説明

鼻腔内デスモプレシン投与

ヒト患者において安全な抗利尿を達成するための、均一な低用量のデスモプレシンを投与するための鼻腔内スプレーディスペンサーのファミリーが開示される。本発明のディスペンサーは、夜間多尿、原発性夜尿症、失調症、頻尿、尿崩症、またはデスモプレシン治療が有用である、または尿産生の安全な一時的抑制が、有利な健康効果または排尿コントロールの簡便性の増加をひきおこし得る、あらゆる疾患または症候群の治療において使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への参照)
本出願は、2008年12月22日に出願された米国特許出願第61/139,871号の利益およびこの出願への優先権を主張し、この出願の全開示は、本明細書において参照として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、患者が低ナトリウム血症に罹患する可能性を最低限にしながら、患者において排尿の延期のような抗利尿効果を誘導するための、デスモプレシンの鼻腔内投与のための組成物および装置に関連する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
デスモプレシン(1−デスアミノ−8−D−アルギニンバソプレシン、dDAVP(登録商標))は、バソプレシンのアナログである。デスモプレシンは、バソプレシンと比較して、血管収縮活性の減少、および抗利尿活性の増加を有し、そしてバソプレシンとは異なり、血圧の調節に有害な影響を与えない。これは、デスモプレシンを、血圧の有意な増加を引き起こさずに、抗利尿のために臨床的に使用することを可能にする。デスモプレシンは、酢酸塩として市販で入手可能であり、そして通常原発性夜尿症(PNE)および中枢性尿崩症のために処方される。
【0004】
デスモプレシンは、小ペプチドであり、そして低い生物学的利用能によって特徴付けられる。中枢性尿崩症のような重症の疾病の治療のために、実質的に100%生物が利用可能である、静脈内または皮下の経路に投与し得る。経口、舌下、および鼻腔内スプレー送達の商業化された投与形態に取り入れた場合、生物学的利用能は低い。経口投与(丸剤)は、1%よりはるかに低い生物学的利用能を有し、多くの因子に依存して、広い範囲の薬物の血中濃度を生じ、そして一般的に不確定な抗利尿効果の期間を生じる。頬側粘膜による、および経皮的なデスモプレシンの投与もまた示唆された。鼻腔内投与形態が、PNEの治療のために認可されたが、市販で入手可能な製品(MinirinTM)は、現在この使用のために安全ではないことが公表された。
【0005】
低ナトリウム血症は、血漿中のナトリウム濃度が低すぎる、例えば約135mmol/Lより低い状態である。重症の低ナトリウム血症は、電解質異常を引き起こし得、それは心不整脈、心臓発作、けいれん、または脳卒中を引き起こし得る。デスモプレシン治療を投与された患者における低ナトリウム血症状態は、患者の腎臓の水チャネルが薬物によって活性化され、そして患者が水性液体を摂取した場合に起こる。これは血液浸透圧モル濃度の低下、ナトリウムの濃度の低下、そして結果としての神経障害を引き起こし得るが、常に引き起こすわけではない。デスモプレシンレジメンを投与されている患者の何人かは、長期間発生なく薬剤を摂取した後、突然低ナトリウム血症を示す。他の患者は、治療レジメンの非常に初期にその状態を発症する。要するに、低ナトリウム血症の発生は、大部分抗利尿デスモプレシン治療の確率的な副作用として、薬剤の影響下にある間は液体の摂取を避けることによってのみ回避可能であると考えられてきた。
【0006】
最近の低ナトリウム血症による死亡は、デスモプレシンの影響下にある間の水の過剰摂取に起因した。これらの経験の結果として、米国食品医薬品局は、最近医師らに、デスモプレシンの使用を削減するべきであること、それはもはや原発性夜尿症(PNE)のようなある状態のために適当ではないと警告し、そしてその薬剤を「ブラックボックス化」した。最近の警告は、「原発性夜尿症(PNE)のために[酢酸デスモプレシン]の鼻腔内処方物で治療されている小児を含むある患者は、痙攣または死亡を引き起こし得る、重症の低ナトリウム血症を発症する危険性がある」と述べた。
【0007】
現在、PNEの治療のために鼻腔内に投与されたデスモプレシンの認可されたラベリングは、処方物中の生物学的利用能が3〜5%であることを示し、そして1日あたり10〜40マイクログラムの投与を推奨する。PNEのためのデスモプレシンの典型的な鼻腔内用量(20μg、各外鼻孔に10μg)によって達成される、平均最大血漿/血清濃度(Cmax)は、6〜10倍の範囲で3〜5%の生物学的利用能に基づいて、少なくとも約20〜30pg/mlである。デスモプレシンの既存処方物が、これらの臨床的適応症のために使用された場合に多くの患者にとって適当であることが証明されたが、変動する有効性および時々の低ナトリウム血症の発症は、前述の可変性に関連する問題であり続ける。
【0008】
特許文献1は、抗利尿治療方法およびデスモプレシンの投与形態を開示する。それは、ヒトにおけるデスモプレシンの抗利尿効果の活性化のための閾値血漿濃度は非常に低く、約1.0pg/mlより低いことを開示し、そして部分的にはこの観察に基づいて、使用を提案し、そして実質的に確率的および予測不能な低ナトリウム血症の発症を回避し得る、新規低用量デスモプレシン投与形態をどのように作製および使用するか教示する。これを、非常に低用量の薬剤、血中デスモプレシン濃度を、いく人かの患者において血液1mlあたり約1.0から約10、そしておそらく15pgの薬剤まで、しかし好ましくは約10pg/mlより高くない、その閾値のわずかに上まで(例えば約0.5pg/ml)上昇させるのに十分な用量の薬剤の投与によって達成する。この低濃度は、限られたおよび制御された期間、強力な抗利尿効果を誘導するために十分であることが発見された。従って、公知の、健康な人における約90+分のデスモプレシンの半減期と組み合わせて、低血中濃度は、薬剤の活性の「オフスイッチ」を制御するために、そして従って抗利尿期間を制限するために機能し得る。これは、薬剤が生理学的に活性な間に患者が十分な液体を飲み、患者のホメオスタシスメカニズムが圧倒され、そして血中ナトリウム濃度が危険なレベルまで下がる可能性を有意に低減する。
【0009】
例えば、夜間多尿(夜に排尿のために睡眠から覚醒する)の治療において、例えば5〜7pg/mlの血中濃度を生じる低用量を、就寝時間に投与し得る。約30分以内に、デスモプレシン濃度は、約7pg/mlの最大になり、そして尿の産生が抑制される。2時間後(1半減期)、デスモプレシン濃度は約3.5pg/mlに下がり、3.5時間(2番目の半減期)において濃度は約1.75、5時間において約0.85、そして6時間においてその濃度は活性化閾値(多くの患者において約0.5pg/ml)より下に下がり、そして患者は尿を正常に産生する。もし彼が11:00PMに就寝するなら、最初の6時間の間、患者はほとんどまたは全く尿を産生せず、彼の膀胱は実質的に空であり、そして従って彼の排尿するための衝動は抑制される。午前5時またはその周辺までに、尿の産生は回復し、そして1時間または2時間で患者は排尿するために覚醒する。別の例として、低い用量、例えば鼻腔内または経皮または皮内パッチによって投与された2〜3pg/mlは、正常な尿の産生が回復する前に約3時間、安全な抗利尿を誘導し得る。
【0010】
鼻腔内投与は、魅力的な投与経路であり、そしてもし特許文献1において開示された望ましい低用量範囲内、またはその付近のデスモプレシン血中濃度を一貫して生じる鼻腔内投与形態を処方し得るなら、低ナトリウム血症の副作用の発生は低減または排除され、そしてその薬剤を、便利なものとして安全に、および重症および厄介な状態の管理のために使用し得る。役立つ、そして安全な抗利尿を再現性よく誘導する、低用量鼻腔内デスモプレシン処方物を産生することは、明らかに当分野の技術の範囲内であるが、理想的な鼻腔内投与形態は、1回の投与から次の投与へ、およびバッチからバッチへ、比較的狭い標的血中濃度範囲内の血中濃度を一貫して産生する。より長時間の抗利尿、および潜在的に低ナトリウム血症の発症を引き起こし得る、乱用(複数回投与)の機会を最低限にするために、そのような製品を処方することも望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第7,405,203号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、標的患者集団のメンバーにおいて、その集団のメンバーが低ナトリウム血症を発症し得る危険性を低減しながら、抗利尿効果を誘導するための、簡便な、鼻腔内デスモプレシン安全ディスペンサーを提供する。そのディスペンサーは、デスモプレシン調製物および鼻粘膜浸透増強剤を含む組成物を、複数回の薬剤用量を構成するために十分な量でリザーバー中に有するリザーバーを含む。そのリザーバーは、出口と連絡しており、そしてポンプ、好ましくは使い捨てポンプ、そして好ましくは絞り出しボトル作動性ディスペンサー、またはガラスボトルに装備したプランジャーポンプのような、手動で作動させ得るものを備える。そのポンプは、一貫したサイズの用量を、鼻腔内の粘膜または他の表面へ沈積させるために、複数回の計測した用量を、スプレーの形式で患者の片方または両方の外鼻孔へ、リザーバーから出口を通して連続的に投薬することを可能にする。
