説明

(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の製造方法、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を用いた(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の製造方法及び(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体

【課題】 本発明は、耐水性及び機械的強度に優れた(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体を得ることができる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の製造方法は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー95〜99重量%及び水溶性モノマー1〜5重量%を含有するモノマー混合物と、重合開始剤とを含有する重合性組成物に光照射して上記重合性組成物の転化率が4〜30%となるまで塊状重合させる工程と、上記重合性組成物の転化率が4〜30%となった時点で上記重合性組成物に該重合性組成物100重量部に対して水溶性熱分解有機物1〜20重量部を添加して分散させた後に上記重合性組成物を転化率99.5%以上となるまで塊状重合させる工程とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性及び耐水性に優れた(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の製造方法、この製造方法で得られた(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を用いた(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の製造方法及び(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アクリル系樹脂発泡体は、硬質である上に軽量性及び断熱性に優れていることから、建築材料などの用途に広く用いられている。このようなアクリル系樹脂発泡体としては、例えば、特許文献1には、(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリル酸からなる単量体組成物に水等の膨潤剤を加えることにより、耐熱性アクリル系樹脂発泡体を得る方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、上記発泡性アクリル系樹脂組成物は、使用する単量体の多くが水溶性であるために、得られる発泡体の耐水性に劣る問題が有った。
【0004】
又、特許文献1、2などには非水溶性のモノマーを用い、発泡剤としてアゾジカルボンアミドや無機粒子などの非水溶性の固体発泡剤を用いたアクリル系発泡体が開示されている。
【0005】
しかしながら、粒子状物を分散させるため使用量が制限され、発泡倍率が10倍以下の低倍率しか得られなかったり、気泡径が大きく発泡倍率にバラツキがあったりするという問題があった。そして、気泡径が大きくなったり、発泡倍率にバラツキがあったりすると、発泡体の物性が不均一となったり、或いは、発泡体の強度が低下するといった問題を生じていた。
【0006】
【特許文献1】特公昭40−29020号公報
【特許文献2】特開昭56−145931号公報
【特許文献3】特開2004−91675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耐水性及び機械的強度に優れた(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体を得ることができる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の製造方法、この製造方法で得られた(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を用いた(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の製造方法、及び、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を発泡させてなる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー95〜99重量%及び水溶性モノマー1〜5重量%を含有するモノマー混合物と、重合開始剤とを含有する重合性組成物に光照射して上記重合性組成物の転化率が4〜30%となるまで塊状重合させる工程と、上記重合性組成物の転化率が4〜30%となった時点で上記重合性組成物に該重合性組成物100重量部に対して水溶性熱分解有機物1〜20重量部を添加して分散させた後に上記重合性組成物を転化率99.5%以上となるまで塊状重合させる工程とを有することを特徴とする。なお、本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0009】
モノマー混合物を構成している(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、特に限定されないが、アルキル基の炭素数が1〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含むことが好ましい。
【0010】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、メタ)アクリル酸イソブチル等の(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0011】
