説明

1,3,5−トリアジン環を有する共重合体、その製造法およびその使用

【課題】 従来の1,3,5−トリアジン誘導体の剛直性を緩和し、有機溶媒に可溶でスピンコート、塗布法やインクジェット法に適した成膜方法に適用するため、1,3,5−トリアジン環を主鎖に有する共重合体を提供する。
【解決手段】 一般式(1)
【化1】


[式中、Aは二価の置換もしくは無置換の芳香族環基、または二価の置換もしくは無置換の複素環基であり、Rは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリール基または水素原子を示す。]で表される1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有することを特徴とする共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な1,3,5−トリアジン環を有する共重合体、その製造方法、およびそれからなる発光材料等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1,3,5−トリアジン誘導体は、有機電界発光素子用の有機材料として注目されている。例えば、特許文献1には、下記一般式(9)[式中R16は炭素数5〜16の直鎖アルキル基を示す。]で表される2,4,6−トリス[4−(4−アルコキシフェニルエチニル)フェニル]−1,3,5−トリアジンが、青色領域の蛍光を示す液晶材料となることが開示されている。
【0003】
【化1】

【0004】
非特許文献1には、下記一般式(10)[式中nは3〜6]で表される{ポリ[2,4,6−トリス(5’−(5−アリルチオ−2,2’−ビチエニル−5−イル)−1,3,5−トリアジン)]が非線形光学特性を示すことが開示されている。
【0005】
【化2】

【特許文献1】特開2002−105063号公報
【非特許文献1】Chem.Commun.,2083ぺージ、1999年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば一般式(9)の化合物は分子構造上、剛直性が強く、結晶性が極めて高いため、真空蒸着法あるいはスピンコート法による薄膜は成膜後、直ちに凝集、結晶化が起こり、劣化が著しいという問題がある。
【0007】
一方、一般式(10)の化合物は1,3,5−トリアジンとチオフェンとの共重合体であって、非線形光学特性を示す化合物であることは開示されているものの、有機電界発光素子としての開示はない。また、一般式(10)の化合物は繰り返し単位が3〜6のオリゴマーであることが開示されているのみである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、先の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、1,3,5−トリアジン誘導体の剛直性を緩和し、有機溶媒に可溶でスピンコート、塗布法やインクジェット法に適した成膜方法に適用するため、1,3,5−トリアジン環を主鎖に有する共重合体を作る、ことを着想し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、一般式(1)
【0009】
【化3】

【0010】
[式中、Aは二価の置換もしくは無置換の芳香族環基、または二価の置換もしくは無置換の複素環基であり、Rは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリール基または水素原子を示す。]で表される1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有することを特徴とする共重合体である。
【0011】
また本発明は,一般式(2)
【0012】
【化4】

【0013】
[式中、Bは二価の置換もしくは無置換の芳香族環基、または二価の置換もしくは無置換の複素環基であり、R1、R2は同一または相異なって炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリール基、または水素原子を示す。]で表される1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有することを特徴とする共重合体である。
【0014】
また本発明の1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体は、一般式(3)
【0015】
【化5】

【0016】
[式中、Rは前記定義に同じ。mは1、または2を示す。]で表される1,3,5−トリアジン化合物とチオフェン、またはビチオフェンとの共重合体である。
【0017】
また本発明の1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体は、一般式(4)
【0018】
【化6】

【0019】
[式中、R1およびR2は前記定義に同じであり、mは1、または2を示す。]で表される1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有するチオフェン、またはビチオフェンとの共重合体である。
【0020】
また本発明は、一般式(5)
【0021】
【化7】

【0022】
[式中、Rは前記定義に同じである。Xは臭素、塩素またはヨウ素を示す。]で表される4,6−ジハロゲン化−1,3,5−トリアジン類または、一般式(6)
【0023】
【化8】

【0024】
[式中、R1およびR2は前記定義に同じである。Xはヨウ素、塩素または臭素のハロゲンを示す。]で表される2−アミノ−4,6−ジハロゲン化−1,3,5−トリアジン類と、化学式(7)
【0025】
【化9】

