説明

1,3−ジケトンの製法

【課題】複数の反応ステップを行う必要が無く、単一の反応によって高収率で1,3−ジケトンを製造する方法を提供する。
【解決手段】(A)エノンと(B)アルデヒドとのカップリング反応を、(C)VIII族金属を含有する金属錯体触媒の存在下で、行うことからなる1,3−ジケトンを製造する方法:


[式中、RおよびRは、カップリング反応を阻害せずかつカップリング反応に対して安定である炭素数1〜40の有機基、
およびRは、水素原子またはカップリング反応を阻害せずかつカップリング反応に対して安定である炭素数1〜40の有機基である。]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属錯体触媒の存在下で、エノンとアルデヒドを反応させることからなる1,3−ジケトンを製造する方法に関する。本発明は、医薬、農薬、各種化学品あるいはその原料や合成中間体として有用な1,3−ジケトンを簡単にかつ高収率で製造できる製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1,3−ジケトンは、医薬、農薬、各種化学品の原料や合成中間体として有用である。従来、1,3−ジケトンは、アルドールを経る方法(例えば、下記「非特許文献1」を参照)、あるいはエナミンを経る方法(例えば、下記「非特許文献2」を参照)によって製造されていた。
【0003】
アルドールを経る方法では、ケトンとアルデヒドとの反応により得たアルドールを酸化することが必要であるので、複数の反応ステップが必要であり、1,3−ジケトンの収率が低い。また、エナミンを経る方法では、ケトンから得られたエナミンをアルデヒドまたは酸クロリドと反応させることが必要であり、複数の反応ステップが必要であり、1,3−ジケトンの収率が低い。
【非特許文献1】Heng, K. K.; Smith, R. A.J. Tetrahedron 1979, 35, 425
【非特許文献2】Stork, G.; Terrell, R. J. Am. Chem. Soc. 1954, 76, 2029
【0004】
従来の1,3−ジケトンの製造方法は、反応工程が複雑であり、収率も低く、満足できるものではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、複数の反応ステップを行う必要が無く、単一の反応によって高収率で1,3−ジケトンを製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(A)エノンと
(B)アルデヒドとの下式のカップリング反応を、
(C)VIII族金属を含有する金属錯体触媒の存在下で、
行うことからなる1,3−ジケトンの製造方法:




[式中、RおよびRは、カップリング反応を阻害せずかつカップリング反応に対して安定である炭素数1〜40の有機基、
およびRは、水素原子またはカップリング反応を阻害せずかつカップリング反応に対して安定である炭素数1〜40の有機基である。]。
関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、単純な原料化合物を使用することによって、一段階の反応で、1,3−ジケトンを製造することができる。反応において、原子効率(原子経済性)は高く、副生物の生成は少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の製造方法において、エノンとアルデヒドがカップリングして1,3−ジケトンが得られる。反応スキームは、次のとおりであると考えられる。


【0009】
エノン(A)およびアルデヒド(B)において、R、R、RおよびRは、カップリング反応を阻害せずかつカップリング反応に対して安定である炭素数1〜40の有機基である。RおよびRは、水素原子であってもよい。R、R、RおよびRの例は、不飽和または飽和の脂肪族基(炭素数:例えば、1〜20)、芳香族基(炭素数:例えば、6〜40)、芳香脂肪族基(炭素数:例えば、7〜40)である。RとRは一体となって、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する環、例えば5〜10員環、特に6〜7員環を形成しても良い。R、R、RおよびRは、構成原子(例えば、環構成原子)として酸素、窒素、リンおよび/または硫黄を有していてもよい。脂肪族基、芳香族基および芳香脂肪族基は、置換基で置換されていても置換されていなくてもどちらでもよい。置換基の例は、ヒドロキシル基、オキシアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルバモイル基、ハロゲン原子、イミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィノ基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基又は シリル基である。置換基の炭素数は、一般に、0〜40である。R、R、RおよびRの具体例は、アルキル基(炭素数:例えば、1〜20)、アリール基(炭素数:例えば、6〜40)、アルケニル基(炭素数:例えば、2〜20)、アルキニル基(炭素数:例えば、2〜20)である。
【0010】
(A)エノン
反応原料として使用されるエノンは、式:


