説明

$I(Streptococcuspneumoniae)由来の組換え保護タンパク質

【課題】本願出願の課題は、細菌感染に関連する感染症または炎症の治療または予防のための組成物を提供することである。
【解決手段】前記課題は、約20キロダルトン(kDa)の分子量を有するStreptococcus Pneumoniae表面関連の肺炎保護タンパク質(PPP)に関するアミノ酸配列および核酸配列によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、20キロダルトン(kDa)の分子量を有するStreptococcus pneumoniae由来のタンパク質に関連するアミノ酸配列および核酸配列に関する。本発明はまた、細菌感染に関連する感染症または炎症の治療および予防にも関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、米国特許(35USC)第119条の下、2000年12月28日出願の米国特許仮出願第60/258,841号の優先権を請求し、その全内容を本明細書中に参照として組み込む。
【0003】
中耳は、鼓膜によって外耳と隔てられている、空気で満たされた無菌の腔である。鼓膜には、音波が鼓膜を打つと振動する3つの耳小骨が付着している。この振動が内耳に伝達され、内耳で発生した神経インパルスが脳に送られる。空気は、鼻咽頭の壁につながる耳管を通じて中耳に入ることができる。
【0004】
鼻咽頭は鼻腔の後方に位置する。鼻咽頭は呼吸上皮および層別化された扁平上皮で裏打ちされている。呼吸上皮の下は、大量の粘膜関連リンパ組織(MALT)で鼻咽頭扁桃腺(アデノイド)が形成されている。
【0005】
中耳の細菌感染症または炎症は、主に小児に観察される。中耳が隔離されていることより、中耳の感染症の発生には鼻咽頭および耳管が関与していなければならないことが示唆される。Streptococcus pneumoniae(S.pneumoniae)による感染は、世界的に中耳炎、菌血症、髄膜炎、致死性肺炎の主要な原因である(Butler,J.C.他、American Journal of Medicine、1999、107:69S-76S)。世界中で多剤耐性の肺炎球菌株が急速に出現したことにより、ワクチン接種によって肺炎球菌感染症を予防することの重要性が増した(GoldsteinおよびGarau、Lancet、1977、350:233-4)。
【0006】
S.pneumoniaeのタンパク質抗原は、肺炎球菌感染の動物モデルにおけるその保護効力が評価されてきた。最も一般的に研究されているワクチン候補には、PspAタンパク質、PsaAリポタンパク質、CbpAタンパク質が含まれる。数々の研究によって、PspAタンパク質は病原性因子であるが(Crain,M.J.他、Infect Immun、1990、58:3293-9;McDaniel,L.S.他、J Exp Med、1984、160:386-97)、肺炎球菌株間で抗原性が可変的であることが示された。さらに、最近の研究により、組換えPspA変異体内の抗原性が保存された領域の一部が、ヒトの成体内で交差反応性の抗体を誘発する可能性があることが示された(Nabors,G.S.他、Vaccine、2000、18:1743-1754)。他のグラム陽性付着物と類似性を有する37kDaのリポタンパク質であるPsaAは、肺炎球菌内のマンガンの送達に関与しており(Dintilhac,A.他、Molecular Microbiology、1997、25(4):727-739;Sampson,J.S.他、Infect Immun、1994、62:319-24)、全身性疾病のマウスモデルにおいて保護性があることが示された(Talkington,D.F.他、Microb Pathog、1996.21:17-22)。表面に露出したコリン結合タンパク質であるCbpAは抗原性が保存されており、これもまた肺炎球菌疾病のマウスモデルにおいて保護性がある(Rosenow,C.他、Molecular Microbiology、1997、25:819-29)。鼻咽頭への定着(コロニー形成)は耳の疾患において必須であるため、肺炎球菌タンパク質および適切な粘膜アジュバントを用いたマウスの鼻腔内免疫化が、粘膜抗体応答を増強させてタンパク質ワクチン候補の有効性を増強させることに使用されてきた(Briles,D.E.他、Infect Immun、2000、68:796-800;Yamamoto,M.他、A.J Immunol、1998、161:4115-21)。
現在利用可能な23価肺炎球菌カプセル状多糖ワクチンは、肺炎球菌感染症に対して危険な状態にある2つの主要な集団である、2歳未満の小児および免疫不全の患者に効果がない(Douglas,R.M.他、Journal of Infectious Diseases、1983、148:131-137)。7価肺炎球菌多糖タンパク質に結合したワクチンは、ワクチン血清型によって交差反応性莢膜血清型に対して引き起こされる全身性肺炎球菌疾病に対して乳児および小児で効果が高いことが示された(ShinefieldおよびBlack、Pediatr Infect Dis J、2000、19:394-7)。7つのカプセルタイプは米国の疾患分離株の80%以上をカバーするが、世界の他地域の疾患分離株の57から60%でしかない(Hausdorff,W.P.他、Clinical Infectious Diseases、2000、30:100-21)。したがって、肺炎球菌の血清型を引き起こす疾病のほとんどまたはすべてをカバーするワクチンが差し迫って必要とされている。
鉄は、多くの病原性細菌の定着および感染に必須の元素である。獲得プロセスの防止により、定着が低下し、疾病の可能性がより低くなるはずである。成功を収めた病原体、たとえばそれだけには限定されないが、N.gonorrheae、N.meningitidis、M.catarrhalis、H.influenzae中の鉄獲得錯体は、他の研究室によってそのワクチンとしての潜在能力が評価されている(Conte,M.P他、Infection and Immunity、1999、64:3925;Gray-Owens,S.D.他、Infection and Immunity、1995、64:1201;Luke N.R.他、Infection and Immunity、1999、67:681;Pettersson,A他、Infection and Immunity、1993、61:4724)。したがって、鉄の獲得を担っている構造を単離することでワクチン候補が得られる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許仮出願第60/258,841号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Butler,J.C.他、American Journal of Medicine、1999、107:69S-76S
【非特許文献2】GoldsteinおよびGarau、Lancet、1977、350:233-4
【非特許文献3】Crain,M.J.他、Infect Immun、1990、58:3293-9
【非特許文献4】McDaniel,L.S.他、J Exp Med、1984、160:386-97
【非特許文献5】Nabors,G.S.他、Vaccine、2000、18:1743-1754
【非特許文献6】Dintilhac,A.、他、Molecular Microbiology、1997、25(4):727-739
【非特許文献7】Sampson,J.S.他、Infect Immun、1994、62:319-24
【非特許文献8】Talkington,D.F.他、Microb Pathog、1996.21:17-22
【非特許文献9】Rosenow,C.他、Molecular Microbiology、1997、25:819-29
【非特許文献10】Briles,D.E.他、Infect Immun、2000、68:796-800
【非特許文献11】Yamamoto,M.他、A.J Immunol、1998、161:4115-21
【非特許文献12】Douglas,R.M.他、Journal of Infectious Diseases、1983、148:131-137
【非特許文献13】ShinefieldおよびBlack、Pediatr Infect Dis J、2000、19:394-7
【非特許文献14】Hausdorff,W.P.他、Clinical Infectious Diseases、2000、30:100-21
【非特許文献15】Conte,M.P他、Infection and Immunity、1999、64:3925
【非特許文献16】Gray-Owens,S.D.他、Infection and Immunity、1995、64:1201
【非特許文献17】Luke N.R.他、Infection and Immunity、1999、67:681
【非特許文献18】Pettersson,A他、Infection and Immunity、1993、61:4724
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、約20キロダルトン(kDa)の分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連の肺炎保護タンパク質(Pneumo Protective Protein、PPP)またはその断片を企図し、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは肺炎球菌の定着(コロニー形成)を低下させる能力を有する。
【0010】
本発明は、約20kDaの分子量を有する組換えS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片を企図し、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有する。
【0011】
本発明は、約20kDaの分子量を有する組換えS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片を企図し、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有しており、PPPは約4.587の等電点を有する。
【0012】
本発明は、約20kDaの分子量を有する組換えS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片を企図し、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有しており、PPPは約4.587の等電点およびpH7で約-14.214の電荷を有する。
【0013】
本発明は、約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片を企図し、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは配列番号5に示すアミノ酸配列またはその断片を有し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有する。
【0014】
本発明は、約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPをコードする核酸配列またはその断片を企図し、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、その核酸配列は配列番号4に示す配列またはその断片を有し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有する。
【0015】
本発明は、約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPをコードするcDNAまたはその断片を企図し、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、核酸配列は配列番号4に示す配列またはその断片を有し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有する。
【0016】
本発明はまた、約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPをコードする核酸配列またはその断片を含む発現ベクターを企図し、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有しており、配列は発現制御配列と機能的に結合している。
【0017】
本発明はまた、約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPをコードする核酸配列またはその断片を含むベクターを企図し、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有しており、配列は発現制御配列と機能的に結合しており、PPPは約4.587の等電点を有する。
【0018】
本発明はさらに、約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPをコードする核酸配列またはその断片を含むベクターを企図し、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有しており、配列は発現制御配列と機能的に結合しており、PPPは約4.587の等電点およびpH7で約-14.214の電荷を有する。
【0019】
本発明はまた、約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片をコードする核酸配列を含む発現ベクターを企図し、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは配列番号5に示すアミノ酸配列またはその断片を有し、核酸配列は発現制御配列と機能的に結合している。
【0020】
本発明はまた、約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片をコードする核酸配列を含む発現ベクターを企図し、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは配列番号5に示すアミノ酸配列またはその断片を有し、アミノ酸配列は配列番号4に示す核酸配列またはその断片によってコードされるものであり、核酸配列は発現制御配列と機能的に結合している。
【0021】
本発明は、約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片をコードする核酸配列を含む発現ベクターを用いてトランスフェクションさせた宿主細胞を企図し、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有しており、配列は発現制御配列と機能的に結合している。
【0022】
本発明はさらに、約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片をコードする核酸配列を含むベクターを用いてトランスフェクションさせた宿主細胞を企図し、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは配列番号5に示すアミノ酸配列またはその断片を有し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有しており、配列は発現制御配列と機能的に結合している。
【0023】
本発明はまた、組換えPPPを生成する方法であって、発現ベクターを用いてトランスフェクションさせた宿主細胞をベクターによるPPPの発現をもたらす条件下で培養して生成させたPPPを単離することを含む方法を企図し、ベクターは約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片をコードする核酸配列を含み、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有しており、配列は発現制御配列と機能的に結合している。
【0024】
本発明はまた、組換えPPPを生成する方法であって、ベクターを用いてトランスフェクションさせた宿主細胞をベクターによるPPPの発現をもたらす条件下で培養して生成させたPPPを単離することを含む方法を企図し、ベクターは約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片をコードする核酸配列を含み、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは配列番号5に示すアミノ酸配列またはその断片を有し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有しており、配列は発現制御配列と機能的に結合している。
【0025】