【0026】
で示される2,5−ビス(トリメチルスタニル)チオフェンまたは、化学式(8)
【0027】
【化10】

【0028】
で示される2,2’−ジトリメチルスタニル−5,5’−ビチオフェンとを反応させることを特徴とする、前記一般式(3)および(4)で表される1,3,5−トリアジン誘導体とチオフェンとの共重合体の製造方法である。
【0029】
さらに本発明は前記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体をスピンコート法、塗布法またはインクジェット法で成膜することにより形成されることを特徴とする薄膜である。
【0030】
さらに本発明は、前記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体からなることを特徴とする、電子輸送材である。
【0031】
さらに本発明は、前記一般式前記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体からなることを特徴とする発光材である。
【発明の効果】
【0032】
本発明で見出した1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体は、汎用の有機溶媒に可溶であり、その有機溶媒を用いてスピンコート法、塗布法、インクジェット法で薄膜を形成することが可能で、その薄膜がアモルファスであり、有機電界素子材料としてきわめて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
一般式(3)で表される化合物としては具体的には、2−オクチル−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの共重合体、2−ヘキシル−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの共重合体、2−デシル−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの共重合体、2−オクチル−1,3,5−トリアジンとビチオフェンとの共重合体、2−ヘキシル−1,3,5−トリアジンとビチオフェンとの共重合体、2−デシル−1,3,5−トリアジンとビチオフェンとの共重合体などを例示することができる。
【0034】
また本発明において一般式(4)で表される化合物としては具体的には、2−オクチルアミノ−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの共重合体、2−ヘキシルアミノ−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの共重合体、2−デシルアミノ−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの共重合体、2−オクチルアミノ−1,3,5−トリアジンとビチオフェンとの共重合体、2−ヘキシルアミノ−1,3,5−トリアジンとビチオフェンとの共重合体、2−デシルアミノ−1,3,5−トリアジンとビチオフェンとの共重合体などを例示することができる。
【0035】
本発明において、一般式(3)または(4)で表される重合体は、スチルカップリング反応でおこなうことができる(J.K.Stille、J.H.Simpson、J.Am.Chem.Soc.,109、2138(1987))。
【0036】
一般式(3)で表される1,3,5−トリアジン誘導体とチオフェンまたはビチオフェンとの共重合体は、一般式(5)で表される4,6−ジハロゲン化−1,3,5−トリアジン類と、化学式(7)で表される2,5−ビス(トリメチルスタニル)チオフェンまたは化学式(8)で表される2,2’−ジトリメチルスタニル−5,5’−ビチオフェンとを反応させることにより得ることができる。このとき、触媒としてパラジウム化合物またはニッケル化合物の存在下で反応させることが好ましい。反応に用いる溶媒は、例えば1,4−ジオキサンやテトラハイドロフランなどが例示できる。
【0037】
触媒として用いるパラジウム化合物は、たとえばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどの錯体を例示することができる。
【0038】
原料となる一般式(5)で表される4,6−ジハロゲン化−1,3,5−トリアジン類は既知の方法で合成することができる(Kim,S.W.他、Polymer.43、4297(2002))。
【0039】
一般式(4)で表される1,3,5−トリアジン誘導体とチオフェンまたはビチオフェンとの共重合体は、一般式(6)で表される2−アミノ−4,6−ジハロゲン化−1,3,5−トリアジン類と、化学式(7)で表される2,5−ビス(トリメチルスタニル)チオフェンまたは化学式(8)で表される2−アミノ−2,2’−ジトリメチルスタニル−5,5’−ビチオフェンとを反応させることにより得ることができる。
