説明

1つまたは複数のトランスポンダを選択する方法

本発明は、複数のトランスポンダまたはセンサ(タグ)を有するRFIDシステムまたはリモートセンサシステムにおいて少なくとも1つのトランスポンダまたはセンサを選択する方法に関する。前記RFIDシステムまたはリモートセンサシステムはとりわけ、複数の読み取り装置を有するシステムである。本発明による方法は、個々のトランスポンダまたはセンサを少なくとも1つの読み取り装置によって事前に選択し、少なくとも1つのトランスポンダまたはセンサの仮の選択が成功した後、とりわけこの事前選択を確定するためのデータを、少なくとも1つのプロトコル部分中に非同期で、該トランスポンダまたはセンサから該読み出し装置へ伝送することを特徴とする。このような構成により、妨害となる可能性のある読み取り装置の制御信号が効果的に低減され、該システムの伝送特性が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のトランスポンダまたはセンサを有するRFIDシステムまたはリモートセンサシステムにおいて少なくとも1つのトランスポンダまたはセンサを選択する方法に関する。前記RFIDシステムまたはリモートセンサシステムはとりわけ、複数の読み取り装置を有するシステムである。
【0002】
ここ数年間で、多くのサービス分野、調達ロジスティックスおよび分配ロジスティックス、販売および生産、ならびに物流システムにおいて、自動的な識別方式が広く普及した。このような識別方式は、自動IDとも称される。ここで自動IDの目的は、人、動物、物および商品に関する情報を包括的に供給することである。
【0003】
このような自動IDシステムの一例に、現在広く普及しているチップカードがある。このようなチップカードでは、シリコンメモリチップが機械的かつ電気的なコンタクトを介して、読み取り装置によってエネルギー供給および読み出しされ、場合によっては新規にプログラミングされる。ここでは、検出装置は通常、該検出装置によってデータが読み取られるだけであるかまたはデータの新規の書き込みも行われるかに関係なく、読み取り装置とも称される。
【0004】
RFIDシステムでは、データ担体‐トランスポンダ‐のエネルギー供給は電気的なコンタクトだけで行われるのではなく、無線領域(radio frequency:RF)において電磁場を使用して非接触でも行われる。
【0005】
RFIDシステムは2つの基本的な構成要素から成る。すなわち、これらの構成要素はトランスポンダおよび読み取り装置(ベースステーションとも称される)であり、リモートセンサシステムの場合にはセンサおよび読み取り装置である。換言するとRFIDシステムの基本的な構成要素は、送受信手段であるダイポールアンテナ等の結合エレメントを有する特定用途集積回路(IC)と読み取り装置であり、この読み取り装置は典型的には高周波モジュール(送受信器)を有し、これも結合エレメントを有する。
【0006】
読み取り装置は通常、トランスポンダまたはセンサにエネルギーを供給し、トランスポンダまたはセンサは、固有の電圧供給部を備えなくてもよい。データは読み取り装置からトランスポンダへ(順方向リンク、forward link)伝送され、かつ逆方向でも(戻り方向リンク、return link)伝送される。到達範囲が1mを格段に上回るこのようなRFIDシステムは、UHF領域およびマイクロ波領域にある電磁波によって動作する。
【0007】
このようなRFIDシステムではたいてい、物理的な動作原理にしたがって後方散乱方式と称される戻り放射方式が使用される。この反射方式では、読み取り装置からトランスポンダに到着したエネルギーの一部が反射され(戻り放射、いわゆる後方散乱)、場合によってはデータ伝送のために変調される。ICは結合エレメントを介して高周波キャリアを受信し、適切な変調および後方散乱用の装置によって部分的に読み出し装置へ伝送し戻す。
【0008】
以下では、トランスポンダまたはセンサを総合的にタグと称する。複数のトランスポンダまたはセンサが読み取り装置のRFフィールド内に存在する場合、タグまたはタグのグループとベースステーションとの間でのみデータ伝送を行わなければならない場合には、読み取り装置はデータ伝送前に相応の選択プロセスを実施しなければならない。とりわけ、読み取り装置はタグにシグナリングし、たとえばタグの識別子を把握する。この相応のプロセスは「衝突防止方式」とも称される。
【0009】
ここではまず、確率論的なALOHAベースの衝突防止方式が公知である(Finkenzeller, RFID-Handbuch, 3.Auflage, Hanser、第210頁からを参照されたい)。しかしこの衝突防止方式は、内在的な速度上の欠点を有する。
【0010】
さらに、タグは最も簡単なケースでは、それぞれ一意の識別ビットシーケンス、いわゆるユニークIDまたはUIDを有することを特徴とする。これは、製造者によってすでに静的に設定され、タグに記憶されている。このUIDを使用して、読み取り装置はタグに対して個別に、またはグループとしてのタグに対して応答する。相応のプロセスが、たとえばUS5856788から公知である。ここでは、静的に設定されたこのような一意の識別ビットシーケンスと、読み取り装置から伝送された選択ビットシーケンスとビットごとに比較することにより、選択が行われる。このような選択法は、上記の確率的なプロセスとは逆に、決定論的とも称される。
【0011】
本願の発明者によるDE10204346から、別の決定論的な衝突防止ルーティンが公知である。
【0012】
しかしオープンなシステムでは、UID仕様が多数存在するために、このような一意のUIDが保証されなくなる事態が生じやすくなるので、同出願人の並行するドイツ連邦共和国特許出願DE10336308(未公開、出願日2003年8月1日)では、タグの識別ビットシーケンスをランダム要素で拡張して、識別ビットシーケンスが一意でない場合でも決定論的な選択を行えるようにすることが提案されている。
【0013】
しかし一般的には、どのような決定論的選択法でも、読み取り装置が制御目的でビット境界で、規則的に制御信号をいわゆるクロックチック(clock tick、クロック信号)またはノッチ信号(notch、変調ディップ)の形態で伝送しなければならないことが不利であると見なされる。
【0014】
上記で概略的に述べた後方散乱ベースのRFIDシステムおよびリモートセンサシステムの場合、典型的なアプリケーションでは読み取り装置は、30dBmを有するRFキャリアと、相応の帯域幅の変調信号とを送信する。この変調信号のスペクトラムは、キャリアおよび変調によって(クロックチック伝送によって引き起こされる側帯波によって)生成される。タグは、送信ないしは受信されたエネルギーの一部のみを放射し戻し、読み取り装置では約−70dBmを有する信号が受信される。このような信号は、周辺ノイズを僅かに上回るか、または別のRFサービスのノイズスペクトラムを僅かに上回るだけである。
【0015】
