説明

1−ブテンコポリマー

0モル%〜2モル%のプロピレン又はペンテンを含み、0.2モル%より高く7.2モル%より低いC〜C12−α−オレフィン誘導単位の含量を有し、以下の特徴:(a)DSCによって測定される融点(TmII)とC〜C12−α−オレフィンのモル含量とは以下の関係:0<TmII<−6.5×C+104(式中、CはC〜C12−α−オレフィン誘導単位のモル含量であり、TmIIは第2の溶融転移における最も高い溶融ピークである)を満足する;(b)テトラヒドロナフタレン中135℃において測定して0.8〜5dL/gの範囲の固有粘度(IV);及び(c)90%以上のアイソタクチックペンタドmmmm、4より低いペンタド(mmrr+mrrm)、及び13C−NMRにおいて検出できないペンタドrmmr;を有する、1−ブテンと少なくとも1種類のC〜C12−α−オレフィン誘導単位、好ましくは少なくとも1−オクテン誘導単位とのコポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コモノマーの良好な分布、及び剛性と結晶化度との間の良好なバランスを有する、1−ブテンとより高級な線状α−オレフィン、例えば1−オクテン又は1−デセンとのコポリマーに関する。この種のコポリマーは、特定のメタロセンベースの触媒系を用いることによって得られる。本発明のコポリマーは、それらの特性の観点からフィルムシート及び他の溶融成形物品の製造に好適であり、或いはより結晶性のポリマーの剛性を低下させ且つ柔軟性を増加させるためにそれらとブレンドして用いることができる。
【背景技術】
【0002】
ブテン−1をベースとするポリマーは、当該技術において周知であり、それらの高い耐圧性、耐クリープ性、衝撃強さ、及び可撓性のために、幾つかの非常に要求の厳しい最終用途における用途が見出されている。これらの特性は、コモノマーを用いることによって変性することができる。
【0003】
EP−186287は、50モル%〜99モル%の1−ブテンを含むランダム1−ブテンコポリマーに関する。このコポリマーは非常に広範囲の特性を有すると記載されている。特に、融点は用いるコモノマーのタイプ及び量によって30〜120℃の範囲である。本出願人は、本発明のポリマーは同等のコモノマー含量においてより低い融点を有することを見出した。これによってより良好な加工性が可能になり、これは特定の用途に関して最適である。
【0004】
US−6,288,192は、高い分子量を有し、融点を有しない1−ブテンのホモ又はコポリマーに関する。これとは異なり、本発明のコポリマーは融点を示す。
EP−1260525は、特徴の中でとりわけ最大で20の立体剛性インデックス(mmmm)/mmrr+rmmrを有する1−ブテンコポリマーに関する。本発明のポリマーはこの特徴を有しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第186287号明細書
【特許文献2】米国特許6,288,192号明細書
【特許文献3】欧州特許第1260525号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本出願人は、メタロセンベースの触媒系を用いることによって、特徴の最適のバランスを有する1−ブテンと1−オクテン又はより高級のα−オレフィンとのコポリマーが得られることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の対象は、0.0モル%〜2.0モル%のプロピレン又はペンテン誘導単位を含み、0.2モル%より高く7.2モル%より低いC〜C12−α−オレフィン誘導単位の含量を有し(好ましくは、C〜C12−α−オレフィン誘導単位の含量は0.5モル%〜7.0モル%の範囲である)、以下の特徴:
(a)DSCによって測定される融点(TmII)とC〜C12−α−オレフィン含量とは以下の関係:
0<TmII<−6.5×C+104
(式中、CはC〜C12−α−オレフィン誘導単位のモル含量であり、TmIIは第2の溶融転移における最も高い溶融ピークである)
を満足する;
(b)テトラヒドロナフタレン中135℃において測定して0.8〜5dL/gの範囲、好ましくは0.9〜3dL/gの範囲の固有粘度(IV);及び
(c)90%以上のアイソタクチックペンタドmmmm、4より低いペンタド(mmrr+mrrm)、及び13C−NMRにおいて検出できないペンタドrmmr;
を有する、1−ブテンと少なくとも1種類のC〜C12−α−オレフィン誘導単位、好ましくは少なくとも1−オクテン誘導単位とのコポリマーである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
コモノマーの含量が7.2%より高いと、コポリマーはアモルファスになり、したがって粘着性になって加工するのがより困難になる。
