説明

(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物を含有する光硬化性組成物およびその硬化方法

【課題】紫外可視領域の光線により容易に硬化する光硬化性組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で示されるナフタレン誘導体及び光ラジカル重合開始剤を含有 する光硬化性組成物において、光ラジカル重合開始剤が、380nm以上の波長に吸収 を有する光ラジカル重合開始剤であることを特徴とする光硬化性組成物。
【化1】


{式(1)において、mは1又は2の整数を表し、R1は水素原子又はメチル基を表し、 Xは水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表す。また、 ナフタレン環上の置換基は、1〜8位置のいずれかの2つ又は3つの位置を占める。}

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物及び光ラジカル重合開始剤を含有する光硬化性組成物並びにその硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族アクリレートの重合物は脂環式アクリレートの重合物に比較し、耐熱性に富み、かつ屈折率が高い等の優れた物性を示すことが知られており、芳香族として例えばフェニル基を有するフェニルアクリレート化合物についていくつかの例が知られている。(特許文献1〜3参照)一方、ベンゼン骨格よりさらに高い耐熱性、高屈折率が期待されるナフタレン骨格を有するナフチルアクリレート化合物について、紫外線や赤外線を用いて硬化する方法が知られている。(特許文献4参照)
【特許文献1】特開平10-287823
【特許文献2】特公平06-049666
【特許文献3】特開平09-020721
【特許文献4】特開2001-276587
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献4に記載されたナフチルアクリレート化合物の重合方法は、波長172nmの紫外光を用いたものであるため、1μm程度の薄膜の硬化には効果的であっても、100μm以上の厚膜の硬化においては、紫外光が表面で吸収されて膜内部の硬化が遅くなるという欠点があり、一方赤外線を用いた硬化方法では、照射時間が10分以上必要となり、迅速な硬化目的には適さないといった欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記欠点を排除した技術を提供すべく、(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物の構造と光硬化性について鋭意検討した結果、(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物と380nm以上の波長に吸収を有する光ラジカル重合開始剤を含む組成物が、組成物の厚みに関係なく、光照射により容易に光硬化することを見いだし、本発明を完成させた。
【0005】
即ち、本発明は、以下に記載の骨子を要旨とするものである。
(ア) 下記式(1)で示されるナフタレン誘導体及び光ラジカル重合開始剤を含有する光硬化性組成物において、光ラジカル重合開始剤が、380nm以上の波長に吸収を有する光ラジカル重合開始剤であることを特徴とする光硬化性組成物。
【0006】
【化1】

【0007】
{式(1)において、mは1又は2の整数を表し、R1は水素原子又はメチル基を表し、 Xは水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表す。また、 ナフタレン環上の置換基は、1〜8位置のいずれかの2つ又は3つの位置を占める。}
【0008】
(イ) 下記式(2)で示されるナフタレン誘導体及び光ラジカル重合開始剤を含有する光硬化性組成物において、光ラジカル重合開始剤が、380nm以上の波長に吸収を有する光ラジカル重合開始剤であることを特徴とする光硬化性組成物。
【0009】
【化2】

【0010】
{式(2)において、R1は水素原子又はメチル基を表し、Xは水素原子、アルキル基、 アルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表す。また、ナフタレン環上の置換基は、 1〜8位置のいずれかの3つの位置を占める。}
【0011】
(ウ) 下記式(3)で示されるナフタレン誘導体及び光ラジカル重合開始剤を含有する光硬化性組成物において、光ラジカル重合開始剤が、380nm以上の波長に吸収を有する光ラジカル重合開始剤であることを特徴とする光硬化性組成物。
【0012】
【化3】

【0013】
{式(3)において、R1は水素原子又はメチル基を表し、Xは水素原子、アルキル基、 アルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表す。また、ナフタレン環上の置換基Xは 、1〜8位置のうち1位及び4位を除くいずれかの位置を占める。}
【0014】
(エ) (ア)乃至(ウ)のいずれかに記載の光硬化性組成物において、式(1)乃至(3)のいずれかに記載のナフタレン誘導体以外のラジカル重合性モノマーをさらに含有する光硬化性組成物。
