鼻および副鼻腔の疾患の治療
鼻および副鼻腔の症状、およびその症候を、ボツリヌス毒素(BoNT)を用いて治療するための組成物および方法を本明細書に開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、「Treatment of nasal and sinus disorders」と題され2009年12月15日に出願された米国仮特許出願第61/286,513号明細書の優先権を主張し、その開示内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
参考文献に関する記述
本明細書に引用される参考文献は全てその内容全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
鼻の解剖学的構造
外鼻は前頭から始まり、下方に進み下唇に至る。鼻の上半分は狭く、骨からなり、鼻の下半分は軟骨であり、前方に突出し、側方に広がり鼻孔を形成する。
【0004】
鼻骨は正中線にあり、鼻骨の側方にあるのは上顎骨の鼻突起、次いで涙骨、次いで目の両側に篩骨がある。これらの骨板は縫合と称される小さい間隙によって分離されており、薬物が通過するのに比較的軽易なバリアである。骨板はまた、薬物送達のための軟組織導管の役割も果たす血管および神経のための穿孔も有する。薄い軟骨板は鼻翼にその形状を付与する。これらの軟骨はそれらの間に間隙を有し、薬物は、局所適用される場合または注入により送達されるとき、その間隙を通って拡散することができる。
【0005】
鼻腔は、骨と軟骨からなる中心隔壁である鼻中隔により対称な2つの半分に分割され;両側とも鼻孔を介して顔面に開放し、鼻咽腔で口と繋がっている。鼻前庭は最初の空隙であり、その内面は皮膚で被覆されている。鼻前庭の後、空気は鼻腔に入り、鼻腔は大部分、定型的呼吸上皮で被覆されているが、但し、上方には特殊な嗅上皮が存在する。鼻粘膜は副鼻腔開口部(自然口)で副鼻腔の粘膜と連続している。
【0006】
鼻の生理学
鼻の主な機能は吸入される空気を加温、加湿、およびろ過することである。さらに、特殊な嗅粘膜は吸入する空気の臭いを感じ取る。
【0007】
主鼻気道では、通路は狭く、通常、幅1〜3mmしかなく、この狭い構造により鼻がその主な機能を果たすことが可能となる。吸入中、空気は鼻粘膜と密接し、埃や細菌などの粒子が粘膜中に捕捉される。さらに、吸入される空気は、粘膜上を通過する時、加温および加湿され;これらの機能を果たすために鼻上皮中には豊富な血液供給がある。鼻腔の外側壁は、鼻甲介と称される折り重なった3つの構造、即ち、上鼻甲介、中鼻甲介、および下鼻甲介を含む。鼻甲介は気流を流通させ、膨張して気流を減少させることができる。
【0008】
鼻呼吸上皮は一般に、多列線毛円柱上皮と記載される。呼吸上皮に見られる主な4種類の細胞は、線毛円柱細胞、無線毛円柱細胞、杯細胞および基底細胞である。異なる種類の細胞の割合は、鼻腔の領域によって異なる。下鼻甲介領域では、細胞の総数の約15〜20%が線毛上皮細胞であり、60〜70%が無線毛上皮細胞である。線毛細胞の役割は、粘液を咽頭の方に輸送することである。線毛細胞の数は鼻咽腔の方に向かって増加し、それに対応して無線毛細胞は減少する。この2種類の円柱細胞は多数(細胞1個当たり約300〜400)の微小絨毛を有する。多数の微小絨毛により表面積が増加し、これは鼻腔の吸収能が比較的高いことの主な理由の1つとなっている。鼻腔の前部に無線毛細胞の数が多いということは、この領域が鼻上皮を通した吸収に比較的重要であるということを示唆している。
【0009】
基底細胞は数と形状が両方とも非常に様々であり、決して気道管腔に到達しない。これらの細胞はあまり分化しておらず、幹細胞の役割を果たし、他の上皮細胞に取って代わる。鼻甲介の粘膜細胞の約5〜15%は、ムチンで充填された多数の分泌顆粒を含有する杯細胞である。鼻腺と共に杯細胞は分泌物を産生し、それが粘液層を形成する。
【0010】
10μmより大きい粒径は鼻腔内に付着することが報告された。2〜10μmの粒子は肺に保持されることができ、1μm未満の粒子は呼出される。
【0011】
鼻の疾患
鼻炎は医学において最も一般的な疾患の1つである。毎年約6千万人の米国人が鼻炎に罹る。鼻炎の症候としては、1)鼻漏、後鼻漏および鼻水;2)鬱血;ならびに3)アレルギー性鼻炎ではくしゃみおよび掻痒がある。
【0012】
鼻炎の鬱血から、浮腫やポリープが生じることがある。さらにそれによりオイスタキオ管の閉塞が起こり、重度の中耳炎を引き起こすことがある。さらに、それにより副鼻腔の開口部が閉塞し、細菌性副鼻腔炎を引き起こすことがある。
【0013】
鼻炎治療の年間経費は米国だけで約100億ドルである。これらの治療には、鼻内スプレー(Rhinocort(登録商標)、Flonase(登録商標)、Beconase(登録商標)、Astelin(登録商標)、Atrovent(登録商標))、抗ヒスタミン薬(Allegra(登録商標)、Claritin(登録商標)、Zyrtec(登録商標)、Singulair(登録商標))、ならびに他の多くの処方薬および市販薬が含まれる。
【0014】
鼻炎の典型的な治療には、治療効果を有するために2種類以上の薬物の使用を必要とする。これらの幾つかは1日数回使用される。しかし効果は予測不可能であることが多く、そのうえ、薬物は厄介な副作用を引き起こすことがある。工業国ではアレルギー疾患が増加するにつれ、それに関連する疾患および合併症も増加している。例えば、喘息による死亡は、実際に現在の方が20年前と比較して多い。さらに、大手製薬会社は全て、このカテゴリーに少なくとも1つの主要医薬品を有し、これらの多くはその特許保護が失効したか、または失効しようとしている。要約すると、患者、医師、および製薬業界は全て、予測可能で患者の不快感が少ない安全且つ有効な治療を探求している。
【0015】
ボツリヌス神経毒(BoNT)
ボツリヌス毒素(「BoNT」)は、神経から筋肉に伝わる信号を遮断し、筋肉の麻痺を引き起こす。ボツリヌス(Clostridium botulinum)菌に汚染された食品を食べると、呼吸不全や死亡に繋がる進行性麻痺であるボツリヌス中毒が起こる。ボツリヌス中毒では毒素は循環に入り、全身に分配される。しかし、少量のBoNTを局所注入すると、全身に広がることなく局所的な効果を及ぼすことができることがずっと前から知られている。
【0016】
1960年代後半に、Smith−Kettlewell Eye Research FoundationのDr.Alan B.Scottは、the University of Wisconsinの食品微生物学および毒物学部の学部長であるMr.Edward J.Schantz,PhDと共同して、初めて、BoNTが臨床的に有用となり得ることを認めた。彼は、患者の痙攣性眼瞼筋肉に少量注射すると痙攣を取り除くことができることを示した。ボツリヌス毒素注射の特異な面は、その効果の持続時間が異常に長く、3〜6ヶ月間持続することであった。それ以来、BoNTは、眼瞼痙攣、顔面痙攣、書痙、痙攣性発声障害、および頸部ジストニアなどの様々な痙攣性筋肉疾患に適用されてきた。注入する毒素の量は身体の免疫系に認識されないほど少ないため、患者は無期限に繰り返し注射を受けることができる。BoNTでは副作用は稀であり、FDAの生物学的製剤部長は、BoNTは市販されている最も安全な生物学的製剤の1つであると述べた。
【0017】
鼻炎を治療するためのボツリヌス毒素の使用は米国特許第5,766,605号明細書で導入され、それは、血管運動神経性鼻炎と称される症状の鼻漏を治療するためのボツリヌス毒素の鼻腔内使用を教示している。この方法は前臨床試験および臨床試験によって確証されたが、その内容全体が参照により本明細書に援用される(Shaari et al,Otolaryngol Head Neck Surg.1995 Apr;112(4):556−71.;Rohrbach et al,ORL J Otorhinolaryngol Relat Spec.2001 Nov−Dec;63(6)382−4;Lin Chuang Er Bi Yan Hou Ke Za Zhi.2003 Nov;17(11):643−5)。米国特許出願第10/535,504号明細書(I.Sandersに付与)は、BoNTを用いたアレルギー性鼻炎および他の症状の治療を開示している。その後の研究から、BoNTは鼻粘膜に注射されるとアレルギー性鼻炎の治療に非常に有効であることが確認された(Otolaryngol Head Neck Surg.2008 Sep;139(3):367−71)。
【0018】
医学では、鼻および副鼻腔の疾患のための改善された薬物および薬物送達方法が必要とされている。鼻用薬物の新規な組成物およびこれらの薬物の送達方法を本明細書に開示する。
【0019】
現在、BoNTは、鼻腔の粘膜に注射することにより、またはBoNT溶液に浸漬されたガーゼを鼻に詰めることにより適用されてきた。注射は、痛み、出血、および汚染のリスクがあるため望ましくない。BoNTに浸漬されたガーゼは、鼻から漏出することがあり、送達される実際の量が予測不可能である。
【発明の概要】
【0020】
本発明の目的は、鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候がある哺乳類の鼻腔の外側の選択された部位に、治療有効量のボツリヌス毒素(BoNT)を投与し、鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候を治療するステップを含む、鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候の治療方法を提供することである。
【0021】
本発明の他の目的は、鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候がある哺乳類の選択された部位に、治療有効量のボツリヌス毒素(BoNT)を噴射式注射または圧力注射により投与し、鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候を治療するステップを含む、鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候の治療方法を提供することである。
【0022】
特定の実施形態では、BoNTは、針注射、マイクロニードル注射、噴射式注射もしくは圧力注射、または局所適用により投与される。
【0023】
特定の実施形態では、選択される部位は、鼻軟骨(cartilates)、鼻骨、上顎骨、涙骨、篩骨、または前頭骨の上に覆い被さる鼻の皮膚;鼻尖;外鼻孔;鼻翼;触診される梨状口の骨(boy)縁;涙嚢または涙管;唇の下;歯肉粘膜;蝶口蓋孔;および眼窩下孔からなる群から選択される。
【0024】
特定の実施形態では、BoNTは針注射により鼻骨、篩骨、前頭骨 上顎骨、または口蓋骨を通して送達される。
【0025】
他の実施形態では、BoNTは噴射式注射または圧力注射により上顎洞前壁を通して送達される。
【0026】
いくつかの実施形態では、鼻または副鼻腔の症状は、鼻炎、感染性鼻炎、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、喘息、COPD、偏頭痛、脳血流障害、睡眠時呼吸障害、および眼の疾患からなる群から選択される。
【0027】
特定の実施形態では、症候は、鼻鬱血、くしゃみ、鼻漏、後鼻漏、鼻もしくは副鼻腔の痛み、頭痛、咳、喘鳴、掻痒、発赤、鼻粘膜肥厚、および鼻ポリープからなる群から選択される。
【0028】
幾つかの実施形態では、BoNTの用量は約0.1〜約100,000単位である。他の実施形態では、BoNTの用量は約1〜約100単位である。