【0040】
原料となる化学式(6)で示される4,6−ジハロゲン化−1,3,5−トリアジン類はまた、既知の方法で合成することができる(T.Kajiki他、J.Org.Chem.64、9679(1999))。
【0041】
上記の目的とする共重合物を得るための反応条件としては、反応温度は0℃から150℃の間で行うことが好ましく、より好ましくは60℃〜100℃の間で行うのがよい。また、反応時間は反応温度との兼ね合いによるが、概ね4〜100時間であり、20〜50時間が好適である。
【0042】
本発明で得られた一般式(3)で表される1,3,5−トリアジン誘導体とチオフェンまたはビチオフェンとの共重合体、および一般式(4)で表される2−アミノ−1,3,5−トリアジン誘導体とチオフェンまたはビチオフェンとの共重合体の薄膜は表面平滑性、電子輸送能、発光能などが高いため、有機電界発光素子の材料として用いることが可能で、とりわけ電子輸送材、発光材として用いることができる。したがって、一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される1,3,5−トリアジン誘導体とチオフェンとの共重合体は、有機EL材料としての使用が期待できる。
【0043】
一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される1,3,5−トリアジン誘導体とチオフェンとの共重合体の薄膜の製造方法には特に限定はないが、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、酢酸エチル、テトラハイドロフラン等の有機溶媒に対する溶解度が高いため、塗布法、スピンコート法またはインクジェット法による成膜が可能である。
実施例
次に本発明を実施例および参考例によって詳細に説明するが、本発明はこの実施例および参考例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
2−ヘキシル−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの交互共重合体の合成
窒素下、50 mlシュレンク管に2,5−ビス(トリメチルスタニル)チオフェン 1.23 g (3.0 mmol)と テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム 0.18g (0.15 mmol)を入れ、脱水1,4−ジオキサン15mlに溶解させた。そしてこのシュレンクに2,4−ジクロロ−6−ヘキシル−1,3,5−トリアジン 0.702 g (3.0 mmol)を入れ、80 ℃の温度で 48時間反応させた。この後、弗化カリウム水溶液で反応を停止させ、そのまま10時間室温で攪拌した。沈殿(重合物)を濾別し、希薄アンモニア水で1回、エチレンジアミン四酢酸カリウム(pH9)水溶液で2回、希薄アンモニア水溶液で2回、メタノールで1回の順序で洗浄した。更に得られた重合物を少量のクロロホルムに溶解させ300 mlのメタノールに再沈殿した後、90℃で減圧乾燥し黄土色粉末(0.77 g、収率90 %)を得た。この化合物のH−NMR解析(日本電子(株)製「JNM−EX400」で測定)、IR赤外吸収スペクトルの測定(日本分光(株)製「IR−810」で測定)、元素分析を行った。
【0045】
1H− NMR (CDCl 400MHz)
δ (ppm) = 8.29-7.15 (m, 2H, Th-H)
2.94 (br, 2H, α-CH2)
1.95 (br, 2H. β-CH2)
1.58-1.25 (br, 6H, -(CH2)3-)
0.93 ( br, 3H, CH3)
IR(KBr) 2954,2923,2983,1499,1434,1349,802,777(cm-1)
元素分析結果
計算値: C, 62.50; H,6.25; N,16.81; S,12.83
実測値: C, 62.78; H,6.16; N,15.95; S,10.66; Cl,0.60
NMR、IR、および元素分析の結果から得られた物質は目的とする1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体であることを確認した。
【0046】
この化合物のGPC分析による分子量を表1(東ソー(株)製HLC−8121GPC/HT,内蔵RI,RI−8020で測定)に示す。
【実施例2】
【0047】
2−オクチル−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの交互共重合体の合成
実施例1で用いた2,4−ジクロロ−6−ヘキシル−1,3,5−トリアジンを2,4−ジクロロ−6−オクチル−1,3,5−トリアジンに代えて反応を行い、黄土色粉末(0.79 g 、収率98 %)を得た。