本発明はまた、(1)約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片であって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有している、PPPまたはその断片、および(2)製薬的に許容できる担体を含む組成物を企図する。
【0026】
本発明はまた、(1)約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片であって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有しており、PPPは配列番号5に示すアミノ酸配列またはその断片を有する、PPPまたはその断片、および(2)製薬的に許容できる担体を含む組成物を企図する。
【0027】
本発明は、(1)約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPをコードする核酸配列またはその断片であって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有しており、PPPは配列番号4に示すアミノ酸配列またはその断片を有する、核酸配列またはその断片、および(2)製薬的に許容できる担体を含む組成物を企図する。
【0028】
本発明は、(1)約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPをコードする核酸配列またはその断片を含む発現ベクターであって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有しており、配列は発現制御配列と機能的に結合している、発現ベクター、および(2)製薬的に許容できる担体を含む組成物を企図する。
【0029】
本発明はまた、(1)約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPをコードする核酸配列またはその断片を含む発現ベクターであって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは配列番号5に示すアミノ酸配列またはその断片を有し、核酸配列は発現制御配列と機能的に結合している、発現ベクター、および(2)製薬的に許容できる担体を含む組成物を企図する。
【0030】
本発明はまた、(1)約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPをコードする核酸配列またはその断片を含む発現ベクターを用いてトランスフェクションさせた宿主細胞であって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有しており、配列は発現制御配列と機能的に結合している、宿主細胞、および(2)製薬的に許容できる担体を含む組成物を企図する。
【0031】
本発明は、(1)約20kDaの分子量を有する単離したS.pneumoniae表面関連のPPPをコードする核酸配列またはその断片を含む発現ベクターを用いてトランスフェクションさせた宿主細胞であって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは肺炎球菌の定着を低下させる能力を有しており、配列は発現制御配列と機能的に結合しており、PPPは配列番号5に示すアミノ酸配列またはその断片を有する、宿主細胞、および(2)製薬的に許容できる担体を含む組成物を企図する。
【0032】
本発明はまた、(i)約20kDaの分子量を有するS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片であって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定する断片、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物を企図する。
【0033】
本発明はまた、(i)約20kDaの分子量を有するS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片であって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは約4.587の等電点を有する断片、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物を企図する。
【0034】
本発明はまた、(i)約20kDaの分子量を有するS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片であって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは約4.587の等電点およびpH7で約-14.214の電荷を有する断片、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物を企図する。
【0035】
本発明はまた、(i)約20kDaの分子量を有するS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片であって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは配列番号5に示すアミノ酸配列またはその免疫原性がある断片を有する断片、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物を企図する。
【0036】
本発明はまた、(i)約20kDaの分子量を有するS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片であって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは配列番号4に示す核酸配列またはその免疫原性がある断片を有する断片、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物を企図する。
【0037】
本発明はまた、(i)約20kDaの分子量を有するS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片であって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定する断片、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物を企図し、組成物はStreptococcus pneumoniaeによって引き起こされた疾病に対する保護免疫を誘発させる。
【0038】
本発明はまた、(i)約20kDaの分子量を有するS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片であって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定する断片、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物を企図し、組成物はStreptococcus pneumoniaeによって引き起こされた疾病に対する保護免疫を誘発させ、疾病は、中耳炎、鼻副鼻腔炎、菌血症、髄膜炎、肺炎、下気道感染症からなる群から選択される。
【0039】
本発明はまた、(i)約20kDaの分子量を有するS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片であって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定する断片、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物を企図し、組成物はStreptococcus pneumoniaeによって引き起こされた疾病に対する保護免疫を誘発させ、PPPは配列番号5に示すアミノ酸配列を含むまたはその免疫原性がある断片である。
【0040】
本発明はまた、(i)約20kDaの分子量を有するS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片であって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは配列番号4に示す核酸配列またはその免疫原性がある断片にコードされる断片、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物を企図し、組成物はStreptococcus pneumoniaeによって引き起こされた疾病に対する保護免疫を誘発させる。
【0041】
本発明は、(i)約20kDaの分子量を有するPPPをコードする少なくとも1つの発現ベクターであって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定する発現ベクター、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物を企図する。
【0042】
本発明は、(i)約20kDaの分子量を有するPPPをコードする少なくとも1つの発現ベクターであって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定する発現ベクター、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物を企図し、肺炎球菌はStreptococcus pneumoniaeである。
【0043】
本発明は、(i)約20kDaの分子量を有するPPPをコードする少なくとも1つの発現ベクターであって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定する発現ベクター、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物を企図し、組成物は、Streptococcus pneumoniaeによって引き起こされた疾病に対する保護免疫を誘発させる。
【0044】
本発明は、(i)約20kDaの分子量を有するPPPをコードする少なくとも1つの発現ベクターであって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定する発現ベクター、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物を企図し、組成物はStreptococcus pneumoniaeによって引き起こされた疾病に対する保護免疫を誘発させ、疾病は、中耳炎、鼻副鼻腔炎、菌血症、髄膜炎、肺炎、下気道感染症からなる群から選択される。
【0045】
本発明は、(i)約20kDaの分子量を有するPPPをコードする少なくとも1つの発現ベクターであって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは約4.587の等電点を有する発現ベクター、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物を企図する。
【0046】
本発明は、(i)約20kDaの分子量を有するPPPをコードする少なくとも1つの発現ベクターであって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは約4.587の等電点およびpH7で約14.214の電荷を有する発現ベクター、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物を企図する。
【0047】
本発明は、(i)約20kDaの分子量を有するPPPをコードする少なくとも1つの発現ベクターであって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、発現ベクターは配列番号5に示すアミノ酸配列またはその免疫原性がある断片をコードする核酸配列を含む発現ベクター、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物を企図する。
【0048】
本発明は、(i)約20kDaの分子量を有するPPPをコードする少なくとも1つの発現ベクターであって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、発現ベクターは配列番号5に示すアミノ酸配列またはその免疫原性がある断片をコードする核酸配列を含む発現ベクター、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物を企図する。
【0049】
本発明は、(i)約20kDaの分子量を有するPPPをコードする少なくとも1つの発現ベクターであって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、発現ベクターは配列番号4に示す核酸配列またはその免疫原性断片を含む発現ベクター、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物を企図する。
【0050】
本発明は、哺乳動物内で免疫応答を誘発させる方法であって、哺乳動物内で免疫応答を誘発させるのに有効な量の組成物を哺乳動物に投与することを含み、組成物は(i)約20キロダルトン(kDa)の分子量を有するS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片であって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定するPPPまたはその断片、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む方法を企図する。
【0051】
本発明は、哺乳動物内で免疫応答を誘発させる方法であって、哺乳動物内で免疫応答を誘発させるのに有効な量の免疫原性組成物を哺乳動物に投与することを含み、組成物は(i)約20キロダルトン(kDa)の分子量を有するS.pneumoniae表面関連のPPPまたはその断片であって、分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは配列番号5に示すアミノ酸配列またはその免疫原性がある断片を有するPPPまたはその断片、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む方法を企図する。
【0052】
本発明は、哺乳動物内で免疫応答を誘発させる方法であって、哺乳動物内で免疫応答を誘発させるのに有効な量の免疫原性組成物を哺乳動物に投与することを含み、組成物は(i)約20キロダルトン(kDa)の分子量を有するPPPをコードする少なくとも1つの発現ベクターであって、前記分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定し、PPPは約4.582の等電点を有する発現ベクター、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む方法を企図する。
【0053】
本発明は、哺乳動物内で免疫応答を誘発させる方法であって、哺乳動物内で免疫応答を誘発させるのに有効な量の組成物を哺乳動物に投与することを含み、組成物は(i)約20キロダルトン(kDa)の分子量を有するPPPをコードする少なくとも1つの発現ベクターであって、前記分子量は10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定する発現ベクター、(ii)製薬的に許容できる担体、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む方法を企図し、前記発現ベクターは配列番号5に示すアミノ酸配列またはその免疫原性がある断片をコードする核酸配列を含む。
【0054】
本発明は、肺炎球菌に感染した哺乳動物内で免疫応答を誘発させる方法であって、配列番号5に示すアミノ酸配列の結合を阻害するのに有効な量の化合物を哺乳動物に投与して哺乳動物内の免疫応答を誘発させることを含む方法を企図する。
【0055】
本発明はまた、肺炎球菌に感染した哺乳動物内で免疫応答を誘発させる化合物を得るためにスクリーニングする方法であって、化合物の存在下での配列番号5に示すアミノ酸配列である第1結合量を、化合物を存在させない場合の配列番号5に示すアミノ酸配列である第2結合量と比較することを含み、第1の結合量が第2の結合量より低いことにより化合物が哺乳動物内で免疫応答を誘発させる可能性があること示唆する方法を企図する。
【0056】
本発明はまた、肺炎球菌感染症を診断する方法であって、被疑試料中の配列番号5に示すPPPまたはその断片のレベルを、対照試料中の配列番号5に示すPPPまたはその断片のレベルと比較することを含み、被疑試料の肺炎保護タンパク質レベルが、対照試料中の肺炎保護タンパク質レベルより高いことにより、被疑試料が肺炎細菌感染性を含むことが示される方法を企図する。
【0057】
本発明はさらに、Streptococcus pneumoniaeのPPPに結合する抗体を企図する。
【0058】
本発明はまた、配列番号5に示すアミノ酸配列またはその断片を選択認識する、Streptococcus pneumoniaeのPPPに結合する抗体を企図する。