で示される化合物である。
【0011】
、RおよびRは、同一もしくは異なり、水素原子、C1−C18アルキル基、C2−C18アルケニル基、C2−C18アルキニル基、C3−C8シクロアルキル基、C6−C18アリール基、C7−C19アラルキル基、C−C18ヘテロアリール基またはC−C19ヘテロアラルキル基であってよい。R、RおよびRに関して挙げた基は、R11、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、NO2、NR11R12、PO0-3R11R12、SO0-3R11、OR11、CO2R11、CONHR11またはCOR11から選択された少なくとも1つの置換基により置換されてもよく、そしてR、RおよびR中の1以上のCH2基は、O、SO0-2、NR11またはPO0-2R11で場合により置換されていてもよい。
【0012】
ここでR11およびR12は、同一もしくは異なり、H、C1−C18アルキル基、C2−C18アルケニル基、C2−C18アルキニル基、C3−C8シクロアルキル基、C6−C18アリール基、C1−C18ヘテロアリール基、C1−C8アルキル-C6−C8アリール基、C1−C8アルキル-C−Cヘテロアリール基、C1−C8アルキル-C3−C8シクロアルキル基であり、そしてこれらの基R11およびR12は、同一もしくは異なる1つ以上のハロゲン原子により置換されてもよい。
【0013】
1−C18アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基が挙げられる。
2−C18アルケニル基の例としては、エチレニル基、オレイル基が挙げられる。
2−C18アルキニル基の例としては、アセチレニル基、オクチニル基が挙げられる。
【0014】
3−C8シクロアルキル基は、一般に、3〜8個のC原子を有し、そして適当な場合はどこにでも分枝を有する環式アルキル基を意味する。C3−C8シクロアルキル基の例として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基およびシクロヘプチル基が挙げられる。1以上の二重結合がこの基に存在してよい。
【0015】
6−C18アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基が挙げられる。
【0016】
7−C19アラルキル基は、一般に、C1−C8アルキル基を介して分子に連結されたC6−C18アリール基を意味する。
【0017】
1−C18ヘテロアリール基は、一般に、1〜18個のC原子を有し、そして1以上のヘテロ原子、好ましくはN、OまたはSを環に有する5、6または7員の芳香族環系を表す。これらのヘテロアリール基の例としては、2-、3-フリル基、1-、2-、3-ピロリル基、2-、3-チエニル基、2-、3-、4-ピリジル基、2-、3-、4-、5-、6-、7-インドリル基、3-、4-、5-ピラゾリル基、2-、4-、5-イミダゾリル基、1-、3-、4-、5-トリアゾリル基、1-、4-、5-テトラゾリル基、アクリジニル基、キノリニル基、フェナントリジニル基、2-、4-、5-、6-ピリミジニル基および4-、5-、6-、7-(1-アザ)-インドリジニル基が挙げられる。
【0018】
2−C19ヘテロアラルキル基は、一般に、C7−C19アラルキル基に対応するヘテロ芳香族系を意味する。
【0019】
エノンにおいて、R、RおよびRは、同一もしくは異なり、水素原子、C1−C12アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C5−C8シクロアルキル基、C6−C12アリールまたはC−C12ヘテロアリールであることが好ましい。
【0020】
エノン(鎖状エノン)の具体例としては、メチルビニルケトン、trans−3−ペンテン−2−オン、trans−3−ヘキセン−2−オン、trans−3−ヘプテン−2−オン、trans−3−オクテン−2−オン、trans−3−ノネン−2−オン、エチルビニルケトン、trans−4−ヘキセン−3−オン、trans−4−へプテン−3−オン、trans−4−オクテン−3−オン、trans−4−ノネン−3−オン、イソプロピルビニルケトン、trans−2−メチル−4−ヘキセン−3−オン、trans−2−メチル−4−へプテン−3−オン、trans−2−メチル−4−オクテン−3−オン、trans−2−メチル−4−ノネン−3−オン、trans−1,3−ジフェニル−2−プロピレンン−1−オン(カルコン)、trans−2−メチル−5−フェニル−4−ペンテン−3−オン、4−メチル−1−フェニル−3−ペンテン−2−オン、4−フェニル−3−ブチレン−2−オン、6−フェニル−3−へキセン−2−オン、5−フェニル−3−ヘキセン−2−オン等が挙げられる。
【0021】
とRが一体となって、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する環を形成している環状エノンの例は、シクロヘキサ−2−エノン、シクロヘプタ−2−エノン、シクロオクタ−2−エノン、シクロノナ−2−エノン、シクロデカ−2−エノンである。
【0022】
(B)アルデヒド
反応原料として使用されるアルデヒドは、式:



で示される化合物である。
【0023】
は、C1−C18アルキル基、C2−C18アルケニル基、C2−C18アルキニル基、C3−C8シクロアルキル基、C6−C18アリール基、C7−C19アラルキル基、C1−C18ヘテロアリールまたはC2−C19ヘテロアラルキルである。Rに関して挙げた基は、同一もしくは異なる基R11、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、NO2、NR1112、PO0-31112、SO0-311、OR11、CO211、CONHR11またはCOR11から選択された置換基により置換されてもよく、そして基R中の1以上のCH2基は、O、SO0-2、NR11またはPO0-211で場合により置換されていてもよい。
【0024】
アルデヒドとしては、任意のアルデヒドが使用可能であるが、具体例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド、2−エチルヘキサナール、イソブチルアルデヒド、フルフラール、クロトンアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド、置換ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、2,4−ジヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、グリオキサル酸及びα−アセトキシプロピオンアルデヒド等が使用できる。
【0025】
アルデヒドの量は、エノン1モルに対して、0.3〜3.0モル、好ましくは0.7〜1.5モル、特に約1モルであってよい。
【0026】
(C)金属錯体触媒
金属錯体触媒において、VIII族金属としては、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、コバルト(Co)、鉄(Fe)等が用いられる。ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)が好ましく、なかでも、ルテニウム(Ru)が特に活性の高いものとして例示される。
【0027】
金属錯体触媒は、不均一系触媒であってもよいが、均一系触媒を構成することが好ましい。
【0028】
金属錯体触媒は、式:
MX
[式中、Mは、第VIII族金属、
Xは、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ハロゲン原子団[ハロゲン原子を含む基、例えばBF、PF、OTf(すなわち、OSO2CF3)、NTf2(すなわち、N(SO2CF3)2)]、カルボキシル基、アルコキシ基(炭素数1〜10)またはヒドロキシ基などの配位子、
Lは、ホスフィン(例えば、モノホスフィン、ポリホスフィン、例示すればビスホスフィン)、オレフィン(例えば、鎖状または環状の、モノオレフィン、ポリオレフィン、例示すればジオレフィン)、CO(一酸化炭素)、イソニトリル、アミン、オキサゾリン、ビスオキサゾリン、スルホニルなどの配位子、
mは0〜5、特に1〜4、
nは0〜5、特に1〜4、
mとnの合計は2〜8、特に4〜7、特別には6である。]
として表わすことができる。
【0029】
