説明

1−アミノ−2−シクロブチルエチルボロン酸の誘導体

本発明は、プロテアソーム阻害剤として有用な新規化合物を提供する。本発明はまた、本発明の化合物を含む医薬組成物、および種々の疾患の治療における組成物の使用方法も提供する。例えば、本発明により、本発明の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物が提供される。例えば、本発明により、癌を治療するための方法であって、かかる治療を必要とする患者に、本発明の医薬組成物を投与することを含む、方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
【0002】
本願は、2008年9月29日に出願された米国仮特許出願第61/194,614号からの優先権を主張し、当該出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、プロテアソーム阻害剤として有用なボロン酸およびボロン酸エステル化合物に関する。本発明はまた、本発明の化合物を含む医薬組成物、および種々の疾患の治療における組成物の使用方法も提供する。
【背景技術】
【0004】
ボロン酸およびエステル化合物は、医薬的に有用な種々の生物学的活性を示す。Shenviらの特許文献1(1985)は、ペプチドボロン酸が、特定のタンパク質分解酵素の阻害剤であることを開示している。KettnerおよびShenviの特許文献2(1993)、特許文献3(1993)、および特許文献4(1993)は、トリプシン様プロテアーゼを阻害するペプチドボロン酸のクラスについて記載している。Kleemanらの特許文献5(1992)は、レニンの作用を阻害するN末端修飾されたペプチドボロン酸を開示している。Kinderらの特許文献6(1992)特定のボロン酸化合物が、癌細胞の増殖を阻害することを開示している。Bachovchinらの特許文献7は、線維芽細胞活性化タンパク質を阻害するペプチドボロン酸化合物を開示している。
【0005】
ボロン酸およびエステル化合物は、細胞内タンパク質代謝回転のほとんどを担う多触媒性プロテアーゼである、プロテアソームの阻害剤として特段の展望を示している。Adamsらの特許文献8(1998)は、プロテアソームの阻害剤として有用なペプチドボロン酸エステルおよび酸化合物を記載している。この参照文献はまた、ボロン酸エステルおよび酸化合物の使用によって、筋肉のタンパク質分解の速度が低下し、細胞中のNF−κBの活性が低下し、細胞中のp53タンパク質の分解の速度が低下し、細胞中のサイクリン分解が阻害され、癌細胞の増殖が阻害され、NF−κB依存性細胞付着が阻害されることも記載している。Furetらの特許文献9、Chatterjeeらの特許文献10、ならびにBernadiniらの特許文献11および特許文献12は、プロテアソーム阻害活性を有することが報告されている、更なるボロン酸エステルおよび酸化合物を開示している。
【0006】
非特許文献1は、プロテアソームが、ユビキチンの複数の分子との結合によりタンパク質分解が標的とされる、ユビキチン−プロテアソーム経路のタンパク質分解性成分であることを開示している。Ciechanoverはまた、ユビキチン−プロテアソーム経路が、種々の重要な生理学的プロセスにおいて重要な役割を果たすことを開示している。非特許文献2は、プロテアソームが、トリプシン、キモトリプシン、およびペプチジルグルタミルぺプチダーゼ活性を示すことを開示している。26Sプロテアソームの触媒コアを構成するのは、20Sプロテアソームである。非特許文献3は、Suc−Leu−Leu−Val−Tyr−AMC、Z−Leu−Leu−Arg−AMC、およびZ−Leu−Leu−Glu−2NAを含み、SucがN−スクシニルであり、AMCが7−アミノ−4−メチルクマリンであり、2NAが2−ナフチルアミンである、種々のペプチド基質が、20Sプロテアソームによって切断されることを教示している。
【0007】
プロテアソーム阻害剤は、癌治療において重要な新規戦略を示す。非特許文献4は、ユビキチン−プロテアソーム経路が、細胞周期、新生物の増殖、および転移の調節において重要な役割を果たすことを記載している。著者は、サイクリンおよびサイクリン依存性キナーゼp21およびp27KIP1を含む、鍵となる多数の調節タンパク質が、ユビキチン−プロテアソーム経路によって細胞周期の間に一時的に分解されることを教示している。これらのタンパク質の整然とした分解は、細胞が細胞周期を通じて進み、有糸分裂を経るのに必要である。
【0008】
更に、ユビキチン−プロテアソーム経路は、転写調節に必要である。非特許文献5は、阻害タンパクIκBのプロテアソームを媒介とした分解によって、転写因子NF−κBの活性化が調節されることを教示している。次に、NF−κBは、免疫および炎症性の応答に関与する遺伝子の調節において中心的な役割を果たす。非特許文献6は、ユビキチン−プロテアソーム経路が、E−セレクチン、ICAM−1、およびVCAM−1等の細胞接着分子の発現に必要であることを教示している。非特許文献7は、細胞接着分子が、脈管構造へおよびその脈管構造から体内の離れた組織部位へ腫瘍細胞の接着および管外遊出を導くことにより、生体内で、腫瘍転移および血管形成に関与することを教示している。また、非特許文献8は、NF−κBが抗アポトーシスの調節因子であり、NF−kB活性化の阻害が、細胞を環境ストレスおよび細胞毒性薬剤に対してより感受性にすることを教示している。
【0009】
プロテアソーム阻害剤である、VELCADE(登録商標)(ボルテゾミブ、N−2−ピラジンカルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸)は、規制認可を達成した最初のプロテアソーム阻害剤である。非特許文献9は、少なくとも1つの先行技術の療法を受けたことのある多発性骨髄腫患者の治療のために、ボルテゾミブの承認をもたらす臨床研究について概説している。非特許文献10は、再発した、または難治性のマントル細胞リンパ腫に罹患する患者において、ボルテゾミブの活性を確認する、国際多施設第II相試験について記載している。非特許文献11、および非特許文献12は、ボルテゾミブの抗腫瘍活性の一因となり得る多数の分子機構について論じている。
【0010】
非特許文献13によって報告された構造分析は、20Sプロテアソームが、28のサブユニットを含み、触媒サブユニットβ1、β2、およびβ5が、それぞれペプチジルグルタミル、トリプシン、およびキモトリプシンぺプチダーゼ活性を担うことを示している。非特許文献14は、プロテアソームが、IFN−γおよびTNF−αを含む、特定のサイトカインに曝露される場合、β1、β2、およびβ5サブユニットは、代替の触媒サブユニットβ1i、β2i、およびβ5iで置換され、免疫プロテアソームとして知られるプロテアソームの異型を形成することを開示している。
【0011】
非特許文献15は、免疫プロテアソームはまた、造血前駆細胞に由来する幾つかの細胞中に構造的に発現することも開示している。著者は、免疫プロテアソームに特異的な阻害剤は、造血起源から生じる癌に対する標的療法を可能にし、それにより、胃腸および神経組織等の正常組織を副作用から潜在的に回避し得ることを示唆している。
【0012】
上記の参照文献からも明らかなように、プロテアソームは、治療的介入の重要な標的に相当する。したがって、新規および/または改善されたプロテアソーム阻害剤の継続した必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4,499,082号明細書
【特許文献2】米国特許第5,187,157号明細書
【特許文献3】米国特許第5,242,904号明細書
【特許文献4】米国特許第5,250,720号明細書
【特許文献5】米国特許第5,169,841号明細書
【特許文献6】米国特許第5,106,948号明細書
【特許文献7】国際公開第07/0005991号
【特許文献8】米国特許第5,780,454号明細書
【特許文献9】国際公開第02/096933号
【特許文献10】国際公開第05/016859号
【特許文献11】国際公開第05/021558号
【特許文献12】国際公開第06/08660号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Ciechanover, Cell, 79:13−21(1994)
【非特許文献2】Rivett et al., Biochem. J. 291:1(1993)
【非特許文献3】McCormack et al., Biochemistry 37:7792(1998)
【非特許文献4】King et al., Science 274:1652−1659(1996)
【非特許文献5】Palombella et al., Cell, 78:773(1994)
【非特許文献6】Read et al., Immunity 2:493−506(1995)
【非特許文献7】Zetter, Seminars in Cancer Biology 4:219−229(1993)
【非特許文献8】Beg and Baltimore, Science 274:782(1996)
【非特許文献9】Mitsiades et al., Current Drug Targets, 7:1341(2006)
【非特許文献10】Fisher et al., J. Clin. Oncol., 30:4867
【非特許文献11】Ishii et al., Anti−Cancer Agents in Medicinal Chemistry, 7:359(2007)
【非特許文献12】Roccaro et al., Curr. Pharm. Biotech., 7:1341(2006)
【非特許文献13】Voges et al., Annu. Rev. Biochem., 68:1015(1999)
【非特許文献14】Rivett et al., Curr. Protein Pept. Sci., 5:153(2004)
【非特許文献15】Orlowski, Hematology(Am. Soc. Hematol. Educ. Program) 220(2005)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、プロテアソームの1つ以上のペプチダーゼ活性の有効な阻害剤である化合物を提供する。これらの化合物は、生体外および生体内でプロテアソーム活性を阻害するために有用であり、種々の細胞増殖性疾患の治療のために特に有用である。
【0016】
本発明の化合物は、一般式(I)
【化1】

