説明

黒鉛電極

【課題】従来の構造様式の電極に比べて転倒確率が格段に低減された電極を提供すること
【解決手段】炭素から成る電極であって、当該電極は、異なる固有熱伝導率を有する、少なくとも2つの異なる領域から成り、外側の領域(A)は電極の基礎部分を形成し、1つまたは複数の内側領域を支持し、最も内側の領域(B)は上方で、領域(A)から突出し、領域(A)よりも低い固有熱伝導率を有している、ことを特徴とする電極

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極と材料片との間の熱導出が改善された、炭素から成る電極に関する。
【背景技術】
【0002】
産業分野では、多くの用途で黒鉛電極が使用されている。これに対する例は、アルミニウム生成および鋼生成、溶融塩の電気分解、化合物の電気分解、熱による析出反応、アーク溶接、測定機器等である。
【0003】
ここで重要な用途は、シーメンス法を用いたポリシリコンの析出である。ここでは高純度の単体ケイ素が、気相から、シリコンロッドの表面に析出される。この場合、析出反応器中で、900〜1200℃に加熱されたシリコン心棒の表面に、水素とハロゲンシランとの混合物または水素含有ケイ素化合物から、単体ケイ素が気相析出される。
【0004】
このシリコンロッドは、この場合、反応器中で一般に高純度の電気黒鉛からなる特別な電極により保持される。電極ホルダで異なる電圧極性を有するそれぞれ2つの心棒は、他方の心棒端部とブリッジにより接続されて閉じた電流回路を形成する。電極及びその電極ホルダを介して電気エネルギーが心棒の加熱のために供給される。その際に、心棒の直径が増大する。同時に、電極は、その先端部に始まり、シリコンロッドのロッド脚部内へ食い込む。シリコンロッドの所望の目標直径に到達した後にこの析出プロセスは完了し、灼熱されたシリコンロッドは冷却され、取り出される。
【0005】
この場合、電極の材料及び形状が特に重要である。この電極は、心棒を保持するため、シリコンロッド中へ電流を伝達するために使用される。さらには、熱伝達のためおよび反応器中で成長するロッドの確実なスタンドとして利用される。より長くかつより重いロッドになる傾向があり、かつこのロッドペアは数百キロの重さになることがあり、この電極だけで反応器中に固定されているため、まさにこの形状および材料特性の選択が極めて重要である。
【0006】
後の用途に応じても、極めて異なる要求がシリコンロッドおよび析出プロセス、ひいては電極に課せられる。
【0007】
例えば、多結晶シリコンが後に、ソーラー用途およびエレクトロニクス用途のためのシリコン断片において使用される場合、シリコンロッドは析出プロセスの間または析出プロセスの後、析出反応器内で倒れてはならない。長くて厚い多結晶シリコンロッドは、析出プロセスの採算性を高める。しかし、反応器内で転倒するリスクも高まる。
【0008】
先行技術による電極は下側部分が円柱状の基体からなり、上側部分は円錐状先端部からなる。この円錐状先端部には心棒を収容するため、および心棒を接触接続させるための中空空間が設けられている。電極の下端部は、この場合、金属電極ホルダ中に置かれ、この金属電極ホルダを介して電流が供給される。このような電極は一般に公知であり、例えばUS5284640号では、ケイ素析出のために使用される。
【0009】
この電極のために原材料として主に黒鉛が使用される。それというのもこの黒鉛は極めて高純度で製造されかつ析出条件で化学的に不活性であるためである。更に、黒鉛は極めて低い比電気抵抗を有する。
【0010】
US6639192号には、従来の形状の黒鉛電極が記載されている。この電極は、円錐状先端部を有する円柱状の基体から成る。この先端部は、心棒を収容および接触接続するための穿孔を有している。この電極は、均一な材料特性を備えた部分、ひいては原材料(ここでは電気黒鉛)から製造される。これは殊に、非常に高い固有熱伝導率を有している。この実施形態の欠点は、析出前および最終直径に達するまでの析出中の転倒率が高いということである。
【0011】
DE2328303号は、先端部を有していない円柱状電極を開示している。支持ロッドはここで、穿孔内に平面上に延在している。このような電極形状は全円柱形状であるので、ロッド直径が小さいときに既に非常に高い熱導出性を有している。直径が小さいときに、ロッドが析出プロセスの間に転倒しないようにするために、電極の熱導出性は低くなければならない。すなわち、電極は直径が小さくなければならず、電極原材料は非常に低い固有の熱伝導率を有していなければならない。今日では通常である厚いロッドはこのような電極形状では析出されない。なぜなら、電極直径が小さく、かつ電極原材料の固有熱伝導性が低いので、厚いロッド直径に必要な高いエネルギーが、ロッド脚部から供給されないからである。
【0012】