たとえば、ホスフィン配位子は一般式PR212223 で示すことができ、R21、R22 、R23 は、同じであっても異なってよく、脂肪族基(例えば、アルキル基)(例えば、炭素数1〜10)、脂環族基(例えば、炭素数1〜10)、芳香族基(例えば、炭素数6〜20)(特に、フェニル基)、芳香脂肪族基(例えば、炭素数7〜21)であってよい。芳香族基は、ハロゲン(例えば、フッ素原子、塩素原子)、トリフルオロメチル基、メトキシ基、アミノ基などで置換されていてもよい。ホスフィン配位子は、一座配位、二座配位または三座配位であってよい。ホスフィン配位子としては、たとえば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ(p −トリル)ホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィンなどの一座配位の3級ホスフィン化合物;ならびに、ビスジフェニルホスフィノメタン、ビスジフェニルホスフィノエタン、ビスジフェニルホスフィノプロパン、ビスジフェニルホスフィノブタン、ビスジメチルホスフィノエタン、ビスジメチルホスフィノプロパンなどの二座配位の3級ホスフィン化合物等が例示される。
オレフィン配位子としては、エチレン、シクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン、1,5−シクロオクタジエン、ノルボルナジエン等が例示される。
アミン配位子としては、アミン配位子としては、ビスオキサゾリン、サレン、ポルフィリン、ウレア等が例示される。
スルホニル配位子としては、メタンスルホニル基(メシラート)、トリフルオロメタンスルホニル基(トリフラート)が例示される。
【0030】
Xは、水素原子、ハロゲン原子であることが好ましい。
Lは、CO(一酸化炭素)、ホスフィンであることが好ましい。
【0031】
金属錯体触媒は、配位子として、水素原子、ハロゲン原子、およびCO(カルボニル基)を有することが好ましい。さらに、配位子としてホスフィンをも有することが好ましい。
【0032】
VIII族金属がルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)またはロジウム(Rh)である金属錯体触媒の具体例は、これらに限定されるものではないが、次のとおりである。
RuHCl(CO)[P(C6H5)3]3, RuHCl(CO)[P(CH3)3]4 ,
RuCl2[P(C6H5)3]4 , RuBr2[P(C6H5)3]3 ,
RuH2(CO)[P(C6H5)3 ]3 , RuHF[P(C2H5)3]4 ,
RuH(HCOO)[P(C6H5)3]3 , RuH(CH3COO)[P(C6H5)3]3 ,
RuH(CH3SO2)Br2[P(CH3)(C6H5)2]2 ,
RuHCl[(C6H5)2P(CH2)2 P(C6H5)2]2 ,
RuCl2[(C6H5)2P(CH2)2 P(C6H5)2]2 ,
RuCl2[P(CH3)3]4(PF6), RuHCl(CO)[P(C6H5)3]2(BF4),
RuHCl(CO)[P(CH3)3]4 , RuHBr[P(C6H5)3]4 , RuI2(CO)[P(C6H5)3]3