1H− NMR (CDCl3, 400MHz)
δ (ppm) = 8.25-7.21 (m, 2H, Th-H)
2.91 (br、 2H、 α-CH2)
1.91 (br、 2H、 β-CH2)
1.31 (br、 10H、-(CH2)5-)
0.89 (br、 3H、 CH3)
IR (KBr) 2954、2923、2853、1501、1434、1351、802、778 (cm-1)
元素分析の結果
計算値:C,64.21;H,7.11;N,14.98;S,11.43
実測値:C,64.18; H,6.59;N、14.83;S、11.06;Cl;0.21
NMR、IR、および元素分析の結果から得られた物質は目的とする1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体であることを確認した。
この化合物のGPC分析による分子量を表1に示す。
【実施例3】
【0048】
2−デシル−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの交互共重合体の合成
実施例1で用いた2,4−ジクロロ−6−ヘキシル−1,3,5−トリアジンを2,4−ジクロロ−6−デシル−1,3,5−トリアジンに代えて合成し、黄土色粉末(0.89 g 、収率98 %)を得た。

H−NMR(CDCl3、400MHz)
δ(ppm)=8.29-8.25(br、2H,Th-H)
2.93(br、2H、α-CH2)
1.92(br,2H、β-CH2)
1.29(br、14H,-(CH2)7-)
0.88(br,3H、CH3)
IR(KBr) 2954,2923,2853,1499,1434,1348,800、777(cm-1)
元素分析
計算値:C,65.88;H,7.78;N,13.55;S,10.34
実測値:C,65.85;H,7.12;N,13.36;S,8.95
NMR、IR、および元素分析の結果から得られた物質は目的とする1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体であることを確認した。
この化合物のGPC分析による分子量を表1に示す。
【実施例4】
【0049】
2−ドデシル−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの交互共重合体の合成
実施例1で用いた2,4−ジクロロ−6−ヘキシル−1,3,5−トリアジンを2,4−ジクロロ−6−ドデシル−1,3,5−トリアジンに代えて合成し、黄色粉末(0.95 g 、収率96 %)を得た。

H−NMR(CDCl3、400MHz)
δ(ppm)=8.29-8.01(br,2H,Th-H)
2.93(br、2H、α-CH2)
1.92(br,2H、β-CH2)
1.26(br、18H,-(CH2)9-)
0.87(br,3H、CH3)
IR(KBr) 2954,2923,2853,1503,1434,1348,800、777(cm-1)
元素分析
計算値:C,66.98;H、8.35:N、12.33;S、9.41
実測値:C,66.58;H、7.63:N、12.47;S、8.39;Cl、0.55
NMR、IR、および元素分析の結果から得られた物質は目的とする1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体であることを確認した。
【0050】
この化合物のGPC分析による分子量を表1に示す。
【実施例5】
【0051】
2−デシル−1,3,5−トリアジンとビチオフェンとの交互共重合体の合成
実施例3で用いた2,5−ビス(トリメチルスタニル)チオフェンを2,2’−ジメチルスタニル−5,5’−ビチオフェンに代えて合成し、橙色粉末(1.02 g 、収率89 %)を得た。

H−NMR(CDCl3、400MHz)
δ(ppm)=8.29-8.25(br,4H,Th-H)
2.93(br、2H、α-CH2)
1.92(br,2H、β-CH2)
1.29(br、14H,-(CH2)7-)
0.88(br,3H、CH3)
IR(KBr) 2954,2923,2853,1499,1434,1348,800、777(cm-1)
元素分析
計算値:C,64.04;H、6.69:N、10.66;S、16.28
実測値:C,64.03;H、6.21:N、10.65;S、16.01;Cl、0.24
NMR、IR、および元素分析の結果から得られた物質は目的とする1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体であることを確認した。
【0052】
この化合物のGPCによる分子量を表1に示す。
【実施例6】
【0053】
2−ヘキシルアミノ−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの交互共重合体の合成
実施例1で用いた2,4−ジクロロ−6−ヘキシル−1,3,5−トリアジンを2,4−ジクロロ−6−ヘキシルアミノ−1,3,5−トリアジンに代えて合成し、黄色粉末(0.66 g 、収率65 %)を得た。