のものまたはその医薬的に許容される塩もしくはボロン酸無水物であり、式中、
Aは、0、1、または2であり、
Pは、水素またはアミノ基遮断部分であり、
a1は、C1−6脂肪族、C1−6フルオロ脂肪族、−(CH−CH−R、−(CH−CH−NHC(=NR)NH−Y、−(CH−CH−CON(R、−(CH−CH−N(R)CON(R、−(CH−CH(R)N(R、−(CH−CH(R)−OR、または−(CH−CH(R)−SRであり、
各Ra2は独立して、水素、C1−6脂肪族、C1−6フルオロ脂肪族、−(CH−CH−R、−(CH−CH−NHC(=NR)NH−Y、−(CH−CH−CON(R、−(CH−CH−N(R)CON(R、−(CH−CH(R)N(R、−(CH−CH(R)−OR、または−(CH−CH(R)−SRであり、
各Yは独立して、水素、−CN、−NO、または−S(O)−R10であり、
各Rは独立して、置換または非置換の単環式または二環式環系であり、
各Rは独立して、水素、または置換もしくは非置換の脂肪族、アリール、ヘテロアリール、もしくはヘテロシクリル基であるか、あるいは同一窒素原子上の2個のRが、窒素原子と一体となって、窒素原子に加えてN、O、およびSから独立して選択される0〜2環のヘテロ原子を有する置換もしくは非置換の4〜8員のヘテロシクリル環を形成し、
各Rは独立して、水素、または置換もしくは非置換の脂肪族、アリール、ヘテロアリール、もしくはヘテロシクリル基であり、
各Rは独立して、置換もしくは非置換の脂肪族、アリール、もしくはヘテロアリール基であり、
各R10は独立して、C1−6脂肪族、C6−10アリール、または−N(Rであり、
mは、0、1、または2であり、
およびZは、それぞれ独立して、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、またはアラルコキシであるか、あるいはZおよびZが共に、ボロン酸錯化剤に由来する部分を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
別途明確に記述がない限り、「プロテアソーム」という用語は、構造的プロテアソーム、免疫プロテアソーム、または両方をを指すことを意図する。
【0018】
「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、本明細書で使用する場合、置換もしくは非置換の直鎖、分岐鎖、または環状のC1−12炭化水素であって、完全に飽和されているか、または1つ以上の不飽和単位を含むが、芳香族ではない、炭化水素を意味する。例えば、好適な脂肪族基としては、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、もしくは(シクロアルキル)アルケニル等の、置換もしくは非置換の線状、分岐、または環状のアルキル、アルケニル、またはアルキニル基、およびその混合体が挙げられる。種々の実施形態では、脂肪族基は、1〜12、1〜8、1〜6、1〜4、または1〜3個の炭素を有する。
【0019】
「アルキル」、「アルケニル」、および「アルキニル」という用語は、単独で、またはより大きい部分の一部として用いて、1〜12個の炭素原子を有する、直鎖、または分岐鎖の脂肪族基を指す。本発明の目的のために、「アルキル」という用語は、分子の残りに対して脂肪族基を結合する炭素原子が、飽和炭素原子である場合に使用され得る。しかしながら、アルキル基は、他の炭素原子では不飽和を含んでもよい。故に、アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、アリル、プロパルギル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本発明の目的のために、「アルケニル」という用語は、分子の残りに対して脂肪族基を結合する炭素原子が、炭素−炭素間の二重結合の一部を形成する場合に使用される。アルケニル基としては、ビニル、1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、および1−ヘキセニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明の目的のために、「アルキニル」という用語は、分子の残りに対して脂肪族基を結合する炭素原子が、炭素−炭素間の三重結合の一部を形成する場合に使用される。アルキニル基としては、エチニル、1−プロピニル、1−ブチニル、1−ペンチニル、および1−ヘキシニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
「シクロ脂肪族」という用語は、単独で、またはそれより大きい部分の一部として用いて、3〜約14員を有する、飽和したまたは部分的に不飽和の、環状脂肪族環系を指し、脂肪族環系は、任意に置換される。幾つかの実施形態では、シクロ脂肪族は、3〜8個または3〜6個の環炭素原子を有する、単環式炭化水素である。限定されない例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、シクロオクチル、シクロオクテニル、およびシクロオクタジエニルが挙げられる。幾つかの実施形態では、シクロ脂肪族は、6〜12、6〜10、または6〜8個の環炭素原子を有する、架橋または縮合される二環式炭化水素であり、二環式環系中の任意の個々の環は、3〜8員を有する。
【0023】
幾つかの実施形態では、シクロ脂肪族環上にある2つの隣接した置換基は、介在環原子と一体となって、O、N、およびSからなる群から選択される0〜3個の環ヘテロ原子を有する、任意に置換される縮合された5〜6員の芳香族または3〜8員の非芳香族環を形成する。故に、「シクロ脂肪族」という用語には、1つ以上のアリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリル環に縮合される、脂肪族環が含まれる。限定されない例としては、インダニル、5,6,7,8−テトラヒドロキノキサリニル、デカヒドロナフチル、またはテトラヒドロナフチルが挙げられ、ここで、ラジカルまたは結合点は、脂肪族環上にある。
【0024】
単独で、またはそれより大きい部分、例えば、「アラルキル」、「アラルコキシ(aralkoxy)」、または「アリールオキシアルキル」の一部として用いて、「アリール」および「アル−」という用語は、1〜3個の環を包む、C6−14芳香族炭化水素を指し、これらのそれぞれは、任意に置換される。好ましくは、アリール基はC6−10アリール基である。アリール基としては、フェニル、ナフチル、およびアントラセニルが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、アリール環上にある2つの隣接した置換基は、介在環原子と一体となって、O、N、およびSからなる群から選択される0〜3個の環ヘテロ原子を有する、任意に置換される縮合された5〜6員芳香族または4〜8員の非芳香族環を形成する。故に、「アリール」という用語には、本明細書で使用する場合、アリール環が、1つ以上のヘテロアリール、シクロ脂肪族、またはヘテロシクリル環に縮合される基を含み、ここで、ラジカルまたは結合点は、芳香族環上にある。このような縮合環系の限定されない例には、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、カルバゾニル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、フルオレニル、インダニル、フェナントリジニル、テトラヒドロナフチル、インドリニル、フェノキサジニル、ベンゾジオキサニル、およびベンゾジオキソリルが挙げられる。アリール基は、単環式、二環式、三環式、または多環式、好ましくは、単環式、二環式、または三環式、更に好ましくは、単環式、または二環式であり得る。「アリール」という用語は、「アリール基」、「アリール部分」、および「アリール環」という用語と交換可能に使用され得る。
【0025】
「アラルキル」または「アリールアルキル」基は、そのいずれかが独立して、任意に置換される、アルキル基に共有結合したアリール基を包む。好ましくは、アラルキル基は、C6−10アリール(C1−6)アルキル、C6−10アリール(C1−4)アルキル、またはC6−10アリール(C1−3)アルキルであり、ベンジル、フェネチル、およびナフチルメチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
単独で、またはそれより大きい部分、例えば、ヘテロアラルキル、または「ヘテロアラルコキシ」の一部として用いて、「ヘテロアリール」および「ヘテロアル−」という用語は、5〜14個の環原子、好ましくは、5、6、9、または10個の環原子を有する基、環状のアレイで共有される6、10、または14個のπ電子を有する基、そして炭素原子に加えて、1〜4個のヘテロ原子を有する基を指す。「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素、または硫黄を指し、窒素もしくは硫黄の任意の酸化型、および塩基性窒素の任意の四級化型を含む。故に、ヘテロアリールの環原子に関連して使用される場合、「窒素」という用語には、酸化窒素(ピリジンN−酸化物等の場合)が含まれる。5員のヘテロアリール基の特定の窒素原子はまた、以下に更に定義されるように、置換可能である。ヘテロアリール基としては、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、インドリジン、ナフチリジン、プテリジン、ピロロピリジン、イミダゾピリジン、オキサゾロピリジン、チアゾロピリジン、トリアゾロピリジン、ピロロピリミジン、プリン、およびトリアゾロピリミジンに由来するラジカルが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される、「に由来するラジカル」という語句は、親ヘテロ芳香族環系から水素ラジカルを取り去ることにより生成される一価ラジカルを意味する。ラジカル(即ち、分子の残りに対するヘテロアリールの結合点)は、親ヘテロアリール環系の任意の環上にある任意の置換可能な位置で生成され得る。
【0027】
幾つかの実施形態では、ヘテロアリール上にある2つの隣接した置換基は、介在環原子と一体となって、O、N、およびSからなる群から選択される0〜3個の環ヘテロ原子を有する任意に置換される縮合された5〜6員の芳香族または4〜8員の非芳香族環を形成する。故に、「ヘテロアリール」および「ヘテロアル−」という用語は、本明細書で使用する場合、ヘテロ芳香族環が、1つ以上のアリール、シクロ脂肪族、またはヘテロシクリル環に縮合される基も含み、ここで、ラジカルまたは結合点は、ヘテロ芳香族環上にある。限定されない例としては、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H−キノリジニル、カルバゾニル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、およびピリド[2,3−b]−1,4−オキサジン−3(4H)−オンが挙げられる。ヘテロアリール基は、単環式、二環式、三環式、または多環式、好ましくは、単環式、二環式、または三環式、更に好ましくは、単環式、または二環式であり得る。「ヘテロアリール」という用語は、「ヘテロアリール環」、または「ヘテロアリール基」という用語と交換可能に使用され得、これらの用語のいずれも、任意に置換される環を含む。「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールにより置換されるアルキル基を指し、アルキルおよびヘテロアリール部は独立して、任意に置換される。
【0028】
本明細書で使用される、「芳香族環」および「芳香族環系」という用語は、0〜6個、好ましくは0〜4個の環ヘテロ原子を有し、環状のアレイで共有される6、10、または14個のπ電子を有する、任意に置換される単環式、二環式、または三環式基を指す。故に、「芳香族環」および「芳香族環系」という用語は、アリールおよびヘテロアリール基の双方を包含する。
【0029】
本明細書で使用される、「複素環(heterocycle)」、「ヘテロシクリル」、「複素環式ラジカル」、および「複素環(heterocyclic ring)」という用語は、交換可能に使用され、安定した3〜7員の単環式部分、または縮合された7〜10員のもしくは架橋した6〜10員の二環式複素環部分を指し、それらは飽和であるか、または部分的に不飽和であるかのいずれかであり、炭素原子に加えて、1個以上、好ましくは1〜4個の上記に記載される通りのヘテロ原子を有する。複素環の環原子に関連して使用される場合、「窒素」という用語は、置換窒素を含む。例として、酸素、硫黄、または窒素から選択される1〜3個のヘテロ原子を有するヘテロシクリル環において、窒素は、(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリル中等の)N、(ピロリジニル中等の)NH、または(N−置換ピロリジニル中等の)NRであり得る。複素環は、安定した構造を生じる、いずれのヘテロ原子または炭素原子でそのペンダント基に結合されてもよく、いずれの環原子も、任意に、置換することができる。このような飽和したまたは部分的に不飽和の複素環式ラジカルの例は、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニル、およびキヌクリジニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
幾つかの実施形態では、複素環上にある2つの隣接した置換基は、介在環原子と一体となって、O、N、およびSからなる群から選択される0〜3個の環ヘテロ原子を有する任意に置換される縮合された5〜6員の芳香族または3〜8員の非芳香族環を形成する。故に、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「複素環基」、「複素環部分」、および「複素環式ラジカル」という用語は、本明細書で交換可能に使用でき、ヘテロシクリル環が、1つ以上のアリール、ヘテロアリール、またはシクロ脂肪族環に縮合される基である、インドリル、3H−インドリル、クロマニル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロキノリニル等を含み、ここで、ラジカルまたは結合点は、ヘテロシクリル環上にある。ヘテロシクリル基は、単環式、二環式、三環式、または多環式、好ましくは、単環式、二環式、または三環式、更に好ましくは、単環式、または二環式であり得る。「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、ヘテロシクリルにより置換されるアルキル基を指し、アルキルおよびヘテロシクリル部は独立して、任意に置換される。
【0031】
本明細書で使用される、「部分的に不飽和」という用語は、環原子間に少なくとも1つの二重または三重結合を含む、環部分を指す。「部分的に不飽和」という用語は、複数の不飽和の部位を有する環を包含することを意図するが、本明細書で定義する、アリールまたはヘテロアリール部分を含むことを意図しない。
【0032】
「ハロ脂肪族」、「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」、および「ハロアルコキシ」という用語は、それぞれの場合によって、1個以上のハロゲン原子で置換される、脂肪族、アルキル、アルケニル、またはアルコキシ基を指す。本明細書で使用される、「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、F、Cl、Br、またはIを意味する。「フルオロ脂肪族」という用語は、ハロゲンがフルオロである、ハロ脂肪族を意味し、ペルフルオロ脂肪族基を含む。フルオロ脂肪族基の例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、1,1,2−トリフルオロエチル、1,2,2−トリフルオロエチル、およびペンタフルオロエチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
「リンカー基」または「リンカー」という用語は、化合物の2つの部分を連結する有機部分を意味する。リンカーは、一般的に、酸素または硫黄等の原子、−NH−、−CH−、−C(O)−、−C(O)NH−等の単位、またはアルキレン鎖等の原子の鎖を包む。リンカーの分子量は、一般的に、約14〜200の範囲内であり、好ましくは14〜96の範囲内であって、最高約6個までの原子長を有する、。幾つかの実施形態では、リンカーは、C1−6アルキレン鎖である。
【0034】
「アルキレン」という用語は、二価アルキル基を指す。「アルキレン鎖」とは、ポリメチレン基、即ち、−(CHx−であり、式中、xは自然数、好ましくは1〜6、1〜4、1〜3、1〜2、または2〜3である。置換されるアルキレン鎖は、1つ以上のメチレン水素原子が置換基で置換されるポリメチレン基である。好適な置換基は、置換される脂肪族基に対して下記に記載されるものを含む。アルキレン鎖はまた、1つ以上の位置にて、脂肪族基または置換される脂肪族基で置換されてもよい。
【0035】
アルキレン鎖はまた、官能基により任意に中断することもできる。内部メチレン単位が官能基で置換される場合、アルキレン鎖は、官能基により「中断」される。好適な「中断官能基」の限定されない例としては、−C(R)=C(R)−、−C≡C−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)N(R)−、−N(R)−、−N(R)CO−、−N(R)C(O)N(R)−、−N(R)C(=NR)−N(R)−、−N(R)−C(=NR)−、−N(R)CO−、−N(R)SO−、−N(R)SON(R)−、−OC(O)−、−OC(O)O−、−OC(O)N(R)−、−C(O)−、−CO−、−C(O)N(R)−、−C(O)−C(O)−、−C(=NR)−N(R)−、−C(NR)=N−、−C(=NR)−O−、−C(OR)=N−、−C(Ro)=N−O−、または−N(R)−N(R)−が挙げられる。各Rは、独立して、水素、または任意に置換される脂肪族、アリール、ヘテロアリール、もしくはヘテロシクリル基であるか、あるいは同一窒素原子上の2個のRは、窒素原子と一体となって、窒素原子に加えてN、O、およびSから選択される0〜2環のヘテロ原子を有する、5〜8員の芳香族環または非芳香族環を形成する。各Rは独立して、水素、または任意に置換される脂肪族、アリール、ヘテロアリール、もしくはヘテロシクリル基である。
【0036】
−O−で「中断」されたC3−6アルキレン鎖の例としては、例えば、−CHOCH−、−CHO(CH−、−CHO(CH−、−CHO(CH−、−(CHOCH−、−(CHO(CH−、−(CHO(CH−、−(CHO(CH)−、−(CHO(CH−、および−(CHO(CH)−が挙げられる。官能基で「中断」されるアルキレン鎖の他の例としては、−CHZCH−、−CHZ(CH−、−CHZ(CH−、−CHZ(CH−、−(CHZCH−、−(CHZ(CH−、−(CHZ(CH−、−(CHZ(CH)−、−(CHZ(CH−、および−(CHZ(CH)−が挙げられ、式中Zは、上に列挙した「中断」官能基のうちの1つである。
【0037】
当業者には、中断を有するアルキレン鎖が官能基に結合される場合、特定の組み合わせは、医薬的用途として十分に安定ではないことが認識されよう。同様に、TおよびR2c、またはTおよびR2dの特定の組み合わせは、医薬的用途として十分に安定ではないだろう。安定した、または化学的に実現可能な化合物のみが本発明の範囲内である。安定した、または化学的に実現可能な化合物は、患者への治療的または予防的投与に有用であるためにその完全性を十分長く維持する化合物である。好ましくは、化学的構造は、少なくとも一週間、−70℃以下、−50℃以下、−20℃以下、0℃以下、または20℃以下の温度で維持され、湿気がない、または他の化学反応状態がない場合、実質的に変化しない。