【0059】
本発明はまた、Streptococcus pneumoniaeのPPPに結合するキメラ抗体を企図する。
【0060】
本発明はまた、Streptococcus pneumoniaeのPPPに結合するヒト化抗体を企図する。
【0061】
本発明はまた、Streptococcus pneumoniaeのPPPに結合する抗イディオタイプ抗体を企図する。
【0062】
本発明はまた、製薬的に活性のある化合物に結合した、Streptococcus pneumoniaeのPPPに結合する抗体を企図する。
【0063】
本発明はまた、Streptococcus pneumoniaeのPPPに結合するモノクローナル抗体を企図する。
【0064】
本発明はまた、ヒト化した、Streptococcus pneumoniaeのPPPに結合するモノクローナル抗体を企図する。
【0065】
本発明はまた、抗イディオタイプである、Streptococcus pneumoniaeのPPPに結合するモノクローナル抗体を企図する。
【0066】
本発明はまた、製薬的に活性のある化合物に結合した、Streptococcus pneumoniaeのPPPに結合するモノクローナル抗体を企図する。
【0067】
本発明は、哺乳動物中で免疫応答を誘発させる方法であって、Streptococcus pneumoniaeのPPPに結合する抗イディオタイプ抗体を哺乳動物中で免疫応答を誘発させるのに有効な量哺乳動物に投与することを含む方法を企図する。
【0068】
本発明は、哺乳動物中で免疫応答を誘発させる方法であって、Streptococcus pneumoniaeのPPPに結合するモノクローナル抗体をある量哺乳動物に投与することを含み、抗体が抗イディオタイプであり、哺乳動物中で免疫応答を誘発させるのに有効である方法を企図する。
【0069】
本発明は、肺炎球菌に感染した哺乳動物中で免疫応答を誘発させる方法であって、Streptococcus pneumoniaeのPPPに結合する抗体をある量哺乳動物に投与することを含み、抗体が製薬的に活性のある化合物に結合した、哺乳動物中で免疫応答を誘発させるのに有効である方法を企図する。
本発明は、肺炎球菌に感染した哺乳動物中で免疫応答を誘発させる方法であって、Streptococcus pneumoniaeのPPPに結合するモノクローナル抗体をある量哺乳動物に投与することを含み、抗体が製薬的に活性のある化合物に結合した、哺乳動物中で免疫応答を誘発させるのに有効である方法を企図する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】S.pneumoniae 49136株のPBS洗浄液からのDEAE分画のSDS-PAGEゲルを示す図である。レーン1は染色していない標準、レーン2は分画#8、レーン3は分画#9、レーン4は分画#10、レーン5は分画#11、レーン6は分画#12、レーン7は分画#13、レーン8は分画#19、レーン9は分画#15、レーン10は分画#16である。図1のゲルでは、分画#14および#15(レーン8および9)で、ゲルによって分離された明確な低分子量バンドが表されている。
【図2】所望する生成物の発現を示しているpLP533の組換え発現の全細胞溶解物のゲルを示す図である。レーン1はBioradの着色マーカー、レーン2は誘発させていない細胞、レーン3は誘発させた細胞である。
【図3】交差反応性およびポリマー形成を示しているいくつかの血清型の全細胞溶解物のウエスタンブロットを示す図である。レーン1はBiorad Precisionの着色マーカー、レーン2はタイプ3、レーン3はタイプ4、レーン4はタイプ9、レーン5はタイプ14、レーン6はタイプ19F、レーン7はタイプ18C、レーン8はタイプ5、レーン9はタイプ23Fである。
【図4】rPPP1による定着の低下を示す図である。回収した細菌は、組織1グラムあたりのLog10 CFUとして表した。1つの平均標準誤差を示す。*値は、Tukey-Kramer統計的検査法によって、対照と有意に差がある。
【図5】rPPP1の精製を示すSDS-PAGEゲルの図である。レーン1はBio Rad Precision標準、レーン2はダイアフィルトレーションした物、レーン3は精製したrPPP1である。
【図6A】S.pneumoniaeの血清型由来のPPP1配列の比較を示す図である。
【図6B】S.pneumoniaeの血清型由来のPPP1配列の比較を示す図である。
【図7】in vitroおよびin vivo培養物由来の増幅PPP1を表すゲルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明のタンパク質および核酸は、Streptococcus pneumoniae感染によって引き起こされる疾患の診断に役立つ、予防的および治療的な有用性を持つ。これらは、S.pneumoniaeに関連するタンパク質と鉄の相互作用を妨げるまたは乱す化合物をスクリーニングするシステムを設計するのに使用することができる。この核酸およびタンパク質は、外来遺伝子を発現させるのに使用する際に、S.pneumoniae感染および/または他の病原体に対する組成物の調製に用いることもできる。
【0072】
本発明では、鼻腔内アレルギー誘発モデルにおいてS.pneumoniaeの定着を低下させる完全なS.pneumoniae由来の組換え20kDaタンパク質が同定された。本明細書中で説明するタンパク質を、肺炎保護タンパク質1(PPP1)と命名した。このタンパク質は、興味深いことに、DNA結合タンパク質のDpsファミリーのメンバーであるL.innocua由来のヘムを含まないフェレチンタンパク質に対して、有意な相同性を示す(Pikis,A.他、J.Infect.Diseases、1998、178:700)。したがって、このタンパク質の細胞質内での予測位置から見て、その定着を低下させる能力は予想外であった。
【0073】
化学的な研究により、単離したS.pneumoniae表面関連のPPPは、10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定して、約20kDaの分子量を有することが示されている。組換えPPPは等電点が約4.587であると決定されている。さらに、このタンパク質は、約7のpHで約-14.214の電荷を有する。
【0074】
Streptococcus Pneumoniae
S.pneumoniaeは、人の体内で非常に感染性の高い細菌種である。現在までに、80を超える血清型が同定されている。これら血清型のいくつかは、肺炎、髄膜炎、心内膜炎、関節炎、副鼻腔炎、耳炎、気管支炎、咽頭炎を含むがそれだけには限定されない様々な疾病状態の病因因子である。肺炎球菌感染は、免疫不全系の人たとえばHIVに感染した人の主な死亡原因と確認された。
【0075】
S.pneumoniaeは、ストレプトコッカス科Streptococcus属の一種である。この科には、内性胞子を形成しない、グラム陽性の、非運動性の、球状または卵円状の細胞が含まれる。S.pneumoniaeは酸化的代謝のための無機末端電子受容体を有するが、酸素の存在下で増殖する。これにより、S.pneumoniaeは様々な環境中で増殖することができ、したがって、これは様々なヒト組織中で増殖するのによく適応している。この細菌は、その多くの株が多糖カプセルを生成するので、ペニシリンを用いて標的にするのは困難である。
【0076】
肺炎球菌感染の第1段階は、鼻咽頭への定着である。肺炎球菌とヒト鼻咽頭/耳細胞との結合の破壊により、定着が低下し、疾病の可能性がより低くなるはずである。したがって、肺炎球菌の、ヒト細胞との結合を担う構造を単離することにより、ワクチン候補がもたらされる可能性がある。肺炎球菌では、ヒト鼻咽頭細胞たとえばPspA、PsaA、CbpAタンパク質との結合のために数々の機構が進化してきた。さらに、肺炎球菌は、定着の第1段階としてヒト鼻咽頭ムチンに特異的に結合することができる。したがって、この感染を担う肺炎球菌の構造または複数の構造を同定することにより、潜在的なワクチン標的が同定される可能性がある。
【0077】
分子生物学
本発明の実施形態は、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする単離したポリヌクレオチド配列、およびこのような配列の変異体に関する。好ましくは、これら変異体配列は、高い厳密性の条件下で、1つまたは複数の肺炎保護タンパク質をコードするポリヌクレオチドとハイブリッド形成する。より好ましくは、これら変異体配列は、高い厳密性の条件下で、1つまたは複数の肺炎保護タンパク質配列をコードするポリヌクレオチドたとえば配列番号4のポリヌクレオチド配列とハイブリッド形成する。厳密性の高いサザンブロット条件を定義するために本明細書中に参照として組み込むSambrook他、1989、ページ387-389を便利に参照することができ、ここでは、洗浄ステップが厳密性が高いと見なされている。
【0078】
本発明はまた、ヌクレオチドトリプレットの第3ヌクレオチドが変更されることでポリヌクレオチド配列が基準配列と異なる、保存的変異体に関する。好ましくは、これら保存的変異体はPPP1基準ポリヌクレオチド配列の生物学的等価物として機能する。好ましい実施形態では、生物学的等価物として機能する変異体は、鉄に結合するものである。
【0079】
本発明はさらに、遺伝暗号の重複性のおかげでPPP1をコードする配列と生物学的に等価であるDNA配列を含む。すなわち、これら他のDNA配列は本明細書中で述べたヌクレオチド配列とは異なる配列で特徴づけられるが、配列番号4のDNA配列によってコードされるアミノ酸配列と同じ配列を有するタンパク質をコードする。
【0080】
本発明はまた、S.pneumoniaeのPPP1とは異なるが、このタンパク質について記述されるアミノ酸配列(配列番号5)と生物学的に等価であるアミノ酸配列をコードするDNA配列を含む。このようなアミノ酸配列は、PPP1配列中の軽微な欠失、挿入、または置換によってしかその配列が異なっておらず、配列の三次立体配置が野生型タンパク質に比べて実質的に改変されていない場合、生物学的に等価であると見なすことができる。
【0081】
たとえば、疎水性アミノ酸であるアミノ酸アラニンのコドンを、より低い疎水性の残基たとえばグリシン、またはより高い疎水性の残基たとえばバリン、ロイシン、イソロイシンをコードするコドンで置換することができる。同様に、負に帯電した1つの残基を負に帯電した別の残基に置換すること、たとえばアスパラギン酸をグルタミン酸に置換することをもたらす改変、または正に帯電した1つの残基を正に帯電した別の残基に置換すること、たとえばリシンをアルギニンに置換することをもたらす改変、ならびに疎水性指標(hydropathic index)において類似している残基に基づいた改変もまた、生物学的に等価な産物を生成すると予想される。タンパク質分子のN末端またはC末端部分の改変をもたらすヌクレオチド変化もまた、タンパク質の活性を変化させないと予想される。
【0082】
特定のアミノ酸を同様の疎水性指標を有する他のアミノ酸で置換しても同様の生理活性を保持することができると定めたKyteおよびDoolittle、1982によって議論されたように、ポリペプチドに相互作用の生物機能を与えるために、アミノ酸の疎水性指標を用いることができる。あるいは、特に産生させるポリペプチドに望まれる生物機能を免疫に関する実施形態で使用することを意図している場合、親水性に基づいて類似のアミノ酸を置換することができる。たとえば、「タンパク質」の最大局所平均親水性はそれに隣接するアミノ酸の親水性に支配されており、その免疫原性に関連すると述べている、米国特許第4,554,101号(本明細書中に参照として組み込む)参照。したがって、各アミノ酸に割り当てられた親水性に基づいて置換を行うことができることが記載されている。各アミノ酸に値を割り当てる親水性指標(hydrophilicity index)または疎水性指標を使用する際には、これらの値が±2、特に好ましくは±1であるアミノ酸の置換を導入することが好ましく、±0.5以内のものが最も好ましい置換である。
【0083】
さらに、保存領域の三次立体配置がPPP1のそれと比べて実質的に改変されていない場合、既知の可変領域内の改変は生物学的に等価である。生物学的に等価な配列の代替定義は、依然として交差反応性免疫応答を引き起こすことができるものである。特に、改変されたタンパク質が依然として所望する免疫応答を引き起こすことができる限り、淋菌性ピリンの対応する挿入物を長くしたり短くしたりしてタンパク質を改変することができる。
【0084】
提案された改変のそれぞれが当技術分野の慣例の技術内にあり、コードされた産物の構造的活性および生理活性の保持の決定もそうである。したがって、用語「肺炎保護タンパク質」、「PPP1」、「PPP]が明細書または特許請求の範囲で使用されている場合、これが、生物学的に等価なタンパク質の生成をもたらすこのような改変および変異すべてを包含することは理解されよう。
【0085】
本発明のヌクレオチド配列がコードする、本明細書中に記載するPPP1の好ましい特徴は、以下の1つまたは複数を含む。(a)膜タンパク質または膜に直接関連するタンパク質であること(b)SDSアクリルアミドゲルを用いてタンパク質として分離可能なこと(c)鉄と相互作用するその生物機能を保持していること。
【0086】
変異体および断片を弱毒化することができる。すなわち本発明の野生型PPP1と比較した場合に、鉄に結合しない活性が減少される。好ましくは、この断片および変異アミノ酸配列、ならびにPPP1を発現している変異ヌクレオチド配列は生物学的等価物である。すなわちこれらは野生型PPP1と実質的に同じ機能を保持している。このような変異アミノ酸配列は本発明のポリヌクレオチド配列でコードされている。このような変異アミノ酸配列は、PPP1のアミノ酸配列に対して約70%から約80%、好ましくは約90%の全体的な類似性を有する可能性がある。好ましい実施形態では、これらの配列を図6および配列番号10から19に示す。変異ヌクレオチド配列は、転写されるとPPP1のアミノ酸配列またはPPP1の変異アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列に対して、約70%から約80%のいずれか、好ましくは約90%の全体的な類似性を有する可能性がある。本発明の弱毒化させたタンパク質は、野生型タンパク質の少なくとも1つの抗原決定領域を含む。代替実施形態では、タンパク質の抗原決定領域は少なくとも20個の連続したヌクレオチドまたは8個の連続したアミノ酸を含む。
【0087】
本発明はさらに、PPP1の全体的な共通配列に関する。S.pneumoniaeの様々な血清型から推論したPPP1のアミノ酸配列を比較して、保存された配列を決定することができる。一実施形態では、10個の異なる血清型を比較した。保存された配列は、たとえばそれだけには限定されないが、タンパク質の結合、活性、および/または機能に必要な最小要件を決定するなど多くの用途を有する可能性がある。好ましい実施形態では、PPP1の共通配列を図6および配列番号20に示す。
【0088】
本発明の「単離した」配列は、自然に存在しない配列である。たとえば、これら配列を細菌ゲノム内での正常な状態から単離することができる。あるいは、この配列は合成物、すなわち周知の組換え発現システムなどの組換え技術によって、または機械によって作成したものでもよい。
【0089】
本発明はまた、プロモーター配列およびイニシエーター配列を有する発現制御配列と、プロモーター配列およびイニシエーター配列の3'側に本発明の核酸配列を含む、PPP1を発現することができる組換えDNAクローニング媒体を提供する。クローニング媒体は、ウイルスベクターを含めた当分野で周知の任意のプラスミドまたは発現ベクターとすることができる(下記参照)。さらなる態様では、本発明の組換えDNAクローニング媒体および/または組換えPPP1を含む宿主細胞が提供される。適切な発現制御配列、宿主細胞、発現ベクターは当分野で周知であり、例としてSambrook他、1989に記載されている。
【0090】
適切な宿主細胞は、組換えによって発現させたタンパク質の収量に影響を与える可能性のある要因に基づいて選択することができる。これらの要因には、それだけには限定されないが、増殖および誘導条件、mRNAの安定性、コドンの使用、翻訳効率、プロモーターの通読を最小限にするための転写ターミネーターの存在が含まれる。適切な宿主細胞を選択した後に、本発明の核酸配列を含む発現ベクターを用いて細胞にトランスフェクションさせることができる。当分野で周知の任意の技術を用いて細胞にトランスフェクションさせることができる(下記参照)。
【0091】
本発明の発現ベクターを用いて宿主細胞にトランスフェクションさせた後、ポリペプチドが発現されるような条件下で細胞を培養する。その後、当分野の技術者に周知の技術によって、混入している宿主細胞成分を実質的に含まないようにポリペプチドを単離することができる。
【0092】