【0015】
(オ)(ア)乃至(エ)のいずれかに記載の光硬化性組成物に、波長範囲380〜500nmの光線を照射することを特徴とする光硬化性組成物の硬化方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のナフタレン誘導体及び光ラジカル重合開始剤を含有する光硬化性組成物は、波長範囲380〜500nmの光線の照射により容易に硬化し、重合物を与える。このようにして得られた(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物をその組成物のひとつとして含むフィルム、シートもしくは塊状物は、その構造から、高い耐熱性、高屈折率、高硬度、高光沢率、高い疎水性等が期待できる工業的に有用な組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の光硬化性組成物は、上記式(1)で示されるナフタレン誘導体及び光ラジカル開始剤を含有する光硬化性組成物である。上記式(1)で示されるナフタレン誘導体(以下、(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物ともいう)において、mは1又は2の整数を表し、R1は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表す。上記式(1)で示されるナフタレン誘導体において、m=2である(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ有するものが好ましく、このものは上記式(2)で示される。
【0018】
上記式(1)又は(2)で示されるナフタレン誘導体において、ナフタレン環上の置換基は、1〜8の位置のいずれかの2つの位置(m=1の場合)又は3つの位置(m=2の場合)を占める。上記式(1)又は上記式(2)で示されるナフタレン誘導体において、2つの(メタ)アクリロイルオキシ基は任意の位置をとりうるが、ナフタレン誘導体の得やすさや、得られる重合物の特性から、好ましい置換基の位置としては、1,4位、1,6位、2,7位の組合せがあげられる。特に好ましくは、1,4位の組合せであり、このものは上記式(3)で示される。
【0019】
上記式(1)乃至(3)のいずれかに示されるナフタレン誘導体としては、次のものを挙げることが出来る。すなわち、1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、1,6−ジアクリロイルオキシナフタレン、2,7−ジアクリロイルオキシナフタレン、2,6−ジアクリロイルオキシナフタレン、1,5−ジアクリロイルオキシナフタレン、1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、1,6−ジメタクリロイルオキシナフタレン、2,7−ジメタクリロイルオキシナフタレン、2,6−ジメタクリロイルオキシナフタレン、1,5−ジメタクリロイルオキシナフタレン、2−メチル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、2−クロル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、2−メトキシ−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、1−アクリロイルオキシナフタレン、2−アクリロイルオキシナフタレン、1−メタクリロイルオキシナフタレン、2−メタクリロイルオキシナフタレン、4−メトキシ−1−アクリロイルオキシナフタレン、4−メトキシ−1−メタクリロイルオキシナフタレン等である。
【0020】
本発明のナフタレン誘導体、すなわち(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物は、塩基性化合物の存在下、相当するヒドロキシナフタレン化合物を塩化アクリロイルもしくは塩化メタクリロイルと反応させることにより得ることが出来る。
【0021】
原料となるヒドロキシナフタレン化合物としては、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1−ナフトール、2−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、4−エトキシ−1−ナフトールが挙げられる。
【0022】
塩基性化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピリジン等の有機アミン化合物が挙げられる。反応は通常溶媒の存在下行われる。使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジクロルメタン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒が用いられる。
【0023】
