説明

鼻性鼻炎の治療に使用するための組換えヒトCC10およびその組成物

本発明は、全体として、鼻性鼻炎、鼻性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、および鼻ポリープの治療における治療薬として使用される組換えヒトウテログロビンとしても知られる組換えヒトCC10(rhCC10)の使用に関する。詳細には、本発明は、上記の状態を安全かつ効果的に治療するために投与することができるrhCC10の臨界用量範囲および鼻腔内経路の投与を広く含む方法を提供する。本発明は、ヒトへのrhCC10の投与に有用な組成物をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連文献の相互参照
本願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる2008年5月13日に出願した米国仮特許出願第61/052,861号の利益および優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、患者の鼻道の空気の流れの障害を減少させ、副鼻腔感染を一掃し、および副鼻腔の痛みを軽減する方法に関する。詳細には、本発明は、患者の鼻性鼻炎、副鼻腔炎、および鼻ポリープを治療する方法ならびにこれらの方法に有用な組成物に関する。より詳細には、本発明は、鼻腔内投与される組換えヒトCC10を用いた上記の治療方法およびこれらの治療方法に有用な組換えヒトCC10の組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
クララ細胞「10kDa」タンパク質(CC10)またはウテログロビン(UG)は、いくつかの粘膜上皮および上皮起源の他の器官によって産生される小さいホモ二量体の分泌タンパク質である(Mukherjee、1999)。CC10は、70のアミノ酸残基の2つの同一のサブユニットからなり、各サブユニットは、Cys3と69’との間および3’と69との間の2つのジスルフィド結合によって逆平行方向に接合された「4つのヘリックスバンドル」二次構造モチーフを備えている(Matthews、1994; Morize、1997)。2つのジスルフィド結合を含むホモ二量体は、その主要な形態である細胞外活性型と思われる。ヒトでは、肺がCC10の産生の主な部位であり、いくつかの他の器官が、このタンパク質をコードするmRNAを少量合成する(Singh、1987; Sandmoller、1994)。CC10は、他のタンパク質、受容体、および細胞型との様々な相互作用について特徴が明らかにされてきた抗炎症性の免疫調節タンパク質である(Mukherjee、2007、Mukherjee、1999、およびPilon、2000を参照)。低レベルのCC10タンパク質またはmRNAが、喘息(Lensmar、2000; Shijubo、1999; Van Vyve、1995)、肺炎(Nomori、1995)、閉塞性細気管支炎(Nord、2002)、サルコイドーシス(Shijubo、2000)、ならびに再発性副鼻腔炎および鼻ポリープを伴う慢性鼻炎の患者(Liu, 2004)を含むある程度の炎症によって特徴付けられた多数の臨床症状の様々な組織および流体試料で見出されている。肺上皮細胞、すなわち内因性CC10の体内の主な供給源は、これらの症状で悪影響を受け、消耗し、または除去さえされる場合も多い(Shijubo、1999)。実際、CC10は、特定のセットの非繊毛呼吸上皮細胞および関連構造の発生に必要な自己分泌および/または内分泌であると思われる(Castro、2000)。したがって、CC10の欠乏が、炎症および/または症状の原因または結果であるかが未だに分かっていない。
【0004】
鼻道内の空気の流れの障害、ならびに副鼻腔の痛みおよび圧迫感は、アレルギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、および鼻ポリープに苦しんでいるヒトにおける重大な病的状態の原因であることが知られている。鼻性鼻炎は、鼻咽頭腔(nasopharygeal cavity)における鼻道および副鼻腔の炎症である。アレルギー性と非アレルギー性の2種類の鼻炎が存在する。非アレルギー性鼻炎は、ウイルス、細菌、または他の感染、吸入した化学種または他の刺激物への曝露によるものであり、特発性の場合もあるが、アレルギー性鼻炎は、吸入したアレルゲンへの曝露によるものである。アレルギー性鼻炎は、樹木や草の花粉に対するアレルギーなどの季節性であるか、またはイエダニや一般的なカビに対するアレルギーなどの通年性である。鼻炎は、数時間、数日、または数週間に渡る痒み、くしゃみ、および鼻汁による軽度の季節性の不快感から、再発性の細菌感染に関連する場合が多い、痛みを伴う消耗性の慢性副鼻腔の炎症まで重症度に幅がある。細菌感染の存在下での慢性副鼻腔の炎症は、時には慢性副鼻腔炎(「CRS」)と呼ばれることもある。CRSは、気道上皮および副鼻腔組織の不可逆性リモデリングおよび瘢痕をもたらす。鼻組織のこれらの永久変化は、ウイルスおよび細菌の両方の感染と戦う能力の低下ならびに吸入したアレルゲンおよび刺激物を排除する能力の低下により、さらに重い炎症反応、さらに深刻なリモデリングおよび線維症、さらに重度または持続的な感染が起こる悪循環をもたらす。理論的には、炎症は、感染がなければ可逆的であり、刺激物、病原体、またはアレルゲンが局所組織から除去されるとすぐに消失するはずである。したがって、季節性または軽度の鼻炎からCRSへの移行は、通年性アレルゲンへの慢性曝露および/または炎症を起こした鼻および副鼻腔の組織の再発性細菌感染に大きく起因し、元の鼻炎の刺激(アレルゲンまたは刺激物)が無くなって長い時間が経過しても感染が持続する。実際、慢性鼻炎をもたらす通年性アレルギーの患者は、炎症反応がアレルゲン−刺激反応から感染−刺激反応に移行すると、再発性細菌感染(副鼻腔炎)に罹患する場合が多い。これらは、重度の持続性鼻副鼻腔炎CRS疾患に罹患した、最も重度の病的状態の患者である。慢性鼻炎は、アレルギー性または非アレルギー性にかかわらず、呼吸を障害し、睡眠を妨げ、そして繰り返される細菌性副鼻腔感染に罹りやすくする鼻道の過度の粘液の産生および腫れを引き起こす。副鼻腔の痛みおよび圧迫感は、この疾患の重大な病的状態を引き起こす。細菌感染は、急性または慢性にかかわらず、これらの症状を悪化させる。最も重度の場合、鼻ポリープが、鼻の気道で成長し、鼻の気道を徐々に塞ぐ。これらのポリープは、副鼻腔切除手術によってのみ除去することができる副鼻腔組織の非悪性増殖物である。鼻ポリープの患者は、除去するたびにポリープが再び成長して、定期的に副鼻腔切除術を受けなければならない場合もある。
【0005】
しかし、鼻ポリープの有るまたは無い鼻炎、特に慢性鼻炎および鼻副鼻腔炎の患者ならびに慢性または再発性細菌性副鼻腔感染の患者において、rhCC10が炎症を緩和できるか否か、およびその用量は解明されていなかった。実際、以下に示すように、近年の研究は、既知の一般的に使用されている用量では、rhCC10が有効でないことを示している。
【0006】
季節性アレルギーによる鼻の炎症および鼻炎を抑制する鼻腔内のrhCC10の効果を評価するための近年の第2相臨床試験では、rhCC10の治療により、プラセボと比較して、6つの有効性指標の1つで症状の有意な悪化がもたらされた(Widegrenら、2009)。残りの5つの有効性指標については、rhCC10とプラセボとの間に違いがなかったが、すべてはプラセボが優れている傾向にあった。rhCC10は、鼻吸引のピークの流れの改善(増加)および空気アレルゲンの投与によって引き起こされる鼻漏の緩和においてプラセボよりも劣っていた。表1は、各治療期間の最後の3日間(5日目〜7日目)の間に測定された、プラセボを摂取した患者の結果に対するrhCC10を摂取した同じ患者の結果の比較を示している。
【0007】
【表1】

【0008】