【0013】
各スプレーは、好ましくはD10については20μmであり、D90については約300μmまでの範囲の平均容積分布を有する、複数の滴を含む。これは、約10%の滴は、直径が約20μmより小さく、そして90%は直径が300μmより小さいことを意味する。各スプレーの用量は、好ましくは、体重あたりであり、患者の体重1キログラムあたり0.5ngのデスモプレシンおよび患者の体重1キログラムあたり75ngのデスモプレシンの間を含むようなデスモプレシン濃度のものである。そのスプレーは、約5%より高いデスモプレシンの生物学的利用能によって特徴付けられる、すなわち、組成物中の約5%および25%の間の活性成分が実際に患者の血流に入り、そして薬剤効果に寄与し、そして残りは、典型的には消化によって分解される。一般的に、スプレーの生物学的利用能が高いほど、スプレーあたりより少ないデスモプレシンを鼻腔に送達する必要があり、そして逆もまた同じであり、ゴールは患者集団のメンバーにおいて標的デスモプレシン最高血中濃度(Cmax)をより一貫して達成することである。
【0014】
本発明によって、スプレーディスペンサーおよびそれが含む組成物の性質の組み合わせは、スプレーのそれぞれの用量が、患者の血流に生じるデスモプレシンの濃度を、キログラムあたりで、比較的狭い範囲に制限し、それによって比較的一貫した、限られた時間の抗利尿を達成するために有効であることを可能にする。言い換えると、それぞれの連続的なスプレー用量は、患者において、鼻腔内粘膜を通じた薬剤輸送によって、比較的一貫したデスモプレシンのCmaxを確立する。同じディスペンサーから同じ人への反復投与のために血流へ送達される薬剤の量は、好ましくは100%以下、そして好ましくは50%より少なくしか異ならない。ディスペンサーの変動係数は、同じ標的Cmaxを達成するように設計された、デスモプレシンの連続的皮下用量によって生じるCmaxの変動係数と同様である。好ましくは、それぞれの連続的なスプレー用量は、患者において、鼻腔内送達によって、同じ標的Cmaxを達成するように設計された、デスモプレシンの皮下用量によって生じるCmaxの変動係数の約50%以内、より好ましくは約25%の変動係数を有する、デスモプレシンのCmaxを確立するために十分である。
【0015】
この生物学的利用能の一貫性はまた、本発明のディスペンサーの別の性質において反映される、すなわち、それらは患者において、鼻腔内粘膜送達を通じた薬剤輸送送達によって、当該患者の片方または両方の外鼻孔に投薬されたデスモプレシンの量と実質的に直接比例する、血中濃度のデスモプレシンの送達を確立するために作用する。これは、患者によって望まれる抗利尿の長さの自己滴定を可能にする。一般的に、デスモプレシンのCmaxは、約0.5pg/mlから約10.0pg/mlの範囲のCmaxにかけて、経鼻的に投与されたデスモプレシンの量と直接比例する。
【0016】
標的Cmaxの値は、投薬された組成物が誘導するよう設計された抗利尿間隔の期間に依存して変動し得る。例えば、7〜8時間間隔の尿産生抑制のために設計された製品は、15+/−3pg/ml以下(no more than 15+/−3pg/ml)のCmaxを送達するよう設計され得る。従って、説明のために、小児のために設計された7時間製品は、20%の生物学的利用能および0.75μgまたは750ngのスプレーあたりのデスモプレシン量を有し得る。これは、約150ngの薬剤が患者の血流に達し、そして33kg(約75lb.)の小児は、約15pg/mlの標的Cmaxを達成することを意味する。同じ製品の別の実施態様は、10%の生物学的利用能および1.5μgまたは1500ngのスプレーあたりのデスモプレシン量を有し得、再び、患者の血流において約150ngの薬剤および約15pg/mlの標的Cmaxを生じる。別の代表的な製品は、3〜4時間の尿の中断のために設計され得、そして約3pg/ml以下ののCmaxを送達し得る。例えば平均60kg(約130lb.)の女性による使用のために設計されたそのような製品は、25%生物学的に利用可能であり、そしてスプレーあたり250ngのデスモプレシン量を含むか、または350ngの量で15%生物学的に利用可能であり得る。両方の場合において、生物学的に利用可能な用量は約50ngのデスモプレシンであり、そしてCmaxは約3pg/mlである。
【0017】
あるいは、添付文書または医師の指示に従って使用した場合、例えばスプレーあたり200ngまたは500ngを送達する単回のディスペンサーは、単純に投与あたりに送達するスプレーの数を変えることによって、例えば同じ人において異なる抗利尿期間を、または75kgの小児または150kgの成人において同じ抗利尿期間を達成するように作用し得る。典型的には、本発明の医薬品組成物の投与の約20分後、治療した個人において1分あたりの平均尿排出量は、約4ml/分より少なく、好ましくは約1ml/分より少なくなるまで減少し、そして180分、240分、300分、360分、または420分のような、望ましい期間この低い範囲に留まる。投与の約20分後、平均尿浸透圧モル濃度は、約300mOsmol/kgより高く、そして180分、240分、300分、360分、420分までの範囲の期間、高い濃度のままである。
【0018】
本発明の投与形態の主なそして重要な性質は、それらがスプレーあたり比較的狭い時間および用量範囲内の最高血中濃度を一貫して送達し、そして従って予期したよりも長い抗利尿効果を生じる、より高い用量の偶発的な送達、および低ナトリウム血症の誘導の可能性を回避または最小限にすることである。本明細書中で使用される場合、一貫した送達は、皮下注射による非常に低用量のデスモプレシンを投与したときに観察される範囲と同様の、またはおそらくいくらか高い範囲内で反復可能であることを意味するよう取られるべきである。そのような一貫性は一般的に、より高い生物学的利用能を有する処方物を利用することによってより容易に達成され、そして従って少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、そして好ましくはさらに高い生物学的利用能が好ましい。より高い生物学的利用能は、処方技術の利用、特に浸透増強剤の使用によって、および本明細書中で開示されたようなスプレー組成物の化学的操作によって達成される。
【0019】
1つの実施態様において、そのディスペンサーはさらに、最初の用量の投薬後、前もって決定した時間間隔の間、ある用量より上の、例えばおよそ約10から12pg/mlより上の血中濃度を生じるのに十分な用量より上の、2回目のデスモプレシンスプレー、または一連のスプレーの投薬を阻害する手段を含み得る。これを、例えば米国特許第7,335,186号(この開示は本明細書中で参考文献に組み込まれる)において開示されたようなスプレーメカニズムの設計の結果として受動的に達成し得る。あるいは、電池によって動力を供給される、活性タイマー、機械的なバネ、またはディスペンサー内の圧縮ガスを、前もって決定した間隔、例えば8時間、または6から24時間の間のいずれかが経過するまで、2回目の投薬を防止するようにそれ自体設計されたことが公知であるメカニズムと共に含み得る。そのようなメカニズムはその製品の乱用を防止し、そしてさらに患者が不注意に、または故意に、長すぎる間抗利尿を自己誘導し得る機会を最低限にし得る。
【0020】
様々な実施態様において、そのディスペンサーを、6時間より短い間、2〜4時間の間、または4〜7時間の間、標的患者集団において抗利尿を誘導するように処方し得る。約8時間より長い抗利尿状態の維持は推奨されない。標的患者集団は、例えば小児、35kgより軽い体重の小児、35〜50kgの間の体重の小児、成人女性、50〜75kgの間の体重の女性、成人男性、70〜85kgの間の体重の男性、または85kgより重い体重の男性であり得る。
【0021】
処方物中で使用するために現在好ましい浸透増強剤は、Exeter、New HampshireのCPEX Pharmaceuticals(以前はBentley)から市販で入手可能な、「Hsieh増強剤」(米国特許第5,023,252号を参照のこと)である。本発明の製造の物品において有用なHsieh増強剤のクラスで好ましいものは、米国特許第7,112,561号、および米国特許第7,112,561号において開示されるものであり、そしてCPE−215の商品名で公知のシクロペンタデカノリドのような、現在最も好ましいものは、米国特許第7,244,703号において開示される。多くの他の増強剤を使用し得る。
【0022】
