説明

鼻孔用マスク

【課題】楽に呼吸ができながらも、型崩れを生じづらく、さらに汎用性も高くする。
【解決手段】一端部から他端部に向かって拡開しながら延びる側壁部12に複数の段差を形成し、該側壁部12を階段状に屈曲させる。これにより、側壁部12の表面積が大きくなって呼吸が楽になるとともに、その曲げ剛性が向上し、型崩れが生じづらくなる。また、鼻孔が小さな人でも側壁部12のいずれかの段差部が鼻孔の入り口にある程度の面積で接触するため、外れにくくなって、汎用性も高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、不織布からなり、鼻孔内に一端部側から挿入される鼻孔用マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鼻孔用マスクとしては、例えば以下の特許文献1に記載されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−342214号公報
【0004】
このものは、不織布からなるとともに、中空の側壁部および側壁部の一端開口を閉止するよう該側壁部の一端部に一体的に連結された頂部を有し、鼻孔内に一端部側から挿入されるものであり、前記側壁部は、その一端部から他端部に向かって直線状に延びることで滑らかに拡開している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の鼻孔用マスクにあっては、側壁部が一端部から他端部に向かって単に直線状に延びているだけであるため、鼻孔用マスク全体の表面積が狭く、この結果、鼻孔に鼻孔用マスクを装着したときに息苦しさを感じることがあるという課題があった。また、側壁部は前述のように構成されているため、曲げ剛性が低くて型崩れを生じやすく、さらに、鼻孔が小さい子供等の場合には、鼻孔用マスクを装着しても、接触面積が狭いため、簡単に外れてしまうことがあるという課題があった。
【0006】
この発明は、楽に呼吸ができるとともに、型崩れが生じづらく汎用性の高い鼻孔用マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、不織布からなるとともに、中空の側壁部および側壁部の一端開口を閉止するよう該側壁部の一端部に一体的に連結された頂部を有し、鼻孔内に一端部側から挿入される鼻孔用マスクにおいて、前記側壁部が、その一端部から他端部に向かって階段状に屈曲しながら拡開していることにより、達成することができる。
【発明の効果】
【0008】
この発明においては、側壁部が一端部から他端部に向かって階段状に屈曲しながら拡開しているので、側壁部の表面積が、結果的に鼻孔用マスク全体の表面積が従来のものに比較して大きくなり、この結果、鼻孔用マスクを鼻孔に装着しても楽に呼吸をすることができる。また、側壁部は前述のように階段状に屈曲しながら拡開しているので、曲げ剛性が向上して型崩れを生じづらく、さらに、鼻孔の小さな子供等に装着させた場合、側壁部のいずれかの段差部が鼻孔の入口にある程度の面積で接触するため、鼻孔用マスクが外れにくくなり、汎用性が高くなる。
【0009】
また、吸気時には比較的多量の空気が頂部を通過するが、この頂部の目付を、請求項2に記載のように、側壁部の目付より大とすれば、吸気中の花粉や粉塵等を高率で捕捉することができ、マスクとしての機能を容易に向上させることができる。さらに、請求項3に記載のように構成すれば、突出部が鼻の下面に引っ掛かるため、鼻孔用マスクが鼻孔の奥深くに入り込む事態を回避することができるとともに、鼻孔からの取り出しを容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施形態1を示す概略斜視図である。
【図2】鼻孔用マスクの平面図である。
【図3】図2のI−I矢視断面図である。
【図4】鼻孔用マスクの製造工程を説明する成形機近傍の断面図である。
【図5】鼻孔用マスクの製造工程を説明する成形機近傍の断面図である。
【図6】この発明の実施形態2を示す一部破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1、2、3において、11は人の鼻孔内に一端部側から挿入される鼻孔用マスクであり、この鼻孔用マスク11は全体が不織布から構成されている。前記鼻孔用マスク11は、その一端部から他端部に向かって略截頭円錐状を呈しながら拡開する中空の側壁部12を有し、この側壁部12はいずれの軸方向位置においても断面形状が鼻孔の断面形状に近似した楕円形を呈している。
【0012】
13は平面形状が楕円形をした平坦な頂部であり、この頂部13が前記側壁部12の一端開口を閉止するよう該側壁部12の一端部に一体的に連結されることで、前記鼻孔用マスク11は全体として先端部(一端部)が略平坦な略釣鐘状を呈することになる。なお、側壁部の断面形状および頂部の平面形状は、円形あるいは多角形であってもよく、また、頂部は平坦でなく大きな曲率半径の湾曲する凸面または凹面から構成してもよい。
【0013】