異種性ヌクレオチド配列は、所望する組換えタンパク質の用途に応じて、補助因子、サイトカイン(たとえばインターロイキン)、Tヘルパー抗原決定基、制限マーカー、アジュバント、または様々な微生物病原体(たとえばウイルス、細菌、真菌、寄生虫)のタンパク質、特に保護免疫応答を誘発させることができるタンパク質をコードすることができる。補助因子、サイトカイン(たとえばインターロイキン)、Tヘルパー抗原決定基、制限マーカー、アジュバント、または様々な微生物病原体(たとえばウイルス、細菌、真菌)のタンパク質の免疫原性部分をコードする異種性配列を選択することが望ましいかもしれない。PPP1でない他種類の部分(moiety)には、それだけには限定されないが、癌細胞や腫瘍細胞、アレルゲン、アミロイドペプチド、タンパク質、他の高分子成分に由来するものが含まれる。
【0093】
たとえば、一部の実施形態では、異種性遺伝子が、組換えタンパク質の予防的または治療的特性を向上するために選択され、サイトカインたとえばインターロイキン-12をコードする。
【0094】
このような癌細胞や腫瘍細胞の例には、それだけに限定されないが、前立腺特異的抗原、癌胎児性抗原、MUC-1、Her2、CA-125、MAGE-3が含まれる。
【0095】
このようなアレルゲンの例には、それだけには限定されないが、本明細書に参照として組み込む米国特許第5,830,877号および国際特許公開出願WO99/51259号に記載のものが含まれ、花粉、昆虫毒液、動物鱗屑、菌類胞子、薬剤(ペニシリンなど)が含まれる。このような成分は、アレルギー反応における周知の原因であるIgE抗体の生成を妨害する。
【0096】
アミロイドペプチドタンパク質(APP)は、アルツハイマー病、アミロイド症、アミロイド形成的疾病と様々に呼ばれる疾病に関係していると見なされてきた。β-アミロイドペプチド(Aβペプチドとも呼ばれる)はAPPの42アミノ酸断片であり、APPをβおよびγセクレターゼ酵素で処理することによって作成され、以下の配列を有する。
Asp Ala Glu Phe Arg His Asp Ser Gly Tyr Glu Val His His Gln Lys Leu Val Phe
Phe Ala Glu Asp Val Gly Ser Asn Lys Gly Ala Ile Ile Gly Leu Met Val Gly Gly
Val Val Ile Ala(配列番号6)
【0097】
一部の患者では、アミロイドの堆積物は凝集したAβペプチドの形をとる。驚くべきことに、単離したAβペプチドを投与することにより、脊椎動物宿主中にあるアミロイド堆積物のAβペプチド成分に対する免疫応答が誘発されることが見出された(国際特許公開出願WO99/27944号参照)。このようなAβペプチドは無関係な部分にも結合している。したがって、本発明の異種性ヌクレオチド配列には、このAβペプチドの発現、Aβペプチドの断片、Aβペプチドの抗体やその断片が含まれる。このようなAβペプチドの一断片は、28アミノ酸ペプチドであり、以下の配列を有する(米国特許第4,666,829号に開示されている)。
Asp Ala Glu Phe Arg His Asp Ser Gly Tyr Glu Val His His Gln Lys Leu Val Phe
Phe Ala Glu Asp Val Gly Ser Asn Lys(配列番号7)
【0098】
気道から体内に入って様々な組織や細胞たとえば髄膜、血液、肺に感染することができる肺炎球菌の通常の感染経路を利用する異種性ヌクレオチド配列を選択することができる。異種性遺伝子を使用して、遺伝子治療や特異的細胞を標的にするのに使用する薬剤を提供することができる。肺炎球菌の通常の感染経路中に暴露された通常の細胞を単に利用する代わりに、異種性遺伝子または断片は、組換えタンパク質の一部として利用した場合に組換えタンパク質を通常の感染経路にはない細胞または組織に向ける、異なる病原体由来の別のタンパク質またはアミノ酸配列をコードすることもできる。このようにして、このタンパク質は、より広い範囲の外来タンパク質を運ぶための標的手段となる。
【0099】
タンパク質の分子量は、当分野で周知の任意の方法を用いて決定することができる。非限定的な方法のリストには、変性SDS-PAGEゲル、サイズ排除クロマトグラフィー、等電点電気泳動が含まれる。各方法に適した条件(たとえば分離時間、電位、電流、緩衝液)は、当分野で定義された方法を用いて必要に応じて決定することができる。好ましい実施形態では、変性SDS-PAGEを使用してタンパク質の分子量を決定することができる。さらに、分子量を決定するのに使用する条件は、好ましくは、20ミリアンペアで1時間の分離時間、定電流である。
【0100】
タンパク質の検出は、当分野の様々な方法を用いて判定することができる。この方法には、それだけには限定されないが、ウエスタンブロット法、クマシーブルー染色法、銀染色法、オートラジオグラフィー法、蛍光およびリン光プローブ法が含まれる。本発明の好ましい実施形態では、タンパク質をウエスタンブロット法によって検出した。
【0101】
下の本発明の実施形態を説明する中での用語「肺炎保護タンパク質」、「PPP1」、「PPP」には、別段に指示がない限り、野生型PPP1の代わりにまたはそれに加えて、その断片、変異体、弱毒化させた形を利用する変型形態も含まれる。
【0102】
ウイルスベクターおよび非ウイルスベクター
特にin vitroおよびin vivoの細胞アッセイにおける好ましいベクターは、ウイルスベクターたとえばレンチウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、アルファウイルス、望ましい細胞性向性を有する他の組換えウイルスである。したがって、機能的タンパク質または変異タンパク質、あるいはそのポリペプチドドメイン断片をコードする遺伝子を、ウイルスベクターを用いてまたはDNAを直接導入することによって、in vivo、ex vivo、in vitroで導入することができる。標的組織中での発現は、特異的細胞を遺伝子導入ベクターの標的とすることによって、たとえばウイルスベクターまたは受容体リガンドを用いて、組織特異的なプロモーターを用いて、またはその両方で行うことができる。標的遺伝子の送達は、PCT公報第WO95/28494号に記載されている。
【0103】
in vivoまたはex vivoの標的手順および治療手順で通常使用されるウイルスベクターは、DNAベースのベクターおよびレトロウイルスベクターである。ウイルスベクターを構築および使用する方法は当分野で周知である(たとえばMillerおよびRosman、Bio Techniques、1992、7:980-990)。好ましくは、ウイルスベクターは複製欠陥のあるものである、すなわち標的細胞内で自主的に複製することができない。好ましくは、この複製欠損ウイルスは最小ウイルス、すなわちこれは、そのゲノム中の、ウイルス粒子を生成する際にゲノムを被包するために必要な配列のみを保持している。
【0104】
アルファウイルスの例には、それだけには限定されないが、東部ウマ脳炎ウイルス(Eastern Equine Encephalitis virus、EEE)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(Venezuelan Equine Encephalitis virus、VEE)、エバグレーズウイルス(Everglades virus)、ムカンボウイルス(Mucambo virus)、ピクスナウイルス(Pixuna virus)、西部ウマ脳炎ウイルス(Western Equine Encephalitis virus、WEE)、シンドビスウイルス(Sindbis virus)、セムリキ森林ウイルス(Semliki Forest virus)、ミドレブルクウイルス(Middelburg virus)、チクングニアウイルス(Chikungunya virus)、オニオニオンウイルス(O'nyong-nyong virus)、ロスリバーウイルス(Ross River virus)、バーマ森林ウイルス(Barmah Forest virus)、ゲタウイルス(Getah virus)、サギヤマウイルス(Sagiyama virus)、ベバルウイルス(Bebaru virus)、マヤロウイルス(Mayaro virus)、ウナウイルス(Una virus)、アウラウイルス(Aura virus)、ワタロアウイルス(Whataroa virus)、ババンキウイルス(Babanki virus)、キジルアガチウイルス(Kyzylagach virus)、ハイランドJウイルス(Highlands J virus)、フォートモーガンウイルス(Fort Morgan virus)、ヌドゥムウイルス(Ndumu virus)、バギークリークウイルス(Buggy Creek virus)が含まれる(米国特許第6,156,558号)。
【0105】
DNAウイルスベクターには弱毒化ウイルスしたまたは欠損DNAウイルス、たとえばそれだけに限定されないが、単純ヘルペスウイルス(HSV)、パピローマウイルス、エプスタインバーウイルス(EBV)、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)などが含まれる。ウイルス遺伝子を完全にまたはほとんど失った欠損ウイルスが好ましい。欠損ウイルスは細胞に導入した後に感染性がない。欠損ウイルスベクターを用いることで、ベクターが他の細胞を感染させる心配なしに、特異的な局所領域にある細胞への投与が可能になる。したがって、特異的な組織を明確に標的にすることができる。具体的なベクターの例には、それだけに限定されないが、ヘルペスウイルス1(HSV1)ベクター(Kaplitt他、Molec.Cell.Neurosci.、1991、2:320-330)、糖タンパク質L遺伝子を欠く欠損ヘルペスウイルスベクター、他の欠損ヘルペスウイルスベクター(PCT公報第WO94/21807号および第WO92/05263号);弱毒化したアデノウイルスベクターたとえばStratford-Perricaudet他(J.Clin.Invest.、1992、90:626-630)に記載のベクター(La Salle他、Science、1993、259:988-990も参照);欠損アデノ関連ウイルスベクター(Samulski他、J.Virol.、1987、61:3096-3101;Samulski他、J.Virol.、1989、63:3822-3828;Lebkowski他、Mol.Cell.Biol.、1988、8:3988-3996)が含まれる。
【0106】
様々な企業がウイルスベクターを商業的に生産しており、これには、それだけには限定されないが、Avigen,Inc.(カリフォルニア州Alameda;AAVベクター)、Cell Genesys(カリフォルニア州Foster City;レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、AAVベクター、レンチウイルスベクター)、Clontech(レトロウイルスベクター、バキュロウイルスベクター)、Genovo,Inc.(ペンシルベニア州Sharon Hill;アデノウイルスベクター、AAVベクター)、Genvec(アデノウイルスベクター)、IntroGene(オランダ、ライデン;アデノウイルスベクター)、Molecular Medicine(レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、AAVベクター、ヘルペスウイルスベクター)、Norgen(アデノウイルスベクター)、Oxford BioMedica(英国、オックスフォード;レンチウイルスベクター)、Transgene(フランス、ストラスブール;アデノウイルスベクター、ワクシニアベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター)が含まれる。
【0107】
アデノウイルスベクター。アデノウイルスは真核生物DNAウイルスであり、本発明の核酸を様々な細胞種に効率的に送達するように改変させることができる。様々なアデノウイルス血清型が存在する。これら血清型のうち、本発明の範囲内で、タイプ2およびタイプ5のヒトアデノウイルス(Ad 2またはAd 5)または動物由来のアデノウイルスが優先される(PCT公報第WO94/26914号参照)。本発明の範囲内で使用することができる動物由来のアデノウイルスには、イヌ、ウシ、マウス(例は、Mav1、Beard他、Virology、1990、75-81)、ヒツジ、ブタ、トリ、サル(例は、SAV)由来のアデノウイルスが含まれる。好ましくは、動物由来のアデノウイルスはイヌアデノウイルス、より好ましくはCAV2アデノウイルス(たとえばマンハッタン(Manhattan)またはA26/61株、ATCC VR-800)である。様々な複製欠陥のあるアデノウイルスベクターおよび最小アデノウイルスベクターが記載されている(PCT公報第WO94/26914号、第WO95/02697号、第WO94/28938号、第WO94/28152号、第WO94/12649号、第WO95/02697号、第WO96/22378号)。本発明による複製欠陥組換えアデノウイルスは、当分野の技術者に周知の任意の技術によって調製することができる(Levrero他、Gene、1991、101:195;ヨーロッパ公報第EP185 573号;Graham他、EMBO J.、1984、3:2917;Graham他、J.Gen.Virol.、1977、36:59)。組換えアデノウイルスは、当分野の技術者に周知の標準の分子生物学技術を用いて回収および精製する。
【0108】
アデノ関連ウイルス。アデノ関連ウイルス(AAV)は、安定で部位特異的に感染する、細胞のゲノム中に組み込まれることができる比較的小さいサイズのDNAウイルスである。これは、細胞の増殖、形態、分化にどのような効果も誘発させずに広範囲の細胞に感染することができ、ヒトの病状に関与していないように思われる。AAVゲノムがクローニングされ、配列決定され、特徴付けられた。遺伝子をin vitroおよびin vivoでトランスフェクションするための、AAV由来のベクターの使用が記載されている(PCT公報第WO91/18088号および第WO93/09239号;米国特許第4,797,368号および第5,139,941号;ヨーロッパ公報第EP488 528号参照)。本発明による複製欠陥組換えAAVは、2つのAAV逆位末端反復(ITR)領域にはさまれた目的の核酸配列を含むプラスミドと、AAVキャプシド形成遺伝子(repおよびcap遺伝子)を有するプラスミドとを、ヒトヘルパーウイルス(たとえばアデノウイルス)で感染させた細胞株内に同時トランスフェクションさせることによって調製することができる。生成されたAAV組換え体は、標準の技術によって精製することができる。
【0109】
レトロウイルスベクター。別の実施形態では、たとえば米国特許第5,399,346号;Mann他、Cell、1983、33:153;米国特許第4,650,764号および第4,980,289号;Markowitz他、J.Virol.、1988、62:1120;米国特許第5,124,263号;ヨーロッパ公報第EP453 242号および第EP178 220号;Bernstein他、Genet.Eng.、1985、7:235;McCormick、BioTechnology、1985、3:689;PCT公報第WO95/07358号;Kuo他、Blood、1993、82:845に記載のように、遺伝子をレトロウイルスベクターに導入することができる。このレトロウイルスは、分裂する細胞に感染する組込みウイルスである。レトロウイルスゲノムは2つのLTR、キャプシド形成配列および3つのコード領域(gag、pol、env)を含む。組換えレトロウイルスベクターでは、gag、pol、およびenv遺伝子は一般的にその全部または一部が除去されており、目的の異種性核酸配列で置き換えられている。これらベクターを、様々な種類のレトロウイルス、たとえばHIV、MoMuLV(「マウスモロニー白血病ウイルス」MSV(「マウスモロニー肉腫ウイルス」)HaSV(「ハーベイ肉腫ウイルス)、SNV(「脾臓壊死ウイルス」)、RSV(「ラウス肉腫ウイルス」)、フレンドウイルスから構築することができる。適切なパッケージング細胞株は従来技術に記載されており、具体的には細胞株PA317(米国特許第4,861,719号)、PsiCRIP細胞株(PCT公報第WO90/02806号)、GP+envAm-12細胞株(PCT公報第WO89/07150号)である。さらに、組換えレトロウイルスベクターは、転写活性を抑制するLTR内の改変と、gag遺伝子の一部を含む可能性がある大規模なキャプシド形成配列とを含むことができる(Bender他、J.Virol.、1987、61:1639)。組換えレトロウイルスベクターは、当分野の技術者に周知の標準の技術によって精製することができる。
【0110】
感染性粒子として機能するまたは単一のトランスフェクションを行うレトロウイルスベクターを構築することができる。前者の場合、発癌性の形質転換特性を担う遺伝子以外のすべての遺伝子を保持し、異種性遺伝子を発現するように改変する。感染性でないウイルスベクターは、ウイルスパッケージングシグナルは破壊されるが、異種性遺伝子およびパッケージングシグナルを含むように設計された同時導入したウイルスをパッケージングするのに必要な骨格遺伝子は保持するように操作される。したがって、生成されるウイルス粒子はさらなるウイルスを生成することができない。