いくつかの実施態様において、本発明は、抗利尿効果を誘導するための安全ディスペンサーの使用を提供する。そのディスペンサーおよびデスモプレシン処方物は、本明細書中で記載された性質のいずれかを含み得る。例えば、1つの実施態様において、デスモプレシンCmaxは、約0.5pg/mlから約10.0pg/mlの範囲のCmaxにおいて、鼻腔内に投与されたデスモプレシンの量と直接比例する。標的Cmaxの値は、投与された組成物が誘導されるように設計された抗利尿間隔の期間に依存して、変動し得る。例えば、本明細書中で記載された安全ディスペンサーの使用は、約8時間より短い、約6時間より短い、約2および4時間の間の、または約4および7時間の間の抗利尿を生じ得る。製品の別の代表的な使用を、患者において約15pg/ml以下の、10pg/ml以下の、7pg/ml以下の、または3pg/ml以下のCmaxを送達するように設計し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、2000ngの鼻腔内投与された本発明のデスモプレシン組成物で治療した男性および女性の、平均尿排出量対時間(600分)のグラフである。
【図2】図2は、同じ本発明の組成物で治療した男性および女性の、平均尿浸透圧モル濃度対時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(説明)
生物学的利用能という用語は、全身性循環に到達した、薬剤の投与された用量の画分を説明するために使用される。定義によると、薬物を静脈内に投与する場合、その生物学的利用能は100%である。しかし、鼻腔内のような他の経路で投与された場合、生物学的利用能は、不完全な吸収および他の因子のために減少する。従って、生物学的利用能は、全身性循環に達し、そして作用部位で利用可能である、治療的に活性な薬剤の程度の測定値である。それは、問題の薬剤の化学的および物理的性質およびその投与経路に依存して広く変動する。鼻腔内に投与された本発明の組成物の量は、スプレーノズルを出て、そして片方または両方の外鼻孔に入った量を指す。送達された本発明の組成物の量は、実際に血流に達した、すなわち生物学的に利用可能になった量を指す。タンパク質およびペプチドは、比較的大きくそして脆弱な分子であり、その活性は一般的にその三次構造(tertiary structure)に依存する。非経口投与以外で投与されたタンパク質およびペプチド治療薬の生物学的利用能は、非常に低くそして可変性である。
【0025】
本明細書中で使用される場合、変動係数、Cは、同じ薬剤投与形態を同じ方法で、同じ人に多くの投与にわたって、または多くの異なる人に投与する場合に、活性薬剤が血流に入る量および迅速性の可変性の測定値である、パーセンテージとして表された数を指す。変動係数を、Cmax、Tmax、またはAUCに関して測定し得る。多くの場合それらの測定値の平均に対する、測定値のセットの標準偏差の比として表される。一般的に、あらゆる薬剤の静脈内または皮下用量は、経皮または経口投与と比較して、本質的により小さいCを有する。デスモプレシンの鼻腔内投与は、低い生物学的利用能だけではなく、高いCによっても特徴付けられる。従って、鼻腔内スプレー用量あたりに達成されるCmaxに基づいて、市販で入手可能なMinirin(登録商標)鼻腔内スプレー製品は、皮下注射のCの2から2.5倍高いCを有する。従って、表面上同じ方法で同じ薬剤を用いた、同じ体重の2人の患者は、例えばCmaxを用いて測定したように、デスモプレシンの広く変動する血中濃度を経験し得、それは6から10倍の範囲であり得る。
【0026】
変動係数を、測定した血中濃度から計算する。よって、生データを含む測定値を作製するために使用した分析技術の不正確さが、Cに寄与する。大きな固有のエラーバーを有するアッセイは、より小さなエラーバーを有するアッセイよりも、より高い測定Cを生じる。測定の標準偏差がより大きい、アッセイの動的範囲の下端で測定を行う場合、データに基づいて計算したCは、同じ方法で投与され、そして同じアッセイを用いて測定した、同じ薬剤のより高い用量のCよりも大きい。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「浸透増強剤」という用語は、デスモプレシンのようなペプチド活性成分と共に処方された場合に、粘膜を通過し、そして血流へ入る、鼻腔内粘膜表面へ適用されたペプチドの画分を増加させる効果を有する、すなわち生物学的利用能を増加させる、1つの物質または物質の混合物を指す。本明細書中で記載されたような、多くのそのような浸透増強剤が公知である。一般的に、鼻腔内投与のために設計されたペプチド薬剤処方物への浸透増強剤の添加は、循環に達するペプチドの画分を、少なくとも約25%、好ましくは少なくとも50%、そして最も好ましくは少なくとも約100%増加させる。従って、組成物1は増強剤を含まず、そして組成物2はさらなる物質を含む以外は、同一の組成物の2つの鼻腔内処方物を考える。もし組成物1が、投与された場合に、50pg/mlの血中濃度を生じるなら、組成物2が少なくとも62.5pg/ml(25%の改善)の血中濃度を生じるなら、その物質は増強剤の定義に含まれる。好ましい浸透増強剤は、約100pg/ml(100%の改善)の血中濃度を生じる。
【0028】
本明細書中の本発明は、前もって決定された時間に制限された抗利尿効果を誘導するために、鼻腔内粘膜表面を通して、そして循環へ、より一貫した、およびより低いデスモプレシン用量を送達することによって特徴付けられる、デスモプレシン鼻腔内スプレー装置の改善を提供する。その鼻腔内スプレー製剤は、デスモプレシンおよびペプチド薬剤の鼻腔内粘膜の通過を促進するよう機能する浸透増強剤を含む。典型的にはその活性成分は、加圧式、しかし好ましくは非加圧式の、計量した用量を含む、特異的に制御された量のスプレーを片方または両方の外鼻孔に送達するディスペンサー内に、溶液または賦形剤(例えば保存剤、粘性修飾因子、乳化剤、緩衝剤、等)の混合物に溶解または懸濁している。典型的には、その用量を、典型的には指または手で作動するスプレーポンプによって計量する。その鼻腔内スプレーを、複数回、例えば10から100回またはそれ以上のスプレー用量の放出のために設計する。それを、複数回のスプレー、例えば2回のスプレーで、例えば各外鼻孔に1回、または単回のスプレーとして、意図された用量を投与するよう、または患者の体重、性別、または成熟度によって、用量を変化させるよう、または抗利尿の期間の患者による変動を許容するよう設計し得る。
【0029】
安全スプレー装置の設計の目的は、可能な程度、例えば一般的に15+/−3pg/ml、そして好ましくは10pg/mlより低い最大血中濃度を生じるために十分な量以下の、一貫した低濃度のデスモプレシン(「標的濃度」)を血流に送達することを保証することである。多くの場合、その装置は、5+/−3pg/mlまたはそれより低い血中濃度を達成する薬剤の量を送達する。
【0030】
この目的の達成の技術的困難は、鼻腔内に投与された、デスモプレシンを含むペプチドの低い、そして変動する生物学的利用能によって、投与される非常に少量の活性成分によって、および低い標的血中濃度によって提示される。一貫した生物学的利用能を促進するために、スプレーあたりの活性薬剤成分の濃度およびスプレーあたりの活性成分の質量(量または負荷量)を制御して、鼻腔内通路に入る活性成分の量を正確に制御しなければならない。これは、公知の方法を用いた、薬剤の処方物およびポンプスプレーの設計パラメーターの選択を含む。しかし、鼻腔内粘膜に達する活性成分の量は、他の因子の上に、スプレーの物理的組成、すなわち注射された全量、粘性のような液体の性質、スプレーの運動量、およびその滴サイズ分布に依存し得る。これらの性質をまた、処方物の化学特性およびスプレーノズルの特徴によって制御する。これらの生物学的利用能を決定する因子の上にあるのは、粘膜に達した活性成分の画分の一部のみがうまくこの膜を横切り、そして血流に入ることである。未吸収の薬剤は、嚥下される、または他の方法で分解され、そして生物学的に利用可能でない。ペプチドの膜の通過は、処方物中に浸透増強剤として作用するある物質を含むことによって増強される。もちろん、一貫しないスプレー手順および患者の特定の鼻腔内の解剖学的形態も役割を果たすが、これらの因子のための薬剤取り込みの不一致は、医師による以外、および/または明確および明白であり、そして患者が従う使用のための添付文書による以外は制御し得ない。
【0031】
出願人らは、本明細書中で開示されたようなこれらの設計原理を組み合わせて利用する鼻腔内スプレーディスペンサーを作製することによって、安全にデスモプレシンを投与することが可能であることを発見した。
【0032】
例えば成人における夜間多尿(睡眠を中断する夜の排尿)を治療するように、小児における夜尿症(原発性夜尿症)を治療するように、または失調症を患う人による夜尿症を予防するように設計された製品を、理想的には患者が就寝時に排尿後、摂取する。理想的には、その用量は、少なくとも5時間、理想的には6時間から6時間半、そしておそらく8時間の長さの間、尿の産生を抑制する。3または4時間の自動車旅行をするためのように、日中数時間の間、尿産生を中断するように設計された製品は、2〜3時間尿の産生を中断するべきである。抗利尿間隔の最後において、健康な体は迅速にホメオスタシスを求め、そして尿は正常に産生される。従って、排尿の衝動は、次の1時間または数時間で回復する。本明細書中で記載された製品はもちろん、好ましくは医師のケアのもとで、中枢性尿崩症のようなより重症の疾患のためにも使用し得る。
