説明

齧歯動物用誘引・喫食性向上剤、及びこれを含有する齧歯動物用フードならびに齧歯動物用毒餌剤

【課題】ネズミの誘引・喫食性を向上させ、しかもその効果が持続する齧歯動物用誘引・喫食性向上剤、ならびにこれを含有する有用な齧歯動物用フードや齧歯動物用毒餌剤の提供。
【課題の解決手段】米糠及び/又は米糠由来成分、好ましくはこれとゴマとを8:1〜1:1の質量比で含有する齧歯動物用誘引・喫食性向上剤。及びこれを配合した齧歯動物用フードならびに齧歯動物用毒餌剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、齧歯動物用誘引・喫食性向上剤、及びこれを含有する齧歯動物用フードならびに齧歯動物用毒餌剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ネズミを駆除するために、齧歯動物用フードを用いた粘着式捕獲器や齧歯動物用毒餌剤が広く用いられている。その際、齧歯動物用フードや齧歯動物用毒餌剤に対するネズミの喫食性は駆除効果に大きな影響を及ぼすので、これまで誘引・喫食性を向上するための検討が種々なされてきた。例えば、特許文献1(特開2002−3325)には、シーズニングオイル及び/又は海藻類からなる誘引、喫食性向上剤が開示され、また特許文献2(特開2002−17232)には、少なくとも1つ以上の香気性調合フレーバーからなる誘引成分を担持体に保持し、食餌の代用物として使用するネズミの捕獲誘引材が提案されている。
しかしながら、これらはその誘引・喫食性が不十分であったり、十分に効果が持続しなかったりするという問題点があり、より的確な齧歯動物用誘引・喫食性向上剤の開発が求められている。
【特許文献1】特開2002−3325
【特許文献2】特開2002−17232
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ネズミの誘引・喫食性を向上させ、しかもその効果が持続する齧歯動物用誘引・喫食性向上剤、ならびにこれを含有する有用な齧歯動物用フードや齧歯動物用毒餌剤を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成を採用する。
(1)米糠及び/又は米糠由来成分を含有する齧歯動物用誘引・喫食性向上剤。
(2)米糠及び/又は米糠由来成分と、ゴマとを8:1〜1:1の質量比で含有する(1)記載の齧歯動物用誘引・喫食性向上剤。
(3)更に、誘引・喫食性共力成分として、ブロモニトロアルコールを配合する(1)又は(2)記載の齧歯動物用誘引・喫食性向上剤。
(4)(1)ないし(3)のいずれか記載の齧歯動物用誘引・喫食性向上剤を含有する齧歯動物用フード。
(5)(1)ないし(3)のいずれか記載の齧歯動物用誘引・喫食性向上剤、及び殺鼠成分を含有する齧歯動物用毒餌剤。
【発明の効果】
【0005】
本発明の齧歯動物用誘引・喫食性向上剤は、ネズミの誘引・喫食性を向上させ、しかもその効果が持続するので非常に有用である。そして、これを含有する齧歯動物用フードや齧歯動物用毒餌剤は、前記齧歯動物用誘引・喫食性向上剤の優れたネズミ誘引・喫食作用に基づき高い駆除効果を奏するので極めて実用的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の齧歯動物用誘引・喫食性向上剤は、米糠及び/又は米糠由来成分、好ましくはこれとゴマとを特定の比率で含有することを特徴とする。
米糠や例えば米糠オイルのような米糠由来成分が、齧歯動物用フードや齧歯動物用毒餌剤の基材や食餌成分として用いられることは既に公知であり、例えば前記特許文献1(特開2002−3325)や特許文献2(特開2002−17232)に記載されているが、幾多の成分の一例として列挙されているに過ぎず、これが顕著なネズミ誘引・喫食作用を奏することを示唆するものは何もなかった。しかるに、本発明者らは、種々の基材や食餌成分について新たに鋭意検討を行ったところ、米糠及び/又は米糠由来成分が齧歯動物用誘引・喫食性向上剤の有効成分として極めて有効であり、しかも、これとゴマとを8:1〜1:1の質量比で含有させることによって、誘引・喫食効果が更に相乗的に顕著に向上することを見出し本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
本発明で用いる米糠は、玄米から精白米を作る際に副生するもので、果皮、種皮、糊粉層及び胚芽部分等からなり、食用油の原料、糠漬け、飼料、茸の培養基として利用されている。米糠には、オレイン酸やリノール酸等の不飽和脂肪酸や甘み成分としての蔗糖等が含まれ、これらがネズミに対する誘引・喫食作用に関与しているものと考えられる。なお、前記オレイン酸やリノール酸等の不飽和脂肪酸は酸化を受けやすいので、安定化加工を施した米糠であってもよい。
【0008】