この概念実証試験は、季節性アレルギー性鼻炎のこの鼻アレルゲン曝露モデルにおいて、7日間に渡って1日1回投与されたrhCC10の全体的な有効性を実証することに失敗した。200μLに溶解した1.1mgのrhCC10の1日1回の鼻腔内投与は、プラセボと比較して、アレルゲン誘導性の朝の症状、曝露後の症状、または晩の症状に良い影響を与えなかった。高いPNIFは、より多くの空気の流れを反映し、低いPNIFは、制限された空気の流れを示す。朝および晩のPNIFは、rhCC10によって影響されなかったが、曝露後のPNIFは、プラセボと比較してrhCC10の治療によりやや減少したが、この減少は統計的有意ではなかった。プラセボ群で達した症状のスコアおよびPNIFのレベルは、このモデルで経時的に記録した値に非常に近かった。好酸球陽イオンタンパク質、ミエロペルオキシダーゼ、およびα2−マクログロブリンのレベルを含む鼻洗浄液中の炎症マーカーも同様であり、rhCC10は、プラセボと比較してこれらのマーカーの減少を一切仲介しなかった。このモデルでは、コルチコステロイドが、朝の症状、曝露後の症状、および晩の症状ならびに鼻洗浄液中の炎症マーカー(Ahlstrom-Emanuelssonら、2002 & 2007)を抑制し、抗ヒスタミン剤が、曝露後の症状のみを軽減すること(Korsgrenら、2007)が実証された。したがって、この用量、投与計画、鼻腔内投与の量およびスプレー方法を用いると、rhCC10は、6つすべての臨床結果の指標または鼻洗浄液中の3つすべての炎症マーカーにおける抗アレルギー、抗炎症効果を示さなかった。
【0009】
現在、殆どの鼻性鼻炎および鼻副鼻腔炎は、抗ヒスタミン剤、充血除去剤、非ステロイド系抗炎症薬(「NSAIDS」)および様々な非薬理的鼻用スプレー、および洗浄液などの市販薬および処方薬で治療される。クロム点鼻薬、口腔用抗ヒスタミン剤、およびロイコトリエン受容体拮抗薬は、症状を治療するが、2、3時間の症状の除去にすぎない。オキシメタゾリン点鼻薬は、鼻道の開存に非常に有効であるが、過度の使用は、「リバウンド効果」をもたらし、有効性が急速に低下して症状が悪化する。これらの種類の薬物の副作用には、特に、咽頭炎、鼻組織の乾燥、および便秘が含まれる。
【0010】
さらに、副鼻腔炎は、典型的には口腔用の抗生物質で治療される。抗生物質は、副作用の弱いものから強いものまであり、副作用には、便秘や他の消化の問題、頭痛、めまい、発疹、肝臓毒性、腎臓毒性、および膀胱毒性、筋肉および関節の痛みなどが含まれ得る。また、抗生物質は、特に、抗生物質を繰り返し摂取しなければならず、最終的にその抗生物質に対してアレルギーを持つようになる再発性副鼻腔炎の患者で過敏性反応を引き起こすことがある。抗生物質に対する過敏性反応は、アレルギーの兆候や前兆なしに起こることがあり、突然、致命的となることがある。
【0011】
重度および/または慢性の鼻副鼻腔炎疾患の場合、医師は、現在、炎症を軽減するが数週間または数カ月の連続的な治療後に有効性が失われる場合が多い鼻用のコルチコステロイドを処方する。口腔用のコルチコステロイドもまた、有効であるが、長期に渡って使用すると多数の望ましくない副作用が起きる。例えば、成人では、高血圧症および発作を含む心血管合併症は、コルチコステロイド使用の主な副作用である。小児では、コルチコステロイドは、正常な成長および発達を阻害する。すべての患者で、コルチコステロイドは、患者の免疫機能を低下させ、あらゆる種類の感染(細菌、ウイルス、真菌など)に罹りやすくする。したがって、安全が、鼻性鼻炎、特に慢性副鼻腔炎、鼻ポリープ、慢性または再発性細菌性副鼻腔感染、それらに関連した病的状態、および他の同様の状態を治療、予防、または治癒するために使用される薬物および複合薬の選択における主な考慮事項である。
【0012】
鼻炎、副鼻腔炎、および鼻副鼻腔炎を治療するために薬物を鼻腔内投与することができるいくつかの製剤、装置、および方法が存在する。鼻道および副鼻腔への薬物の局所鼻腔内投与の1つの方法では、スプレーボトルまたはスプレーポンプ装置内の液体製剤が使用され、液体製剤が小さい開口に通過されてエアロゾルに変換され、各鼻孔内の鼻腔の前側部分にスプレーされる。
【0013】
上述の装置によって生成される粒度は、鼻咽頭腔(nasopharygeal cavity)の内側を覆っている鼻粘膜への薬物の送達および局所堆積を最大化する5μm〜10μmの範囲である。鼻粘膜は、鼻咽頭腔の鼻道および副鼻腔における湿った上皮の上に位置する通常は薄い粘膜の層からなる。鼻孔内にスプレーされる5μm〜10μmの粒子の殆どが、鼻咽頭腔の前側部分の非繊毛上皮に衝当する。鼻粘膜の衝当部位に堆積されると、薬物は、粘膜全体に行き渡り、薬物および粘膜が飲み込まれる咽頭に向かって押す鼻咽頭腔の前側3分の2に位置する繊毛および繊毛上皮細胞の作用によって様々な速度で除去され得る。鼻腔内に堆積される薬物の局所作用は、送達される粒度、製剤、および除去速度に左右される。これらの因子は、局所送達の有効性、ならびに鼻咽頭粘膜および上皮が薬物に曝露されてから除去されるまでの時間の長さに影響を与える。
【0014】
鼻腔内投与される薬物の局所作用はまた、送達時の鼻粘膜および組織の状態に左右される。例えば、鼻道が厚い粘膜によって塞がれている場合は、薬物の局所送達は、不可能ではないにしても非常に困難である。
【0015】
したがって、重度の副作用なしに、長期に渡って気道の閉塞、副鼻腔の痛みおよび不快感を緩和する作用物質およびその作用物質の正しい用量を見出すことが重要な課題である。したがって、より効果的または持続的な新規の作用物質およびその製剤、ならびに特に慢性疾患の患者へのその投与および投与計画の要求が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記は、本発明によって達成される目的の包括的なリストを提供する。
【0017】
本発明の主な目的は、rhCC10を用いて、鼻ポリープの有るまたは無い患者の鼻性鼻炎、副鼻腔炎、特に慢性鼻炎および鼻副鼻腔炎を治療、治癒、または予防することにある。
【0018】
本発明のさらなる目的は、rhCC10を用いて、慢性鼻炎、副鼻腔炎、および鼻副鼻腔炎に関連した痛みおよび副鼻腔の圧迫感を緩和することにある。
【0019】
本発明のさらなる目的は、rhCC10を用いて、鼻性鼻炎または副鼻腔炎の患者がより良質の睡眠を得ることを可能にすることにある。
【0020】
本発明のさらなる目的は、鼻腔内滴下注入、鼻洗浄によって、またはスプレー装置の使用を伴う鼻腔内エアロゾルとして患者にrhCC10を投与することにある。
【0021】
本発明のさらなる目的は、上記の目的を達成し、かつ免疫応答を有意に抑制しない、そして有害事象の頻度または重症度を高めない、安全で忍容性が良好なrhCC10の有効量の範囲を提供することにある。
【0022】
本発明のさらなる目的は、rhCC10をエアロゾル、ゲル、または液体として鼻咽頭腔(nasopharygeal cavity)に効果的に投与できる薬物−装置組合せを提供することにある。
【0023】
本発明のさらなる目的は、使い捨てスワブアプリケータ(swab applicator)を用いた、局所投与および持続放出のためのゲルまたはクリームでの適用のために、薬理学的に許容される特定の鼻用賦形剤に含められたrhCC10の製剤を提供することにある。
【0024】
本発明のさらなる目的は、スプレーポンプまたはスクイーズボトルを用いた、局所投与および堆積のための5μm〜10μmの粒度範囲のエアロゾルとしての適用のために、薬理学的に許容される特定の鼻用賦形剤に含められたrhCC10の製剤を提供することにある。
【0025】
本発明のさらなる目的は、複数回使用されるスプレーポンプディスペンサー、定量吸入器(MDI)、またはスクイーズボトル装置を用いた、局所投与および堆積のための5μm〜10μmの粒度範囲のエアロゾルとしての適用のために、薬理学的に許容される特定の鼻用賦形剤に含められたrhCC10の製剤を提供することにある。
【0026】
本発明のさらなる目的は、1回または複数回使用されるスプレーポンプディスペンサー、定量吸入器(MDI)、またはスクイーズボトル装置を用いた、経肺投与および堆積のための1μm〜5μmの粒度範囲のエアロゾルとしての適用のために、薬理学的に許容される特定の鼻用賦形剤に含められたrhCC10の製剤を提供することにある。
【0027】
本発明のさらなる目的は、単回または多回投与用シリンジ装置内の注入物としての適用のために、薬理学的に許容される特定の鼻用賦形剤に含められたrhCC10の製剤を提供することにある。
【0028】