ここで、従来のように、鼻孔用マスクの側壁部が一端部から他端部に向かって単に直線状に延びていると、鼻孔用マスク全体の表面積が狭くなってしまうため、鼻孔に鼻孔用マスクを装着したとき、息苦しさを感じることがあり、また、側壁部の曲げ剛性が低くて型崩れを生じやすくなってしまう。このため、この実施形態では、一端部から他端部に向かって拡開している鼻孔用マスク11の側壁部12に、その一端部から他端部に向かって複数の段差を等距離離して次々と形成し、これにより、前記側壁部12を階段状に屈曲させ、その断面積を他端部に向かって断続的に増大させるようにしている。
【0014】
これにより、側壁部12の表面積が、結果的に鼻孔用マスク11全体の表面積が従来のものに比較して大きくなり、鼻孔用マスク11を鼻孔に装着しても楽に呼吸をすることができる。また、複数の段差により側壁部12の曲げ剛性が向上して型崩れが生じづらくなり、さらに、鼻孔の小さな子供等に装着させる場合にも、側壁部12のいずれかの段差部が鼻孔の入口にある程度の面積で接触するため、鼻孔用マスク11が外れる事態を効果的に抑制することができ、汎用性が高くなる。
【0015】
なお、前述の側壁部12は、この実施形態では中心軸に平行な円筒面と、中心軸に垂直なリング状の段差面とにより階段状に屈曲させたが、この発明においては、前記側壁部を波状に変形させることで階段状に屈曲させるようにしてもよい。そして、前述のように、側壁部12を階段状に屈曲させると、鼻孔用マスク11を鼻孔内に挿入したとき、側壁部12の段差のエッジと鼻孔内面とが摺接することによって鼻孔内に傷が付くおそれがあるが、このような事態を防止するために、前記段差のエッジに面取りを施すことが好ましい。
【0016】
また、前記頂部13における不織布の目付(秤量とも呼ばれ、単位はg/m2)は、前記側壁部12における不織布の目付より大であることが好ましい。その理由は、このようにすると、比較的多量の空気が頂部13を通過する吸気時に、吸気中の花粉や粉塵等を該頂部13によって高率で捕捉することができ、マスクとしての機能を容易に向上させることができるからである。ここで、前記頂部13の目付は側壁部12の目付の1.5〜6.0倍の範囲内とすることが好ましい。その理由は、前記値が 1.5倍未満であると、側壁部12の中心軸方向長さ(深さ)が小さくなって、鼻孔から抜け出しやすくなり、一方、 6.0倍を超えると、側壁部12での花粉等の捕捉が不十分となることがあるからである。そして、前記頂部13における目付の値は、50〜 250g/m2 の範囲内とすることが好ましい。
【0017】
14は側壁部12の他端外縁から半径方向外側に向かって突出した複数、ここでは2個の突出部であり、これら突出部14は側壁部12の他端外縁に、その他端開口形状の重心位置を中心として 180度離れて一体的に設けられている。そして、このような突出部14を鼻孔用マスク11に設ければ、鼻孔用マスク11を鼻孔に装着したとき、突出部14が鼻の下面に引っ掛かるため、鼻孔用マスク11が鼻孔の奥深くに入り込む事態を回避することができるとともに、鼻孔からの取り出しを容易とすることができる。
【0018】
次に、前述のような鼻孔用マスク11は、例えば、以下に説明するようにして製造することができる。即ち、図4、5において、20はメルトブロー法、スパンボンド法、サーマルボンド法等の不織布製造法によって製造されたシート状をした一層の不織布であり、この不織布20は成形機21に搬入された後、該成形機21の下金型22上に水平に載置される。
【0019】
なお、この不織布20を構成する原料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、フッ素系樹脂、およびこれらの共重合体または混合物等を挙げることができる。さらに、前記不織布20を構成する繊維に、常時帯電により花粉、粉塵等の捕捉に優れているエレクトレット化繊維を混合するようにしてもよい。
【0020】
前記下金型22の上面23には下端から上端に向かって略截頭円錐状を呈しながら拡開する凹み24が形成されており、この凹み24の側壁25は凹凸の段差が軸方向に複数形成されることで、断面が階段状に屈曲している。26は凹み24の底壁に形成された上下方向(深さ方向)に延びる中心孔であり、この中心孔26には上下方向に延びる昇降可能な昇降ロッド27の下側部が収納されている。
【0021】
この昇降ロッド27の上端には平面形状が楕円形を呈し平坦な上側面を有する昇降プレート30が連結固定され、この昇降プレート30の下側面と中心孔26の上下方向における途中に設けられた図示していないストッパーの上側面との間には、該昇降プレート30を常時上方に向かって付勢する付勢手段としてのスプリング31が介装されている。なお、昇降プレートを常時上方に付勢する付勢手段としてエアシリンダ等を用いてもよい。
【0022】
そして、前記昇降プレート30は、前記スプリング31のみにより上方に付勢され、他に何等の外力も付与されていないときには、上側に移動するが、その移動は、昇降プレート30の上側面と下金型22の上面23とが実質的に同一面内となる上昇限で停止する。前記下金型22の上方には昇降することで該下金型22に離隔接近する上金型32が設置され、この上金型32の下面33には、前記凹み24とほぼ補完関係にある凸部36が形成されている。前記凸部36の下端面34は平坦で平面形状が楕円形を呈し、一方、その側面35は前記下端面34から上方(上金型32の下面33)に向かって拡開するとともに、凹凸の段差が形成されることで断面が階段状に屈曲している。
