調査対象中の薬剤が多数ある。これらの薬剤は、主に血管内皮増殖因子(VEGF)の妨害を通じて血管新生を阻害することによって作用する。これらの薬剤としては、ペガプタニブナトリウム(マクジェン(登録商標))、ラニビズマブ(ルセンティス(登録商標))、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))およびアネコルタブ酢酸エステル(レターン(登録商標))などが挙げられる。
【0033】
特許文献
近視や遠視を修正するために、配布角膜組織にオルソケラトロジーの手順に従って角膜基質を安定化させるためのデコリンの有効性については、米国特許第6,946,440号および7,402,562号、並びに米国特許公開公報2009/0105127号明細書に記載されている。これらの特許において、発明者らは、デコリン、他の小型ロイシンリッチプロテオグリカン、および中断三重らせん分子と繊維関連したコラーゲンが、目の表の角膜へ送達が可能であり、間質コラーゲン線維を架橋することにより再分配角膜組織を安定させることができることを発見した。本発明において、発明者らは、デコリンは、細胞外マトリックスの組織を維持し、細胞外マトリックスの分裂を防ぎ、またはブルッフ膜の細胞外マトリックスを再変性するために、目の裏にある組織に適用できることを発見した。ブルッフ膜の組織を維持するためのデコリンの適用は、角膜の安定化のための先願とは明らかに区別される。たとえば、角膜へのデコリンの投与は、間質のよく組織され、コラーゲン質の、層状のシートの間にブリッジを形成することにより、その生体力学的安定性を高めることを意図している。ブルッフ膜への送達は、マトリックス組織の維持および安定化、または少なくとも5つのユニークなコラーゲン質層を含有するこの多様な構造の一層以上のマトリックス構造を再変性することを意図している。
【0034】
目の裏へのデコリンの送達は、いくつかの理由により、典型的な投与では達成できない。分子が大きすぎるため、密に組織された角膜上皮と内皮細胞を介して容易に拡散させることができない。より重要なのは、角膜間質において、デコリンはコラーゲン分子の特定のアミノ酸配列に自発的に結合する。したがって、ブルッフ膜への送達を含む適用においては、デコリンは一般的に、生体内への器機の挿入が最小限となる結膜下注射、従来の硝子体内注射、経強膜の送達、嚢下注射、上脈絡膜送達、その他の適当な方法により、直接目の裏またはめの裏の外層に投与しなければならない。
【0035】
国際公開第2005/116066号には、望ましくない血管新生を阻害するのに有用なデコリンペプチドが記載されている(またSulochana, et. al, 2005年にも発行)。ペプチドの血管新生を阻害する特性に基づいて、著者らは、デコリンのペプチドは、黄斑変性症を治療するために使用できることを提案している。同様に、米国特許公開公報2009/0246133号明細書には、血管新生を受けている標的組織に有用な組成物および方法が記載されており、デコリン含む治療部分と組み合わせて血管新生を標的部分から構成される複合体を含み、含糖尿病性網膜症と加齢黄斑変性症の治療に有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
デコリンは、抗血管形成活性を示し、血管新生に関連する糖尿病性網膜症(すなわち、滲出型AMD)、糖尿病性黄斑浮腫とAMDの治療に有用である可能性のあることが知られているが、本発明者らは、デコリンは、組換えヒトデコリンのコアタンパク質を含み、乾燥型AMDの治療または予防に使用できることを発見した。特定の理論に縛られることなく、治療または予防は可能であると信じられている。なぜなら、デコリンはブルッフ膜の細胞外マトリックス(ECM)を安定化および組織(あるいは再組織)し、異常なECMの発症を予防するからである。異常なECMは、最終的には基底層および基底の線形析出とブルッフ膜のソフトドルーゼン形成と解離につながる。この後の段階においてのみ、血管が脈絡毛細管板から出現し、サブRPEやサブ網膜スペースへと打ち破り、滲出型AMD、糖尿病性網膜症、糖尿病黄斑浮腫で観察される血管新生につながる。したがって、乾燥型AMDの治療には、デコリンの抗血管新生特性は関与していない。また、本発明者らは、動物モデルの硝子体にデコリンを注入した場合でも、悪影響の観察に関連付けられていないことを示した。したがって、本発明は、ブルッフ膜の構造および組織を維持するために網膜組織のコラーゲン含有細胞外基質を安定化および安定化させることによりブルッフ膜の分解の進行を予防し、遅延し、または限定する組成物および方法について説明する。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本発明によれば、乾燥型AMDの治療または予防、滲出型AMDの発症の予防、ならびに糖尿病性網膜症および糖尿病黄斑浮腫の予防または遅延のための組成物および方法を開示する。特に、ブルッフ膜を含む、網膜組織のECMを安定化し、組織を維持し、または再組織および安定化するための組成物および方法が開示される。