本発明のさらなる目的は、「ネティポット(neti pot)」または同様の重力流洗浄装置を用いた鼻洗浄液中の注入物としての適用のために、薬理学的に許容される特定の鼻用賦形剤に含められたrhCC10の製剤を提供することにある。
【0029】
本発明のさらなる目的は、鼻咽頭腔における他の薬物の投与部位での局所炎症反応によって引き起こされる痛み、刺激、および不快感の緩和のために、薬理学的に許容される鼻用賦形剤としてrhCC10自体を提供することにある。
【0030】
本発明のさらなる目的は、鼻咽頭腔に投与される、または鼻咽頭腔を介して投与される他の薬物のバイオアベイラビリティを促進するために薬理学的に許容される鼻用賦形剤としてrhCC10自体を提供することにある。
【0031】
本発明のさらなる目的は、鼻腔内投与のために他の薬物との複合製剤中の活性成分としてrhCC10を提供することにある。
【0032】
用語「薬理学的に許容される」は、有害効果をもたらさないか、または既知であって規制当局が許容する、または許容できる有害効果をもたらす製剤または賦形剤の組合せを特徴付けることを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0033】
これらおよび他の目的、特徴、および利点は、鼻ポリープを伴うまたは伴わない鼻性鼻炎、副鼻腔炎、鼻副鼻腔炎、およびCRSを治療、治癒、または予防するために適切な間隔での所定の用量範囲または単回投与でrhCC10を投与することによって達成される。さらに、慢性鼻炎患者に対して、rhCC10は、適切な間隔での所定の用量範囲または単回投与で投与される場合に慢性鼻炎の治療、治癒、または予防にさらに大きな利点を提供する。したがって、鼻の炎症、鼻炎、鼻性鼻炎、慢性鼻炎、副鼻腔炎、および鼻副鼻腔炎の治癒、治療、または予防に効果がないと思われたrhCC10が、驚くべきことに、実際は本発明に従って使用すると有効であることを見出した。
【0034】
これらおよび他の目的、特徴、および利点はまた、副鼻腔の痛みおよび圧迫感、副鼻腔の不快感による不眠、慢性鼻炎、鼻副鼻腔炎、および鼻ポリープの成長または再成長の1つ以上を患者が示す場合、適切な間隔での所定の用量範囲または単回投与でrhCC10を投与することによって達成される。
【0035】
これらおよび他の目的、特徴、および利点はまた、血小板の凝集を阻害しない、風邪またはインフルエンザなどにおける免疫応答を抑制しない、またはあらゆる有害事象の頻度もしくは重症度を増加させないように、rhCC10を投与することによって達成される。
【0036】
本発明の特定の態様では、rhCC10は、重度の鼻性鼻炎、鼻性副鼻腔炎、特に慢性副鼻腔炎、および/または鼻ポリープを治療、治癒、または予防するために、1日に1.5μg〜1.1mgの範囲の各鼻孔間でほぼ等分された単回投与で、または1日に合計するとこの用量範囲を達成する多回投与で鼻腔内に投与される。別の態様では、1日に1.5μg〜1.1mgの範囲のrhCC10の鼻腔内量又は各鼻孔間でほぼ等分された量を、重度の鼻性鼻炎、鼻性副鼻腔炎、再発性副鼻腔炎を伴う慢性鼻炎、特に鼻副鼻腔炎、および/または鼻ポリープを治療、治癒、または予防するために適切な間隔で繰り返すことができる。本発明のさらに別の態様では、rhCC10は、7日間、10日間、14日間、または21日間連続して毎日鼻腔内投与される。
【0037】
本発明のさらに別の態様では、rhCC10は、1日に0.5μg〜370μgの範囲の各鼻孔間でほぼ等分された鼻腔内投与で、約8時間の間隔で1日に3回投与される。本発明のさらに別の態様では、rhCC10は、1日に0.75μg〜650μgの範囲の各鼻孔間でほぼ等分された鼻腔内投与で、約12時間の間隔で1日に2回投与される。
【0038】
本発明のさらに別の態様では、rhCC10は、まず、3日間、1日に0.5μg〜370μgの範囲の各鼻孔間でほぼ等分された鼻腔内投与で、約8時間の間隔で1日に3回、次いで、1日に0.5μg〜370μgの範囲の各鼻孔間でほぼ等分された鼻腔内投与で、約12時間の間隔で1日に2回、次いで、1日に0.5μg〜370μgの範囲の各鼻孔間でほぼ等分された鼻腔内投与で1日に1回、漸減式に投与される。本発明のさらに別の態様では、rhCC10は、上記の態様に従うが、合計して約15ng〜約10mgの範囲となる単回または多回投与で鼻腔内投与される。
【0039】
鼻腔内投与であるかないかにかかわらず、rhCC10は、限定されるものではないが、鼻腔内または全身コルチコステロイド、NSAID(アスピリン、COX-2阻害剤を含む)、鎮痛薬、抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌剤、充血除去剤、抗ヒスタミン剤、クロム溶液、鼻洗浄、生理食塩水鼻洗浄、およびホメオパシー療法を含む他の標準的な鼻炎および副鼻腔炎の治療の前または後に、これらの治療と組み合わせて、または単独で投与することができる。
【0040】
別の態様では、rhCC10は、適用部位における望ましくない局所炎症を引き起こすことがある、もしくは引き起こすことがない、または望ましくない局所炎症を他の方法で誘発する、もしくは誘発することがある他の薬物の鼻組織への局所送達または全身吸収のための局所鼻送達または適用を促進するために、賦形剤および/または局所抗炎症剤、および/または局所免疫抑制剤として用いることができる。したがって、rhCC10は、鼻送達に関連した不快感を緩和または回避するために他の薬物の賦形剤として用いることができる。
【0041】
別の態様では、rhCC10は、賦形剤として、または局所送達もしくは全身送達のために他の薬物の鼻腔内投与によって引き起こされる炎症を緩和するために用いることができる。
【0042】
加えて、rhCC10は、鼻への適用に適した粘度および鼻咽頭腔の局所分布プロフィールを得るために、水溶液、懸濁液(鼻用界面活性賦形剤を含む)、またはゲル(例えば、ヒドロキシメチルセルロースを利用するヒドロゲルなど)として製剤することができる。同様に、rhCC10は、抗生物質または他の抗菌剤、生理食塩水鼻洗浄、充血除去剤、粘液溶解薬、LTRA、β作動薬、気管支拡張剤など他の活性成分と組み合わせて製剤することができる。
【0043】
別の態様では、rhCC10は、鼻用スプレー圧迫ボトル、定量吸入器、またはスプレーポンプ装置内に充填される水溶液として製剤される。さらに別の態様では、rhCC10は、鼻用シリンジ型適用装置、定量吸入器、または他の鼻用適用装置内に充填される界面活性剤の懸濁物質として製剤される。さらに、さらなる別の態様では、rhCC10は、ヒドロゲルまたは他の形態の人工粘液中に製剤され、1回の用量が、鼻腔内投与のために使い捨て鼻用スワブ装置に設けられる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、鼻性鼻炎および副鼻腔炎、特に再発性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、および鼻ポリープを伴うヒトの慢性鼻性鼻炎を治療、治癒、または予防するためのrhCC10投与の臨界用量および時期に関する。rhCC10は、好ましくは、それぞれが参照によりその全容が本明細書に組み入れられる、Ex.A&Bとして本明細書に添付された米国特許出願公開第2003−0109429号および同第2003−0207795号に記載されているプロセス、または医薬品グレード(FDAの要求を満たす)のrhCC10を生産する任意の他のプロセスによって得られる。本発明の実施形態のrhCC10は、他の鼻腔内、肺、または全身治療を用いて、用いずに、その前、またはその後で投与することができる。
【0045】
用量
好ましくは、鼻性鼻炎、副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、および鼻ポリープの治療または予防では、rhCC10は、各鼻孔に1日に1回〜3回を7日間〜14日間、その後の14日間は1日おきに、そしてその後は必要に応じて鼻腔内に投与される。より好ましくは、rhCC10は、患者が副鼻腔の痛みおよび圧迫感を感じ始めたらすぐに投与される。
【0046】
詳細を後述する所望の結果を達成するために、以下の実施形態で説明する投与方法について述べる。
【0047】