【0029】
特定の実施形態では、BoNTを皮膚透過性促進剤と組み合わせる。いくつかの実施形態では、BoNTをゲルと組み合わせる。他の実施形態では、投与後、ゲルの粘度が上昇する。他の実施形態では、ゲルは感温性ポロキサマーである。
【0030】
特定の実施形態では、BoNTは浸透促進手段と共に適用される。いくつかの実施形態では、浸透促進手段は、アレルゲン、ヒスタミン、および電気刺激からなる群から選択される。
【0031】
いくつかの実施形態では、BoNT以外のクロストリジウム神経毒(CnT)をBoNTの代わりに使用する。他の実施形態では、別のCnTをBoNTと併用する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1A、図1B、図1Cおよび図1Dは、鼻の解剖学的構造の様々な態様を示す。図1Dは、眉間1、鼻根点2、鼻孔点3、鼻翼側壁4、鼻翼頬溝または結合部(alar facial groove or junction)5、鼻尖上部(supratip)6、鼻尖突出部(tip−defining points)7、および人中8を識別する。
【図2】図2A、図2B、および図2Cは、鼻の解剖学的構造の様々な図を示す。図2Aは、矢状面の側面図を示す。図2Bは、前頭面の正面図を示す。図2Cは、横断面の下面図を示す。参照番号21は梨状口を識別する。参照番号22は中隔を識別する。参照番号23は下鼻甲介を識別する。
【図3】図3は、鼻骨および鼻軟骨の側面図を示す。鼻骨31、鼻根点(鼻骨前頭縫合線)32、鼻骨間縫合線33、鼻骨上顎縫合線34、上顎骨の上行突起35、鼻孔点または骨軟骨結合部36、上外側鼻軟骨37、上外側鼻軟骨の尾側縁38、前鼻中隔角(anterior septal angle)39、下外側鼻軟骨外側脚40、内側脚底(medial crural footplate)41、中間脚42、鼻種子軟骨43、および梨状口44を特に識別している。
【図4】図4は、鼻中隔を示す。四角軟骨45、鼻棘46、後鼻中隔角(posterior septal angle)47、中鼻中隔角(middle septal angle)48、前鼻中隔角49、鋤骨50、篩骨の垂直板51、上顎骨の稜、上顎骨構成要素52、および上顎骨の稜、口蓋骨構成要素53を特に識別している。
【図5】図5は、鼻腔内解剖学的構造の下にある骨を示す。
【図6】図6は、涙器系を示す。涙点61、涙小管62、総涙小管63、中鼻甲介64、ハスネル弁65、下鼻甲介66、涙嚢67、および鼻涙管68を特に識別している。涙器系は目の表面から涙液を排出する。涙液は、眼瞼の内側にある涙点61に入り、涙嚢67の中に排出された後、下行し、下鼻甲介66の下にある鼻腔の中に排出される。
【図7】図7は、鼻腔の冠状断を示す。上鼻甲介71、副鼻腔排液腔(sinus drainage cavities)72、中鼻甲介73、下鼻甲介74、前頭蓋窩75、眼窩76、上鼻道77、中鼻道78、および上顎穴79を特に識別している。
【図8】図8は、局所拡散性BoNTを適用できる鼻の皮膚領域を示している(クロスハッチングで表示する)。図8Aは側面図であり、図8Bは正面図であり、図8Cは下面図であり、図8Dは側面図である。図8Dの陰影を付けた領域は、鼻腔内領域の下にある皮膚を示す。
【図9】図9は、鼻腔への例示的な針アプローチを示す。濃色の針穴領域は、皮膚の外側にある針の部分を示す。淡色の針穴領域は組織内にある、または組織を貫通している。鼻腔の外側から皮膚を穿刺した後に注射を行ってもよく、または、鼻粘膜に直接、針先端を進入させてもよい。図9Aは、皮膚を貫通し、鼻骨間を通るまたは鼻骨を貫通する鼻根点への注射の側面図を示す。図9Bは、鼻軟骨間への注射の正面図である。角度を僅かに変えることにより中隔のどちら側にもおよびどちらの外側鼻壁にも到達することができる。図9Cは、鼻翼に入り、それを貫通して下鼻甲介に到達する針の下面図を示す。針の位置91は、皮膚を貫通し、鼻骨間を通るまたは鼻骨を貫通する鼻根点への注射を示す。針の位置92は、鼻軟骨間への注射を示す。角度を僅かに変えることにより中隔のどちら側にもおよびどちらの外側鼻壁にも到達することができる。針の位置93は、鼻翼に入り、それを貫通して下鼻甲介に到達する針を示す。針の位置94は、唇の下の粘膜に入り、鼻空隙を通り、下鼻甲介に入る針を示す。針の位置95は、頬の皮膚に入り、梨状縁を通り、下鼻甲介に到達する針を示す。
【図10】図10は、例示的な経皮鼻圧力注射を示す。図10Aは、下鼻甲介への経皮圧力注射の側面図を示す。図10Bは、下鼻甲介への経皮圧力注射の正面図を示す。図10Cは、下鼻甲介への経皮圧力注射の下面図を示す。図10Dは、鼻中隔への注射の側面図を示す。図10Eは、鼻中隔への注射の正面図を示す。図10Fは、鼻中隔への注射の下面図を示す。
【図11】図11は、鼻腔内スプレーによる例示的送達を示す。鼻腔内スプレーはBoNTを含有する液滴または粒子を内部粘膜に塗布することができる。図11Aは、鼻腔内スプレーによる送達の側面図を示す。図11Bは、鼻腔内スプレーによる送達の正面図を示す。図11Cは、鼻腔内スプレーによる送達の下面図を示す。
【図12】図12は、鼻腔内圧力注射による例示的送達を示す。図12Aは鼻腔内圧力注射による送達の側面図を示す。図12Bは鼻腔内圧力注射による送達の正面図を示す。図12Cは鼻腔内圧力注射による送達の下面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
ボツリヌス毒素(BoNT)は、ボツリヌス菌(botulinum)抗原型A、B、C、D、E、F、Gを指す。BoNTはまた、SNAREタンパク質に対して同じ遮断効果を有するこれらの毒素の修飾または置換された変種を全て包含する。これらは、天然毒素または組換え技術で製造された新規な毒素の少なくとも1つのアミノ酸の任意の置換または修飾を含む。また、結合ドメインおよび/または転移ドメインを除去または置換した毒素も含まれる。また、リポソーム、タンパク質形質導入ドメイン(protein transduction domains)、カチオン性タンパク質、酸性溶液、および当該技術分野で公知の他の多数の方法を含む薬物送達方法も含まれる。これらの変形は、国際公開第2004/1076634号パンフレットおよび米国特許第7,491,799号明細書に開示されており、これらは参照によりその内容全体が援用される。
【0034】
本明細書に記載のBoNTの用量は、Allergan Inc.(Irvine,CA)製のボツリヌス毒素A(Botox(登録商標))を使用する用量である。他の毒素についてはBotoxに対する生物学的等価比が知られている。Ipsen LTD(Bath、英国)製のDysportは、1単位当たりの生物学的同等性がBotox(登録商標)の1/3である。Myobloc(ボツリヌス毒素B型)(Solstice Neuroscience,Malvern,PA)は、生物学的同等性がBotox(登録商標)の1/40である。
【0035】
クロストリジウム神経毒(CnT)は、ボツリヌス菌(C.botulinum)(前述のBoNTを含む)、酪酸菌(C.butyricum)、クロストリジウム・ベラッティ(C.beratti)および破傷風菌(C.tetani)を含むクロストリジウム(Clostridia)種に由来する神経毒であるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
マイクロニードル注射は、極めて細く短い中実または中空の針を指す。マイクロニードルは、皮下注射針よりずっと細い中実または中空の針構造である。好適には、それらは太さ1〜100μmであり、痛みをほとんどまたは全く伴わずに粘膜または皮膚に刺入することができる。これらの針の表面にBoNTをコーティングし、それらが物理的に粘膜を貫通した後、針の表面から組織の中に拡散するようにしてもよい。別の実施形態では、ボツリヌス毒素を粘膜に局所適用し、マイクロニードルを使用して微小穿孔を開け、それを通してBoNTが拡散できるようにしてもよい。別の実施形態では、マイクロニードルは中空であり、BoNTを送達できる導管の役割を果たしてもよい(米国特許第6,558,361号明細書、参照によりその内容全体が本明細書に援用される)。
【0037】
マイクロニードルの導管は非常に細いため、0.1〜10mlの容量には多くのマイクロニードル(1〜1,000,000)および/または長時間にわたる送達(1秒〜1週間)を必要とする。薬物溶液のリザーバに中空のマイクロニードルを取り付けてもよい(例えば、米国特許第3,964,482号明細書)。圧力(1平方インチ当たり約0.001〜約100ポンド)(例えば、米国特許第20090030365号明細書)または電界(例えば、米国特許第6,256,533号明細書)を印加することにより薬物の流量を増加させてもよい。
【0038】
針注射は皮下注射針を指す。好ましくは、ゲージの小さい針(例えば、ゲージ27〜36)。
【0039】
圧力注射または噴射式注射は、圧力注射器が高圧ガスの短いパルスにより薬物を噴射する注射方法を指す。圧力注射器の例としては、J−tip needle−free syringes(National Medical Products Inc,Irvine,CA)およびSyriJet(Mizzy,Cherry Hill,NJ)(0.2ml)がある。
【0040】
米国特許第5,049,125号明細書は圧力注射用の装置を開示しており、参照により本明細書に援用される。
【0041】
米国特許第5,630,796号明細書(参照によりその内容全体が本明細書に援用される)は、マッハ1〜マッハ8の超音速ガス流に同伴される医薬粒子を送達する無針注射器を記載している。経皮送達に最適な粒子密度は約0.1〜25g/cm3の範囲であり、最適速度は100〜3000m/秒の範囲である。
【0042】
米国特許第7,060,048号明細書(参照によりその内容全体が本明細書に援用される)は、薬物が10バール以下の圧力で加速され、10〜500μm浸透する無針注射器を記載している。
【0043】
ヤマダ(Yamada)(Anesth Prog 51:56−61 2004)は、圧力注射器を使用してエピネフリンのような小さい薬物を鼻粘膜に注入することを記載した。
【0044】
局所適用とは、皮膚または粘膜などの身体の表面に適用することを意味する。
【0045】
拡散性製剤とは、粘膜または皮膚および皮下組織を通して拡散し得るBoNTを意味する。これらは、リポソーム内に懸濁されたまたは形質導入タンパク質(transduction protein)によってコーティングされたBoNTであってもよい。国際公開第2006/094263号パンフレットは、このような製剤を記載しており、参照によりその内容全体が本明細書に援用される。
【0046】
アレルギー性鼻炎(枯草熱)、非アレルギー性鼻炎、感染性鼻炎、副鼻腔炎、喘息、COPD(気管支炎および肺気腫)、偏頭痛、脳血流障害、頭痛、睡眠時呼吸障害、および眼の疾患は、それぞれBoNTを鼻もしくは副鼻腔、またはこれらの構造を神経支配する神経に適用することにより治療することができる。本発明の一部は、予想外に、これらの構造を取り囲む領域に、例えば、約1〜約100mm離れてBoNTを適用することができ、BoNTが依然として治療効果を有するということである。BoNTの用量は、例えば、約0.1〜約1000単位、または約1〜約100単位の範囲とすることができる。特定の理論に拘束されるわけではないが、この治療に関する成功は、アレルギー反応の減少、粘膜の薄化、粘膜の病理学的線維症の後退または減少による場合があり、鼻、副鼻腔、および肺の変化を反映する場合がある。粘膜の薄化により粘液の排出が増加し、気流が増加する。BoNTは気道反射の変化を引き起こし、それにより睡眠時呼吸障害、喘息、およびCOPDが改善される。BoNTはまた血管運動反射およびトーンの変化を引き起こし、それにより脳循環およびトーンが改善される。