【0038】
「置換される」という用語は、本明細書で使用する場合、指定された部分の水素ラジカルが、置換が安定した、または化学的に実現可能な化合物を生じることを条件として、特定の置換基のラジカルで置換されることを意味する。「置換可能な」という用語は、指定された原子に関連して使用される場合、その原子に結合しているのは、水素ラジカルであり、好適な置換基のラジカルで置換することができることを意味する。
【0039】
「1つ以上の置換基」という語句は、本明細書で使用する場合、利用可能な結合部位の数に基づいて、上記の安定性および化学的な実現可能性の条件が満たされる条件の下で、1つから最大可能な置換基数に相当する複数の置換基を指す。別途示されない限り、任意に置換される基は、基のそれぞれの置換可能な位置で置換基を有することができ、置換基は同じであっても異なっていてもよい。
【0040】
本明細書で使用される、「独立して選択される」という用語は、単一化合物において、所与の変数の複数の出現に対して、同一または異なる値が、選択されてもよいことを意味する。
【0041】
アリール(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキル等のアリール部分を含む)、またはヘテロアリール(ヘテロアラルキルおよびヘテロアラルコキシ等のヘテロアリール部分を含む)基は、1つ以上の置換基を含み得る。アリールまたはヘテロアリール基の不飽和の炭素原子上の好適な置換基の限定されない例としては、−ハロ、−NO、−CN、−R、−C(R)=C(R、−C≡C−R、−OR、−SRo、−S(O)Ro、−SORo、−SOR*、−SON(R、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−N(R)C(=NR)−N(R、−N(R)C(=NR)−Ro、−NRCORo、−NRSORo、−NRSON(R、−O−C(O)R、−O−CO、−OC(O)N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)−C(O)R、−C(O)N(R、−C(O)N(R)−OR、−C(O)N(R)C(=NR)−N(R、−N(R)C(=NR)−N(R)−C(O)R、−C(=NR)−N(R、−C(=NR)−OR、−N(R)−N(R、−C(=NR)−N(R)−OR、−C(Ro)=N−OR、−P(O)(R、−P(O)(OR、−O−P(O)−OR、および−P(O)(NR)−N(Rが挙げられ、式中、Roは、任意に置換される脂肪族、アリール、もしくはヘテロアリール基であり、RおよびRは、上で定義される通りであるか、または2つの隣接した置換基が、介在原子と一体となって、N、O、およびSからなる群から選択される0〜3個の環原子を有する、5〜6員の不飽和または部分的に不飽和の環を形成する。
【0042】
脂肪族基または非芳香族複素環は、1つ以上の置換基で置換され得る。脂肪族基または非芳香族複素環の飽和炭素上の好適な置換基の例としては、アリールまたはヘテロアリール基の不飽和炭素に対して上で列挙されたもの、ならびに=O、=S、=C(R、=N−N(R、=N−OR、=N−NHC(O)R、=N−NHCORo、=N−NHSORo、または=N−Rが挙げられるが、これらに限定されず、式中、各RおよびRoは、上記で定義される通りである。
【0043】
ヘテロアリールまたは非芳香族複素環の置換可能な窒素原子上の好適な置換基としては、−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)−C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、および−NRSOが挙げられるが、これらに限定されず、式中、各Rは、上記で定義される通りである。ヘテロアリールまたは非芳香族複素環の環窒素原子はまた、酸化され、対応するN−ヒドロキシまたはN−酸化物化合物を形成し得る。酸化された環窒素原子を有するこのようなヘテロアリールの非限定的な例は、N−オキシドピリジルである。
【0044】
「約」という用語は、おおよそ、〜の範囲の、大体、またはおよそを意味するように、本明細書で使用される。「約」という用語を数値の範囲と組み合わせて用いる場合、それは、示した数値の上下の境界を拡大することによってその範囲を変更する。一般に、「約」という用語は、数値を、言及した値の上下に、10%の変動で変更するように、本明細書で使用される。
【0045】
本明細書で使用される、「含む(comprises)」という用語は、「〜を含むが、これらに限定されない」を意味する。
【0046】
本発明の特定の化合物は、互変異性型で存在し得、化合物の全てのそのような互変異性型が本発明の範囲内にあることが、当業者には明らかである。別途記述がない限り、本明細書に示される構造はまた、全ての幾何(または配座)異性体、即ち、(Z)および(E)の二重結合異性体および(Z)および(E)配座異性体、ならびに、その構造の全ての立体化学型、即ち、それぞれの不斉中心に対するRおよびS構造を含むことを意味する。したがって、本化合物の単一立体化学異性体、ならびに、鏡像体およびジアステレオマーの混合物が、本発明の範囲内である。混合物が別の立体異性体に対して1つの立体異性体に富む場合、その混合物は、例えば、少なくとも50%、75%、90%、99%、または99.5%の鏡像体過剰を含み得る。
【0047】
別途記述がない限り、本明細書に示される構造はまた、1つ以上の同位体的に濃縮した原子の存在下でのみ異なる化合物を含むことを意味する。例えば、重水素または三重水素による水素原子の置換、または13C−または14C−に富む炭素による炭素原子の置換以外は、本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。
【0048】
式(I)の化合物では、変数Pは、水素またはアミノ基遮断部分である。アミノ基遮断部分の限定されない例は、P.G.M. Wuts and T.W. Greene,Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis(4th ed.),John Wiley & Sons,NJ(2007)に見出すことができ、例えば、アシル、スフホニル、オキシアシル、およびアミノアシル基が含まれる。
【0049】
幾つかの実施形態では、Pは、R−C(O)−、R−O−C(O)−、R−N(R4c)−C(O)−、R−S(O)−、またはR−N(R4c)−S(O)−であり、式中、Rは、C1−6脂肪族、C1−6フルオロ脂肪族、−R、−T−R、および−T−R2cからなる群から選択され、変数T、R、R2c、およびR4cは、以下に記載する値を有する。
【0050】
変数R4cは、水素、C1−4アルキル、C1−4フルオロアルキル、またはアリール部分が置換されるか、または非置換である、C6−10アル(C1−4)アルキルである。幾つかの実施形態では、R4cは、水素またはC1−4アルキルである。ある特定の実施形態では、R4cは、水素である。
【0051】
変数Tは、0〜2個の独立して選択されるR3aまたはR3bで置換されるC1−6アルキレン鎖であり、そのアルキレン鎖は、任意に−C(R)=C(R)−、−C≡C−、または−O−で中断される。各R3aは独立して、−F、−OH、−O(C1−4アルキル)、−CN、−N(R、−C(O)(C1−4アルキル)、−COH、−CO(C1−4アルキル)、−C(O)NH、および−C(O)−NH(C1−4アルキル)からなる群から選択される。各R3bは独立して、R3aまたはRで任意に置換される、C1−3脂肪族である。各Rは、置換もしくは非置換の芳香族基である。幾つかの実施形態では、Tは、C1−4アルキレン鎖である。
【0052】
変数R2cは、ハロ、−OR、−SR、−S(O)R、−SO、−SON(R、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRCO、−N(R)SO、−N(R)SON(R、−O−C(O)R、−OC(O)N(R、−C(O)R、−CO、または−C(O)N(Rであり、式中、
各Rは独立して、水素、または任意に置換される、脂肪族、アリール、ヘテロアリール、もしくはヘテロシクリル基であるか、あるいは同一窒素原子上の2個のRが、窒素原子と一体となって、窒素原子に加えて、N、O、およびSから独立して選択される0〜2環のヘテロ原子を有する、任意に置換される4〜8員のヘテロシクリル環を形成し、
各Rは独立して、水素、または任意に置換される、脂肪族、アリール、ヘテロアリール、もしくはヘテロシクリル基であり、
各Rは独立して、任意に置換される脂肪族、アリール、またはヘテロアリール基である。
【0053】
変数Rは、置換もしくは非置換の芳香族、ヘテロシクリル、またはシクロ脂肪族環であり、これらのいずれも、任意に、置換もしくは非置換の芳香族、ヘテロシクリル、またはシクロ脂肪族環に縮合される。R中のそれぞれの飽和環炭素原子は、非置換であるか、または=O、R、またはR8dで置換される。R中のそれぞれの不飽和環炭素は、非置換であるか、またはRまたはR8dで置換される。R中のそれぞれの置換可能な環窒素原子は、非置換であるか、あるいは−C(O)R、−C(O)N(R、−CO、−SO、−SON(R、C1−4脂肪族、置換もしくは非置換のC6−10アリール、またはアリール部分が置換されるか、または非置換である、C6−10アル(C1−4)アルキルで置換される。
【0054】
幾つかの実施形態では、R中の1個または2個の飽和環炭素原子が、=Oで置換され、R中の残りの置換可能な環炭素原子は、0〜2個のRおよび0〜2個のR8dで置換され、R中のそれぞれの置換可能な環窒素原子は、非置換であるか、あるいは−C(O)R、−C(O)N(R、−CO、−SO、−SON(R、C1−4脂肪族、置換もしくは非置換のC6−10アリール、またはアリール部分が置換されるか、または非置換であるC6−10アル(C1−4)アルキルで置換される。各Rは独立して、C1−6脂肪族、C1−6フルオロ脂肪族、ハロ、−R1d、−R2d、−T−R1d、および−T−R2dからなる群から選択され、変数T、R1d、R2d、およびR8dは、以下に記載する値を有する。
【0055】
は、0〜2個の独立して選択されるR3aまたはR3bで置換されるC1−6アルキレン鎖であり、このアルキレン鎖は、任意に−C(R)=C(R)−、−C≡C−、または−O−によって中断される。変数R3aおよびR3bは、以下に記載する値を有する。
【0056】
各R1dは独立して、置換もしくは非置換のアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、もしくはシクロ脂肪族環である。
【0057】
各R2dは独立して、−NO、−CN、−C(R)=C(R、−C≡C−R、−OR、−SR、−S(O)R、−SO、−SON(R、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−N(R)C(=NR)−N(R、−N(R)C(=NR)−R、−NRCO、−N(R)SO、−N(R)SON(R、−O−C(O)R、−OC(O)N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)N(R、−C(O)N(R)−OR、−C(O)N(R)C(=NR)−N(R、−N(R)C(=NR)−N(R)−C(O)R、または−C(=NR)−N(Rである。
【0058】
各R8dは独立して、C1−4脂肪族、C1−4フルオロ脂肪族、ハロ、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−NH、−NH(C1−4脂肪族)、および−N(C1−4脂肪族)からなる群から選択される。
【0059】
幾つかの実施形態では、Rは、フラニル、チエニル、ピロリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フェニル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、プリニル、ナフチル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノキサリニル、およびジヒドロベンゾオキサジニルからなる群から選択される、置換もしくは非置換の単環式または二環式環系である。幾つかの実施形態では、Rは、フェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ナフチル、ベンゾイミダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノキサリニル、およびジヒドロベンゾオキサジニルからなる群から選択される、置換もしくは非置換の単環式または二環式環系である。
【0060】
幾つかの実施形態では、R中の1個または2個の飽和環炭素原子が、=Oで置換され、R中の残りの置換可能な環炭素原子は、0〜1個のRおよび0〜2個のR8dで置換され、式中、
各Rは独立して、C1−6脂肪族、C1−6フルオロ脂肪族、ハロ、−R1d、−R2d、−T−R1d、および−T−R2dからなる群から選択され、
は、非置換であるか、またはR3aまたはR3bで置換される、C1−3アルキレン鎖であり、
各R1dは独立して、置換もしくは非置換のアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、もしくはシクロ脂肪族環であり、
各R2dは独立して、−OR、−SR、−S(O)R、−SO、−SON(R、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−O−C(O)R、−OC(O)N(R、−C(O)R、−CO、または−C(O)N(Rである。
【0061】
幾つかの実施形態では、変数Rは、式−Q−Rを有し、式中、Qは、−O−、−NH−、または−CH−であり、Rは、置換もしくは非置換のアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、もしくはシクロ脂肪族環である。幾つかの実施形態では、Rは、置換もしくは非置換のフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、またはモルホリニル環である。
【0062】
幾つかの実施形態では、Pは、式R−C(O)−を有し、式中、Rは、C1−4アルキル、C1−4フルオロアルキル、またはアリール部分が置換されるか、または非置換である、C6−10アル(C1−4)アルキルである。特定のこのような実施形態では、Pは、アセチル、トリフルオロアセチル、およびフェニルアセチルからなる群から選択される。
【0063】
幾つかの他の実施形態では、Pは、式R−C(O)−を有し、式中、Rは、置換もしくは非置換のフェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、またはキノキサリニルである。特定の実施形態では、Pは、式R−C(O)−を有し、式中、Rは、0〜1個のRおよび0〜2個のR8dで置換される、フェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ナフチル、キノリニル、キノキサリニル、ベンズイミダゾリル、またはジヒドロベンゾオキサジニルである。ある特定の実施形態では、Pは、式R−C(O)−を有し、式中、Rは、式−O−Rの置換基で置換されるピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルであり、Rは、置換もしくは非置換のフェニルである。他のある特定の実施形態では、Pは、式R−C(O)−を有し、式中、Rは、式−O−Rの置換基で置換されるフェニルであり、Rは、置換もしくは非置換のピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルである。
【0064】
幾つかの他の実施形態では、Pは、式R−SO−を有し、式中、Rは、−Rまたは−T−Rであり、Tは、C1−4アルキレンであり、Rは、0〜1個のRおよび0〜2個のR8dで置換されるフェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ナフチル、キノリニル、キノキサリニル、ベンズイミダゾリル、またはジヒドロベンゾオキサジニルである。幾つかの実施形態では、Pは、式R−SOを有し、式中、Rは、置換もしくは非置換のフェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、またはキノキサリニルである。特定の実施形態では、Pは、式R−SO−を有し、式中、Rは、0〜1個のRおよび0〜2個のR8dで置換されるフェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ナフチル、キノリニル、キノキサリニル、ベンズイミダゾリル、またはジヒドロベンゾオキサジニルである。ある特定の実施形態では、Pは、式R−SO−を有し、式中、Rは、式−O−Rの置換基で置換されるピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルであり、Rは、置換もしくは非置換のフェニルである。他のある特定の実施形態では、Pは、式R−SO−を有し、式中、Rは、式−O−Rの置換基で置換されるフェニルであり、Rは、置換もしくは非置換のピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルである。
【0065】
変数Ra1、および各変数Ra2は、独立して、C1−6脂肪族、C1−6フルオロ脂肪族、−(CH−CH−R、−(CH−CH−NHC(=NR)NH−Y、−(CH−CH−CON(R、−(CH−CH−N(R)CON(R、−(CH−CH(R)N(R、−(CH−CH(R)−OR、または−(CH−CH(R)−SRであり、変数R、R、およびRは、上述の値を有し、変数Rおよびmは、以下に記載する値を有する。
【0066】
各Rは、独立して、置換もしくは非置換の単環式または二環式環系である。幾つかの実施形態では、各Rは独立して、置換もしくは非置換のフェニル、ピリジル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ナフチル、キノリニル、キノキサリニル、またはイソキノリニル環である。特定の実施形態では、Rは、置換もしくは非置換のフェニル環である。
【0067】
変数mは、0、1、または2である。幾つかの実施形態では、mは、0または1である。
【0068】
幾つかの実施形態では、Ra1およびRa2は、それぞれ独立して、C1−6脂肪族、C1−6フルオロ脂肪族、または−(CH−CH−Rでありmは、0または1である。幾つかのこのような実施形態では、Rは、置換もしくは非置換のフェニルである。
【0069】
幾つかの実施形態では、Ra1は、C1−6脂肪族、−(CH−CH、または−(CH−CH(C1−4アルキル)−OHである。特定の実施形態では、Ra1は、ベンジルである。特定の他の実施形態では、Ra1は、−CH−CH(CH)−OHである。
【0070】
幾つかの実施形態では、Ra2は、C1−6脂肪族または−(CH−CHである。特定の実施形態では、Ra2は、イソプロピル、ベンジル、またはフェネチルである。
【0071】
変数Aは、0、1、または2である。幾つかの実施形態では、Aは、0または1である。特定の実施形態では、Aは、0である。
【0072】
幾つかの実施形態では、本発明は、式(I−A)
【化2】