(メタ)アクリル酸エステルモノマー中にメタクリル酸メチルを50重量%以上含有していることが好ましく、70重量%以上含有していることがより好ましく、80重量%以上含有していることが特に好ましい。これは、(メタ)アクリル酸エステルモノマー中にメタクリル酸メチルを50重量%以上含有させ、且つ、アルキル基の炭素数が2以上であるメタクリル酸アルキルエステル又は/及びアルキル基の炭素数が2以上であるアクリル酸アルキルエステルをメタクリル酸メチルと併用させることによって、得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を発泡させてなる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の耐熱性及び機械的強度、特に剛性をより優れたものとすることができるからである。
【0012】
更に、モノマー混合物には、後述する水溶性熱分解有機物を重合性組成物中に均一に分散させるために水溶性モノマーが含有されている。
【0013】
水溶性モノマーとは、20℃、1.01×105Pa下における水に対する溶解性が1g/ミリリットル以上であるモノマーをいう。このような水溶性モノマーとしては、特に限定されず、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸の塩、アクリル酸、アクリル酸の塩、メタクリルアミド、アクリルアミド、マレイン酸などが挙げられ、(メタ)アクリル酸エステルとの共重合性や、水溶性熱分解有機物に対する溶解性に優れていることから、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミドが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸がより好ましい。
【0014】
モノマー混合物中における水溶性モノマーの含有量は、少ないと、後述する水溶性熱分解有機物を重合性組成物中に均一に分散させることができなくなり、得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の発泡性が不均一となり、多いと、水溶性熱分解有機物の重合性組成物中への分散性に優れるものの、得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を発泡させて得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の耐水性が低下するので、1〜5重量%に限定され、1〜4重量%が好ましく、1.5〜3重量%がより好ましい。同様の理由で、モノマー混合物中における(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量は、95〜99重量%に限定され、96〜99重量%が好ましく、97〜98.5重量%がより好ましい。
【0015】
モノマー混合物には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び水溶性モノマー以外のモノマーが含有されていてもよい。このようなモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0016】
又、モノマー混合物には多官能の架橋剤が含有されていてもよい。モノマー混合物に多官能の架橋剤を含有させることによって得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂に架橋構造を付与して発泡に適した溶融粘度とすることができ、その結果、発泡時に破泡を防止して(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の発泡性を向上させることができる。
【0017】
このような多官能の架橋剤としては、特に限定されず、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、アリルメタクリレート、ビニルメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、アジピン酸ジビニル、ジビニルエーテル、ジビニルベンゼン、ジアリルアミン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,4ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、数平均分子量が200のポリエチレングリコールのジアクリレート、数平均分子量が400のポリエチレングリコールのジアクリレート、数平均分子量が600のポリエチレングリコールのジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、数平均分子量が200のポリエチレングリコールのジメタクリレート、数平均分子量が400のポリエチレングリコールのジメタクリレート、数平均分子量が600のポリエチレングリコールのジメタクリレートなどの一分子中に二個以上の重合性不飽和結合を有するモノマーなどが挙げられ、エチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
【0018】
モノマー混合物中に添加される架橋剤の量は、少ないと、得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の耐熱性が低下することがある一方、多いと、得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の発泡倍率が低下して軽量性が低下することがあるので、モノマー混合物100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.01〜3重量部がより好ましい。
【0019】