これらの方法は、患者の目に対し、コラーゲン線維を架橋し間線維組織を安定化する小型ロイシンリッチプロテオグリカン(SLRP)分子またはSLRP分子のタンパク質成分であって、薬学的に許容される担体に含まれているものを含有する組成物を投与することを含む。本発明の一つの態様によれば、デコリンコアタンパク質などのタンパク質は、少なくとも2つの異なる線維を結合することによりコラーゲン線維を架橋し、最大6コラーゲン分子に結合することにより、その間にブリッジを形成する。本発明の他の態様によれば、デコリン、ビグリカン、エピフィカン、ケラトカン、ミミカン、フィブロモジュリン、ルミカンまたはこれらの組み合わせなどのプロテオグリカンは、コラーゲン線維を架橋し、線維間や細胞組織を安定化させる。
【0038】
本発明の他の目的や利点は、以下の説明で一部に記載され、一部はその説明から明らかであろう、あるいは本発明の実施によって知ることができる。本発明の目的及び利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘した要素との組み合わせによって実現して達成されるであろう。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、例示および説明に過ぎず、本発明を制限するものではないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】抗血管形成療法のための管状細胞研究の結果を示す図である。
【図2】抗血管形成療法のための管状細胞研究の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明者らは、角膜のECM内、特に重層的なブルッフ膜におけるコラーゲン原線維は、コラーゲンフィブリル構造を架橋結合させ、安定化させる、1個以上のプロテオグリカン分子またはタンパク質を眼に投与することにより安定化、組織化または再組織化することが可能であることを発見した。加えて発明者らは、眼組織内の内皮および上皮細胞層は、眼に1個以上のプロテオグリカン分子またはタンパク質を眼に投与することにより安定化させることも発見した。本発明をより理解され易くするため、特定の専門用語を始めに定義しておく。他の定義は、実施例にて説明する。
【0041】
定義
「加齢黄斑変性(症)」−読書や運転の際に必要なくっきりした中心視に関連した網膜の一部である黄斑の変性。AMDにおいては黄斑に侵されるため、中心視野が失われることもある。AMDには、滲出型(滲出性または血管性)と乾燥型(非滲出性または非新生血管性)の2つの型がある。
【0042】
糖尿病性網膜症−糖尿病性網膜症は、網膜の細小血管障害であり、毛細血管漏出および網膜虚血を含む。新血管新生の生成、血管透過性の増加、血液網膜関門の下落の起因となる血管新生成長因子(VEGF)の生成を含む多様な生化学的経路が関与する。糖尿病性網膜症の進行は、加齢に伴い、ブルッフ膜(BM)の構造的および生化学的変化に関連する。
【0043】
糖尿病性黄斑浮腫(DME)は、網膜の肥大り、および/または網膜の中心の1ディスク直径内の硬性白斑であるであるといわれる。DMEおよび糖尿病性網膜症(DR)は、視力が徐々に低下し盲目へと進行する糖尿病患者の人に見られる細小血管合併症である。DR患者は、DMEを発症することもあり、拡張型高透過性毛細血管や微細動脈瘤の漏出により血液網膜関門が破損し、DMEが発生する。DR同様、DMEも、破損または崩壊したブルッフ膜を貫通する脈絡膜血管新生に関連する。
【0044】
「黄斑」は、詳細な中心視に関与する網膜の小さな高感度の部分である。
【0045】
「ブルッフ膜」とは、細胞外基質成分の5層から成る脈絡膜の最も内側の層である。
【0046】
「網膜」とは、眼の奥の内面で並んでいる感光性の組織である。眼の光学構造は、網膜上に視覚的世界の像を作成し、カメラのフィルムと似た同様の機能を提供する。
【0047】
「網膜組織」とは、ブルッフ膜と脈絡膜を含め、網膜およびその関連組織を包含するために使用されている用語である。
【0048】
「脈絡膜」とは、網膜と強膜との間に存在する眼の結合組織を含む脈管膜である。
【0049】
「強膜」は、眼の不透明で白い部分、すなわちコラーゲンと弾性繊維を含む繊維性の保護のための眼の外側の層である。
【0050】
「血管形成」とは、既存の導管からの新生血管の成長を含む生理学的プロセスである。
【0051】
「新血管形成」とは、赤血球の灌流を有する機能的細小血管網の構造である。
【0052】
「脈絡毛細管枝」とは、脈絡膜内のブルッフ膜に直接隣接する毛細血管の層である。
【0053】
「安定化する」は、組織の剛性、または応力への耐性を高めることを含む。「安定化」には、増加された分子間相互作用によって、あるコラーゲン原線維が、他のコラーゲン原繊維に対して移動できる能力を減らすことも含む。
【0054】
「細胞外基質またはECM」とは、動物細胞に構造的な支持を通常提供すると共に、他の様々な重要な機能を行う動物組織の細胞外部分である。細胞外基質は、動物において結合組織を規定する特徴である。ECMには、コラーゲン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、エラスチン、糖タンパク質およびヒアルロン酸が含まれている。