GSMまたはそれに比類するアプリケーションにおける限界レベルは、−36dBmである。RFIDアプリケーションで生成される読み取り装置の側波帯は−54dBm未満でなければならない。すなわち、この側波帯は部分的に有効信号より強いが、周波数空間でフィルタリングによって除去できる。それに相応して、読み取り装置の受信チャネルを非常に高い感度で構成しなければならないが、このことによってすべての読み取り装置が必然的に、システム内の別の読み取り装置の、通常は非同期的である妨害的な送信を、それぞれの側波帯とともに受信してしまうことが不利であると見なされる。
【0016】
とりわけ上記の理由から、RFIDアプリケーションの枠内では一般的に、処理速度が急を要する最適化ターゲットの1つとなっている。このことはとりわけ、反射に起因して規則的にフィールドギャップが発生することがあるUHF(超高周波)システムおよびマイクロ波システムの領域に当てはまる。さらに、特に長距離到達範囲のシステムでは、遠隔および/または運動中のオブジェクトが、たとえば小包分配または積層アプリケーションにおいて永続的な基本ノイズを引き起こし、反射比が異なることによって別の問題が生じてしまう。
【0017】
それゆえ、たとえばISO規格18000−6に記述されたような従来のRFIDシステムでは、タグに対して読み取り装置が応答するために、可能な限り短く維持されるコマンドを使用する。これによって、タグ上の(メモリ)アドレス等の標準設定(いわゆるデフォルト設定)のみが規則的に引き渡される。たとえば、このようなコマンドによってタグのIDをアドレシングするのが普通である。たとえばタグIDである別のデータを照会する際に、この適用がこのような設定とずれていると、読み取り装置は長いコマンドシーケンスを伝送する必要が生じるか(該当するデータを読み出すためのREAD命令の前の衝突防止ルーティンによる分離)、または、たとえば読み出すべきビットアドレス等の相応のパラメータを含む衝突防止命令が下される。
【0018】
衝突防止プロシージャの実行中に、さらに上記の周辺条件も変化すると、面倒なことに、たとえばデータフロー符号化等の別の適合も行わねばならない。
【0019】
したがって、このような従来の手順を行うことは、RFIDシステムにおいてデータ伝送に及ぼされる既述の悪影響とともに、衝突防止ルーティンの時間が長くなることにもなる。
【0020】
本発明の課題は、上記の欠点を回避して、冒頭に述べた形式の方法を次のようにさらに発展することである。すなわち、読み取り装置のクロック信号/ノッチ信号による伝送特性上の悪影響が最小限に抑えられると同時に、個々のトランスポンダまたはセンサ(タグ)、またはトランスポンダまたはセンサのグループをオープンなシステムでも迅速かつ確実に選択できるように発展することである。
【0021】
前記課題は、冒頭に述べた形式の方法では、次のようにして解決される。すなわち、個々のトランスポンダまたはセンサを少なくとも1つの読み取り装置によって事前に選択し、少なくとも1つのトランスポンダまたはセンサの仮の選択が成功した後、とりわけこの事前選択を確定するためのデータを、少なくとも1つのプロトコル部分中に非同期で、該トランスポンダまたはセンサから該読み出し装置へ伝送することによって解決される。1つまたは複数のタグの事前選択後に行われる非同期伝送の本発明の枠内において主要な利点は、本発明においてとりわけ下された事前選択の確定のために使用される該当のプロトコル部分中に、ノッチ信号をタグへ送信する必要がないことである。したがって、読み取り装置の伝送によってキャリアの他に付加的に、別のタグと読み取り装置との間の通信に対して妨害となって作用するおそれのある側波帯が生じない。
【0022】
本発明による方法の第1の発展形態では、事前選択をそれ自体に公知のように決定論的に行う。ここでは、付加的にタグによって選択目的でそれぞれ、m個のビットの長さを有する第1のビットシーケンスを生成することができる。この第1のビットシーケンスは有利には少なくとも、タグから読み取り装置までのデータ戻り方向リンクに非同期の伝送モードが選択された場合に生成される。そうでない場合は、信号雑音比がより有利なので、原則的に同期的なデータ伝送を行うべきである。同期的な戻り方向リンクと非同期的な戻り接続との間の相応の切り換え法が、同出願人による並行する未公開のドイツ連邦共和国特許出願DE102004014562.8に記載されている。この明細書のこの点に関しての内容は、参照によって本願の開示内容であるとする。このように、本発明による決定論的な選択プロシージャと関連づけて、確立された公知の解決手段とのダウン方向の両立性が実現される。
【0023】
本発明による方法の別の構成の枠内では、タグを事前選択するために、n個のビットの長さを有する識別ビットシーケンスを使用する。ここではn≦mであり、前記長さは、発展形態では有利には、第1のビットシーケンスから得られる。このような第1のビットシーケンスは、本発明では乱数および/またはタグのメモリ内容によって形成され、たとえば乱数と記憶されたタグUIDとが組み合わされて形成される。相応に長い到達範囲を有するタグの場合、ここで考慮すべきなのは、システムのRFフィールド内に存在し適切な選択方法によって規則的に個別化しなければならないタグが200個を上回る場合があることだ。以下では、このような選択方法を調停とも称する。本発明の枠内では、そのつど、各アクセス時に選択される同一の乱数を生成したタグ対が存在しないことを十分な確率で保証するためには、16ビット乱数(1〜65536の数値)で十分であることが前提条件とされる。各調停時にこのような乱数は、完全なビット範囲で使用できるので、この乱数空間でタグ衝突が発生する確率は低減される。
【0024】
この考察の関連で、本発明による方法の別の変形形態は、読み取り装置によってトランスポンダまたはセンサを事前選択するために、選択ビットシーケンスをそれ自体に公知のようにビットごとにタグへ伝送し、ビットごとに識別ビットシーケンスと比較することを特徴とする。前記構成によれば、少なくとも部分的にランダムな識別ビットシーケンスを使用する際に、オープンなシステムでも確実な調停が行われることが保証される。ここでは比較基準は、ベースステーションからタグへ伝送され、識別ビットシーケンスの比較すべきビットのビット位置と選択ビットシーケンスとに依存する。
【0025】
上記のような乱数を含む、識別ビットシーケンスのデータフィールドは、本発明では進行的な調停によって適合的に変更される。すなわち、応答されるタグの数の制限を漸次的に強くしながら適合的に変更される。こうするために有利には、乱数のビット長をビットごとの比較の進行に依存して適合し、とりわけ低減する。たとえば、調停の開始時には16ビット長の乱数で動作し、その後、選択方法の進行に応じて、さらに僅かなビットに低減する。
【0026】
タグを個別化するためには、本発明による方法の有利な発展形態によれば、識別ビットシーケンスと選択ビットシーケンスとの比較にしたがってタグを選択し、選択プロセスを読み取り装置の制御‐終了信号によって終了する。該当するタグがこの終了時点までに調停に参加した場合、すなわち、該当するタグが比較にしたがってミュートに切り換えられていなかった場合、このタグは仮のものとして読み取り装置によってセレクトされ、この接続は本発明では非同期伝送モードに移行される。この非同期伝送モードでは、読み取り装置が妨害となる可能性のあるノッチ信号を伝送することはもはやない。
