説明

1,2,4−トリアゾール誘導体の製造方法

【課題】容易に入手可能な出発原料を利用し、安全性が高く安価な触媒の存在下、多様な1,2,4−トリアゾール誘導体を一工程で効率的に収率良く製造する方法の提供。
【解決手段】下記の反応式(7)及び(8)による方法。


((1)は置換又は未置換の2−ピリジル基あるいは置換又は未置換の1−イソキノリル基を有するアミン、(2)は置換又は未置換のアリール基あるいは置換又は非置換の複素環基を有するニトリルを示す。)


((3)はアミジン誘導体、(4)はアルキル基あるいは置換又は非置換のアリール基あるいは置換又は非置換の複素環基を有するニトリルを示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性分子の基本骨格として見出される1,2,4−トリアゾール誘導体の製造方法に関し、詳細には医薬品などの機能性分子の基本骨格に見出される1,2,4−トリアゾール誘導体を一工程で効率的に収率良く製造できる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,2,4−トリアゾール誘導体は、医薬品、例えば抗菌剤のFluconazole、Intraconazole、抗ウイルス剤のRivavirin(非特許文献1参照)、殺虫・殺ダニ剤(特許文献1参照)、抗真菌剤(特許文献2参照)、除草剤(特許文献3参照)、免疫抑制剤(特許文献4参照)、抗うつ剤(特許文献5参照)、抗がん剤(特許文献6参照)など多様な医薬品に含まれる基本骨格の一つであり、また発光素子(特許文献7参照)などの基本骨格として含まれるものである。そのため、1,2,4−トリアゾール誘導体の合成は、医薬品などの機能性分子の製造あるいはこれらの中間体の製造にとって重要である。また、1,2,4−トリアゾール誘導体を基本骨格とする新規な医薬品のスクリーニングに1,2,4−トリアゾール誘導体の製造が必要である。
したがって、従来、1,2,4−トリアゾール誘導体の製造方法が種々検討されている。例えば、チオアミドに水銀存在下、ホルムヒドラジドを作用させて製造する方法(非特許文献2参照)やN-アシルアミドラゾンの分子内環化により製造する方法(非特許文献3参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−120736号公報
【特許文献2】特開2005−298333号公報
【特許文献3】特開2001−31678号公報
【特許文献4】特開2004−323458号公報
【特許文献5】特開平6−41095号公報
【特許文献6】特表2008−530149号公報
【特許文献7】特開2008−308490号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Chemistry of Heterocyclic Compounds, Vol.42, No. 11, 2006; p1377-1404
【非特許文献2】J. Org. Che. 2002, 67, 3266-3271
【非特許文献3】Organic Letters 2005, Vol. 7, No.6, 1039-1042
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の1,2,4−トリアゾール誘導体の製造方法は、出発原料を別途数段階を経て合成しなければならないため、多様な1,2,4−トリアゾール誘導体を一工程で効率的に製造することができない。また、非特許文献2の製造方法のように毒性が高く高価な触媒を使用しなければならないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、容易に入手可能な出発原料を利用し、安全性が高く安価な触媒の存在下、多様な1,2,4−トリアゾール誘導体を一工程で効率的に収率良く製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する発明は、
下記の式(1)で表される反応基質1と、下記の式(2)で表される反応基質2と、ルイス酸のヨウ化亜鉛と、リガンドと、銅触媒とを含む比誘電率が1〜15の溶媒を酸素を含む雰囲気下にて120〜170℃に加熱し、下記の式(3)で表される1,2,4−トリアゾール誘導体を製造することを特徴とする1,2,4−トリアゾール誘導体の製造方法を要旨とする。
【0008】
【化1】