【0055】
「架橋結合」とは、1個またはそれ以上のコラーゲン原線維間の直接結合および間接結合の両方の形成を含む。直接結合には、あるコラーゲン原線維内のアミノ酸と、別のコラーゲン原線維内のアミノ酸との共有結合を有する。例えば、デコリンは、原線維中または隣り合う原線維中の2つの隣接するコラーゲン分子に結合する二座配位子を形成し、原線維の安定化および原線維発生を配向させる馬蹄型プロテオグリカンである。Scott, JE, Biochemistry, Vol. 35, pages 8795 (1996)。
【0056】
「コラーゲン原線維を架橋結合させるタンパク質」とは、2個以上のコラーゲン原線維と直接または間接架橋結合を形成するタンパク質を含む。
【0057】
「デコリン」は、原線維中または隣り合う原線維中の2つの隣接するコラーゲン分子に結合する二座配位子を形成するタンパク質であれば、どのようなタンパク質も含む。「デコリン」は、グリカンを持たないタンパク質であることが文脈から明確でない限り、デコリンコアタンパク質と、プロテオグリカンの形とを含む。特に、デコリンタンパク質は、REFSEQ番号 NM_001920.3に記述されるヒトデコリン遺伝子の様々な代替結合複写のいずれかによって暗号化したものである。一般的に、ヒトデコリンタンパク質は、サイズにして359アミノ酸であり、そのアミノ酸配列番号は、REFSEQ番号 NP_001911に記述されている。様々な突然変異およびコラーゲンとともにデコリンの相互作用についての効果が説明されてきた。例えば、Nareyeck et al., Eur. J. Biochem., Vo. 271, pages. 3389-98 (2004)に記載されている。また、コラーゲンに結合するその変異型は、De Cosmo et al., Nephron, Vol. 92, pages 72-76 (2002)に記載の179対立遺伝子多型として知られるデコリン変形体なども「デコリン」に含まれる。本発明で使用するデコリンは、様々な動物の組織起源から精製されるか、組換体として作製される。従ってヒトのデコリンだけでなく霊長目の動物、牛、豚、羊、モルモット、ネズミ、ラットを含むがこれに限定しない他の種からのデコリンを本発明の方法に使用することができる。本発明の方法で使用できるヒトデコリンの例としては、Catalent Pharma Solutions社から商業的に利用可能な組換体ヒトデコリンがある。グリコシル化または非グリコシル化形式のデコリンを使用することができる。組換体であろうとタンパク分解断片であろうと、デコリンの断片を、その断片が原線維中または隣り合う原線維中の2つの隣接するコラーゲン分子に結合された二座配位子として機能する限り、特定の実施形態で用いることもできる。
【0058】
ここで使用されている用語「治療」、「治療する」等は、望ましい薬理学的、生理学的効果を得ることを指す。治療は、既に異常があることが知られている患者へ組成物または製品を投与することでもよい。治療は、病気の進行または初期治療と関係する健康状態の予防的手段の一環として組成物または製品を患者に投与することでもよい。外科的手段の環境において、外科的手段の結果を向上させるか、または外科的手段に関係する望ましくない二次的効果を減少させるという目的で、外科的手段を受ける予定のある患者に施されるいかなる治療が予防的手段である。予防的手段の一例として、臓器や組織の移植より前に患者に免疫抑制剤を投与することが挙げられる。ここで使用されている「治療」は、哺乳動物、特に人間の健康状態または組織という意味を含み、(a)発症を停止させるなどの疾患または病気の予防、(b)例えば、疾患または病気の後退といった、疾患または病気の軽減、緩和、または改善が含まれる。
【0059】
「薬理学的に許容される担体」は、いかなる抽象的な形の非毒性の固体、半固体、または液体充填剤、希釈剤、封入材料、補助的製剤を指す。「薬理学的に許容される担体」は、使用される適用量および濃度の段階で受容者にとって非毒性であり、製剤の他の材料とも互換性がある。例えば、ポリペプチドを含んだ製剤のための担体は、ポリペプチドにとって有害である酸化剤や他の化合物を望ましくは含まない。適切な担体としては、水、平衡塩類溶液などの緩衝液、ブドウ糖、グリセロール、生理食塩水、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ヒアルロン酸等のヒドロキシプロピルメチルセルロース、そしてそれらの混合物などが含まれるが、これらに限定したものではない。担体は、湿潤剤または乳化剤といった追加薬品を含んでいることもあるが、緩衝剤またはアジュバンドのように製剤の効果を増幅させるものもある。鉱油、パルミチン酸イソプロピル、ポリエチレングリコール、エタノール(95%)、ポリオキシエチレンモノラウレート水溶液(5%)、もしくはラウリル硫酸ナトリウム水溶液(5%)なども局所用担体に含まれる。抗酸化物質、保湿剤、粘度安定剤などの他の材料、または必要あれば他の同様の薬品が追加されることもある。他の薬理学的に許容できる担体の例については、実施例を含む明細書の中で記載する。