特徴(a)によれば、融点TmIIとC〜C12−α−オレフィンのモル含量とは、関係:0<TmII<−6.5×C+104;好ましくは0<TmII<−7.0×C+104;より好ましくは0<TmII<−7.5×C+104;更により好ましくは0<TmII<−8×C+104(ここで、CはC〜C12−α−オレフィン誘導単位のモル含量であり、TmIIは第2の溶融転移における最も高い溶融ピークである)を満足する。
【0009】
融点が関係:0<TmII<−6.5×C+104を満足するという事実により、コポリマーの他の特性を悪化させる可能性のある高い含量のコモノマーを有する必要なしに、低い融点を有し、したがって低い結晶化度を有する部分的に結晶性の物質を得ることが可能である。
【0010】
他方において、コポリマーは実質的にアイソタクチックであり、≧90%のmmmm、より好ましくは≧92%のmmmm、更により好ましくは≧95%のmmmmを有し、これにより結晶化が可能であり、アタクチック又はアイソタクチック性の低いポリマーに固有の粘着性が避けられる。
【0011】
1−ブテンベースのコポリマーの殆どと同様に、本発明のコポリマーは少なくとも2つの形態で結晶化させることができる。第1の形態は動的に安定なものであり、まずコポリマーが結晶化して特定の融点(TmII)を与え、次にこの形態が熱力学的により安定な第2の形態に変化する。本発明のコポリマーの試料を圧縮成形し、DSCを用いることによって一定時間のアニーリングにかけた場合には、測定される融点(TmI)は熱力学的に安定な形態のものとみなすことができ、第2の加熱操作に伴って測定される融点(TmII)は動的に安定な形態のものである。
【0012】
したがって、本発明のコポリマーにおいては、オートクレーブ内、2000bar、室温において10分間熟成し、次に23℃において少なくとも24時間熟成した圧縮成形プラークに関してDSCによって測定される第1の溶融転移(TmI)は、以下の関係:
0<TmI<−5C+125
(式中、CはC〜C12−α−オレフィン誘導単位のモル含量である)
を満足し;好ましくはこの関係は0<TmI<−7C+125であり;より好ましくは0<TmI<−9C+125である。
【0013】
適度な結晶化度を有するのに加えて、本発明のコポリマーは低い弾性率を有する。実際、引張弾性率は、非常に低いコモノマー含量においても、ホモポリマーのものに対して大きく減少する。
【0014】
したがって、本発明のコポリマーは、以下の関係:
引張弾性率<400×e−0.20C、好ましくは引張弾性率<400×e−0.25c
(式中、CはC〜C12−α−オレフィン誘導単位のモル含量である)
を満足するDMTAによって測定される引張弾性率(MPa)を示す。
【0015】
機械特性の優れたバランスの観点から、本発明のコポリマーは、単独か又は他のポリマーとブレンドして幾つかの用途のために用いることができる。特に、弾性率と結晶化度(溶融エンタルピーとして測定)との間の独特のバランスのために、本発明のコポリマーは、それらが比較的高い結晶化度を保持している場合であっても低い弾性率を有しており、したがって粘着性を有しないのでより容易に加工することができる。したがってこれらは、有利には、高い融点及び比較的高い結晶化度の両方を有し、同時に非常に可撓性の材料を得るために、ポリ−1−ブテンのようなより結晶性のポリマーとブレンドして用いることができる。
【0016】
可撓性と結晶化度との間の好ましいバランスのために、本発明のコポリマーは、溶融エンタルピー(ΔHII)とMPaで測定される引張弾性率(TM)との間の以下の関係:
引張弾性率≦0.98ΔHII/5.91+273.77
を満足する。
【0017】
好ましくは、この関係は、
引張弾性率≦0.98ΔHII/5.91+173.77
である。
【0018】
より好ましくは、この関係は、
引張弾性率≦1.68ΔHII/6.53+120.84
である。
【0019】
〜C12−α−オレフィンコモノマーの例は、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンである。好ましくは1−オクテン及び1−デセンを用い、より好ましくは1−オクテンを用いる。
【0020】
本発明のコポリマーは、メタロセン化合物が特定の置換パターンを有するメタロセンベースの触媒系を用いることによって製造される。
したがって、本発明の対象である1−ブテン/C〜C12−α−オレフィンコポリマーは、
(A)立体剛性メタロセン化合物;
(B)アルモキサン又はアルキルメタロセンカチオンを形成することのできる化合物;及び場合によっては
(C)有機アルミニウム化合物;
を接触させることによって得られる触媒系の存在下において、重合条件下で1−ブテン、及び少なくとも1種類のC〜C12−α−オレフィン、並びに場合によってはプロピレン又はペンタンを接触させることによって得ることができる。