【0047】
BoNTを鼻および副鼻腔の粘膜に局所組成物、針注射、マイクロニードル注射、または圧力注射により経皮送達することができる。BoNTは皮膚、皮下組織、ならびに必要に応じて、骨および軟骨を透過することができる。
【0048】
BoNTを注射するとき、注射は硬口蓋、とりわけ神経孔(nerve foramina)に行ってもよい。
【0049】
BoNTを鼻腔内もしくは副鼻腔の粘膜、またはこれらの構造を神経支配する神経に適用することにより喘息を治療してもよい。一実施形態では、BoNTは鼻泉門に適用される。
【0050】
BoNTを鼻腔内および副鼻腔に適用することにより、脳循環の低下を治療することができる。鼻および副鼻腔は表面積が広く、血管が多く分布しているため、BoNTは多くの脈管神経に分配される。頭部の他の領域に分配するBoNTの中枢神経への逆行性輸送により、動脈の弛緩と血流の増加が起こる。血管性頭痛は同じ弛緩効果により減少する。幾つかの実施形態では、BoNTは、これらの脈管神経の多くが集まる翼口蓋神経節に投与される。
【0051】
皮膚を通した鼻腔および副鼻腔への薬物送達
医学では、鼻および副鼻腔の疾患のための改善された薬物および薬物送達方法が必要とされている。鼻用薬物の新規な組成物およびこれらの薬物の送達方法を本明細書に開示する。
【0052】
現在、BoNTは、鼻腔の粘膜に注射することにより、またはBoNT溶液に浸漬されたガーゼを鼻に詰めることにより適用されてきた。針で粘膜に注射することは、痛み、出血、および汚染のリスクがあるため望ましくない。BoNTに浸漬されたガーゼは、鼻から漏出することがあり、送達される実際の量が予測不可能である。さらに、針注射であれ局所であれ、鼻内での処置はいずれも、耳、鼻および咽喉の専門家(耳鼻科医)を必要とし、それにより、一般的な開業医が行うことができる場合と比較して、処置は費用が高くなり、より得難くなる。
【0053】
驚くべきことに、鼻腔の外側に適用することにより、薬物(BoNTは1つの非限定例である)を鼻粘膜に送達できることが見出された。これは、鼻腔内注射よりも痛みや副作用が少なく安全に行うことができる。さらに、この方法により使用が広がり、患者の受容が高くなる。
【0054】
本発明により送達される薬物は、鼻および副鼻腔の疾患を治療するもの(ステロイド、抗ヒスタミン薬、ナサクロム(nasacrom)、抗生物質)であってもよい。さらに、本発明は、全身に分配されることを目的として鼻および副鼻腔に送達される薬物;例えば、インスリン;およびワクチンを含む。
【0055】
外用が可能な領域は、鼻軟骨、鼻骨、上顎骨、涙骨、篩骨、および前頭骨の上に覆い被さる鼻の皮膚である。
【0056】
さらに、涙器系を使用して鼻腔ならびに眼瞼および結膜に薬物を送達できることが見出された。
【0057】
さらに、薬物はまた鼻腔および副鼻腔に経皮送達することもできることが見出された。注射は上唇の下にある歯肉粘膜を通して行うことができる。歯肉の上縁は鼻腔底とほぼ同じ高さである。より側方で、歯肉粘膜および上顎洞前壁を通して、特に眼窩下孔領域の上顎洞前壁を通して注射を行うことができる。
【0058】
さらに、鼻口蓋神経の枝(extensions)が終わる硬口蓋の口腔粘膜に注射を行ってもよい。注射はまた神経が交差する場所、特に、神経孔に行うこともできる。
【0059】
局所適用
外鼻皮膚は鼻腔内粘膜と一部重なり合うまたは鼻腔内粘膜に近接している。従って、軟組織を通して拡散することができる薬剤を局所適用し、粘膜に到達させることができる。これが可能な物質としては、リポソームおよびタンパク質形質導入ドメイン、ならびにカチオン性タンパク質、およびナノエマルションが挙げられる(例えば、米国特許出願公開第20090163412号明細書、米国特許出願公開第20070077259号明細書、米国特許出願公開第20100150994号明細書、および米国特許出願公開第20100172943号明細書を参照されたい。これらはそれぞれ参照によりその内容全体が本明細書に援用される)。好ましくは、局所薬剤は、鼻翼などの粘膜に覆い被さる皮膚に付けられる。この場合、拡散は皮膚の厚み、約1〜2mmを移動するだけでよい。しかし、拡散は側方に移動することもでき、そのため鼻尖および鼻の周囲の皮膚に付けることもできる。従って、拡散距離は約1mm〜約2cmの範囲とすることができる。
【0060】
粘膜を通した薬物送達
BoNTはまた、液体、ゲル状物質または粘膜に付着する固体をスプレーすることにより、鼻腔内(副鼻腔内を含む)送達することもできる。これらの粒子は、液滴であれ、ゲルであれ、または固体であれ、エアゾール化または吸入される場合、鼻腔壁に自然に付着するように、直径約1μm〜約1mmであってもよい。さらに、圧力源を使用して、これらの液体、ゲル、または固体粒子を鼻壁に噴射することもできる。粘膜に衝突する前に粒子が空気を通過するように、圧力注射は約0.1mm〜約200mmの距離で行ってもよい。圧力で噴射されるとき、比較的低い粒径範囲は、直径約1ピコメートル〜約1マイクロメートルであってもよい。BoNTは粒子内に含有され、適用後溶解することができる。これにより、簡単に薬物を鼻粘膜または副鼻腔粘膜に送達することが可能となる。
【0061】
噴射式注射、マイクロニードルで、または、アレルゲン、化学物質もしくはエネルギーを同時に使用して粘膜バリアを破壊することにより、粘膜を通してBoNTを送達することができる。
【0062】
噴射式注射は、圧力を使用して液体または粒子を高速で噴射する。注射器のノズルは通常、粘膜に直接当てて保持され、粒子が粘膜を通るように圧力で物理的に噴射する。浸透深さはノズルの設計に依存し、これらのパラメータは当該技術分野で公知である。
【0063】
鼻粘膜でのBoNTの透過は、アレルゲン、化学物質、浸透圧、またはエネルギーを使用して粘膜バリアを開放することにより促進することができる。アレルギー体質の個人では、アレルゲンにより鼻粘膜細胞間に開口が生じ、粘膜を通したタンパク質の拡散が可能となる。また、炎症を引き起こすどのような物質も粘膜バリアを開放する。特定の化学物質が同じ効果を引き起こすことが公知である。適した薬剤としては、カチオン性ポリマー、生体接着剤、界面活性剤、脂肪酸、キレート剤、粘液溶解薬、シクロデキストリン、ミクロスフェア製剤、またはこれらの組み合わせが挙げられる(米国特許第5,629,011号明細書、米国特許出願第11/569,817号明細書、および米国特許第7,696,343号明細書、これらはそれぞれ参照によりその内容全体が本明細書に援用される)。浸透圧は、粘膜を通した薬物の移送を助ける(米国特許第6,767,901号明細書、米国特許出願公開第20050019314号明細書、これらはそれぞれ参照によりその内容全体が本明細書に援用される)。電気パルスとして送達されるエネルギー、電気穿孔法(例えば、米国特許第6,692,456号明細書、参照によりその内容全体が本明細書に援用される)、超音波または熱を使用することもできる。
【0064】
幾つかの実施形態では、漏出せず粘膜に付着するように、BoNT担体が生体接着剤であることが好ましい。生体接着剤組成物は、当該技術分野で公知である(米国特許第7,846,478号明細書、参照によりその内容全体が本明細書に援用される)。
【実施例】
【0065】
実施例1:鼻局所適用
30歳の女性は、後鼻漏、鬱血およびくしゃみにより反映されるアレルギー性鼻炎を有する。この女性はまた、喘鳴および咳により反映されるアレルギー性喘息も有する。
【0066】
ゲル担体2cc中200単位の拡散性BoNTを外鼻孔に30分間付けた後、拭き取る。BoNTは、皮膚を通して拡散し、内部鼻粘膜に到達する。1週間後、患者はくしゃみおよび鼻の掻痒の減少に気付く。肺機能試験により、気管支反応および咳の減少が認められる。
【0067】
あるいは、ゲル担体約1ccを鼻前庭の皮膚に付けてもよい。
【0068】
BoNTを適用できる皮膚領域を図8に示す。アレルギー性鼻炎に好ましい粘膜は、鼻腔の最前部である。
【0069】
実施例2:針注射
図8に示すクロスハッチングされた領域のいずれかの外鼻皮膚を通して針注射を行うことができる。皮膚を通った後、BoNTを軟組織の中に注入し、鼻粘膜に拡散させることができる。しかし、針を粘膜標的まで進入させる場合、拡散やより効率的な送達をあまり必要としない。幾つかの実施形態では、鼻粘膜まで直接、針を進入させることができる。他の実施形態では、その後、針が鼻粘膜を貫通し、それにより鼻腔に入ってもよく、そこで針の向きを変えて、複数の領域に注入することもできる。
【0070】
20歳の男性は、季節性のくしゃみや鬱血を訴え、アレルギー性鼻炎と診断される。医師は、0.5ccの通常生理食塩水と混合された20単位のBoNTを、各下鼻甲介の前端に注射する。特に、医師は患者の顔面を触診して梨状口の骨縁を見つける。次いで、1”32ゲージの針を有する1ccの注射器に40単位のBoNTを充填する。触診された梨状口の骨縁にまたはその中に針を挿入する。下鼻甲介の高さは鼻翼の頬への結合部のすぐ上である。針を4mmの深さに挿入し、BoNT/生理食塩水混合物を1分間にわたり注入する。針を引く抜き、反対側でも同じ注射を行う。その後、患者を帰宅させる。2週間後の治療経過観察で、患者のくしゃみや鬱血が大きく改善されたことが分かる。
【0071】
実施例3:経皮圧力注射
圧力注射器は、高圧ガスの短いパルスにより薬物を噴射する。予想外に、BoNTなどの大分子を皮膚、皮下組織、骨、脂肪および粘膜を通して噴射することができる。注射は組織の中にまっすぐ行われても、またはある角度で行われてもよい。注射液は組織内に留まっても、または鼻腔内に入ってもよい。注射の深度は0.1mm〜20mmの範囲であってもよい。注入される量は0.01〜10mlの範囲であってもよい。圧力範囲、粒径、および速度は上記で引用した参考文献に教示されている。
【0072】
圧力注射器のノズルは、外鼻孔に鼻腔内粘膜の方を向く角度で;梨状口に鼻腔内粘膜の方を向く角度で;鼻骨上に、注射液が骨を透過するようにして;涙嚢または涙管の上に、注射液が皮膚を透過し、これらの構造に入るようにして;唇の下の歯肉に当てて、鼻粘膜の方を向く角度で;唇の下の粘膜に当てて、上顎洞前壁を直接通る向きの(または孔を通る向きの)角度で;および、硬口蓋の蝶口蓋孔のところに当てて、注射液が翼口蓋神経節の方に進むようにして;使用することができる。
【0073】
50歳の男性は慢性鼻炎を有する。圧力注射器ノズルを鼻外の鼻翼上に当て、シャフトを梨状骨縁の方に横向きにする。20バールの圧力パルスで10単位のBoNT溶液0.1mlが皮膚の中に放出され、皮下組織を通り、下鼻甲介内またはその周囲の鼻粘膜内で終わるようにする。図10に示すように、ノズル角度を変えることができる。
【0074】
実施例4:鼻腔内スプレー
エアゾール化された液体粒子が肺に吸入される可能性があるため、ボツリヌス毒素に関してエアゾールスプレーの使用は実際的ではない。しかし、加圧液滴または粒子をノズルから標的粘膜に直接噴射することにより、エアゾール化薬剤の問題が回避される。エアゾールよりもむしろ、スプレーという用語の方が本発明をよく特徴付ける。スプレー塗料と同様に、液体もしくはゲルの液滴、または乾燥粒子を鼻孔内にスプレーする。この方法は局所適用の一変形形態である。
【0075】