【0033】
もちろん、所定の用量を摂取した所定の人において達成された抗利尿の期間は、ある不可避な変動を有するので、上記で引用した時間の全てが近似である。しかし、本発明の実施の意図および効果は、可能な程度、一晩持続するよう設計された用量が、実際3時間の抗利尿しか生じず、早期の覚醒、または不随意の排尿を引き起こさないことを保証することである。より重要なことに、本発明の実施の効果は、抗利尿の期間が予想外に長く、例えば10または12時間持続し、覚醒した患者が液体を飲み、そしておそらく低ナトリウム血症を引き起こす可能性を最小限にすることである。
【0034】
尿産生の抑制は、患者のデスモプレシン血中濃度が、腎近位尿細管の水チャネルの活性化閾値を超えた時に始まり、そしてその濃度が閾値より下に下がった時に終わる。所定の個人において、水チャネルを活性化するために十分な正確な濃度は異なり、そして低すぎて正確に測定することは困難であるが、米国特許第7,405,203号において開示されたように、実験は、その閾値は1.0pg/mlよりいくらか低い、または約0.5pg/ml、およびおそらくいくらか低いことを示唆する。
【0035】
表1は、本発明の様々な実施態様のある重要な特徴を説明する。表を参照すると、それは投与量のパラメーター、最大予測血中濃度の範囲、様々な患者集団のメンバーの平均体重、および各集団に関する抗利尿の予測される期間を開示する。全ての列挙した用量形式は代表的なもののみであり、そして請求項において他に示される以外は、制限として考えるべきではない。全てのこれらの製品は、1回のスプレーが1回の用量に等しいと想定する。もちろん、同じ用量を達成するために複数回のスプレーを採用し得、これは一貫した取り込みを促進するために望ましくあり得る。
【0036】
最初の2つの製品は、成人男性において夜間多尿の治療のために抗利尿を達成するための代わりの方法を例示する。どちらも約5〜8pg/mlのCmaxを生じるが、最初のものは10%の生物学的利用能を有し、スプレーあたり1.0から1.6μgのデスモプレシンを送達し、一方2番目のものは約20%の生物学的利用能を有するので、スプレーあたり約半分の活性成分しか必要としない。どちらも約100から160ngの薬剤を患者の血流に送達し、そしてこの量は循環して望ましい血中濃度(Cmax)を生じる。代表的な製品3は、小児における遺尿症を治療するように設計される。もしその小児が35kgの平均体重を有するなら、彼または彼女は、300〜400ngの鼻腔内用量および15%の生物学的利用能で、5から7時間の抗利尿を経験する。これは、45〜70ngのデスモプレシンを小児の循環に送達し、そして望ましい5−8pg/mlの濃度を生じ、それは5から7時間後に閾値を通過するまで、正常なクリアランスメカニズムが薬剤濃度を減少させると、閾値濃度より下に下がる。代表的な製品4は、例えば平均60kgの女性において、短期間尿の抑制を誘導するように設計される。この場合、その間隔は望ましくは短く、例えば約3時間である。これを、1−2pg/mlのCmaxを生じる用量の鼻腔内投与によって達成し得る。この血中濃度は、15%の生物学的利用能によって特徴付けられる、100−200ngの量を送達するディスペンサーの適当な使用によって信頼性高く達成し得る。製品5および6は、60kgの女性または200kgの男性における、尿産生の一時的な抑制を含む夜間多尿の治療または他の治療のために設計された、さらに他の製品を説明する。
【0037】
【表1】

【0038】
安全ディスペンサーの設計の詳細に目を向けると、ガラスのボトルおよびプラスチックの絞り出しボトルのような、適当な薬剤リザーバーが、広く利用可能であり、そして医薬品の投与に使用される。好ましくは、そのリザーバーおよびスプレーポンプは使い捨てである。プラスチックの部品および金属のバネを含む、指で動作するポンプスプレーが、例えばPfeiffer of America,Inc、Princeton New Jerseyから市販で入手可能である。これらは、様々な規格を満たすように滴サイズ分布を調節するための設計で入手可能である。鼻腔内製品において使用するために、そのポンプは典型的には狭いスプレーパターンで100μlの量で送達するが、本発明の様々な実施態様において、スプレーあたりの体積は、例えば50μlおよび150μlの間で変動し得る。多くの異なるそのような計量薬剤ポンプ設計を、本発明において使用するために適応させ得る。制限しない例が、米国特許第4,860,738、4,944,429、6,321,942、6,446,839、6,705,493、6,708,846、6,772,915、および7,182,226号において開示される。
【0039】
現在好ましいスプレー装置は、Pfeiffer APFポンプとして販売されており、そして5.0mlのガラスボトルを装着する。それは計量した、100μlの量を狭いスプレーパターンで送達する。好ましくは、一貫性を促進するために、そのスプレーは、D10については20μmであり、D90については約300μmまでの範囲の平均容積分布で、複数の滴として活性処方物を送達する。これは、約10%の滴の直径が約20μmより小さく、そして90%の直径が300μmより小さいことを意味する。他の分布を使用し得る。非常に小さい滴は吸入される傾向があり循環に達し得る、または達し得ない。大きい滴は、外鼻孔内腔を十分浸透しないかもしれず、そして漏出および喪失を引き起こし得る。そのような計量ポンプは、適当な注射プロトコールによって、各使用が計量された量の放出を引き起こすこと、および最終的には比較的一定の量が鼻腔内粘膜表面と接触することを保証する。
【0040】
そのリザーバー内に配置される組成物は、抗利尿ホルモン、1−デスアミノ−8−D−アルギニンバソプレシン、またはdDAVPとも呼ばれる、デスモプレシンを含む。それは、1069.23の分子量を有する水溶性のバソプレシンアナログである。薬剤グレードの材料が、酢酸塩として広く市販で入手可能である。本明細書中で使用される場合、デスモプレシンという用語は、ヒトバソプレシンの活性対立遺伝子変異体のアナログを含む、そして他の陰イオンを含む、1−デスアミノ−8−D−アルギニンバソプレシンおよび抗利尿活性を有する全ての他のそのようなアナログを指す。例えば、米国特許第3,980,631号、および米国特許第4,148,787号を参照のこと。
【0041】
その組成物はまた、浸透増強剤として作用する物質、すなわち鼻腔内腔からその背後の毛細血管床への、粘膜を通じた正味のペプチド輸送を増加させる物質を、必ず少なくとも1つ含む。多くの浸透増強剤が当該分野で公知であり、そしてその生物学的利用能を効果的に増加させるために、そのような増強剤をペプチド薬剤と共に処方する多くの方法が存在する。浸透増強剤は一般的に、粘膜の上皮細胞の間に形成される密着結合を開き、それによって治療薬の膜への、および膜を通じた拡散を可能にすることによって機能する。
【0042】
インスリンの鼻腔内投与の開発へ向けて、鼻腔内膜を通じた生物学的利用能を増強するために、かなりの研究がなされた。例えば、米国特許第5,112,804号および米国特許第7,112,561号を参照のこと。これらの努力から学んだことを、経粘膜生物学的利用能を改善したデスモプレシン組成物の処方において適用し得る。一般的に、デスモプレシンの標的血中濃度は、有効なインスリン用量より数桁低く、そしてデスモプレシンははるかに小さいポリペプチドであるので(MW1069対5808)、インスリンの輸送を促進するために使用される増強剤は、経粘膜デスモプレシン生物学的利用能を改善するためにより有効である。
【0043】
本発明の組成物において使用される浸透増強剤は、ペプチド投与と適合性であり、そして鼻腔内粘膜を通じたペプチドの吸収を促進するあらゆるものを含み得る。現在好ましい増強剤は、いわゆるHsieh増強剤である。米国特許第5,023,252、5,731,303、7,112,561、および7,244,703号を参照のこと。これらは大環状エステル、ジエステル、アミド、ジアミド、アミジン、ジアミジン、チオエステル、ジチオエステル、チオアミド、ケトンまたはラクトンである。大環状部分は多くの場合、少なくとも12個の炭素原子を含む。好ましいグループは、5,023,252および7,112,561で開示されたシクロペンタデカノリドである。シクロペンタデカラクトンまたはシクロヘキサデカノンが現在好ましい。7,244,703を参照のこと。現在好ましい種はシクロペンタデカノリドであり、Exeter、New HampshireのCPEX,IncによってCPE−215の商品名で販売されている。
【0044】