を特徴とする式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはボロン酸無水物に関し、式中、変数P、Ra1、Ra2、A、Z、およびZのそれぞれが、式(I)について上述された値および好ましい値を有する。
【0073】
特定の実施形態では、本発明は、式(I−B)
【化3】

を特徴とする式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはボロン酸無水物に関し、式中、変数P、Ra1、Ra2、A、Z、およびZのそれぞれが、式(I)について上述された値および好ましい値を有する。
【0074】
ある特定の実施形態では、本発明は、式(II)
【化4】

【0075】
を特徴とする式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはボロン酸無水物に関し、式中、変数P、Z、およびZのそれぞれが、式(I)について上述された値および好ましい値を有する。
【0076】
幾つかの実施形態では、本発明は、式(II)の化合物に関し、式中、Pは、式R−C(O)−を有し、Rは、置換もしくは非置換のフェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、またはキノキサリニルである。特定の実施形態では、Pは、式R−C(O)−を有し、式中、Rは、0〜1個のRおよび0〜2個のR8dで置換されるフェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ナフチル、キノリニル、キノキサリニル、ベンズイミダゾリル、またはジヒドロベンゾオキサジニルである。ある特定の実施形態では、Pは、式R−C(O)−を有し、式中、Rは、式−O−Rの置換基で置換されるピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルであり、Rは、置換もしくは非置換のフェニルである。他のある特定の実施形態では、Pは、式R−C(O)−を有し、式中、Rは、式−O−Rの置換基で置換されるフェニルであり、Rは、置換もしくは非置換のピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルである。
【0077】
幾つかの他の実施形態では、本発明は、式(II)の化合物に関し、式中、Pは、式R−SO−を有し、式中、Rは、−Rまたは−T−Rであり、Tは、C1−4アルキレンであり、Rは、0〜1個のRおよび0〜2個のR8dで置換されるフェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ナフチル、キノリニル、キノキサリニル、ベンズイミダゾリル、またはジヒドロベンゾオキサジニルである。幾つかの実施形態では、Pは、式R−SO−を有し、式中、Rは、置換もしくは非置換のフェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、またはキノキサリニルである。特定の実施形態では、Pは、式R−SO−を有し、式中、Rは、0〜1個のRおよび0〜2個のR8dで置換されるフェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ナフチル、キノリニル、キノキサリニル、ベンズイミダゾリル、またはジヒドロベンゾオキサジニルである。ある特定の実施形態では、Pは、式R−SO−を有し、式中、Rは、式−O−Rの置換基で置換されるピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルであり、Rは、置換もしくは非置換のフェニルである。他のある特定の実施形態では、Pは、式R−SO−を有し、式中、Rは、式−O−Rの置換基で置換されるフェニルであり、Rは、置換もしくは非置換のピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルである。
【0078】
式(I)の化合物の代表的な例を、表1に示す。
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【0079】
上記表1の化合物は、以下の化学名によって特定することもできる。
【表1−8】

【表1−9】

【表1−10】

【表1−11】

【0080】
本明細書で使用される、「ボロン酸」という用語は、−B(OH)部分を含有する化合物を指す。幾つかの実施形態では、ボロン酸化合物は、ボロン酸部分の脱水によって、オリゴマー無水物を形成することができる。例えば、Snyder et al.,J. Am. Chem. Soc. 80:3611(1958)は、オリゴマーアリールボロン酸について報告している。
【0081】
本明細書で使用される、「ボロン酸無水物」という用語は、1つ以上の水分子を喪失した、ボロン酸化合物の1つ以上の分子の組み合わせによって形成される化合物を指す。水と混合されると、ボロン酸無水化合物は水和され、遊離ボロン酸化合物を放出する。様々な実施形態では、ボロン酸無水物は、2つ、3つ、4つ、もしくはそれ以上のボロン酸単位を含むことができ、環状または直線上の構造を有することができる。本発明のペプチドボロン酸化合物のオリゴマーボロン酸無水物の限定されない例を、以下に例示する。
【化5】

【0082】
式(1)および(2)において、変数nは、0〜約10、好ましくは0、1、2、3、または4の整数である。幾つかの実施形態では、ボロン酸無水化合物は、式(2)の環状三量体(「ボロキシン」)を含み、式中、nは1である。変数Wは、式(3)
【化6】

を有し、式中、変数P、Ra1、およびRa2は、式(I)について上述された値および好ましい値を有する。
【0083】
幾つかの実施形態では、ボロン酸無水化合物中に存在するボロン酸の少なくとも80%は、単一のオリゴマー無水物形態で存在する。幾つかの実施形態では、ボロン酸無水化合物中に存在するボロン酸の少なくとも85%、90%、95%、または99%は、単一のオリゴマー無水物形態で存在する。特定の好ましい実施形態では、ボロン酸無水化合物は、式(3)を有するボロキシンからなるか、またはそれから本質的になる。
【0084】
ボロン酸無水化合物は、好ましくは、再結晶化、凍結乾燥、熱への曝露、および/または乾燥剤への曝露を含むが、これらに限定されない脱水条件に曝露することによって、対応するボロン酸から調製することができる。好適な再結晶溶媒の限定されない例としては、酢酸エチル、ジクロロメタン、ヘキサン、エーテル、アセトニトリル、エタノール、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0085】
幾つかの実施形態では、ZおよびZが共に、ボロン酸錯化剤に由来する部分を形成する。本発明の目的のために、「ボロン酸錯化剤」という用語は、少なくとも2つの官能基を有し、それらのそれぞれが、ホウ素との共有結合を形成することができる、いずれの化合物をも指す。好適な官能基の限定されない例としては、アミノ、ヒドロキシル、およびカルボキシルが挙げられる。幾つかの実施形態では、この官能基のうちの少なくとも1つがヒドロキシル基である。「ボロン酸錯化剤に由来する部分」という用語は、ボロン酸錯化剤の2つの官能基から水素原子を除去することによって形成される部分を指す。
【0086】
本明細書で使用される、「ボロン酸エステル」(boronate ester)および「ボロン酸エステル」(boronic ester)という用語は、交換可能に使用され、−B(Z)(Z)部分を含有する化合物を指し、式中、ZまたはZのうちの少なくとも1つが、アルコキシ、アラルコキシ、またはアリールオキシであるか、あるいはZおよびZが共に、少なくとも1つのヒドロキシル基を有するボロン酸錯化剤に由来する部分を形成する。
【0087】
式(I)、(I−A)、(I−B)、および(II)の化合物において、ZおよびZは、それぞれ独立して、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、またはアラルコキシであるか、あるいはZおよびZが共に、ボロン酸錯化剤に由来する部分を形成する。幾つかの実施形態では、ZおよびZは、それぞれヒドロキシである。幾つかの他の実施形態では、ZおよびZが共に、鎖または環内の少なくとも2個の接続原子によって分離される少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物に由来する部分を形成し、該鎖または環は、炭素原子と、任意で、N、S、またはOであり得る1つもしくは複数のヘテロ原子とを含み、各場合において、ホウ素と結合する原子は酸素原子である。
【0088】
本明細書に採用される、「少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物」という用語は、2つ以上のヒドロキシル基を有するいずれの化合物をも指す。本発明の目的のために、この2つのヒドロキシル基は、好ましくは、少なくとも2個の接続原子、好ましくは約2〜約5個の接続原子、より好ましくは2個または3個の接続原子によって分離される。便宜上、「ジヒドロキシ化合物」という用語は、上で定義される、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物を指すために使用することができる。故に、本明細書に採用される、「ジヒドロキシ化合物」という用語が、ヒドロキシル基を2つのみ有する化合物に限定されることは意図されない。少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物に由来する部分は、そのヒドロキシル基のうちの任意の2つの酸素原子によって、ホウ素に結合することができる。好ましくは、ホウ素原子、ホウ素に結合する酸素原子、および2つの酸素原子を接続する原子が共に、5または6員の環を形成する。
【0089】
本発明の目的のために、ボロン酸錯化剤は、好ましくは医薬的に許容可能、即ち、ヒトへの投与に好適である。幾つかの好ましい実施形態では、ボロン酸錯化剤は、例えば、Plamondonらの国際公開第02/059131号およびGuptaらの国際公開第02/059130号で記載されるような糖である。「糖」という用語は、単糖類、二糖類、多糖類、糖アルコール類、およびアミノ糖類を含む、任意のポリヒドロキシ炭水化物部分を含む。幾つかの実施形態では、糖は、単糖、二糖、糖アルコール、またはアミノ糖である。好適な糖類の限定されない例としては、グルコース、スクロース、果糖、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、グルコサミン、およびN−メチルグルコサミンが挙げられる。特定の実施形態では、糖は、マンニトールまたはソルビトールである。故に、糖がマンニトールまたはソルビトールである実施形態では、ZおよびZが共に、式C12の部分を形成し、2つの脱プロトン化ヒドロキシル基の酸素原子が、ホウ素との共有結合を形成し、ボロン酸エステル化合物を形成する。ある特定の実施形態では、ZおよびZが共に、D−マンニトールに由来する部分を形成する。
【0090】
幾つかの他の好ましい実施形態では、ボロン酸錯化剤は、例えば、2009年6月16日に出願されたElliottらの米国第12/485,344号に記載されるような、α−ヒドロキシカルボン酸またはβ−ヒドロキシカルボン酸である。幾つかのこのような実施形態では、ボロン酸錯化剤は、グリコール酸、リンゴ酸、ヘキサヒドロマンデル酸、クエン酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、マンデル酸、乳酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、β−ヒドロキシイソ吉草酸、サリチル酸、酒石酸、ベンジル酸、グルコヘプトン酸、マロン酸、ラクトビオン酸、ガラクタル酸、エンボン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、および3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸からなる群から選択される。特定のこのような実施形態では、ボロン酸錯化剤はクエン酸である。
一般的な合成方法論
【0091】
式(I)の化合物は、当業者に知られる方法によって調製することができる。例えば、Adamsらの米国特許第5,780,454号、Pickersgillらの国際特許公開第2005/097809号を参照されたい。本発明のN−アシル−ペプチジルボロン酸化合物(P=R−C(O)−)に対する例示的な合成経路を、以下のスキーム1に記載する。
スキーム1:
【化7】

【0092】
化合物iをN保護アミノ酸(ii)とカップリングさせ、次いでN末端脱保護により、化合物iiiを得る。好適な保護基(PG)の例としては、例えば、ホルミル、アセチル(Ac)、スクシニル(Suc)、およびメトキシスクシニル等のアシル保護基、ならびに、例えば、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、およびフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)等のウレタン保護基が挙げられるが、これらに限定されない。ペプチドカップリング反応は、化合物iiのカルボン酸部分を活性化エステル、例えば、O−(N−ヒドロキシスクシンイミド)エステルに事前に変換し、次いで化合物iで処置することにより、行うことができる。代替として、活性化エステルは、カルボン酸をペプチドカップリング試薬と接触させることにより、原位置で生成することができる。好適なペプチドカップリング試薬の例としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、または1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC)等のカルボジイミド試薬、例えば、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(BOP)等のホスホニウム試薬、ならびに例えば、O−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)等のウラン試薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
次いで、化合物iiiをカルボン酸(RCOH)とカップリングさせて、化合物ivを得る。化合物iおよびiiのカップリングについて上述したペプチドカップリング条件は、化合物iiiをRCOHとカップリングするためにも好適である。次いで、ボロン酸部分の脱保護により、化合物vを得る。脱保護ステップは、好ましくは、ボロン酸エステル化合物iv、有機ボロン酸受容体、低級アルカノール、C5−8炭化水素溶媒、および水性鉱酸を含む二相性混合物のエステル交換によって達成される。
スキーム2:
【化8】

【0094】
代替として、スキーム2に示されるように、カップリング反応の順序は、逆にすることができる。したがって、O保護グリシン(vi)をまず置換された安息香酸(ArCOH)とカップリングさせ、その後エステル加水分解により、化合物viiを形成する。次いで、化合物iとのカップリング、およびボロン酸脱保護を、スキーム1について上述したように達成し、化合物vを得る。
【0095】
本発明のN−スルホニル−ペプチジルボロン酸化合物(P=R−S(O)−)を調製するための例示的な合成経路を、以下のスキーム3に記載する。
スキーム3:
【化9】