また、古くから食用とされてきたゴマは、セサミンやセサモール等のゴマ特有の成分を含有し、最近健康食品としても注目されているが、これまで齧歯動物用誘引・喫食性向上剤として着目されたことはなかった。しかるに、本発明者らによる試験の結果、ゴマ単独ではその誘引・喫食効果はそれほど高くないものの、米糠及び/又は米糠由来成分とゴマ、好ましくはその粉状物とを8:1〜1:1の質量比で組み合わせることによって、明確な理由は不明ながら誘引・喫食効果が相乗的に増強することが認められた。
【0009】
本発明の齧歯動物用誘引・喫食性向上剤には、更に、安定化剤、防黴剤等として有効な誘引・喫食性共力成分を配合するのが好ましい。誘引・喫食性共力成分としては、ブロモニトロアルコール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、没食子酸プロピル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(メチルクロロイソチアゾリンオン)、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等があげられるが、なかでもブロモニトロアルコールは誘引・喫食性も高め得るので好適である。このような誘引・喫食性共力成分は、齧歯動物用誘引・喫食性向上剤に対して0.005〜0.1倍量配合すればよい。
【0010】
本発明の齧歯動物用誘引・喫食性向上剤は、他の基材や食餌成分とともに混和したり練合したりして齧歯動物用フードに用いることができる。誘引・喫食性向上剤の全体量に対する割合は、1〜50質量%程度が適当である。
【0011】
齧歯動物用フードを製するには公知の基材や食餌成分等用いて製剤化すればよい。このようなものとしては、例えば、小麦、大麦、トウモロコシ、米、大豆、ピーナッツ、そば等の穀物粉末、ジャガイモ、マッシュポテト、サツマイモ等の芋類粉末、砂糖、てんさい糖、ショ糖、ブドウ糖、果糖、上白糖、グラニュー糖、三温糖等の糖類粉末、きな粉、魚粉、さなぎ粉、脱脂粉乳、種子や木の実の粉末、油揚げ、サツマ揚げ、煮干、ホットケーキ、バター、パン、バナナ、リンゴ等の食餌成分をあげることができる。
【0012】
齧歯動物用フードには、必要に応じて適宜、コーン油、大豆油、オリーブ油、菜種油等の植物油、魚油、牛油等の動物油、界面活性剤、グリセリン、水等を配合してもよい。
更に、チーズフレーバー、バターフレーバー、ビーフフレーバー、カツオブシフレーバー、海老フレーバー、オニオンフレーバー、キャベツフレーバー、ピーナッツフレーバー、種々のフルーツフレーバー等の甘味香料、あるいは、トウガラシ末、エリスロシン、エリスロシンアルミニウムレーキ、ローズベンガル、食用赤色色素等の誤食防止剤、着色剤等を添加することもできる。
【0013】
齧歯動物用フードは、通常公知の製造方法に従って、所要の齧歯動物用誘引・喫食性向上剤、誘引・喫食性共力成分、基材、食餌成分の混合粉と粘結粉(例えば、デンプン粉)及び水を練合後、顆粒状、錠剤状、ダンゴ状等の形状に成形し、乾燥して製することができる。また、本発明の齧歯動物用誘引・喫食性成分を含まずにあらかじめ調製した成形品の表面に、前記誘引・喫食性向上剤や誘引・喫食性共力成分を均一にふりかけたり、塗布するようにしても構わない。
【0014】
更に、齧歯動物用フードは、固形状でなく、ペースト状、ゲル状等であってもよい。
ゲル化剤としては、水溶性多糖類及び/又は吸水性樹脂を用いることができる。水溶性多糖類の代表例は、グァーガム、キサンタンガム、ラムダカラギーナン、ジュランガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ソーダ等であり、また、吸水性樹脂としては、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸塩系ポリマー、澱粉−ポリアクリル酸塩系ポリマー、PVA−ポリアクリル酸塩系ポリマー、PVA系ポリマー、カルボキシメチルセルロース系ポリマー等があげられる。
【0015】
上記齧歯動物用フードは、誘引材として粘着式捕獲器(トラップ)内に置いたり、あるいは併置してネズミ駆除に用いられる。フードの大きさや、設置量は主に対象とするネズミの種類や設置場所、あるいは使用期間等を考慮して適宜決定すればよい。
【0016】
本発明の齧歯動物用誘引・喫食性向上剤は、殺鼠成分を含有する齧歯動物用毒餌剤に適用することもできる。
齧歯動物用毒餌剤とするための殺鼠成分としては、ワルファリン、クマテトラリル等のクマリン系化合物、ダイファシノン、クロロファシノン等のインダンジオン系化合物、ジフェチアロール、プロマジオロン、シリロシド等の化合物があげられるが、これらに限定されない。
【0017】