(式中、Arは、置換又は未置換の2−ピリジル基あるいは置換又は未置換の1−イソキノリル基を表す)
【0009】
【化2】

(式中、Arは置換又は未置換のアリール基あるいは置換又は非置換の複素環基を表す)
【0010】
【化3】

(式中、Ar、Arは、前記と同じ意味を表す)
【0011】
上記の発明において、溶媒を1,2−ジクロロベンゼン又はトルエンとしてもよい。リガンドを1,10−フェナントロリンとしてもよい。
【0012】
上記の課題を解決する発明は、下記の式(4)で表される反応基質3と、下記の式(5)で表される反応基質4と、塩基と、銅触媒とを含む比誘電率が20〜50の溶媒を酸素を含む雰囲気下にて120〜170℃に加熱し、下記の式(6)で表される1,2,4−トリアゾール誘導体を製造することを特徴とする1,2,4−トリアゾール誘導体の製造方法を要旨とする。
【0013】
【化4】

(式中、Rは、アルキル基あるいはシクロアルキル基あるいは置換又は非置換のアリール基あるいは置換又は非置換のアミノ基を表す)
【0014】
【化5】

(式中、Rは、アルキル基あるいは置換又は非置換のアリール基あるいは置換又は非置換の複素環基を表す)
【0015】
【化6】

(式中、R、Rは、前記と同じ意味を表す)
【0016】
上記の発明において、溶媒をジメチルスルホキシドとしてもよい。塩基を炭酸セシウムとしてもよい。
【0017】
上記の発明において、銅触媒を臭化第一銅としてもよい。酸素を含む雰囲気下を空気雰囲気下としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明は、容易に入手可能な多様な出発原料を用い、一工程で多様な1,2,4−トリアゾール誘導体を高い収率で製造でき、ひいては医薬などの機能性分子の中間体の中間体の製造やハイスループットスクリーニングに有用である。毒性の低い銅触媒を利用できるので、医薬などの製造における安全性上の問題が低減し、また環境負荷を低減できる。安価な銅触媒を利用でき、また空気中で銅触媒を再生できるので、経済性に優れる。副生物が水のみで原子効率が高く、環境負荷が低減する。
【0019】
請求項2に記載の発明は、上記の請求項1に記載の発明の効果に加え、銅触媒と反応基質1、反応基質2との配位を促進し、また反応基質1及び反応基質2の溶解性を高め、より確実に収率良く1,2,4−トリアゾール誘導体を製造できる。請求項3に記載の発明は、上記の請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、銅触媒の反応基質1と反応基質2への配位を促進すると共に銅触媒の溶媒への溶解性を高め、より確実に収率良く1,2,4−トリアゾール誘導体を製造できる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、上記の請求項1に記載の発明と同様の効果を得ることができる。請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明の効果に加え、反応基質3及び反応基質4の溶解性を高め、より確実に収率良く1,2,4−トリアゾール誘導体を製造できる。請求項6に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載の発明の効果に加え、反応基質3の溶媒への溶解性を高め、より確実に収率良く1,2,4−トリアゾール誘導体を製造できる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、反応基質1と反応基質2への銅触媒の配位又は反応基質3と反応基質4への銅触媒の配位を確実に促進し、また酸化反応による反応中間体のアミジンの分子内N-N結合の形成を促進し、より確実に収率良く1,2,4−トリアゾール誘導体を製造できる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、銅触媒の再生のために、酸素の供給手段や酸素の供給が不要となり、1,2,4−トリアゾール誘導体の製造に経済性を付与できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の1,2,4−トリアゾール誘導体の製造方法は、反応基質1と反応基質2を出発原料とし、下記の式(3)で表される1,2,4−トリアゾール誘導体を製造できる。
この製造方法は、下記の式(7)に示すように、銅触媒の存在下で反応させることにより、反応基質1と反応基質2に銅触媒が配位し、反応基質1と反応基質2の分子間N-C結合の形成、反応中間体のアミジンの形成及び該アミジンの分子内N-N結合の形成が一挙に進行する酸化的カップリング反応によるものと推測される。
【0024】
【化7】

(式中、Arは反応基質1のAr、Arは反応基質2のArと同じ意味を表す)
【0025】
【化8】

【0026】
反応基質1は、下記の式(1)で表される。
【0027】
【化9】

(式中、Arは、置換又は未置換の2−ピリジル基あるいは置換又は未置換の1−イソキノリル基を表す)
置換される2−ピリジル基は、例えば、アルキル基、ハロゲン原子で置換される。
【0028】
反応基質2は、下記の式(2)で表される。
【0029】
【化10】