【0021】
好ましくは、立体剛性メタロセン化合物は下式(I):
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、
Mは、第4族に属するものから選択される遷移金属の原子であり;好ましくはMはジルコニウムであり;
Xは、互いに同一か又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、R、OR、OR’O、OSOCF、OCOR、SR、NR、又はPR基であり、ここでRは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含む、線状又は分岐で飽和又は不飽和の、C〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20アルキルアリール、又はC〜C20アリールアルキル基であり;R’は、C〜C20アルキリデン、C〜C20アリーリデン、C〜C20アルキルアリーリデン、又はC〜C20アリールアルキリデン基であり;好ましくは、Xは、水素原子、ハロゲン原子、OR’O、又はR基であり;より好ましくは、Xは塩素又はメチル基であり;
、R、R、R、R、R、及びRは、互いに同一か又は異なり、水素原子、或いは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含む、線状又は分岐で飽和又は不飽和の、C〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20アルキルアリール、又はC〜C20アリールアルキル基であり;或いは、RとR及び/又はRとRは、場合によっては飽和又は不飽和の5又は6員環を形成してもよく、かかる環は置換基としてC〜C20アルキル基を有していてもよく;但し、R又はRの少なくとも一方は、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含む、線状又は分岐で飽和又は不飽和のC〜C20アルキル基、好ましくはC〜C10アルキル基であり;
好ましくは、R、Rは、同一であり、場合によっては1以上のケイ素原子を含むC〜C10アルキル基であり;より好ましくは、R及びRはメチル基であり;
及びRは、互いに同一か又は異なり、好ましくはC〜C10アルキル又はC〜C20アリール基であり;より好ましくはこれらはメチル基であり;
は、好ましくは水素原子又はメチル基であり;或いはRと結合して飽和又は不飽和の5又は6員環を形成してもよく、かかる環は置換基としてC〜C20アルキル基を有していてもよく;
は、好ましくは、水素原子、或いはメチル、エチル、又はイソプロピル基であり;或いはRと結合して上記に記載の飽和又は不飽和の5又は6員環を形成してもよく;
は、好ましくは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含む、線状又は分岐で飽和又は不飽和の、C〜C20アルキル基;好ましくはC〜C10アルキル基であり;より好ましくは、Rはメチル又はエチル基であり;或いはRが水素原子とは異なる場合には、Rは好ましくは水素原子であり;
及びRは、互いに同一か又は異なり、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含む、線状又は分岐で飽和又は不飽和のC〜C20アルキル基であり;好ましくは、R及びRは、互いに同一か又は異なりC〜C10アルキル基であり;より好ましくは、Rはメチル又はエチル基であり;Rは、メチル、エチル、又はイソプロピル基である)
に属する。
【0024】
(A)アルモキサン又はアルキルメタロセンカチオンを形成することのできる化合物;及び場合によっては
(B)有機アルミニウム化合物。
【0025】
好ましくは、式(I)の化合物は、式(Ia)又は(Ib):
【0026】
【化2】

【0027】
(式中、M、X、R、R、R、R、R、及びRは上記に記載した通りであり;
は、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含む、線状又は分岐で飽和又は不飽和のC〜C20アルキル基であり;好ましくは、RはC〜C10アルキル基であり;より好ましくは、Rはメチル又はエチル基である)
を有する。
【0028】