一実施形態では、約1.5μg〜約1.5mgの用量範囲に等しいrhCC10を単回または多回投与することができる。別の実施形態では、rhCC10を、毎日この用量範囲で投与することができる。さらに別の実施形態では、rhCC10を、少なくとも連続7日間、毎日この用量範囲で投与することができる。さらに別の実施形態では、rhCC10を、少なくとも連続14日間、毎日この用量範囲で投与することができる。さらに別の実施形態では、rhCC10を、連続して30日間、1日おきにこの用量範囲で投与することができる。さらに別の実施形態では、rhCC10を、連続して10日間毎日、漸減する用量で投与することができ、この漸減する用量は、最初の3日間の各投与での高用量、次の3日間の各投与での中間用量、および最後の4日間の各投与での低用量を含む。さらに別の実施形態では、rhCC10を、1日に最大3回、約8時間毎に、この用量範囲または漸減する用量で投与することができる。
【0048】
別の実施形態では、rhCC10の上記の用量を患者の鼻腔内に投与することができる。さらに別の実施形態では、rhCC10の上記の用量を、鼻腔内滴下注入によって、または鼻道へのゲルもしくはクリームの堆積によってエアロゾルとして患者に投与することができる。さらなる実施形態では、rhCC10を、上記の方法に従って、経口もしくは鼻腔用の充血除去剤、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、粘液溶解薬、去痰薬、粘液抑制剤、界面活性剤、気管支拡張剤、血管収縮剤、副鼻腔鎮痛薬、または他の典型的な治療の前、最中、または後で投与することができる。さらに別の実施形態では、rhCC10を、上記の方法に従って、患者の鼻性鼻炎、鼻性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、または鼻ポリープを治療または予防するために投与することができる。
【0049】
rhCC10の用量および上記の適用方法は、治療する疾患の重症度、患者の健康全体、および急性疾患または慢性疾患のいずれかが治療されるかによって1日1回、1日に2回以上、1日3回、1日おき、または漸減式に投与することができる。例えば、疾患の状態が重症であればあるほど、疾患を効果的に治療するためにはより多量のrhCC10が必要である。例えば、鼻性鼻炎、鼻性副鼻腔炎、または鼻ポリープの悪化を防止するための慢性疾患の維持療法の場合は、低用量が使用される。医師は、必要に応じて、患者の症状および治療に対する応答に基づいて、本発明の実施形態に記載されたパラメータおよび用量の範囲内で、用量、製剤、および適用方法を監視し調節することができることを理解されたい。
【0050】
製剤
rhCC10は、例えば、スプレーボトル、スプレーポンプ、または洗浄液内の液体製剤の使用によって、局所鼻上皮に直接適用すると最も効果的である。したがって、時には、rhCC10を鼻上皮に効果的に適用する前に、即効性の局所粘液溶解薬、抗ヒスタミン剤、および/または充血除去剤、ならびに鼻道を開存させるための暖かい湿った空気の吸引、顔に温湿布をすること、および塩水での鼻の洗浄などの物理的な方法を使用する必要がある。
【0051】
鼻腔内滴下注入は、液体製剤またはゲル製剤に含められたrhCC10を用いて達成できるrhCC10を投与する別の方法である。ゲル剤形は、1回分のrhCC10が綿棒で塗られる鼻局所領域にこのrhCC10が長く維持されることによって長期間に渡る良好な局所投与の利点を提供するが、液体剤形は、正常な鼻の排出動作による滴下注入後の部分的な飲み込みにより、大幅に短い局所曝露および少ない局所投与となり得る。しかし、「ネティポット」型の装置を用いた鼻洗浄による液体剤形の鼻腔内滴下注入は、ゲル製剤の局所適用よりも、投与量が、鼻組織および副鼻腔の広い面積に渡って迅速に行き渡るという利点を与える。
【0052】
rhCC10は、鼻腔内送達のためにいくつかの鼻用賦形剤と共に製剤化することができる。これらには、薬物のpHを調節する賦形剤、溶解性を維持するために薬物を緩衝する賦形剤、微生物の増殖および/または移動を防止するための防腐剤または強化防腐剤として作用する賦形剤、薬物の張度、溶解性、または粘度を調節する賦形剤、薬物の進入または浸透(全身送達)を促進する賦形剤、薬物の局所バイオアベイラビリティおよび半減期を変更する(粘度を増加させる)賦形剤、毒性を低減する賦形剤、不溶性薬物を懸濁する賦形剤、および製剤の味を変更する賦形剤が含まれる。表2は、rhCC10の鼻腔内製剤の例示的な賦形剤およびそれらの機能の限定目的ではないリストを含む。1つの賦形剤または賦形剤の組合せのいずれを用いても、鼻腔内投与用のrhCC10を製剤化することができる。
【0053】
【表2】

【0054】
また、rhCC10は、鼻腔内投与用に他の薬物、人工粘液、または他の活性成分と組み合わせて製剤することもできる。鼻腔内投与用にrhCC10と共に製剤できる薬物には、限定されるものではないが、局所または全身抗菌剤(抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤)、充血除去剤、抗ヒスタミン剤、粘液溶解薬、去痰薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、気管支拡張剤、β2アドレナリン作動性受容体作動薬、局所作用血管収縮剤(例えば、オキシメタゾリン)、抗炎症剤、および鎮痛剤が含まれる。局所効果または全身効果を得るために鼻腔内投与用にrhCC10と共に製剤できるさらに他の薬剤には、抗炎症剤、β2アドレナリン作動性受容体作動薬、抗癌剤、血管新生阻害剤、抗線維化剤、免疫調節剤、ワクチン、代謝製剤、鎮痛薬、神経弛緩剤、麻酔薬、抑うつおよび他の精神病(メンタルヘルス)のための作用物質、依存抑制剤、ホメオパシー薬剤、漢方薬、ビタミン、およびミネラルなどが含まれる。
【0055】
rhCC10は、親水性および疎水性化学種、核酸および核酸類似体、タンパク質およびペプチド、糖質、脂質、およびリン脂質などを含め、殆どの反応しない化学種および薬物と混合可能である。セクレトグロビン(secretoglobin)は、上皮細胞における物質の輸送に大きく関与し、rhCC10は、鼻道による他の薬物の送達を促進するのに理想的に適している。また、rhCC10は、例えば、投与時に「灼熱感」を引き起こす化学療法剤および薬物などの他の薬物の投与部位での痛みを伴う局所的な鼻の応答を抑制する賦形剤として使用することができる、局所抗炎症剤として作用することができる。
【0056】
rhCC10の鼻腔内投与に関連した薬効に関する重要なパラメータは、rhCC10自体の濃度である。rhCC10濃度の高すぎる(すなわち、2mg/mlよりも高い)製剤は、上記の背景技術に記載されているように、臨床結果から分かるように効果ゼロまたは有害効果さえも示した。rhCC10製剤は、5.6mg/mlであり、患者の鼻孔に直接適用した(Widegrenら、2009)。逆に、rhCC10の濃度が250μg/ml〜262μg/mlである実施例4では、臨床上の利点が得られた。無関係の実験では、重度の低酸素症の早産のラムを、気管支内注入による投与によってrhCC10の5.5mg/ml製剤を用いて体重1kg当たり5mgで処理すると、3/4の動物が、薬物投与の4時間以内に呼吸不全で死に、プラセボで処理した4匹の動物は1匹も死ななかった(未発表、Ikegami, M.、Cincinnati大学)。対照的に、rhCC10の同じ製剤を2mg/mlに希釈し、挿管された早産のラムに気管支内注入によって投与すると、動物は、プラセボと比較して、薬物摂取による様々な利点を示した(Miller、2005a、2005b、2007; Shashikant、2005)。どの特定の理論に拘束されることなく、この現象は、rhCC10の極めて広範囲の水和に関連し得る。すなわち、CC10に配位される水分子の数は平均的なタンパク質よりも多い。粘膜および他の体液への高濃度のCC10の投与は、「サブトラクション」、すなわち局所流体からの水分の喪失をもたらし、これにより局所脱水、および局所生物学的環境における物質間の平衡における有害な混乱が起こる。別法または前述の内容と組み合わせて、CC10の急性の局所的な過剰は、CC10の存在に対する細胞および組織の脱感作をもたらすことがあり、薬理効果が向上するのではなく薬物の有効性が効果的に減少する。場合によっては、特定の代謝産物またはメディエーターに関与する経路または一連の経路のフィードバック阻害が、実際に、低用量の代謝産物またはメディエーターで観察され得る逆効果(活性化対抑制および逆も同様)となり得る。鼻腔内投与、気管内投与、または他の局所/局所性投与によって鼻および他の粘膜表面に投与されるrhCC10製剤のカットオフは、2mg/mlであり、これよりも高いと、rhCC10が効果的ではなく有害とさえなり得る。