【0060】
薬理学的に許容できる塩には、酸付加塩(遊離アミノ基と形成)が含まれ、例えば、塩化水素またはリン酸などの無機酸、または酢酸、マンデル酸、シュウ酸、酒石などの有機酸と形成される。遊離型のカルボキシル基から形成された塩に関しても、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化鉄、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミンおよびヒスチジンなどの有機塩基から得ることができる。
【0061】
代替的に使用される「個体」、「被験者」、「宿主」、「患者」という用語は、ネズミ科の動物、猿人類、ヒト、ネコ科の動物、イヌ科の動物、ウマ科の動物、ウシ亜科の動物、豚、羊、ヤギ、家畜用の哺乳類の動物、スポーツ用の哺乳類の動物、ペット用の哺乳類の動物などの哺乳動物を指すが、これらに限定されない。
【0062】
本発明を更に説明する前に、本発明は特定の実施形態に限定したものではなく、それらは変更されてもよいことを理解されたい。また、本明細書で用いられている用語は、特定の実施形態のみを記載するために用いられているのであって、本明細書に記載されている事は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書に記載の本発明を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
ECMにおいてコラーゲン原線維を架橋結合および組織化させるタンパク質
【0063】
コラーゲン原線維は、間接結合によって架橋結合することができる。本発明のこれらの実施形態では、1個以上のタンパク質がコラーゲン原線維間の中間リンクとして作用している。デコリンは、コラーゲン原線維を間接的に架橋結合させるタンパク質の一例である。本発明の方法に使用するために、デコリンは、通常生理学的に混合可能な緩衝液中で溶解され、懸濁される。デコリンの濃度は、約10〜約5000μg/mlの範囲である。いくつかの実施形態では、濃度は約10〜約500μg/mlの範囲であるのに対して、別の実施形態では、約100〜約5000μg/mlの範囲である。更に別の実施形態では、濃度は約100〜約1000μg/ml、約200〜約900μg/ml、約300〜約800μg/ml、約350〜約700μg/ml、約400〜約700μg/ml、または約400〜約600μg/mlの範囲である。コラーゲン繊維間の架橋を形成することによってコラーゲン原線維を間接的に結合している他のタンパク質を、デコリンについて説明した濃度で使用することもできる。
【0064】
コラーゲン原線維との間で間接的架橋結合を形成するタンパク質のための担体として使用される緩衝材は、重要ではなく、例えば中性pHリン酸塩緩衝材などの、いかなる薬理学的に許容される緩衝材でもよい。他の適切な緩衝材には、HEPES、TRIZMA(登録商標)(Sigma−Aldrich,他のTRIS緩衝材の供給業者でもよい)がある。緩衝材は、pHが約6.5〜約8.5の範囲で、通常、約0.005〜約0.5Mの濃度である。しかしながら、いくつかの実施形態では、pHは約6.8〜約7.6であり、別の実施形態ではpHが約7.0〜約7.4である。
【0065】
本発明の方法で使用するデコリン溶液の例は、無菌かつ非発熱性のものであり、デコリンが濃度約500μg/mlで存在し、pHが約7.2の15mM NaClを添加したリン酸ナトリウム10mMで緩衝化したものである。コラーゲン繊維間の架橋を形成することによってコラーゲン原線維と間接的に結合する他のタンパク質もこの中の製剤で使用することができる。
眼組織において細胞外基質を架橋結合および組織化するタンパク質を管理する方法
【0066】
ブルッフ膜などの組織基質において、コラーゲン原線維を架橋結合させ組織化するタンパク質を、適用するために様々な方法を使用することができる。一つの実施形態では、コラーゲン原線維を架橋結合させるタンパク質を含む溶液が、低侵襲の結膜下注射、硝子体内注射、経強膜送達、テノン嚢下注射、上脈絡膜腔送達または、眼の後にある組織層へタンパク質を含む溶液を送達する他の適切な方法により適用される。注射の技術には、例として38ゲージ顕微針または、他の適切な標準的顕微針、またはブルッフ膜への顕微針を使用した直接注射の使用も含まれる。
【0067】
他の実施形態では、コラーゲン原線維を架橋結合させるタンパク質が、強膜組織へ注入されてもよい。特定の実施形態では、デコリンを含浸され、結膜に装着させたコラーゲンインプラントを用いた経強膜送達によって行われることもあり得る。通常、涙管経由で眼から急速に除去され、強膜組織との十分な接触時間を提供することができないため、この送達技術は、局所性投与とは異なる。
患者の選定
【0068】