成分(B)として用いるアルモキサンは、水と、式:HAlU3−j又はHAl6−j(式中、U置換基は、同一か又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、場合によってはケイ素又はゲルマニウム原子を含む、C〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20アルキルアリール、又はC〜C20アリールアルキル基であり、但し少なくとも1つのUはハロゲンとは異なり、jは0〜1の範囲であり、非整数でもある)の有機アルミニウム化合物とを反応させることによって得ることができる。この反応において、Al/水のモル比は、好ましくは1:1〜100:1の範囲である。アルミニウムとメタロセンの金属との間のモル比は、一般に約10:1〜約20000:1、より好ましくは約100:1〜約5000:1の範囲である。本発明による触媒において用いるアルモキサンは、式:
【0029】
【化3】

【0030】
(式中、置換基Uは、同一か又は異なり、上記に記載した通りである)
のタイプの少なくとも1つの基を含む、線状、分岐、又は環式の化合物であると考えられる。
【0031】
特に、線状化合物の場合には、式:
【0032】
【化4】

【0033】
(式中、nは0又は1〜40の整数であり、置換基Uは上記に定義した通りである)
のアルモキサンを用いることができ;或いは、環式化合物の場合には、式;
【0034】
【化5】

【0035】
(式中、nは2〜40の整数であり、置換基Uは上記に定義した通りである)
のアルモキサンを用いることができる。本発明にしたがって用いるのに好適なアルモキサンの例は、メチルアルモキサン(MAO)、テトラ(イソブチル)アルモキサン(TIBAO)、テトラ(2,4,4−トリメチルペンチル)アルモキサン(TIOAO)、テトラ(2,3−ジメチルブチル)アルモキサン(TDMBAO)、及びテトラ(2,3,3−トリメチルブチル)アルモキサン(TTMBAO)である。特に興味深い共触媒は、アルキル及びアリール基が特定の分岐パターンを有するWO−99/21899及びWO−01/21674に記載されているものである。WO−99/21899及びWO−01/21674によるアルミニウム化合物の非限定的な例は、
トリス(2,3,3−トリメチルブチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチルヘキシル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチルブチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチルペンチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチルヘプチル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−エチルペンチル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−エチルヘキシル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−エチルヘプチル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−プロピルヘキシル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3−メチルブチル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3−メチルペンチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジエチルペンチル)アルミニウム、トリス(2−プロピル−3−メチルブチル)アルミニウム、トリス(2−イソプロピル−3−メチルブチル)アルミニウム、トリス(2−イソブチル−3−メチルペンチル)アルミニウム、トリス(2,3,3−トリメチルペンチル)アルミニウム、トリス(2,3,3−トリメチルヘキシル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3,3−ジメチルブチル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3,3−ジメチルペンチル)アルミニウム、トリス(2−イソプロピル−3,3−ジメチルブチル)アルミニウム、トリス(2−トリメチルシリルプロピル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−フェニルブチル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3−フェニルブチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチル−3−フェニルブチル)アルミニウム、トリス(2−フェニルプロピル)アルミニウム、トリス[2−(4−フルオロフェニル)プロピル]アルミニウム、トリス[2−(4−クロロフェニル)プロピル]アルミニウム、トリス[2−(3−イソプロピルフェニル)プロピル]アルミニウム、トリス(2−フェニルブチル)アルミニウム、トリス(3−メチル−2−フェニルブチル)アルミニウム、トリス(2−フェニルペンチル)アルミニウム、トリス[2−(ペンタフルオロフェニル)プロピル]アルミニウム、トリス[2,2−ジフェニルエチル]アルミニウム、及びトリス[2−フェニル−2−メチルプロピル]アルミニウム、並びにヒドロカルビル基の1つが水素原子で置き換えられている対応する化合物、及びヒドロカルビル基の1つ又は2つがイソブチル基で置き換えられているものである。