(式中、Arは置換又は未置換のアリール基あるいは置換又は非置換の複素環基を表す)
置換されるアリール基は、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基で置換される。複素環基は、例えば、ピリジル基、チエニル基を挙げられる。
【0030】
溶媒は、比誘電率が1〜15という非極性又は低極性の溶媒が好ましい。比誘電率εは、真空の誘電率εに対するある溶媒の誘電率εの比(ε/ε)を表す。すなわち、比誘電率が大きくなるほど溶媒の極性が高くなり、比誘電率が低くなるほど溶媒の極性が低くなる。溶媒の比誘電率が15を越えると酸化的カップリング反応が不十分となり、収率が低下することがある。一方、比誘電率が1未満の本発明に使用可能な溶媒は見出されていない。
【0031】
比誘電率が1〜15の溶媒としては、例えばo−キシレン(比誘電率2.30)、クロロベンゼン(比誘電率5.62)、1,2−ジクロロベンゼン(比誘電率9.93)、ベンゼン(比誘電率2.27)、トルエン(比誘電率2.38)、n−ヘキサン(比誘電率1.88)、ジクロロメタン(比誘電率8.93)、ピリジン(比誘電率12.9)等を挙げられる。
【0032】
また、溶媒は反応基質1と反応基質2の酸化的カップリング反応を円滑に進行させるため、その沸点が60〜185℃であることが好ましく、110〜185℃がより好ましい。溶媒の沸点が60℃より低い場合、反応時に溶媒の揮散が激しくなり、反応を円滑に進めることができなくなって好ましくない。一方、溶媒の沸点が185℃より高い場合、溶媒の流動性が低下して反応の進行が妨げられるため好ましくない。
【0033】
沸点が60〜185℃の溶媒として、具体的にはn−ヘキサン(沸点69℃)、ベンゼン(沸点80℃)、トルエン(沸点111℃)、o−キシレン(沸点142℃)、m−キシレン(沸点139℃)、p−キシレン(沸点138℃)、クロロベンゼン(沸点132℃)、1,2−ジクロロベンゼン(沸点179℃)、ピリジン(沸点116℃)等を挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。また、これらの溶媒のうち、前記比誘電率の要件及び沸点の要件の双方を満たす観点から1,2−ジクロロベンゼン(DCB)、クロロベンゼン、トルエン、キシレンが好ましい。
【0034】
ヨウ化亜鉛(ZnI2)はルイス酸であり、反応基質2に配位することで反応基質1のアミノ基への付加反応を促進するものと推測される。
【0035】
リガンドは、金属に配位して安定化させる、反応性を向上させる、あるいは溶解性を高める化合物である。このような作用を有するリガンドとして、1,10−フェナントロリン、ビピリジン、カテコラート、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸等を挙げられる。これらの中で、収率性の観点から1,10−フェナントロリンが好ましい。
【0036】
リガンドの使用量は、反応基質2に対して5〜40モル%が好ましい。リガンドが5モル%より少ないと、銅触媒の作用が不十分となり収率が低下する。一方、リガンドが40モル%より多いと、リガンドが過剰となり経済性が低下する。
【0037】
本発明は、酸素を含む雰囲気下で反応が行われる。この雰囲気下に含まれる酸素が、反応により失活した銅触媒を再生させ、触媒の作用を継続させるために必要である。この雰囲気下は、酸素のみの雰囲気下、空気のみの雰囲気下、あるいは酸素濃度を調整した雰囲気下のいずれであってもよい。本発明は、容易に空気雰囲気下で銅触媒を再生できるので、別途酸化剤を反応に加えることや別途酸素の供給をすることが不要となり、1,2,4−トリアゾール誘導体の製造に経済性を付与できる。
【0038】
銅触媒は、反応基質1と反応基質2の酸化的カップリング反応を進行させるためのものである。銅触媒として、臭化第一銅(CuBr)、臭化第二銅(CuBr2)、塩化第一銅(CuCl)、酢酸第二銅(Cu(OAc)2)を挙げられる。
【0039】
銅触媒の使用量は、酸化的カップリング反応の触媒作用を十分に発揮させるために、反応基質2に対して5〜100モル%であることが好ましい。5モル%より少ないと、銅触媒による酸化的カップリング反応が不十分になり、反応が遅延し1,2,4−トリアゾール誘導体の収率が低下する。一方、100モル%より多いと、銅触媒が過剰となり経済性が悪くなり、反応後の処理の負担が増大する。
【0040】
反応温度は、反応基質1と反応基質2を活性状態にして酸化的カップリング反応を進行させるために120〜170℃に設定され、好ましくは130〜160℃である。反応温度が120℃を下回ると、反応基質1と反応基質2の活性状態が十分に得られず、酸化的カップリング反応の進行が阻害される。一方、170℃を上回ると副反応が生じる可能性がある。
【0041】
反応時間は、酸化的カップリング反応を十分に進行させるために、15〜48時間であることが好ましい。反応時間が15時間より短いと、酸化的カップリング反応の進行が不十分になり、1,2,4−トリアゾール誘導体を十分な収率で得ることができなくなる。一方、48時間より長いと、生産効率が低下し好ましくない。
【0042】
本発明の1,2,4−トリアゾール誘導体の製造方法は、反応基質3と反応基質4を出発原料とし、下記の式(6)で表される1,2,4−トリアゾール誘導体を製造できる。
この製造方法は、下記の式(8)に示すように、銅触媒の存在下で反応させることにより、反応基質3と反応基質4に銅触媒が配位し、反応基質3と反応基質4の分子間N-C結合の形成、反応中間体のアミジンの形成及び該アミジンの分子内N-N結合の形成が一挙に進行する酸化的カップリング反応によるものと推測される。
【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
反応基質3は、下記の式(4)で表される。
【0046】
【化13】