本発明の方法は、黄斑変性の段階に応じて部分的に変更される。従って、ある特定の実施形態では、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症および糖尿病性黄斑浮腫の発症の予防は、特定の兆候または症状がない状態での、開示の組成物の投与を含む。乾燥型AMDの兆候や症状には、1個以上の網膜の色素の紛失、ドルーゼの存在、または網膜色素上皮の形状の劣化を含む。滲出型の症状には、中心視、視覚障害、対比感度の低下、色覚の低下を含む。糖尿病性網膜症の症状は、網膜の血管内の微細動脈瘤を含み、これは、後により重症となり、その場合、網膜に血を送る新しい異常かつ薄く脆弱な壁の血管が成長するが、新血管が血の漏れを引き起こし、より重症な失明や盲目に至る可能性もある。出血は1回以上、しばしば就寝中に起こる。流体は、糖尿病性網膜症のどの段階でも黄斑の中心に漏洩することがあり、黄斑浮腫と視覚低下を引き起こす。黄斑浮腫の症状は、網膜の肥大、および/または網膜の中心から1ディスク直径以内での滲出を含む。脈絡膜から発生した新血管形成は、ブルッフ膜からの網膜色素上皮細胞の剥離を含む、ブルッフ膜の組織の崩壊と同様に、滲出型AMD、糖尿病性網膜症、糖尿病黄斑浮腫の兆候または症状である。従って、一態様では、乾燥型AMD予防法は、乾燥型AMDまたは滲出型AMDのいずれもの兆候や症状のない患者に、開示の組成物を投与することを含む。本発明の他の態様では、滲出型AMDを予防する、あるいは滲出型AMDの進行を予防または発症を遅延させる方法は、滲出型AMDの兆候または症状はないが、1以上の乾燥型AMDの兆候または症状のある患者に開示組成物を投与することを含む。さらに別の実施形態は、乾燥型AMDを治療または遅延させるための方法は、1以上の乾燥型AMDの兆候や症状があるが、例えば患者の脈絡膜に新血管形成がみられないなど、滲出型AMDの兆候または症状が見られない患者への開示組成物の投与も含む。同様に、他の実施形態では、糖尿病性網膜症や糖尿病黄斑浮腫を予防、あるいは糖尿病性網膜症や糖尿病黄斑浮腫の進行を予防する方法は、このような盲目の状況の1以上の兆候や症状がみられた場合に、開示組成物の投与を行う。
【0069】
方法は、通常、方法の順序と使用される組成物に関して説明される。様々な数値データが提供され、別に記載のない限り、上限値と下限値との間の、下限値の単位の10分の1の各中間値も、他のいかなる規定の数値と中間値の範囲内が本発明内に含まれることを理解したい。これらのより小さい範囲の上限値と下限値は、個別に小さい範囲に含まれることもあり得、定まった範囲内で明確に除外された範囲を条件として、本発明に包囲する。規定の範囲が1または2の限界を含む場合、これら2または1の限界を除外する範囲も、本発明に含む。
【0070】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される単数形”a”、”an”および”the”は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を有する実施形態を含むことを理解したい。従って、例えば“a subject polypeptide”という表現は、複数形のポリペプチドの意味を含み、“the agent”という表現は、当業者に公知の1以上または同等の試薬または均等物等も指す。
【0071】
別段特記しない限り、本明細書で使用する技術および科学用語はすべて、本発明が属する通常の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。修正および変更が本開示の精神および範囲の範囲内に包含されることが理解される通り、本発明の実施または試験において、本明細書に記載のものと類似のまたは同等の任意の方法および材料を用いることができる。
【0072】
ここで議論されている刊行物は、本願の出願日より前に開示されたものを単に提供したものである。本発明より先に、先発のためにこのような刊行物のほうが先の日に記載されたものであると認めるものであると解釈してはならない。更に、刊行物の提供日が刊行物の実際の発行日とは異なることもあるが、その点に関しては別途確認されたい。
【0073】
以下に説明されている本発明は、一例に過ぎず、本発明の範囲の限定を意図したものという解釈をしてはならない。
【0074】
本発明の実施形態を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0075】
実施例1 ラビットモデル内のデコリンの硝子体内注射の測定
ラビットの硝子体の置換バイオアッセイは、Insight Biomed(Isanti,MN)にて実施された。6匹のラビットの眼が0.5mlのデコリン(10mM NaPO+150mM NaCl pH7.0中、4.74mg/mL)の硝子体内注射を受けた後、続いて等体積の硝子体液の除去が行われた。対側眼は、非駆動制御となった。動物達は、手術後に全身麻酔から回復するまで監視された。48時間後に動物達は、キシラジン(10mg/Kg体重)、ケタミン(50mg/kg体重)、アセプロマジン(0.5mg/kg体重)の筋肉注射によって麻酔をかけられた。眼は、局所2.5%塩酸フェニレフリンと1%トロピカミドを使用することによって拡張された。麻酔から48時間後には、制御および治療下にあったそれぞれの眼は、ラビット硝子体評価尺度(Rabbit Vitreal Grading Scale)により硝子体のサンプルを取得する前に眼炎症と診断されるまでになった。プロパラカイン0.5%は、硝子体の試験用サンプル0.5mlを取得する前に局所に投与された。細胞カウントおよび眼炎症での反応により、炎症反応のテストサンプルの評価が判定された。