塩化アクリロイルもしくは塩化メタアクリロイルはヒドロキシナフタレン化合物に対して、2倍モルから3倍モル添加する。塩基性化合物の添加量はヒドロキシナフタレン化合物に対して2倍モルから3倍モルが望ましい。2倍モル以下では、未反応のヒドロキシナフタレン化合物が残留し、3倍モル以上では、生成物の単離収率が下がり好ましくない。反応温度は、0℃以上,80℃以下が望ましい。0℃以下では反応が遅く、80℃以上では副反応が起きて反応が汚くなり好ましくない。通常、室温で問題なく反応は進行する。
【0024】
反応の進行に伴い、塩基性化合物の塩酸塩が析出する。水溶性ケトンまたは水溶性エーテルを溶媒として用いる場合は、析出した塩基性化合物の塩酸塩を水を加えて溶解させ、ついでさらに水を加えることにより生成物が析出させる。析出物をろ過・乾燥し、相当する(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物を得ることが出来る。また、反応溶媒として水不溶性の溶媒を用いる場合は、反応終了後水を加えて塩基性化合物の塩酸塩を溶かして2層となし、分液操作により水層を分離する。次いで有機層を濃縮し、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の貧溶媒を加えて、生成物を析出させる。
【0025】
かくして得られた(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物は、光ラジカル重合開始剤を加えることにより、光硬化性組成物となすことができる。本発明において、光ラジカル重合開始剤としては、380nm以上の波長に吸収を有する光ラジカル重合開始剤が好ましい。ここで、380nm以上の波長に吸収を有する光ラジカル重合開始剤とは、紫外可視分光光度計による吸光度の測定で、波長範囲380〜500nmの領域に吸収を有し、且つ、その吸収ピークにおける吸光度が0.02以上を示すものをいう。(測定条件;溶媒:アセトニトリル、該開始剤の濃度:10ppm、透過セル長:1cm)
【0026】
具体的な光ラジカル重合開始剤としては、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が好適に用いることが出来る。例としてはチバ・スペシャリティ社製の商品名DAROCUR TPOで知られるトリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、やはり商品名IRGACURE819で知られるビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド挙げられる。さらには、やはりチバ・スペシャリティ社製の商品名IRGACURE784で知られるビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムも有効である。さらには、ナフタセンキノン化合物である6,12−(ビス)トリメチルシリルオキシ−1,11−ナフタセンキノン化合物も使用可能である。これらの光ラジカル重合開始剤のうち、好ましくは、商品名IRGACURE819で知られるビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドである。
【0027】
本発明の光硬化性組成物において、上記のナフタレン誘導体、すなわち(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物を単独モノマーとして用いるだけでなく、これ以外の通常のラジカル重合性モノマーを加えて共重合性の光硬化組成物とすることも出来る。このラジカル重合性モノマーとしては、例えば、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートポリエステルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、イミドアクリレートさらには、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等が挙げられる。
【0028】
これらの重合性モノマーに対する(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物の添加比率は、(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物の溶解度にもよるが、通常10%から50%の範囲である。10%以下であれば、硬化物の耐熱性、屈折率などの性能が低くなり、また50%以上の場合は塗布性が低下するので好ましくない。光ラジカル重合開始剤の添加濃度は、ナフタレン誘導体および必要に応じて併用されるラジカル重合性モノマーの合計重量に対して0.1〜5重量%の範囲から選ばれ、好ましくは0.3〜1重量%である。0.1重量%より少ないと硬化速度が遅く、5重量%より多いと硬化物の物性が悪化するので好ましくない。
【0029】
本発明の光硬化性組成物は、使用する光ラジカル重合開始剤の吸収波長に相当する波長の光を含む光線を照射することで容易に硬化させることができる。好ましい波長範囲は、380〜500nmである。照射光の波長範囲がこの範囲を外れると、充分な硬化ができず好ましくない。具体的には、この波長範囲の光線を照射できるランプ等の光源を用いて硬化させることができる。具体的には、UV−LED,青色LED,白色LED等が挙げられる。そのほか、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプも使用可能であるが、光硬化における操作性の向上や硬化物の特性改善のため吸収フィルター等で波長範囲を調整してもよい。
