説明

1−ホルムアミド−3,5−ジメチルアダマンタンの製造方法

本発明は、1,3−ジメチルアダマンタンを濃酸中でホルムアミドと反応させる、1,3−ジメチルアダマンタンの直接ホルムアミド化による2反応工程のみでの1−ホルムアミド−3,5−ジメチルアダマンタンの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、アルツハイマー病の治療に用いられ、薬品名メマンチンで知られている1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンタンを製造するための重要な中間体である1−ホルムアミド−3,5−ジメチルアダマンタンの製造方法である。これは、ヨーロッパ(及び多くの非ヨーロッパの国々)ではAxura(登録商標)及びEbixa(登録商標)で販売されており、合衆国ではNamenda(登録商標)で販売されている。
【0002】
1−ブロモ−3,5−ジメチルアマンダンとホルムアミドから出発する、1−ホルムアミド−3,5−ジメチルアダマンタンの製造は、そのものとして、既に知られている。
【0003】
物質としての1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンタンは、DE 2 318 461 A1から既に知られている。脳虚血の予防と治療のためのその使用は、EP 0 392 059 B1に記載されている。したがって、1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンタンの製造に用いられる1−ホルムアミド−3,5−ジメチルアダマンタンの合成は、現在までは、1,3−ジメチルアマンダンのハロゲン化とその後のホルムアミド化によって行われる。その後、希塩酸を用いて、1−ホルムアミド−3,5−ジメチルアダマンタンを加水分解して、該アミンにする。
【0004】
しかし、1,3−ジメチルアマンダンから出発する、この合成方法は、メマンチンに到達するために3合成工程:ハロゲン化、ホルムアミド化及び酸加水分解を必要とする。その結果、有毒な元素状塩素又は臭素の過剰な使用が必要である;このことは、廃棄物処理のための付加的な費用を惹起し、好ましくない副生成物を生じる可能性がある。
【0005】
したがって、本発明の課題は、1,3−ジメチルアマンダンのホルムアミド化方法であって、簡単であって、より有害でなく若しくはより費用のかからない試薬によって実施することができる方法を提供することであった。
【0006】
国際特許出願WO 2006/010362 A1には、1,3−二置換アダマンタン誘導体をHNOとHSO中に懸濁させて、オレウムの添加後にニトリルと反応させる、3,5−置換1−アミノアダマンタン誘導体の製造法が既に記載されている。これとは対照的に、本発明の方法では、1−ホルムアミド−3,5−ジメチルアダマンタンの製造は、濃酸中でのホルムアミドによる1,3−ジメチルアダマンタンの直接ホルムアミド化によって、2反応工程のみで行われる。
【0007】
30〜70%硝酸、特に65%硝酸と、90〜100%硫酸、但し、特に95〜98%硫酸が好ましい。しかし、85〜100%のリン酸、過塩素酸、ピロ硫酸又はクロロ硫酸も用いることができる。一般に、該反応は−40℃から50℃までにおいて、但し、好ましくは0℃において行われる。本発明による方法では、大抵は、40〜95%の収率が達成される。
【0008】
前記反応は、ハロゲン化物を含まないことを特徴とするのみでなく、前記方法が高収率で、少量の副生成物を伴うのみでランし、さらにその上、出発物質中の不純物も許容するので、比較的有利な不純物プロフィルも有する。GC−MSによると、ホルムアミド化では、反応しなかった抽出物と3,5−ジメチルアダマンタン−1−オールのみが副生成物として検出されたに過ぎなかった。
【0009】
安価な前駆体からの現場での出発物質の製造さえも可能であるので、所望の最終生成物を“ワンポット”方法で得ることができる。その結果、ホルムアミドと反応させるべき1,3−ジメチルアダマンタンが、実験式(Summenformel)C1220を有する炭化水素から、ホルムアミド化にも適用されるような、匹敵する反応条件下でのカチオン転位(kationische Umlagerung)によって、現場で得られる。例えば、アセナフテン、アセナフタレン又はメチルシクロペンタジエン・ダイマーのペルヒドロ化(perhydrogenation)を用いて、該前駆体が得られる。その後、得られたジメチルアダマンタンのホルムアミド化を、同じ反応器において酸性条件下で行う。
【0010】
濃酸によるペルヒドロ化メチルシクロペンタジエン・ダイマーの処理は、下記反応によるホルムアミド化の前に、現場での出発物質1,3−ジメチルアダマンタンの製造を可能にする:
【0011】
【化1】

