説明

(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体およびその製造方法

【課題】(メタ)アクリロイル基を有する新規なロジン誘導体を提供すること。
【解決手段】一般式(1):Ro[−COO−CH(CH)−O−R−A](式(1)中、Roはロジン類に由来する環式炭化水素残基を、またRは炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のオキシアルキレン基および炭素数6〜11の芳香族基からなる群より選ばれる1種を、またAは(メタ)アクリロイル基を、またXは1〜3の整数を表す)で表される(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体。
なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリロイル基を有する新規なロジン誘導体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリロイル基を含有するロジン誘導体は、樹脂酸に由来する立体的な環状骨格と、重合性の官能基を分子内に有しているため、工業用材料としての有用性が高い。当該ロジン誘導体としては、例えば、安定化ロジンとエピハロヒドリンとを塩基性触媒の存在下に反応させてなるグリシジルエステル化合物に、更に(メタ)アクリル酸を反応させた(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体が公知であり、感光性導電性ペースト等として利用できることが知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−248307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、(メタ)アクリロイル基を有する新規なロジン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、下記一般式(1)で示す(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体(以下、単にロジン誘導体ということがある)が新規であり、かつ工業的にも容易に製造できることを見出した。すなわち、本発明は;
【0006】
1.一般式(1):Ro[−COO−CH(CH)−O−R−A](式(1)中、Roはロジン類に由来する環式炭化水素残基を、またRは炭素数2〜20のアルキレン基および炭素数6〜11の芳香族基からなる群より選ばれる1種を、またAは(メタ)アクリロイル基を、またXは1〜3の整数を表す)で表される(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体。
【0007】
2. 前記一般式(1)中のRoが、テトラヒドロアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、アクリロピマル酸およびアクリロピマル酸の水素化物からなる群より選ばれる1種の樹脂酸の環式炭化水素残基である、前記1.の(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体。
【0008】
3.前記一般式(1)が、Ro[−COO−CH(CH)−O−(CO)−A]である、前記1.または2.の(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体。
【0009】
4.ロジン類と、一般式(2):CH=CH−O−R−A(式(2)中、Rは炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のオキシアルキレン基および炭素数6〜11の芳香族基からなる群より選ばれる1種を、またAは(メタ)アクリロイル基を表す)で表される(メタ)アクリロイル基含有モノビニルエーテル化合物とを、ヘミアセタールエステル化反応させて得られる(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体。
【0010】
5.前記ロジン類が、水添ロジンまたはα,β不飽和カルボン酸変性ロジンである、前記4.の(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体。
【0011】
6.前記一般式(2)で表される(メタ)アクリロイル基含有ビニルエーテル化合物が、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、前記4.または5.の(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体。
【0012】
7.ロジン類と、一般式(2):CH=CH−O−R−A(式(2)中、Rは炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のオキシアルキレン基、炭素数6〜11の芳香族基から選ばれる1種を、またAは(メタ)アクリロイル基を表す)で表される(メタ)アクリロイル基含有モノビニルエーテル化合物とを、ヘミアセタールエステル化反応させることを特徴とする、(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体の製造方法。
【0013】
8.前記ロジン類が、水添ロジンまたはα,β不飽和カルボン酸変性ロジンである、前記7.の製造方法。
【0014】
9.前記一般式(2)で表される(メタ)アクリロイル基含有ビニルエーテル化合物が、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、前記7.または8.の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のロジン誘導体は、分子内に(メタ)アクリロイル基を有していることから、例えば、他の重合性単量体と共に或いは単独で、各種(共)重合体の原料に供しうる。また、該ロジン誘導体は、ロジン類を原料とする従来公知の用途、例えばサイズ剤、粘着付与剤、印刷インキ、道路標示剤、合成ゴムの乳化剤、ハンダ付けフラックス、感光性導電ペースト等の各種の用途において利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のロジン誘導体は、一般式(1):Ro[−COO−CH(CH)−O−R−A]で表される。
【0017】
前記一般式(1)中、Roは、ロジン類に由来する環式炭化水素残基を表す。ここに「ロジン類に由来する環式炭化水素残基」とは、原料として用いるロジン類に含まれる各種樹脂酸類が有する環式炭化水素骨格において、当該骨格上に存在するカルボキシル基の一つ以上を除いた残りの環式炭化水素基をいう。具体的には、例えば、該樹脂酸類が後述のアクリロピマル酸の場合であれば、前記一般式(1)中のRoとしては、一般式(i):
【0018】
【化1】