【0076】
硝子体細胞カウントが≦100cells/mmおよび/または総合的な平均臨床反応が1以下の場合、被検物質が非炎症であると判断される。機能していない眼は、バイオアッセイのパラメーターによって定義されているように非炎症であると記録される。
【0077】
デコリン(4.74mg/mL)による硝子体内注射後の全6個の眼は、総合的な平均硝子体細胞カウントが2.92cells/mmを示し、また総合的な平均臨床反応が0.28を示した。これらのパラメーターに基づき、検査物質、デコリン溶液は非炎症であると考えられる。
【0078】
実施例2:血管新生抑制試験(CAM法)
Euclid Systemsのために実施された最近の研究により、組換え体ヒトデコリンコアタンパク質の抗血管形成活性が明確に示された。受精卵内の標準的絨毛尿膜(CAM)に抗血管形成活性が確認された。MB Research Laboratories,Spinnerstown,PA(プロジェクト番号10−18858.09)による研究である。血管新生の投与量に関連する抑制を示す結果を以下に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
実施例3.抗血管形成細胞管分析
更なる研究によって、Matrigel Tube Formation Assayにおけるデコリン特性の抗血管形成を評価した。この試験法は、血管形成にとって最も特異的な試験のひとつであり、三次元的構造(管形成)を形成するための内皮細胞の能力を測定するためのものである。管形成の抑制は、直接、抗血管形成に関係している。デコリンは、管形成の重要な抑制物質であり、負の制御以上に高い抑制性を発揮している。抑制は、内皮細胞層の安定化にも血管形成誘導の成長因子にも関係していると考えられている。(図1参照)
【0081】
実施例4.ブルッフ膜の安定化(予測)
ブルッフ膜の安定化および細胞外基質再編に使用されるデコリンの効果を測定するためにD−ガラクトース処理マウスモデルが用いられる。雌C57BL/6マウス(4月齢)が、Charles River(Wilmington, MA)から購入された。動物達は、プラスチックのケージ内において、12時間の明暗サイクルで飼育され、4週間の適応期間が与えられる。5月齢から成る1群が、研究の開始時に屠殺された。2群の動物達には、4週間に渡って毎日、D−ガラクトース50mg/kgの皮下注射を投与した。3群の動物達には、4週間に渡って毎日、D−ガラクトース50mg/kgの皮下注射を投与した。4群の動物達は、4週間に渡ってリン酸緩衝生理食塩水で処理され、5群の動物達は、8週間に渡ってリン酸緩衝生理食塩水で処理された。6群の動物達には、3週間に渡って毎日、D−ガラクトース50mg/kgの皮下注射を投与した後、1週間に渡って毎日、デコリン(4.5mg/ml)の硝子体内注射(0.1ml)を投与した。7群には、7週間に渡って毎日、D−ガラクトース50mg/kgの皮下注射を投与した後、1週間に渡って毎日、デコリン(4.5mg/ml)の硝子体内注射(0.1ml)を投与した。
【0082】
4週間または8週間後に屠殺した後、両眼が摘出され、一方の眼を0.08Mカコジル酸緩衝液、pH7.3内のパラホルムアルデヒド2%およびグルタルアルデヒド2.5%に入れた。各動物の対側眼の水晶体およびRPE/脈絡膜は、切開され、冷凍保存された。側頭から視神経の中心の2x2mmの組織が、電子顕微鏡法に使用される。固定組織は、0.1Mのカコジル酸緩衝液内の1%四酸化オスミウムに後固定され、水分を取り除き、Poly/Bedに包埋され、そして1.0μ検査サンプルとして切開される。検査サンプルには、2%のホウ酸ナトリウムのトルイジンブルーで染色される。超薄切片は切断され、酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛で染色され、電子顕微鏡法によって観察される。
【0083】
電子顕微鏡法観察によって、4〜8週間のD−ガラクトース処理後、ブルッフ膜の厚さの増加と細胞膜破裂が示され、特に8週間の時点ではより肥厚した状態が確認された。逆に、4週間時点の電子顕微鏡法観察では、デコリン処理された動物達(対象試料と同様)に、正常なブルッフ膜の厚さと正常なブルッフ膜組織が確認され、8週間目においては、デコリン処理された動物達(対象試料と同様)に、正常に近いブルッフ膜の厚さと正常なブルッフ膜組織が確認された。この研究は、この動物内において黄斑変性の発症を遅延させたり、逆進させたりするデコリンの有効性を実証することが期待されている。同様の効果が、ヒトの萎縮型の発症を遅延させたり、ヒトの萎縮型AMDに関連する臨界事象を逆転させることが期待されている。