【0111】
レトロウイルスベクターはDNAウイルスによって導入することもでき、これは、1回のレトロウイルス複製サイクルを可能にし、トランスフェクション効率を増幅させる(PCT公報第WO95/22617号、第WO95/26411号、第WO96/39036号、第WO97/19182号参照)。
【0112】
レンチウイルスベクター。別の実施形態では、レンチウイルスベクターを、脳、網膜、筋肉、肝臓、血液を含めたいくつかの組織種内に導入遺伝子を直接送達し、持続的に発現させるための媒介物として使用することができる。このベクターは、これら組織中の分裂する細胞および分裂しない細胞を効率的に形質導入させ、目的遺伝子の長期発現を維持することができる。総説には、Naldini、Curr.Opin.Biotechnol.、1998、9:457-63参照。Zufferey他、J.Virol.、1998、72:9873-80も参照。レンチウイルスパッケージング細胞株は入手可能であり、当分野で一般的に知られている。これらの細胞株を用いると、遺伝子治療のためのより高い力価のレンチウイルスベクターの生成が容易になる。一例は、106 IU/ml以上の力価で少なくとも3から4日の間ウイルス粒子を産生することができる、テトラサイクリン誘導性のVSV-G偽型レンチウイルスパッケージング細胞株である(Kafri他、J.Virol.、1999、73:576-584)。分裂しない細胞をin vitroおよびin vivoで効率的に形質導入させるために、誘導性細胞株によって生成されたベクターを必要に応じて濃縮することができる。
【0113】
非ウイルスベクター。別の実施形態では、ベクターを、リポフェクションによって、裸のDNAとして、または他のトランスフェクション促進剤(ペプチド、ポリマーなど)を用いてin vivoで導入することができる。合成カチオン性脂質を使用して、マーカーをコードする遺伝子のin vivoトランスフェクションのためのリポソームを調製することができる(Felgner他、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、1987、84:7413-7417;FelgnerおよびRingold、Science、1989、337:387-388;Mackey他、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、1988、85:8027-8031参照;Ulmer他、Science、1993、259:1745-1748)。核酸の転移に有用な脂質化合物および組成物は、PCT特許公報第WO95/18863号および第WO96/17823号、米国特許第5,459,127号に記載されている。標的に送達するために、脂質を他の分子に化学結合させてもよい(上記のMackey他参照)。標的ペプチド、たとえばホルモン、神経伝達物質、タンパク質たとえば抗体、またはペプチドでない分子をリポソームに化学結合させることができる。
【0114】
他の分子、たとえばカチオン性オリゴペプチド(たとえばPCT特許公報第WO95/21931号)、DNA結合タンパク質由来のペプチド(たとえばPCT特許公報第WO96/25508号)、カチオン性ポリマー(たとえばPCT特許公報第WO95/21931号)も、in vivoで核酸のトランスフェクションを促進するのに有用である。
【0115】
in vivoでベクターを裸のDNAプラスミドとして導入することも可能である。遺伝子治療用の裸のDNAベクターは、当分野で周知の方法、たとえば電気穿孔法、微量注入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈降、遺伝子銃の使用、DNAベクター送達体の使用によって、所望する宿主細胞内に導入することができる(Wu他、J.Biol.Chem.、1992、267:963-967;WuおよびWu、J.Biol.Chem.、1988、263:14621-14624;カナダ特許出願第2,012,311号;Williams他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1991、88:2726-2730)。受容体で媒介されたDNA送達手法を用いることもできる(Curiel他、Hum.Gene Ther.、1992、3:147-154;WuおよびWu、J.Biol.Chem.、1987、262:4429-4432)。米国特許第5,580,859号および第5,589,466号は、哺乳動物中で、トランスフェクション促進剤を使用しない、外来DNA配列の送達を開示する。最近、電気転移(electrotransfer)と呼ばれる、比較的低い電位の高効率なin vivoのDNA転移技術が記載された(Mir他、C.P.Acad.Sci.、1988、321:893;PCT公報第WO99/01157号、第WO99/01158号、第WO99/01175号)。
【0116】
アッセイシステム
本発明は、PPP1の鉄との結合を調節する免疫原性組成物および化合物の機能的活性の評価を可能にする任意の細胞アッセイシステムを企図する。特定の実施形態では、アッセイを、PPP1と相互作用して本明細書中に記載のPPP1の鉄との結合を低下させる化合物を同定するのに使用することができる。これは、試験化合物の、本明細書中に記載のタンパク質との相互作用に対する効果を評価することによって判断することができる。S.pneumoniaeに対するオプソニン食作用性抗体を誘発させる化合物の能力を評価する細胞アッセイシステムを用いることもできる(Gray,B.M.、1990、Conjugate Vaccines Supplement、ページ694-697)。
【0117】
鉄とPPPの結合の検出を可能にする任意の好都合な方法が、本発明で企図される。本発明の好ましい実施形態では、S.pneumoniaeのタンパク質成分をポリアクリルアミドゲルで分離し、固形の支持体に移すことができる。その後、標識された相互作用成分(たとえば鉄)を用いて支持体をプローブすることができる。この成分は、放射性、酵素ベース、色素分子、蛍光タグ、リン光タグを含めるがそれだけには限定されない、当分野で周知の任意の標識を用いて標識することができる。好ましい実施形態では、標識は放射性である。この標識は、当分野で周知の任意の方法によって検出することができる。たとえば、オートラジオグラフィー、シンチレーションカウンター、紫外線である。好ましい実施形態では、オートラジオグラフィーを用いて放射性標識を検出する。プローブからのシグナルを増幅させるアッセイも知られており、たとえば、ビオチンやアビジンを利用するもの、ELISAアッセイなど酵素標識免疫検定法がある。
【0118】
In Vitroスクリーニング法
当分野で周知の方法で調製したアッセイシステムに候補の媒介剤を加えて、鉄とPPP1の結合レベルを測定する。様々なin vitroシステムを使用して、鉄結合に対するこの化合物の効果を分析することができる。好ましくは、各実験を1回より多く、たとえば三つ組で複数の異なる化合物濃度で実施する。
【0119】
本発明のスクリーニングシステムは、結合する阻害剤の検出を可能にする。阻害剤のスクリーニングには、これらタンパク質の相互作用を制御する化合物を接触させた場合の、鉄とPPP1の相互作用を検出することが必要である。鉄とPPP1の結合の低下が検出された場合、この化合物は候補阻害剤である。結合の低下が観察されなかった場合、この化合物は鉄と本発明のタンパク質との結合を変化させない。
【0120】
免疫原性組成物
本発明のさらなる実施形態では、PPP1は、(i)少なくとも1つのPPP1、(ii)少なくとも1つの製薬的に許容される緩衝剤、希釈剤、またはキャリア、および(iii)任意で少なくとも1つのアジュバントを含む、免疫原性組成物に使用される。好ましい実施形態では、免疫原性組成物はワクチンとして使用される。PPP1は、当分野で周知の方法に従って、組換えによって生成する、または細菌調製物から単離することができる。好ましくは、これら組成物は、肺炎球菌感染を防ぐ、保護する、および/または寛解する免疫原性組成物として、治療的および予防的用途を有する。このような用途では、少なくとも1つのPPP1の免疫学的に有効な量を、通常の肺炎球菌感染の経過を低減させる、好ましくは相当軽減させるような量で使用する。タンパク質は弱毒化させたものでもよい。用語「弱毒化」とは、免疫原性活性を保持しているが、1つまたは複数の他の特性が低減または取り除かれているタンパク質をいう。たとえば、このタンパク質の弱毒化した形は、低下した結合性質たとえば鉄とを結合する能力を示すものでよい。あるいは、弱毒化した形は、S.pneumoniaeの鉄と結合する能力を低減させるものでよい。
【0121】
本明細書中で使用する用語「有効な量」とは、本明細書中に記載の免疫原成分(すなわちPPP1)の、免疫応答を刺激する、すなわち対象内に導入された時に抗体の産生を生じるおよび/または細胞に媒介される応答を生じる量をいう。好ましい実施形態では、有効量とはS.pneumoniaeの定着を低下させるものである。用語「免疫原成分」とは、この成分を、本発明による免疫原性組成物として全身的に投与した場合に、局部領域たとえば鼻咽頭の分泌性抗体および/または細胞に媒介される応答を刺激する能力をいう。
【0122】
本発明書中で使用する用語「アジュバント」とは、免疫原性組成物と組み合わせて投与した場合に、対照の免疫応答を増強または刺激する薬剤、化合物などをいう。したがって、当分野で周知の任意の従来法で測定した、免疫原性組成物の組合せによって誘発される免疫応答は、免疫原性組成物だけで誘発される免疫応答より一般的に大きい。
【0123】
本発明の組成物は、水酸化アルミニウム;リン酸アルミニウム;Stimulon(商標)QS-21(Aquila Biopharmaceuticals,Inc.、マサチューセッツ州フレーミングハム);MPL(商標)(3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA;Corixa、ワシントン州シアトル);PCT出願公報WO98/50399号に記載のRC529(Corixa)およびアミノアルキルグルコサミンリン酸塩化合物(RIBI Immunochem Research);IL-12(Genetics Institute、マサチューセッツ州ケンブリッジ);N-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP);N-アセチル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP11637、ノルMDPと呼ばれる);N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1'-2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホス-ホリルオキシ)-エチルアミン(CGP19835A、MTP-PEと呼ばれる);顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびコレラ毒素を含むがそれだけには限定されない、アジュバントを含むことができる。使用することができる他のものは、コレラ毒素のBサブユニット(たとえば、国際特許出願公開WO00/18434号に従ってアミノ酸位置29のグルタミン酸が別のアミノ酸、好ましくはヒスチジンに置換されているもの)、および/またはPPPでないポリペプチドとコレラ毒素またはそのBサブユニット、プロコレラゲノイド、真菌性多糖との複合体または遺伝子改変した融合体を含む、コレラ毒素の無毒性誘導体である。このアジュバントは、その天然の形で使用することができ、あるいは合成した形または半合成の形のアジュバントを使用することもできる。所望する応答および投与方法に応じて、アジュバントの任意の剤形を使用することができる。アジュバントを様々な形たとえば液体、粉末、乳濁液で使用することができる。
【0124】
免疫原性組成物を、単一の大量瞬時投与として、または決まった期間(たとえば1年間)をかけた「一連の」投与として、投与することができる。後に投与した場合、このような一連の投与は「ブースター注射」と呼ばれる。これらの投与は、以前の投与によって生じた抗体レベルを増大させる。免疫原にアレルギー誘発された際に免疫応答が誘発されるように、対象内に十分な抗体レベルが同定されるまで免疫原性化合物を投与することができる。
【0125】
このような免疫原性組成物の形成方法は当分野の技術者に周知である。本発明の免疫原性組成物は追加の抗原性成分(たとえばポリペプチドまたはその断片、抗原をコードする核酸またはその断片)を含むことができ、好ましくは、製薬的に許容されるキャリアを含む。製薬的に許容される適切なキャリアおよび/または希釈剤には、任意のすべての従来の溶媒、分散媒、賦形剤、固形キャリア、水性キャリア、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張性の吸収遅延剤などが含まれる。用語「製薬的に許容されるキャリア」とは、投与する患者にアレルギー反応を引き起こさせたり他の有害な影響を与えたりしないキャリアをいう。製薬的に許容される適切なキャリアには、たとえば、水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールなどの1つまたは複数、およびそれらの組合せが含まれる。製薬的に許容されるキャリアは、抗原の有効期限や有効性を増強させる少量の補助物質たとえば湿潤剤、乳化剤、防腐剤、緩衝剤をさらに含むことができる。製薬的に活性のある物質用のこのような媒体や薬剤の使用は、当分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性成分に適合しない場合以外は、これらを本発明の免疫原性組成物中で用いることが企図される。
【0126】
組成物
本発明のさらなる実施形態では、(i)少なくとも1つのPPP1タンパク質、PPP1のアミノ酸配列をコードする核酸、あるいはこのような核酸を発現する発現ベクターまたは宿主細胞、および(ii)少なくとも1つの製薬的に許容される緩衝剤、希釈剤、またはキャリアを含む組成物中で、PPP1の核酸配列、アミノ酸配列、発現ベクター、または宿主細胞が用いられる。当分野で周知の方法に従って、PPP1を組換えによって生成する、または細菌調製物から単離することができる。好ましくは、これら組成物は治療的および予防的用途を有する。このような用途では、少なくとも1つのPPP1の製薬的に有効な量を、定義した機能的活性を生じる量用いる。本明細書中で使用する用語「有効な量」とは、機能的効果を生じる本明細書中に記載したPPP1タンパク質の量をいう。
【0127】
任意の従来の有効な形でこのような組成物または免疫原性組成物を投与することができ、たとえば鼻腔内、非経口、経口、または鼻腔、口、眼、肺、膣、直腸の表面などの粘膜面にたとえばエアロゾルスプレーによって局所的に塗布することができる。好ましい投与方法は非経口投与または鼻腔内投与である。
【0128】
経口製剤には、通常使用される賦形剤たとえば医薬品グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどが含まれる。
【0129】
本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、免疫原性組成物中の唯一の活性免疫原として投与することができる。一方、あるいは、免疫原性組成物は、他の病原体種由来の他の免疫学的に活性のある抗原を含めた他の活性免疫原を含むこともできる。好ましくは、他の免疫学的に活性な抗原を提供する病原体種は、細菌性病原体たとえば細菌感染に関与するものである。実際、治療において本発明のPPP抗原は、好ましくは、S.pneumoniaeまたは他の病原性細菌由来の他の細菌性抗原を含む、多価ワクチンの成分として使用される。他の免疫学的に活性な抗原は、複製する媒介剤または複製しない媒介剤にすることができる。複製する媒介剤には、たとえば弱毒化した形の麻疹ウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、パラインフルエンザウイルス(PIV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)が含まれる。
【0130】
本発明の重要な態様の1つは、本発明の免疫原性組成物を哺乳動物に与えるステップを含む、哺乳動物内で免疫応答を誘発させる方法に関する。免疫原性組成物は、処置した動物または人内で免疫原性である組成物に含まれるポリペプチド(または複数のポリペプチド)の免疫学的に有効な量が、肺炎球菌感染に対する所望する応答を引き起こすような組成物である。好ましい実施形態は、免疫学的に有効な量の免疫原性組成物を人に投与することを含む、人の肺炎球菌感染を、寛解を含めて治療または予防する方法に関する。投与量は、個体の具体的な状態に応じて変化させることができる。この量は、当分野の技術者に周知の方法によって慣例の試行で決定することができる。
【0131】