【0057】
以下の詳細な実施例は、実施形態の例示である。当然のことながら、これらは、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0058】
アレルギー性鼻炎患者に対するrhCC10の鼻腔内投与
rhCC10は、それぞれが参照によりその全容が本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2003−0109429号および同第2003−0207795号に記載されているプロセス(Claragen, Inc.、College Park、MD)によって大腸菌で生産し、精製した。試験用のタンパク質は、組換えヒトCC10ホモ二量体の98%を超える純度の溶液として用意した。各バッチの生物学的活性を、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2002−0169108号に記載されている独自の分泌PLA阻害アッセイを用いて比較した。
【0059】
鼻アレルゲン曝露モデルでは、既知のアレルゲンに対する既知の季節性アレルギーの患者に、連続して7日間、鼻咽頭腔内にアレルゲン溶液を滴下注入した。安全上のリスクを最小限にするために、滴下注入するアレルゲンの量を、7日間の曝露期間に渡って4つの主な結果のパラメータを用いて定量される軽度の局所アレルギー応答を誘発するように各患者で注意深く調整した。これらのパラメータには、(1)鼻の症状の全スコア、(2)ピーク鼻呼気流、(3)鼻洗浄液中のバイオマーカーの定量、および(4)ヒスタミン曝露に対する応答が含まれる。
【0060】
樹木花粉に対して季節性アレルギーの合計35人の患者に対して、スウェーデンのLundにあるLund University Hospitalにて、rhCC10対プラセボのプラセボ対照無作為化盲交差鼻アレルゲン曝露試験(placebo-controlled, randomized, blinded, cross-over nasal allergen challenge study)を行った。この試験の目的は、アレルギー性鼻炎の患者における組換えヒトClara Cell 10kDa(rhCC10)タンパク質の鼻腔内投与の安全性、許容性、および効果を決定することにあった。rhCC10の鼻腔内投与が、鼻アレルゲン曝露によって引き起こされる鼻性鼻炎の症状を緩和できるか否かを調べることである。
【0061】
rhCC10の非存在下での鼻アレルゲン曝露に対する患者の応答をまず測定し、基準データを記録した。合計39人の患者を、試験に含めるためにスクリーニングした。すべての患者は、年齢が18〜50歳で、肥満指数(BMI)が18kg/m〜28kg/mであり、少なくとも過去2年の間、カバノキおよび/またはオオアワガエリ花粉誘発季節性アレルギー性鼻炎であり、その他は健康な男性対象であった。各患者は、少なくとも1つの空気アレルゲン(例えば、オオアワガエリまたはカバノキ花粉)に対して特異的IgEが上昇するか、または少なくとも1つの皮膚プリックテスト(SPT)で陽性であり、各患者は、アレルゲンによって引き起こされた症状を示し、対応する特異的IgEの上昇または陽性SPTを示した。対象がネコおよびイヌに曝露されない条件下でのネコおよび/またはイヌ感受性を除く、通年性アレルギー(例えば、慢性鼻炎)を持つ場合、これらの対象を試験から除外した。また、対象は、試験の開始前の2週間の間に他の鼻疾患(例えば、鼻の構造的な異常、鼻副鼻腔炎、または鼻ポリープ)または任意の上気道感染がある場合、登録の4週間以内に、グルココルチコステロイド、β2アドレナリン作動性受容体作動薬、もしくは任意の他の抗炎症性薬物の鼻腔内、吸引、もしくは全身投与で治療を受けている、または治療を既に受けた場合、あるいは登録前の過去1カ月以内に細菌もしくは真菌感染している場合は除外した。患者の特徴および基準データの要約を表2に示す。
【0062】
【表3】

【0063】
患者を、まず樹木花粉アレルゲンに対する応答についてスクリーニングして、個々の患者の応答に基づいて調整される曝露期間中に投与されるアレルゲンの量を決定した。耳、鼻、および咽の検査ならびにバイタルサインを含む物理的検査を行った。次いで、少なくとも5回のくしゃみおよび/または鼻詰まりまたは鼻漏の症状のいずれかについて0〜3のスケールに対して少なくとも2の症状スコアをもたらすアレルゲン用量を確立するために鼻アレルゲン曝露を行った。鼻漏は、鼻粘膜からの分泌物と定義され、典型的には水様である。すべてのアレルゲン投与は、病院スタッフによってクリニックで行われた。各個人に対して、症状を引き起こす許容される繰り返し可能なアレルゲン用量を鼻の連続曝露について推定するために、すべての対象で滴定法を行った。皮膚プリックテストで最も有意な膨疹反応を誘発するアレルゲン(カバノキまたはオオアワガエリ花粉)を、鼻用滴定のために選択した。増加する用量のアレルゲン(Alutard(登録商標)、ALK、Denmark)を、鼻スプレー装置を用いて10分間隔で投与した。スプレー装置は、1回の作動で100μlを送達し、一吹きが、各鼻孔内にスプレーされると、1鼻孔当たり100、300、1000、および3000SQ単位の有効量となった。この操作は、患者が、少なくとも5回のくしゃみおよび/または鼻詰まりまたは鼻水の症状のいずれかについて0〜3のスケールに対して少なくとも2以上の症状スコアで急性に反応するまで続けた。この効果をもたらせるアレルゲン用量を、第1および第2の治療期間中の毎日のアレルゲン連続曝露のために選択した(例えば、コホート)。各患者に投与されるアレルゲンの種類および量を表3に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
この試験は、花粉のない冬場に行われた。試験は、医師および患者がrhCC10またはプラセボを摂取したか否かを知らないという点で盲検およびプラセボ対照試験であった。試験は、患者がrhCC10治療群またはプラセボ治療群のいずれかに無作為に割り当てられたという点で無作為であった。試験は、各患者が、3〜5週間のウォッシュアウト期間によって分離された2つの7日のコホートで治療されたという点で交差設計であった。各患者は、rhCC10を摂取したコホートおよびプラセボを摂取したコホートを構成した。患者は、治療期間中の患者の鼻および副鼻腔の不快感を緩和するために、必要に応じて、いくつかの種類の非ステロイド系の薬物を摂取することを許可された。鎮痛薬(アスピリンは含むがイブプロフェンは含まない)および抗生物質は許可され、重度のアレルギー症状の場合は、Clarityn(登録商標)(Claritin(商標))10mgが許可され、クリニックによって提供された。
【0066】
試験作用物質、プラセボ、およびrhCC10を、クリニックの医師および患者が識別できるように数字が貼られた10mLガラスバイアルに入れた。鍵は、病院の薬局に保管され、医師が患者を治療するためにバイアルの情報が必要な有害事象の場合にのみ、医師に各バイアルの識別が知らされた。Valois Pharm(France)によって製造された使い捨て医療用鼻スプレー装置を、投与の直前に臨床現場で10mLバイアルに接続した。この装置は、ポンプ(VP7/100S 18PH)、アクチュエータ(PR147)、およびキャップ(B25/A)から構成されていた。プラセボは、滅菌した非緩衝0.9%塩化ナトリウムから構成されていた。rhCC10は、濃度5.6mg/mlの滅菌非緩衝0.9%塩化ナトリウムに溶解した。プラセボおよびrhCC10は共に、容易に識別できない透明で無色無臭の液体とした。各治療期間中の連続した合計7日間の治療で毎日、総量100μlのプラセボまたはrhCC10を、各患者の各鼻孔に投与した。すべてのアレルゲンおよび試験作用物質の投与は、病院スタッフによってクリニックで行われた。rhCC10の1日の合計用量は、1日当たり1.1mgであり、各鼻孔に100μlの用量、または1鼻孔当たり0.56mgでエアロゾルスプレーとして単回投与した。rhCC10は、アレルゲンの投与の15分〜30分前に投与した。