【0030】
(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物単独もしくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物とラジカル重合性モノマーの混合物に上記挙げたアシルホスフィンオキサド化合物等の光ラジカル重合性開始剤を加えた組成物を含む組成物は、上記に述べたランプ等を照射することにより、塊状でもフィルム状でも容易に硬化させることが可能である。例えば、フィルム或いは塗布膜の作成は、上記調整した光硬化組成物を、ポリエステルフィルム、アルミ箔、金属板等の基板上にバーコーターを用いて塗布し,膜厚12ミクロン程度の塗膜を作ることにより行う。塊としては、厚さ1mmから10mm程度の厚みの組成物の硬化が可能である。
【0031】
このようにして得られた、(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物をその組成物のひとつとして含むフィルム、シートもしくは塊状物は、その構造から、高い耐熱性、高屈折率、高硬度、高光沢性、高い疎水性等が期待できる工業的に有用なものである。
【0032】
下記の実施例により本発明を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。特記しない限り、すべての部および百分率は重量%である。
「実施例」
【0033】
「合成例1」
「1,6−ジアクリロイルオキシナフタレンの合成」
温度計、攪拌機を備えた500mlの三口フラスコ中、1,6−ナフトヒドロキノン 32g(0.2モル)をアセトン150mlに溶解し次いで、塩化アクリロイル45g(0.5モル)のアセトン40ml溶液を加えた。次に該溶液を水で冷却しつつトリエチルアミン50g(0.5モル)の50mlアセトン溶液を滴下した。滴下と同時に白煙が生じ、白い結晶が沈殿した。トリエチルアミン溶液を全量加えた後、反応混合物を30分間攪拌し、その後、水50mlを加えて白い沈殿を溶解させ均一溶液とした。さらに水100mlを加えるとカーキ色の油状物が沈殿したので、この油状物を塩化メチレン100mlに溶解し、100mlの水で3回水洗いした後、無水硫酸ナトリウムを加え、一日脱水乾燥した。その後、硫酸ナトリウムの結晶を濾別して除き、n−ヘキサン200ml加えた後、塩化メチレン/n−ヘキサン溶液を濃縮し、析出した薄黄色の結晶を濾過・乾燥し1,6−ジアクリロイルオキシナフタレンの結晶を23.1g(0.086モル)得た。単離収率は43モル%であった。
【0034】
融点: 45−47℃
1H−NMR(CDCl3,270MHz): δ6.06(1H,d,J=8.5Hz),
6.12(1H,d,J=8.5Hz),6.39(1H,dd,J1=8.5Hz,J2=17Hz),6.48(1H,dd、J1=8.5Hz,J2=17Hz),6.67(1H,d,J=17Hz),6.74(1H,d,J=17Hz),7.25−7.35(2H,m),7.50(1H,t,J=7Hz),7.69(1H,d,J=2.5Hz),7.74(1H,d.J=7Hz),7.92(1H,d,J=7Hz)
IR(KBr,cm-1): 1740,1630,1600,1508,1428,1398,1362,1290,1245,1208,1140,1052,1029,990,900,816,796,780,750
【0035】
「合成例2」
「1,4−ジアクリロイルオキシナフタレンの合成」
温度計、攪拌機を備えた300mlの三口フラスコ中、1,4−ナフトヒドロキノン 16g(0.1モル)をアセトン60mlに溶解し、ついで、塩化アクリロイル23g(0.25モル)のアセトン70ml溶液を加えた。次に、該溶液を水で冷却し、トリエチルアミン25g(0.25モル)の50mlアセトン溶液を滴下した。滴下と同時に白煙が生じ、白い結晶が沈殿してきた。トリエチルアミン溶液を全量加えた後、反応混合物を水中30分間攪拌し、その後、水60mlを加えて白い沈殿を溶解させ均一溶液とした。さらに水100mlを加えると白い沈殿が生じたので、この沈殿物を吸引濾過・水洗い、乾燥して1,4−ジアクリロイルオキシナフタレンの無色の結晶を19.1g(0.071モル)得た。単離収率は71モル%であった。
【0036】
融点: 92−93℃
1H−NMR(CDCl3,270MHz): δ6.11(2H,d,J=8.4Hz),6.48(2H,dd,J1=8.4Hz,J2=17Hz),6.74(2H,d,J=17Hz),7.31(2H,s),7.54(2H,dt,J1=2.5Hz,J2=7Hz),7.88(2H,dd,J1=2.5Hz,J2=7Hz)
IR(KBr,cm-1): 1738,1630,1400,1382,1216,1160,1132,1050,992,900,800,770,750
【0037】
「合成例3」
「1−アクリロイルオキシナフタレンの合成」