そして、上記モノマー混合物中に重合開始剤を添加することによって重合性組成物が構成される。重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤が好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、光照射によってラジカルを発生させるものであれば、特に限定されず、例えば、α―ヒドロキシケトン化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、ベンジルケタール化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、チオキサントン化合物、ジアセチル及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、ジフェニルジスルフィド及びその誘導体、テトラメチルチウラムジスルフィド及びジベンゾイルジスルフィドなどの有機ジスルフィド類などが挙げられ、アクリルモノマーとの反応性や汎用性という理由で2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンや、熱重合との併用が容易なテトラメチルチウラムジスルフィドが好ましい。なお、重合開始剤は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0020】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、チバ・スペシャリティーケミカルズ社から商品名「イルガキュア127」、「イルガキュア184」、「イルガキュア369」、「イルガキュア379」、「イルガキュア651」、「イルガキュア907」、「イルガキュア819」、「イルガキュア2959」、「ダロキュァ1173」にて、日本化薬社から商品名「カヤキュァBP」、「カヤキュァDETX−S」にて、Lamberti社から商品名「ESACURE KIP 150」にて、シンコー技研社から商品名「S−121」にて、精工化学社から商品名「セイクオールBEE」にて、黒金化成社から商品名「ソルバスロンBIPE」、「ソルバスロンBIBE」にて、川口化学社から商品名「アクセルTMT」にて市販されている。
【0021】
重合性組成物中における重合開始剤の含有量は、少ないと、塊状重合が不充分となり、得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を発泡されて得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の発泡倍率が低下し、或いは、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体に歪みが多く生じることがあり、多いと、ラジカルが必要以上に発生してしまい、停止反応が起こるために、(メタ)アクリル酸エステル樹脂の高分子量化が不充分となることがあり、得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を発泡されて得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の発泡倍率が低下し、或いは、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体が脆くなることがあるので、モノマー混合物100重量部に対し0.005〜0.2重量部が好ましく、0.01〜0.1重量部がより好ましい。
【0022】
又、重合性組成物には界面活性剤を配合してもよい。界面活性剤を配合することによって、重合性組成物中に水溶性熱分解有機物をより均一に分散させることができる。
【0023】
このような界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン、アルキルグリコシド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテルなどが挙げられる。
【0024】
そして、重合性組成物中に添加する界面活性剤の量は、多いと、得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を発泡させて得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の耐水性が低下することがあるので、モノマー混合物100重量部に対して2重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましく、少なすぎると、界面活性剤を添加した効果が発現しないことがあるので、0.001重量部以上が好ましい。
【0025】
更に、重合性組成物には、分散補助として無機微粒子を配合してもよい。無機微粒子を配合することにより、重合性組成物中に水溶性熱分解有機物をより均一に分散させることができる。このような無機微粒子としては、シリカ粒子を用いることができる。
【0026】
重合性組成物中に添加する無機微粒子の量は、少ないと、無機微粒子を添加した効果が発現しないことがあり、多いと、重合性組成物の粘度が高くなり、重合性組成物中における水溶性熱分解有機物の分散性が却って低下し、或いは、得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の発泡性して、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の発泡倍率が低下することがあるので、モノマー混合物100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。
【0027】
そして、先ず、重合性組成物に光照射してモノマー混合物を塊状重合させて転化率を4〜30%とする。ここで、重合性組成物の転化率とは、重合性組成物から所定量の混合物を採取し、この混合物の重量A(g)を測定した後、混合物中の液体分を除去し、残存した固形分の重量B(g)を測定し、下記の式に基づいて算出することができる。なお、重合性組成物中に水溶性熱分解有機物以外に固体成分が含有されている場合には、上記重量A、Bは、固体成分の重量を除外したものとする。