皮膚、胃腸管、または他の粘膜表面のような粘膜組織バリアの通過を増強するのに有用であるとして当該分野で開示された、多くの他のより好ましくない増強剤も、本発明の製品における使用のために適応させ得る。制限しない例は、胆汁酸塩および他の脂肪酸、長鎖脂肪酸のソルビタンエステルのような、糖エステルまたは糖アルコールエステルを含む(米国特許第5,122,383;5,212,199および5,227,169号を参照のこと)。乳酸の脂肪族アルコールエステルを用いた膜(皮膚)浸透増強が、米国特許第5,154,122号において開示される。米国特許第5,314,694号は、脂肪酸アルコールのエステル、すなわちラウリルアルコールおよび乳酸の使用を開示する。潜在的に有用な浸透増強剤は、コール酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウム、タウロジヒドロフシド酸ナトリウム、タウロコレート、およびウルソデオキシコレート、リトコール酸ナトリウム、ケノコレート、ケノデオキシコレート、ウルソコレート、ウルソデオキシコレート、ヒオデオキシコレート、デヒドロコレート、グリコケノコレート、タウロケノコレート、およびタウロケノデオキシコレートのような胆汁酸塩を含む。ドデシル硫酸ナトリウム(「SDS」)、ジメチルスルホキシド(「DMSO」)、ラウリル硫酸ナトリウム、飽和および不飽和脂肪酸の塩および他の誘導体、界面活性剤、胆汁酸塩アナログ、または胆汁酸塩の天然または合成誘導体のような、他の浸透増強剤も有用である。米国特許第5,719,122号は、浸透増強剤として採用し得、そしてGelucire RTMの商品名で入手可能なもの、例えばGelucire RTM.33/01、35/10、37/02または44/14のような、C−C18グリセリドおよびポリエチレングリコールエステルから成る飽和ポリグリコール化(polyglycolysed)グリセリド;Labrafil RTMの商品名で入手可能なもの、例えばLabrafil RTM WL2609BS、またはM2125CSのような、C16−C20グリセリドおよびポリエチレングリコールエステルから成る不飽和ポリグリコール化グリセリド;およびLabrasolの商品名で入手可能なもののような、飽和ポリグリコール化C−C10グリセリドを含む、ポリグリコール化グリセリドを開示する。そのようなポリグリコール化グリセリドの混合物、例えばGelucire44/14およびLabrasolを採用し得る。
【0045】
胃腸管を通して血流に入る、薬剤調製物の処方において使用するために適当な浸透増強剤をまた、潜在的に本発明における使用のために適合させ得る。これらは、制限無しに、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような、米国特許出願公開第20030232078号において開示されたもの、上記で記載したもののような胆汁酸塩浸透増強剤、およびカプリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸、ラウリン酸、およびカプリル酸のような脂肪酸浸透増強剤、パルミトイルカルニチン、ステアロイルカルニチン、ミリストイルカルニチン、およびラウロイルカルニチンのようなアシルカルニチン、ならびにサリチル酸ナトリウム、5−メトキシサリチレート、およびサリチル酸メチルのようなサリチレートを含む。米国特許第4,548,922および4,746,508号はまた、粘膜表面を通じた薬剤の効率的な輸送を促進するために、両親媒性のステロイドファミリーの低い毒性の浸透増強剤、例えばフシジン酸誘導体を用いて、鼻腔内または他の経粘膜経路によって、タンパク質およびポリペプチドを送達するためのシステムを開示する。一般的に水に基づく、開示された組成物は、インスリン、ヒト成長ホルモン、およびサケカルシトニンを含む様々なタンパク質およびペプチドのヒトにおける鼻腔内送達のために有用であり、そして潜在的に本発明のディスペンサーの組成物成分において有用であることが示された。
【0046】
どの増強剤が所定の薬剤に関して最もよく作用するかを予測することは非常に困難である。デスモプレシンの浸透増強に関して、増強剤の実際の有効性を、当業者に周知の性質の日常的な実験によって、例えばブタまたはラットモデルを用いて検証するべきである。本発明の処方物成分に含まれる浸透増強剤の量は一般的に、約1重量%から約30重量%の間の範囲である。増強剤の正確な性質および量は、例えば選択された特定の浸透増強剤または増強剤組成物、および処方物中の他の成分の性質に依存して変動する。従って、薬物媒体内の浸透増強剤の濃度は、その増強剤の効力に依存して変動し得る。増強剤濃度の上限は、粘膜への毒性効果または刺激限界によって設定される。薬物媒体中の増強剤の溶解度も、増強剤の濃度を制限し得る。
【0047】
組成物を、水溶性の浸透増強剤分子または複数成分の浸透増強剤組成物を含む、単純な、典型的には軽度に酸性の、デスモプレシンの水溶液として処方し得る。あるいは、その組成物を、疎水性および親水性の相を有する二相システムとして処方し得る。その組成物はもちろん、スプレーノズルの構造中における滴形成の安定化および増強を補助するための乳化剤または界面活性剤、有効期間を延長する、または室温保存を可能にするための保存剤、安定剤、浸透圧モル濃度調節剤(塩)、およびバッファーまたはバッファーシステムのような、他の慣習的な成分を含み得る。処方物は経験的に最もよく最適化される。あらゆる所定の候補処方物を、実験動物、例えばブタまたはラットへの、または適当な前臨床試験後に適切な承認を得て、ヒトへの鼻腔内投与によって試験し得る。血液の定期的なサンプリングが、投与後の様々な時間におけるデスモプレシン濃度を明らかにし、Cmaxおよび他の変数、および患者間および患者内の両方における、循環への送達の連続的な投与の間の一貫性の計算を可能にする。
【実施例】
【0048】
処方物の試験プロトコールの例
この例は、鼻腔内膜を通じた輸送における有効性に関して所定の候補処方物をどのように試験するかを説明する。水溶性浸透増強剤「A」および「B」を含む組成物の試験を想定し、そして鼻腔内粘膜に浸透し、そして低い用量範囲で血流に入るデスモプレシンの画分、およびどのようにこの生物学的利用能がこれらの異なる増強剤の独自性(identity)および濃度の関数として変化するかを測定しようとする。
【0049】
従って、例として、以下の組成物を有する4つの処方物を調製し得る:
【0050】
【表2】

【0051】
各処方物の10μlの滴は、0.02μg(20ng)のデスモプレシンを含む。各候補組成物の1滴を、例えば225〜250グラムの間の体重の3匹の麻酔をかけたラットのそれぞれの外鼻孔に適用する。投薬前および投薬後10、20、40、60、および120分に血液を取る。各血液サンプルのデスモプレシン濃度を、例えばサンプルにおける低pgのデスモプレシン濃度における十分な感受性を有するイムノアッセイを用いて決定する。これらのデータから、Cmaxを各処方物に関して計算し得、そして試験した全ての組成物を、ラット鼻腔内粘膜組織を通じたデスモプレシンの効率的な通過に関して評価し得る。有望な処方物を、例えば試験ブタの外鼻孔への、所定の処方、容積およびデスモプレシン濃度のスプレーの導入によって、さらに試験し得る。再び、血液サンプルを取り、そしてCmax、AUC、または薬剤の生物学的利用能の他の測定を決定し得る。これらのデータは、次に、正しく使用された場合に、低用量標的濃度範囲内のデスモプレシン薬剤濃度を生じる安全ディスペンサーを設計する目的を有する、第I相臨床試験において使用するためのテスト処方物の調製を可能にする。
【0052】
代表的な処方物
エマルションストック溶液 エマルションストック溶液を生成するために、重量部で以下の成分を、撹拌子を備えた容器に加え、そして60〜65℃で15分間混合する。
【0053】
180部のソルビタンモノラウラート(Span−20)水溶液(12mg/ml)
30部のポリソルベート20(Tween−20)水溶液(2mg/ml)
400部の綿実油水性エマルション(26.6mg/ml)
600部のシクロペンタデカノリド(CPE−215)水性エマルション(40mg/ml)
1,500グラムの全バッチサイズを生じる水
混合後、その調製物を、高スピードの混合を用いて、6500RPM+で20〜25分間均一化して、微細なエマルションを生成する。この溶液をオートクレーブして、無菌製を保証する。
【0054】
緩衝溶液 クエン酸緩衝ストック溶液を生成するために、重量部で以下の成分を、撹拌子を備えた容器に加え、そして60−65℃で5分間混合する。
【0055】
6200部の水
16部の無水クエン酸水溶液(1.85mg/ml)
76部のクエン酸ナトリウム、二水和物水溶液(8.9mg/ml)
104部のポリソルベート20(Tween−20)水溶液(12mg/ml)
8,500グラムの全バッチサイズを生じる水
デスモプレシン溶液 デスモプレシンストック溶液を生成するために、0.111部の酢酸デスモプレシン三水和物を、十分な緩衝ストック溶液に加えて、100.0mlの溶液を生成し、そして全てのデスモプレシンが溶解するまで撹拌して、100μgのデスモプレシン/mlの濃度を有するストック溶液を生成する。このストック溶液から、希釈によって10μg/mlの溶液を調製した。
【0056】