【0096】
スキーム1について上述したように調製した化合物iiiを、ジイソプロピルエチルアミン等の塩基の存在下、スルホニルクロリドで処理し、化合物viを得る。次いで、ボロン酸部分の脱保護を、スキーム1について上述したように達成し、化合物viiを得る。化合物viiを調製するための反応の順序も、スキーム2に類似した様式で、逆にすることができる。
使用、製剤化、および投与
【0097】
本発明は、プロテアソームの強力な阻害剤である化合物を提供する。この化合物は、プロテアソームを媒介としたペプチド加水分解またはタンパク質分解を阻害するそれらの能力に対して、体外または生体内で、分析され得る。
【0098】
別の態様では、したがって、本発明は、細胞中のプロテアソームの1つ以上のペプチダーゼ活性を阻害するための方法を提供し、本方法は、本明細書に記載の化合物、またはその医薬的に許容される塩、ボロン酸エステル、もしくはボロン酸無水物と、プロテアソーム阻害が所望される細胞とを接触させることを含む。
【0099】
本発明はまた、細胞増殖を阻害するための方法も提供し、本方法は、本明細書に記載の化合物と、このような阻害が所望される細胞を接触させることを含む。「細胞増殖を阻害する」という語句は、阻害剤と接触しない細胞と比較して、接触した細胞中の細胞数または細胞増殖を阻害する、本発明の化合物の能力を表示するために使用される。細胞増殖の評価は、細胞カウンターを用いて、または例えば、MTTまたはWSTアッセイ等の細胞生存アッセイによって、なされ得る。細胞が、充実性増殖(例えば、固形腫瘍または臓器)している場合、細胞増殖のこのような評価は、例えば、カリパスを用いて、増殖を測定し、非接触細胞と接触した細胞の増殖の大きさを比較することによって、なされ得る。
【0100】
好ましくは、阻害剤と接触した細胞の増殖は、非接触細胞の増殖と比較して、少なくとも約50%遅延される。種々の実施形態では、接触した細胞の増殖は、非接触細胞と比較して、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%阻害される。幾つかの実施形態では、「細胞増殖を阻害する」という語句は、非接触細胞と比較した、接触細胞数の減少を含む。故に、接触した細胞内で細胞増殖を阻害するプロテアソーム阻害剤は、接触細胞が増殖遅延、増殖停止、プログラム化した細胞死(即ち、アポトーシス)、または壊死細胞死を引き起こすことを誘発し得る。
【0101】
別の態様では、本発明は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくはボロン酸無水物と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
【0102】
本発明の化合物の医薬的に許容される塩が、これらの組成物に利用される場合、塩は、好ましくは、無機または有機の酸または塩基に由来する。好適な塩の概説については、例えば、Berge et al,J. Pharm. Sci. 66:1−19(1977)およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,ed. A. Gennaro,Lippincott Williams & Wilkins,2000を参照されたい。
【0103】
好適な酸付加塩の限定されない例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピン酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ルコヘプタン酸塩(lucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタリンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチネート、過硫酸塩、3−フェニル−プロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシレート、およびウンデカン酸塩が挙げられる。
【0104】
好適な塩基付加塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩)、亜鉛塩等の他の多価金属塩、有機塩基(例えば、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、およびコリン)との塩、ならびにアミノ酸(例えば、アルギニン、リシン)との塩等が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、医薬的に許容される塩は、式(I)のボロン酸化合物の塩基付加塩であり、式中、ZおよびZは共にヒドロキシである。
【0105】
「医薬的に許容される担体」という用語は、レシピエント対象、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトに適合する、物質を指すように、本明細書で使用され、薬剤の活性を終了することなく、標的部位に活性剤を送達するのに好適である。担体に付随した毒性または副作用は、存在する場合、好ましくは、活性剤の目的用途に対する合理的なリスク/利益比に相応する。
【0106】
「担体」、「アジュバント」、または「ビヒクル」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、所望の特定の投薬形態に好適である、いかなる、およびあらゆる溶媒、希釈剤、および他の液体媒体、分散助剤もしくは懸濁助剤、界面活性剤、pH調節剤、等張剤、増粘剤もしくは乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤等が含まれる。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,ed. A. Gennaro,Lippincott Williams & Wilkins,2000は、医薬的に許容される組成物を製剤化するのに使用される種々の担体、ならびにその調製のための既知の技術を開示している。任意の望ましくない生物学的効果をもたらすか、そうでなければ医薬的に許容される組成物のいずれかの他の成分と有害な様式で相互作用することによる等、任意の従来の担体媒体が、本発明の化合物に不適合である場合を除いて、その使用は、本発明の範囲内であることが企図される。医薬的に許容される担体としての作用し得る物質の幾つかの例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝液物質(例えば、リン酸塩、炭酸塩、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム)、グリシン、ソルビン酸、もしくはソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的なグリセリド混合物、水、発熱物質不含有水、塩もしくは電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、および亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、羊毛脂、糖類(ラクトース、グルコース、スクロース、およびマンニトール等)、デンプン(例えば、コーンスターチおよびジャガイモデンプン)、セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース)、粉末状トラガカントガム、麦芽、ゼラチン、タルク、賦形剤(例えば、カカオバターおよび坐剤ワックス)、油(例えば、落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、および大豆油)、グリコール(例えば、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール)、エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル)、寒天、アルギン酸、等張生理食塩水、リンゲル溶液、アルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、およびグリセロール)、シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンおよびスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン)、滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)、石油炭化水素(例えば、鉱油およびペトロラタム)が挙げられるが、これらに限定されない。着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および香料、防腐剤および抗酸化剤も、調合者の判断に従って当該組成物中に存在することが可能である。
【0107】
本発明の医薬組成物は、従来の整粒、混合、溶解、カプセル化、凍結乾燥、または乳化プロセス等の当該技術分野において周知の方法によって製造することができる。組成物は、顆粒、沈殿剤、または微粒、粉末(凍結乾燥した、回転乾燥、またはスプレー乾燥した粉末を含む)、非晶質粉末、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、座薬、注射、乳剤、エリキシル剤、懸濁剤、または溶剤等を含む、種々の剤形で生成し得る。
【0108】
好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、哺乳動物、好ましくはヒトへの医薬的な投与用に製剤化される。本発明のこのような医薬組成物は、経口、非経口で、吸入噴霧的、局所的、経直腸的、経鼻的、経頬的、経腟的に、または埋め込み容器を経由して投与され得る。本明細書で使用される、「非経口」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内、および頭蓋内等の注射または注入法を含む。組成物は、経口的、非経口的、または皮下に投与されることが好ましい。本発明の製剤は、短時間作用型、高速放出、または長時間作用型であるように設計され得る。更にまた、化合物は、例えば、腫瘍部位での投与(例えば、注射による)のような全身的手段ではなく、局所に投与することができる。
【0109】
経口投与用の液体投薬形態としては、医薬的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、溶剤、懸濁液、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。 活性化合物に加えて、液体投薬形態は、例えば、水もしくは他の溶媒のような当該技術分野において一般的に使用される不活性希釈剤、可溶化剤および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、シクロデキストリン、ジメチルホルムアミド)、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタン脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含有し得る。不活性希釈剤に加えて、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤および香料等のアジュバントも含むことができる。
【0110】
注射用調合、例えば、無菌注射用の水性もしくは油性懸濁液は、好適な分散剤もしくは湿潤剤、および懸濁化剤を用いて、従来知られている方法により製剤化され得る。無菌注射用調合はまた、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤もしくは溶媒における、無菌注射用液、懸濁液、または乳剤であり得る。採用され得る許容されるビヒクルおよび溶媒は、水、リンガー溶液、U.S.P.、および等張食塩水である。加えて、従来、無菌の固定油が、溶媒または懸濁媒体として採用されている。この目的のために、合成のモノ−またはジグリセリドを含む、任意の刺激のない固定油が採用され得る。加えて、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体等の脂肪酸が、注射物質の調製に使用される。注射用製剤は、例えば、滅菌フィルタ(bacterial−retaining filter)での濾過によって、使用前に、無菌水または他の無菌注射用媒体中に溶解され得るか、または分散され得る、無菌固体組成物の形状の無菌剤を組み込むことによって、無菌化することができる。非経口投与用に製剤化された組成物は、静脈内ボーラス、または定時プッシュ(timed push)によって注射され得るか、または持続注入によって投与され得る。
【0111】
経口投与用の固体投薬形態には、カプセル剤、錠剤、丸薬、粉末、および顆粒が含まれる。このような固体投薬形態では、活性化合物は、クエン酸ナトリウムもしくは第二リン酸カルシウム等の少なくとも1つの不活性の医薬的に許容される賦形剤または担体、ならびに/またはa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸等の充填剤もしくは増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアカシア等の結合剤、c)グリセロール等の保湿剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム等の崩壊剤、e)パラフィン等の溶解遅延剤、f)第四アンモニウム化合物等の吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート等の湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイトクレー等の吸収剤、およびi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑沢剤、ならびにこれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤および丸薬の場合は、投薬形態はまた、リン酸塩、または炭酸塩等の緩衝剤も含み得る。
【0112】
同様のタイプの固体組成物はまた、ラクトースもしくは乳糖、および高分子量ポリエチレングリコール等のような賦形剤を用いて、軟質および硬質ゼラチンカプセル剤において充填剤として使用され得る。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体投薬形態は、腸溶コーティングおよび製薬分野において周知の他のコーティング等のコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。それらは、任意に、乳白剤を含有し得、かつそれらが腸管の特定の部分においてのみ、またはそこにおいて優先的に、任意に、遅延様式で、1つもしくは複数の有効成分を放出する組成のものでもあり得る。使用され得る包埋組成物の例には、高分子物質およびワックスが挙げられる。同様のタイプの固体組成物はまた、ラクトースもしくは乳糖、および高分子量ポリエチレングリコール等の賦形剤を用いて、軟質および硬質ゼラチンカプセル剤において充填剤としても採用され得る。
【0113】
活性化合物はまた、上で述べたように、1つ以上の賦形剤と共にマイクロカプセル化された形態であり得る。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸薬、および顆粒剤の固体投薬形態は、腸溶コーティング、放出制御コーティング、および製薬分野において周知の他のコーティング等のコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。このような固体投薬形態では、活性化合物は、スクロース、ラクトース、またはデンプン等の少なくとも1つの不活性希釈剤と混合することができる。このような投薬形態はまた、通常の慣行であるように、例えば、錠剤化滑沢剤、およびステアリン酸マグネシウムおよび微晶質セルロース等の他の錠剤化補助剤等の不活性希釈剤以外の追加物質を含み得る。カプセル剤、錠剤および丸薬の場合は、投薬形態はまた、緩衝剤も含み得る。それらは、任意に、乳白剤を含有し得、かつそれらが腸管の特定の部分においてのみ、またはそこにおいて優先的に、任意に、遅延様式で、有効成分(単数または複数)を放出する組成のものでもあり得る。使用され得る包埋組成物の例には、高分子物質およびワックスが挙げられる。