【0019】
のような炭化水素基(1級COOHと2級COOHを除いた残りの構造)や、一般式(ii);
【0020】
【化2】

【0021】
のようにカルボキシル基が残存する炭化水素基(2級COOHを除いた残りの構造)を例示できる。(一般式(i)および一般式(ii)中、各環式炭化水素残基における破線部は、そこに炭素−炭素二重結合が存在しうることを表す。)
【0022】
なお、これら一般式はいずれも、当該環式炭化水素残基の形状を限定するものではない。
【0023】
前記一般式(1)中のRoは、後述するテトラヒドロアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、アクリロピマル酸およびアクリロピマル酸の水素化物からなる群より選ばれる1種の樹脂酸の、環式炭化水素残基であることが好ましい。
【0024】
また、前記一般式(1)中のRは、炭素数2〜20(好ましくは2〜6)のアルキレン基(直鎖状、分枝状又は環状のいずれであってもよい)、炭素数2〜20(好ましくは4〜10)のオキシアルキレン基、炭素数6〜11の芳香族基から選ばれる1種を表す。なお、前記一般式(1)は、Ro[−COO−CH(CH)−O−(CO)−A]であるのが好ましい。
【0025】
また、前記一般式(1)中のAは、アクリロイル基(−OC−HC=CH)またはメタクリロイル基(−OC−(CH)C=CH)を表す。
【0026】
また、前記一般式(1)中のXは1〜3の整数を表す。なお、前記Roに結合する前記(メタ)アクリロイル基の数は、Xの値に応じて決まる。
【0027】
本発明に係るロジン誘導体の具体的構造を以下に示す。なお、これらは例示にすぎず、前記一般式(1)で示す構造を何ら限定するものではない。
【0028】
[X=1の場合]
【0029】
【化3】