【0084】
実施例5.細胞構造の保存
Euclid Systemsのために実施された最近の研究では、角膜内皮と上皮細胞層を保護し、平均細胞密度を高め、細胞内結合点を改良するデコリンの能力が示されている(Insight BioMed Reports 09PHCE−Eu01/001,002,003)。ブルッフ膜上のRPE層へ外から適用されたデコリンを適用することにより、この重要な細胞層を安定化させ、脈絡膜血管新生の発症を予防または更なる発症を予防する。また、このような細胞安定化は、脈絡膜血管新生の前に起こるRPE細胞破壊に関連のある血管新生成長因子(例えばVEGF)の生成も減少させる。
【0085】
本発明に関する具体的な実施形態を参照して説明したが、当業者は、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行ったり、均等物と置き換えることができるであろう。加えて、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な修正は、本発明の目的、精神、範囲に対して特定の状況、材料、事件の組成、プロセス、処理順序、順序を適合させるために行われてもよい。そのようなすべての修正は、ここに添付されているように請求項の範囲内で行われることを意図したものである。上記の開示を読んだ当業者は、明細書の考察から本発明の他の実施形態が想到され、本発明を実施できるであろう。上記の明細書や例は、典型的なものであり、本発明の真の範囲および趣旨は以下の請求項で示される。
【0086】
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Tezel, TH, Sonmez, K, Del Priore, LV, Kaplan, HJ. Tissue reconstruction in AMD: Breaking the collagen crosslinks increases RPE reattachment rate onto aged inner Bruch's membrane. 2005. ARVO May 1-5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする患者において乾燥型加齢黄斑変性(AMD)を治療、あるいは滲出型AMDの発症を予防するための方法であって、
乾燥型AMDを患う患者の眼の後ろへの注入法により、デコリンおよび薬理学的に許容される担体を含む医薬組成物を投与して、これにより乾燥型AMDを治療あるいは滲出型AMDの発症を予防する方法。
【請求項2】
それを必要とする患者において糖尿病性網膜症を治療、あるいは糖尿病黄斑浮腫の発症を予防するための方法であって、
糖尿病を患う患者の眼の後ろへの注入法により、デコリンおよび薬理学的に許容される担体を含む医薬組成物を投与して、これにより糖尿病性網膜症または糖尿病性黄斑変性の発症を予防する方法。
【請求項3】
それを必要とする患者において乾燥型加齢黄斑変性(AMD)を治療、あるいは滲出型AMDの発症を予防するために使用されるデコリンおよび薬理学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項4】
それを必要とする患者において糖尿病性網膜症を治療、あるいは糖尿病性黄斑浮腫の発症を予防するために使用されるデコリンおよび薬理学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項5】
それを必要とする患者において乾燥型の加齢黄斑変性(AMD)を治療、あるいは滲出型AMDの発症を予防するために使用されるデコリンおよび薬理学的に許容される担体を含む組成物の使用。
【請求項6】
それを必要とする患者において糖尿病性網膜症を治療、あるいは糖尿病性黄斑浮腫の発症を予防するために使用されるデコリンおよび薬理学的に許容される担体を含む組成物の使用。
【請求項7】
前記デコリンが組換え体ヒトデコリンコアタンパク質である、請求項1または2に記載の方法、請求項3または4に記載の医薬組成物、あるいは請求項5または6に記載の使用。
【請求項8】
前記デコリンが低侵襲結膜下注射または従来の硝子体内注射によって適用される請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記デコリンがブルッフ膜に直接適用される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記デコリンがコラーゲン含浸送達システムを用いて経強膜的に適用される請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
乾燥型加齢黄斑変性患者の網膜組織の細胞外基質においてコラーゲン原線維を安定化させる方法であって、
コラーゲン原線維を架橋結合させるプロテオグリカン分子またはプロテオグリカン分子のコアタンパク質と、薬理学的に許容される担体とを含む組成物を前記患者の眼に投与することを含む方法。