【0036】
上記のアルミニウム化合物の中で、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)、トリス(2,4,4−トリメチルペンチル)アルミニウム(TIOA)、トリス(2,3−ジメチルブチル)アルミニウム(TDMBA)、及びトリス(2,3,3−トリメチルブチル)アルミニウム(TTMBA)が好ましい。
【0037】
アルキルメタロセンカチオンを形成することのできる化合物の非限定的な例は、式:D(式中、Dは、ブレンステッド酸であり、プロトンを供与し、式(I)のメタロセンの置換基Xと不可逆的に反応することができ、Eは、適合しうるアニオンであり、2つの化合物の反応から生成する活性触媒種を安定化することができ、十分に不安定でオレフィン性モノマーによって除去することができる)の化合物である。好ましくは、アニオンEは1つ以上のホウ素原子を含む。より好ましくは、アニオンEは、式:BAr(−)(式中、置換基Arは、同一であっても異なっていてもよく、フェニル、ペンタフルオロフェニル、又はビス(トリフルオロメチル)フェニルのようなアリール基である)のアニオンである。WO−91/02012に記載されているテトラキス−ペンタフルオロフェニルボレートが、これらの化合物の特に好ましい例である。更に、式:BArの化合物を好都合に用いることができる。このタイプの化合物は、例えば、公開国際特許出願WO−92/00333に記載されている。アルキルメタロセンカチオンを形成することのできる化合物の他の例は、式:BArP(式中、Pは、置換又は非置換ピロール基である)の化合物である。これらの化合物は、WO−01/62764に記載されている。共触媒の他の例はEP−775707及びDE−19917985において見ることができる。ホウ素原子を含む化合物は、DE−A−19962814及びDE−A−19962910の記載にしたがって好都合に担持させることができる。これらのホウ素原子を含む化合物は全て、約1:1〜約10:1、好ましくは1:1〜2:1の範囲、より好ましくは約1:1の、ホウ素とメタロセンの金属との間のモル比で用いることができる。
【0038】
式:Dの化合物の非限定的な例は、
トリブチルアンモニウムテトラキスペンタフルオロフェニルアルミネート;
トリブチルアンモニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート;
トリブチルアンモニウムテトラキス(4−フルオロフェニル)ボレート;
N,N−ジメチルベンジルアンモニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート;
N,N−ジメチルヘキシルアンモニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート;
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート;
ジ(プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
ジ(シクロヘキシル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート;
フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート;
である。
【0039】
化合物(C)として用いられる有機アルミニウム化合物は、上記記載の式:HAlU3−j又はHAl6−jのものである。また、本発明の触媒は、不活性担体上に担持させることもできる。これは、メタロセン化合物(A)、或いはそれと成分(B)との反応の生成物、或いは成分(B)及び次にメタロセン化合物(A)を、例えば、シリカ、アルミナ、Al−Si、Al−Mg混合酸化物、ハロゲン化マグネシウム、スチレン/ジビニルベンゼンコポリマー、ポリエチレン、又はポリプロピレンのような不活性担体上に堆積させることによって行う。担持プロセスは、炭化水素、例えばトルエン、ヘキサン、ペンタン、又はプロパンのような不活性溶媒中、0℃〜100℃の範囲の温度において行い、好ましくは、このプロセスは25℃〜90℃の範囲の温度において行い、或いはこのプロセスは室温において行う。