【0114】
本発明の化合物の局所または経皮投与用の投薬形態には、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉剤、溶剤、スプレー、吸入剤、またはパッチが含まれる。有効成分は、無菌条件下で、医薬的に許容される担体、および任意の必要とされる保存剤または必要とされ得る緩衝剤と混合される。眼科用製剤、点耳剤、および点眼剤はまた、本発明の範囲内であることが企図される。追加として、本発明は、経皮パッチの使用を企図し、これは、身体への化合物の制御送達を提供するという更なる利点を有する。このような投薬形態は、適切な媒体中に化合物を溶解または分散することによって、調製され得る。吸収促進剤はまた、皮膚を横切る化合物の流れを増加させるために使用することもできる。速度制御膜を提供することによって、またはポリマーマトリクスまたゲル中に化合物を分散することによって、速度を制御することができる。
【0115】
幾つかの実施形態では、式(I)の化合物は、静脈内投与される。幾つかのこのような実施形態では、ZおよびZが共に、ボロン酸錯化剤に由来する部分を形成する式(I)の化合物を、Plamondonらの国際公開第02/059131号に記載されるように、凍結乾燥粉末の形態に製剤化することができ、当該出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。幾つかの実施形態では、凍結乾燥粉末は、遊離ボロン酸錯化剤も含む。好ましくは、遊離ボロン酸錯化剤および式(I)の化合物は、約0.5:1〜約100:1、より好ましくは約5:1〜約100:1の範囲のモル比で混合物中に存在する。種々の実施形態では、凍結乾燥粉末は、遊離ボロン酸錯化剤および対応するボロン酸エステルを、約10:1〜約100:1、約20:1〜約100:1、または約40:1〜約100:1の範囲のモル比で含む。
【0116】
幾つかの実施形態では、凍結乾燥粉末は、ボロン酸錯化剤および式(I)の化合物を含み、実質的に他の成分を含んでいない。しかしながら、本組成物は、1つ以上の他の医薬的に許容される賦形剤、担体、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、増量剤、安定剤、可溶化剤、および当該技術分野において周知の他の物質を更に含むことができる。これらの物質を含有する医薬的に許容される製剤の調製は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,ed. A. Gennaro,Lippincott Williams & Wilkins,2000、または最新版に記載されている。幾つかの実施形態では、本医薬組成物は、式(I)の化合物、増量剤、および緩衝剤を含む。
【0117】
式(I)の化合物を含む凍結乾燥粉末は、Plamondonらの国際公開第02/059131号に記載される手順に従って、調製することができる。したがって、幾つかの実施形態では、凍結乾燥粉末を調製するための方法は、(a)ZおよびZがそれぞれヒドロキシである式(I)のボロン酸化合物と、ボロン酸錯化剤とを含む水性混合物を調製することと、(b)その混合物を凍結乾燥することと、を含む。
【0118】
凍結乾燥粉末は、好ましくは、医薬的投与に好適な水性溶媒を添加することによって、再構成される。好適な再構成溶媒の例としては、水、生理食塩水、およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、凍結乾燥粉末は、通常の(0.9%)生理食塩水で再構成される。再構成時、ボロン酸エステル化合物と対応する遊離ボロン酸化合物との間に平衡が確立される。幾つかの実施形態では、平衡には、例えば、水媒体を添加してから1〜15分以内に、迅速に到達する。平衡時に存在するボロン酸エステルおよびボロン酸の相対濃度は、例えば、溶液のpH、温度、ボロン酸錯化剤の性質、および凍結乾燥粉末中に存在するボロン酸錯化剤とボロン酸エステル化合物との比率等のパラメータに依存する。
【0119】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、プロテアソーム媒介性疾患に罹患しているか、またはそれを発症もしくは再発を経験する危険性がある患者に投与するために製剤化される。「患者」という用語は、本明細書で使用される場合、動物、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトを意味する。本発明の好ましい医薬組成物は、経口、静脈内、または皮下投与用に製剤化されたものである。しかしながら、治療有効量の本発明の化合物を含有する、上記の投薬形態のうちのいずれも、十分に日常的な実験の範囲内であり、したがって、十分に本発明の範囲内である。幾つかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、別の治療剤を更に含み得る。幾つかの実施形態では、このような他の治療剤は、治療されるべき疾患または状態を有する患者に通常投与されるものである。
【0120】
「治療有効量」とは、プロテアソーム活性またはプロテアソーム媒介性疾患の重症度の検出可能な減少を生じるのに十分な量を意味する。必要とされるプロテアソーム阻害剤の量は、既定の細胞型に対する阻害剤の有効性、および疾患を治療するために必要とされる時間によって異なり得る。また、いずれの特定の患者に必要とされる特効薬および治療レジメンも、採用される特定の化合物の活性、患者の年齢、体重、全体的な健康、性別、食生活、投与時間、排出率、薬の併用、治療にあたる医師の判断、および治療を受ける特定の疾患の重症度を含む、種々の要因によることが理解されるべきである。本発明の組成物中に存在する更なる治療剤の量は、一般的に、唯一の活性剤としてその治療剤を含む組成物中で通常投与される量よりも少ない。好ましくは、更なる治療剤の量は、唯一の治療活性剤としてその薬剤を含む組成物中に通常存在する量の約50%〜約100%の範囲になる。
【0121】
別の態様では、本発明は、プロテアソーム媒介性疾患に罹患している、またはそれを発症もしくは再発を経験する危険性がある患者を治療するための方法を提供する。本明細書で使用される、「プロテアソーム媒介性疾患」という用語は、プロテアソーム発現もしくは活性が増加することにより生じるか、またはそれを特徴とする、あるいはプロテアソーム活性が必要とされる、いかなる疾患、疾病または、状態をも含む。「プロテアソーム媒介性疾患」という用語はまた、プロテアソーム活性の阻害が有益である、いかなる疾患、疾病または、状態をも含む。
【0122】
例えば、本発明の化合物および医薬組成物は、プロテアソーム活性によって調節される、タンパク質(例えば、NFkB、p27Kip、p21WAF/CIP1、p53)を介して媒介される疾患の治療において有用である。関連疾患には、炎症性疾患(例えば、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、変形性関節症、皮膚病(例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬))、血管増殖性疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症、再狭窄)、増殖性眼疾患(例えば、糖尿病性網膜症)、良性増殖性障害(例えば、血管腫症)、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症、組織および臓器の拒絶反応)、ならびに感染と関連した炎症(例えば、免疫反応)、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、運動ニューロン疾患、神経因性疼痛、トリプレットリピート病、星状細胞腫、およびアルコール性肝臓疾患の結果としての神経変性)、虚血性傷害(例えば、脳梗塞)、ならびに悪液質(例えば、種々の生理学的および病理的状態(例えば、神経傷害、絶食、発熱、アシドーシス、HIV感染、癌の苦痛、および特定の内分泌障害)を伴う促進筋肉タンパク質分解)が含まれる。
【0123】
本発明の化合物および医薬組成物は、癌の治療に特に有用である。本明細書で使用される、「癌」という用語は、制御されていない、または調節されていない細胞増殖、細胞分化の減少、周囲組織に侵入する不適切な能力、および/または異所で新しい増殖を構築する能力を特徴とする、細胞障害を指す。「癌」という用語には、固形腫瘍および血液感染性の腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。「癌」という用語は、皮膚、組織、臓器、骨、軟骨、血液、および血管の疾患を包含する。「癌」という用語は、原発性癌および転移性癌を更に含む。
【0124】
酵素動力学における差異、即ち、種々のプロテアソーム阻害剤間の解離半減期における差異が、種々の阻害剤の組織分布における差異をもたらす場合があり、これは、安全性および有効性プロファイルにおける差異をもたらす場合がある。例えば、緩徐に可逆的および不可逆的な阻害剤を用いると、分子の相当な割合が、赤血球、血管内皮、および十分灌流した肝臓等の臓器中のプロテアソーム(即ち、近接する区画内で最も「直ちに利用可能な」プロテアソーム)に結合し得る。これらの部位は、これらの薬剤に対して「シンク」として効果的に機能し、迅速に分子に結合し、固形腫瘍内への分布に影響を及ぼし得る。
【0125】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者は、プロテアソームからより迅速に解離する化合物は、腫瘍により効果的に分布し、抗腫瘍活性の改善に通じると考える。幾つかの実施形態では、本発明は、癌に罹患する患者を治療するための方法に関し、本方法は、式(I)、(I−A)、(I−B)、または(II)のうちのいずれか1つの化合物を患者に投与することを含み、その化合物は、60分未満の解離半減期を呈する。幾つかの実施形態では、この化合物は、10分未満の解離半減期を呈する。
【0126】
開示されたプロテアソーム阻害剤で治療可能な固体腫瘍の限定されない例には、膵臓癌、膀胱癌、結腸直腸癌、転移性乳癌を含む乳癌、アンドロゲン依存性およびアンドロゲン非依存性前立腺癌を含む前立腺癌、腎臓癌(例えば、転移性腎細胞癌を含む)、肝細胞癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)、細気管支肺胞上皮癌(BAC)、および肺腺癌を含む)、卵巣癌(例えば、進行性上皮癌または原発性腹膜癌を含む)、子宮頸癌、胃癌、食道癌、頭頸部癌(例えば、頭頸部の扁平上皮細胞癌を含む)、メラノーマ、転移性神経内分泌腫瘍を含む神経内分泌癌、脳腫瘍(例えば、神経膠腫、未分化希突起グリオーマ、多形成グリア芽細胞腫、および成人未分化星細胞腫を含む)、骨肉種、ならびに軟部組織の肉腫が挙げられる。
【0127】
開示されたプロテアソーム阻害剤で治療可能な血液学的悪性腫瘍の限定されない例には、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)(CML移行期およびCML芽球期(CML−BP)を含む)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、ホジキン病(HD)、濾胞性リンパ腫およびマントル細胞リンパ腫を含む非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫(MM)、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、不応性貧血(RA)、環状鉄芽球を伴う不応性貧血(RARS)、過剰な芽球を伴う不応性貧血(RAEB)、および移行期RAEB(RAEB−T)を含む骨髄異形成症候群(MDS)、ならびに骨髄増殖性症候群が挙げられる。
【0128】
幾つかの実施形態では、本発明の化合物または組成物は、多発性骨髄腫およびマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される癌に罹患しているか、またはそれを発症もしくは再発を経験する患者を治療するために使用される。
【0129】
幾つかの実施形態では、本発明のプロテアソーム阻害剤は、別の治療剤と組み合わせて投与される。他の治療剤はまた、プロテアソームを阻害し得るか、または異なる機構によって作用し得る。幾つかの実施形態では、他の治療剤は、治療されるべき疾患または状態を有する患者に通常投与されるものである。本発明のプロテアソーム阻害剤は、他の治療剤と共に、単一の投薬形態で、または別個の投薬形態として、投与され得る。別個の投薬形態として投与される場合、他の治療剤は、本発明のプロテアソーム阻害剤を投与する前、同時に、または投与した後に、投与され得る。
【0130】
幾つかの実施形態では、式(I)のプロテアソーム阻害剤は、抗癌剤と組み合わせて投与される。本明細書で使用される、「抗癌剤」という用語は、癌を治療する目的のために癌を患う対象に投与される、任意の薬剤を指す。
【0131】
DNA損傷性のある化学療法薬の限定されない例には、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン、カンプトセシンおよびその類似体又は代謝産物、およびドキソルビシン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド、テニポシド、およびダウノルビシン)、アルキル化剤(例えば、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、チオテパ、イホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、メトトレキサート、マイトマイシンC、およびシクロホスファミド)、DMA挿入剤(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチン)、DNA挿入剤および遊離ラジカル生成物(例えば、ブレオマイシン)、ならびにヌクレオシド模倣薬(例えば、5−フルオロウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン、フルダラビン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、およびヒドロキシ尿素)が挙げられる。
【0132】
細胞複製を妨害する化学療法剤には、パクリタキセル、ドセタキセル、および関連類似体、ビンクリスチン、ビンブラスチン、および関連類似体、サリドマイド、レナリドマイド、および関連類似体(例えば、CC−5013およびCC−4047)、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、メシル酸イマチニブおよびゲフィチニブ)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、IκBキナーゼの阻害剤を含むNF−κB阻害剤、癌に過剰発現したタンパク質に結合し、それにより細胞複製を下方制御する抗体(例えば、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、およびベバシツマブ)、ならびに癌において上方制御、過剰発現、または活性化されることが知られ、その阻害が細胞複製を下方制御するタンパク質もしくは酵素の他の阻害剤が挙げられる。
【0133】
本発明を更に十分に理解できるように、以下の調製実施例および試験実施例を記載する。これらの実施例には、特定の化合物を生成または試験する方法が例示され、多少なりとも本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0134】
実施例
【化10−1】