重合性組成物の転化率(重量%)=100×B/A
【0028】
なお、重合性組成物を塊状重合させるにあたって、重合性組成物を反応容器中に供給して行ってもよい。反応容器としては、例えば、少なくとも一部が紫外線透過性の器壁を有するフラスコ、ガラス板で構成されたセル、内部に紫外線を導入するためのガラス管などで構成された透光性管を設けたステンレス容器などが挙げられる。反応容器は、透光性部分が400nmの光透過率が50%以上であるものが好ましい。
【0029】
重合性組成物に照射する光としては、重合性組成物中の重合開始剤を活性化させてモノマー混合物を塊状重合させることができれば、特に限定されず、紫外線、α線、β線、γ線などが挙げられ、紫外線が好ましい。
【0030】
重合性組成物への光照射手段としては、特に限定されず、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0031】
重合性組成物への紫外線の照射強度は、低いと、重合性組成物の重合が開始しないことがあり、高いと、ラジカルが短時間のうちに大量に発生し過ぎてしまい、塊状重合の成長反応の途上で停止反応が生じ、(メタ)アクリル酸エステル樹脂の高分子量化が阻害されることがあるので、0.005〜1mW/cm2が好ましく、0.01〜0.8mW/cm2がより好ましい。
【0032】
そして、重合性組成物に光を照射している時の重合性組成物の温度は、転化率が4〜30%となるまでは0〜30℃が好ましく、10〜25℃がより好ましい。これは、重合性組成物の温度が低いと、重合性組成物の重合反応が進みにくくなることがあり、高いと、重合性組成物の重合反応において停止反応が生じることがあるからである。
【0033】
又、重合性組成物に光を照射する時間は、重合性組成物の重合反応を開始させることができれば、特に限定されず、重合反応の初期だけ重合性組成物に光を照射してもよいし、重合反応の開始から終了まで連続的に或いは断続的に重合性組成物に光を照射してもよいが、重合反応の開始から終了まで連続的に重合性組成物に光を照射することが好ましい。
【0034】
次に、重合性組成物の転化率が4〜30%となった時点で、重合性組成物中に水溶性熱分解有機物を添加して重合性組成物中に分散させる。水溶性熱分解有機物とは、23℃、1.01×105Pa下における水に対する溶解性が1g/ミリリットル以上であり且つ加熱によって好ましくは150〜250℃で、より好ましくは160〜200℃で分解して気体を発生させる有機化合物をいい、このような水溶性熱分解有機物としては、特に限定されず、尿素、クエン酸などが挙げられ、(メタ)アクリル酸エステル樹脂中において比較的、低温度にて分解しやすいので、尿素が好ましい。なお、水溶性熱分解有機物の分解温度とは、水溶性熱分解有機物を25℃から10℃/分の昇温速度で加熱し、温度変化に伴う重量変化を熱重量計を用いて測定した場合に、水溶性熱分解有機物の重量が、加熱前の重量の10重量%に相当する量だけ減少する温度をいう。
【0035】
水溶性熱分解有機物を重合性組成物中に添加するにあたって、水溶性熱分解有機物を水と共に重合性組成物中に添加することが好ましく、水溶性熱分解有機物を水に溶解させた上で重合性組成物中に添加させることが好ましい。これは、水溶性熱分解有機物を水に溶解させることによって、水溶性熱分解有機物の粘度を低下させて重合性組成物中への分散性を向上させることができると共に、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を発泡させるにあたって、先ず、水が気化して発泡ガスとしての作用を発揮し、その後に水溶性熱分解有機物が分解することによって発泡ガスを発生するので、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の発泡を二段階で行うことができ、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の急激な発泡を抑制し、得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の気泡をより微細化することができるからである。
【0036】
なお、水溶性熱分解有機物を水と共に重合性組成物中に添加させるにあたって、水溶性熱分解有機物と水とを同時に重合性組成物に添加しても、或いは、水溶性熱分解有機物と水とを別々に重合性組成物に添加してもよい。
【0037】
重合性組成物の転化率が4〜30%となった時点で、好ましくは重合性組成物の添加率が3〜18%となった時点で、重合性組成物中に水溶性熱分解有機物を添加するのは、下記理由による。重合性組成物の転化率が4%未満であると、重合性組成物の粘度が低いために、重合性組成物と相溶性の低い水溶性熱分解有機物が重合性組成物中において沈降してしまい、重合性組成物中に水溶性熱分解有機物を均一に分散させることができないからである。一方、重合性組成物の転化率が30%を超えると、重合性組成物の粘度が高くなりすぎて、重合性組成物中に水溶性熱分解有機物を均一に分散させることができないからである。
【0038】
又、重合性組成物中に添加する水溶性熱分解有機物の量は、少ないと、得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の発泡性が低下することがあり、多いと、重合性組成物中に水溶性熱分解有機物を均一に分散させることができないことがあるので、重合性組成物100重量部に対して1〜20重量部が好ましく、2〜8重量部がより好ましい。
【0039】
重合性組成物中に水溶性熱分解有機物を添加して分散させる方法としては、汎用の攪拌装置を用いて攪拌すればよく、このような攪拌装置としては、例えば、ディスパーやホモジナイザーなどの回転翼を備えた攪拌装置、遊星回転式攪拌機、気泡噴流体撹拌装置、タンク内流体の噴流撹拌装置、管内流体の混合撹拌装置、円管内乱流混合装置などが挙げられ、ディスパー、ホモジナイザーが好ましい。