【0040】
用いることのできる担体の好適な種類は、活性水素原子を有する基によって官能化されている多孔質有機担体によって構成されるものである。有機担体が部分的に架橋したスチレンポリマーであるものが特に好適である。このタイプの担体は、ヨーロッパ出願EP−633272に記載されている。本発明にしたがって用いるのに特に好適な不活性担体の他の種類は、ポリオレフィン多孔質プレポリマー、特にポリエチレンのものである。
【0041】
本発明にしたがって用いるための不活性担体の更なる好適な種類は、国際出願WO−95/32995に記載されているもののような多孔質ハロゲン化マグネシウムのものである。
【0042】
本発明による1−ブテンとエチレンとの重合プロセスは、液相中において、不活性炭化水素溶媒の存在下又は不存在下で行うことができる。炭化水素溶媒は、トルエンのような芳香族か、或いはプロパン、ヘキサン、ヘプタン、イソブタン、又はシクロヘキサンのような脂肪族のいずれかであってよい。好ましくは、本発明のコポリマーは、溶液法、即ちポリマーが反応媒体中に完全か又は部分的に可溶である液相中で行うプロセスによって得られる。
【0043】
一般に、重合温度は、一般に0℃〜+200℃の範囲、好ましくは40℃〜90℃、より好ましくは50℃〜80℃の範囲である。重合圧力は、一般に0.5〜100barの範囲である。
【0044】
重合温度がより低くなると、得られるポリマーの得られる分子量がより高くなる。
【実施例】
【0045】
以下の実施例は例示の目的のためであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。
13C−NMR分析:
13C−NMRスペクトルは、フーリエ変換モードで120℃において100.61MHzで運転するDPX-400分光計上で獲得した。mmmmBBBBBペンタドの2B2炭素のピーク(命名はC.J. Carman, R.A. Harrington, C.E. Wilkes, Macromolecules 1977, 10, 535にしたがう)を、27.73における内部参照として用いた。試料を120℃において1,1,2,2−テトラクロロエタン−d中に8%wt/vの濃度で溶解した。それぞれのスペクトルは、90°のパルス、パルス間の遅延15秒、及びCPD(WALTZ16)を用いて獲得してH−13Cカップリングを除去した。6000Hzのスペクトルウインドウを用いて約1500の過渡スペクトルを32Kのデータ点で保存した。
【0046】
以下のようにしてSαα炭素を用いて1−ブテン/1−オクテンコポリマーの組成を計算した。
XX=(SααXX/ΣSαα
BX=(SααBX/ΣSαα
BB=(SααBB/ΣSαα
ここで、Xは1−オクテンコモノマーである。
【0047】
以下の関係式を用いて、モルフラクションとしての1−ブテン及び1−オクテンの全量をダイアドから計算した。
[X]=XX+0.5BX
[B]=BB+0.5BX
1−ブテン/1−オクテンコポリマーの13C−NMRスペクトルの割当を表Aに報告し、炭素のラベリングを式(a)に示す。
【0048】
【化6】

【0049】
【表1−1】

【0050】
熱分析:
Pyris 1ソフトウエアを装備したPerkin Elmer DSC-1熱量計上での示差走査熱量測定(DSC)により、流動N雰囲気中で走査を行って、ポリマーの融点及び結晶化温度並びに比エンタルピー(TmI、TmII、ΔH、T、ΔH)を測定した。DSC装置はインジウム及び亜鉛の融点で予め較正した。熱量測定用の試料の調製は、カッターを用いることによってそれらを小片に切断することによって行った。それぞれのDSCるつぼ内の試料の重量は6.0±0.5mgに保持した。
【0051】
コポリマーの融点及び結晶化温度を得るために、秤量した試料をアルミニウム皿中に密封し、10℃/分で180℃に加熱した。試料を180℃に5分間保持して全ての結晶を完全に溶融し、次に10℃/分で−20℃に冷却した。−20℃において2分間静置した後、試料に対して10℃/分での180℃への2回目の加熱を行った。DSCの冷却操作中にT及びΔHが検出され、第2のDSC加熱操作において第2の融点(TmII)及び比溶融エンタルピーが検出された。
【0052】
オートクレーブ内、高圧(2000bar)、室温において10分間熟成し、次に23℃において少なくとも24時間熟成した圧縮成形試料について、第1の加熱DSC操作において融点(TmI)及び比溶融エンタルピーが検出された。
【0053】
また、10℃/分で−90℃から180℃への第2の加熱操作におけるDSC分析からガラス転移温度(T)も検出された。それぞれのDSCるつぼ内の試料の重量は12.0±1.0mgに保持した。転移の屈曲点の値をTとしてとった。
【0054】
応力−歪み:
機械的テスター装置(INSTRON 4301)を用い、国際標準規格ISO−527/1にしたがって機械的試験を行った。
【0055】
試料をプレス下で融点より高い温度(200℃)において5分間加熱し、次に溶融体を30℃/分の冷却速度で室温に冷却することによって圧縮成形試料を調製した。引張測定を行う前に、これらの圧縮成形ブテンコポリマーを、オートクレーブ(水)内で、高圧(2000bar)、室温において10分間熟成し、次に23℃において更に24時間熟成した。長さ30mm、幅5mm、及び厚さ2mmの長方形の試験片を、室温において500mm/分で破断するまで一軸延伸し、応力−歪み曲線を得た。それぞれの試料に関して6つの応力−歪み曲線を得て平均化した。このようにして、降伏点応力、降伏点伸び、破断点応力、及び破断点伸びを測定した。
【0056】
引張永久歪みの算出:
試料をプレス下で融点より高い温度(200℃)において5分間加熱し、次に溶融体を30℃/分の冷却速度で室温に冷却することによって圧縮成形試料を調製した。引張測定を行う前に、これらの圧縮成形ブテンコポリマーを、オートクレーブ(水)内で、高圧(2000bar)、室温において10分間熟成し、次に23℃において更に24時間熟成した。ISO法2285にしたがって引張永久歪みの値を測定した。長さ50mm、幅2mm、及び厚さ2mmの長方形の試験片を、それらの初期長さLから長さL=2Lまで、則ち伸びε=[(L−L)/L]×100=100%まで一軸延伸し(変形速度は一定ではなく高かった)、この伸びにおいて10分間保持し、次に張力を解除して、10分後に弛緩させた試験片の最終長さLを測定した。引張永久歪みは、次式:t(ε)=[(L−L)/L]×100を用いることによって算出した。
【0057】
引張永久歪みの値は2回の測定の平均値である。
DMTA:
DMTAを用いることによって引張弾性率(23℃における)を測定した。液体N冷却付属装置を装備したSeiko DMS6100を、2℃/分の加熱速度及び1Hzの周波数で用いた。50×6×1mmの寸法を有する圧縮成形プラークから試験片を切り出した。調査した温度範囲は、−80℃から軟化点までであった。
【0058】
触媒の調製:
WO−01/47939にしたがって、ジメチルシランジイル{(1−(2,4,7−トリメチルインデニル)−7−(2,5−ジメチルシクロペンタ[1,2−b:4,3−b’]ジチオフェン)}ジルコニウムジクロリド(A1)を調製した。メチルアルモキサン(MAO)は、Albermarleによって30%wt/wtのトルエン溶液として供給され、これをそのまま用いた。トリイソブチルアルミニウム(TIBA)は、Cromptonによって純粋な化学薬品として供給され、これを無水シクロヘキサンで約100g/Lに希釈した。全ての化学薬品は標準Schlenk法を用いて取り扱った。
【0059】
触媒溶液(Altot/Zrのモル比=400、AlMAO/Zr=267モル/モル、シクロヘキサン/トルエン中)の調製:
磁気スターラーを取り付けた50mLのSchlenkフラスコ中に22mgのAlを、室温、窒素雰囲気下において充填した。Alを含むSchlenk中に、トルエン中30重量%のMAO―Albemarle及びシクロヘキサン中のTIBAの混合物(25.3g−Altot/L;MAO/TIBAのモル比=2/1)16.2mLを、室温、窒素雰囲気下において加えた(AlMAO/Zr=267;AlTIBA/Zr=133;Altot/Zr=400)。1.36mg/mLのAlの濃度を有する得られた明澄な橙赤色の溶液を、室温において1〜2時間撹拌し、そのまま重合において用いた。
【0060】
重合試験:
メカニカルスターラー及び35mLのステンレススチールバイアルを装備し、温度制御用のサーモスタットに接続した4.4Lのジャケット付きステンレススチールオートクレーブ内で、以下の手順を用いることによって重合試験を行った。重合実験の前に、ヘキサン中1M−Al(i−Bu)溶液で洗浄することによって清浄化し、窒素流中70℃において乾燥した。続いて、室温において、スカベンジャー(4ミリモルのAlに相当するMAO/TIBAのモル比=2/1のトルエン/シクロヘキサン中の25.3g(Altot)/Lの量の溶液、或いは6ミリモルのTIBAに相当するイソヘキサン中のTIBAの10%wt/vの溶液11.9mLのいずれか)、及び次に所望量(表1参照)のブテン及びオクテン(又はデセン)をオートクレーブ内に充填した。次に、オートクレーブを70℃の重合温度に温度制御した。ステンレススチールバイアルを通して窒素圧を用いて触媒/共触媒混合物を含む溶液をオートクレーブ内に注入した。モノマーを供給しないで一定の温度において1時間重合を行った。
【0061】