温度計、攪拌機を備えた300mlの三口フラスコ中、1−ナフトール14.4g(0.1モル)をアセトン70mlに溶解し、ついで、塩化アクリロイル10.8g(0.12モル)のアセトン20ml溶液を加えた。次に、該溶液を水で冷却し、ここにトリエチルアミン12g(0.12モル)の12mlアセトン溶液を滴下した。 滴下と同時に白煙が生じ、白い結晶が沈殿した。トリエチルアミン溶液を全量加えた後、反応混合物を水中で30分間攪拌し、その後、水50mlを加えて白い沈殿を溶解し均一溶液とした。さらに水100mlを加えるとカーキ色の油状物が沈殿したので、この油状物を塩化メチレン30mlに溶解し、40mlの水で2回水洗いした後、無水硫酸ナトリウムを加え、一日脱水乾燥した。 翌日、硫酸ナトリウムの結晶を濾別して除き、n−ヘキサン80ml加えた後、−10℃の冷凍庫で保存した。3日後 薄黄色の結晶が析出するので、濾過・乾燥し、1−アクリロイルオキシナフタレンの結晶を7.1g(0.036モル)得た。単離収率 36モル%であった。
【0038】
融点: 27−29℃
1H−NMR(CDCl3,270MHz): δ6.10(1H,d、J=8Hz),
6.48(1H,dd,J1=8Hz,J2=17Hz),6.74(1H,d,J=
17Hz),7.28(1H,d,J=6Hz),7.40−7.60(3H,m),
7.77(1H,d,J=6Hz),7.85−7.96(2H,m)
IR(KBr,cm-1): 3055,1740,1595,1504,1395,1382,1249,1220,1142,1075,976,906,790,762
【実施例1】
【0039】
「1,6−ジアクリロイルオキシナフタレン単独の薄膜光硬化(395nm)」
合成例1で得られた1,6−ジアクリロイルオキシナフタレンを100部取り、開始剤としてチバ・スペシャリティ社製のirgacure819を1部加えて混合し、60℃のオイルバス中に浸漬して融解した。得られた融液を冷えないうちにポリエステルフィルム(東レ製ルミラーS)上に、バーコーターを用いて膜厚が12ミクロンとなるように塗布し、紫外LEDランプ(中心波長 395nm、照射強度 3mw/cm2)を用いて窒素雰囲気下に光照射した。照射したフィルムの表面を親指で押しつける指触テストを行ったところ、フィルムのべたつきがなくなるタックフリータイムは7秒であった。なお、本実施例で用いた光ラジカル重合開始剤(irgacure819)の紫外可視吸収スペクトルを「図1」に示す。(測定条件 溶媒:アセトニトリル、 濃度:10ppm、透過セル長:1cm、島津製作所製 紫外可視分光光度計UV−2200、以下同じ)
【0040】
「比較例1」
「1,6−ジアクリロイルオキシナフタレンの薄膜単独光硬化(366nm)」
1,6−ジアクリロイルオキシナフタレンを100部取り、開始剤としてチバ・スペシャリティ社製のirgacure819を1部加えて混合し、60℃のオイルバス中に浸漬して融解した。得られた融液を冷えないうちにポリエステルフィルム(東レ製ルミラーS)上に、バーコーターを用いて膜厚が12ミクロンとなるように塗布し、高圧水銀ランプを用いて窒素雰囲気下に光照射した。照射したフィルムの表面を親指で押しつける指触テストを行ったところ、フィルムのべたつきがなくなるタックフリータイムは60秒であった。
【0041】
「比較例2」
「1,6−ジアクリロイルオキシナフタレンの薄膜単独光硬化(366nm)」
1,6−ジアクリロイルオキシナフタレンを100部取り、開始剤としてチバ・スペシャリティ社製のirgacure907を1部加えて混合し、60℃のオイルバス中に浸漬して融解した。得られた融液を冷えないうちにポリエステルフィルム(東レ製ルミラーS)上に、バーコーターを用いて膜厚が12ミクロンとなるように塗布し、高圧水銀ランプを用いて光照射した。 照射したフィルムの表面を親指で押しつける指触テストを行ったが、5分照射後においても硬化しなかった。なお、本比較例で用いた光ラジカル重合開始剤(irgacure907)の紫外可視吸収スペクトルを「図2」に示す。
【実施例2】
【0042】
「1,6−ジアクリロイルオキシナフタレン単独の厚膜光硬化(395nm)」
合成例1で得られた1,6−ジアクリロイルオキシナフタレン 100部取り、開始剤として チバ・スペシャリティ社製のirgacure819を0.5部加えて混合し、60℃のオイルバス中に浸漬して融解した。得られた融液をホットプレート上で深さが1mmになるように、ガラス製のポッドに仕込み、その上から窒素雰囲気下UV−LED(中心波長 395nm、照射強度 3mw/cm2)を用いて光照射した。その結果、厚さ1mmの組成物は30秒後には硬化していた。
【0043】
「比較例3」
「1,6−ジアクリロイルオキシナフタレンの単独の厚膜光硬化(366nm)」
合成例1で得られた1,6−ジアクリロイルオキシナフタレンを100部取り、開始剤として チバ・スペシャリティ社製のirgacure 819を0.5部加えて混合し、60℃のオイルバス中に浸漬して融解した。得られた融液をホットプレート上で深さが1mmになるように、ガラス製のポッドに仕込み、その上から高圧水銀ランプを用いて光照射した。その結果、厚さ1mmの組成物は5分間照射しても硬化しなかった。
【0044】
「比較例4」
「1,6−ジアクリロイルオキシナフタレンの単独の厚膜光硬化(366nm)」