【請求項12】
乾燥型加齢黄斑変性患者の網膜組織の細胞外基質においてコラーゲン原線維を組織化させる方法であって、
コラーゲン原線維を架橋結合させるプロテオグリカン分子またはプロテオグリカン分子のコアタンパク質と、薬理学的に許容される担体とを含む組成物を前記患者の眼に投与することを含む方法。
【請求項13】
乾燥型加齢黄斑変性患者のブルッフ膜の細胞外基質においてコラーゲン原線維を安定化および組織化させる方法であって、
コラーゲン原線維を架橋結合させるプロテオグリカン分子またはプロテオグリカン分子のコアタンパク質と、薬理学的に許容される担体とを含む組成物を前記患者の眼に投与することを含む方法。
【請求項14】
滲出型加齢黄斑変性の発症を遅延または制限するために、軽症の乾燥型加齢黄斑変性患者のブルッフ膜の細胞外基質においてコラーゲン原線維を安定化および安定化させる方法であって、
コラーゲン原線維を架橋結合および組織化させるプロテオグリカン分子またはプロテオグリカン分子のコアタンパク質と、薬理学的に許容される担体とを含む組成物を患者の眼に適投与することを含む方法。
【請求項15】
前記組成物は滲出型黄斑変性の発症を予防する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
乾燥型加齢黄斑変性を治療、ならびに滲出型加齢黄斑変性の発症を予防または最小化する方法であって、
架橋結合コラーゲン原線維を架橋結合および組織化させるプロテオグリカン分子またはプロテオグリカン分子のコアタンパク質と、薬理学的に許容される担体とを含む蘇生物を患者の目に投与することを含む方法。
【請求項17】
前記プロテオグリカンまたは前記プロテオグリカンのコアタンパク質は滲出型加齢黄斑変性を遅延させるために血管形成の発症も予防する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記プロテオグリカンまたは前記プロテオグリカンのコアタンパク質は黄斑変性の発症を予防する請求項16に記載の方法。
【請求項19】
患者において黄斑変性を予防するための方法であって、
架橋結合コラーゲン原線維を架橋結合および組織化させるプロテオグリカン分子またはプロテオグリカン分子のコアタンパク質と、薬理学的に許容される担体を含む組成物を前記患者の眼に投与することを含む方法。
【請求項20】
前記プロテオグリカンまたは前記プロテオグリカンのコアタンパク質は滲出型加齢黄斑変性の発症を予防する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
糖尿病性網膜症を治療、ならびに糖尿病性網膜症の発症を予防または最小化する方法であって、
コラーゲン原線維を架橋結合および組織化させ、ブルッフ膜に付着する網膜色素上皮細胞層を安定化させるプロテオグリカン分子またはプロテオグリカン分子のコアタンパク質と、薬理学的に許容される担体とを含む組成物を患者の眼に投与することを含む方法。
【請求項22】
糖尿病性網膜症を治療、ならびに糖尿病性黄斑浮腫の発症を予防または最小化する方法であって、
コラーゲン原線維を架橋結合および組織化させ、ブルッフ膜に付着する網膜色素上皮細胞層を安定化させるプロテオグリカン分子またはプロテオグリカン分子のコアタンパク質と、薬理学的に許容される担体とを含む組成物を患者の眼に投与することを含む方法。
【請求項23】
前記プロテオグリカンまたは前記プロテオグリカンのコアタンパク質は、デコリン、ビグリカン、エピフィカン、ケラトカン、ミミカン、フィブロモジュリン、ルミカンまたはこれらの任意の組み合わせから選択される請求項11〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記プロテオグリカンまたは前記プロテオグリカンのコアタンパク質は、遺伝子組換えヒトデコリンである請求項11〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
全基礎生物は、低侵襲結膜下注射または従来の硝子体内注射によって適用される請求項11〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物は、ブルッフ膜への低侵襲結膜下注射または従来の硝子体内注射によって適用される請求項11〜22のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−512924(P2013−512924A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542217(P2012−542217)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/058856
【国際公開番号】WO2011/069046
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(509352244)ユークリッド システムズ コーポレイション (4)
【Fターム(参考)】