【0067】
これらの結果を以下の通り測定した。
【0068】
1.鼻症状の合計スコア(TNSS)
鼻詰まり、鼻漏、およびくしゃみ/鼻の痒みを含む鼻の症状は、朝の試験薬物の投与の前に毎日患者によって得点が付けられ、記録された(前の12時間の間の症状を格付けしたが、試験薬物投与後の最初の15分は可能な症状を無視した)。TNSSは、各アレルゲンの曝露の15分後に記録した。加えて、症状は、晩に得点を付けた(投与直後の症状を除く、前の12時間の間の症状を再び反映した)。症状には、0=症状無し、1=軽度の症状、2=中程度の症状、3=重度の症状に基づいてそれぞれ得点を付けた。これらのスコアを加えて、0〜9の範囲の各時点の合計スコアを得た。各アレルゲン曝露期間の最後の3日の朝の記録、アレルゲン曝露の10分後の記録、および晩の記録の鼻症状の平均スコアを統計分析に用いた。
【0069】
2.ピーク鼻呼気流(PNIF)
PNIFは、朝の薬物摂取前、アレルゲン曝露の10分後、および晩に患者が測定した。測定は、顔面マスクを備えたPIFメータ(Clements-Clarke、Harlow、U.K.)を用いて行った。患者は、測定の際は起立し、両手でマスクを顔にぴったりと取り付け、口を閉じて鼻から呼吸した。患者は、値を記録し、装置を30の読みに戻し、この手順をさらに2回繰り返した。この3回の測定の最も高い値を毎日記録した。鼻の症状のスコアと同様に、各アレルゲン曝露期間の最後の3日の各時点のPNIFの記録を、統計分析に用いた。
【実施例2】
【0070】
薬物の同時投与
プラセボ群およびrhCC10群の両方の合計10人の患者が、プロトコールの間に患者の不快感およびアレルギー症状を治療するために救急薬が必要であった。表5から分かるように、抗炎症剤、アレルギー薬、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド(Flutide)、およびオキシメタゾリンを含む、鼻腔内の症状を緩和するための様々な局所および全身薬物が摂取された。
【0071】
【表5】

【0072】
ロラタジンは、鎮痛作用のない抗ヒスタミン剤であり、パラセタモールは、鎮痛剤であり、解熱フルチカゾンは、コルチコステロイド抗炎症剤であり、オキシメタゾリンは、選択性α−1作用薬および部分α−2作用薬局所充血除去剤(selective alpha-1 agonist and partial alpha-2 agonist topical decongestant)であり、エバスチンは、鎮痛作用のないH抗ヒスタミン剤である。これらの患者は、rhCC10と同時のこれらの他の作用物質の同時投与の結果として有意なAEを一切受けなかったため、これらの薬物とrhCC10の併用は、安全であり、薬理学的に許容される。
【実施例3】
【0073】
rhCC10の鼻腔内投与の安全性および忍容性
この概念の実証のための安全性評価の一部として、ヒト有害事象(AE)および重度の有害事象(SAE)におけるrhCC10の鼻腔内投与を監視し、記録し、報告した。臨床研究者は、AEまたはSAEの基準および定義を満たす事象の検出および文書化に対して責任を有した。AEは、有害事象が薬物と因果関係にあると見なされるか否かについての試験薬物の使用に関連した一時的な臨床試験または対象におけるあらゆる有害な医療事態である。この試験では、事前に存在する状態(すなわち、AE記録期間が開始される前に存在し、かつ事前の治療の医療履歴/物理的な試験形態に書き留められる障害)は、この状態が悪化するか、またはAE記録期間中の発症の頻度が増加しないかぎり、AEとして記録しなかった。重度の有害事象は、任意の用量で、(1)死に至る、(2)生命を脅かす、(3)入院または既に入院している場合は入院の長期化を必要とする、(4)身体障害/就労不能になる、(5)先天異常/出産異常である、(6)重要な他の医療事象(OME)である、および(7)グレード4のすべての検査所見であるあらゆる有害医療事態と定義した。試験薬物の最初の用量を摂取したときに始まり、試験薬物の停止の2週間後に終了するAE記録期間は通院する(追跡調査来院)。
【0074】
SAEは、試験中に起きなかった。全体として、合計15の有害事象が、プラセボ治療群およびrhCC10治療群の両方の対象で報告された。すべてのAEは、軽度の重症度と格付けされた。各群では、15のAEのうちの11が、試験薬物に対する関連性について評価不能と格付けされ、各群における15のAEのうちの4が、試験薬物に関連している可能性が低いと格付けされた。プラセボを摂取する各患者のAEの要約を表6に示し、AEの時点でrhCC10を摂取する患者のAEの要約を表7に示す。
【0075】
【表6】

【0076】
【表7】

【0077】
したがって、rhCC10の鼻腔内投与が、連続して7日間、1.1mgの分割用量、1鼻孔当たり0.56mgでエアロゾルとして1日1回投与された場合、ヒトでは安全性であり、忍容性が良好であることが分かった。
【実施例4】
【0078】
慢性鼻炎および再発性副鼻腔炎(別名、慢性副鼻腔炎)の患者に対するrhCC10の鼻腔内投与
rhCC10の11mg(2ml)のアリコートを、リン酸二ナトリウムおよび一ナトリウム、およびフェニルカルビノール(保存剤)と塩化ベンジルコニウム(保存剤)、または0.1%チメロゾール(thimerosol)(これも、保存剤)を含有する0.65%滅菌生理食塩水42mlを含む軟質プラスチック噴射ボトルに添加して、250μg/mlのrhCC10溶液を得た。患者は、薬物を排出する開口が鼻孔内に維持されるようにボトルのアプリケータ端部を鼻に挿入し、押圧と吸引を同時に行ってrhCC10を自己投与した。ボトルが迅速に圧迫され、鼻アプリケータ端部の上部の小さいピンホールから液体が押し出されるときに単純なエアロゾルが形成される。送達される量および用量は、加えられる圧迫および力の速さによって決まる。典型的には、rhCC10 6.6μg〜131μgに一致する25μl〜500μlの範囲の量を排出する。圧迫が強ければ強いほど多くの量が送達され、鼻道が洗浄され、用量の一部は、飲み込まれるか、または数分の間、気管支内に流れ得る。
【0079】
この例では、rhCC10を、再発性細菌性副鼻腔感染を伴う、通年性アレルギーに起因する、慢性副鼻腔炎による偶発性および/または慢性の副鼻腔の痛みに苦しんでいる患者に投与した。患者の病歴には、(1)過去6年間に副鼻腔感染のために年に2回〜12回、抗生物質が処方された、(2)過去6年間に鼻腔内コルチコステロイドが処方され、必要に応じて摂取した、および(3)副鼻腔の痛み、鼻および胸の詰まりを緩和し、患者が一晩中眠れるように、非処方鎮痛薬、充血除去剤、および抗ヒスタミン剤を毎日摂取したことが含まれる。rhCC10は、以下の用量、投与計画、製剤、および薬物−装置組合せで、患者にとって有用な代替および補助療法であった。
【0080】
初めの投与計画では、患者は、3日間、1日に3回、1鼻孔当たり2回噴射する噴射ボトルからrhCC10を自己投与する3日間前から、痛みを伴う感染性副鼻腔感染に苦しんでいた。この方法を用いた1日の合計摂取用量は、平均70kgの患者で1日に体重1kg当たり1.1μg〜22.5μgに一致する合計78.6μg〜1,572μg(1鼻孔当たり39.3μg〜786μg)の範囲であった。次いで、患者は、2日間、1日に2回(平均70kgの患者で1日に体重1kg当たり749ng〜14.6μgに一致する1日に合計52.4μg〜1,024μg(1鼻孔当たり26.2μg〜512μg))、次いで2日間、1日に1回(平均70kgの患者で1日に体重1kg当たり374ng〜7.5μgに一致する1日に合計26.2μg〜524μg)と用量を漸減した。rhCC10の鼻腔内の漸減投与計画の1週間後、患者は使用を中止した。患者の副鼻腔の痛み、鼻炎、および気管支炎の症状(鼻詰まり、くしゃみ、咳、気道閉塞、および胸の詰まり)、ならびに不眠症が、治療の開始から24時間以内に消失し、rhCC10の最後の投与から少なくとも6週間は元に戻らなかった。rhCC10の鼻腔内投与は、鼻粘膜のある程度の乾燥が起きたが、患者にとって安全であり忍容性が良好であった。