分析的LC−MS法
LCMS条件
【0135】
ボロン酸の分析は、以下の勾配を使用して、WatersのSymmetry 3.5μm C18 6×100mm IDカラム上で行った。
溶媒A:1%アセトニトリル、99%水、0.1%ギ酸
溶媒B:95%アセトニトリル、5%水、0.1%ギ酸
【表2】

【0136】
中間体のスペクトルは、以下の条件を使用して、Hewlett−Packard HP1100上で実行した。
【0137】
ギ酸:3分間、HO中0〜100パーセントの0.1%ギ酸を含有するACNの2.5mL/分勾配でPhenominexのLuna 5μm C18 50×4.6mmカラム。
【0138】
酢酸アンモニウム:3分間、HO中0〜100パーセントの10mM酢酸アンモニウムを含有するACNの2.6mL/分勾配でPhenominexのLuna 5μm C18 50×4.6mmカラム。
実施例1:(1R)−2−シクロブチル−1−[(3aS,4S,6S)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3、2−ベンゾジオキサボロル−2−イル]エタンアミン・CHO(中間体4)
【化10−2】

ステップ1:(3aS,4S,6S)−2−(ジクロロメチル)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロル(中間体1)
【0139】
−80℃〜−90℃のTHF(800mL)中のCHClの溶液(80mL、1.2mol)に、N下でn−BuLi(ヘキサン中2.5M、480mL、1.2mol)を添加し、反応混合物を−80℃未満で1.5時間撹拌した。B(OEt)(200mL、1.2mol)を一度に添加し、混合物を−45℃〜−30℃で1時間撹拌した。次いで、HCl水溶液(5M、240mL、1.2mol)を−20℃未満の温度で滴下添加し、得られた混合物を−20℃で4時間撹拌した。有機層を分離し、水層をEtO(100mL×2)で抽出した。合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥させて、濃縮し、中間体を得た。その中間体をEtO(800mL)に再度溶解し、ピナンジオール(188g、1.1mol)をこの溶液に添加した。反応混合物を一晩室温で撹拌し、次いで真空内で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィ(石油エーテル:酢酸エチル=10:1〜1:1)で精製して、中間体1(190g、60%収率)を得た。
ステップ2:(3aS,4S,6S)−2−[(1S)−1−クロロ−2−シクロブチルエチル]−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロル(中間体2)
【0140】
THF(650mL)中のMg(13.60g、560mmol)に、N下でDIBAL(トルエン中1M、9.1mL、9.1mmol)を添加し、混合物を30分間室温で混合した。次いで、中間体2(40.6mL、360mmol)を40℃未満で滴下添加し、反応混合物を室温で2.5時間撹拌した。−78℃に冷却後、その溶液を、N保護下で−78℃のTHF(400mL)中の中間体1の溶液(70g、0.267mol)に移し、得られた混合物を45分間撹拌した。次いで、ZnCl(EtO中1M、750mL、750mmol)を一度に添加し、混合物を室温に加温させ、一晩撹拌した。反応混合物に、酢酸エチル(800mL)および飽和NHCl(350mL)を添加し、混合物を1時間撹拌し、有機層を水(300mL)、ブライン(300mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させて、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィ(石油エーテル:酢酸エチル=20:1〜2:1)で精製し、無色の油として中間体2(65g、82%収率)を得た。
ステップ3:N−{(1R)−2−シクロブチル−1−[(3aS,4S,6S)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロル−2−イル]エチル}−1,1,1−トリメチル−N−(トリメチルシリル)シランアミン(中間体3)
【0141】
−78℃のTHF(500mL)中のLiHMDSの溶液(THF中1M、500mL、0.5mol)に、N保護下でTHF(700mL)中の中間体2の溶液(130g、0.438mol)を添加した。反応混合物を室温に加温させ、一晩撹拌した。その溶媒を回転蒸発によって除去し、残渣を1.0LのEtO/Hex(1:1)で溶かした。その溶液を、シリカゲル(300g)のパッドを通して濾過し、500mLのEtO/Hex(1:1)で洗浄した。この溶液を濃縮し、無色の油として中間体3(166g、90%)を得た。
ステップ4:(1R)−2−シクロブチル−1−[(3aS,4S,6S)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3、2−ベンゾジオキサボロル−2−イル]エタンアミン・CHO(中間体4)
【0142】
EtO(1.5L)中の中間体3の溶液(166g、0.39mol)に、−45℃のEtO(500mL)中のTFAの溶液(92mL、1.2mol)を添加した。混合物を室温に加温させ、1時間撹拌した。沈殿物を濾過によって収集し、EtO(200mL×3)で洗浄し、白色の固体として中間体4(103g、71%収率)を得た。
実施例2:{(1R)−1−[((2S)−2−{[(2S)−2−(アセチルアミノ)−4−フェニルブタノイル]アミノ}−3−フェニルプロパノイル)アミノ]−2−シクロブチルエチル}ボロン酸(22)
ステップ1:tert−ブチル[(1S)−1−ベンジル−2−({(1R)−2−シクロブチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロル−2−イル]エチル}アミノ)−2−オキソエチル]カルバミン酸塩
【0143】
一首丸底フラスコに、中間体4(496mg、1.26mmol)、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニン(0.362g、1.36mmol)、TBTU(0.640g、1.99mmol)、およびN,N−ジメチルホルムアミド(10.0mL、0.129mol)を添加した。次いで、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.12mL、6.40mmol)を−45℃で滴下添加した。冷却槽を20分後に除去し、混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を酢酸エチルと水とに分割し、次いで有機層を3×100mLの水および3×100mLのブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を真空内で除去した。得られた残渣を40%のEA/hexでカラムクロマトグラフィによって精製し、オフホワイトの固体として0.55g(84%収率)の生成物を得た。
ステップ2:(2S)−2−アミノ−N−{(1R)−2−シクロブチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3、2−ベンゾジオキサボロル−2−イル]エチル}−3−フェニルプロパンアミド・HCl
【0144】
一首丸底フラスコに、tert−ブチル[(1S)−1−ベンジル−2−({(1R)−2−シクロブチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロル−2−イル]エチル}アミノ)−2−オキソエチル]カルバミン酸塩(0.550g、1.05mmol)、塩化メチレン(6.00mL、0.0936mol)、および1,4−ジオキサン中4.0Mの塩酸(6.00mL、0.024mol)を添加した。混合物を室温で30分間撹拌した。 溶媒およびHClを真空内で除去し、白色の固体として0.517g(99%収率)の所望の生成物を得た。
ステップ3:tert−ブチル[(1S)−1−({[(1S)−1−ベンジル−2−({(1R)−2−シクロブチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロル−2−イル]エチル}アミノ)−2−オキソエチル]アミノ}カルボニル)−3−フェニルプロピル]カルバミン酸塩
【0145】
一首丸底フラスコに、(2S)−2−アミノ−N−{(1R)−2−シクロブチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロル−2−イル]エチル}−3−フェニルプロパンアミド(217mg、0.511mmol)、Boc−ホモphe−OH(171mg、0.614mmol)、TBTU(246mg、0.767mmol)を添加し、次いでN,N−ジメチルホルムアミド(14.5mL、0.187mol)、その後N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.187mL、1.07mmol)を室温で滴下添加した。混合物を室温で一晩撹拌した。DMFを真空下で反応混合物から除去し、得られた残渣を40%のEtOAc/ヘキサンで分取用TLCにより精製し、白色の固体として298mg(85%収率)の所望の生成物を得た。
ステップ4:(2S)−2−アミノ−N−[(1S)−1−ベンジル−2−({(1R)−2−シクロブチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3、2−ベンゾジオキサボロル−2−イル]エチル}アミノ)−2−オキソエチル]−4−フェニルブタンアミド・HCl
【0146】
一首丸底フラスコに、tert−ブチル[(1S)−1−({[(1S)−1−ベンジル−2−({(1R)−2−シクロブチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロル−2−イル]エチル}アミノ)−2−オキソエチル]アミノ}カルボニル)−3−フェニルプロピル]カルバミン酸塩(298mg、0.000434mol)、塩化メチレン(3.0mL、0.047mol)、次いで1,4−ジオキサン中4.0Mの塩酸(3.0mL、0.012mol)を添加した。混合物を室温で30分間撹拌し、次いで溶媒を真空内で除去し、0.243g(90%収率)の所望の生成物を得た。
ステップ5:(2S)−2−(アセチルアミノ)−N−[(1S)−1−ベンジル−2−({(1R)−2−シクロブチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロル−2−イル]エチル}アミノ)−2−オキソエチル]−4−フェニルブタンアミド
【0147】
20mLのシンチレーションバイアルに、(2S)−2−アミノ−N−[(1S)−1−ベンジル−2−({(1R)−2−シクロブチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロル−2−イル]エチル}アミノ)−2−オキソエチル]−4−フェニルブタンアミド・HCl(52.0mg、0.0836mmol)、アセトニトリル(5.20mL、0.0996mol)、無水酢酸(8.68μL、0.092mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(36.4μL、0.209mmol)、およびN,N−ジメチルアミノピリジン(0.0005g、0.004mmol)を添加した。混合物を一晩撹拌し、沈殿物を濾過し、EtOで洗浄し、白色の固体として0.028g(53%収率)の生成物を得た。
ステップ6:{(1R)−1−[((2S)−2−{[(2S)−2−(アセチルアミノ)−4−フェニルブタノイル]アミノ}−3−フェニルプロパノイル)アミノ]−2−シクロブチルエチル}ボロン酸
【0148】
一首丸底フラスコに、(2S)−2−(アセチルアミノ)−N−[(1S)−1−ベンジル−2−({(1R)−2−シクロブチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロル−2−イル]エチル}アミノ)−2−オキソエチル]−4−フェニルブタンアミド(24.8mg、0.0395mmol)、メタノール(0.237mL、5.86mmol)、ヘキサン(0.237mL、1.81mmol)、塩酸(0.0889mmol、0.0889mmol)、および2−メチルプロピルボロン酸(8.65mg、0.0849mmol)を添加した。混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を10%のMeOH/CHClで分取用TLCによって精製し、白色の固体として9.90mg(51%収率)の所望の生成物を得た。H NMR(CDOD、300MHz、δ):7.32−7.12(m、10H);4.74(t、J=7.94Hz、1H);4.26(dd、J=5.49、8.55Hz、1H);3.14−3.05(m、2H);2.66−2.55(m、2H);2.48−2.41(m、1H);2.19−2.05(m、1H);2.04−1.89(m、8H);1.89−1.69(m、3H);1.58−1.36(m、3H);1.33−1.22(m、1H)。
実施例3:{(1R)−1−[((2S)−2−{[(2S)−2−(アセチルアミノ)−4−フェニルブタノイル]アミノ}−3−フェニルプロパノイル)アミノ]−2−シクロブチルエチル}ボロン酸のD−マンニトールエステル
【0149】
上記生成物{(1R)−1−[((2S)−2−{[(2S)−2−(アセチルアミノ)−4−フェニルブタノイル]アミノ}−3−フェニルプロパノイル)アミノ]−2−シクロブチルエチル}ボロン酸(9.90mg、0.0201mmol)に、tert−ブチルアルコール(1.21mL、0.0127mol)、水(1.21mL、0.0672mol)、およびD−マンニトール(72.0mg、0.395mmol)を添加した。その溶液を−78℃で凍結し、凍結乾燥器に40時間定置し、80.1mg(97%収率)の白色の粉末を得た。
実施例4:更なるN−アシル−ペプチジルボロン酸化合物
【0150】
以下のボロン酸化合物は、上記実施例1〜2に記載されるものと類似の手順により調製された。また、全ての化合物が、実施例3に記載されるように、対応するD−マンニトールエステルに変換された。
【表3】

実施例5:{(1R)−2−シクロブチル−1−[((2S)−2−{[(6−フェノキシピリジン−3−イル)スルホニル]アミノ}−3−フェニルプロパノイル)アミノ]エチル}ボロン酸(11)
ステップ1:(2S)−N−{(1R)−2−シクロブチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロル−2−イル]エチル}−2−{[(6−フェノキシピリジン−3−イル)スルホニル]アミノ}−3−フェニルプロパンアミド
【0151】
20mLのバイアルに、(2S)−2−アミノ−N−{(1R)−2−シクロブチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3、2−ベンゾジオキサボロル−2−イル]エチル}−3−フェニルプロパンアミド・HCl(46.3mg、0.109mmol)(実施例に記載されるように調製)、THF(1.47mL)、N,Nジイソプロピルエチルアミン(47.5μL)、および6−フェノキシ−3−ピリジンスルホニルクロリド(32.4mg)を添加した。混合物を室温で一晩撹拌した。ヘキサン中50%の酢酸エチルを使用するシリカプレート上の分取用TLCによって、生成物を精製し、白色の固体として35mgの所望の生成物を得た。
ステップ2:{(1R)−2−シクロブチル−1−[((2S)−2−{[(6−フェノキシピリジン−3−イル)スルホニル]アミノ}−3−フェニルプロパノイル)アミノ]エチル}ボロン酸
【0152】
20mLのバイアルに、(2S)−N−{(1R)−2−シクロブチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロル−2−イル]エチル}−2−{[(6−フェノキシピリジン−3−イル)スルホニル]アミノ}−3−フェニルプロパンアミド(31.2mg、0.047mmol)、(2−メチルプロピル)ボロン酸(10.4mg)、1N塩酸(0.107mmol)、メタノール(0.285mL)、およびヘキサン(0.285mL)を添加した。混合物を室温で一晩撹拌し、次いでヘキサン層を分離して廃棄した。残りの溶媒を真空内で除去し、CHCl中10%のMeOHを使用するシリカプレート上の分取用TLCによって、残渣を精製し、白色の固体として18.4mg(74%収率)の所望の生成物を得た。H NMR(CDOD、300MHz、δ):8.36(s、1H);7.95−7.84(m、1H);7.52−7.39(m、2H);7.33−7.06(m、10H);6.95−6.83(m、1H);4.25−4.13(m、1H);3.09−2.94(m、1H);2.93−2.78(m、1H);2.46−2.32(m、1H);2.26−1.93(m、3H);1.92−1.71(m、2H);1.64−1.37(m、3H);1.37−1.22(m、1H)。
実施例6:{(1R)−2−シクロブチル−1−[((2S)−2−{[(6−フェノキシピリジン−3−イル)スルホニル]アミノ}−3−フェニルプロパノイル)アミノ]エチル}ボロン酸のD−マンニトールエステル
【0153】
上記生成物{(1R)−2−シクロブチル−1−[((2S)−2−{[(6−フェノキシピリジン−3−イル)スルホニル]アミノ}−3−フェニルプロパノイル)アミノ]エチル}ボロン酸(18.4mg、0.0352mmol)に、tert−ブチルアルコール(2.12mL、0.0222mol)、水(2.12mL、0.118mol)、およびマンニトール−D(127mg、0.697mmol)を添加した。その溶液を−78℃で凍結させ、40時間凍結乾燥器に定置した。結果として{(1R)−2−シクロブチル−1−[((2S)−2−{[(6−フェノキシピリジン−3−イル)スルホニル]アミノ}−3−フェニルプロパノイル)アミノ]エチル}ボロン酸・20[C14]が、142.6mg(97%収率)の白色の粉末として得られた。
実施例7:更なるN−スルホニル−ペプチジルボロン酸化合物
【0154】
以下の化合物は、上記実施例5に記載されるものと類似の手順により調製された。また、全ての化合物が、対応するD−マンニトールエステルに変換された。
【表4】

実施例8:20Sプロテアソームアッセイ
【0155】
384ウェルの黒色マイクロタイタープレート中のDMSOに溶解された1μLの試験化合物に、ヒトPA28活性化剤(Boston Biochem、12nM最終)をAc−WLA−AMC(β5選択的基質)(15μM最終)と共に含有する、37℃の25μLのアッセイ緩衝液、その後ヒト20Sプロテアソーム(Boston Biochem、0.25nM最終)を含有する25μLの37℃のアッセイ緩衝液を添加する。アッセイ緩衝液は、20mM HEPES、0.5mM EDTA、および0.01% BSAからなり、pH7.4である。その後、BMG Galaxyプレートリーダー(37℃、励起380nm、発光460nm、利得20)上で反応させる。0%阻害(DMSO)および100%阻害(10μMボルテゾミブ)の対照に対して、阻害率を計算する。
【0156】
化合物1〜24および29〜32、ならびに34〜48を、このアッセイで試験した。化合物1〜9、11〜14、16〜32、34〜41、43〜45、および48は、本アッセイで50nM未満のIC50値を示した。化合物10、15、42、46、および47は、本アッセイで、50nMを超え、150nM未満のIC50値を示した。
実施例9:プロテアソーム阻害の動力学
【0157】
解離定数および半減期を含む酵素動力学パラメータを、酵素進行曲線の分析により、以下のように測定した。
【0158】
プロテアソーム不活性化測定値は、異なる阻害剤濃度の、部位特異的蛍光性の7−アミド−4−メチルクマリン(AMC)で標識したペプチド基質(β5(Suc−LLVY−AMC)、β2(Z−VLR−AMC)、およびβ1(Z−LLE−AMC))の加水分解に対する個々の進行曲線を監視することによって得た。蛍光性ペプチドの切断を、460nmでの蛍光発光(λex=360nm)の変化として継続的に監視し、時間の関数としてプロットした。全てのアッセイを、37±0.2℃で、2mLの50mM HEPES(pH7.5)、0.5mM EDTAを含むキュベット中で、撹拌を継続しながら行った。基質の濃度は、10〜25μM(<1/2K)の間で異なった。ヒト20Sプロテアソームの濃度は0.25nMであり、0.01%のSDSで活性化した。初期速度から定常状態速度への転換を表す速度定数、kobsは、時間依存性または遅延結合阻害(slow−binding inhibition)に対する等式
【数1】

を使用して、個々の進行曲線の非線形最小二乗回帰分析によって推定し、式中、Fは蛍光であり、vおよびvは、阻害剤の存在下での反応の初期速度および定常状態速度であり、tは時間である。[I]の関数としてのkobsのプロットを行い、データの線形フィットの傾きからkonを得た。見掛けの解離定数、Kappは、[I]の関数として、部分速度、v/vの非線形最小フィットにより決定し、式中、vは、時間依存性または遅延結合等式から得られた定常状態値であり、vは、阻害剤の不在下の初期速度である。
【数2】