【0027】
本発明による方法の1つの変形形態ではさらに、上記の制御‐終了信号を簡単に検出できるようにするために、読み取り装置が選択ビットシーケンスの伝送前にヘッドデータを、いわゆるリターンヘッダを伝送する。このヘッドデータは、制御‐終了信号を識別するための参照シンボルを含む。たとえばこのようなヘッドデータは、すでに引用したDE102004014562.8からそれ自体に公知であるように、所定の期間の4つの部分シンボルを有する。本発明では、相応の期間の所定の倍数をそのつど、制御‐終了信号の時間基準として使用される。さらに本方法の別の構成によれば、読み取り装置は上記のヘッドデータで、タグから読み取り装置への非同期のデータ戻り方向リンクを選択するための参照シンボルも伝送する。
【0028】
本発明による方法の1つの発展形態によれば、制御‐終了信号にしたがって非同期のプロトコル部分中に、純粋な有効データと、オプションとして付加的な保護シンボルとを伝送する。この部分では調停は行われず、この部分の長さは通常、(識別ビットシーケンスの)調停部分の長さを上回る。したがって、ID長は64〜128ビットの間にあるのが普通であるが、いわゆるライセンスプレートアプリケーションでは、データ長は最大で500ビットにもなる。このデータ(IDビット、アドレシングされたデータ領域の内容、および/または乱数の他の残り)の出力は、有利にはいわゆる自動減分関数によって行われる。
【0029】
本発明による方法の特に有利な実施形態によれば、非同期プロトコル部分は読み取り装置の別の制御信号によって終了される。その後、有利には確認応答部分が続き、これによってタグの仮選択が読み取り装置によって確定または放棄される。その後、この確認応答部分で読み取り装置は該タグに対して、該タグが最終的に選択されたかまたは完了された仮選択が放棄されるかを適切な手法で通知する。
【0030】
確認応答部分は、本方法のアプリケーション固有のフレキシビリティを実現するために同期的に編成され、同期モードで伝送される。それにしたがって択一的に、確認応答部分を同期モードで伝送することも可能である。
【0031】
上記の確認応答部分で、読み取り装置ないしはタグは同期モードで、たとえばCRCデータ(CRC:cyclic redundancy check)等の検査データを伝送する。この検査データと補完的な検査データとの比較が、各受信側で仮選択を確定または放棄するために使用される。CRCはたとえば、非同期部分で伝送されるデータに基づく。さらに場合によっては、非同期部分に検査シンボルがすでに存在しており、読み取り装置によって肯定確認シンボル(ACK)を使用してのみ確定される場合には、簡単な肯定確認シンボル(ACK)でも十分である。また読み取り装置は、1つまたは複数のタグの選択に使用された乱数を(一緒に)、確定として(戻り)伝送することもできる。また、本発明では有利には、タグはデータとともにビット対ビットで検査シンボルを、本来のデータビットで、すなわちこの本来のデータビットとともに、いわゆる「セキュリティ符号化(security encoding)」で、同出願人のドイツ連邦共和国特許出願番号DE102004013837(出願日2004年3月17日)で並行して提出された未公開の出願に記載されているように伝送される。この出願の記載内容は、参照によって本願の開示内容とする。このような符号化が選択されなかった場合、タグはIDの終了時にCRCを伝送することができる。
【0032】
確認応答部分の構成が同期的である場合、前記のように補完的な検査データを比較することにより、上記で概略的に述べた選択状態の決定が行われる。ここで本発明による方法の有利な発展形態では、検査データは非同期プロトコル部分のオプションの保護シンボルに依存しない。というのもたとえば、非同期データ部分のCRCデータは、本発明による非同期的なインタラプト(制御‐終了信号;上記参照)に起因して一意でないからである。したがって、CRCデータはタグで、基本的にビット経過の任意の時点で形成することができ、この時点は、上記のインタラプトの前または後とすることができる。
【0033】
それに対して、確認応答部分の非同期モードでは本発明では、仮選択されたタグが、冒頭に述べた乱数と、オプションとしてCRCデータ等の所属の検査データとを伝送するように構成されている。この伝送が非同期モードでノッチ信号によって中断される場合、検査データは、このインタラプトの前に存在したデータの特性に基づく。しかし、検査シンボルがすでにタグから伝送されていることは、長いIDの場合には有利であり、検査シンボルをすでにタグから伝送した場合、確定にはACKシンボル(上記参照)で十分である。
【0034】
ここでは上記の要素の伝送は、同出願人による上記の並行するDE102004013837に原理的に記載されたように、シーケンス伝送されるかまたは同時に伝送される。それに対して、使用可能な帯域幅の理由から、検査データと(有効)データとの上記の組み合わせが選択されない場合、タグは伝送の終了時に検査フィールドを付加することもできる。というのも、タグにはIDの終了が既知であるからだ。
【0035】
本発明による方法の特に有利な択一的な構成によれば、仮選択を確定するために確定信号が、読み取り装置によってタグへ、確認応答部分で伝送される。この信号もまた、読み取り装置のノッチ信号とすることができる。このノッチ信号が所定の時間窓(確定時間)外にある場合、たとえば非同期戻り方向リンクのビット長基準時間によれば、16ビット相応の期間外にある場合、ないしはノッチ信号が完全に欠落したままである場合、タグは本発明によれば仮選択を放棄する。
【0036】
少なくとも1つのプロトコル部分中に少なくとも非同期データ伝送をアクティベートするためには、本発明では相応のアクティベート制御命令を読み取り装置からタグへ伝送する。さらに(衝突防止)プロシージャ全体を有利に高速化するために、本発明による方法の特に有利な発展形態では、前記アクティベート制御命令をタグに、たとえばレジスタに記憶し、後で繰り返し制御命令が受信された場合、いわゆるリピートコマンドが受信された場合に再び実行されるように構成される。とりわけここでは、繰り返し制御命令はアクティベート制御命令より短くされる。
【0037】
すなわち、短いリピートコマンドをタグが受信した後に、先行して受信された命令が上書きされずにむしろ再アクティベートされる場合、プロシージャ全体は短縮される。
【0038】