10μg/mlの溶液のアリコートをろ過して、あらゆる細菌の混入を排除し、そして等容量のエマルションストック溶液で希釈して、2%のシクロペンタデカノリドを含む、pH5.5の、5μg/mlのデスモプレシンを含む無菌で、保存剤を含まない投与形態を生成した。これらを、計量スプレーあたり100μl、またはスプレーあたり0.50μgのデスモプレシン、または500ngのデスモプレシンを送達するPfeiffer APFポンプ噴霧器を備えた滅菌ポンプスプレーボトルに瓶詰めした。その液体は検出可能な微生物を含まない。市販で入手可能な、使い捨てPfeiffer APFポンプは、ポンプが作動した後に潜在的に汚染された空気の充填(backfill)を防止するメカニズムを含み、そして従って投薬される各用量の実質的な無菌性を維持する。これらをヒトで試験して、下記で述べるように、それらが送達した血中濃度、抗利尿の期間、その薬物動態学的性質等を決定した。
【0057】
プロトタイプ製品の臨床試験
水負荷状態(a water loaded state)のヒト成人被験者における、上記で記載した本発明を具体化した安全ディスペンサーを用いた臨床試験は、鼻腔内投与された500ngから2000ng(1から4回のスプレー)の用量は、2から7時間の間、用量に比例した関係で抗利尿効果を生じたことを示す。ピーク血中濃度は、約1.25から約10pg/mlの範囲であった。いずれのテスト被験者は、薬剤に関連する血清ナトリウムの減少を示さなかった。
【0058】
プロトタイプディスペンサーの効果および薬物動態の非盲検予備試験を、一般的に下記で記載するプロトコールに従って、健康、水負荷、非喫煙ボランティア被験者である、6人の男性および6人の女性で行った。まとめると、各被験者は、1日おきに投薬され、1週間の期間で4回まで投薬された。1日目、3日目、および5日目に、被験者に、上記で記載した低用量デスモプレシン鼻腔内スプレー処方物の増加する用量を鼻腔内に投薬した。7日目に、被験者に、比較として経皮または皮下のいずれかで低用量のデスモプレシンの単回ボーラス注射を施した。病歴の評価、鼻咽頭の検査を含む完全な身体検査、血清浸透圧モル濃度を含む血清化学、尿浸透圧モル濃度を含む尿検査を含め、最初の治療前に全ての被験者をスクリーニングした。
【0059】
1日目、全ての被験者に、朝食前に朝の排尿をするよう依頼し、そしてその後被験者は水負荷過程を開始した。水負荷は、被験者が内因性バソプレシンを産生しないことを保証し、そして従って外因性デスモプレシンの効果の単離を可能にする。定常状態の利尿を達成するために、被験者に、少なくとも体重の1.5%および3%までに対応する容積の水を飲むよう指示した。水負荷過程を、最初の被験者の投薬の約2時間前に開始した。被験者に、20分ごとに排尿するよう依頼した。持続的な水負荷状態を保証するために、被験者は、その尿排出喪失を等量の液体で置き換えた。無感覚の喪失は測定または置き換えなかった。被験者において2回の連続する測定において尿の排出速度が10ml/分を超えた場合(水負荷状態と定義する)、投薬を開始した。被験者は、液体の喪失に対して等量の液体の摂取で水負荷状態を維持した。
【0060】
次いで右または左の外鼻孔に、鼻腔内スプレー処方物の1回のスプレー(0.5μgのデスモプレシンを含む100μl)で、各被験者の鼻腔内に投薬した。水負荷の開始(投薬の少なくとも2時間前)から、投薬後被験者の尿排出がベースラインに戻る(3回の連続する20分の測定で10mL/分を超える尿排出レベル)まで20分間隔で、尿量を測定した。投薬前および投薬後2、4、6、および8時間に、血清浸透圧モル濃度およびナトリウムを測定した。
【0061】
薬物動態学的決定のための血液サンプリングを、投薬後1、1.5、2、3、4および6時間に行った。各時点で2つの7mlの血液サンプルを採取した。デスモプレシンの濃度を、検証されたラジオイムノアッセイによって決定した。血漿中のデスモプレシンの濃度を、市販で入手可能なソフトウェアWinNonlinTMPro、ver.3.2(Pharsight Corporation、USA)を用いて、ノンコンパートメント法の使用によって、各グループの個々のボランティアに関して分析した。濃度に対する分析および記述統計学のために、限界より上の値が後に続く、定量限界(「LOQ」)未満の血漿濃度値を「LOQ/2」と設定した。LOQより上の値が後に続かないLOQ未満の値は分析から除外し、そして濃度に対する記述統計学においてゼロに設定した。
【0062】
2日目、4日目、および6日目に、被験者は8pmに始まって次の日の朝食まで絶食し、そして7pmおよび9pmの間に1から2リットルの水を飲むよう奨励された。その後、次の日の水負荷の開始まで自由に液体を飲んだ。
【0063】
3日目に、被験者の各外鼻孔に、1回のスプレーのデスモプレシン鼻腔内スプレー処方物を投与した(1000ngのデスモプレシンと等価である、200μlの全容積)。用量レベルの他は、全ての手順は1日目に関して述べたものと同じであった。
【0064】
5日目に、全ての被験者に2000ngの全容積のデスモプレシンを投与した(各外鼻孔に1回の鼻腔内スプレー、続いて5分後に各外鼻孔に2回目のスプレー)。用量レベルの他は、全ての手順は1日目に関して述べたものと同じであった。
【0065】
7日目に、3人の男性および3人の女性の被験者に、デスモプレシン溶液(120ngのデスモプレシンと等価の、150μlの0.8μg/ml溶液)の単回のボーラス皮内注射を行い、そして他の6人の被験者に、デスモプレシン(120ngのデスモプレシンと等価の、150μlの0.8μg/ml溶液)の単回ボーラス皮下注射を行った。投薬パラダイム(paradigm)の他は、全ての手順は1日目に関して述べたものと同じであった。
【0066】
AUC、およびCmaxを含む、薬物動態学的パラメーターを、デスモプレシンの時間曲線に対する血液サンプル中に見出されるデスモプレシンの個々の濃度から得た。デスモプレシンイムノアッセイの検出限界未満のアッセイ値(<1.25pg/ml)は、濃度を平均する目的のためにゼロと等しいと設定した。2つのゼロではない濃度の間にある検出レベル未満のアッセイ値は、AUCを計算する目的のために「欠損」していると考えた。多くの場合信頼性が低く、そして検出限界未満であるので、0.5μg用量試験から血中濃度測定は行わなかった。伝統的な分析は、T1/2またはAUCに関して評価できない多くの被験者/治療の組み合わせを生じるので、所定の被験者に関して、半減期は治療から治療へ一致しているという仮説を立てた。従って、3つの治療のうち1つが評価可能な終末半減期を生じる限り、その値を、評価可能な半減期を有さない治療のAUCに外挿するために使用し得る。よって、平均終末半減期(AvgT1/2)を、その被験者における評価可能な半減期を有する治療を含む各被験者に関して計算した。12人の被験者のうち10人が、少なくとも1つの治療に関して評価可能な半減期を有していた。計算した平均T1/2値を用いて、各治療および被験者に関するAUCを計算し得る。
【0067】
1人の変則的な患者を別として、試験における11人の患者全てが、2000ngの用量レベルで、3.9〜10pg/mlの間のピークデスモプレシン薬剤濃度を有していたことが決定された。さらに、11人のうち9人が、5.18〜8.4pg/mlの間の薬剤濃度を達成した。これは単独で、上記で記載したプロトタイプのディスペンサーを用いて達成された血中濃度の一貫性を説明する。さらに、試験の結果として、以下のAUCおよびCmax値を計算した。各データポイントの計算した変動係数を括弧内に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
これらのデータから、2つの結論を得ることができる。最初に、1000ngの用量で、本発明の安全ディスペンサーを用いて鼻腔内投与されたデスモプレシンのCmaxの変動係数(51.6%)は、皮下に投与され、そして匹敵する低血中濃度を生じるように設計されたデスモプレシンの投与のCmaxの変動係数より約30%だけ高い。2000ngの用量で、本発明の投薬組成物を用いて鼻腔内投与されたデスモプレシンのCmaxの測定された変動係数(36.0%)は、皮下用量のCmaxの変動係数とほぼ等しい。これらの予備的なデータは、本発明の処方物は実際に、匹敵する低血中濃度を達成するよう設計された皮下デスモプレシン用量のものと匹敵する、Cmaxの変動係数によって特徴付けられるという仮説を支持する。これは、はるかに高い血中濃度を送達するよう設計されているにも関わらず、より大きいCmaxの変動を有し、その変動が低ナトリウム血症状態の確率的誘導に寄与する、市販で入手可能な鼻腔内デスモプレシン投与形態と明らかに対照的である。
【0070】