【0030】
【化4】

【0031】
[X=2の場合]
【0032】
【化5】

【0033】
【化6】

【0034】
[X=3の場合]
【化7】

【0035】
(一般式(iii)〜(vii)中、各環式炭化水素残基における破線部は、そこに炭素−炭素二重結合が存在しうることを表す。)
【0036】
本発明のロジン誘導体は、ロジン類と、一般式(2):CH=CH−O−R−A(式(2)中、Rは炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のオキシアルキレン基および炭素数6〜11の芳香族基からなる群より選ばれる1種を、またAは(メタ)アクリロイル基を表す)で表される(メタ)アクリロイル基含有モノビニルエーテル化合物とを、ヘミアセタールエステル化反応させて得られるものである。なお、本発明では、該ロジン類が複数種の樹脂酸類を含む場合には、複数種のロジン誘導体が組成物として同時に得られる。
【0037】
前記ロジン類としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、天然ロジン〔ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等〕;該天然ロジンを各種公知の方法で安定化処理したロジン〔水添ロジン、不均化ロジン等(いずれもガードナー比色法(JISK0071-2)で色数3以下のものが好ましい)〕;該天然ロジンを用いた各種変性ロジン〔アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸等のα,β不飽和カルボン酸をディールス・アルダー反応させてなるロジン(α,β不飽和カルボン酸変性ロジンという)、重合ロジン等〕等を挙げることができる。なお、該ロジン類としては、水添ロジンまたはα,β不飽和カルボン酸変性ロジンが好ましい。
【0038】
なお、当該ロジン類には、後述の樹脂酸類が様々な組成比で含まれていてもよく、また不純物や夾雑物等が含まれていてもよい。なお、本発明において、前記一般式(1)で示す(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体を高収率で製造したい場合には、当該ロジン類としては、予め各種公知の方法(例えば再結晶法)で精製したものや、特定の樹脂酸比率に調整したものを用いることができる。
【0039】
当該ロジン類に含まれる樹脂酸類としては、具体的には、例えば、一塩基樹脂酸〔アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン、ピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸等〕;二塩基樹脂酸〔該一塩基樹脂酸の二量体、アクリロピマール酸等〕;三塩基樹脂酸〔フマロピマール酸等〕;無水環を有する一塩基樹脂酸〔マレオピマール酸等〕、その他の多塩基樹脂酸〔アクリロピマール酸、マレオピマール酸、フマロピマール酸の各2量体等〕、これらを水素化処理してなる樹脂酸等が挙げられる。
【0040】
また、前記一般式(2)で表される(メタ)アクリロイル基含有モノビニルエーテル化合物(以下、モノビニルエーテル化合物という)としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、アルキレン基含有モノビニルエーテル化合物〔(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル等〕;オキシアルキレン基含有モノビニルエーテル化合物〔(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等〕;芳香族基含有モノビニルエーテル化合物〔(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル等〕が挙げられる。なお、モノビニルエーテル化合物としては、前記オキシアルキレン基含有モノビニルエーテル化合物、特に(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルが好ましい。
【0041】
ヘミアセタールエステル化反応は特に制限されず、各種公知の方法を採用できる。具体的には、例えば、前記ロジン類と前記モノビニルエーテル化合物とを、触媒や有機溶剤の存在下または不存在下において、通常30〜150℃程度(好ましくは50〜120℃)、通常10分〜6時間程度(好ましくは20分〜5時間)、反応させればよい。
【0042】
前記ロジン類と前記モノビニルエーテル化合物の使用量は特に制限されないが、化学量論的な見地より、該ロジン類中のカルボキシル基1モルに対して、該モノビニルエーテル化合物のビニルエーテル基が通常0.5〜3.0モル程度(好ましくは1.0〜2.0モル)となる範囲とするのが好ましい。0.5未満では目的物の収率が小さくなり、一方、3.0以上では未反応物の残存率が大きくなる傾向がある。なお、本発明では、ロジン類とモノビニルエーテル化合物とのモル比(カルボキシキル基のモル数/ビニルエーテル基のモル数)や、ロジン類の種類を変更することで、前記一般式(1)中のRoの形状(カルボキシル基の残存等)や、Xの値の変更((メタ)アクリロイル基の数の変更)等が可能になる。
【0043】
前記触媒としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、リン酸エステル系酸触媒〔リン酸ジ−n−ブチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸モノオクチル等〕が挙げられる。なお、触媒の使用量は、前記ロジン類と前記ビニルエーテル化合物の合計100重量部に対して、通常0.01〜3重量部程度(好ましくは0.1〜1.5重量部)である。
【0044】
前記有機溶剤は、当該反応を制御するために好ましく用いるものであり、各種公知のものを特に制限なく利用できる。具体的には、例えば、芳香族炭化水素類〔ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族石油ナフサ、テトラリン、テレビン油、ソルベッソ#100(エクソン化学(株)登録商標)、ソルベッソ#150(エクソン化学(株)登録商標)等〕;エーテル類〔ジオキサン、テトラヒドロフラン等〕;エステル類〔酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第二ブチル、酢酸アミル等〕;エーテルエステル類〔ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸メトキシブチル等〕;グリコールエーテルアセテート類〔エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等〕;ケトン類〔アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、メシチルオキサイド、メチルイソアミルケトン、エチルブチルケトン、エチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジイソプロピルケトン等〕;リン酸エステル類〔トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート等〕が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組合わせて用いることができる。有機溶剤の使用量は、反応を円滑に進行させるため、反応系の固形分濃度が通常20〜95重量%程度(好ましくは30〜90重量%)の範囲とするのがよい。
【0045】
また当該反応においては、収率向上の点より、原料や生成物自体のラジカル重合を抑制する目的で、各種公知のラジカル重合禁止剤を特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、キノン系重合禁止剤〔メトキノン、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール等〕;アルキルフェノール系重合禁止剤〔2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール等〕;アミン系重合禁止剤〔アルキル化ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等〕;ジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤〔ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等〕;N−オキシル系重合禁止剤〔2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのエステル等〕;が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ラジカル重合禁止剤の添加量は、収率の点、重合抑制の点及び経済性の理由から、前記ロジン類と前記ビニルエーテル化合物の合計重量に対して、通常0.0005〜0.5質量%程度(好ましくは0.001〜0.1質量%)の範囲とするのがよい。また、当該反応時には、エアバブリング等の重合禁止手段を採りうる。