このことに相応して、冒頭に記載した課題は、複数のトランスポンダまたはセンサを有するRFIDシステムまたはリモートセンサシステムにおいて、とりわけ請求項1から23までのいずれか1項記載のデータ伝送、とりわけ衝突防止プロシージャを制御する次のような方法によっても解決される。すなわち、1つの読み取り装置から少なくとも1つのトランスポンダまたはセンサへ伝送される命令構造を、該トランスポンダまたはセンサによって付加的なパラメータおよび/またはアドレス拡張部とともに伝送されるように、該トランスポンダまたはセンサによって構成および記憶し、次に繰り返し制御命令が受信されると、記憶された該命令を再び実行する方法によっても解決される。該RFIDシステムまたはリモートセンサシステムは、とりわけ複数の読み取り装置を有するシステムである。
【0039】
しかし、ここで有利にはまず、新規に受信されたコマンドが有効であることを保証すべきである。したがって本発明による方法の発展形態は、アクティベート制御信号の再実行の前に繰り返し制御命令の検査データを検査することを特徴とする。
【0040】
ポインタ(pointer)を基礎とする衝突防止ルーティンを使用する場合、前記命令構造は拡張部として、メモリブロックをポインティングするポインタとタグのビットアドレスとを有するように構成することができる。
【0041】
本発明による(衝突防止)方法をさらに高速化するためには、有利には繰り返し制御命令をアクティベート制御命令より短くする。
【0042】
記憶された命令の上書きを排除するためには、本発明による方法の発展形態では、繰り返し制御命令の受信によって、この命令すなわち繰り返し制御命令の記憶が阻止されるように構成する。
【0043】
伝送レートを改善し、ひいてはさらなる高速化を実現するためには、繰り返し制御命令は、保護シンボルの伝送をアクティベートするための制御シンボルを有効データと一緒に、該有効データの個々のデータビット内に含むように構成することができる。
【0044】
本発明による方法の特に有利な発展形態によれば、繰り返し制御命令はタグの事前選択を確定または放棄するための確認応答ビットを含む。たとえば、新規に受信されたコマンドは、ACKシンボルまたはNACKシンボル(NACK:NOT acknowledged(否定応答);たとえば論理"0"に相応)の形態の確認応答ビットを有することができる。その際にはたとえば、NACKシンボルによって上記の繰り返しプロシージャが行われるのに対し、ACKシンボル(論理"1")はタグの選択を確定する。これに基づいて、該当のタグは維持モードに切り換えられ、相応のリセットコマンドを受信するまでは衝突防止に関与しない。
【0045】
それに対して本発明では、NACKシンボルの受信によってプロトコルにおける事前の取り決めにしたがって、本発明の以下の後続プロセスが行われる:
1)最後に選択されたタグは最後の調停の結果を放棄し、通常のように次の調停に再び関与する。または、
2)最後に選択されたタグはこの結果を放棄せず、次の戻り方向リンクヘッドデータ(下記参照)の後に再びデータフローを送信する。他のタグは取り決めによって、調停が行われないことを把握しているので、伝送に関与しない。
【0046】
次に、本発明による方法は有利には、本発明による戻り方向リンクの第1の下位部分である戻り方向リンクヘッドデータ(リターンヘッダ;上記参照)の伝送を直接開始する。それによればこの伝送は、以下のものを含む。
【0047】
・基準伝送および非同期モードへの切り換えを行うための上記のヘッド部分。
【0048】
・読み取り装置がnビットの長さを有する選択ビットシーケンスを伝送するランダム部分。調停が全二重方式で(時間領域で)行われる場合、読み取り装置はタグから受信した乱数をベースとして決定をタグへ送信する。この決定は、少なくとも1つのタグに関して、該タグから伝送された乱数に相応する。タグがコスト上の理由から、たとえば上記の16ビットより少ないビット数を有する場合、ビットシーケンスをタグのメモリ内容によって満たすことができ、この部分を使用して確認応答CRCデータを形成することができる。
【0049】
・ノッチ制御による決定論的選択プロセスを終了するための読み取り装置の分離要素(制御信号)。
【0050】
・タグがIDないしは要求されたデータフローを後方散乱する非同期データ部分。
【0051】
・(非同期)データ部分を終了するための読み取り装置の別の分離要素(制御‐終了信号)。
【0052】
・読み取り装置によってコントロールされる所定の長さ(たとえば16ビット)を有する確認応答部分。
【0053】
また、タグがIDおよび関連のCRCを非同期で伝送することも考えられる。これらに対しては、ACKシンボルのみを読み取り装置から伝送するだけでよい。伝送された命令が、一意に完結されないデータ要素をポインティングする場合のみ、このプロセスは非実用的である。このような場合には基本的に、別の制御量および制御フィールドが必要である。
【0054】
以下の実施例の説明に、本発明の別の特徴および利点が図面にしたがって記載されている。
【0055】
図面
図1 読み取り装置と該読み取り装置の応答領域内に複数のタグ(トランスポンダまたはリモートセンサ)とを有するRFIDシステムを概略的に示している。
【0056】
図2 図1に示されたタグのブロック回路図である。
【0057】
図3a 本発明による方法の第1の構成によるデータ伝送ダイアグラムの第1のステップを示している。
【0058】
図3b 図3aに示された方法の後続のステップを示している。
【0059】
図4 本発明による方法の第2の構成によるデータ伝送ダイアグラムである。
【0060】
図5 本発明による方法の第3の構成によるデータ伝送ダイアグラムである。
【0061】
図6 本発明による方法の第4の構成によるデータ伝送ダイアグラムである。
【0062】
図1には、読み取り装置2と複数のトランスポンダ3.1〜3.4とを有するRFIDシステム1が示されている。この読み取り装置2は、ダイポールアンテナ等の適切な送受信手段2’に接続されており、前記トランスポンダ3.1〜3.4はともに読み取り装置2の応答領域A内に存在する。
【0063】
読み取り装置2ないしは送信手段2’から送信されたデータフローDは、すべてのトランスポンダ3.1〜3.4によって同時に受信される。以下では、読み取り装置2からトランスポンダ3.1〜3.4へのデータ伝送を順方向リンク(foward link)と称する。トランスポンダ3.1〜3.4は少なくとも、完了された読み取り装置2からのデータ伝送に対して、戻り方向リンクR(return link)を介して応答する。ここでは、読み取り装置2からデータDとともにトランスポンダ3.1〜3.4に到達するエネルギーの一部が反射(戻り放射;いわゆる後方散乱)される。このようなエネルギーの一部は場合によっては、トランスポンダ3.1〜3.4から読み取り装置2へのデータ伝送を行うために変調される。全二重伝送可能なシステム1が使用される(順方向リンクおよび戻り方向リンクで同時に伝送が行われる)場合、読み取り装置2へのデータ伝送を順方向リンク中でも行うこともできる。
【0064】
特定のアプリケーションでは、特定のトランスポンダ3.1〜3.4またはトランスポンダのグループに対して所期のように応答できるようにするためには、読み取り装置2がこの特定のトランスポンダ3.1〜3.4またはトランスポンダのグループを選択(個別化)しなければならない。このことは、たとえばプログラミングアプリケーションに当てはまる。