本発明の齧歯動物用誘引・喫食性向上剤、及びこれを含有する齧歯動物用フードならびに齧歯動物用毒餌剤は、ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミ、ハタネズミ等のネズミ類に対して有効である。
【0018】
次に、本発明を実施例ならびに試験例に基づき更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
全体量に対して、米糠20.0質量%、ゴマ粉5.0質量%、マッシュポテト25.0質量%、小麦粉20.0質量%、トウモロコシ粉8.0質量%、きな粉6.0質量%、ピーナッツ粉4.0質量%、粘結粉としてのデンプン粉5.0質量%、米糠オイル2.0質量%、ブロモニトロアルコール0.3質量%、ソルビン酸カリウム0.3質量%、食用赤色色素0.01質量%、及びその他の食餌成分4.39質量%を含む混合物に、約半量の水を加えてよく練合し、直径15mm、厚さ5mmの錠剤状に成形後、50〜60℃で乾燥して本発明の齧歯動物用フードを調製した。
このフード1個を粘着式捕獲器内の粘着剤(ポリブテン主体)塗工部上に置き、穀物倉庫で使用したところ、このフードはクマネズミやドブネズミの誘引・喫食性に優れ、齧歯動物の捕獲に有効であった。
【実施例2】
【0020】
全体量に対して、米糠15.0質量%、ゴマ6.0質量%、マッシュポテト12.0質量%、大麦粉40.0質量%、さなぎ粉5.0質量%、ピーナッツ粉4.0質量%、粘結粉としてのデンプン粉6.0質量%、牛油3.0質量%、ブロモニトロアルコール0.3質量%、ソルビン酸カリウム0.3質量%、食用赤色色素0.01質量%、殺鼠成分としてのワルファリン0.1質量%、及びその他の食餌成分8.29質量%を含む混合物に、約半量の水を加えてよく練合し、顆粒状に成形後、50〜60℃で乾燥して本発明の齧歯動物用毒餌剤を調製した。
この齧歯動物用毒餌剤約30gを皿に入れ、ネズミのよく出没する場所数箇所に設置した。その結果、この齧歯動物用毒餌剤は、クマネズミ、ドブネズミあるいはハツカネズミの駆除に極めて効果的であった。
【実施例3】
【0021】
実施例1に準じて表1に示す各種の顆粒状の齧歯動物用フードを調製した。
被験ドブネズミを1匹放った金網製ケージ内(縦:25cm、横:35cm、高さ:18cm)に、供試フード30gとコントロールとしての実験動物用固形飼料30gを併設し、3日後に供試フードの喫食量を測定した。試験は3回繰り返し行いその平均値を求め、喫食量の多少を供試フードの誘引・喫食性の指標とした。
【0022】
【表1】


【0023】
試験の結果、本発明の齧歯動物用フードは喫食量が多く、これに含有される本発明の齧歯動物用誘引・喫食性向上剤、即ち、米糠及び/又は米糠由来成分、好ましくは、これとゴマとの組み合わせが極めて優れた誘引・喫食効果を奏することが確認された。また、誘引・喫食性共力成分の配合も効果的で、特にブロモニトロアルコールの添加は有効成分の安定化作用の点だけでなく、誘引・喫食性の向上にも寄与した。
これに対し、比較例1ないし4に示すように、米糠を含まない供試フードの喫食量は少なく、米糠との組み合わせで相乗効果が認められたゴマも単独(比較例3)では誘引・喫食性が乏しかった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は齧歯動物防除に極めて有用であり、齧歯動物以外の用途にも利用できる可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米糠及び/又は米糠由来成分を含有することを特徴とする齧歯動物用誘引・喫食性向上剤。
【請求項2】
米糠及び/又は米糠由来成分と、ゴマとを8:1〜1:1の質量比で含有することを特徴とする請求項1記載の齧歯動物用誘引・喫食性向上剤。
【請求項3】
更に、誘引・喫食性共力成分として、ブロモニトロアルコールを配合することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の齧歯動物用誘引・喫食性向上剤。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか記載の齧歯動物用誘引・喫食性向上剤を含有することを特徴とする齧歯動物用フード。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか記載の齧歯動物用誘引・喫食性向上剤、及び殺鼠成分を含有することを特徴とする齧歯動物用毒餌剤。

【公開番号】特開2008−137928(P2008−137928A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324406(P2006−324406)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【Fターム(参考)】