【0159】
解離定数Kは、以下の式を使用して見掛けのKから計算した。
【数3】

【0160】
オフ速度、koffは、以下の関係式を使用して、上記で決定されたパラメータから数学的に計算した。
【数4】

【0161】
次いで、以下の関係式を使用して、そのkoff値から半減期を決定した。
【数5】

【0162】
本プロトコルを使用して、解離半減期を化合物1、2、6、17、20、35、36、41、43、および45に対して決定した。化合物1、20、35、36、41、43、および45は、10分未満のt1/2を示した。化合物2、6、および17は、10分を超え、60分未満であるt1/2を示した。
実施例10:抗増殖アッセイ
【0163】
10%のウシ胎仔血清(Invitrogen)を補充した100μLの適切な細胞培養液(HCT−116についてはMcCoyの5A、Invitrogen)中のHCT−116(1000)または他の腫瘍細胞を、96ウェル細胞培養プレートのウェルに播種し、一晩37℃でインキュベートする。試験化合物をそのウェルに添加し、そのプレートを96時間37℃でインキュベートする。MTTまたはWST試薬(10μL、Roche)を各ウェルに添加し、製造業者によって記載されるように4時間37℃でインキュベートする。MTTについては、代謝染色剤を、製造業者の取扱説明書(Roche)に従い、一晩溶解する。各ウェルの光学密度を、分光光度計(Molecular Devices)を使用して、MTTについては595nm(一次)および690nm(参照)で、WSTについては450nmで読み取る。MTTに対する参照光学密度値は、初期波長の値から差し引かれる。阻害率を、100%に設定したDMSO対照からの値を使用して計算する。
実施例11:生体内腫瘍有効性モデル
【0164】
100μLのRPMI−1640培養液(Sigma−Aldrich)中の、分離されたばかりのHCT−116(2〜5×10)、WSU−DLCL2(2〜5×10)、または他の腫瘍細胞を、1mLの26 3/8ゲージ針(Becton Dickinson 参照番号309625)を使用して、雌のCD−1ヌードマウス(5〜8週齢、Charles River)の右背脇腹の皮下腔に無菌注射する。代替として、幾つかの異種移植モデル(例えば、CWR22)は、腫瘍断片の連続継代を要する。この場合、腫瘍組織の小断片(約1mm)を、13ゲージのトロカール(Popper & Sons 7927)を介して、麻酔(3〜5%のイソフロラン/酸素混合物)したC.B−17/SCIDマウス(5〜8週齢、Charles River)の右背脇腹に皮下移植する。接種後7日目から開始し、ノギスを使用して週2回、腫瘍を測定する。腫瘍容量を、標準的手順を用いて計算する(0.5×(長さ×幅))。腫瘍が約200mmの容量に達した時、マウスを処置群に無作為に割り当て、薬物治療の受容を開始する。投薬およびスケジュールは、薬物動態的/薬力学的および最大耐量試験から得られた前回の結果に基づいて、各実験に対して決定する。対照群は、いずれの薬物も含まないビヒクルを受容する。一般に、試験化合物(100〜200μL)は、種々の用量およびスケジュールで、静脈内(27ゲージ針)、経口(20ゲージの経管)、または皮下(27ゲージ針)経路を介して投与する。腫瘍の大きさおよび体重を、週2回測定し、対照の腫瘍が約2000mmに達した時、研究を終了する。
【0165】
前述の発明は、明確さおよび理解を目的として幾分詳細に説明されたが、これらの特定の実施形態は例証として解釈されるべきであり、制限的なものではない。当業者には、本開示を読むことにより、形式および詳細の種々の変更が、本発明の正しい範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解されよう。本発明の正しい範囲は、特定の実施形態ではなく添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0166】
本明細書で参照される特許および科学文献は、当業者に利用可能である知識を確立する。別途定義されない限り、本明細書で用いる全ての技術的かつ科学的用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に引用される交付済みの特許、特許出願、および参照文献は、それぞれが具体的かつ単独に参照によって組み込まれることが示されるのと同じ程度で、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾が生じる場合、定義を含んで、本開示が優先される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化11】

の化合物であって、式中、
Aは、0、1、または2であり、
Pは、水素またはアミノ基遮断部分であり、
a1は、C1−6脂肪族、C1−6フルオロ脂肪族、−(CH−CH−R、−(CH−CH−NHC(=NR)NH−Y、−(CH−CH−CON(R、−(CH−CH−N(R)CON(R、−(CH−CH(R)N(R、−(CH−CH(R)−OR、または−(CH−CH(R)−SRであり、
各Ra2は独立して、水素、C1−6脂肪族、C1−6フルオロ脂肪族、−(CH−CH−R、−(CH−CH−NHC(=NR)NH−Y、−(CH−CH−CON(R、−(CH−CH−N(R)CON(R、−(CH−CH(R)N(R、−(CH−CH(R)−OR、または−(CH−CH(R)−SRであり、
各Yは独立して、水素、−CN、−NO、または−S(O)−R10であり、
各Rは独立して、置換または非置換の単環式または二環式環系であり、
各Rは独立して、水素、または置換もしくは非置換の脂肪族、アリール、ヘテロアリール、もしくはヘテロシクリル基であるか、あるいは同一窒素原子上の2個のRが、前記窒素原子と一体となって、前記窒素原子に加えてN、O、およびSから独立して選択される0〜2環のヘテロ原子を有する、置換もしくは非置換の4〜8員のヘテロシクリル環を形成し、
各Rは独立して、水素、または置換もしくは非置換の脂肪族、アリール、ヘテロアリール、もしくはヘテロシクリル基であり、
各Rは独立して、置換もしくは非置換の脂肪族、アリール、もしくはヘテロアリール基であり、
各R10は独立して、C1−6脂肪族、C6−10アリール、または−N(Rであり、
mは、0、1、または2であり、
およびZは、それぞれ独立して、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、またはアラルコキシであるか、あるいはZおよびZが共に、ボロン酸錯化剤に由来する部分を形成する、化合物またはその医薬的に許容される塩もしくはボロン酸無水物。
【請求項2】
Pは、R−C(O)−、R−O−C(O)−、R−N(R4c)−C(O)−、R−S(O)−、またはR−N(R4c)−S(O)−であり、
は、C1−6脂肪族、C1−6フルオロ脂肪族、−R、−T−R、および−T−R2cからなる群から選択され、
は、0〜2個の独立して選択されるR3aまたはR3bで置換される、C1−6アルキレン鎖であり、前記アルキレン鎖は、任意で−C(R)=C(R)−、−C≡C−、または−O−によって中断され、
は、置換もしくは非置換の単環式もしくは二環式環系であり、
2cは、ハロ、−OR、−SR、−S(O)R、−SO、−SON(R、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRCO、−N(R)SO、−N(R)SON(R、−O−C(O)R、−OC(O)N(R、−C(O)R、−CO、または−C(O)N(Rであり、
各R3aは独立して、−F、−OH、−O(C1−4アルキル)、−CN、−N(R、−C(O)(C1−4アルキル)、−COH、−CO(C1−4アルキル)、−C(O)NH、および−C(O)−NH(C1−4アルキル)からなる群から選択され、
各R3bは独立して、R3aまたはRで置換されるかまたは非置換のC1−3脂肪族であり、
各Rは、置換もしくは非置換の芳香族基であり、
4cは、水素、C1−4アルキル、C1−4フルオロアルキル、またはアリール部が置換されるか、または非置換である、C6−10アル(C1−4)アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(I−B)
【化12】

を特徴とする、請求項2に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくはボロン酸無水物。
【請求項4】
Aは0である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
a1およびRa2は、それぞれ独立して、C1−6脂肪族、C1−6フルオロ脂肪族、または−(CH−CH−Rであり、mは、0または1である、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
は、置換もしくは非置換のフェニルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
a1は、−CH−Rであり、Rは、フェニルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
a1は、−(CH−CH(C1−4アルキル)−OHである、請求項3に記載の化合物。
【請求項9】
は、置換可能な環炭素原子上で、0〜2個のRおよび0〜2個のR8dで置換され、
各Rは独立して、C1−6脂肪族、C1−6フルオロ脂肪族、ハロ、−R1d、−R2d、−T−R1d、−T−R2dからなる群から選択され、
は、0〜2個の独立して選択されるR3aまたはR3bで置換されるC1−6アルキレン鎖であり、前記アルキレン鎖は、任意で−C(R)=C(R)−、−C≡C−、または−O−によって中断され、
各R1dは独立して、置換もしくは非置換のアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、もしくはシクロ脂肪族環であり、
各R2dは独立して、−NO、−CN、−C(R)=C(R、−C≡C−R、−OR、−SR、−S(O)R、−SO、−SON(R、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−N(R)C(=NR)−N(R、−N(R)C(=NR)−R、−NRCO、−N(R)SO、−N(R)SON(R、−O−C(O)R、−OC(O)N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)N(R、−C(O)N(R)−OR、−C(O)N(R)C(=NR)−N(R、−N(R)C(=NR)−N(R)−C(O)R、または−C(=NR)−N(Rであり、
各R3aは独立して、−F、−OH、−O(C1−4アルキル)、−CN、−N(R、−C(O)(C1−4アルキル)、−COH、−CO(C1−4アルキル)、−C(O)NH、および−C(O)NH(C1−4アルキル)からなる群から選択され、
各R3bは独立して、R3aまたはRで置換されるかまたは非置換のC1−3脂肪族であるか、あるいは同一炭素原子上の2つの置換基R3bが、それらが結合している炭素原子と一体となって、3〜6員のシクロ脂肪族環を形成し、
各Rは独立して、置換もしくは非置換のアリールもしくはヘテロアリール環であり、
各R8dは独立して、C1−4脂肪族、C1−4フルオロ脂肪族、ハロ、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−NH、−NH(C1−4脂肪族)、および−N(C1−4脂肪族)からなる群から選択され、
中のそれぞれの置換可能な環窒素原子は、非置換であるか、あるいは−C(O)R、−C(O)N(R、−CO、−SO、−SON(R、C1−4脂肪族、置換もしくは非置換のC6−10アリール、またはアリール部分が置換されるか、または非置換である、C6−10アル(C1−4)アルキルで置換される、請求項3に記載の化合物。
【請求項10】
中のそれぞれの飽和環炭素原子は、非置換であるか、または=O、R、もしくはR8dで置換され、
中のそれぞれの不飽和環炭素原子は、非置換であるか、またはRもしくはR8dで置換され、
各Rは独立して、C1−6脂肪族、C1−6フルオロ脂肪族、ハロ、−R1d、−R2d、−T−R1d、−T−R2dからなる群から選択され、
は、0〜2個の独立して選択されるR3aまたはR3bで置換されるC1−6アルキレン鎖であり、前記アルキレン鎖は、任意で−C(R)=C(R)−、−C≡C−、または−O−によって中断され、
各R1dは独立して、置換もしくは非置換のアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、もしくはシクロ脂肪族環であり、
各R2dは独立して、−NO、−CN、−C(R)=C(R、−C≡C−R、−OR、−SR、−S(O)R、−SO、−SON(R、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−N(R)C(=NR)−N(R、−N(R)C(=NR)−R、−NRCO、−N(R)SO、−N(R)SON(R、−O−C(O)R、−OC(O)N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)N(R、−C(O)N(R)−OR、−C(O)N(R)C(=NR)−N(R、−N(R)C(=NR)−N(R)−C(O)R、または−C(=NR)−N(Rであり、
各R3aは独立して、−F、−OH、−O(C1−4アルキル)、−CN、−N(R、−C(O)(C1−4アルキル)、−COH、−CO(C1−4アルキル)、−C(O)NH、および−C(O)NH(C1−4アルキル)からなる群から選択され、
各R3bは独立して、R3aまたはRで置換されるかまたは非置換のC1−3脂肪族であるか、あるいは同一炭素原子上の2つの置換基R3bが、それらが結合している炭素原子と一体となって、3〜6員のシクロ脂肪族環を形成し、
各Rは独立して、置換もしくは非置換のアリールもしくはヘテロアリール環であり、
各R8dは独立して、C1−4脂肪族、C1−4フルオロ脂肪族、ハロ、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−NH、−NH(C1−4脂肪族)、および−N(C1−4脂肪族)からなる群から選択され、
中のそれぞれの置換可能な環窒素原子は、非置換であるか、あるいは−C(O)R、−C(O)N(R、−CO、−SO、−SON(R、C1−4脂肪族、置換もしくは非置換のC6−10アリール、またはアリール部が置換されるか、または非置換である、C6−10アル(C1−4)アルキルで置換される、請求項3に記載の化合物。
【請求項11】
は、フェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ナフチル、ベンズイミダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノキサリニル、およびジヒドロベンゾオキサジニルからなる群から選択される、置換もしくは非置換の単環式もしくは二環式環系である、請求項7に記載の化合物。
【請求項12】
式(II)
【化13】

を特徴とし、式中、
Pは、式R−SO−またはR−C(O)−を有し、
は、フェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ナフチル、ベンズイミダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノキサリニル、およびジヒドロベンゾオキサジニルからなる群から選択される、置換もしくは非置換の単環式もしくは二環式環系であり、
中のそれぞれの飽和環炭素原子は、非置換であるか、または=O、R、またはR8dで置換され、
中のそれぞれの不飽和環炭素原子は、非置換であるか、あるいはRまたはR8dで置換され、
各Rは独立して、−R1d、−R2d、−T−R1d、および−T−R2dからなる群から選択され、
は、非置換であるか、あるいはR3aまたはR3bで置換される、C1−3アルキレン鎖であり、
各R1dは独立して、置換もしくは非置換のアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、もしくはシクロ脂肪族環であり、
各R2dは独立して、−OR、−SR、−S(O)R、−SO、−SON(R、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−O−C(O)R、−OC(O)N(R、−C(O)R、−CO、または−C(O)N(Rであり、
各R8dは独立して、C1−4脂肪族、C1−4フルオロ脂肪族、ハロ、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−NH、−NH(C1−4脂肪族)、および−N(C1−4脂肪族)からなる群から選択される、請求項7に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくはボロン酸無水物。
【請求項13】
は、式−Q−Rを有し、
Qは、−O−、−NH−、または−CH−であり、
は、置換もしくは非置換のアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、もしくはシクロ脂肪族環である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
は、式−O−Rの置換基で置換される、フェニル、ピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルであり、Rは、置換もしくは非置換のフェニル、ピリジニル、ピラジニル、またはピリミジニルである、請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項16】
癌を治療するための方法であって、かかる治療を必要とする患者に、請求項15に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。

【公表番号】特表2012−504122(P2012−504122A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529021(P2011−529021)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/005324
【国際公開番号】WO2010/036357
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(500287639)ミレニアム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (98)
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】