スプレーは、生体接着性ゲルまたは粒子(ナノ粒子を含む)などの担体内のBoNTからなる。溶融担体中の薬物の分散体を噴霧化することからなるスプレー−凝固は、溶媒を含まない方法であり、粘膜付着性微小粒子の調製に有利な可能性がある。キトサン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびポロキサマーは担体物質の例である。ZhouおよびDonovanは、ラットモデルを使用した粘膜線毛クリアランス試験に、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボポール934P、キトサングルタメート、およびプルロニックF127などの生体接着性ポリマーと考えられているものを使用した。鼻腔からのこれらのポリマーゲルの粘膜線毛クリアランスは、蛍光標識され、製剤に組み込まれるマイクロスフェアを後で除去することにより測定された。プルロニックF127および他のポリマーゲル製剤は比較的長い滞留時間を有し、従って粘膜線毛クリアランスを低下させることが分かった。
【0076】
これらの粒子は所定の場所で溶解し、BoNTを放出することができる。同様に、BoNTを含有する生体接着性ゲルからなるスプレーは、粘膜に付着し、BoNTを放出することができる。これにより総用量として0.1〜100単位、好ましくは1〜20単位が送達されるであろう。
【0077】
10歳の男児は、鼻鬱血、くしゃみおよび鼻水を伴うアレルギー性鼻炎を有する。患者は、抗生物質を必要とする副鼻腔炎を頻繁に発症する。医師は、10単位のBoNTを含浸させたポロキサマーゲルを各鼻孔内にスプレーする。粘性のゲルは分散して粒子となり、内側壁および外側壁の表面に付着する。BoNTは粒子から溶解し、粘膜に到達する。1ヵ月後の治療経過観察で、患者はくしゃみや鬱血の減少を報告する。5ヶ月間副鼻腔炎の発症がない。
【0078】
実施例5:鼻腔内圧力注射
本発明の別の実施形態は、鼻内での圧力注射の使用である。これは、粘膜穿刺を行わないため、針注射より優れている。これと鼻スプレーの違いは、圧力注射が組織に当てて保持され、より高い圧力を使用して薬剤を組織に注入することである。幾つかの場合、圧力を使用して、副鼻腔の自然口などの狭窄した空間を通して薬剤を注入する。さらに他の実施形態では、圧力注射器を使用し、薄い骨を通して注入する。
【0079】
40歳の男性は、顕著な鬱血と後鼻漏を伴う通年性鼻炎を訴える。患者は、局所ステロイドを使用したが軽減しなかった。検査により両側の粘膜の腫脹および粘液鼻漏が認められる。医師は、6cmのノズルを有する圧力注射を使用する。通常生理食塩水中に50単位のBoNTを含有する0.5ccのボーラスを注射するように注射器を準備する。医師は、1%ネオシネフリンスプレーで両方の鼻腔の鬱血を除去する。次いで、鼻粘膜に1%リドカインをスプレーする。直視下で後上鼻腔にノズルを進入させ、粘膜に押し当てる。パルスでBoNT溶液を、薄い骨を通して翼口蓋窩(pterygopalatine space)に注入する。翼口蓋窩内で翼口蓋神経節は遮断され、それにより鼻および副鼻腔への遠心性神経支配がほぼ完全に遮断される。2週間後に、患者は鼻鬱血と後鼻漏の減少を報告する。
【0080】
実施例6:涙器系
図6に涙器系を示す。涙器系は涙液を目から、眼瞼の内側にある涙点を通して排出する。これはまた涙嚢に繋がり、その後、涙管を通して排出され、鼻の外側壁の中に放出される。涙器系はBoNTを鼻腔に送達するのに好都合な導管である。涙嚢は、薬物貯蔵所、長時間にわたり薬物を溶出する多量または薬物リザーバに好都合な箇所である。
【0081】
様々な方法でBoNTを涙器系に送達することができる。それを涙点に排出される点眼薬に溶解させてもよい。それを、涙点を通して注射または圧力注射してもよい。中央の写真に示すようにそれを特殊な穿刺針で送達してもよい。それを、皮膚を通して涙嚢または鼻涙管の中に注射してもまたは拡散させてもよい。
【0082】
アレルギー性鼻炎およびアレルギー性結膜炎を有する40歳の男性に0.1ccの通常生理食塩水中10単位のBoNTを、皮膚を通して各涙嚢の中に注射する。1ヶ月内に症候は50%減少し、これが4ヶ月間続く。
【0083】
実施例7:副鼻腔への外部送達
驚くべきことに、鼻粘膜に対して効果を有する薬物をまず副鼻腔に送達することができる。副鼻腔自体が治療標的であるが、それが鼻腔の中に排出する時、それはまた鼻粘膜にも薬物を送達する。さらに、それが自然口を通して排出するとき、特に重要なのは、自然口の狭小化または狭窄が問題となる場合である。最後に、副鼻腔は表面積が大きく、これは特定の状態では有利となり得る。
【0084】
一実施形態では、鼻骨、篩骨、前頭骨、上顎骨、または口蓋骨を通して針注射を行うことができる。
【0085】
別の実施形態では、圧力注射は上顎洞前壁を通して、特に眼窩下孔部位の上顎洞前壁を通して送達される。注射は、頬の皮膚を通してまたは唇の下で口腔内粘膜を通して行ってもよい。
【0086】
鼻炎および慢性左側上顎洞炎を有する40歳の男性。50単位のBoNTを含有するBoNT溶液1ccの圧力注射を、眼窩下孔領域の上顎洞前壁を通して行う。
【0087】
実施例8:喘息
本発明の別の部分は、BoNTを頭部および頸部に、好ましくは上気道、最も好ましくは鼻粘膜に適用することによる喘息および他の肺疾患の治療である。適用されるBoNTの量は、0.1〜1000単位、より好ましくは1〜100単位とすることができる。BoNTは、片側または両側に、局所的にまたは針注射もしくは圧力注射により適用されてもよい。本出願および参照出願に記載の方法を使用して、毒素を鼻粘膜に送達してもよい。
【0088】
20歳の男性は10年間の喘息の病歴がある。彼はほぼ毎日、呼気終末喘鳴を有し、この1年で3回救急治療室に来なければならなかった。彼は現在吸入ステロイドを使用している。通常生理食塩水1cc中5単位のBoNTをゲルフォームパッドに付け、それを各鼻腔に入れる。あるいは、20単位のBoNTを各下鼻甲介に注射してもよく、または20単位のBoNTを、鼻壁を通して翼口蓋神経節に注射してもよい。1週間後、患者の喘鳴は減少する。1ヵ月後、彼は吸入ステロイドを中止し、呼吸困難の増加がないことに気付く。
【0089】
1
10歳の男児はアレルギー性喘息を有する。症候には喘鳴や咳が含まれる。患者は毎月重度の増悪が見られ、緊急治療室に行くことを必要としている。医師は、10単位のBoNTを含浸させたポロキサマーゲルを各鼻孔にスプレーする。粘性のゲルは分散して粒子となり、内側壁および外側壁の表面に付着する。BoNTは粒子から溶解し、粘膜に到達する。1ヵ月後の治療経過観察で、患者は喘鳴や咳の減少を報告する。この月は増悪が見られなかった。改善は5ヶ月間続く。
【0090】
本発明は、実施例に開示する特定の実施形態により範囲が限定されるものではなく、それらは本発明の幾つかの態様の例示を目的としており、機能的に同等の実施形態はいずれも本発明の範囲に入るものとする。実際、本明細書に示され説明されるものの他に、本発明の様々な変更形態が当業者には明らかとなり、これらは添付の特許請求の範囲に入るものとする。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、「Treatment of nasal and sinus disorders」と題され2009年12月15日に出願された米国仮特許出願第61/286,513号明細書の優先権を主張し、その開示内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
参考文献に関する記述
本明細書に引用される参考文献は全てその内容全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
鼻の解剖学的構造
外鼻は前頭から始まり、下方に進み下唇に至る。鼻の上半分は狭く、骨からなり、鼻の下半分は軟骨であり、前方に突出し、側方に広がり鼻孔を形成する。
【0004】
鼻骨は正中線にあり、鼻骨の側方にあるのは上顎骨の鼻突起、次いで涙骨、次いで目の両側に篩骨がある。これらの骨板は縫合と称される小さい間隙によって分離されており、薬物が通過するのに比較的軽易なバリアである。骨板はまた、薬物送達のための軟組織導管の役割も果たす血管および神経のための穿孔も有する。薄い軟骨板は鼻翼にその形状を付与する。これらの軟骨はそれらの間に間隙を有し、薬物は、局所適用される場合または注入により送達されるとき、その間隙を通って拡散することができる。
【0005】
鼻腔は、骨と軟骨からなる中心隔壁である鼻中隔により対称な2つの半分に分割され;両側とも鼻孔を介して顔面に開放し、鼻咽腔で口と繋がっている。鼻前庭は最初の空隙であり、その内面は皮膚で被覆されている。鼻前庭の後、空気は鼻腔に入り、鼻腔は大部分、定型的呼吸上皮で被覆されているが、但し、上方には特殊な嗅上皮が存在する。鼻粘膜は副鼻腔開口部(自然口)で副鼻腔の粘膜と連続している。
【0006】
鼻の生理学
鼻の主な機能は吸入される空気を加温、加湿、およびろ過することである。さらに、特殊な嗅粘膜は吸入する空気の臭いを感じ取る。
【0007】
主鼻気道では、通路は狭く、通常、幅1〜3mmしかなく、この狭い構造により鼻がその主な機能を果たすことが可能となる。吸入中、空気は鼻粘膜と密接し、埃や細菌などの粒子が粘膜中に捕捉される。さらに、吸入される空気は、粘膜上を通過する時、加温および加湿され;これらの機能を果たすために鼻上皮中には豊富な血液供給がある。鼻腔の外側壁は、鼻甲介と称される折り重なった3つの構造、即ち、上鼻甲介、中鼻甲介、および下鼻甲介を含む。鼻甲介は気流を流通させ、膨張して気流を減少させることができる。
【0008】
鼻呼吸上皮は一般に、多列線毛円柱上皮と記載される。呼吸上皮に見られる主な4種類の細胞は、線毛円柱細胞、無線毛円柱細胞、杯細胞および基底細胞である。異なる種類の細胞の割合は、鼻腔の領域によって異なる。下鼻甲介領域では、細胞の総数の約15〜20%が線毛上皮細胞であり、60〜70%が無線毛上皮細胞である。線毛細胞の役割は、粘液を咽頭の方に輸送することである。線毛細胞の数は鼻咽腔の方に向かって増加し、それに対応して無線毛細胞は減少する。この2種類の円柱細胞は多数(細胞1個当たり約300〜400)の微小絨毛を有する。多数の微小絨毛により表面積が増加し、これは鼻腔の吸収能が比較的高いことの主な理由の1つとなっている。鼻腔の前部に無線毛細胞の数が多いということは、この領域が鼻上皮を通した吸収に比較的重要であるということを示唆している。
【0009】
基底細胞は数と形状が両方とも非常に様々であり、決して気道管腔に到達しない。これらの細胞はあまり分化しておらず、幹細胞の役割を果たし、他の上皮細胞に取って代わる。鼻甲介の粘膜細胞の約5〜15%は、ムチンで充填された多数の分泌顆粒を含有する杯細胞である。鼻腺と共に杯細胞は分泌物を産生し、それが粘液層を形成する。
【0010】
10μmより大きい粒径は鼻腔内に付着することが報告された。2〜10μmの粒子は肺に保持されることができ、1μm未満の粒子は呼出される。
【0011】
鼻の疾患
鼻炎は医学において最も一般的な疾患の1つである。毎年約6千万人の米国人が鼻炎に罹る。鼻炎の症候としては、1)鼻漏、後鼻漏および鼻水;2)鬱血;ならびに3)アレルギー性鼻炎ではくしゃみおよび掻痒がある。
【0012】
鼻炎の鬱血から、浮腫やポリープが生じることがある。さらにそれによりオイスタキオ管の閉塞が起こり、重度の中耳炎を引き起こすことがある。さらに、それにより副鼻腔の開口部が閉塞し、細菌性副鼻腔炎を引き起こすことがある。
【0013】
鼻炎治療の年間経費は米国だけで約100億ドルである。これらの治療には、鼻内スプレー(Rhinocort(登録商標)、Flonase(登録商標)、Beconase(登録商標)、Astelin(登録商標)、Atrovent(登録商標))、抗ヒスタミン薬(Allegra(登録商標)、Claritin(登録商標)、Zyrtec(登録商標)、Singulair(登録商標))、ならびに他の多くの処方薬および市販薬が含まれる。