【0012】
国際出願PCT/DE 2005/001304に記載された方法は、濃酸中でのカルボカチオン(carbokations)の発生に基づいており、該カルボカチオンは例えばニトリルのような求核試薬によって捕捉することができ、下記反応に従って水性処理で、対応する1−アミドアダマンタン誘導体に転化させることができる:
【0013】
【化2】

【0014】
これに対して、1−ホルムアミド−3,5−ジメチルアダマンタンの本発明による合成方法は、オレウム又は100%硝酸の使用を完全に避けて、緩和な反応条件を可能にする。さらに、求核試薬としてホルムアミドを用いることによって、他のアミドに比べてかなり緩和な条件下で加水分解することができる1−ホルムアミド−3,5−ジメチルアダマンタンが反応生成物として得られる。したがって、例えば、1−アセトアミド−3,5−ジメチルアダマンタンは、水性若しくはアルコール性塩基中でのNaOHの数時間の加熱によって又は濃塩酸(36〜37%)によって切断されて、遊離1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンタンになる、これに反して、該ホルムアミドの切断は希塩酸によって既に、100℃において2時間以内に行われる。
【0015】
本発明を下記実施例によってさらに詳しく説明する:
実施例1 1−ホルムアミド−3,5−ジメチルアダマンタンの合成
1,3−ジメチルアダマンタン(6.572g,40mmol)に0℃において、65%工業用硝酸(4ml)を加えて、次に、3時間以内に98%工業用硫酸(50ml)を加える。これを0℃において一晩にわたって撹拌し、該混合物を0℃において、乾燥管を備えた丸底フラスコ中のホルムアミド(100ml)上に注入する。この混合物を0℃において30分間そして室温において90分間撹拌して、ジクロロメタン(200ml)と水(200ml)を加える。相分離した後に、有機相を、水と2%NaHCO溶液で洗浄して、NaSO上で乾燥させ、回転蒸発器で溶媒を除去する。残留油状物をクロマトグラフィーによって精製する(SiO、CHCl/アセトン(20:1)、R=0.39)。該ホルムアミド(7.41g,89.3%)がほぼ無色の固体として得られる。
【0016】
【化3】

【0017】
実施例2 1−ホルミル−3,5−ジメチルアダマンタンから1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンタン塩酸塩(メマンチン)への加水分解
1−ホルミル−3,5−ジメチルアダマンタン(4.14g,0.02mmol)を15%塩酸(100ml)中で24時間還流させる。冷却後に、沈殿を濾別して、メタノール中に溶解して、酢酸エチルエステルを添加して沈殿させる(収率80%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3−ジメチルアダマンタンの直接ホルムアミド化による1−ホルムアミド−3,5−ジメチルアダマンタンの製造方法であって、前記1,3−ジメチルアダマンタンをホルムアミドと、濃酸中で、但し、SO含有硫酸も100%硝酸も用いずに、反応させることを特徴とする方法。
【請求項2】
直接ホルムアミド化の前に、別の反応若しくは現場でのカチオン転位によって、実験式C1220を有する炭化水素前駆体から前記1,3−ジメチルアダマンタンを製造することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
濃酸として、硝酸と硫酸を用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
HNOとHSOを用いる場合に、前記硝酸が30〜70%であり、前記硫酸が90〜100%であることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記1−ホルムアミド−3,5−ジメチルアダマンタンを加水分解によって、1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンタンに転化させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
該加水分解が塩酸水溶液によって行われることを特徴とする、請求項5記載の方法。

【公表番号】特表2009−528309(P2009−528309A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556686(P2008−556686)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001433
【国際公開番号】WO2007/101536
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(507409737)メルツ・ファルマ・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲーアーアー (5)
【Fターム(参考)】