確かに、本発明のタンパク質の単離したアミノ酸配列を、サブユニット免疫原性組成物を形成するのに使用することができる。これらはまた、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を産生させるための抗原として、あるいは抗PPP1タンパク質反応性抗体の検出のための免疫アッセイで用いることもできる。本発明に包含される免疫アッセイには、それだけには限定されないが、本明細書に参照として組み込む米国特許第4,367,110号(二重モノクローナル抗体サンドイッチアッセイ)および米国特許第4,452,901号(ウエスタンブロット)に記載のものが含まれる。他のアッセイには、共にin vitroおよびin vivoの、標識したリガンドの免疫沈降および免疫細胞化学が含まれる。
【0132】
免疫応答を誘発させる方法
本発明によると、S.pneumoniaeの定着にはPPP1タンパク質が必要である。本発明は、対象に免疫応答を誘発させる免疫原性組成物を治療的に有効な量対象に投与することによって、肺炎球菌感染を予防する方法を提供する。これらの方法には、それだけには限定されないが、少なくとも1つのPPP1タンパク質、その変異体、断片、または弱毒化した形、あるいはタンパク質、その変異体、断片、または弱毒化した形をコードする少なくとも1つの発現ベクターからなる免疫原性組成物の投与が含まれる。
【0133】
肺炎球菌感染を阻害する方法
本発明はさらに、PPP1タンパク質に関連する機能的効果を遮断する組成物または化合物を治療的に有効な量対象に投与することによって、肺炎球菌に感染した対象に免疫応答を誘発させる方法を提供する。これらの方法には、それだけには限定されないが、少なくとも1つのPPP1タンパク質またはその断片、あるいはPPP1タンパク質をコードする少なくとも1つの発現ベクターからなる組成物を投与すること、あるいはPPP1タンパク質の機能を実質的に完全にまたは少なくとも部分的に遮断する化合物を投与することが含まれる。
【0134】
診断方法
本発明はまた、配列番号5または配列番号10から19のいずれかのアミノ酸配列が試料中に存在するかどうかを判定するステップを含む、肺炎球菌感染を診断する方法、または投与した肺炎球菌の免疫原性組成物株を同定する方法を提供する。任意の従来の診断方法を使用することができる。これら診断方法は、アミノ酸配列またはポリペプチドの存在に基づいて容易に行うことができる。好ましくは、このような診断方法では、本発明のアミノ酸配列に共通の少なくとも10個、好ましくは少なくとも20個のアミノ酸を有するポリペプチドとの一致を探す。
【0135】
本明細書中で開示する核酸配列はまた、様々な診断用途に使用することができる。これら核酸配列は、PPP1タンパク質をコードする核酸配列と特異的にハイブリッド形成する能力を有する、比較的短いDNAおよびRNA配列を調製するのに用いることができる。診断アッセイにおける選択した特異性パラメータを考慮して、所望する長さを選択対象として核酸プローブを選択する。このプローブは、与えられた試料中に病原性微生物の存在を検出する、または投与した肺炎球菌の免疫原性組成物を同定する診断アッセイに使用することができる。現在の組換え発現の高度な技術を用いて、存在する抗体との反応性あるいは診断的または治療的媒介剤を生成する、対応するオリゴペプチドおよびポリペプチドの能力をスクリーニングする目的で、核酸配列を発現構築体に挿入することができる。適切な発現制御配列および宿主細胞/クローニング媒体の組合せは当分野で周知であり、例としてSambrook他、(1989)に記載されている。
【0136】
好ましい実施形態では、ハイブリッド形成の研究またはアッセイに用いられる核酸配列には、少なくとも約10個、好ましくは約15個、より好ましくは約20個のヌクレオチドのヌクレオチドストレッチに相補的な配列が含まれる。本発明のハイブリッド形成の態様を実行するために、Falkow他、米国特許第4,358,535号に記載されているものなどの診断アッセイを含めて、様々な周知のハイブリッド形成技術およびシステムを利用することができる。好ましくは、この配列はPPP1タンパク質上の連続的な核酸配列を認識または結合する。
【0137】
一般的に、本明細書中に記載のハイブリッド形成プローブは、溶液ハイブリッド形成および固相を用いる実施形態の媒介剤として有用であると考えられる。固相を要する実施形態では、浸出物、体液(たとえば中耳浸出液、気管支肺胞洗浄液)、さらには組織などの被疑臨床試料からの被験DNA(またはRNA)を、吸収または他の方法で選択したマトリックスまたは表面に固着する。この固定した一本鎖核酸を、所望の条件下で、選択したプローブと特異的にハイブリッド形成させる。選択した条件は、必要とされる具体的な診断基準(たとえば、G+C含有量、標的核酸の種類、核酸源、ハイブリッド形成プローブの大きさに依存する)に基づく具体的な状況に依存する。非特異的に結合したプローブ分子を取り除くためにハイブリッド形成表面を洗浄した後、特異的ハイブリッド形成を標識によって検出さらには定量する。
【0138】
本発明のPPP1タンパク質またはその変異体をコードする核酸配列は、たとえば米国特許第4,603,102号に記載されたPCR*技術と組み合わせると有用となる可能性がある。本発明のPPPタンパク質配列のいずれかの様々な部分を、PPP1遺伝子またはヌクレオチドの定義した部分をPCR*増幅するためのオリゴヌクレオチドプローブとして利用することができ、その後、相補配列を含むハイブリッド形成プローブとハイブリッド形成させることによってその配列を検出することができる。このようにして、本発明のヌクレオチド配列を利用して、非常に低い濃度のPPP1核酸配列を試料中で検出することができる。
【0139】
本発明の特定の実施形態を例示するために下記の実施例を含める。しかし、本発明の開示を考慮して、開示する特定の実施形態にいくつもの改変を行っても、本発明の精神および範囲から逸脱せずに同様または類似の結果を得ることができることが当分野の技術者には理解されよう。
【0140】
抗体
本発明は、試料中に存在するPPP1タンパク質の存在を検出するために使用できる抗体を記載する。さらに、この抗体(たとえば抗イディオタイプ抗体)を使用して肺炎球菌感染に対する免疫応答を阻害することができる。
【0141】
本発明によると、組換えまたは化学合成によって生成したPPP1タンパク質ポリペプチド、断片、または他の誘導体は、ポリペプチドまたはその一部分を認識する抗体を作成する免疫原として使用することができる。免疫原として使用するポリペプチドの一部分は、産生された抗体の免疫原性を調節するために特異的に選択することができる。このような抗体には、それだけには限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化した、キメラ、単鎖、Fab断片、Fab発現ライブラリが含まれる。ヒトPPP1タンパク質に特異的な抗体は、PPP1タンパク質の野生型または変異型を認識することができる。特定の実施形態では、この抗体は少なくとも8個のアミノ酸、好ましくは8から10個のアミノ酸、より好ましくは15から30個のアミノ酸からなる。好ましくは、抗体はPPP1上の連続したアミノ酸を認識しまたはそれに結合する。
【0142】
当分野で周知の様々な手順を使用して、ポリペプチド、誘導体、および類似体に対するポリクローナル抗体を産生させることができる。抗体の産生では、それだけには限定されないが、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギなどを含む様々な宿主動物にポリペプチドまたは誘導体(たとえば断片または融合タンパク質)を注入して免疫化させることができる。ポリペプチドまたはその断片を免疫原性キャリアたとえばウシ血清アルブミン(BSA)やキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に結合させることができる。宿主種に応じて、それだけには限定されないがフロイント(完全および不完全)、鉱物ゲルたとえば水酸化アルミニウム、表面活性物質たとえばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、KLH、ジニトロフェノール、潜在的に有用なヒトアジュバントたとえばBCG(カルメット-ゲラン杆菌)、およびコリネバクテリウムパルブム(Corynebacterium parvum)を含めて様々なアジュバントを使用して免疫応答を増強させることができる。
【0143】
PPP1タンパク質、その断片、類似体、または誘導体に対するモノクローナル抗体を、細胞株の連続的な培養によって抗体分子の産生をもたらす任意の技術を使用することによって調製することができる。これらには、それだけには限定されないが、KohlerおよびMilstein(Nature、256:495-497)が最初に開発したハイブリドーマ技術や、ヒトモノクローナル抗体を産生させるトリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor他、Immunology Today、4:72、1983;Cote他、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、80:2026-2030、1983)、EBVハイブリドーマ技術(Cole他、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss,Inc.、ページ77-96、1985)が含まれる。「キメラ抗体」は、あるポリペプチドに特異的な非ヒト抗体分子由来の遺伝子を、適切な生物活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と一緒にスプライシングすることにより、産生させることができる(Morrison他、J.Bacteriol.、159:870、1984;Neuberger他、Nature、312:604-608、1984;Takeda他、Nature、314:452-454、1985)。
【0144】
抗体の産生および使用では、所望する抗体をスクリーニングすること、またはそれを用いて試験することは、当分野で周知の技術たとえば放射免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫放射線アッセイ、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散アッセイ、in situ免疫アッセイ(たとえば金コロイド、酵素、放射性同位元素を用いる)、ウエスタンブロット、沈殿反応、凝集反応(たとえばゲル凝集アッセイ、赤血球凝集アッセイ)、保体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、タンパク質Aアッセイ、免疫電気泳動アッセイなどによって成すことができる。
【0145】
前述の抗体は、ポリペプチドの局在化および活性に関する当分野で周知の方法、たとえば上述のまたは当分野で周知の任意の検出技術を用いたウエスタンブロット、in situでのポリペプチドのイメージング、適切な生理的試料中のそのレベルの測定などに使用することができる。このような抗体はまた、たとえば米国特許第5,679,582号に記載のリガンド結合のアッセイに使用することもできる。抗体結合は通常、生理的条件下たとえば約7から8のpHおよび生理的イオン強度で最も容易に起こる。緩衝溶液中にキャリアタンパク質を存在させるとアッセイが安定する。最適条件たとえばイオン強度、温度、pHの増大および低減、または界面活性剤やカオトロピック塩の添加による変動にいくらかの許容範囲はあるものの、このような変動は結合安定性を低減させる。
【0146】
特定の実施形態では、PPP1タンパク質の活性に拮抗する抗体を作成することができる。特に、細胞内の単鎖Fv抗体を使用してPPP1タンパク質を制御することができる。このような抗体は、下で述べる、リガンドを同定するアッセイを用いて試験することができる。
【0147】
別の特定の実施形態では、本発明の抗体は抗イディオタイプ抗体である。これら抗体はシステム内に存在する他の抗体を認識およびまたは結合する。抗イディオタイプ抗体は、モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、ヒト化したものであり得る。
【0148】
別の特定の実施形態では、本発明の抗体は、第2の成分たとえば小さな分子、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合している。抗体を化学改変することにより抗体が第2の成分に結合して、この結合が生じ得る。結合した抗体により、たとえば目的部位に対する抗生物質などの第2の成分を標的化することが可能になる。第2の成分は、任意の大きさまたは長さとすることができる。特定の実施形態では、第2の成分は製薬的に活性のある化合物である。
【0149】
本発明のさらなる態様は、上に記載した、製薬化合物を標的化するための抗体の使用に関する。この実施形態では、PPP1タンパク質に対する抗体を、特異的な化合物を感染部位に提示するために使用する。化合物、好ましくは抗生物質剤は、抗体と結合した場合に標的化合物または標的剤と呼ばれる。このような標的化合物および標的剤を作成する方法は当分野で周知である。標的化合物およびその調製法の発表例は米国特許第5,053,934号、第5,773,001号、第6,015,562号に記載されている。
【実施例】
【0150】
材料および方法
細菌株およびプラスミド
本研究で利用したS.pneumoniae株は、毒性タイプ2の株であるD39のラフ型変異体R36Aの、非莢膜性で形質転換性の高い誘導体であるS.pneumoniae CP1200であり(Morrison,D.A.他、J.Bacteriology、1983、156:281)、エール大学、コネチカット州のMargaret Hostetterから得、S.pneumoniae株49136はATCCから得た。0.5%酵母菌抽出物(Difco)を入れたTodd Hewitt培地(Difco Lab.、ミシガン州デトロイト)中37℃で、通気的にまたはTryptic Soy(Difco)血液寒天プレート上で、S.pneumoniaeを対数期(600nmのO.D.で約0.6から0.8)まで増殖させた。本研究で使用したEscherichia coli株は、BL21(DE3)、BLR(DE3)(Novagen、ウィスコンシン州マディソン)、ToplOF'(Invitrogen、カリフォルニア州サンディエゴ)であり、適切な抗生物質を含んだSOB培地(15)中37℃で、通気的に増殖させた。本研究で使用したプラスミドはPCR2.1 TOPO(Invitrogen)およびpET28a(Novagen)であった。指定された場合は、クロラムフェニコールは20μg/ml、アンピシリンは100μg/ml、ストレプトマイシンは100μg/ml、カナマイシンは25μg/ml使用した。制限酵素はNew England Biolabs(マサチューセッツ州ベバリー)から購入し、製造者の指示に従って使用した。
【0151】
S.pneumoniaeの外膜分画中の表面関連タンパク質の同定
表面関連成分の抽出。細菌を4リットルのTodd Hewittブロス中で増殖させ、30分間8000×gで遠心分離することによって収集した。ピペットを用いてペレットを〜175mlのPBSに懸濁させ、すぐに30分間20000×gで遠心分離した。洗浄液を0.45mのフィルター(Nalgene、ニューヨーク州ロチェスター)で濾過し、透析し、凍結乾燥させた。
【0152】
表面関連タンパク質成分のイオン交換クロマトグラフィー。S.pneumoniaeのPBS抽出物をトリスHCl、pH7.6(10mM、100ml)に溶かし、DEAE-セファロースCL-6Bのカラムのイオン交換クロマトグラフィーに通した。カラムを試料の緩衝液で洗浄した後、まず200mMのトリスHCl、pH7.6で溶出させ、次いで最終NaCl濃度0.75M(200mMのトリスHCI、pH7.6中)まで300mlの直線NaCl勾配で溶出させた。SDS-PAGEゲルを用いてカラムの分画を分析した。約18から20kDaの表面関連タンパク質を相当量含む分画をプールし、Centricon SR3濃縮機で脱塩して凍結乾燥させた。
【0153】
PVDFブロットの切り出しによるN末端アミノ酸配列分析