【0014】
鼻炎の典型的な治療には、治療効果を有するために2種類以上の薬物の使用を必要とする。これらの幾つかは1日数回使用される。しかし効果は予測不可能であることが多く、そのうえ、薬物は厄介な副作用を引き起こすことがある。工業国ではアレルギー疾患が増加するにつれ、それに関連する疾患および合併症も増加している。例えば、喘息による死亡は、実際に現在の方が20年前と比較して多い。さらに、大手製薬会社は全て、このカテゴリーに少なくとも1つの主要医薬品を有し、これらの多くはその特許保護が失効したか、または失効しようとしている。要約すると、患者、医師、および製薬業界は全て、予測可能で患者の不快感が少ない安全且つ有効な治療を探求している。
【0015】
ボツリヌス神経毒(BoNT)
ボツリヌス毒素(「BoNT」)は、神経から筋肉に伝わる信号を遮断し、筋肉の麻痺を引き起こす。ボツリヌス(Clostridium botulinum)菌に汚染された食品を食べると、呼吸不全や死亡に繋がる進行性麻痺であるボツリヌス中毒が起こる。ボツリヌス中毒では毒素は循環に入り、全身に分配される。しかし、少量のBoNTを局所注入すると、全身に広がることなく局所的な効果を及ぼすことができることがずっと前から知られている。
【0016】
1960年代後半に、Smith−Kettlewell Eye Research FoundationのDr.Alan B.Scottは、the University of Wisconsinの食品微生物学および毒物学部の学部長であるMr.Edward J.Schantz,PhDと共同して、初めて、BoNTが臨床的に有用となり得ることを認めた。彼は、患者の痙攣性眼瞼筋肉に少量注射すると痙攣を取り除くことができることを示した。ボツリヌス毒素注射の特異な面は、その効果の持続時間が異常に長く、3〜6ヶ月間持続することであった。それ以来、BoNTは、眼瞼痙攣、顔面痙攣、書痙、痙攣性発声障害、および頸部ジストニアなどの様々な痙攣性筋肉疾患に適用されてきた。注入する毒素の量は身体の免疫系に認識されないほど少ないため、患者は無期限に繰り返し注射を受けることができる。BoNTでは副作用は稀であり、FDAの生物学的製剤部長は、BoNTは市販されている最も安全な生物学的製剤の1つであると述べた。
【0017】
鼻炎を治療するためのボツリヌス毒素の使用は米国特許第5,766,605号明細書で導入され、それは、血管運動神経性鼻炎と称される症状の鼻漏を治療するためのボツリヌス毒素の鼻腔内使用を教示している。この方法は前臨床試験および臨床試験によって確証されたが、その内容全体が参照により本明細書に援用される(Shaari et al,Otolaryngol Head Neck Surg.1995 Apr;112(4):556−71.;Rohrbach et al,ORL J Otorhinolaryngol Relat Spec.2001 Nov−Dec;63(6)382−4;Lin Chuang Er Bi Yan Hou Ke Za Zhi.2003 Nov;17(11):643−5)。米国特許出願第10/535,504号明細書(I.Sandersに付与)は、BoNTを用いたアレルギー性鼻炎および他の症状の治療を開示している。その後の研究から、BoNTは鼻粘膜に注射されるとアレルギー性鼻炎の治療に非常に有効であることが確認された(Otolaryngol Head Neck Surg.2008 Sep;139(3):367−71)。
【0018】
医学では、鼻および副鼻腔の疾患のための改善された薬物および薬物送達方法が必要とされている。鼻用薬物の新規な組成物およびこれらの薬物の送達方法を本明細書に開示する。
【0019】
現在、BoNTは、鼻腔の粘膜に注射することにより、またはBoNT溶液に浸漬されたガーゼを鼻に詰めることにより適用されてきた。注射は、痛み、出血、および汚染のリスクがあるため望ましくない。BoNTに浸漬されたガーゼは、鼻から漏出することがあり、送達される実際の量が予測不可能である。
【発明の概要】
【0020】
本発明の目的は、鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候がある哺乳類の鼻腔の外側の選択された部位に、治療有効量のボツリヌス毒素(BoNT)を投与し、鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候を治療するステップを含む、鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候の治療方法を提供することである。
【0021】
本発明の他の目的は、鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候がある哺乳類の選択された部位に、治療有効量のボツリヌス毒素(BoNT)を噴射式注射または圧力注射により投与し、鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候を治療するステップを含む、鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候の治療方法を提供することである。
【0022】
特定の実施形態では、BoNTは、針注射、マイクロニードル注射、噴射式注射もしくは圧力注射、または局所適用により投与される。
【0023】
特定の実施形態では、選択される部位は、鼻軟骨(cartilates)、鼻骨、上顎骨、涙骨、篩骨、または前頭骨の上に覆い被さる鼻の皮膚;鼻尖;外鼻孔;鼻翼;触診される梨状口の骨(boy)縁;涙嚢または涙管;唇の下;歯肉粘膜;蝶口蓋孔;および眼窩下孔からなる群から選択される。
【0024】
特定の実施形態では、BoNTは針注射により鼻骨、篩骨、前頭骨 上顎骨、または口蓋骨を通して送達される。
【0025】
他の実施形態では、BoNTは噴射式注射または圧力注射により上顎洞前壁を通して送達される。
【0026】
いくつかの実施形態では、鼻または副鼻腔の症状は、鼻炎、感染性鼻炎、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、喘息、COPD、偏頭痛、脳血流障害、睡眠時呼吸障害、および眼の疾患からなる群から選択される。
【0027】
特定の実施形態では、症候は、鼻鬱血、くしゃみ、鼻漏、後鼻漏、鼻もしくは副鼻腔の痛み、頭痛、咳、喘鳴、掻痒、発赤、鼻粘膜肥厚、および鼻ポリープからなる群から選択される。
【0028】
幾つかの実施形態では、BoNTの用量は約0.1〜約100,000単位である。他の実施形態では、BoNTの用量は約1〜約100単位である。
【0029】
特定の実施形態では、BoNTを皮膚透過性促進剤と組み合わせる。いくつかの実施形態では、BoNTをゲルと組み合わせる。他の実施形態では、投与後、ゲルの粘度が上昇する。他の実施形態では、ゲルは感温性ポロキサマーである。
【0030】
特定の実施形態では、BoNTは浸透促進手段と共に適用される。いくつかの実施形態では、浸透促進手段は、アレルゲン、ヒスタミン、および電気刺激からなる群から選択される。
【0031】
いくつかの実施形態では、BoNT以外のクロストリジウム神経毒(CnT)をBoNTの代わりに使用する。他の実施形態では、別のCnTをBoNTと併用する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1A、図1B、図1Cおよび図1Dは、鼻の解剖学的構造の様々な態様を示す。図1Dは、眉間1、鼻根点2、鼻孔点3、鼻翼側壁4、鼻翼頬溝または結合部(alar facial groove or junction)5、鼻尖上部(supratip)6、鼻尖突出部(tip−defining points)7、および人中8を識別する。
【図2】図2A、図2B、および図2Cは、鼻の解剖学的構造の様々な図を示す。図2Aは、矢状面の側面図を示す。図2Bは、前頭面の正面図を示す。図2Cは、横断面の下面図を示す。参照番号21は梨状口を識別する。参照番号22は中隔を識別する。参照番号23は下鼻甲介を識別する。
【図3】図3は、鼻骨および鼻軟骨の側面図を示す。鼻骨31、鼻根点(鼻骨前頭縫合線)32、鼻骨間縫合線33、鼻骨上顎縫合線34、上顎骨の上行突起35、鼻孔点または骨軟骨結合部36、上外側鼻軟骨37、上外側鼻軟骨の尾側縁38、前鼻中隔角(anterior septal angle)39、下外側鼻軟骨外側脚40、内側脚底(medial crural footplate)41、中間脚42、鼻種子軟骨43、および梨状口44を特に識別している。
【図4】図4は、鼻中隔を示す。四角軟骨45、鼻棘46、後鼻中隔角(posterior septal angle)47、中鼻中隔角(middle septal angle)48、前鼻中隔角49、鋤骨50、篩骨の垂直板51、上顎骨の稜、上顎骨構成要素52、および上顎骨の稜、口蓋骨構成要素53を特に識別している。
【図5】図5は、鼻腔内解剖学的構造の下にある骨を示す。
【図6】図6は、涙器系を示す。涙点61、涙小管62、総涙小管63、中鼻甲介64、ハスネル弁65、下鼻甲介66、涙嚢67、および鼻涙管68を特に識別している。涙器系は目の表面から涙液を排出する。涙液は、眼瞼の内側にある涙点61に入り、涙嚢67の中に排出された後、下行し、下鼻甲介66の下にある鼻腔の中に排出される。
【図7】図7は、鼻腔の冠状断を示す。上鼻甲介71、副鼻腔排液腔(sinus drainage cavities)72、中鼻甲介73、下鼻甲介74、前頭蓋窩75、眼窩76、上鼻道77、中鼻道78、および上顎穴79を特に識別している。
【図8】図8は、局所拡散性BoNTを適用できる鼻の皮膚領域を示している(クロスハッチングで表示する)。図8Aは側面図であり、図8Bは正面図であり、図8Cは下面図であり、図8Dは側面図である。図8Dの陰影を付けた領域は、鼻腔内領域の下にある皮膚を示す。
【図9】図9は、鼻腔への例示的な針アプローチを示す。濃色の針穴領域は、皮膚の外側にある針の部分を示す。淡色の針穴領域は組織内にある、または組織を貫通している。鼻腔の外側から皮膚を穿刺した後に注射を行ってもよく、または、鼻粘膜に直接、針先端を進入させてもよい。図9Aは、皮膚を貫通し、鼻骨間を通るまたは鼻骨を貫通する鼻根点への注射の側面図を示す。図9Bは、鼻軟骨間への注射の正面図である。角度を僅かに変えることにより中隔のどちら側にもおよびどちらの外側鼻壁にも到達することができる。図9Cは、鼻翼に入り、それを貫通して下鼻甲介に到達する針の下面図を示す。針の位置91は、皮膚を貫通し、鼻骨間を通るまたは鼻骨を貫通する鼻根点への注射を示す。針の位置92は、鼻軟骨間への注射を示す。角度を僅かに変えることにより中隔のどちら側にもおよびどちらの外側鼻壁にも到達することができる。針の位置93は、鼻翼に入り、それを貫通して下鼻甲介に到達する針を示す。針の位置94は、唇の下の粘膜に入り、鼻空隙を通り、下鼻甲介に入る針を示す。針の位置95は、頬の皮膚に入り、梨状縁を通り、下鼻甲介に到達する針を示す。
【図10】図10は、例示的な経皮鼻圧力注射を示す。図10Aは、下鼻甲介への経皮圧力注射の側面図を示す。図10Bは、下鼻甲介への経皮圧力注射の正面図を示す。図10Cは、下鼻甲介への経皮圧力注射の下面図を示す。図10Dは、鼻中隔への注射の側面図を示す。図10Eは、鼻中隔への注射の正面図を示す。図10Fは、鼻中隔への注射の下面図を示す。