【0065】
これ以降では、通常はトランスポンダのみを言及するが、本発明は、複数のリモートセンサを有するシステムでも使用することができ、場合によっては、このようなシステムを複数のトランスポンダとも関連して使用することができる。
【0066】
図2に、図1のRFIDシステム1のトランスポンダ3.1〜3.4が概略的にブロック回路図で示されている。これによれば、トランスポンダ3.1〜3.4は少なくとも1つの集積回路(IC)3aを有し、命令ないしは制御信号(ノッチ信号)を含めてデータD,Rを送受信し、場合によってはエネルギーも送受信するための唯一の外部接続部として、(ダイポール)アンテナ3bを有する。図2に示されたトランスポンダ3.1〜3.4はさらに、乱数発生器3cと、とりわけ決定論的な調停のための比較手段3dと、EEPROM等の記憶手段3eと、相応のレジスタを有するCRC発生器3fとを有し、これらによって、相互に独立したCRC値を決定することができる(このことに関しては、以下に記載されている)。前記CRC発生器3fは、複数の部分から構成することもできる(一点鎖線)。
【0067】
トランスポンダ3.1〜3.4は、mビットの長さを有する識別ビットシーケンスIDBを供給するように構成されている。とりわけ、乱数発生器3cが(たとえばコスト上の理由から)十分な長さの乱数を生成できない場合、このmビットは部分的に乱数発生器3cから由来し、すなわちビット長mの乱数を含み、部分的に記憶手段3eの記憶内容を再現する。識別ビットシーケンスIDBのこのような組み合わせは、図2では破線の接続線によって記号化されている。
【0068】
識別ビットシーケンスIDBは、本発明ではそれ自体に公知のように、読み取り装置2(図1)によってトランスポンダ3.1〜3.4の決定論的な選択を行うために使用される。
【0069】
こうするためには、適切な選択ビットシーケンス(図示されていない)を読み取り装置2によって伝送し、この選択ビットシーケンスをトランスポンダ3.1〜3.4の比較手段3dによってビットごとに識別ビットシーケンスIDBと比較しなければならない。次に比較結果にしたがって、トランスポンダ3.1〜3.4を少なくとも仮に(たとえば、記憶手段3eにおいて相応のフラグをセットすることにより)選択する。さらに、シーケンスIDBのビット長mを調停の進行(未だ応答するトランスポンダの集合の縮減)に依存して適応的に適合することができ、すなわち短縮することができる。
【0070】
本発明では効率的に調停を行うために、長さnを有する識別ビットシーケンスIDBの部分ビットシーケンスのみが使用される(図2参照)。ここではn≦mであり、読み取り装置2はnビットの比較後に適切な制御信号を伝送し、これによって決定論的(同期的)な調停が終了される。
【0071】
次に、トランスポンダ3.1〜3.4が非同期的に後方散乱で、少なくともIDデータまたは別の記憶内容を該トランスポンダ3.1〜3.4の記憶手段3eから伝送する。このことを以下で、図4〜6で詳細に説明する。
【0072】
まず図3a,3bには、トランスポンダと読み取り装置との間のそれぞれのデータ伝送例に基づいて、本発明によるデータ伝送方法で使用できる高速化された決定論的調停のコンセプトが概略的に示されている。図3aでは時間t軸上にまず(左側に)、読み取り装置(図1)が基準シンボルを有するヘッドデータH1を送信した後、所属のパラメータデータPAを有する命令データCO、長さ>8ビットを有するいわゆるロングコマンドを送信する様子が示されている。このようなロングコマンドは、たとえばポインタ(pointer)をベースとするコマンドの場合には24ビットを有する。有利にはこのようなロングコマンドによって、本発明によるデータ伝送方法のアクティベートが行われる。これはたとえば、調停が識別ビットシーケンスIDBのランダム部分を介してのみ行われるかまたは実質的に識別ビットシーケンスIDBのランダム部分を介して行われる「ランダムモード」として構成されている(上記、図4〜6参照)。その後にEOTフィールドEOT1が続く(EOT:end-of-transmission)。このEOTフィールドに応答して、読み取り装置はリターンヘッダH2を送信する。このリターンヘッダH2は戻り方向リンクR(図1)に対する基準を有し、この基準は本発明では付加的に、先行して呼び出されたランダムモードを選択するためにも使用することができる。このことは、上記の並行する未公開のドイツ連邦共和国出願DE102004014562.8に原理的に記載されている。次に別のヘッドデータ部分H2にしたがって、既述の決定論的調停部DAが、識別ビットシーケンスIDB(図2)を介してランダム部分RAによって、場合によっては付加的なID部分IDも使用して行われる。これは、選択的に半二重モードまたは全二重モードで行うことができる。ヘッドデータH2はとりわけ、読み取り装置の後続のEOFシンボル(EOF:end-of-frame)を検出するための基準シンボルを有する。
【0073】
調停フローはEOFフィールドEOFによって終了され、その後にCRC確認応答部分CRC‐Qおよび別のEOTフィールドEOT2が続く。確認応答部分CRC‐Qは、読み取り装置がトランスポンダに対し、当該トランスポンダが最終的に選択されたかまたは(仮)選択を放棄すべきであるかを通知するために使用される。しかし、このCRC部分を後に設けることは必須ではない。というのも、調停部分DAに上記の「セキュリティ符号化(security encoding)」がすでに選択されている場合があるからだ。後者は有利には、タグの伝送のデータ長が固定されていない場合に使用される。定義された終端部を有する短いID(64ビットまたは96ビット)の場合には、後続にCRCを有する通常のエンコードパターンでも十分であるが、完全性に関して実際に確実であるためには、完全な伝送を受信しなければならないという内在的な欠点が存在する。
【0074】
ここでたとえば、「セキュリティ」データが存在しない場合、または逆のCRCが受信された場合には、読み取り装置は、タグが伝送しない逆方向に転換された後、EOFシンボルを送信することができる。その際には、後続のNACKによって該プロセス全体が繰り返される。
【0075】
図3bによれば次の伝送ステップにおいて、ロングコマンドCO,PAの代わりに、短縮された命令構造(ショートコマンド)いわゆるリピートコマンドRCが繰り返し制御命令として使用される。本発明によれば、これは有利には8ビットの長さを有する。このリピートコマンドRCは、5ビットの長さの命令構造部CSと、パラメータビットまたは制御ビットPSBと、2つのCRCビットCBとを有する。このことは図3bに概略的に示されている。繰り返し制御命令の制御ビットPSBはたとえば、有効データの個々のビット内で行われる保護シンボルおよび該有効データの伝送をアクティベートまたはデアクティベートするための制御シンボルとして使用される。このことは、上記(「セキュリティ符号化(security encoding)」)ですでに詳述したとおりである。