2番目に、本発明によって鼻腔内に投薬されたこの処方物によって生じたAUCおよびCmaxはどちらも、用量と直接、直線的に比例しているようであることに注意する。従って、1000ngの鼻腔内用量は、2.79+/−1.44pg/mlのCmaxを生じ、一方2000ngの用量は、6.24+/−2.25の値を生じる;1000ngの鼻腔内用量は5.36+/−5.92のAUCを生じ、それは用量を2倍にすると11.59+/−7.9におよそ2倍になる。これは、デスモプレシンは、患者の集団のメンバーが低ナトリウム血症を発症する潜在的なリスク無しに、制限された期間の抗利尿効果を再現性よく達成するために、信頼性高く鼻腔内に投薬し得ることを示唆する。それはまた、低用量を送達するディスペンサーを、複数回のスプレーによって使用して、所定の患者において数回の抗利尿期間のいずれかを達成し得ること、または所定の集団において所定の期間の効果を生じるために、何回のスプレーを用いるべきかに関して適切な説明があるなら、1つのディスペンサーは異なる患者集団にサービスするために販売され得ることを示唆する。
【0071】
この試験の結果は、本発明を具体化した低用量デスモプレシン鼻腔内スプレーは、比較的一貫した低血中濃度で、改善された、より再現性の高い薬物動態学的パラメーターを提供し、そして投与した用量に比例するCmaxを送達することを示唆する。
【0072】
尿の排出量および尿の浸透圧モル濃度を、2000ngのデスモプレシンの医薬品組成物の鼻腔内投与の直前、および投与後約10時間(600分)までの期間測定した。図1は、男性および女性被験者の平均尿排出量を示す。データによって証明されたように、尿排出量は、鼻によるデスモプレシンの投与後20分以内に、8ml/分より低くなった(水負荷した個人において)。尿排出量は、投与後約400分までの範囲の期間、8ml/分より低いままであった。図2は、図1に示したのと同じグループの男性および女性被験者の平均尿浸透圧モル濃度を示す。尿浸透圧モル濃度は、2μgのデスモプレシンの鼻腔内投与後40分以内に約400mOsmol/kgより高く増加し、そして鼻によるデスモプレシンの投与後約250分間で、約400mOsmol/kgより高いままであった。
【0073】
夜間多尿を有する成人患者における、2番目の別の試験は、500および1000ng(鼻腔内投与された1回または2回のスプレー)の用量は、43人の患者のうち41人において、一晩あたり1回またはそれより少ない、夜間の排尿の回数における劇的な治療的減少を生じたことを証明した。血清ナトリウムレベルは、治療中正常範囲内のままであった。
【0074】
本明細書中で言及された全ての特許公開の開示は、本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0075】
他の実施態様は、以下の特許請求の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者集団のメンバーにおいて、その集団のメンバーが低ナトリウム血症を発症し得る危険性を低減しながら、抗利尿効果を誘導するための安全ディスペンサーであって、
該ディスペンサーは、
デスモプレシン調製物および鼻粘膜浸透増強剤を含む組成物を、複数回の薬剤用量を構成するために十分な量で、リザーバー内に配置されているリザーバーであって、該組成物は、5%より高いデスモプレシンの生物学的利用能によって特徴付けられる、リザーバーと、
該リザーバーと連絡している出口と、
該リザーバーから該出口を通して、そして患者の鼻腔内表面へ、スプレーの形態の該組成物の計測した用量を連続的に投薬するための手動で作動可能なポンプと、を備え、
それぞれのスプレーの用量は、該患者集団のメンバーにおいて、血中で18pg/mlより低い標的Cmaxを達成するように、該患者の体重1キログラムあたり0.5ngのデスモプレシンから該患者の体重1キログラムあたり75ngのデスモプレシンの範囲内に制限されており、
同じ容積からなるそれぞれの連続的なスプレー用量は、鼻腔内粘膜を通じた薬剤輸送による、デスモプレシンの最大血中濃度(Cmax)の送達を該患者において確立するために十分であり、該デスモプレシンの最大血中濃度は、同じ標的Cmaxを達成するように設計された、デスモプレシンの皮下用量によって生じるCmaxの変動係数と同様の変動係数を有する、
ディスペンサー。
【請求項2】
前記それぞれの連続的なスプレー用量は、前記皮下用量の前記変動係数の50%以内の変動係数を有するデスモプレシンのCmaxを前記患者において確立する、請求項1に記載のディスペンサー。
【請求項3】
前記それぞれの連続的なスプレー用量は、前記皮下用量の前記変動係数の25%以内の変動係数を有するデスモプレシンのCmaxを前記患者において確立する、請求項2に記載のディスペンサー。
【請求項4】
前記それぞれの連続的なスプレー用量は、100%以下で変動する、連続投与される用量におけるデスモプレシンのCmaxを、前記患者において確立する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項5】
前記それぞれの連続的なスプレー用量は、50%以下で変動する、連続投与される用量におけるデスモプレシンのCmaxを、前記患者において鼻腔内送達によって確立する、請求項4に記載のディスペンサー。
【請求項6】
前記それぞれの連続的なスプレー用量は、以下の血中濃度範囲(血中でpg/ml):1〜3、2〜5、3〜6、4〜7、5〜8、6〜9、7〜10、のうちのいずれか1つの範囲内のデスモプレシンのCmaxを、前記患者において確立する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項7】
前記それぞれのスプレーの用量は、前記患者集団のメンバーにおいて、血中で約15pg/mlより低い標的Cmaxを達成するように制限される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項8】
前記それぞれのスプレーの用量は、前記患者集団のメンバーにおいて、血中で約10pg/mlより低い標的Cmaxを達成するように制限される、請求項7に記載のディスペンサー。
【請求項9】
前記用量の投薬後、前もって決定した時間間隔の間、前記リザーバーからの2回目の前記デスモプレシン用量の投薬を阻害する手段をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項10】
約6時間より短い間、標的患者集団において抗利尿を誘導するように処方される、請求項1〜9のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項11】
約2〜4時間の間、標的患者集団において抗利尿を誘導するように処方される、請求項10に記載のディスペンサー。
【請求項12】
約4〜7時間の間、標的患者集団において抗利尿を誘導するように処方される、請求項1〜9のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項13】
小児、35kgより軽い体重の小児、35〜50kgの間の体重の小児、成人女性、成人男性、50〜75kgの間の体重の女性、70〜85kgの間の体重の男性、および85kgより重い体重の男性から選択される標的集団のために処方される、請求項1〜12のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項14】
D10については20μmであり、D90については約300μmまでの範囲の平均容積分布を有する複数の滴を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項15】
前記浸透増強剤が、大環状エステル、ジエステル、アミド、ジアミド、アミジン、ジアミジン、チオエステル、ジチオエステル、チオアミド、ケトンまたはラクトンからなる群より選択される、請求項1〜14のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項16】
前記組成物が、10%より高いデスモプレシンの生物学的利用能によって特徴付けられる、請求項1〜15のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項17】
前記組成物が、15%より高いデスモプレシンの生物学的利用能によって特徴付けられる、請求項16に記載のディスペンサー。
【請求項18】
前記組成物が、20%より高いデスモプレシンの生物学的利用能によって特徴付けられる、請求項17に記載のディスペンサー。
【請求項19】
保存剤を含まない、請求項1〜18のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項20】
前記ポンプが、前記組成物の投薬の後の、細菌で汚染された周囲空気の充填を防止する、請求項1〜19のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項21】
前記ディスペンサーは、鼻腔内粘膜を通じた薬剤輸送による、デスモプレシンの血中濃度の送達を前記患者において確立し、該デスモプレシンの血中濃度は、該患者の片方または両方の外鼻孔に投薬されたデスモプレシンの量と実質的に直接比例する、請求項1〜20のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項22】