【図11】図11は、鼻腔内スプレーによる例示的送達を示す。鼻腔内スプレーはBoNTを含有する液滴または粒子を内部粘膜に塗布することができる。図11Aは、鼻腔内スプレーによる送達の側面図を示す。図11Bは、鼻腔内スプレーによる送達の正面図を示す。図11Cは、鼻腔内スプレーによる送達の下面図を示す。
【図12】図12は、鼻腔内圧力注射による例示的送達を示す。図12Aは鼻腔内圧力注射による送達の側面図を示す。図12Bは鼻腔内圧力注射による送達の正面図を示す。図12Cは鼻腔内圧力注射による送達の下面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
ボツリヌス毒素(BoNT)は、ボツリヌス菌(botulinum)抗原型A、B、C、D、E、F、Gを指す。BoNTはまた、SNAREタンパク質に対して同じ遮断効果を有するこれらの毒素の修飾または置換された変種を全て包含する。これらは、天然毒素または組換え技術で製造された新規な毒素の少なくとも1つのアミノ酸の任意の置換または修飾を含む。また、結合ドメインおよび/または転移ドメインを除去または置換した毒素も含まれる。また、リポソーム、タンパク質形質導入ドメイン(protein transduction domains)、カチオン性タンパク質、酸性溶液、および当該技術分野で公知の他の多数の方法を含む薬物送達方法も含まれる。これらの変形は、国際公開第2004/1076634号パンフレットおよび米国特許第7,491,799号明細書に開示されており、これらは参照によりその内容全体が援用される。
【0034】
本明細書に記載のBoNTの用量は、Allergan Inc.(Irvine,CA)製のボツリヌス毒素A(Botox(登録商標))を使用する用量である。他の毒素についてはBotoxに対する生物学的等価比が知られている。Ipsen LTD(Bath、英国)製のDysportは、1単位当たりの生物学的同等性がBotox(登録商標)の1/3である。Myobloc(ボツリヌス毒素B型)(Solstice Neuroscience,Malvern,PA)は、生物学的同等性がBotox(登録商標)の1/40である。
【0035】
クロストリジウム神経毒(CnT)は、ボツリヌス菌(C.botulinum)(前述のBoNTを含む)、酪酸菌(C.butyricum)、クロストリジウム・ベラッティ(C.beratti)および破傷風菌(C.tetani)を含むクロストリジウム(Clostridia)種に由来する神経毒であるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
マイクロニードル注射は、極めて細く短い中実または中空の針を指す。マイクロニードルは、皮下注射針よりずっと細い中実または中空の針構造である。好適には、それらは太さ1〜100μmであり、痛みをほとんどまたは全く伴わずに粘膜または皮膚に刺入することができる。これらの針の表面にBoNTをコーティングし、それらが物理的に粘膜を貫通した後、針の表面から組織の中に拡散するようにしてもよい。別の実施形態では、ボツリヌス毒素を粘膜に局所適用し、マイクロニードルを使用して微小穿孔を開け、それを通してBoNTが拡散できるようにしてもよい。別の実施形態では、マイクロニードルは中空であり、BoNTを送達できる導管の役割を果たしてもよい(米国特許第6,558,361号明細書、参照によりその内容全体が本明細書に援用される)。
【0037】
マイクロニードルの導管は非常に細いため、0.1〜10mlの容量には多くのマイクロニードル(1〜1,000,000)および/または長時間にわたる送達(1秒〜1週間)を必要とする。薬物溶液のリザーバに中空のマイクロニードルを取り付けてもよい(例えば、米国特許第3,964,482号明細書)。圧力(1平方インチ当たり約0.001〜約100ポンド)(例えば、米国特許第20090030365号明細書)または電界(例えば、米国特許第6,256,533号明細書)を印加することにより薬物の流量を増加させてもよい。
【0038】
針注射は皮下注射針を指す。好ましくは、ゲージの小さい針(例えば、ゲージ27〜36)。
【0039】
圧力注射または噴射式注射は、圧力注射器が高圧ガスの短いパルスにより薬物を噴射する注射方法を指す。圧力注射器の例としては、J−tip needle−free syringes(National Medical Products Inc,Irvine,CA)およびSyriJet(Mizzy,Cherry Hill,NJ)(0.2ml)がある。
【0040】
米国特許第5,049,125号明細書は圧力注射用の装置を開示しており、参照により本明細書に援用される。
【0041】
米国特許第5,630,796号明細書(参照によりその内容全体が本明細書に援用される)は、マッハ1〜マッハ8の超音速ガス流に同伴される医薬粒子を送達する無針注射器を記載している。経皮送達に最適な粒子密度は約0.1〜25g/cm3の範囲であり、最適速度は100〜3000m/秒の範囲である。
【0042】
米国特許第7,060,048号明細書(参照によりその内容全体が本明細書に援用される)は、薬物が10バール以下の圧力で加速され、10〜500μm浸透する無針注射器を記載している。
【0043】
ヤマダ(Yamada)(Anesth Prog 51:56−61 2004)は、圧力注射器を使用してエピネフリンのような小さい薬物を鼻粘膜に注入することを記載した。
【0044】
局所適用とは、皮膚または粘膜などの身体の表面に適用することを意味する。
【0045】
拡散性製剤とは、粘膜または皮膚および皮下組織を通して拡散し得るBoNTを意味する。これらは、リポソーム内に懸濁されたまたは形質導入タンパク質(transduction protein)によってコーティングされたBoNTであってもよい。国際公開第2006/094263号パンフレットは、このような製剤を記載しており、参照によりその内容全体が本明細書に援用される。
【0046】
アレルギー性鼻炎(枯草熱)、非アレルギー性鼻炎、感染性鼻炎、副鼻腔炎、喘息、COPD(気管支炎および肺気腫)、偏頭痛、脳血流障害、頭痛、睡眠時呼吸障害、および眼の疾患は、それぞれBoNTを鼻もしくは副鼻腔、またはこれらの構造を神経支配する神経に適用することにより治療することができる。本発明の一部は、予想外に、これらの構造を取り囲む領域に、例えば、約1〜約100mm離れてBoNTを適用することができ、BoNTが依然として治療効果を有するということである。BoNTの用量は、例えば、約0.1〜約1000単位、または約1〜約100単位の範囲とすることができる。特定の理論に拘束されるわけではないが、この治療に関する成功は、アレルギー反応の減少、粘膜の薄化、粘膜の病理学的線維症の後退または減少による場合があり、鼻、副鼻腔、および肺の変化を反映する場合がある。粘膜の薄化により粘液の排出が増加し、気流が増加する。BoNTは気道反射の変化を引き起こし、それにより睡眠時呼吸障害、喘息、およびCOPDが改善される。BoNTはまた血管運動反射およびトーンの変化を引き起こし、それにより脳循環およびトーンが改善される。
【0047】
BoNTを鼻および副鼻腔の粘膜に局所組成物、針注射、マイクロニードル注射、または圧力注射により経皮送達することができる。BoNTは皮膚、皮下組織、ならびに必要に応じて、骨および軟骨を透過することができる。
【0048】
BoNTを注射するとき、注射は硬口蓋、とりわけ神経孔(nerve foramina)に行ってもよい。
【0049】
BoNTを鼻腔内もしくは副鼻腔の粘膜、またはこれらの構造を神経支配する神経に適用することにより喘息を治療してもよい。一実施形態では、BoNTは鼻泉門に適用される。
【0050】
BoNTを鼻腔内および副鼻腔に適用することにより、脳循環の低下を治療することができる。鼻および副鼻腔は表面積が広く、血管が多く分布しているため、BoNTは多くの脈管神経に分配される。頭部の他の領域に分配するBoNTの中枢神経への逆行性輸送により、動脈の弛緩と血流の増加が起こる。血管性頭痛は同じ弛緩効果により減少する。幾つかの実施形態では、BoNTは、これらの脈管神経の多くが集まる翼口蓋神経節に投与される。
【0051】
皮膚を通した鼻腔および副鼻腔への薬物送達
医学では、鼻および副鼻腔の疾患のための改善された薬物および薬物送達方法が必要とされている。鼻用薬物の新規な組成物およびこれらの薬物の送達方法を本明細書に開示する。
【0052】
現在、BoNTは、鼻腔の粘膜に注射することにより、またはBoNT溶液に浸漬されたガーゼを鼻に詰めることにより適用されてきた。針で粘膜に注射することは、痛み、出血、および汚染のリスクがあるため望ましくない。BoNTに浸漬されたガーゼは、鼻から漏出することがあり、送達される実際の量が予測不可能である。さらに、針注射であれ局所であれ、鼻内での処置はいずれも、耳、鼻および咽喉の専門家(耳鼻科医)を必要とし、それにより、一般的な開業医が行うことができる場合と比較して、処置は費用が高くなり、より得難くなる。
【0053】
驚くべきことに、鼻腔の外側に適用することにより、薬物(BoNTは1つの非限定例である)を鼻粘膜に送達できることが見出された。これは、鼻腔内注射よりも痛みや副作用が少なく安全に行うことができる。さらに、この方法により使用が広がり、患者の受容が高くなる。
【0054】
本発明により送達される薬物は、鼻および副鼻腔の疾患を治療するもの(ステロイド、抗ヒスタミン薬、ナサクロム(nasacrom)、抗生物質)であってもよい。さらに、本発明は、全身に分配されることを目的として鼻および副鼻腔に送達される薬物;例えば、インスリン;およびワクチンを含む。
【0055】
外用が可能な領域は、鼻軟骨、鼻骨、上顎骨、涙骨、篩骨、および前頭骨の上に覆い被さる鼻の皮膚である。
【0056】
さらに、涙器系を使用して鼻腔ならびに眼瞼および結膜に薬物を送達できることが見出された。
【0057】
さらに、薬物はまた鼻腔および副鼻腔に経皮送達することもできることが見出された。注射は上唇の下にある歯肉粘膜を通して行うことができる。歯肉の上縁は鼻腔底とほぼ同じ高さである。より側方で、歯肉粘膜および上顎洞前壁を通して、特に眼窩下孔領域の上顎洞前壁を通して注射を行うことができる。
【0058】
さらに、鼻口蓋神経の枝(extensions)が終わる硬口蓋の口腔粘膜に注射を行ってもよい。注射はまた神経が交差する場所、特に、神経孔に行うこともできる。
【0059】
局所適用
外鼻皮膚は鼻腔内粘膜と一部重なり合うまたは鼻腔内粘膜に近接している。従って、軟組織を通して拡散することができる薬剤を局所適用し、粘膜に到達させることができる。これが可能な物質としては、リポソームおよびタンパク質形質導入ドメイン、ならびにカチオン性タンパク質、およびナノエマルションが挙げられる(例えば、米国特許出願公開第20090163412号明細書、米国特許出願公開第20070077259号明細書、米国特許出願公開第20100150994号明細書、および米国特許出願公開第20100172943号明細書を参照されたい。これらはそれぞれ参照によりその内容全体が本明細書に援用される)。好ましくは、局所薬剤は、鼻翼などの粘膜に覆い被さる皮膚に付けられる。この場合、拡散は皮膚の厚み、約1〜2mmを移動するだけでよい。しかし、拡散は側方に移動することもでき、そのため鼻尖および鼻の周囲の皮膚に付けることもできる。従って、拡散距離は約1mm〜約2cmの範囲とすることができる。
【0060】
粘膜を通した薬物送達