【0076】
択一的に、上記のパラメータビットまたは制御ビットPSBは確認応答ビットとして機能することもできる。とりわけ、本発明による非同期の戻り方向リンクが関与する衝突防止プロシージャの場合、読み取り装置が非同期プロトコル部分で(伝送)エラーを発見するという状況が生じる。その際には、読み取り装置は従来のように、該当するタグをアドレシングするREAD命令を取り消さねばならない。これもまた、8ビットを上回るビットを有するロングコマンドである。これは、その前に衝突防止プロセスを高速化するために使用されたショートコマンドより長い。それゆえ有利なのは、既述の確認応答ビットをリピートコマンドRC内のACKシンボル/NACKシンボルの形態で使用することである。ここでは、論理値"1"はACK(=承諾する)を表し、論理値"0"はNACK(=承諾しない)を表す。ACKの場合、最後に選択されたタグが維持モードに移行される。タグが調停において選択されると、該当のタグが選択されたことを示すフラグをセットする。次に別の衝突防止命令が受信されると、該タグは維持モードに移行され、もはや衝突防止ルーティンに関与しなくなる。このようにしてACKはタグに対し、該タグが実際に維持モードに切り換えられることを確定する。
【0077】
上記のリピートコマンドRCを本発明にしたがって使用する場合には、先行してトランスポンダによって受信された(たとえば記憶手段3eに保持された)ロングコマンドは上書きされず、図3aに基づいて説明したように、再アクティベートされて再び実行される。こうすることによりこの衝突防止方法は、図3aと3bとの比較から分かるように、時間的に短縮される。
【0078】
より低いビットエラーレートが実現されることにより、さらなる高速化効果も得られる。というのも、決定論的な同期プロトコル部分が短縮されるため、可能性のある妨害物/妨害ケースが減少されるからである。
【0079】
1つのトランスポンダまたはトランスポンダのグループの選択が完結され成功した後は、読み取り装置はトランスポンダに対してさらに問い合わせるか(データを呼び出す)、またはトランスポンダをプログラミングするか、または別の調停コマンドを伝送することができる。
【0080】
図4〜6において、本発明によるデータ伝送方法の別の種々の変形形態が示されている。これらは特に有利には、上記で図3a,3bに関連して記載されたコンセプトと組み合わされる。ここに図示された方法はそれぞれ、すでに上記で述べたヘッドデータHIと、命令データ(ロングコマンドCO,PAまたはリピートコマンドRC)と、EOTフィールドEOT1の伝送によって開始される。その後にそれぞれ、同期的な伝送部分SYNCが伝送される。これは、ヘッド部分H2(上記参照)とランダムデータRAとを含み、その後にEOFシンボルEOF1を含む。本発明では、この同期的なデータ部分SYNCは調停のために使用され、EOFシンボルは、1つのトランスポンダまたはトランスポンダのグループが選択されると直ちに、調停を終了する。このようにして、読み取り装置が妨害の可能性のあるノッチ信号を伝送する前記の同期的な伝送フェーズも、調停に必要な最低限度まで制限される。この調停はすでに述べたように、全二重モードまたは半二重モードで行うことができる。
【0081】
同期的部分SYNCの後にそれぞれ、非同期的ひいては「ノッチ無し」の部分ASYNCが続く。これは、ここに図示された実施形態に応じて異なる(ビット)長さを有し、異なるデータ構造を有することができる。図4では、非同期部分ASYNC中はトランスポンダのIDデータIDのみが伝送される。その後、このシステムは別のEOFシンボルEOF2を伝送するための同期的伝送SYNCに切り返し戻された後、確認応答部分CRC‐Qが続く(上記参照)。図4の伝送は、EOTシンボルEOT2によって終了される。確認応答部分は上記で述べたように、読み取り装置がトランスポンダに対し、当該トランスポンダが最終的に選択されたかまたは(仮)選択を放棄すべきであるかを通知するために使用される。
【0082】
確認応答部分の同期モードでは、たとえば読み取り装置から伝送されたCRCフィールドと該当のトランスポンダ自体で決定されたCRCデータとの比較が、たとえばこの比較に適して構成された選択状態の決定用の比較手段3dで行われる。その際には、伝送されたCRCフィールドはデータ領域IDのCRCデータに依存しないことが必要である。というのもこれらは、非同期的なインタラプトEOF2のために一意でないからである。
【0083】
図5では、IDデータIDも後続の確認応答データCRC‐Qも非同期で伝送する。その間に読み取り装置は、両データ部分ID,CRC‐Qを分離するための個々の分離要素Nを送信する。この分離要素もまた、ノッチ信号Nとすることができる。
【0084】
確認応答部分CRC‐Qは、本発明では所定数のビットを有し、たとえば16ビットを有するが、この確認応答部分CRC‐Qの長さは読み取り装置によってコントロールされる。このことは最後の図6から理解できる。この図によれば読み取り装置は、確認応答部分CRC‐Qを別のノッチ信号N’の送信によって(早期に)終了する。したがって、本発明では確認応答プロセスは、選択/比較結果が承諾された場合に読み取り装置が後者のノッチ信号N’を、確定時間の形態の所定の時間窓内で伝送しなければならないように、たとえば上記の一例の16ビットに相応する時間の経過前に伝送しなければならないように構成することができる。信号N’が「エラー確認応答」の種類に応じて、取り決められた時間窓外にある場合、たとえば17ビット経過後にある場合、トランスポンダは仮選択を放棄しなければならない。付加的にノッチ信号N’は、新規の命令シーケンス(プログラミング、データ問い合わせ、調停等)の復号化を開始する。
【0085】
本発明では、トランスポンダが受信されたビットシーケンスを介してCRC値を形成し、これを読み取り装置へ伝送する構成も可能である。こうするためにはまず、トランスポンダ3.1〜3.4のCRC発生器3f(図2)が基本状態に移行される。通信上の理由から、読み取り装置に発生器の数式が既知でなければならないので、乱数発生器3cを相応に、任意に構成することができる。
【0086】
その際には、読み取り装置が乱数を問い合わせした程度だけしか、乱数をCRCに入力することができないことに留意すべきである。たとえば16ビットのうち3ビットのみが問い合わされた場合には、それに相応して、CRCデータを決定するために3ビットのみを使用することができる。非同期的なデータ部分IDに対するCRCデータと確認応答部分CRC‐Qに対するCRCデータとは依存しないことが予め必要とされているので、このような手順はとりわけ、通信中に2つの独立したCRC発生器を使用する場合に行うことができる。このことは実際には、通常の場合に当てはまる。このことは図2において、発生器手段3f中の一点鎖線によって記号化されている。
【0087】