【0040】
以上の如く、本発明では、モノマー混合物中に水溶性モノマーを1〜5重量%という限定した量だけ含有させて、モノマー混合物を重合させて得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂の耐水性を向上させていると共に、水溶性モノマーを存在させていることによって重合性組成物中への水溶性熱分解有機物の分散を向上させている。
【0041】
更に、水溶性熱分解有機物を重合性組成物中に分散させる際の重合性組成物の転化率を4〜30%として、重合性組成物が水溶性熱分解有機物を分散させるために適した粘度となるようにし、重合性組成物中に水溶性熱分解有機物を沈降させることなく均一に分散可能にしている。
【0042】
このように、本発明では、モノマー混合物中に水溶性モノマーの含有量を含有させていると共に、重合性組成物中への水溶性熱分解有機物の添加時の重合性組成物の粘度を調整することによって、重合性組成物中への水溶性熱分解有機物の分散を均一なものとし、得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の均一な発泡と高発泡性を実現している。
【0043】
次に、水溶性熱分解有機物を分散させた重合性組成物を転化率が99.5%以上となるまで塊状重合させて(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を得る。重合性組成物の転化率を99.5%以上となるまで重合させることによって、得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の高分子量化を図ることができ、この(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反から得られる発泡体の機械的強度を優れたものとすることができる。
【0044】
重合性組成物を転化率99.5%以上となるまで塊状重合させる際の重合性組成物の温度は、低いと、重合性組成物を充分に重合させることができないことがあり、高いと、重合性組成物の粘度が低下して、水溶性熱分解有機物が重合性組成物中において沈降を生じることがあるので、30〜80℃が好ましく、30〜60℃がより好ましく、30〜45℃が特に好ましい。
【0045】
なお、重合性組成物を加熱する方法は、特に限定されず、例えば、ホットバスやホットプレートなどの汎用の加熱手段を用いて重合性組成物を加熱する方法、遠赤外線を重合性組成物に照射する方法などが挙げられる。
【0046】
重合性組成物中に水溶性熱分解有機物を添加した後に、重合性組成物を塊状重合させるにあたって、重合性組成物に光を照射してもよい。重合性組成物に光を照射する場合には、重合性組成物の転化率が99.5%以上となるまでの間、連続的に或いは断続的に重合性組成物に光を照射してもよいし、重合性組成物中に水溶性熱分解有機物を添加した直後の所定時間だけ重合性組成物に光を照射してもよい。なお、重合性組成物に光を照射させる要領は上述と同様であるのでその説明を省略する。
【0047】
このようにして得られた(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反は、上述のように、水溶性熱分解有機物を発泡剤として含有していることから優れた発泡性を有していると共に、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反中に水溶性熱分解有機物が均一に分散されており、よって、後述するように、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を発泡させて得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体は、高発泡倍率で且つ略均一な気泡径が均一に分散しており、軽量性及び機械的強度に優れ且つ均質性に優れている。
【0048】
次に、上記(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を発泡させて(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体を製造する要領について説明する。(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反は、汎用の要領で加熱することによって、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反中に含有されている水溶性熱分解有機物が分解することによって発泡ガスが発生し発泡する。
【0049】
(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を発泡させる際の発泡原反の温度は、低いと、水溶性熱分解有機物の分解速度が遅すぎて(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反が発泡しないことがあり、高いと、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の樹脂粘度が低くなりすぎて破泡を生じたり或いは(メタ)アクリル酸エステル樹脂の分解を生じることがあるので、180〜250℃が好ましく、180〜200℃がより好ましい。
【0050】
なお、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を加熱する方法としては、ホットプレートを用いて(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を加熱する方法、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反に遠赤外線を照射して(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を加熱する方法、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反にマイクロ波を照射して(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を加熱する方法などが挙げられる。