BoNTはまた、液体、ゲル状物質または粘膜に付着する固体をスプレーすることにより、鼻腔内(副鼻腔内を含む)送達することもできる。これらの粒子は、液滴であれ、ゲルであれ、または固体であれ、エアゾール化または吸入される場合、鼻腔壁に自然に付着するように、直径約1μm〜約1mmであってもよい。さらに、圧力源を使用して、これらの液体、ゲル、または固体粒子を鼻壁に噴射することもできる。粘膜に衝突する前に粒子が空気を通過するように、圧力注射は約0.1mm〜約200mmの距離で行ってもよい。圧力で噴射されるとき、比較的低い粒径範囲は、直径約1ピコメートル〜約1マイクロメートルであってもよい。BoNTは粒子内に含有され、適用後溶解することができる。これにより、簡単に薬物を鼻粘膜または副鼻腔粘膜に送達することが可能となる。
【0061】
噴射式注射、マイクロニードルで、または、アレルゲン、化学物質もしくはエネルギーを同時に使用して粘膜バリアを破壊することにより、粘膜を通してBoNTを送達することができる。
【0062】
噴射式注射は、圧力を使用して液体または粒子を高速で噴射する。注射器のノズルは通常、粘膜に直接当てて保持され、粒子が粘膜を通るように圧力で物理的に噴射する。浸透深さはノズルの設計に依存し、これらのパラメータは当該技術分野で公知である。
【0063】
鼻粘膜でのBoNTの透過は、アレルゲン、化学物質、浸透圧、またはエネルギーを使用して粘膜バリアを開放することにより促進することができる。アレルギー体質の個人では、アレルゲンにより鼻粘膜細胞間に開口が生じ、粘膜を通したタンパク質の拡散が可能となる。また、炎症を引き起こすどのような物質も粘膜バリアを開放する。特定の化学物質が同じ効果を引き起こすことが公知である。適した薬剤としては、カチオン性ポリマー、生体接着剤、界面活性剤、脂肪酸、キレート剤、粘液溶解薬、シクロデキストリン、ミクロスフェア製剤、またはこれらの組み合わせが挙げられる(米国特許第5,629,011号明細書、米国特許出願第11/569,817号明細書、および米国特許第7,696,343号明細書、これらはそれぞれ参照によりその内容全体が本明細書に援用される)。浸透圧は、粘膜を通した薬物の移送を助ける(米国特許第6,767,901号明細書、米国特許出願公開第20050019314号明細書、これらはそれぞれ参照によりその内容全体が本明細書に援用される)。電気パルスとして送達されるエネルギー、電気穿孔法(例えば、米国特許第6,692,456号明細書、参照によりその内容全体が本明細書に援用される)、超音波または熱を使用することもできる。
【0064】
幾つかの実施形態では、漏出せず粘膜に付着するように、BoNT担体が生体接着剤であることが好ましい。生体接着剤組成物は、当該技術分野で公知である(米国特許第7,846,478号明細書、参照によりその内容全体が本明細書に援用される)。
【実施例】
【0065】
実施例1:鼻局所適用
30歳の女性は、後鼻漏、鬱血およびくしゃみにより反映されるアレルギー性鼻炎を有する。この女性はまた、喘鳴および咳により反映されるアレルギー性喘息も有する。
【0066】
ゲル担体2cc中200単位の拡散性BoNTを外鼻孔に30分間付けた後、拭き取る。BoNTは、皮膚を通して拡散し、内部鼻粘膜に到達する。1週間後、患者はくしゃみおよび鼻の掻痒の減少に気付く。肺機能試験により、気管支反応および咳の減少が認められる。
【0067】
あるいは、ゲル担体約1ccを鼻前庭の皮膚に付けてもよい。
【0068】
BoNTを適用できる皮膚領域を図8に示す。アレルギー性鼻炎に好ましい粘膜は、鼻腔の最前部である。
【0069】
実施例2:針注射
図8に示すクロスハッチングされた領域のいずれかの外鼻皮膚を通して針注射を行うことができる。皮膚を通った後、BoNTを軟組織の中に注入し、鼻粘膜に拡散させることができる。しかし、針を粘膜標的まで進入させる場合、拡散やより効率的な送達をあまり必要としない。幾つかの実施形態では、鼻粘膜まで直接、針を進入させることができる。他の実施形態では、その後、針が鼻粘膜を貫通し、それにより鼻腔に入ってもよく、そこで針の向きを変えて、複数の領域に注入することもできる。
【0070】
20歳の男性は、季節性のくしゃみや鬱血を訴え、アレルギー性鼻炎と診断される。医師は、0.5ccの通常生理食塩水と混合された20単位のBoNTを、各下鼻甲介の前端に注射する。特に、医師は患者の顔面を触診して梨状口の骨縁を見つける。次いで、1”32ゲージの針を有する1ccの注射器に40単位のBoNTを充填する。触診された梨状口の骨縁にまたはその中に針を挿入する。下鼻甲介の高さは鼻翼の頬への結合部のすぐ上である。針を4mmの深さに挿入し、BoNT/生理食塩水混合物を1分間にわたり注入する。針を引く抜き、反対側でも同じ注射を行う。その後、患者を帰宅させる。2週間後の治療経過観察で、患者のくしゃみや鬱血が大きく改善されたことが分かる。
【0071】
実施例3:経皮圧力注射
圧力注射器は、高圧ガスの短いパルスにより薬物を噴射する。予想外に、BoNTなどの大分子を皮膚、皮下組織、骨、脂肪および粘膜を通して噴射することができる。注射は組織の中にまっすぐ行われても、またはある角度で行われてもよい。注射液は組織内に留まっても、または鼻腔内に入ってもよい。注射の深度は0.1mm〜20mmの範囲であってもよい。注入される量は0.01〜10mlの範囲であってもよい。圧力範囲、粒径、および速度は上記で引用した参考文献に教示されている。
【0072】
圧力注射器のノズルは、外鼻孔に鼻腔内粘膜の方を向く角度で;梨状口に鼻腔内粘膜の方を向く角度で;鼻骨上に、注射液が骨を透過するようにして;涙嚢または涙管の上に、注射液が皮膚を透過し、これらの構造に入るようにして;唇の下の歯肉に当てて、鼻粘膜の方を向く角度で;唇の下の粘膜に当てて、上顎洞前壁を直接通る向きの(または孔を通る向きの)角度で;および、硬口蓋の蝶口蓋孔のところに当てて、注射液が翼口蓋神経節の方に進むようにして;使用することができる。
【0073】
50歳の男性は慢性鼻炎を有する。圧力注射器ノズルを鼻外の鼻翼上に当て、シャフトを梨状骨縁の方に横向きにする。20バールの圧力パルスで10単位のBoNT溶液0.1mlが皮膚の中に放出され、皮下組織を通り、下鼻甲介内またはその周囲の鼻粘膜内で終わるようにする。図10に示すように、ノズル角度を変えることができる。
【0074】
実施例4:鼻腔内スプレー
エアゾール化された液体粒子が肺に吸入される可能性があるため、ボツリヌス毒素に関してエアゾールスプレーの使用は実際的ではない。しかし、加圧液滴または粒子をノズルから標的粘膜に直接噴射することにより、エアゾール化薬剤の問題が回避される。エアゾールよりもむしろ、スプレーという用語の方が本発明をよく特徴付ける。スプレー塗料と同様に、液体もしくはゲルの液滴、または乾燥粒子を鼻孔内にスプレーする。この方法は局所適用の一変形形態である。
【0075】
スプレーは、生体接着性ゲルまたは粒子(ナノ粒子を含む)などの担体内のBoNTからなる。溶融担体中の薬物の分散体を噴霧化することからなるスプレー−凝固は、溶媒を含まない方法であり、粘膜付着性微小粒子の調製に有利な可能性がある。キトサン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびポロキサマーは担体物質の例である。ZhouおよびDonovanは、ラットモデルを使用した粘膜線毛クリアランス試験に、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボポール934P、キトサングルタメート、およびプルロニックF127などの生体接着性ポリマーと考えられているものを使用した。鼻腔からのこれらのポリマーゲルの粘膜線毛クリアランスは、蛍光標識され、製剤に組み込まれるマイクロスフェアを後で除去することにより測定された。プルロニックF127および他のポリマーゲル製剤は比較的長い滞留時間を有し、従って粘膜線毛クリアランスを低下させることが分かった。
【0076】
これらの粒子は所定の場所で溶解し、BoNTを放出することができる。同様に、BoNTを含有する生体接着性ゲルからなるスプレーは、粘膜に付着し、BoNTを放出することができる。これにより総用量として0.1〜100単位、好ましくは1〜20単位が送達されるであろう。
【0077】
10歳の男児は、鼻鬱血、くしゃみおよび鼻水を伴うアレルギー性鼻炎を有する。患者は、抗生物質を必要とする副鼻腔炎を頻繁に発症する。医師は、10単位のBoNTを含浸させたポロキサマーゲルを各鼻孔内にスプレーする。粘性のゲルは分散して粒子となり、内側壁および外側壁の表面に付着する。BoNTは粒子から溶解し、粘膜に到達する。1ヵ月後の治療経過観察で、患者はくしゃみや鬱血の減少を報告する。5ヶ月間副鼻腔炎の発症がない。
【0078】
実施例5:鼻腔内圧力注射
本発明の別の実施形態は、鼻内での圧力注射の使用である。これは、粘膜穿刺を行わないため、針注射より優れている。これと鼻スプレーの違いは、圧力注射が組織に当てて保持され、より高い圧力を使用して薬剤を組織に注入することである。幾つかの場合、圧力を使用して、副鼻腔の自然口などの狭窄した空間を通して薬剤を注入する。さらに他の実施形態では、圧力注射器を使用し、薄い骨を通して注入する。
【0079】
40歳の男性は、顕著な鬱血と後鼻漏を伴う通年性鼻炎を訴える。患者は、局所ステロイドを使用したが軽減しなかった。検査により両側の粘膜の腫脹および粘液鼻漏が認められる。医師は、6cmのノズルを有する圧力注射を使用する。通常生理食塩水中に50単位のBoNTを含有する0.5ccのボーラスを注射するように注射器を準備する。医師は、1%ネオシネフリンスプレーで両方の鼻腔の鬱血を除去する。次いで、鼻粘膜に1%リドカインをスプレーする。直視下で後上鼻腔にノズルを進入させ、粘膜に押し当てる。パルスでBoNT溶液を、薄い骨を通して翼口蓋窩(pterygopalatine space)に注入する。翼口蓋窩内で翼口蓋神経節は遮断され、それにより鼻および副鼻腔への遠心性神経支配がほぼ完全に遮断される。2週間後に、患者は鼻鬱血と後鼻漏の減少を報告する。
【0080】
実施例6:涙器系
図6に涙器系を示す。涙器系は涙液を目から、眼瞼の内側にある涙点を通して排出する。これはまた涙嚢に繋がり、その後、涙管を通して排出され、鼻の外側壁の中に放出される。涙器系はBoNTを鼻腔に送達するのに好都合な導管である。涙嚢は、薬物貯蔵所、長時間にわたり薬物を溶出する多量または薬物リザーバに好都合な箇所である。
【0081】
様々な方法でBoNTを涙器系に送達することができる。それを涙点に排出される点眼薬に溶解させてもよい。それを、涙点を通して注射または圧力注射してもよい。中央の写真に示すようにそれを特殊な穿刺針で送達してもよい。それを、皮膚を通して涙嚢または鼻涙管の中に注射してもまたは拡散させてもよい。
【0082】
アレルギー性鼻炎およびアレルギー性結膜炎を有する40歳の男性に0.1ccの通常生理食塩水中10単位のBoNTを、皮膚を通して各涙嚢の中に注射する。1ヶ月内に症候は50%減少し、これが4ヶ月間続く。
【0083】
実施例7:副鼻腔への外部送達
驚くべきことに、鼻粘膜に対して効果を有する薬物をまず副鼻腔に送達することができる。副鼻腔自体が治療標的であるが、それが鼻腔の中に排出する時、それはまた鼻粘膜にも薬物を送達する。さらに、それが自然口を通して排出するとき、特に重要なのは、自然口の狭小化または狭窄が問題となる場合である。最後に、副鼻腔は表面積が大きく、これは特定の状態では有利となり得る。
【0084】
一実施形態では、鼻骨、篩骨、前頭骨、上顎骨、または口蓋骨を通して針注射を行うことができる。
【0085】
別の実施形態では、圧力注射は上顎洞前壁を通して、特に眼窩下孔部位の上顎洞前壁を通して送達される。注射は、頬の皮膚を通してまたは唇の下で口腔内粘膜を通して行ってもよい。
【0086】
鼻炎および慢性左側上顎洞炎を有する40歳の男性。50単位のBoNTを含有するBoNT溶液1ccの圧力注射を、眼窩下孔領域の上顎洞前壁を通して行う。