図4〜6の実施形態では、本発明による伝送方法における本来の調停は、もっぱら識別ビットシーケンスIDB(図2)内の乱数を介して実行され(「ランダムモード」)、有利には(早期に、すなわちトランスポンダ3.1〜3.4の識別ビットシーケンスIDB全体の処理前に)読み取り装置のEOFシンボルによって終了され、このことに基づいてトランスポンダは、該トランスポンダのメモリに「調停成立」状態を格納する。本方法の実際に有利な後続プロセスではとりわけ、次に必須的にトランスポンダIDを出力するか(いわゆる匿名読み出し(anonymous read);ISO 18000−6 Type 6 参照)、または次に所望のデータを、たとえばコマンドCO,PA(上記参照)によってアドレシングされたEEPROM内容の開始アドレスで開始して、トランスポンダから伝送するように(いわゆるトランケートリプレイ(truncated replay))構成されている。どちらの場合も、場合によっては自動的に行われる。
【0088】
このコンテクストでは「匿名読み出し」は、IDが既知である必要がないこと、すなわち「補遺」に属することを意味する。換言すると、IDは後で出力される。「トランケートリプレイ」とは、読み取り装置がすでにIDまたはメモリの内容の一部を把握しており、この一部を非同期部分でもはや繰り返す必要がなく、アドレスベクトルが直ちにさらに接続されることを指す。
【0089】
本発明ではこのようなランダムモード(上記参照)を行うことにより、さらに有利には、極端なケースでは1ビットの幅だけの乱数発生器を使用して調停がビットごとに行われ、乱数発生器によって生成されたランダム値が相応にビットごとに入れられる。特別に5ビットの長さの発生器(LFSR:線形フィードバックシフトレジスタ(linear feedback shift register)の場合、4ビットすべてから4ビット値が「取り出され」、LFSRの値の蓄積(0〜15)をすべて使用することができる。このような構成の利点は、回路の手間が低減されると同時に、消費電力が低減されることである。さらに、アプリケーションの枠内で必要とされる程度に、回路技術上の変更を必要とすることなく、乱数フィールドを長くすることができる。すなわち、1ビット〜理論的に無限のビットまでとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】読み取り装置と該読み取り装置の応答領域内に複数のタグ(トランスポンダまたはリモートセンサ)とを有するRFIDシステムを概略的に示している。
【図2】図1に示されたタグのブロック回路図である。
【図3a】本発明による方法の第1の構成によるデータ伝送ダイアグラムの第1のステップを示している。
【図3b】図3aに示された方法の後続のステップを示している。
【図4】本発明による方法の第2の構成によるデータ伝送ダイアグラムである。
【図5】本発明による方法の第3の構成によるデータ伝送ダイアグラムである。
【図6】本発明による方法の第4の構成によるデータ伝送ダイアグラムである。
【符号の説明】
【0091】
1 RFIDシステム
2 読み取り装置
2′ 送受信手段
3.1〜3.4 集積回路
3b アンテナ
3c 乱数発生器
3d 比較手段
3e CRC発生器
A 応答領域、フィールド
ASYNC 非同期部分
CO 命令データ、命令
CRC 検査データ
CB CRCビット
CRC−Q 確認応答部分
CS 命令構造部
D データフロー
Da 決定論的調停部
EOF,EOF1,EOF2 終了信号
EOT1,EOT2 終了データ
H1,H2 ヘッドデータ
ID IDデータ
IDB 識別ビットシーケンス
m ビット数
n ビット数
N,N′ ノッチ信号
PA パラメータデータ
PSB パラメータビット/制御ビット
R 戻り方向リンク
RC リピートコマンド
RLH 戻り方向リンク(ヘッド)データ
SYNC 同期的部分
t 時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトランスポンダまたはセンサを有するRFIDシステムまたはリモートセンサシステムにおいて、少なくとも1つのトランスポンダまたはセンサを選択する方法であって、
該RFIDシステムまたはリモートセンサシステムはとりわけ、複数の読み取り装置を有するシステムである形式のものにおいて、
個々のトランスポンダまたはセンサを少なくとも1つの読み取り装置によって事前に選択し、
少なくとも1つのトランスポンダまたはセンサの仮の選択が完了した後、とりわけ事前の選択を確定するために、少なくとも1つのプロトコル部分中に、データを非同期で該トランスポンダまたはセンサから該読み取り装置へ伝送することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記事前の選択を決定論的に行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記トランスポンダまたはセンサによって選択目的でそれぞれ、mビットの長さを有する第1のビットシーケンスを生成する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記第1のビットシーケンスを少なくとも、トランスポンダまたはセンサから読み取り装置へのデータ戻り方向リンクに非同期伝送モードが選択された場合に生成する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
トランスポンダまたはセンサを事前に選択するために、nビットの長さを有する識別ビットシーケンスを使用し、ここでn≦mを適用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記識別ビットシーケンスを第1のビットシーケンスから形成する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記第1のビットシーケンスを乱数および/または記憶内容によって形成する、請求項3から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
トランスポンダまたはセンサを事前に選択するために、前記読み取り装置によって選択ビットシーケンスをビットごとにトランスポンダまたはセンサへ伝送し、ビットごとに前記識別ビットシーケンスと比較する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記乱数のビット長を、ビットごとの前記比較の進行に依存して適合し、とりわけ縮減する、請求項7および8記載の方法。
【請求項10】
前記比較にしたがってトランスポンダまたはセンサを選択し、選択プロセスを前記読み取り装置の制御‐終了信号によって終了する、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記読み取り装置は選択ビットシーケンスの伝送前に、前記制御‐終了信号を識別するための基準シンボルを含むヘッドデータを伝送する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記読み取り装置は前記選択ビットシーケンスの伝送前に、トランスポンダまたはセンサから該読み取り装置への非同期的なデータ戻り方向リンクを選択するための基準シンボルを含むヘッドデータを伝送する、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