多数の層から成る黒鉛電極が、別の領域から知られている。しかし種々異なる層から成るこの装置はここで、化学的転化を最適化することを目的にしている。US3676324号から例えば、円柱状の黒鉛電極が公知である。これは、円筒状の内側部分および外側部分から成る。ここでこの内側部分は非常に高い導電性を有しており、外側部分は多孔質の黒鉛である。この複数の層の目的は、高い電圧損失を回避し、多孔質表面で、高い化学的転化を得ることである。2つの異なる層を有する類似の電極が、GB2135334号から公知である。ここで外側の多孔層は、フッ素を電気分解によって獲得するために用いられる。
【0013】
先行技術から公知の全ての電極の欠点は、電極からシリコンロッドへの移行部で、又は電極付近のシリコンロッド中で、程度に差はあるが、材料の亀裂形成又は剥離する傾向があり、従ってこのシリコンロッドは不安定になることである。
【0014】
転倒したバッチは、大きい経済的な損失を意味する。従って例えば、シリコンロッドの転倒時には、反応器の損失が生じる。転倒したシリコンロッドはここで、反応器と接触することによって汚れ、表面が清掃されなければならない。付加的に転倒したバッチを反応器から取り出すのには高いコストがかかる。この際にケイ素の表面はさらに汚染される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】US5284640号明細書
【特許文献2】US6639192号明細書
【特許文献3】DE2328303号明細書
【特許文献4】US3676324号明細書
【特許文献5】GB2135334号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、従来の構造様式の電極に比べて転倒確率が格段に低減された電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の課題は、炭素から成る電極であって、当該電極は、異なる固有熱伝導率を有する、少なくとも2つの異なる領域から成り、外側の領域(A)は電極の基礎部分を形成し、1つまたは複数の内側領域を支持し、最も内側の領域(B)は上方で、領域(A)から突出し、領域(A)よりも低い固有熱伝導率を有している、ことを特徴とする電極によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の電極の実施形態の例
【図2】従来技術の電極
【発明を実施するための形態】
【0019】
驚くべきことに、異なる熱伝導率を有する材料から成る、異なる複数の領域から成る電極が、従来技術から知られている欠点を有していないことが判明した。
【0020】
本発明の構成要件は、炭素から成る電極である。これは次のような特徴を有している。すなわち電極は、異なる固有熱伝導率を有する、少なくとも2つの異なる領域から成り、ここで外側の領域(A)は電極の基礎部分を形成し、1つまたは複数の内側領域を支持し、最も内側の領域(B)は上方で領域(A)から突出し、領域(A)よりも低い固有熱伝導率を有している、ことを特徴とする。
【0021】
本発明の電極は少なくとも2つの部分、すなわち電極基礎部分(A)および少なくとも1つの、この基礎部分内に組み込まれている別の内側領域(B)から成る。電極は付加的に、領域(A)と領域(B)との間で、さらに別の領域を有することもできる。ここで最も内側の領域は心棒を収容し、電気的に接触接続させる。はめ込み部分および基礎部分はここで、少なくとも2つの異なる原材料から構成される。ここで最も内側のはめ込み部分(領域(B))は、最も低い熱伝導率を有する原材料から成る。別のはめ込み部分は、高い固有熱伝導率を有する原材料から製造される。ここでこの固有熱伝導率は理想的には、内側から外側へ向かって上昇する。
【0022】
本発明の電極は、異なる固有熱伝導率が電極内および表面上で必要とされる全ての用途に使用可能である。有利には本発明の電極は、ポリシリコンの析出時に使用される。
【0023】
異なる材料および異なる熱伝導率から成る異なる領域に区分することによって、電極を最適に、その上に固定される材料、例えばシリコンロッドの成長時の種々異なる要求に適応させることができる。
【0024】
成長の開始時、ひいてはロッド直径が小さい時には、ロッド脚部はまずは、低い熱伝導率を有するはめ込み部分上でのみ成長する。使用されている黒鉛が低い固有熱伝導率を有しているので、はめ込み部分(領域B)を介した熱導出性が低くなり、成長の開始時には、電極全体にわたって、およびその電極保持部にわたって導出される熱は僅かであり、まだロッド直径が小さい場合でも、シリコンロッドへ電極の接続部で高い温度が得られる。過度に低い温度故にエッチングプロセスが生じ得る、ロッド脚部での冷たい領域は存在しない。これによってロッド脚部は迅速に、かつ誤りなく、領域(B)における電極先端部と合体する。