患者集団のメンバーにおいて、該集団のメンバーが低ナトリウム血症を発症し得る危険性を低減しながら、抗利尿効果を誘導するための安全ディスペンサーであって、
該ディスペンサーは、
デスモプレシン調製物および鼻粘膜浸透増強剤を含む組成物を、複数回の薬剤用量を構成するために十分な量でリザーバー内に配置されているリザーバーであって、該組成物は、5%より高いデスモプレシンの生物学的利用能によって特徴付けられる、リザーバーと、
該リザーバーと連絡している出口と、
該リザーバーから該出口を通して、そして患者の鼻腔内表面へ、スプレーの形態の該組成物の計測した用量を連続的に投薬するための手動で作動可能なポンプと、を備え、
それぞれのスプレーの用量は、該患者集団のメンバーにおいて、血中で約15+/−3pg/mlより低い標的Cmaxを達成するように、該患者の体重1キログラムあたり0.5ngのデスモプレシンから該患者の体重1キログラムあたり75ngのデスモプレシンの範囲内に制限されており、
該ディスペンサーは、鼻腔内粘膜を通じた薬剤輸送によって、該患者の片方または両方の外鼻孔に投薬されたデスモプレシンの量と実質的に直接比例する、約15+/−3pg/mlより低い範囲のデスモプレシンの血中濃度の送達を該患者において確立する、
ディスペンサー。
【請求項23】
前記それぞれの連続的なスプレー用量は、鼻腔内粘膜を通した薬剤輸送による、デスモプレシンの最大血中濃度(Cmax)の送達を前記患者において確立し、該デスモプレシンの最大血中濃度は、同じ標的Cmaxを達成するように設計された、デスモプレシンの皮下用量によって生じるCmaxの変動係数の50%以内の変動係数を有する、請求項22に記載のディスペンサー。
【請求項24】
前記それぞれの連続的なスプレー用量は、前記皮下用量の変動係数の25%以内の変動係数を有するデスモプレシンのCmaxを前記患者において確立する、請求項23に記載のディスペンサー。
【請求項25】
前記それぞれの連続的なスプレー用量は、50%以下で変動する、連続投与される用量におけるデスモプレシンのCmaxを、前記患者において鼻腔内送達によって確立する、請求項22〜24のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項26】
前記それぞれの連続的なスプレー用量は、以下の血中濃度範囲(血中でpg/ml):1〜3、2〜5、3〜6、4〜7、5〜8、6〜9、7〜10、のうちのいずれか1つの範囲内のデスモプレシンのCmaxを、前記患者において確立する、請求項22〜25のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項27】
前記それぞれのスプレーの用量は、前記患者集団のメンバーにおいて、血中で約10pg/mlより低い標的Cmaxを達成するように制限される、請求項22〜25のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項28】
前記用量の投薬後、前もって決定した時間間隔の間、前記リザーバーからの2回目の前記デスモプレシン用量の投薬を阻害する手段をさらに含む、請求項22〜27のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項29】
約6時間より短い間、標的患者集団において抗利尿を誘導するように処方される、請求項22〜28のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項30】
約2〜4時間の間、標的患者集団において抗利尿を誘導するように処方される、請求項29に記載のディスペンサー。
【請求項31】
約4〜7時間の間、標的患者集団において抗利尿を誘導するように処方される、請求項22〜28のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項32】
小児、前記標的集団として35kgより軽い体重の小児、35〜50kgの間の体重の小児、成人女性、成人男性、50〜75kgの間の体重の女性、70〜85kgの間の体重の男性、および85kgより重い体重の男性から選択される標的集団のために処方される、請求項22〜31のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項33】
D10については20μmであり、D90については約300μmまでの範囲の平均容積分布を有する複数の滴を含む、請求項22〜32のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項34】
前記浸透増強剤が、大環状エステル、ジエステル、アミド、ジアミド、アミジン、ジアミジン、チオエステル、ジチオエステル、チオアミド、ケトンまたはラクトンからなる群より選択される、請求項22〜23のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項35】
前記組成物が、10%より高いデスモプレシンの生物学的利用能によって特徴付けられる、請求項22〜34のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項36】
前記組成物が、15%より高いデスモプレシンの生物学的利用能によって特徴付けられる、請求項35に記載のディスペンサー。
【請求項37】
前記組成物が、20%より高いデスモプレシンの生物学的利用能によって特徴付けられる、請求項22〜36のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項38】
保存剤を含まない、請求項22〜37のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項39】
前記ポンプが、前記組成物の投薬の後の、細菌で汚染された周囲空気の充填を防止する、請求項22〜38のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項40】
患者における抗利尿効果を誘導するための、請求項1〜39のいずれか一項に記載のディスペンサーの使用。
【請求項41】
前記患者の血流において、15+/−3pg/ml以下のデスモプレシン濃度を生じるための、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
前記患者の血流において、10+/−3pg/ml以下のデスモプレシン濃度を生じるための、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記患者の血流において、7+/−3pg/ml以下のデスモプレシン濃度を生じるための、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
約6時間より短い間、抗利尿を誘導するための、請求項40〜43のいずれか一項に記載の使用。
【請求項45】
約2〜4時間の間、抗利尿を誘導するための、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
約4〜7時間の間、抗利尿を誘導するための、請求項40〜43のいずれか一項に記載の使用。
【請求項47】
患者における抗利尿効果を誘導する方法であって、該方法は、該患者に、請求項1〜39のいずれか一項に記載のディスペンサーからデスモプレシンを鼻腔内投与する工程を含む、方法。
【請求項48】
前記投与は、前記患者の血流において、15+/−3pg/ml以下のデスモプレシン濃度を生じる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記投与は、前記患者の血流において、10+/−3pg/ml以下のデスモプレシン濃度を生じる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記投与は、前記患者の血流において、7+/−3pg/ml以下のデスモプレシン濃度を生じる、請求項49に記載の方法
【請求項51】
前記投与は、約6時間より短い間、抗利尿を誘導する、請求項47〜50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記投与は、約2〜4時間の間、抗利尿を誘導する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記投与は、約4〜7時間の間、抗利尿を誘導する、請求項47〜50のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−513403(P2012−513403A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542539(P2011−542539)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/068962
【国際公開番号】WO2010/075266
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(506032820)アラガン,インコーポレイティド (3)
【Fターム(参考)】