【0051】
得られた(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の平均気泡径は、大きいと、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の機械的強度が低下し、或いは、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の気泡が連続気泡となって防水性が低下することがあるので、2mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。
【0052】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の平均気泡径は下記の要領で測定される。先ず、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体を任意の箇所にて厚み方向に切断する。そして、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の切断面を電子顕微鏡を用いて倍率10倍にて撮影し、拡大顕微鏡写真を得る。次に、拡大顕微鏡写真に表れた切断面に表れた気泡を任意に100個抽出し、各気泡毎に、気泡を包囲し得る最小径の真円を描き、この真円の直径を気泡の気泡径とする。各気泡の気泡径を相加平均した値を(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の平均気泡径とする。
【0053】
なお、上述の気泡径を測定する要領において、写真上に表れた気泡断面のみに基づいて気泡径を判断する。即ち、気泡同士は、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の切断面においては気泡壁によって互いに完全に分離しているように見えても、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の切断面以外の部分において互いに連通しているような場合もあるが、本発明においては、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の切断面以外の部分において互いに連通しているか否かについて考慮せず、写真上に表れた気泡膜断面のみに基づいて気泡形態を判断し、写真上に表れた気泡膜断面により完全に囲まれた一個の空隙部分を一個の気泡として判断する。
【0054】
但し、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の表面と、この表面から(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の厚み方向に厚みの5%だけ内側に入った部分との間に存在する気泡は対象外とする。なお、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の厚み方向とは、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の表面に直交する方向をいう。
【0055】
又、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の見掛け密度は、低いと、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の機械的強度が低下することがあり、高いと、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の軽量性が低下することがあるので、0.02〜0.083g/cm3が好ましく、0.03〜0.071g/cm3がより好ましい。なお、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の見掛け密度は、JIS K7222に準拠して測定されたものをいう。
【0056】
更に、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体は、その最大圧縮強度が0.4MPa以上で、150℃での3時間体積収縮率が5%以下であることが好ましい。なお、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の最大圧縮強度は、JIS K7220に準拠して測定されたものをいう。
【0057】
又、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の150℃での3時間体積収縮率は、下記の要領で測定されたものをいう。(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体から任意の大きさの直方体状の試験片を切り出し、この試験片の見掛け上の体積V0を測定する。次に、試験片を150℃にて3時間に亘って加熱した後、試験片の見掛け上の体積V1を測定し、下記式に基づいて算出されたものをいう。
150℃での3時間体積収縮率=100×(V0−V1)/V0
【発明の効果】
【0058】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の製造方法は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー95〜99重量%及び水溶性モノマー1〜5重量%を含有するモノマー混合物と、重合開始剤とを含有する重合性組成物に光照射して上記重合性組成物の転化率が4〜30%となるまで塊状重合させる工程と、上記重合性組成物の転化率が4〜30%となった時点で上記重合性組成物に該重合性組成物100重量部に対して水溶性熱分解有機物1〜20重量部を添加して分散させた後に上記重合性組成物を転化率99.5%以上となるまで塊状重合させる工程とを有することを特徴とし、水溶性熱分解有機物を重合性組成物中に添加する際の重合性組成物の転化率を4〜30%として、水溶性熱分解有機物の添加時の重合性組成物の粘度を調整して、水溶性熱分解有機物が重合性組成物において沈降することなく均一に分散させることができるようにしている。