【0025】
これによって、析出プロセスの前または間のロッド直径が小さい場合の転倒が完全に阻止される。
【0026】
析出プロセスが進み、ロッドが厚くなると、ロッド脚部はさらに、はめ込み部分(B)を越えて基礎部分(A)上に、さらに基礎部分内に食い込む。基礎部分の熱伝導率は高いので、ロッド脚部からエネルギーが非常に良好に導出される。これによってロッド脚部での温度勾配および熱的緊張状態が格段に低減される。ロッド脚部で亀裂および陥没が生じることは極めて少なくなる。
【0027】
本発明による電極の種々異なる領域(B)は直接的に電極の製造時に組み込まれてもよく、また取り外し可能または交換可能なはめ込み部分として形成されてもよい。電極が1つの部分から製造される場合、種々異なる領域および材料の移行部もなめらかである。内側領域(B)は有利には上方へ、とがって形成されており、先端部と反対側の終端部によって基礎部分内に差し込まれる。はめ込み部分への基礎部分の接続部は円錐状、円柱状または別の任意の形状を有し得る。実際には、円錐状の差し込み接続部が有利であることが判明している。なぜなら、円錐状の接続部によって次のことが保証されるからである。すなわち、基礎部分とはめ込み部分が機械的に固定された接続部を構成し、良好な熱的接触接続および電気的接触接続を有することが保証される。領域AとBの間では、伝導率を改善するために、添加剤も使用される。
【0028】
電極から突出した、はめ込み部分の終端部が、電極先端部を形成する。この先端部は、心棒を収容および接触接続するための装置を有している。この装置は円柱状、円錐形または別の任意の形状を有することができる。これと相応に、後に析出プロセス内で使用される心棒終端部は円柱状、円錐状または別の任意の、装置に整合する形状を有する。
【0029】
析出反応器内に本発明の電極を収容するためにおよび接触接続させるために、従来技術から既知の任意の電極保持部を使用することができる。電極全体の熱導出率を改善するために、この電極保持部は、付加的な冷却体も有することができる。この冷却体は、基礎部分の下方終端部に配置されている、および/または基礎部分内に突出している。この冷却体は通常は電極保持部の構成部分であり、有利には、1つの部分から電極保持部とともに製造される。材料としては、良好な熱伝導性および導電性を有する材料からの全ての既知の材料が適している。これは例えば金属である。冷却体は適切な熱搬送体、例えば水によって冷却される。重要なのは、基礎部分と冷却体の非常に良好な熱的な接触接続および電気的な接触接続である。これによって高く、かつはめ込み部分の範囲にわたって均一の電気的および熱的な伝導率が生じる。冷却体の形状は任意であってよく、有利には円柱形または円錐形であり、特に有利には円錐形である。
【0030】
本発明の電極によって、ロッドが厚い場合でも薄い場合でも、反応器内でロッドが転倒する問題が顕著に改善される。析出プロセスの間の転倒率が、直径が小さい場合でも、最終直径に達した場合でも、さらにバッチが止められた場合でも、従来技術の電極使用に比べて格段に低減される。ロッド脚部での剥離はほとんど生じない。付加的に、従来技術から知られている電極に比べて、ロッド直径が小さい場合の熱導出は僅かになり、ロッド直径が小さい場合に、電極上のロッド脚部の非常に良好な成長特性が得られる。これと同時に、本発明の電極は、ロッド直径が大きい場合に高い熱導出を有する。
【0031】
本発明の電極用の材料としては、電極としての使用に適している、全ての既知の種類の炭素が使用可能である。純度の理由から有利には、種々異なる熱伝導率を有する高純度の電気黒鉛が使用される。しかし別の材料、例えばシリコンカーバイド、炭素繊維強化炭素(CFC)複合材料、タングステン、または別の高融点金属も使用可能である。シリコン、シリコンカーバイド、シリコンナイトライド、熱分解炭素、ガラス炭素またはシリセン(Silicene)、つまりナノシリコンを用いた電極の被覆も可能である。この場合、100μmより薄い層厚が有利である。
【0032】
本発明の電極の領域(A)の、使用されている黒鉛材料の固有熱伝導率は、DIN51908に従って室温で測定されて、80〜200W/(mK)、有利には100〜180W/(mK)、特に有利には130〜160W/(mK)である。内側領域(B)の固有熱伝導率は20〜100W/(mK)、有利には30〜80W/(mK)、特に有利には30〜70W/(mK)である。
【0033】
本発明による電極の領域Aの使用されている黒鉛材料の固有電気抵抗は、DIN51911に従って室温で測定されて、15〜5μohmm、有利には10〜6μohmm、特に有利には9〜7μohmmである。内側領域Bの固有電気抵抗は30〜10μohmm、有利には25〜15μohmm、特に有利には25〜17μohmmである。
【0034】
