説明

1軸回転直線移送型のトランスファーロッドで試料台を直線移送、回転、掴む、押出して放すの動作をおこなう装置

【課題】
従来、試料台の移動に1軸回転直線移送型トランスファーロッドが使われる場合が多いが、試料台を掴む動作をする機構に問題があるために、試料台を掴んだ部分に試料台が張り付いてしまい、取れにくいという問題がある。
【解決手段】
試料等の移送の為に、1軸回転直線移送型のトランスクァーロッドの先端に、ネジで前後する部品と、その前後移動部品を開閉動作に変換する部品で構成される機構を組み込み、試料台を掴む、放す動作を実現し、さらに放す時に、ネジ前後移動部品が、試料台を押し出すことで確実に試料台を放す機能を組み込む1軸回転直線移送型のトランスファーロッドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空槽内のサンプル等の物体の移送に使える他に、大気中での物体の移送にも使うことが出来る1軸回転直線移送型のトランスファーロッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空中又は大気中で、試料台を掴んだり押したりして直線移送させたり、回転させたりするために、1軸回転直線移送型のトランスファーロッドが使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記のとおり、真空中の試料移送の為に1軸回転直線移送型トランスファーロッドが使われる場合が多い。そのために、先端にネジを切り、試料台にも対になるネジを切ることで、試料台を掴んだりする場合が多いが、試料台にネジを切る必要性があるので、試料台が高価になる。特に試料台が純銅などの柔らかい物質で作る必要性がある場合は、ネジが潰れてトランスファーそのものが難しくなる場合がある。また、ネジの部分に強度が必要なことから、ネジの為にある程度の大きさが必要で、試料台を小型化するのには問題がある。
【0004】
試料台を掴む動作をする機構を持つ物を使えばよいが、従来の装置では掴む、放すための機構の為の回転軸がさらに必要で、2軸型のトランスファーロッドを使う必要があり、高価になる。また試料台を小型化すると、掴んだ部分に試料台が張り付いてしまい、取れにくいという問題がある。他にはバネを使った機構で試料台を止める方法もあるが、バネの調整は難しく故障しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明は、試料等の移送の為に、1軸回転直線移送型のトランスクァーロッドの先端に、ネジで前後する部品と、その前後移動部品を開閉動作に変換する部品で構成される機構を組み込み、試料台を掴む、放す動作を実現し、さらに放す時に、ネジ前後移動部品が、試料台を押し出すことで確実に試料台を放す機能を組み込むことで、サンプルを直線移送、回転、掴む、押出して放すことを1軸回転直線移送型のトランスファーロッドで実現するものである。
【発明の効果】
【0006】
従来の1軸回転平行移送型トランスファーロッドを利用することから、トランスファシステム自体が安価に作れることが期待される。更に、試料台の加工が少なくて済むことから、試料台の製作コストを下げ、加工が難しい素材を用いることができ、更に試料台の小型化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1に、試料移送の為の装置の概略図を示す。試料を取り付けた試料台を試料ホルダーから別の試料ホルダーへ回転と直線移送を行うことで移送する。本発明の装置はトランスファーロッドの先端に取り付けられる。
【0008】
この装置の概略図を図2に示す。この装置の主要部品は、トランスファーロッドに接続される雌ねじ部品1、ベアリング2、全体のケース3、雄ねじが付いている前後移動部品4、試料台を掴む爪5を備えている。移動部品4と爪5は、移動部品4の左右移動を爪5の先端の開閉動作に変換するような形状になっている。さらに試料台を着実に掴むための補助の為にバネ6が導入されている。この装置は雌ねじの部品1が、その他の部品とベアリング2で接続され、部品1と部品3〜5は独立に回転できるようになっている。
【0009】
図2は試料台を掴んでいる状態で、移動部品4は左側に移動しており、爪の部品5と接触して左側に押すため、これが爪の部品の先端が閉じる動作を生み、それが試料台を掴む動作となる。さらにバネ6で掴む動作を補強している。この状態で、部品1と2〜5の部品はベアリングで繋がっているため、別々に回転してしまう様に思えるが、試料台を掴んだ状態では移動部品4の雄ねじと部品1の雌ねじの間の摩擦によって固定されるため、1〜5の部品はトランスファーロッドと一体となって動く。その為、トランスファーロッドを回転させれば試料台を回転させることができる。したがって、この装置は試料台を掴んだ状態で直線移送と回転動作が可能である。
【0010】