合成例1で得られた1,6−ジアクリロイルオキシナフタレンを100部取り、開始剤として チバ・スペシャリティ社製のirgacure 184を1部加えて混合し、60℃のオイルバス中に浸漬して融解した。得られた融液をホットプレート上で深さが1mmになるように、ガラス製のポッドに仕込み、その上から高圧水銀ランプを用いて光照射した。その結果、厚さ1mmの組成物は10分間照射しても硬化しなかった。
【0045】
「実施例3−5」
「トリメチロールプロパントリアクリレートとアクリロイルオキシナフタレン化合物の共光硬化(395nm)」
合成例1−3で得られたアクリロイルオキシナフタレン化合物を10部取り、トリメチロールプロパントリアクリレート100部に溶解した。ついで、チバ・スペシャリティ社製のirgacure819を0.5部加え、深さが1mmになるように、ガラス製のポッドに仕込み、その上からUV−LED(中心波長 395nm、照射強度 3mw/cm2)を用いて光照射した。結果は表1にまとめて示す。
【0046】
「比較例5−7」
「トリメチロールプロパントリアクリレートとアクリロイルオキシナフタレン化合物の共光硬化(366nm)」
ランプを366nmのものとする以外は、実施例3−5と同様にして光照射した。結果は、表1にまとめて示す。
【0047】
「比較例8−10」
「トリメチロールプロパントリアクリレートとアクリロイルオキシナフタレン化合物の共光硬化(366nm)」
ランプを366nmのものとし、開始剤をirgacure184とする以外は、実施例3−5と同様にして光照射した。結果は、表1にまとめて示す。なお、本比較例で用いた光ラジカル重合開始剤(irgacure184)の紫外可視吸収スペクトルを「図3」に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
(TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート)
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例1で用いた光ラジカル重合開始剤(irgacure819)の紫外可視吸収スペクトル図である。
【図2】比較例2で用いた光ラジカル重合開始剤(irgacure907)の紫外可視吸収スペクトル図である。
【図3】比較例8で用いた光ラジカル重合開始剤(irgacure184)の紫外可視吸収スペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるナフタレン誘導体及び光ラジカル重合開始剤を含有する光硬化性組成物において、光ラジカル重合開始剤が、380nm以上の波長に吸収を有する光ラジカル重合開始剤であることを特徴とする光硬化性組成物。
【化1】

{式(1)において、mは1又は2の整数を表し、R1は水素原子又はメチル基を表し、 Xは水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表す。また、 ナフタレン環上の置換基は、1〜8位置のいずれかの2つ又は3つの位置を占める。}
【請求項2】
下記式(2)で示されるナフタレン誘導体及び光ラジカル重合開始剤を含有する光硬化性組成物において、光ラジカル重合開始剤が、380nm以上の波長に吸収を有する光ラジカル重合開始剤であることを特徴とする光硬化性組成物。
【化2】

{式(2)において、R1は水素原子又はメチル基を表し、Xは水素原子、アルキル基 、アルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表す。また、ナフタレン環上の置換基は 、1〜8位置のいずれかの3つの位置を占める。}
【請求項3】
下記式(3)で示されるナフタレン誘導体及び光ラジカル重合開始剤を含有する光硬化性組成物において、光ラジカル重合開始剤が、380nm以上の波長に吸収を有する光ラジカル重合開始剤であることを特徴とする光硬化性組成物。
【化3】

{式(3)において、R1は水素原子又はメチル基を表し、Xは水素原子、アルキル基、 アルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表す。また、ナフタレン環上の置換基Xは 、1〜8位置のうち1位及び4位を除くいずれかの位置を占める。}
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光硬化性組成物において、式(1)乃至(3)のいずれかに記載のナフタレン誘導体以外のラジカル重合性モノマーをさらに含有する光硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光硬化性組成物に、波長範囲380〜500nmの光線を照射することを特徴とする光硬化性組成物の硬化方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−81682(P2008−81682A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266076(P2006−266076)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000199795)川崎化成工業株式会社 (133)
【Fターム(参考)】