【0087】
実施例8:喘息
本発明の別の部分は、BoNTを頭部および頸部に、好ましくは上気道、最も好ましくは鼻粘膜に適用することによる喘息および他の肺疾患の治療である。適用されるBoNTの量は、0.1〜1000単位、より好ましくは1〜100単位とすることができる。BoNTは、片側または両側に、局所的にまたは針注射もしくは圧力注射により適用されてもよい。本出願および参照出願に記載の方法を使用して、毒素を鼻粘膜に送達してもよい。
【0088】
20歳の男性は10年間の喘息の病歴がある。彼はほぼ毎日、呼気終末喘鳴を有し、この1年で3回救急治療室に来なければならなかった。彼は現在吸入ステロイドを使用している。通常生理食塩水1cc中5単位のBoNTをゲルフォームパッドに付け、それを各鼻腔に入れる。あるいは、20単位のBoNTを各下鼻甲介に注射してもよく、または20単位のBoNTを、鼻壁を通して翼口蓋神経節に注射してもよい。1週間後、患者の喘鳴は減少する。1ヵ月後、彼は吸入ステロイドを中止し、呼吸困難の増加がないことに気付く。
【0089】
1
10歳の男児はアレルギー性喘息を有する。症候には喘鳴や咳が含まれる。患者は毎月重度の増悪が見られ、緊急治療室に行くことを必要としている。医師は、10単位のBoNTを含浸させたポロキサマーゲルを各鼻孔にスプレーする。粘性のゲルは分散して粒子となり、内側壁および外側壁の表面に付着する。BoNTは粒子から溶解し、粘膜に到達する。1ヵ月後の治療経過観察で、患者は喘鳴や咳の減少を報告する。この月は増悪が見られなかった。改善は5ヶ月間続く。
【0090】
本発明は、実施例に開示する特定の実施形態により範囲が限定されるものではなく、それらは本発明の幾つかの態様の例示を目的としており、機能的に同等の実施形態はいずれも本発明の範囲に入るものとする。実際、本明細書に示され説明されるものの他に、本発明の様々な変更形態が当業者には明らかとなり、これらは添付の特許請求の範囲に入るものとする。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候の治療方法において、鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候がある哺乳類の鼻腔の外側の選択される部位に、治療有効量のボツリヌス毒素(BoNT)を投与し、前記鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候を治療するステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記BoNTが、針注射、マイクロニードル注射、噴射式注射もしくは圧力注射、または局所適用により投与されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記選択される部位が、鼻軟骨(cartilates)、鼻骨、上顎骨、涙骨、篩骨、または前頭骨の上に覆い被さる鼻の皮膚;鼻尖;外鼻孔;鼻翼;触診される梨状口の骨縁;涙嚢または涙管;眼瞼;唇の下;歯肉粘膜;蝶口蓋孔;および眼窩下孔からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記BoNTが、針注射により鼻骨、篩骨、前頭骨、上顎骨、または口蓋骨を通して送達されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記BoNTが噴射式注射または圧力注射により上顎洞前壁を通して送達されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記鼻または副鼻腔の症状が、鼻炎、感染性鼻炎、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、喘息、COPD、偏頭痛、脳血流障害、睡眠時呼吸障害、および眼の疾患からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記症候が、鼻鬱血、くしゃみ、鼻漏、後鼻漏、鼻もしくは副鼻腔の痛み、頭痛、咳、喘鳴、掻痒、発赤、鼻粘膜肥厚、および鼻ポリープからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記BoNTの用量が約0.1〜約100,000単位であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記BoNTの用量が約1〜約100単位であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記BoNTを皮膚透過性促進剤と組み合わせることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記BoNTをゲルと組み合わせることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、投与後、前記ゲルの粘度が上昇することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法において、前記ゲルが感温性ポロキサマーであることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、前記BoNTは浸透促進手段と共に適用されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記浸透促進手段が、アレルゲン、ヒスタミン、および電気刺激からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項16】
鼻および副鼻腔の症状、またはその症候の治療方法において、鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候がある哺乳類の選択された部位に、治療有効量のボツリヌス毒素(BoNT)を噴射式注射または圧力注射により投与し、前記鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候を治療するステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項1】
鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候の治療方法において、鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候がある哺乳類の鼻腔の外側の選択される部位に、治療有効量のボツリヌス毒素(BoNT)を投与し、前記鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候を治療するステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記BoNTが、針注射、マイクロニードル注射、噴射式注射もしくは圧力注射、または局所適用により投与されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記選択される部位が、鼻軟骨(cartilates)、鼻骨、上顎骨、涙骨、篩骨、または前頭骨の上に覆い被さる鼻の皮膚;鼻尖;外鼻孔;鼻翼;触診される梨状口の骨縁;涙嚢または涙管;眼瞼;唇の下;歯肉粘膜;蝶口蓋孔;および眼窩下孔からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記BoNTが、針注射により鼻骨、篩骨、前頭骨、上顎骨、または口蓋骨を通して送達されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記BoNTが噴射式注射または圧力注射により上顎洞前壁を通して送達されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記鼻または副鼻腔の症状が、鼻炎、感染性鼻炎、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、喘息、COPD、偏頭痛、脳血流障害、睡眠時呼吸障害、および眼の疾患からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記症候が、鼻鬱血、くしゃみ、鼻漏、後鼻漏、鼻もしくは副鼻腔の痛み、頭痛、咳、喘鳴、掻痒、発赤、鼻粘膜肥厚、および鼻ポリープからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記BoNTの用量が約0.1〜約100,000単位であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記BoNTの用量が約1〜約100単位であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記BoNTを皮膚透過性促進剤と組み合わせることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記BoNTをゲルと組み合わせることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、投与後、前記ゲルの粘度が上昇することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法において、前記ゲルが感温性ポロキサマーであることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、前記BoNTは浸透促進手段と共に適用されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記浸透促進手段が、アレルゲン、ヒスタミン、および電気刺激からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項16】
鼻および副鼻腔の症状、またはその症候の治療方法において、鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候がある哺乳類の選択された部位に、治療有効量のボツリヌス毒素(BoNT)を噴射式注射または圧力注射により投与し、前記鼻もしくは副鼻腔の症状、またはその症候を治療するステップを含むことを特徴とする、方法。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【公表番号】特表2013−514376(P2013−514376A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544766(P2012−544766)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/060558
【国際公開番号】WO2011/084507
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(512152673)
【氏名又は名称原語表記】SANDERS,Ira
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/060558
【国際公開番号】WO2011/084507
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(512152673)
【氏名又は名称原語表記】SANDERS,Ira
【Fターム(参考)】
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