次に、撹拌を停止し、窒素によってオートクレーブ中への圧力を20bar−gに昇圧し、底部排出バルブを開放し、水を含む加熱スチールタンク中にポリマー/モノマー混合物を排出し、蒸気流で10分間処理した。タンクの加熱を停止し、0.5bar−gの窒素流を供給して水を除去した。最後にスチールタンクを開放し、湿潤状態のポリマーを回収し、オーブン内において減圧下85℃で一晩乾燥した。
【0062】
重合結果を表1に報告する。
【0063】
【表1−2】

【0064】
【表1−3】

【0065】
上記の実施例で得られたコポリマーを分析した。
熱分析:
上記に記載した手順にしたがって熱分析を行った。結果を表2に報告する。
【0066】
【表2】

【0067】
機械的分析:
上記に記載した手順にしたがって、応力−歪み、引張永久歪み、及び引張弾性率の測定を行った。機械的分析の結果を表3に示す。
【0068】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
0モル%〜2モル%のプロピレン又はペンテン誘導単位を含み、0.2モル%より高く7.2モル%より低いC〜C12−α−オレフィン誘導単位を含み、以下の特徴:
(a)DSCによって測定される融点(TmII)とC〜C12−α−オレフィンのモル含量とは以下の関係:
0<TmII<−6.5×C+104
(式中、CはC〜C12−α−オレフィン誘導単位のモル含量であり、TmIIは第2の溶融転移における最も高い溶融ピークである)
を満足する;
(b)テトラヒドロナフタレン中135℃において測定して0.8〜5dL/gの範囲の固有粘度(IV);及び
(c)90%以上のアイソタクチックペンタドmmmm、4より低いペンタド(mmrr+mrrm)、及び13C−NMRにおいて検出できないペンタドrmmr;
を有する、1−ブテンと少なくとも1種類のC〜C12−α−オレフィン誘導単位とのコポリマー。
【請求項2】
〜C12−α−オレフィンが1−オクテンである、請求項2に記載のコポリマー。
【請求項3】
融点(TmII)とα−オレフィンのモル含量(C)との間の関係が、
0<TmII<−6.5×C+104
である、請求項1〜2のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項4】
該コポリマーを10日間のアニーリングにかけると、以下の関係
0<TmI<−5C+125
(式中、TmIは、オートクレーブ内、2000bar、室温において10分間熟成し、次に23℃において少なくとも24時間熟成した圧縮成形プラークに関してDSCによって測定される第1の溶融転移であり、CはC〜C12−α−オレフィン誘導単位のモル含量である)
を満足する、請求項1〜3のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項5】
DMTAによって測定される引張弾性率(MPa)とC〜C12−α−オレフィンのモル含量とが、以下の関係:
引張弾性率<400×e−0.20C
を満足する、請求項1〜4のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項6】
関係が
弾性率<400×e−0.25c
である、請求項5に記載のコポリマー。
【請求項7】
DMTAによって測定される引張弾性率(MPa)とDSCによって測定される溶融エンタルピー(ΔHII)とが、以下の関係:
引張弾性率≦0.98ΔHII/5.91+273.77
を満足する、請求項1〜6のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項8】
関係が、
引張弾性率≦0.98ΔHII/5.91+173.77
である、請求項7に記載のコポリマー。
【請求項9】
〜C12−α−オレフィン誘導単位の含量が0.5モル%〜7モル%の範囲である、請求項1〜8のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項10】
(a)立体剛性メタロセン化合物;
(b)アルモキサン又はアルキルメタロセンカチオンを形成することのできる化合物;及び場合によっては
(c)有機アルミニウム化合物;
を接触させることによって得られる触媒の存在下において、重合条件下で1−ブテンとC〜C12−α−オレフィンとを接触させることを含む、請求項1〜9のいずれかに記載のコポリマーの製造方法。

【公表番号】特表2011−515516(P2011−515516A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500139(P2011−500139)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/052116
【国際公開番号】WO2009/115395
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】