【0059】
従って、疎水性である重合性組成物と、水溶性である水溶性熱分解有機物との相溶性を向上させて両者を均一に分散させるために添加している水溶性モノマーの量を低減することができ、得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂は優れた耐水性を有している。
【0060】
そして、水溶性熱分解有機物は優れた発泡性を発揮するので、これを含有している(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反は優れた発泡性を具備し、この発泡原反を発泡させることによって、略均一な気泡径を有する気泡が均一に形成されてなる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体を得ることができる。
【0061】
又、上記(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の製造方法において、水溶性熱分解有機物を重合性組成物に水と共に添加する場合には、重合性組成物中に水溶性熱分解有機物をより均一に分散させることができると共に、水自体も発泡剤として作用し、水と水溶性熱分解有機物とによって二段階に発泡させ、(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の急激な発泡を抑えて、得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の気泡をより均一で且つ微細なものとすることができる。
【0062】
更に、上記(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の製造方法において、重合性組成物に紫外線を照射強度0.005〜1mW/cm2で照射して転化率4〜30%となるまで塊状重合させる場合には、モノマー混合物を重合させて得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂を高分子量化することができ、得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を発泡させて得られる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の機械的強度をより優れたものとすることができる。
【0063】
又、上記(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の製造方法において、水溶性熱分解有機物を添加した重合性組成物を30〜80℃に加熱して塊状重合させる場合には、水溶性熱分解有機物を重合性組成物中において沈降させることなく均一に分散させた状態で重合性組成物を塊状重合させることができ、水溶性熱分解有機物が均一に分散した高分子量の(メタ)アクリル酸エステル樹脂からなる発泡原反を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)
メタクリル酸メチル82重量部、アクリル酸n−ブチル8重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル8重量部及びアクリル酸(20℃、1.01×105Pa下における水に対する溶解性:1g/ミリリットル以上)2重量部からなるモノマー混合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製 商品名「イルガキュア651」)0.1重量部、並びに、フュームドシリカ(日本アエロジル社製 商品名「PE200」)2重量部をディスパーに供給し撹拌して重合用組成物を作製した。
【0066】
次に、得られた重合性組成物を25℃に維持した上で、重合性組成物にブラックライトランプを用いて照射強度0.1mW/cm2にて紫外線を90分間に亘って連続的に照射して、重合性組成物を塊状重合させた。重合性組成物に紫外線を90分間照射した後の重合性組成物の転化率を測定したところ、重合性組成物の転化率は14%であった。
【0067】
しかる後、重合性組成物中に、この重合性組成物100重量部に対して濃度50重量%の尿素水10重量部を添加してディスパーで1時間に亘って撹拌して均一に分散させた。なお、尿素は、23℃、1.01×105Pa下における水に対する溶解性が1.1g/ミリリットルで、分解温度が160℃である。
【0068】
縦170mm×横170mm×高さ2mmの直方体形状の空間部を有する耐熱ガラス製の型を用意し、この型の空間部内に重合性組成物を供給した。そして、重合性組成物にブラックライトランプを用いて照射強度0.04mW/cm2の紫外線を240分間に亘って連続的に照射した。
【0069】
次に、重合性組成物をホットプレートを用いて40℃に加熱して重合性組成物を240分間に亘って更に塊状重合させてメタアクリル酸エステル系樹脂発泡原反を得た。なお、重合が終了した時点における重合性組成物の転化率は99.8%であった。
【0070】
得られたメタクリル酸エステル系樹脂発泡原反を210℃に5分間に亘って加熱して発泡させてメタクリル酸エステル系樹脂発泡体を得た。
【0071】
(実施例2)
メタクリル酸メチル58重量部、アクリル酸n−ブチル20重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル20重量部及びアクリルアミド(20℃、1.01×105Pa下における水に対する溶解性:1.9g/ミリリットル)2重量部をモノマー混合物として用いたこと以外は実施例1と同様にして、メタクリル酸エステル系樹脂発泡原反及びメタクリル酸エステル系樹脂発泡体を得た。