【0023】
そして、前記上金型32が図示していない昇降機構により下降して下金型22に接近すると、不織布20は前記下金型22の凹み24と上金型32の凸部36との間に挟まれて圧縮されながら絞り成形(加工)され、図1に示すような形状をした鼻孔用マスク11が製造される。なお、このような成形は、例えば 100〜 200度Cまで下、上金型22、32を加熱しながら行うようにしてもよい。
【0024】
ここで、製造工程を説明すると、まず、不織布20を下金型22の上面23および上昇限まで上昇した昇降プレート30の上側面上に供給載置し、その後、凹み24の周囲の不織布20を昇降可能な押さえ部材37によって下金型22の上面23に押付け、不織布20のずれを阻止する。次に、上金型32を下降させて凸部36の下端面34と上昇限に位置する昇降プレート30の上側面とにより不織布20の一部を、図4に示すように上下から挟持する。この状態で上金型32をさらに下降させるが、このとき、昇降プレート30は上金型32に押されてスプリング31を圧縮しながら、図5に示す下降限まで下降する。
【0025】
これにより、不織布20の一部は凹み24の深さ方向に押し込まれて引き伸ばされ、鼻孔用マスク11の側壁部12が成形される一方、上金型32と昇降プレート30とにより挟持された部位は殆ど引き伸ばされることなく鼻孔用マスク11の頂部13となる。この結果、製造された鼻孔用マスク11の頂部13における目付は側壁部12の目付より大となり、前述のようにマスクとしての機能が向上する。また、前記側壁部12は引き伸ばされるものの階段状に屈曲変形されるので、該側壁部12の曲げ剛性は効果的に向上し、型崩れが抑制される。その後、図示していない打ち抜き刃により打ち抜いて不織布20から切り離し、所定形状の鼻孔用マスク11を製造する。
【0026】
図6は、この発明の実施形態2を示す図である。この実施形態においては、実施形態1における突出部14を省略する代わりに、2個の鼻孔用マスク11の他端部外縁同士を一体的に連結する連結部40を設けている。この場合には、取り扱いが容易となり、しかも、各鼻孔用マスク11をそれぞれ左右の鼻孔に装着したとき、連結部40が鼻孔間の鼻中隔に引っ掛かるため、鼻孔用マスク11が鼻孔の奥深くに入り込む事態を容易に回避することができる。また、この実施形態においては、側壁部12の他端部全域に一定幅のつば部41を形成し、これにより、鼻孔用マスク11が鼻孔の奥深くに入り込む事態を抑制するようにしている。ここで、前記つば部41は一側から他側に向かって半径方向内側から半径方向外側に延びるよう傾斜しているが、その傾斜角Aは、つば部41を鼻の下面に優しくフィットさせるには、20〜45度の範囲内とすることが好ましい。
【0027】
なお、前述の実施形態においては、一層の不織布20から鼻孔用マスク11を製造するようにしたが、この発明においては、鼻孔用マスクを、複数層、例えば3層だけ積層したシート状の不織布から製造するようにしてもよく、このような3層構造の不織布シートは、2枚の不織布間にポリウレタン等からなる熱接着性不織布を介在させることで安価に製造することができる。そして、不織布をこのような積層構造とすれば、鼻孔用マスクの曲げ剛性が向上し、形状安定性を向上させることができる。
【0028】
また、前述の実施形態においては、下、上金型22、32を用いてシート状の不織布20から鼻孔用マスク11を製造するようにしたが、この発明においては、マーホーム法、ハイドロフォーム法等を用いて鼻孔用マスクを製造するようにしてもよい。また、この発明においては、鼻孔用マスク11の製造時に押さえ部材37を省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明は、不織布からなり、鼻孔内に一端部側から挿入される鼻孔用マスクの産業分野に適用できる。
【符号の説明】
【0030】
11…鼻孔用マスク 12…側壁部
13…頂部 14…突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布からなるとともに、中空の側壁部および側壁部の一端開口を閉止するよう該側壁部の一端部に一体的に連結された頂部を有し、鼻孔内に一端部側から挿入される鼻孔用マスクにおいて、前記側壁部が、その一端部から他端部に向かって階段状に屈曲しながら拡開していることを特徴とする鼻孔用マスク。
【請求項2】
前記頂部における目付が前記側壁部における目付より大である請求項1記載の鼻孔用マスク。
【請求項3】
前記側壁部の他端外縁に外側に向かって突出した突出部を複数設けた請求項1または2記載の鼻孔用マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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