(式中、Rは、アルキル基あるいはシクロアルキル基あるいは置換又は非置換のアリール基あるいは置換又は非置換のアミノ基を表す)
【0047】
反応基質4は、下記の式(5)で表される。
【0048】
【化14】

(式中、Rは、アルキル基あるいは置換又は非置換のアリール基あるいは置換又は非置換の複素環基を表す)
置換されるアリール基は、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基で置換される。複素環基は、例えば、ピリジル基を挙げられる。
【0049】
溶媒は、比誘電率が20〜50のものが好ましい。比誘電率が20〜50の溶媒として、ジメチルスルホキシド(DMSO)(比誘電率47)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(比誘電率38)、アセトニトリル(比誘電率37)等を挙げられる。溶媒の比誘電率が20より低い場合、あるいは50より高い場合、いずれも酸化的カップリング反応が不十分となり、収率が低下することがある。
【0050】
溶媒は、反応基質3と反応基質4の酸化的カップリング反応を円滑に進行させるため、その沸点が60〜195℃であることが好ましく、110〜195℃がより好ましい。溶媒の沸点が60℃より低い場合、反応時に溶媒の揮散が激しくなり、反応を円滑に進めることができなくなって好ましくない。一方、溶媒の沸点が195℃より高い場合、溶媒の流動性が低下して反応の進行が妨げられるため好ましくない。溶媒の沸点は、ジメチルスルホキシド(沸点189℃)、N,N-ジメチルホルムアミド(沸点153℃)、アセトニトリル(沸点82℃)である。これらの溶媒は単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。また、これらの溶媒のうち、収率性の観点からジメチルスルホキシド(沸点189℃)が好ましい。
【0051】
塩基は、反応基質3の溶媒への溶解性を高めるものである。塩基としては、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等を挙げられる。これらの中で、収率性の観点から炭酸セシウムが好ましい。
【0052】
塩基の使用量は、反応基質3に対して100〜200モル%が好ましい。塩基が100モル%より少ないと反応基質の溶解性を十分に高めることができない。一方、塩基が200モル%より多いと不経済となる。
【0053】
銅触媒の種類は、上記の反応基質1と反応基質2の反応の場合と同様である。また、銅触媒の使用量は、酸化的カップリング反応の触媒作用を十分に発揮させるために、反応基質4に対して上記の反応基質1と反応基質2の反応の場合と同様の理由により5〜100モル%であることが好ましい。
【0054】
反応温度及び反応時間については、上記の反応基質1と反応基質2の反応の場合と同様である。また、酸素を含む雰囲気下で反応が行われる点についても、上記の反応基質1と反応基質2の反応の場合と同様である。
【実施例】
【0055】
次いで、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
〔実施例1〕
空気雰囲気下(1atm)、反応基質1の2−アミノピリジン(0.36mmol)、反応基質2のベンゾニトリル(0.30mmol)、ルイス酸のヨウ化亜鉛(10mol%)、リガンドの1,10−フェナントロリン(5mol%)及び表1に示す銅触媒(5mol%)を含む表1に示す溶媒溶液(0.6ml)を130℃に加熱し24時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈後、ガラスフイルターでろ過、濃縮後、カラムクロマトグラフィーにて分離し、表1に示す1,2,4−トリアゾール誘導体を得た。
【0057】
【表1】