【0072】
なお、重合性組成物に尿素水を添加する前に紫外線を90分間照射した後の重合性組成物の転化率を測定したところ、重合性組成物の転化率は18%であった。重合性組成物に尿素水を添加し40℃に加熱して重合が完了した後の重合性組成物の転化率は99.8%であった。
【0073】
(実施例3)
尿素水10重量部の代わりに尿素5重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、メタクリル酸エステル系樹脂発泡原反及びメタクリル酸エステル系樹脂発泡体を得た。
【0074】
なお、重合性組成物に尿素を添加する前に紫外線を90分間照射した後の重合性組成物の転化率を測定したところ、重合性組成物の転化率は14%であった。重合性組成物に尿素を添加し40℃に加熱して重合が完了した後の重合性組成物の転化率は99.8%であった。
【0075】
(比較例1)
メタクリル酸メチル69重量部、アクリル酸n−ブチル8重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル8重量部及びアクリル酸(20℃、1.01×105Pa下における水に対する溶解性:1g/ミリリットル以上)15重量部をモノマー混合物として用いたこと以外は実施例1と同様にして、メタクリル酸エステル系樹脂発泡原反及びメタクリル酸エステル系樹脂発泡体を得た。
【0076】
なお、重合性組成物に尿素水を添加する前に紫外線を90分間照射した後の重合性組成物の転化率を測定したところ、重合性組成物の転化率は20%であった。重合性組成物に尿素水を添加し40℃に加熱して重合が完了した後の重合性組成物の転化率は99.7%であった。
【0077】
(比較例2)
尿素水の代わりにアゾジカルボンアミドを用いたこと以外は実施例1と同様にしてメタクリル酸エステル系樹脂発泡原反及びメタクリル酸エステル系樹脂発泡体を得た。なお、アゾジカルボンアミドは、23℃、1.01×105Pa下における水に対する溶解性が0.01g/ミリリットル以下で、分解温度が195〜202℃である。
【0078】
重合性組成物にアゾジカルボンアミドを添加する前に紫外線を90分間照射した後の重合性組成物の転化率を測定したところ、重合性組成物の転化率は14%であった。重合性組成物にアゾジカルボンアミドを添加し40℃に加熱して重合が完了した後の重合性組成物の転化率は99.8%であった。
【0079】
得られたメタクリル酸エステル系樹脂発泡体の見掛け密度、最大圧縮強度、150℃での3時間体積収縮率及び平均気泡径を上述の要領で、熱水重量変化率を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0080】
(熱水重量変化率)
得られたメタクリル酸エステル系樹脂発泡体を80℃の水に48時間に亘って浸漬した後にメタクリル酸エステル系樹脂発泡体の重量C(g)を測定した。次に、メタクリル酸エステル系樹脂発泡体を125℃で3時間に亘って乾燥させて後のメタクリル酸エステル系樹脂発泡体の重量D(g)を測定し、下記式に基づいて熱水重量変化率を算出した。熱水重量変化率が大きい程、耐水性が高いことを意味する。
熱水重量変化率=重量D/重量C
【0081】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステルモノマー95〜99重量%及び水溶性モノマー1〜5重量%を含有するモノマー混合物と、重合開始剤とを含有する重合性組成物に光照射して上記重合性組成物の転化率が4〜30%となるまで塊状重合させる工程と、上記重合性組成物の転化率が4〜30%となった時点で上記重合性組成物に該重合性組成物100重量部に対して水溶性熱分解有機物1〜20重量部を添加して分散させた後に上記重合性組成物を転化率99.5%以上となるまで塊状重合させる工程とを有することを特徴とする(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の製造方法。
【請求項2】
水溶性熱分解有機物を重合性組成物に水と共に添加することを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の製造方法。
【請求項3】
重合性組成物は、モノマー混合物100重量部に対して重合開始剤を0.005〜0.2重量部含有していることを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の製造方法。
【請求項4】
重合性組成物に紫外線を照射強度0.005〜1mW/cm2で照射して転化率4〜30%となるまで塊状重合させることを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の製造方法。
【請求項5】
水溶性熱分解有機物を添加した重合性組成物を30〜80℃に加熱して塊状重合させることを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載された(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を発泡させることを特徴とする(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体の製造方法。
【請求項7】
(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡原反を発泡させてなる(メタ)アクリル酸エステル樹脂発泡体。

【公開番号】特開2010−18647(P2010−18647A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177758(P2008−177758)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】