試料を全タンパク質1mg/mLに希釈して2×トリス-SDS-β-ME試料充填緩衝液(0.25M トリスHCl pH6.8、2% SDS、10% β-メルカプトエタノール、30%グリセロール、0.01%ブロモフェノールブルー)(Owl Separation、ニューハンプシャー州ポーツマス)と1:1で混合し、100℃で5分間加熱した。12レーンの1Ocm×10cm×1mmの10から20%勾配のアクリルアミド/ビスアクリルアミドゲル(Zaxis、オハイオ州ハドソン)のうち10レーンにそれぞれ、試料の全タンパク質の約10μg(20μLの加熱溶液)を載せた。分子量マーカー(Novex、カリフォルニア州サンディエゴ)を、ゲルの各側の2つの最も外側レーンに載せた。Owl Separations Mini-Gel装置上、50mAの一定アンペア数で1時間、Bio-Radトリス-グリシン-SDS流動緩衝液中で電気泳動を行った。その後脱イオン水でゲルを洗浄し、Owl Separationsが提供する半乾燥ブロットシステムを150mAの一定アンペア数で1時間使用して、Millipore Immobilon-P PVDF(フッ化ポリビニルデン)に移した。生じたブロットをアミドブラック(10%酢酸、脱イオン水中0.1%アミドブラック)で染色し、10%酢酸で脱染した。その後、メタノールで洗浄したメスまたはミニExactoナイフを使用してタンパク質のバンドを10レーンすべてから切りだし、Applied Biosystems 477Aタンパク質シーケンサー(カリフォルニア州フォスターシティー)の反応カートリッジに入れた。その後N末端シーケンサーを最適ブロット条件下で12回以上のサイクル実行した(1サイクルのブランク、1サイクルの標準、10サイクル以上の所望する残基の同定)。PTH-アミノ酸検出は、Applied Biosystems 120A PTHアナライザーで行った。サイクルをアナログチャート式記録計と機器ソフトウェアを使用したデジタルの両方によって収集した。N末端アミノ酸の割当は、アナログとデジタルのデータを、PTH-アミノ酸の標準セットおよびアナライザー上のその対応する保持時間と比較することによって行った(システイン残基は変換中に破壊され、検出されない)。
【0154】
組換え20kDa表面関連タンパク質のサブクローニングおよび発現
Altschul(Altschul,SF他、J.Mol-Biol.、1990、215:403)が開発したBLASTアルゴリズムを使用して、www.ncbi.nlm.orgにあるNCBIの非重複性データベースと突き合わせてN末端配列を比較した。これにより、N末端配列がNCBIデータベースの翻訳領域(ORF)と同一性を有することが示された。このORFは以前に配列決定されており、未同定のORFとして登録されていた(Pikis,A.他、J.Infect.Dis.、1998、178:700)。次いで、The Institute for Genomic Research(TIGR、www.tigr.org)で入手可能なS.pneumoniaeゲノム(血清型4)の公開版と突き合わせて未同定のORFをBLAST分析することにより、ORFがゲノム中に存在するが、これもまた未同定であることが示された。S.pneumoniaeゲノム配列中の未知のORFのDNA分析およびプライマーの設計は、DNASTAR(ウィスコンシン州マディソン)のLasergene DNAおよびタンパク質分析ソフトウェアを使用して行った。
【0155】
ORFに隣接するプライマーを設計し(配列番号1および2)、次いでABI 380A DNA合成機を用いて合成した。PCR産物のpET28a発現ベクター中へのサブクローニングを容易にするために、PCRプライマー中に制限部位を設計した。5'プライマー中にはNco1部位を含めた。これは発現ベクターのNco1部位へのライゲーションを可能にし、ATG開始コドンも含んでいた。正しい読み枠を維持するために、2つの余分な塩基を5'プライマー内に含め、これによりロイシンのコドンが付加された。3'プライマーにはSal1部位を含めた。
【0156】
予想した大きさのPCR断片をCP1200で作成し、pCR2.1ベクター内にライゲーションさせ、それを使用してOneShot Top 10F'細胞(Invitrogen)を形質転換させた。アンピシリン耐性の形質転換体を、アルカリ溶解によって調製したプラスミドDNAの制限消化によってスクリーニングした(Birnboim,H.C.およびDuly,J.、Nuc.Acid Res.、1978、7:1513)。20kDaの遺伝子を含む組換えプラスミドが同定された。Applied Biosystems Prism Dye Terminator cycle-sequencing core kitを使用して、販売者から供給されたPrismプロトコルに基づいて、クローンからDNA配列を得た。各サイクル反応も約1ugの鋳型DNAおよび100ngのプライマーを使用した。反応は、GeneAmp PCR Systems 2400ユニットでサイクルさせ、Prism法を用いて精製し、ABI 373A DNAシーケンサー(Applied Biosystems)で分析した。
【0157】
r20kDaの遺伝子を含む挿入物をNcolおよびSallを用いた制限消化によって切り出し、1.5%のアガロースゲルで分離した。このDNA断片をゲルから切り出し、Bio 101のSpin kit(カリフォルニア州ビスタ)によってアガロースから精製した。挿入物を、これもまたNcolおよびSallで消化したプラスミドベクターDNA(pET28a)を用いてライゲーションさせ、次いでToplOF'細胞(Invitrogen)内に形質転換させた。カナマイシン耐性の形質転換体を、アルカリ溶解によって調製したプラスミドDNAの制限消化によってスクリーニングした(Birnboim,H.C.およびDuly J.、Nuc.Acid Res.、1978、7:1513)。次いで組換えプラスミドをBL21細胞(Novagen)内に形質転換させてpLP533を作成し、30ug/mlのカナマイシンを補充したSOB培地上で増殖させた。細胞を0.6のO.D.600まで増殖させ、次いで0.4mMのIPTG(Boehringer Mannheim、インディアナ州インディアナポリス)を用いて誘導させた。全細胞溶解物を調製し、15%のSDS-PAGEゲルで電気泳動させ(Laemmli,U.K.、Nature、1970、227:680)、所望する組換え生成物の発現を確認した。
【0158】
組換え20kDa表面関連タンパク質の精製
30μg/mLのカナマイシン(Sigma、ミズーリ州セントルイス)を補充した50mLのSOB培地を含む250mLのフラスコに、E.coli pLP533の凍結培養物からの擦過物を接種した。培養物を37℃、200rpmの振盪で約16時間インキュベートした。次いで、SOBと30ug/mlのカナマイシンを含む2つの1リットルフラスコに、終夜培養物を20mL接種し、37℃、200rpmの振盪でインキュベートした。培養物がOD6000.7から0.8の光学密度に達した後、IPTG(Gold Biotechnology、ミズーリ州セントルイス)を0.8mMになるように加えた。同じ温度で培養物を接種し、さらに3時間振盪した。その後、15分間7300×gの遠心分離によって細胞を収集した。細胞ペレットを-20℃で凍結し、その後解凍し、300mLの10mMリン酸ナトリウムpH6.0(J.T.Baker、ペンシルベニア州フィリップスバーグ)に再懸濁させた。細胞を溶解させるために細胞懸濁液を微小流動化装置(Microfluidics Corporation、マサチューセッツ州ニュートン)に通した。溶解物を15分間16,000×gで遠心分離し、その後生じた上清を45分間200,000×gで遠心分離した。各ステップでの上清およびペレットをSDS-PAGEでアッセイした。上清は10mMのリン酸ナトリウムpH6.0で500mLに希釈した。100,000MWのカットオフを有する膜(Millipore、マサチューセッツ州ベッドフォード)を用いて、2.5倍の濃度の同じ緩衝液1Lに対してこの溶液をダイアフィルトレーションした。濃縮水中のタンパク質を、10mMのリン酸ナトリウムpH6.0中で70mLのセラミックヒドロキシアパタイトカラム(Bio-Rad Laboratories、カリフォルニア州ハーキュリーズ)に載せた。その後カラムを10倍のカラム体積(CV)の充填緩衝液で洗浄した。10CVの108mMのリン酸ナトリウムpH6.0でカラムを洗浄することによって不純タンパク質を除去した。このタンパク質を、108mMから500mMまでのリン酸ナトリウムpH6.0の10CVの直線勾配を用いてカラムから溶出させた。ピーク分画を10%〜20%のSDS-PAGEゲル(Zaxis、オハイオ州ハドソン)に流した。タンパク質を含む分画をプールし、-20℃で保存した。SDS-PAGEによってタンパク質の均一性を分析し、精製中のタンパク質の濃度をローリー法(Lowry,O.H.他、S.Biol.Chem.、1951、198:265)によって決定した。免疫化前のタンパク質濃度を、Pierce Chemicals(イリノイ州ノースブルック)のBCAキットを製造者の指示に従って使用して決定した。タンパク質標準としてBSAを使用した。
【0159】
ウエスタンブロット分析用のポリクローナル抗血清
組換えタンパク質を使用してマウス内でポリクローナル抗血清を作成した。手短に述べると、各投与量に10μgのr20kDaタンパク質に、不完全フロイントアジュバント(IFA)(1:1 v/v)を乳濁液として加え、6から8週齢のSwiss Websterマウスに皮下注射した。第0週でマウスを出血させてワクチン接種し、第4週でブーストさせ、第6週で全採血した。10匹のマウスに、IFAをアジュバントとして加えたr20kDaタンパク質をワクチン接種した。血清をプールし、さらなる分析に使用した。
【0160】
SDS-PAGEおよびウエスタンブロッティング
OD600に基づいて同数の肺炎球菌細胞を、微量遠心分離機で30秒間遠心分離することによって、全細胞溶解物を調製した。肺炎球菌ペレットを適切な体積の充填緩衝液に再懸濁させた。指示された場合は、試料を5分間沸騰させ、Laemmli法(Laemmli、Nature、1970:227:680)を用いて10%のSDS-PAGEゲルで分離した。Biorad Mini Transblotセル(Biorad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を用いて試料をニトロセルロース(BioRad)に移し、ブロットを室温で30分間、5%の無脂肪乳-PBS(BLOTTO)でブロックした。プールしたマウス抗血清をBLOTTO中1:1000の希釈率で60分間使用し、次いでPBS-0.2% Tween80で25分間洗浄した。アルカリホスファターゼに結合したヤギ抗マウスIgG+M(Biosource International、カリフォルニア州カマリロ)を使用して、BLOTTO中1:1000の希釈率で結合した抗体を検出するのに使用した。既に記載したようにブロットを洗浄し、BioRadのNBTおよびBCIPを用いて製造者の指示に従って検出した。
【0161】
アレルギー誘発前のマウスの鼻腔内免疫化
6週齢の病原体を有さないBalb/cマウスをJackson Laboratories(メイン州バーハーバー)から購入し、標準の温度、湿度、光条件下、ケージ内で飼育した。各グループ10匹でBALB/Cマウスを、5μgのr20kDaタンパク質で免疫化させた。第0、2、4週。各時期に、酵素活性および毒性が低減された遺伝的に改変されたコレラ毒素であるCT-E29H(Tebbey,P.W.他、Vaccine、2000、18:2723)0.1μgと配合した5μgのr20kDaを、ゆっくりと各マウスの鼻孔に10μlの体積で滴下した。キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)-CT-E29Hで免疫化させたマウスを対照として用いた。最終免疫化の4日後に血清試料を採集した。
【0162】
マウス鼻孔内アレルギー誘発モデル
Balb/cマウスを第4週第6日目に、1×105CFUの血清型3ストレプトマイシン耐性S.pneumoniaeを用いてアレルギー誘発させた。100μg/mlのストレプトマイシンを含む3mlのTodd-Hewittブロスに肺炎球菌を接種した。37℃で培養物を対数期の中期まで成長させ、Todd-Hewittブロスを用いて所望の濃度に希釈し、使用するまで氷上で保管した。1.2mgのケタミンHCl(Fort Dodge Laboratory、アイオワ州フォートドッジ)を腹腔内注入して各マウスを麻酔した。麻酔したマウスの鼻孔に細菌懸濁液を接種した(各マウス10μl)。実際に投与したの細菌の投与量は平板計数法によって確認した。アレルギー誘発の4日後、マウスを屠殺し、鼻を取り除き、組織ホモジナイザー(Ultra-Turax T25、Janke & Kunkel Ika-Labortechnik、ドイツ、シュタウフェン)を用いて3mlの滅菌生理食塩水中でホモジナイズした。ホモジナイズしたものを生理食塩水で連続的に10倍希釈し、ストレプトマイシンを含むTSAプレートに植えた。アレルギー誘発の2日後に各マウスから採取した50μlの血液も、同様のプレートに植えた。プレートを終夜37℃でインキュベートし、コロニーを計数した。
【0163】
r20kDaタンパク質のELISAアッセイ
r20kDaタンパク質に対する抗体力価を、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって決定した。ELISAは、r20kDa(PBS、pH7.1中の5μg/mlストックを各ウェル100μl)を用いてNunc-Immuno(商標)PolySorp Plateをコーティングして行った。終夜4℃でプレートをコーティングした。室温で1時間、5%の無脂肪乾燥乳を含む200μlのPBS(ブロック緩衝液)を用いてブロックした後、プレートを、ブロック緩衝液で希釈した試験血清の連続希釈液で室温で1.5時間インキュベートした。その後、0.1%のTweenを含むPBS(PBS-T)でプレートを5回洗浄し、室温で1時間、ビオチン標識ヤギ抗マウスIgGまたはIgA(PBS中に1:8000または1:4000;Brookwood Biomedical、アラバマ州Birmingham)でインキュベートした。PBS-Tでさらに5回洗浄した後、室温で1時間、プレートをストレプトアビジン結合西洋ワサビペルオキシダーゼ(PBS中に1:10,000;Zymed Laboratory Inc.、カリフォルニア州サンフランシスコ)でインキュベートした。その後プレートをPBS-Tで5回洗浄し、20分間100μlのABTS基質(KPL、メリーランド州Gaithersburg)でインキュベートし、その後100μlの停止液(1% SDS)を加えた。吸光度は、VERSAmaxミクロプレート読取装置(Molecular Devices Corp.、カリフォルニア州サニーベール)を使用して405nmで読み取った。試験血清の最終力価は、OD405値0.1をもたらした最高平均希釈度の逆数であった。試験血清の平均背景力価は、血清以外のすべての薬剤を用いたウェルを405nmで読み取った吸光値によって定量した。
【0164】
統計的方法。Tukey-Kramer検定(Ludbrook,J.、Clin Exp Pharmacol Physiol.、1998、25:1032)を用いてグループ間の経鼻定着を比較した。結果はp<0.05のとき統計的に有意と見なした。
【0165】
PPP1の配列不均一性
PPP1の配列不均一性を観察するために、この遺伝子のヌクレオチド配列を10個の異なる血清型間で比較した。S.pneumoniaeの各血清型の終夜培養物からゲノムDNAを調製した。4℃で15分間1000×gの遠心分離によって細胞を収集し、2mlのTE緩衝液に再懸濁させた。SDSを0.3%まで加え、プロテイナーゼK(Sigma)を10μg/mlまで加えて細胞を溶解させた。細胞を終夜55℃でインキュベートした。透明な溶解物に等量のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(24:1のクロロホルム/イソアミルアルコールの混合物を同体積の水で飽和させたフェノールを合わせることで作成)を加えることによってタンパク質を抽出した。室温で10分間、7500×gで遠心分離することで相を分離し、水相を新しいチューブに移した。このプロセスを繰り返し、その後10.4MのNH4Acを20%まで加え、2.5倍体積のエタノールを加えることによってDNAを水相から沈殿させた。ガラス棒を用いてゲノムDNAを巻き上げ、200μlのTE緩衝液に再懸濁させた。Applied Biosystems Prism Dye Terminator cycle-sequencing core kitを使用して、販売者から供給されたPrismプロトコルに基づいて、血清型1、3、4、5、6、7、9、14、18、23F、CP1200のゲノムDNAからPPP1の遺伝子を配列決定した。各サイクル反応に約1μgの鋳型DNAおよび100ngのプライマーを使用した。反応は、Gene Amp PCR Systems 2400ユニットでサイクルし、Prism法を用いて精製し、ABI 373A DNAシーケンサー(Applied Biosystems)を用いて分析した。ヌクレオチド配列およびその予想されたアミノ酸配列を、Clustal Wアルゴリズムを使用して、DNAstarのDNA LasergeneパッケージのMegalignアプリケーションで並べた。
【0166】
in vivoで発現されたPPP1メッセージの評価
in vitroで増殖させた細胞からのRNAの調製