IrHCl(CO)[P(C6H5)3]3, IrHCl(CO)[P(CH3)3]4 ,
IrCl2[P(C6H5)3]4 , IrCl2[P(C6H5)3]3 ,
IrH2(CO)[P(C6H5)3 ]3 , IrHF[P(C2H5)3]4 ,
IrH(HCOO)[P(C6H5)3]3 , IrH(CH3COO)[P(C6H5)3]3 ,
IrH(CH3SO2)Br2[P(CH3)(C6H5)2]2 ,
IrHCl[(C6H5)2P(CH2)2 P(C6H5)2]2 ,
IrCl2[(C6H5)2P(CH2)2 P(C6H5)2]2 ,
IrCl2[P(CH3)3]4(PF6), IrHCl(CO)[P(C6H5)3]2(BF4),
IrHCl(CO)[P(CH3)3]4 , IrHBr[P(C6H5)3]4 , IrI2[P(C6H5)3]4

RhHCl(CO)[P(C6H5)3]3, RhHCl(CO)[P(CH3)3]4 ,
RhHCl[(C6H5)2P(CH2)2 P(C6H5)2]2
【0033】
金属錯体触媒の量は、エノン1モルに対して、0.001〜0.3モル、好ましくは0.01〜0.2モル、特に0.01〜0.1モルであってよい。
【0034】
本発明のカップリング反応は、液相で行うことが好ましい。カップリング反応は、溶媒を用いずに行ってもよいが、溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒は、カップリング反応に対して不活性である。溶媒の例は、脂肪族炭化水素(例えば、オクタンおよびシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン)、ケトン(例えば、アセトンおよびメチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン)、エステル(例えば、酢酸エチル)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール)、含窒素化合物(例えば、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒、ピロリジンやピリジンなどのアミン系溶媒)である。溶媒は、基質(すなわち、エノンおよびアルデヒド)および反応生成物(すなわち、1,3−ジケトン)を溶解することが好ましい。溶媒の1気圧での沸点は、好ましくは50℃以上、例えば60〜210℃であってよい。溶媒の量は、基質(エノンおよびアルデヒドの合計)1重量部に対して、0.1〜100重量部、例えば1〜10重量部であってよい。
【0035】
カップリング反応の反応温度は、例えば、10〜300℃、特に100〜210℃であってよい。反応時間(滞留時間)は、例えば1.0〜300分、特に10〜180分、特別には30〜120分であってよい。
【実施例】
【0036】
次に、実施例により更に具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例により制限されるものではない。
【0037】
実施例1
50mL反応容器を窒素置換した後、エチルビニルケトン(エノン1a)(86mg、1.03mmol)、ベンズアルデヒド(アルデヒド2a)(138mg、1.3mmol)およびRuHCl(CO)(PPh) (96.0mg、0.1mmol)およびベンゼン(3.75mL)を仕込んだ。攪拌下、80℃で5時間、ベンゼンを還流しながらカップリング反応を行い、生成物である2−プロパノイルプロピオフェノン(1,3−ジケトン3a)を得た(149mg、収率76%)。生成物の精製は、溶離剤をヘキサン/酢酸エチル(98/2)とするシリカゲルクロマトグラフィーにより行った。
【0038】
実施例2〜18
エノンおよびアルデヒドとして表1に示す化合物を用いる以外は、実施例1と同様の手順を用い、カップリング反応を行った。生成物および収率を表1に示す。
【0039】
表1

【0040】
表2


【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によって得られる1,3−ジケトンは、医薬、農薬、各種化学品の原料や合成中間体として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エノンと
(B)アルデヒドとの下式のカップリング反応を、
(C)VIII族金属を含有する金属錯体触媒の存在下で、
行うことからなる1,3−ジケトンの製造方法:

[式中、RおよびRは、カップリング反応を阻害せずかつカップリング反応に対して安定である炭素数1〜40の有機基、
およびRは、水素原子またはカップリング反応を阻害せずかつカップリング反応に対して安定である炭素数1〜40の有機基である。]。
【請求項2】
およびRは、炭素数1〜20の不飽和または飽和の脂肪族基、炭素数6〜40の芳香族基、炭素数7〜40の芳香脂肪族基であり、
およびRは、水素原子または炭素数1〜20の不飽和または飽和の脂肪族基、炭素数6〜40の芳香族基、炭素数7〜40の芳香脂肪族基であり、
ただし、RとRは一体となって、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する環を形成することがある請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属錯体触媒において、VIII族金属が、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、コバルト(Co)または鉄(Fe)である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
金属錯体触媒において、VIII族金属がルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)またはロジウム(Rh)である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
金属錯体触媒において、配位子が、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシ基(炭素数1〜10)、ヒドロキシ基、ホスフィン(例えば、モノホスフィン、ポリホスフィン、例示すればビスホスフィン)、オレフィン(例えば、鎖状または環状の、モノオレフィン、ポリオレフィン、例示すればジオレフィン)、CO(一酸化炭素)、イソニトリル、アミン、オキサゾリン、ビスオキサゾリン、スルホニルである請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2008−37765(P2008−37765A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210992(P2006−210992)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】