【0046】
このようにして得られる、本発明に係る(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体は、そのままでも各種用途に供しうるが、必要に応じて各種精製処理(ろ過、蒸留、溶剤抽出、カラム分離、再沈殿等)を施すこともできる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
実施例1
分水管を備えた300mlのフラスコに、荒川化学工業(株)製の水添ロジン(樹脂酸として、主にデヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸を含む)150g、メトキノン0.23g、フェノチアジン0.23gを仕込み、攪拌下に反応系を120℃に昇温して、これらを溶融させた。次いで、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル82.9gを滴下ロートから15分を要して反応系に滴下し、次いでリン酸2−エチルヘキシル(商品名「AP−8」(大八化学工業(株)製))0.15gを仕込み、100℃で1時間保温し、アクリロイル基含有ロジン誘導体を得た。
【0049】
実施例2
分水管を備えた300mlのフラスコに、荒川化学工業(株)製のアクリル酸変性ロジンの水素化物(樹脂酸として主にアクリロピマル酸、アクリロピマル酸の水素化物、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸を含む)130g、メトキノン0.23g、フェノチアジン0.23gを仕込み、攪拌下反応系しながら、140℃に昇温して溶融させた。次いで、アクリル酸(2−ビニロキシエトキシ)エチル102.4gを滴下ロートから15分を要して反応系に滴下した後、リン酸2−エチルヘキシル(商品名「AP−8」(大八化学工業(株)製))0.15gを仕込み、100℃で1時間保温し、アクリロイル基含有ロジン誘導体を得た。
【0050】
実施例3
分水管を備えた300mlのフラスコに、荒川化学工業(株)製の重合ロジン(樹脂酸として主に一塩基樹脂酸の二量体を含む)120g、メトキノン0.19g、フェノチアジン0.19gを仕込み、攪拌下反応系しながら、160℃に昇温して溶融させた。次いで、アクリル酸(2−ビニロキシエトキシ)エチル55.8gを滴下ロートから15分を要して反応系に滴下した後、リン酸2−エチルヘキシル(商品名「AP−8」(大八化学工業(株)製))0.12gを仕込み、100℃で1時間保温し、アクリロイル基含有ロジン誘導体を得た。
【0051】
実施例4
分水管を備えた300mlのフラスコに、荒川化学工業(株)製の水添ロジン(樹脂酸として、主にデヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸を含む)150g、メトキノン0.23g、フェノチアジン0.23gを仕込み、攪拌下に反応系を120℃に昇温して、これらを溶融させた。次いで、メタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル89.1gを滴下ロートから15分を要して反応系に滴下し、次いでリン酸2−エチルヘキシル(商品名「AP−8」(大八化学工業(株)製))0.15gを仕込み、100℃で1時間保温し、メタクリロイル基含有ロジン誘導体を得た。
【0052】
実施例1〜4で得られたアクリロイル基含有ロジン誘導体の、それぞれのHNMRチャート(測定機器:GEMINI−300(VARIAN製))、300MHz,CDCl)、IRチャート(測定機器:AVATAR−330(Thermo製)、1回反射ATR)を図に示す。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係るロジン誘導体は、ロジン類を原料とする従来公知の用途、例えばサイズ剤、粘着付与剤、印刷インキ、道路標示剤、合成ゴムの乳化剤、ハンダ付けフラックス、感光性導電ペースト等の各種の用途において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、実施例1で得られたロジン誘導体のH NMRチャートである。
【図2】図2は、実施例1で得られたロジン誘導体のIRチャートである。
【図3】図3は、実施例2で得られたロジン誘導体のH NMRチャートである。
【図4】図4は、実施例2で得られたロジン誘導体のIRチャートである。
【図5】図5は、実施例3で得られたロジン誘導体のH NMRチャートである。
【図6】図6は、実施例3で得られたロジン誘導体のIRチャートである。
【図7】図7は、実施例4で得られたロジン誘導体のH NMRチャートである。
【図8】図8は、実施例4で得られたロジン誘導体のIRチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):Ro[−COO−CH(CH)−O−R−A](式(1)中、Roはロジン類に由来する環式炭化水素残基を、またRは炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のオキシアルキレン基および炭素数6〜11の芳香族基からなる群より選ばれる1種を、またAは(メタ)アクリロイル基を、またXは1〜3の整数を表す)で表される(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体。
【請求項2】
前記一般式(1)中のRoが、テトラヒドロアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、アクリロピマル酸およびアクリロピマル酸の水素化物からなる群より選ばれる1種の樹脂酸の環式炭化水素残基である、請求項1の(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体。
【請求項3】
前記一般式(1)が、Ro[−COO−CH(CH)−O−(CO)−A]である、請求項1または2の(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体。
【請求項4】
ロジン類と、一般式(2):CH=CH−O−R−A(式(2)中、Rは炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のオキシアルキレン基および炭素数6〜11の芳香族基からなる群より選ばれる1種を、またAは(メタ)アクリロイル基を表す)で表される(メタ)アクリロイル基含有モノビニルエーテル化合物とを、ヘミアセタールエステル化反応させて得られる(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体。
【請求項5】
前記ロジン類が、水添ロジンまたはα,β不飽和カルボン酸変性ロジンである、請求項4の(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体。
【請求項6】
前記一般式(2)で表される(メタ)アクリロイル基含有ビニルエーテル化合物が、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、請求項4または5の(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体。
【請求項7】
ロジン類と、一般式(2):CH=CH−O−R−A(式(2)中、Rは炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のオキシアルキレン基、炭素数6〜11の芳香族基から選ばれる1種を、またAは(メタ)アクリロイル基を表す)で表される(メタ)アクリロイル基含有モノビニルエーテル化合物とを、ヘミアセタールエステル化反応させることを特徴とする、(メタ)アクリロイル基含有ロジン誘導体の製造方法。
【請求項8】
前記ロジン類が、水添ロジンまたはα,β不飽和カルボン酸変性ロジンである、請求項7の製造方法。
【請求項9】
前記一般式(2)で表される(メタ)アクリロイル基含有ビニルエーテル化合物が、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、請求項7または8の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−106047(P2008−106047A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244690(P2007−244690)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】