試料台を放す場合には、まず試料台を受ける為のホルダーに差し込む。ホルダーに差し込むと、試料台は回転しないように固定されるので、3〜5の部品の回転が固定される。トランスファーロッドをネジが緩む方向に回転させると、ネジで前後する移動部品4は回転がホルダーで固定されているので、部品1の雌ねじと移動部品4の雄ねじは緩む動作をする。すなわちネジで前後する移動部品4は図の上では右へと移動する。雄ねじの移動部品4は爪の部品に接触して、押し広げる動作をするので、爪の部品5の先端は開くように動き、試料台を放す動作になる。
【0011】
たまに掴んでいた部品が爪にくっついてしまう場合があるが、この装置ではネジで前後する移動部品4は試料台に当たって試料台を外に押し出すように動作するように設計してある。これにより確実に放すことが可能である。放した状態が図3である。
【0012】
試料台を掴む場合は、試料台に装置を差し込むと装置の3〜5の回転が抑制され、すなわちケース部分3とネジで前後する移動部品4の回転が抑制される。これでトランスファーロッドを締める方向に回転すると、ネジで前後する移動部品4が締め込まれて左へ移動する。この移動部品4が爪の部品5に接触して、爪の先端が閉まる動作を生む。この動作で試料台を掴む。さらに少しネジが緩んでも大丈夫なようにバネ6で爪を閉じる機構を加えている。
【実施例】
【0013】
ここで実際に設計された装置を図4に示す。本発明の装置は、摩擦計数等が大気中とは大きく異なる超高真空中でも動作することが確認されている。
試料台を試料ホルダーから取り出す際には、トランスファーロッド先端に着脱自在に結合された本発明装置の両爪5を開いた状態にしておいて、試料ホルダーに固定されている試料台端部をこの爪間に置くようにトランスファーロッドを移動操作する。その後、移動部品4を引き込ませる方向にトランスファーロッドを回転する。移動部品4とケース3のベアリング2の内軸はそれぞれ雄ネジと雌ネジとの関係になっているので、ロッドを回転させるとケース部分が試料台と共に動かないので、雄ネジに当たる移動部品4がベアリングの内軸に設けられた雌ネジ内中に挿入され、その結果、両爪が閉じられて試料台が両爪5間に確実に挟まれる。
【0014】
又、試料台を他の試料ホルダーに装着する際には、トランスファーロッドで試料台を他の試料ホルダーの位置に移動させる。その後、移動部品4がベアリングの内軸中から突出する方向にトランスファーロッドを回転させる。かかる回転操作により移動部品4の先端が両爪を開かせる方向に移動するだけでなく、試料台を両爪の外に押し出す方向に移動するので、試料台は両爪から完全に開放されて他の試料ホルダーに残置される。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、超高真空下で、物をつかむ動作、物を曲線移送する動作、1軸回転させる動作、物を離す動作を、構造の簡単な1軸回転型直線導入装置で行えるために、同種の動作が必要な装置の構造の簡素化、低価格化を図ることができる。かかる動作は物の移送に使用することが可能であり、真空中の物体、測定試料又はウエハーなどの移送に適用できる。これは、具体的には、蒸着装置やモレキュラービームエピタキシャル装置(molecular beam epitaxy:MBE装置)におけるサンプル移送、X線光電子分析装置などの解析装置へのサンプル移送などがあげられ、応用できる装置は多数存在する。
【0016】
更に、掴む部分自体を小型化した上に、離すときに張り付かないような動作を加えたために、微小な物体のハンドリングに利用可能である。又、掴んで引っ張り出したり、押し込んだりすることができるので、例えば、真空下に設置された鏡の位置の調整やフォトレジストマスクの調整などに使うことも可能である。更に又、宇宙空間での物体のハンドリングにも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】1軸回転直線移送型トランスファーロッドを使用して試料台を試料ホルダーに出し入れするところを示す図である。
【図2】本発明の1軸回転直線移送型トランスファーロッドにより試料台を掴んでいる場合の内部構造を示す図である。
【図3】本発明の1軸回転直線移送型トランスファーロッドから試料台を放す場合の内部構造を示す図である。
【図4】上から順に、本発明の1軸回転直線移送型トランスファーロッドの横側面図、その横断面図、その平断面図、及び平断面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料等の移送のために、1軸回転直線移送型のトランスファーロッドの先端に、ネジで前後移動する部品と、その前後移動部品を開閉動作に変換する部品で構成される機構を組み込み、試料台を掴み又は放す動作を実現し、更に放す時に、ネジ前後移動部品が試料台を押し出すことで確実に試料台を放す機能を組み込むことで、サンプルを保持した試料台を直線移送、回転、掴み、押し出して放す1軸回転直線移送型のトランスファーロッド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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