【0058】
表1に示す通り、一工程により70%以上の高い収率で1,2,4−トリアゾール誘導体を製造できた。
【0059】
〔比較例〕
空気雰囲気下(1atm)、反応基質1の2−アミノピリジン(0.36mmol)、反応基質2のベンゾニトリル(0.30mmol)、表2に示すルイス酸(10mol%)、1,10−フェナントロリン(5mol%)及び銅触媒の臭化第一銅(5mol%)を含む表2に示す溶媒溶液(0.6ml)を130℃に加熱し24時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈後、ガラスフイルターでろ過、濃縮後、カラムクロマトグラフィーにて分離し、表2に示す1,2,4−トリアゾール誘導体を得た。
【0060】
【表2】

【0061】
表2に示す通り、ルイス酸を反応に用いないと収率は低下した(エントリー1参照)。
塩化亜鉛又は臭化亜鉛をルイス酸として用いると、ヨウ化亜鉛を用いる場合に比べ収率が低下した(エントリー2、3参照)。また、溶媒に比誘電率が47のDMSOを用いると収率が低下した(エントリー4参照)。
【0062】
〔実施例2〕
空気雰囲気下(1atm)、表3に示す反応基質1(Reaction substance 1)(0.36mmol)、表3に示す反応基質2(Reaction substance 2)(0.30mmol)、ルイス酸のヨウ化亜鉛(10mol%)、リガンドの1,10−フェナントロリン(5mol%)及び銅触媒の臭化第一銅(5mol%)を含む1,2−ジクロロベンゼン溶液(DCB)(0.6ml)を130℃に加熱し24時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈後、ガラスフイルターでろ過、濃縮後、カラムクロマトグラフィーにて分離し、表3に示す各種の1,2,4−トリアゾール誘導体を得た。
【0063】
【表3】