【実施例5】
【0081】
再発性副鼻腔炎を予防するための患者へのrhCC10の鼻腔内投与
第2の投与計画では、患者は、初めに副鼻腔の痛みを感じて12時間以内に、朝と晩の1日に2回、実施例4の製剤およびスプレーボトルのrhCC10を摂取した。副鼻腔の痛みは、強力な広域スペクトル抗生物質(例えば、レバクイン(Levaquin))で14日間治療し、治療中に痛みは軽減されたが抗生物質の終了から4日以内に元に戻った、細菌性副鼻腔感染の再発に関連していた。便秘および過敏性大腸、胸痛、めまい、四肢の一過性の麻痺および刺痛、極度の日焼け、およびあざができやすくなることを含め、抗生物質に関連した周知の副作用が患者に起きた。結果として、医師は、抗生物質のさらなる使用を中止するように患者に助言した。次いで、患者は、市販の充血除去剤と共にrhCC10を使用して、再発性副鼻腔感染に関連した症状を治療した。最初の投与から24時間以内に、鼻の痛みおよび鼻詰まりが消失した。患者は、rhCC10を1週間、1日に2回、次いで1週間、1日に1回に減らして投与して治療を終了した。細菌感染は、rhCC10での鼻腔内の治療後、少なくとも6週間は再発しなかった。
【実施例6】
【0082】
維持のためのrhCC10の鼻腔内投与
季節性または通年性アレルギーおよび空気アレルゲンへの曝露から起きる場合が多い副鼻腔の痛みおよび感染を予防するためにrhCC10を用いた維持療法も可能である。最大2カ月半の間、500μg/mlを超えない(好ましくは250μg/mlを超えない)製剤濃度で、体重1kg当たり374ng〜7.5μgに一致する合計26.2μg〜524μgの用量で、1鼻孔に1回または複数回の作動で与えるrhCC10の毎日の鼻腔内投与は、慢性鼻炎の症状、鼻副鼻腔炎、鼻および胸の詰まり、副鼻腔の感染および痛み、ならびに不眠症を安全に制御し、抗生物質、鎮痛薬(アスピリン、イブプロフェンなどのNSAIDS)、充血除去剤、抗ヒスタミン剤、および睡眠薬が必要なくなるであろう。
【0083】
これらの方法、製剤、用量、投与計画、および薬物−装置組合せを用いると、rhCC10は、慢性鼻炎および細菌性副鼻腔感染(別名、慢性副鼻腔炎)に関連した症状の緩和に有効であった。重度または再発性副鼻腔感染のさらに別の場合では、いくつかの他の抗生物質(アモキシシリン、ジスロマック(Zithromax)、ビアキシン(Biaxin)など)を用いて細菌の増殖を抑制すると共に、rhCC10が痛みおよび症状を緩和した。軽度の感染で、重度の痛みを伴う感染を予防するためには、抗生物質を用いずにrhCC10を用いて、抗生物質に関連した負の副作用を患者から排除する。rhCC10、充血除去剤、抗ヒスタミン剤、および抗生物質との間の潜在的な相互作用に関連した有害事象は存在しない。したがって、市販の充血除去剤および抗ヒスタミン剤、ならびに鼻性副鼻腔炎に対して一般に処方される抗生物質は、全く使用しないか、または中程度から重度の鼻の症状を緩和するためにrhCC10と共に安全に使用した。
【実施例7】
【0084】
コルチコステロイド治療抵抗性で抗生物質が効かない急性副鼻腔感染の治療のためのrhCC10の鼻腔内投与
患者は、痛み、圧迫感、睡眠障害、起立時の血圧の低下、および歩行不能によって特徴付けられた重度の進行中の副鼻腔感染に苦しんでいた。患者は、空気アレルゲン(季節性または通年性)に対してアレルギーがなく、感染は、季節性アレルゲンが存在しない1月に起きた。副鼻腔感染の診断および重症度は、CTスキャンによって評価した。rhCC10を摂取する前に、患者は、抗生物質を5週間服用し(アモキシシリンを500mg/日で10日間、次いでオウグメンチンを4g/日で3週間)、鼻腔内コルチコステロイド治療を10日間受けた(プロピオン酸フルチカゾン)。これらの治療にもかかわらず、患者は、相当な痛み、副鼻腔全体の圧迫感、および顔面浮腫(腫れ)が残ったままであった。rhCC10を摂取する直前は、患者の鼻中隔の両側は、濃い赤色であり、容易に目に見える拡張した毛細血管を含み、重度の局所炎症の存在を示していた。リン酸二ナトリウムおよび一ナトリウム、フェニルカルビノール(保存剤)、および塩化ベンジルコニウム(保存剤)を含有する0.65%生理食塩水に溶解した250μg/mlのrhCC10溶液を、1鼻孔当たり約20μg〜50μgの用量で各鼻孔内にスプレーとして鼻腔内に単回投与した。rhCC10の鼻腔内単回投与を受けた約12時間後に、患者の鼻中隔は、正常なくすんだ紫色で、拡張した毛細血管は見当たらず、強い局所抗炎症効果を示していた。患者は、1日に2回のrhCC10の服用を7日間続け、副鼻腔の痛みおよび圧迫感の症状の緩和を示した。rhCC10の投与計画は、3日間の1日2回の1鼻孔当たり2回の噴射から、3日間の1日2回の1鼻孔当たり1回の噴射、そして3日間の1日1回の1鼻孔当たり1回の噴射に漸減するものであった。患者は、この計画を4日間続けた。しかし、5日目に、患者が、鼻スプレーで到達させるのに困難な篩骨洞に強い痛みが残っていることに気付いた。その後、rhCC10の篩骨洞領域の表面への到達を増加させるために、洗浄技術によって同じ計画でrhCC10を投与した。この洗浄法では、合計用量250μgのrhCC10(すなわち、250μg/ml溶液1ml)を、標準的な市販の鼻洗浄液118ml(1/2カップ、4液量オンス)に添加した。患者は、rhCC10製剤が副鼻腔内に3〜5分間留まるように、頭を後に傾けた仰臥位で洗浄を受けた。次いで、患者は、鼻をかむことにより洗浄液を流出させて排出できるように上半身を起こした。洗浄液は、2日間、1日2回、次いで3日間、1日1回投与を行って終了した。rhCC10の最初の投与から21日後にCTスキャンを行うと、瘢痕、上皮の肥厚、または他の残りの閉塞の形跡が一切なく、副鼻腔感染の完全な消散が明らかになった。rhCC10製剤は、アレルギーではなく細菌感染によって引き起こされた強力な抗炎症反応を媒介した。rhCC10はさらに、鼻腔内コルチコステロイドの形の標準的な抗炎症療法が失敗した場合に、抗炎症反応を媒介した。また、rhCC10は、細菌感染の除去を促進し、細菌感染が、追加の抗生物質を使用することなく消散した。最終的に、rhCC10は、瘢痕、線維症、および典型的にはこのような重度の感染に付随する上皮の肥厚を回避して、鼻上皮の完全な回復を介在した。
【実施例8】
【0085】
rhCC10の鼻腔内製剤
rhCC10の鼻腔内送達は、例えば、通年性アレルギー、感染、またはある種の他の形態の急性もしくは慢性の上部呼吸器刺激による上部呼吸器(鼻および副鼻腔および上気道)の炎症および線維症を治療する際に有用である。rhCC10は、例えば、3.9〜8.5の広範なpH値、および広範な塩濃度(例えば、0.1%〜4%)、ならびに様々なアルコール/水混合物(例えば、0.1%〜90%エタノール)の様々な水溶液に溶解性である。したがって、rhCC10は、限定されるものではないが、例えば、液体エアロゾルの自己投与用の用量制御ができない単純な噴射ボトル、液体エアロゾルの自己投与用のポンプ作動式または圧力式キャニスター定量噴霧装置、自己投与用の推進剤駆動乾燥粉末または液体エアロゾル定量噴霧装置、鼻道への局所送達用のゲル付き鼻用スワブ、ならびに意識のあるまたは意識のない患者への任意または強制投与のための副鼻腔洗浄用および深い局所投与用の薬物充填シリンジを含め、様々な鼻腔内排出装置に使用できる溶解性および安定性の特性を有する。
【0086】
上記に基づいて、鼻性鼻炎、特に非アレルギー性鼻炎、鼻性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、および鼻ポリープを安全に治療、治癒、および予防するのに有効なrhCC10の投与量の臨界範囲を見出した。したがって、本発明は、鼻性鼻炎、特に非アレルギー性鼻炎、鼻性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、および鼻ポリープの症状の治療に有効であり、このためこれらの症状に苦しんでいる小児および成人患者の重大な病的状態を軽減するが、危険な副作用を一切引き起こさない、安全で忍容性が良好な、rhCC10の鼻腔内投与に基づいた療法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の鼻道の鼻副鼻腔炎を治療するための安全で忍容性が良好な方法であって、rhCC10を前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