非同期的なプロトコル部分中に、有効データと、オプションとして付加的な保護シンボルとを伝送する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記保護シンボルを有効データとともに、該有効データの個々のビットで伝送する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
非同期的なプロトコル部分を、前記読み取り装置の別の制御信号によって終了する、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
非同期的なプロトコル部分の次に確認応答部分を伝送し、
該確認応答部分によって、トランスポンダまたはセンサの仮の選択を前記読み取り装置によって確定または破棄する、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記確認応答部分を同期モードで伝送する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記読み取り装置または仮に選択されたトランスポンダまたはセンサは、CRCデータ等の検査データを伝送し、
該検査データと相補的な検査データとの比較をそのつどの受信側で、仮の選択を確定または破棄するために使用する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記検査データは、非同期的なプロトコル部分のオプションの保護シンボルに依存しない、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
前記確認応答部分を同期モードで伝送する、請求項16記載の方法。
【請求項21】
仮に選択されたトランスポンダまたはセンサは、乱数と、オプションとしてCRCデータ等の所属の検査データとを伝送する、請求項7および20記載の方法。
【請求項22】
前記仮の選択を確定するため、確定信号を前記読み取り装置によって、トランスポンダまたはセンサへ前記確認応答部分で伝送する、請求項20または21記載の方法。
【請求項23】
前記確定信号が少なくとも確定時間中に欠落したままである場合、トランスポンダまたはセンサは前記仮の選択を破棄する、請求項20から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
少なくとも、前記少なくとも1つのプロトコル部分中に非同期的なデータ伝送をアクティベートするため、相応のアクティベート制御命令を前記読み取り装置からトランスポンダまたはセンサへ伝送する、請求項1から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記アクティベート制御命令をトランスポンダまたはセンサに記憶し、後で繰り返し制御命令が受信された場合に再び実行する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記繰り返し制御命令は、前記アクティベート制御命令より短縮されている、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記アクティベート制御命令の再実行の前に、前記繰り返し制御命令の検査データを検査する、請求項25または26記載の方法。
【請求項28】
前記繰り返し制御命令は、有効データの個々のデータビットで行われる保護シンボルと該有効データとの伝送をアクティベートするための制御シンボルを含む、請求項25から27までのいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
複数のトランスポンダまたはセンサを有するRFIDシステムまたはリモートセンサシステムにおいて、とりわけ請求項1から23までのいずれか1項記載のデータ伝送、とりわけ衝突防止プロシージャを制御する方法であって、
該RFIDシステムまたはリモートセンサシステムは、とりわけ複数の読み取り装置を有するシステムである形式の方法において、
少なくとも1つのトランスポンダまたはセンサによって付加的なパラメータおよび/またはアドレス拡張部を使用して行われるデータ伝送を行うため、1つの読み取り装置から該トランスポンダまたはセンサへ伝送された命令構造部を、該トランスポンダまたはセンサによって実行および記憶し、
後で繰り返し制御命令が受信されると、記憶された該命令を再び実行することを特徴とする方法。
【請求項30】
前記アクティベート制御命令を再実行する前に、前記繰り返し制御命令の検査データを検査する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記命令構造部は拡張部として、タグのメモリブロックおよびビットアドレスをポインティングするポインタを有する、請求項29または30記載の方法。
【請求項32】
前記繰り返し制御命令は前記アクティベート制御命令より短縮されている、請求項29から31までのいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
前記繰り返し制御命令の受信によって、該命令の記憶を阻止する、請求項29から32までのいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
前記繰り返し制御命令は、有効データの個々のデータビットで行われる保護シンボルと該有効データの伝送をアクティベートするための制御シンボルを含む、請求項29から33までのいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
前記繰り返し制御命令は、トランスポンダまたはセンサの事前の選択を確定または破棄するための確認応答ビットを含む、請求項29から34までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−533016(P2007−533016A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507753(P2007−507753)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003909
【国際公開番号】WO2005/101288
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(501211693)アトメル ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (28)
【氏名又は名称原語表記】ATMEL Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Theresienstrasse 2, D−74025 Heilbronn,Germany
【Fターム(参考)】