【0064】
表3において、エントリー1〜エントリー11のArは2−ピリジル基、エントリー12、13のArはそれぞれ4−メチル−2−ピリジル基、4−クロロ−2−ピリジル基、エントリー14のArは1−イソキノリル基である。エントリー1のArは4−フルオロフェニル基、エントリー2のArは4−クロロフェニル基、エントリー3のArは4−ブロムフェニル基、エントリー4のArは4−メチルフェニル基、エントリー5のArは4−メトキシフェニル基、エントリー6のArは3−クロロフェニル基、エントリー7のArは3−トリフルオロメチルフェニル基、エントリー8のArは3−メトキシフェニル基、エントリー9のArは2−フルオロフェニル基、エントリー10のArは4−ピリジル基、エントリー11のArは2−チエニル基、エントリー12のArは4−メトキシフェニル基、エントリー13、14のArはフェニル基である。
【0065】
表3に示すように、多様な出発原料を用い一工程により60%以上の高い収率で多様な1,2,4−トリアゾール誘導体を製造できた。
【0066】
表3のエントリー1(3b)で表される1,2,4−トリアゾール誘導体は、新規化合物の2-(4-Fluorophenyl)-[1,2,4]triazolo[1,5-a]pyridineで、以下に同定データを示す。
m.p. 173-174 °C; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) d 8.59 (d, 1H, J = 6.8 Hz), 8.27 (dd, 2H, J = 5.8 Hz, J = 9.0 Hz), 7.75 (d, 1H, J = 9.6 Hz), 7.55-7.48 (m, 1H), 7.22-7.15 (m, 2H), 7.04-6.99 (m, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) d 164.4 (d, J = 194.3 Hz), 162.8, 151.7, 129.6, 129.2 (d, J = 9.0 Hz), 128.3, 127.2 (d, J = 33.0 Hz), 116.4, 115.8 (d, J = 32.4 Hz), 113.7; HRMS (EI), m/z calcd. for C12H8N3F (M+) 213.0702, found: 213.0708.
【0067】
表3のエントリー3(3d)で表される1,2,4−トリアゾール誘導体は、新規化合物の2-(4-Bromophenyl)-[1,2,4]triazolo[1,5-a]pyridineで、以下に同定データを示す。
m.p. 229-230 °C; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) d 8.59 (d, 1H, J = 6.8 Hz), 8.16 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 7.75 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.63 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 7.55-7.47 (m, 1H), 7.05-6.99 (m, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) d 163.3, 151.7, 131.9, 129.8, 129.7, 128.8, 128.3, 124.5, 116.5, 113.8; HRMS (EI), m/z calcd. for C12H8N3Br (M+) 272.9902, found: 272.9897.
【0068】
表3のエントリー6(3g)で表される1,2,4−トリアゾール誘導体は、新規化合物
の2-(3-Chorophenyl)-[1,2,4]triazolo[1,5-a]pyridineで、以下に同定データを示す。
m.p. 177-178 °C; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) d 8.58 (d, 1H, J = 6.8 Hz), 8.30 (s, 1H), 8.19-8.15 (m, 1H), 7.75 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 7.55-7.48 (m, 1H), 7.45-7.40 (m, 2H), 7.05-6.99 (m, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) d 162.9, 151.6, 134.7, 132.6, 130.0, 129.9, 129.7, 128.3, 127.4, 125.3, 116.5, 113.9; HRMS (EI), m/z calcd. for C12H8N3Cl (M+) 229.0407, found: 229.0398.
【0069】
表3のエントリー8(3i)で表される1,2,4−トリアゾール誘導体は、新規化合物の2-(3-Methoxyphenyl)-[1,2,4]triazolo[1,5-a]pyridineで、以下に同定データを示す。
m.p. 106-108 °C;1H NMR (400 MHz, CDCl3) d 8.51 (d, 1H, J = 6.8 Hz), 7.81 (d, 1H, J = 7.6 Hz), 7.77-7.74 (m, 1H), 7.67 (d, 1H, J = 9.6 Hz), 7.43-7.37 (m, 1H), 7.32 (t, 1H, J = 8.0 Hz), 6.96-6.87 (m, 2H), 3.83 (s, 3H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) d 164.0, 159.9, 151.6, 132.0, 129.7, 129.5, 128.3, 119.7, 116.8, 116.3, 113.6, 111.6, 55.4; HRMS (EI), m/z calcd. for C13H11N3O (M+) 225.0902, found: 225.0899.
【0070】
表3のエントリー9(3j)で表される1,2,4−トリアゾール誘導体は、新規化合物の2-(2-Fluorophenyl)-[1,2,4]triazolo[1,5-a]pyridineで、以下に同定データを示す。
m.p. 171-173 °C; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) d 8.67 (d, 1H, J = 6.8 Hz), 8.26 (dt, 1H, J = 2.0 Hz, J = 7.2 Hz), 7.80 (d, 1H, J = 8.8 Hz), 7.57-7.50 (m, 1H), 7.49-7.42 (m, 1H), 7.32-7.22 (m, 2H), 7.04 (dt, 1H, J = 1.8 Hz, J = 6.8 Hz); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) d 161.4 (d, J = 127.6 Hz), 160.8, 151.8, 131.5 (d, J = 9.1 Hz), 130.9 (d, J = 2.4 Hz), 129.6, 128.4, 124.3 (d, J = 3.3 Hz), 118.8 (d, J = 8.7 Hz), 116.8, 116.6, 113.8; HRMS (EI), m/z calcd. for C12H8N3F (M+) 213.0702, found: 213.0707.
【0071】
表3のエントリー13(3n)で表される1,2,4−トリアゾール誘導体は、新規化合物の7-Choro-2-phenyl-[1,2,4]triazolo[1,5-a]pyridineで、以下に同定データを示す。
m.p. 189-190 °C; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) d 8.48 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 8.28-8.23 (m, 2H), 7.73 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 7.52-7.45 (m, 3H), 6.96 (dd, 1H, J = 2.0 Hz, J = 7.8 Hz); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) d 165.2 151.8, 136.1, 130.3, 130.3, 128.7, 128.4, 127.3, 115.4, 115.1; HRMS (EI), m/z calcd. for C12H8N3 Cl (M+) 229.0407, found: 229.0414.
【0072】
表3のエントリー14(3o)で表される1,2,4−トリアゾール誘導体は、新規化合物の2-Phenyl-[1,2,4]triazolo[5,1-a]isoquinoline で、以下に同定データを示す。
m.p. 152-154 °C; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) d 8.71-8.67 (m, 1H), 8.37-8.29 (m, 3H), 7.80-7.75 (m, 1H), 7.71-7.65 (m, 2H), 7.54-7.44 (m, 3H), 7.18 (d, 1H, J = 7.2 Hz); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) d 163.2, 150.1, 131.3, 131.0, 129.8, 129.7, 128.6, 128.3, 127.1, 124.5, 124.3, 122.2, 113.9; MS (EI), m/z 245 (M+).
【0073】
〔実施例3〕
空気雰囲気下(1atm)、表4に示す反応基質3(Reaction substance 3)(0.45mmol)、表4に示す反応基質4(Reaction substance 4)(0.30mmol)、塩基の炭酸セシウム(200mol%)及び銅触媒の臭化第一銅(5mol%)を含むジメチルスルホキシド(DMSO)溶液(0.8ml)を120℃に加熱し24時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液、ついで飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。この有機層を濃縮後、カラムクロマトグラフィーにて分離し、表4に示す各種の1,2,4−トリアゾール誘導体を得た。なお、エントリー4は、アセトニトリル−ジメチルスルホキシド(1:3)を溶媒とした。
【0074】
【表4】