様々なS.pneumoniae血清型を、60mlのTHB-0.5%YE中、37℃で5%のCO2を用いて、対数期(O.D.550約0.3)まで増殖させた。4℃で15分間、1000×gで遠心分離することによって細胞を収集した。上清を吸引し、後に細胞を1mlのRNAse(Ambion、カリフォルニア州)に再懸濁させ、4℃で>1時間保管した。その後、細胞を微量遠心機で5分間、8000×gで遠心分離した。上清を吸引し、細胞を100μlの10%デオキシコール酸(DOC)に再懸濁させた。その後1100μlのRNAZOL B(Tel-Test,Inc)を加え、懸濁液を反転して簡単に混合した。その後120μlのCHCl3を加え、試料を反転して混合し、その後微量遠心機で、4℃で10分間、全速力で遠心分離した。水相を取り除き、同体積の2-プロパノールを加えることによってRNAを沈殿させた。RNAを4℃で>1時間インキュベートし、微量遠心機で、室温で10分間、全速力で遠心分離した。上清を吸引してRNAを75%エタノールで洗浄し、5分間再度遠心分離した。上清を吸引して、RNAを50から100μlのヌクレアーゼを含まない水に再懸濁させた。RNAseを含まないDNAse(DNA FREE、Ambion)で試料を37℃、20分間処理することによってRNAからDNAを取り除き、次いでDNA FREEキレート剤を加えることによって酵素を不活性化させた。RNAの純度および収率は、260nmおよび280nmの吸光度を測定することによって評価した。
【0167】
in vivoで増殖させた細胞由来のRNAの調製
S.pneumoniaeの対数期細胞を上記のように調製し、0.4%のグルコースを補充したRPMI培地(Celltech)に106cfu/mlで再懸濁させた。80,000MWのカットオフを有するPVDF透析膜(SprectraPor)に1mlの細胞懸濁液を密封した。このような袋2つを400gのSprague Dawleyラットの腹膜内に移植した。袋をラット内に22時間保ち、その後ラットを屠殺して袋を回収した。腹膜内で増殖された細胞から上記のようにRNAを調製した。
【0168】
in vivoでPPP1メッセージを検査するためのRT-PCR
RT-PCRを用いて、in vitroおよびin vivoで増殖させた細胞から調製したRNAからPPP1遺伝子のメッセージを増幅した。遺伝子の3'末端に対応する逆PCRプライマーを使用して以下の反応で二本鎖cDNAを作成した。1μgのRNAを0.25μMの逆プライマー:GGG GTC GAC TAA ACC AGG TGC TTG TCC AAG TTC(配列番号8)と共に75℃で3分間インキュベートし、その後44℃に冷ました。RETROscript(Ambion)キットを用いて製造者の指示に従ってメッセージを逆転写した。ReddyMix(ABgene)を製造者の指示に従って使用して、上記の逆プライマーおよび正プライマー:GGG GCC ATG GCT GTA GAA TTG AAA AAA GAA(配列番9)を用いて、2から5μlの試料からPPP1メッセージを増幅した。10μlの増幅産物を2%のアガロースゲルで電気泳動した。
【0169】
結果
20kDa表面関連タンパク質の同定。PBS洗浄液およびイオン交換クロマトグラフィーを使用して、S.pneumoniaeの20kDa表面関連成分を同定した(図1)。図1のレーン2〜9はDEAEカラムの分画#8〜16を表す。主要なタンパク質バンドが、15〜20kDaの間に明らかに存在する。低分子量バンドを調製用SDS-PAGEゲルで分離し、PVDF膜に移した。PVDF膜は高い結合能力を有しているので、試料の回収率および配列決定性能を高め、効率的なアミノ末端残基の決定が可能になる。このタンパク質のアミノ末端残基(配列番号3)により、S.pneumoniaeゲノム中の対応する翻訳領域(配列番号4および5)の同定が可能になった。このORFは、他生物中の同様のヘムでない鉄を含むフェリチンタンパク質に類似性を示し、これはS.pneumoniae内での同様の機能を示唆する(Pikis,A.他、J.Infectious Diseases、1998、178:700)。しかし、このタンパク質のS.pneumoniae内での正確な機能および細胞内位置は知られていない。このORFのサブクローニングおよび発現により、予想された大きさの組換え物質がもたらされた(図2)。
【0170】
組換え20kDa表面関連タンパク質の精製。精製は、組換えタンパク質の溶解性を利用して行った。連続的な遠心分離によって細胞膜から有意な精製が達成された。さらに、オリゴマー形成の特性を都合よく利用して、残存低分子量不純タンパク質を透析によって取り除いた。中性pHで予想されたタンパク質の電荷により、図5に見られるように、ヒドロキシアパタイトカラムで90%を超える均一性のタンパク質を精製することが可能となった。
【0171】
抗r20kDa表面関連タンパク質血清の反応性。株間でのタンパク質の抗原性の保存を評価するために、組換え20kDa表面関連タンパク質に対するポリクローナル抗血清をSwiss Websterマウス内で作成した。r20kDaタンパク質に対する抗血清は、自然種の非加熱全細胞溶解物中の約20、40、80kDaのタンパク質と反応したが(図3)、加熱試料中で見られた主な反応性種は約20kDaであった(図示せず)。これらの結果は、このタンパク質が4個以上のサブユニットからなる複合体の一部であることを示唆する。
【0172】
鼻腔内アレルギー誘発。r20kDa表面関連タンパク質を用いた鼻腔内免疫化によって血清免疫応答が誘発されるかどうかを決定するために、Balb/cマウスに5μgのr20kDaを3回、隔週間隔で、CT-E29H(0.1μg/投与量)を粘膜アジュバントとして用いて投与した。最後のブースト免疫化の4日後に採取した免疫血清を、抗原特異的ELISAアッセイで試験した。最後のブースト免疫化の4日後に、強力な抗原特異的IgGおよびIgA抗体応答が、r20kDa-E29Hを用いて免疫化させたマウス内で生じた(表6)。非関連タンパク質KLHと比べると、r20kDa表面関連タンパク質を用いた免疫化は、BALB/Cマウスの鼻咽頭でのタイプ3 S.pneumoniaeの定着を有意に低下させた(図4)。結果は、タイプ3複合体の、相同血清型の定着を低下させる能力と比較することができる(Henrikson,J他、Alcohol Clin Exp Res、1997、21:1630)。
【0173】
【表1】

【0174】
10個の血清型由来のPPP1タンパク質の配列整列。図6に示すように、PPP1の配列は血清型間で大部分が保存されている。見て分かるように、血清型9が最も異なった血清型である。この血清型から単離したPP1は、多くのものと15個のアミノ酸差異を示していた。残りの血清型は5個未満の差異しか示さなかった。PPP1の全体的な共通配列を図6に示した(配列番号20)。
【0175】
RNA増幅。in vitroとin vivoのいずれの試料でも、予想された大きさの分離したバンドが見られた(図7)。λDNAのHae III制限断片との比較によって、生成物の大きさが完全長であることが推定された。
【0176】
本明細書中で言及した特許、出願、試験方法、出版物は、その全体を参照として本明細書に組み込む。
【0177】
上記の説明に照らせば、当分野の技術者には本発明の様々な改変が自明であろう。このような自明の改変はすべて、添付の特許請求の範囲の所期の完全な範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Streptococcus pneumoniae表面関連の肺炎保護タンパク質(PPP)を含む、Streptococcus pneumoniaeによって引き起こされる疾病に対する保護免疫誘発用組成物であって、
前記PPPが、
(a) アミノ酸配列が配列番号5であるタンパク質;または
(b) 配列番号5のアミノ酸配列に対して、1つもしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは挿入によって、そのアミノ酸配列が異なるタンパク質
であって、肺炎球菌のコロニー形成を低下させる能力を有するタンパク質を含む保護免疫誘発用組成物。
【請求項2】
前記タンパク質(b)が配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%の全体的な配列類似性を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記タンパク質(b)のアミノ酸配列が配列番号10から19から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記PPPが組換えタンパク質である請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記PPPが約4.587の等電点を有する請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記PPPがpH7で約-14.214の電荷を有する請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記PPPが10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定される約20kDaの分子量を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
Streptococcus pneumoniae表面関連の肺炎保護タンパク質(PPP)を含む、Streptococcus pneumoniaeによって引き起こされる疾病に対する保護免疫誘発用組成物であって、
前記PPPが、
(a) 核酸配列が配列番号4である核酸;または
(b) 高い厳密性の条件下で、(a)の核酸配列と相補的な核酸配列からなる核酸とハイブリダイズする核酸
であって、肺炎球菌のコロニー形成を低下させる能力を有するタンパク質をコードする核酸を含む核酸によってコードされる保護免疫誘発用組成物。
【請求項9】
前記核酸がcDNAである請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
Streptococcus pneumoniae表面関連の肺炎保護タンパク質(PPP)をコードする核酸配列を含む発現ベクターを含む、Streptococcus pneumoniaeによって引き起こされる疾病に対する保護免疫誘発用組成物であって、
前記核酸が、
(a) 核酸配列が配列番号4である核酸;または
(b) 高い厳密性の条件下で、(a)の核酸配列と相補的な核酸配列からなる核酸とハイブリダイズする核酸
であって、肺炎球菌のコロニー形成を低下させる能力を有するタンパク質をコードする核酸を含む保護免疫誘発用組成物。
【請求項11】
前記PPPが約4.587の等電点を有する請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記PPPがpH7で約-14.214の電荷を有する請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記PPPが10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定される約20kDaの分子量を有する請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記核酸配列が発現制御配列に機能的に結合されている、請求項10から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
Streptococcus pneumoniae表面関連の肺炎保護タンパク質(PPP)をコードする核酸配列を含む発現ベクターを用いてトランスフェクションさせた宿主細胞を含む、Streptococcus pneumoniaeによって引き起こされる疾病に対する保護免疫誘発用組成物であって、
前記核酸が、
(a) 核酸配列が配列番号4である核酸;または
(b) 高い厳密性の条件下で、(a)の核酸配列と相補的な核酸配列からなる核酸とハイブリダイズする核酸
であって、肺炎球菌のコロニー形成を低下させる能力を有するタンパク質をコードする核酸を含む保護免疫誘発用組成物。
【請求項16】
前記核酸配列が発現制御配列に機能的に結合されている、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
さらに製薬的に許容されるキャリアを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
さらに少なくとも1つのアジュバントを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記疾病が、中耳炎、鼻副鼻腔炎、菌血症、髄膜炎、肺炎または下気道感染症である、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
(a) アミノ酸配列が配列番号5であるタンパク質;または
(b) 配列番号5のアミノ酸配列に対して、1つもしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは挿入によって、そのアミノ酸配列が異なるタンパク質
であって、肺炎球菌のコロニー形成を低下させる能力を有するタンパク質を含む、単離したStreptococcus pneumoniae表面関連の肺炎保護タンパク質(PPP)。
【請求項21】
前記PPPが組換えタンパク質である請求項20に記載のPPP。
【請求項22】
前記PPPが約4.587の等電点を有する請求項21に記載のPPP。
【請求項23】
前記PPPがpH7で約-14.214の電荷を有する請求項22に記載のPPP。
【請求項24】
前記PPPが10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定される約20kDaの分子量を有する請求項20に記載のPPP。
【請求項25】
(a) 核酸配列が配列番号4である核酸;または
(b) 高い厳密性の条件下で、(a)の核酸配列と相補的な核酸配列からなる核酸とハイブリダイズする核酸
であって、肺炎球菌のコロニー形成を低下させる能力を有するタンパク質をコードする核酸を含む核酸によってコードされる、単離したStreptococcus pneumoniae表面関連の肺炎保護タンパク質(PPP)。
【請求項26】
前記核酸がcDNAである請求項25に記載のPPP。
【請求項27】
Streptococcus pneumoniae表面関連の肺炎保護タンパク質(PPP)をコードする核酸配列を含む単離した発現ベクターであって、
前記核酸が、
(a) 核酸配列が配列番号4である核酸;または
(b) 高い厳密性の条件下で、(a)の核酸配列と相補的な核酸配列からなる核酸とハイブリダイズする核酸
であって、肺炎球菌のコロニー形成を低下させる能力を有するタンパク質をコードする核酸を含む発現ベクター。
【請求項28】
前記PPPが約4.587の等電点を有する請求項27に記載の発現ベクター。
【請求項29】
前記PPPがpH7で約-14.214の電荷を有する請求項28に記載のベクター。
【請求項30】
前記PPPが10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定される約20kDaの分子量を有する請求項27に記載の発現ベクター。
【請求項31】
前記核酸配列が発現制御配列に機能的に結合されている、請求項27から30のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項32】
Streptococcus pneumoniae表面関連の肺炎保護タンパク質(PPP)をコードする核酸配列を含む発現ベクターを用いてトランスフェクションさせた単離した宿主細胞であって、
前記核酸が、
(a) 核酸配列が配列番号4である核酸;または
(b) 高い厳密性の条件下で、(a)の核酸配列と相補的な核酸配列からなる核酸とハイブリダイズする核酸
であって、肺炎球菌のコロニー形成を低下させる能力を有するタンパク質をコードする核酸を含む宿主細胞。
【請求項33】
前記PPPが約4.587の等電点を有する請求項32に記載の宿主細胞。
【請求項34】
前記PPPがpH7で約-14.214の電荷を有する請求項33に記載の宿主細胞。
【請求項35】
前記PPPが10〜20%のSDS-PAGEゲルを用いて決定される約20kDaの分子量を有する請求項32に記載の宿主細胞。
【請求項36】
前記核酸配列が発現制御配列に機能的に結合されている、請求項32から35のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項37】
請求項32に記載の宿主細胞によって生成された前記PPPを単離することを含み、ここで前記宿主細胞は前記ベクターによる前記PPPの発現がもたらされる条件下で培養されるものである、組換えPPPを生成する方法。

【図4】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−201527(P2009−201527A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145654(P2009−145654)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【分割の表示】特願2002−555266(P2002−555266)の分割
【原出願日】平成13年12月28日(2001.12.28)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】