本発明による電極の使用されている黒鉛材料の、表面粗さRaの算術平均値は、DIN EN ISO 4287に従って測定して1〜20μm、有利には1〜8μm、特に有利には1〜5μmである。これは10〜200μm、有利には10〜150μm、特に有利には10〜100μmの粗さ曲線Rtの全体の高さおよび、8〜160μm、有利には8〜120μm、特に有利には8〜80μmの平均粗さ深さRzの場合である。
【0035】
DIN51910に従って室温で測定して、使用されている黒鉛材料の圧力耐性は40〜250MPa、有利には50〜200MPa、特に有利には50〜150MPaの間である。
【0036】
DIN51902に従って室温で測定して、使用されている黒鉛材料の曲げ強さは10〜100MPa、有利には15〜80MPa、特に有利には20〜70MPaの間にある。
【0037】
DIN51915に従って室温で測定して、使用されている黒鉛材料の弾性率は1〜20GPa、有利には2〜15GPa、特に有利には3〜15GPaの間である。
【0038】
使用されている黒鉛材料の線形の熱膨張係数は20〜1000℃の温度領域において、DIN51909に従って測定して、210−6〜1010−61/K、有利には310−6〜810−61/K、特に有利には、3.510−6〜7101/Kである。
【0039】
使用されている黒鉛材料の開放された多孔性は、DIN51918に従って測定されて、5〜25%の間、有利には10〜25%の間、特に有利には10〜20%の間である。
【実施例】
【0040】
図1は、本発明の電極の実施形態の例を示している。電極の基礎部分は、円形体(1)として構成された領域(A)を形成する。上方終端部でこれは、内側領域(B)のための収容部(2)を有している。これは図面では例として、領域の間の円錐形の接続部を伴って示されている。外側の領域とはめ込み部分は共同で、共通の円錐形を形成する。これは、電極先端部を形成する。外側領域(A)から突出した、内側領域(B)の先端部は、フィラメントロッド(6)に対する収容部(3)を有している。電極は、電極保持部(4)上に載置される。この電極保持部にはオプショナルとして、冷却部が具備される。冷却体は、電極の基礎部分内にも達することがある(5)。
【0041】
外側領域および内側領域から電極全体の高さ(L)は70〜200mmであり、有利には70〜150mmであり、特に有利には80〜130mmである。円柱部分の長さ(L1)は40〜165mmであり、有利には45〜100mmであり、特に有利には50〜80mmである。
【0042】
電極の直径(D)は30〜100mmであり、有利には40〜80mmであり、特に有利には45〜70mmである。円錐角(α)は15°〜40°であり、有利には20〜35°であり、特に有利には22°〜32°である。
【0043】
はめ込み部分の長さ(LE)は30〜90mmであり、有利には35〜80mmであり、特に有利には35〜65mmである。このはめ込み部分の直径(D1)は最も幅の広い箇所で20〜50mmであり、有利には25〜45mmであり、特に有利には30〜40mmである。下方終端部でのこのはめ込み部分の直径(D2)は15〜40mmであり、有利には20〜40mmであり、特に有利には20〜35mmである。
【0044】
冷却体の直径(D3)は上方終端部で10〜60mmであり、有利には10〜50mmであり、特に有利には10〜45mmであり、下方終端部での冷却体の直径(D4)は10〜60mmであり、有利には10〜50mmであり、特に有利には10〜45mmである。冷却体の長さ(LK)は20〜80mmであり、有利には20〜60mmであり、特に有利には30〜50mmである。
【0045】
以下の実施例に基づき、本発明をより詳細に説明する。
【0046】
シーメンス社の析出反応器内で、140〜200mmの間の直径を有する多結晶シリコンロッドが析出された。ここで電極の複数の実施形態がテストされた。析出プロセスのパラメータは全ての試みにおいてそれぞれ同じであった。これらの試みは、電極の実施形態においてのみ異なる。この析出プロセスの間に、式SiHnCl4-n(n=0〜4)の1種以上の塩素含有シラン化合物とキャリアガスとしての水素とからなる供給物を添加した。
【0047】
比較例1:
析出のために、従来技術の電極が使用された(図2)。使用されている電極は、80W/(mK)の固有熱伝導率を備えた高純度の電気黒鉛から成る。全長(L)は118mmであり、円柱部分の長さ(L1)は72mmである。円錐角(α)は32°であり、直径(D)は65mmである。冷却体を有していない電極が使用された。
【0048】
反応が終了すると反応器が開けられ、転倒したポリシリコンロッドを有するバッチの数が記された。100バッチのうち、20バッチが、最終直径に達した後に転倒した。
【0049】
比較例2:
析出のために、従来技術の電極が使用された(図2)。使用されている電極は、150W/(mK)の固有熱伝導率を備えた高純度の電気黒鉛から成る。全長(L)は118mmであり、円柱部分の長さ(L1)は72mmである。円錐角(α)は32°であり、直径(D)は65mmである。冷却体を有していない電極が使用された。
【0050】
反応が終了すると反応器が開けられ、転倒したポリシリコンロッドを有するバッチの数が記された。100バッチのうち、10バッチが、最終直径に達する前に、析出の間に転倒し、2つのバッチが最終直径に達した後に転倒した。
【0051】
実施例1:
析出のために、はめ込み部分と冷却体とを有する、本発明の電極が使用された(図1)。使用されている電極の領域(A)は、135W/(mK)の固有熱伝導率を備えた高純度の電気黒鉛から成る。内側領域(B)には、50W/(mK)の固有熱伝導率を備えた高純度の電気黒鉛が使用された。
【0052】
電極は以下の形状を有している:
全長(L):118mm、円柱状部分の長さ(L1):72mm、円錐角度(α):32°、直径(D):65mm、はめ込み部分長さ(LE):46mm、はめ込み部分直径(D1):37mm、はめ込み部分直径(D2):22mm、冷却体直径(D3):25mm、冷却体直径(D4):45mm、冷却体長さ(LK):50mm
【0053】
反応が終了すると反応器が開けられ、転倒したポリシリコンロッドを有するバッチの数が記された。100バッチのうち、0バッチが、最終直径に達する前に、析出の間に転倒し、3つのバッチが最終直径に達した後に転倒した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素から成る電極であって、
当該電極は、異なる固有熱伝導率を有する、少なくとも2つの異なる領域から成り、
外側の領域(A)は電極の基礎部分を形成し、1つまたは複数の内側領域を支持し、
最も内側の領域(B)は上方で、領域(A)から突出し、領域(A)よりも低い固有熱伝導率を有している、
ことを特徴とする電極。
【請求項2】
前記最も内側の領域が最も低い固有熱伝導率を有しており、当該最も内側の領域が完全にまたは部分的に、より高い熱伝導率を有する領域によって包囲されるように、前記複数の異なる領域が配置されている、請求項1記載の電極。
【請求項3】
前記内側領域(B)は、取り外し可能または交換可能なはめ込み部分として構成されている、請求項1から2までのいずれか1項記載の電極。
【請求項4】
前記領域(B)は円錐形の差し込み接続部によって、前記外側領域内に接続されている、請求項3記載の電極。
【請求項5】
前記複数の領域は共通の、熱的および電気的な接触接続部を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の電極。
【請求項6】
最も低い熱伝導率を有する前記最も内側の領域は、フィラメントロッドを収容するための装置を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の電極。
【請求項7】
前記電極の基礎部分には冷却体が結合されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の電極。
【請求項8】
前記電極は、異なる熱伝導率を有する、純度の高いまたは極めて純度の高い電気黒鉛から成る、請求項1から7までのいずれか1項記載の電極。
【請求項9】
前記使用されている炭素材料は、1つまたは複数の以下のパラメータ:
a.)20〜200W/(mk)の固有熱伝導率、
b.)30〜5μOhmmの固有電気抵抗、
c.)10〜200μmの粗さ曲線の全体の高さRtおよび8〜160μmの平均粗さ深さRzでの、1〜20μmの表面粗さRaの算術平均値、
d.)40〜250MPaの耐圧性、
e.)10〜100MPaの曲げ強さ、
f.)1〜20GPaの弾性率、
g.)20〜1000℃の温度領域における、210−6〜1010−61/Kの線形熱膨張係数、
h.)5〜25%の開放多孔性
を有している
請求項1から8までのいずれか1項記載の電極。
【請求項10】
シリコンロッド表面で、気相から純度の高い単体ケイ素を析出させることによって、多結晶シリコンを製造する方法であって、
前記シリコンロッドを反応器内で、請求項1から9までのいずれか1項または複数項記載の電極によって保持する、
ことを特徴とする、多結晶シリコンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−195439(P2011−195439A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57972(P2011−57972)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】