【0075】
表4において、エントリー1〜4のRはフェニル基、エントリー5〜8のRはメチル基、エントリー9のRはシクロプロピル基、エントリー10、11のRはtert-ブチル基、エントリー12のRはジメチルアミノ基である。エントリー1のRはフェニル基、エントリー2のRは4−トリフルオロメチルフェニル基、エントリー3のRは4−ピリジル基、エントリー4のRはメチル基、エントリー5、6、7のRはそれぞれフェニル基、4−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、エントリー8のRは3−トリフルオロメチルフェニル基、エントリー9のRは4−クロロフェニル基、エントリー10、11のRはそれぞれフェニル基、3−クロロフェニル基、エントリー12のRはフェニル基である。
【0076】
表4に示すように、様々な出発原料を用い一工程により63%以上の高い収率で様々な1,2,4−トリアゾール誘導体を製造できた。また、アセトニトリル−ジメチルスルホキシド(1:3)を溶媒としたエントリー4は、52%の収率で1,2,4−トリアゾール誘導体を製造できた。
【0077】
表4のエントリー9(5h)で表される1,2,4−トリアゾール誘導体は、新規化合物の3-(4-Chlorophenyl)-5-cyclopropyl-1H-1,2,4-triazoleで、以下に同定データを示す。
m.p. 202-203 °C; 1H NMR (400 MHz, CD3OD) d 7.83 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 7.34 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 2.03-1.97 (m, 1H), 1.03-0.92 (m, 4H); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) d 162.8, 160.6, 136.4, 130.3, 130.0, 128.9, 8.5, 8.2; HRMS (EI), m/z calcd. for C11H10N3Cl (M+) 219.0563, found: 219.0569.
【0078】
表4のエントリー10(5i)で表される1,2,4−トリアゾール誘導体は、新規化合物の5-tert-Butyl-3-phenyl-1H-1,2,4-triazole で、以下に同定データを示す。
m.p. 145-146 °C;1H NMR (400 MHz, CD3OD) d 7.90-7.85 (m, 2H), 7.35-7.29 (m, 3H), 1.33 (s, 9H); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) d 167.1, 163.0, 132.2, 130.5, 129.7, 127.6, 33.4, 29.6; HRMS (EI), m/z calcd. for C12H15N3 (M+) 201.1262, found: 201.1266.
【0079】
表4のエントリー11(5j)で表される1,2,4−トリアゾール誘導体は、新規化合物の5-tert-Butyl-3-(3-chlorophenyl)-1H-1,2,4-triazoleで、以下に同定データを示す。m.p. 119-121 °C;1H NMR (400 MHz, CD3OD) d 8.02-7.99 (m, 1H), 7.93-7.88 (m, 1H), 7.40-7.36 (m, 2H), 1.41 (s, 9H); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) d 167.9, 160.9, 135.7, 133.8, 131.2, 130.2, 127.4, 125.7, 33.3, 29.5; HRMS (EI), m/z calcd. for C12H14N3Cl (M+) 235.0876
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の1,2,4−トリアゾール誘導体の製造方法は、容易に入手可能な多様な出発原料を用い、一工程で多様な1,2,4−トリアゾール誘導体を高い収率で製造できるので、医薬品や紫外線吸収剤などの機能性分子に関連する分野において特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で表される反応基質1と、下記の式(2)で表される反応基質2と、ルイス酸のヨウ化亜鉛と、リガンドと、銅触媒とを含む比誘電率が1〜15の溶媒を酸素を含む雰囲気下にて120〜170℃に加熱し、下記の式(3)で表される1,2,4−トリアゾール誘導体を製造することを特徴とする1,2,4−トリアゾール誘導体の製造方法。
【化1】