投与されるrhCC10の量が、1日に約1.5μg〜約1.5mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
投与されるrhCC10の量が、1日に約1.1mg未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
投与されるrhCC10の量が、1日に約0.75μg〜約650μgである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
投与されるrhCC10の量が、1日に約0.5μg〜約370μgである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
rhCC10の投与が、1日に約3回繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
rhCC10の投与が、約2日繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
rhCC10が、滴下注入、洗浄、スワブアプリケータ、またはスプレーによって鼻道に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
rhCC10が、抗生物質、抗ヒスタミン剤、充血除去剤、粘液溶解薬、鎮痛薬、局所作用血管収縮薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、ステロイド、鼻用賦形剤、または任意のこれらの組合せと併用投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
患者の鼻ポリープの成長もしくは再成長を防止または遅くするための安全で忍容性が良好な方法であって、rhCC10を前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項11】
約1.5μg〜1.5mgのrhCC10が、少なくとも2日間、毎日投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
投与されるrhCC10の量が、1日に1.1mg以下である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
rhCC10の投与が、1日に約3回繰り返される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
rhCC10が、滴下注入、洗浄、スワブアプリケータ、またはスプレーによって鼻道に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
rhCC10が、抗生物質、抗ヒスタミン剤、充血除去剤、粘液溶解薬、鎮痛薬、局所作用血管収縮薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、ステロイド、鼻用賦形剤、または任意のこれらの組合せと併用投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
患者の慢性または再発性細菌性副鼻腔感染症を治療または予防するための安全で忍容性が良好な方法であって、rhCC10を前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項17】
約1.5μg〜1.5mgのrhCC10が、少なくとも2日間、毎日投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
投与されるrhCC10の量が、1日に1.1mg以下である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
rhCC10の投与が、1日に約3回繰り返される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
rhCC10が、滴下注入、洗浄、スワブアプリケータ、またはスプレーによって鼻道に投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
rhCC10が、抗生物質、抗ヒスタミン剤、充血除去剤、粘液溶解薬、鎮痛薬、局所作用血管収縮薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、ステロイド、鼻用賦形剤、または任意のこれらの組合せと併用投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
患者の副鼻腔の痛みを治療するための安全で忍容性が良好な方法であって、rhCC10を前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項23】
約1.5μg〜1.5mgのrhCC10が、少なくとも2日間、毎日投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
投与されるrhCC10の量が、1日に1.1mg以下である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
rhCC10の投与が、1日に約3回繰り返される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
rhCC10が、滴下注入、洗浄、スワブアプリケータ、またはスプレーによって鼻道に投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
rhCC10が、抗生物質、抗ヒスタミン剤、充血除去剤、粘液溶解薬、鎮痛薬、局所作用血管収縮薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、ステロイド、鼻用賦形剤、または任意のこれらの組合せと併用投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
鼻用賦形剤とrhCC10を含有する処方を含む、rhCC10の鼻腔内投与のための医薬組成物。
【請求項29】
2mg/ml以下の濃度でrhCC10を含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
pH4.0〜8.0の0.65%塩化ナトリウム、リン酸二ナトリウム、フェニルカルビノール、リン酸一ナトリウム、および塩化ベンザルコニウム中に250μg/mlの濃度でrhCC10を含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項31】
rhCC10が、請求項29に記載の医薬組成物の形態で1日に最大4回、1鼻孔当たり20μg〜50μgの用量で投与される、請求項1、10、16、および22に記載の方法。
【請求項32】
請求項30に記載の医薬組成物と、鼻道の表面へのrhCC10の局所適用を可能にする圧迫スプレーボトル、ポンプ作動式スプレー装置、定量噴霧鼻用アクチュエータ、シリンジ型滴下注入装置、鼻用スワブアプリケータ、または「ネティポット」洗浄装置と、を含む薬物−装置組合せ構成物。

【公表番号】特表2011−520894(P2011−520894A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509615(P2011−509615)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/043613
【国際公開番号】WO2009/140269
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(510300407)クララッサンス,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】