(式中、Arは、置換又は未置換の2−ピリジル基あるいは置換又は未置換の1−イソキノリル基を表す)
【化2】

(式中、Arは置換又は未置換のアリール基あるいは置換又は非置換の複素環基を表す)
【化3】

(式中、Ar、Arは、前記と同じ意味を表す)
【請求項2】
溶媒が1,2−ジクロロベンゼン又はトルエンであることを特徴とする請求項1に記載の1,2,4−トリアゾール誘導体の製造方法。
【請求項3】
リガンドが1,10−フェナントロリンであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の1,2,4−トリアゾール誘導体の製造方法。
【請求項4】
下記の式(4)で表される反応基質3と、下記の式(5)で表される反応基質4と、塩基と、銅触媒とを含む比誘電率が20〜50の溶媒を酸素を含む雰囲気下にて120〜170℃に加熱し、下記の式(6)で表される1,2,4−トリアゾール誘導体を製造することを特徴とする1,2,4−トリアゾール誘導体の製造方法。
【化4】

(式中、Rは、アルキル基あるいはシクロアルキル基あるいは置換又は非置換のアリール基あるいは置換又は非置換のアミノ基を表す)
【化5】

(式中、Rは、アルキル基あるいは置換又は非置換のアリール基あるいは置換又は非置換の複素環基を表す)
【化6】

(式中、R、Rは、前記と同じ意味を表す)
【請求項5】
溶媒がジメチルスルホキシドであることを特徴とする請求項4に記載の1,2,4−トリアゾール誘導体の製造方法。
【請求項6】
塩基が炭酸セシウムであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の1,2,4−トリアゾール誘導体の製造方法。
【請求項7】
銅触媒が臭化第一銅であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の1,2,4−トリアゾール誘導体の製造方法
【請求項8】
酸素を含む雰囲気下が空気雰囲気下であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の1,2,4−トリアゾール誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2011−32225(P2011−32225A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181018(P2009−181018)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(591060289)岐阜市 (15)
【Fターム(参考)】