1H NMR (CDCl3,400 MHz)
δ (ppm) = 8.04 (br, 2H, Th-H)
5.51 (br, 1H, NH)
3.54 (br, 2H, α-CH2)
1.68 (br, 2H, β-CH2)
1.25 (br, 6H, -(CH2)3-)
0.91 (br, 3H, CH3)
IR (KBr) 3438, 2953, 2926, 2855, 1578, 1520, 1475, 1434, 1402, 1364, 1202, 805, 782 (cm-1)
元素分析
計算値 : C, 59.15; H, 6.26; N, 21.20; S, 12.14
実測値 : C, 59.15; H, 5.92; N, 19.72; S, 11.35; Cl, 0.48
NMR、IR、および元素分析の結果から得られた物質は目的とする1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体であることを確認した。
【0054】
この化合物のGPCによる分子量を表1に示す。
【実施例7】
【0055】
2−オクチルアミノ−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの交互共重合体の合成
実施例6で用いた2,4−ジクロロ−6−ヘキシルアミノ−1,3,5−トリアジンを2,4−ジクロロ−6−オクチルアミノ−1,3,5−トリアジンに代えて合成し、黄色粉末(0.66 g 、収率76 %)を得た。

1H NMR (CDCl3,400 MHz)
δ (ppm) = 8.10 (br, 2H, Th-H)
5.49 (br,1H, NH)
3.56 (br, 2H, α-CH2)
1.60 (br, 2H, β-CH2)
1.30 (br, 10H, -(CH2)5-)
0.88 (br, 3H, CH3)
IR (KBr) 3439, 2953, 2923, 2852, 1578, 1519, 1475, 1434, 1402, 1363, 1201, 806, 782 (cm-1)
元素分析
計算値: C, 60.94; H, 7.09; N, 18.95; S, 10.84
実測値: C, 61.38; H, 6.75; N, 18.12; S, 10.25
NMR、IR、および元素分析の結果から得られた物質は目的とする1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体であることを確認した。
【0056】
この化合物のGPCによる分子量を表1に示す。
【実施例8】
【0057】
2−デシルアミノ−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの交互共重合体の合成
実施例6で用いた2,4−ジクロロ−6−ヘキシルアミノ−1,3,5−トリアジンをを2,4−ジクロロ−6−デシルアミノ−1,3,5−トリアジンに代えて合成し、黄色粉末(0.78 g 、収率84%)を得た。

1H NMR (CDCl3,400 MHz)
δ (ppm) = 8.11 (br, 2H, Th-H)
5.46 (br,1H, NH)
3.55 (br, 2H, α-CH2)
1.66 (br, 2H, β-CH2)
1.27 (br, 14H, -(CH2)7-)
0.87 (br, 3H, CH3)
IR (KBr) 3440, 2953, 2921, 2850, 1577, 1507, 1434, 1401, 1362, 1199, 805, 781 (cm-1)
元素分析
計算値: C, 62.91; H, 7.73; N, 17.26; S, 9.88
実測値: C, 62.97; H, 7.36; N, 16.50; S, 9.26
NMR、IR、および元素分析の結果から得られた物質は目的とする1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体であることを確認した。
【0058】
この化合物のGPCによる分子量を表1に示す。
【実施例9】
【0059】
2−デシルアミノ−1,3,5−トリアジンとビチオフェンとの交互共重合体の合成
実施例6で用いた2,5−ビス(トリメチルスタニル)チオフェンを2,2’−ジメチルスタニル−5,5’−ビチオフェンに代えて合成し、橙色粉末(1.14 g 、収率96%)を得た。

1H NMR (CFCOOD, 400 MHz)
δ (ppm) = 8.26 (br, 2H, Th-H)
7.68 (br, 2H, Th-H)
4.54 (br, 2H, α-CH2)
3.86 (br, 1H, NH)
1.86 (br, 2H, β-CH2)
1.52-1.31 (br, 14H, -(CH2)7-)
0.88 (br, 3H, CH3)
IR (KBr) 3438, 2953, 2921, 2851, 1576, 1543, 1515, 1471, 1456, 1428, 1404, 1375, 797, 778 (cm-1)
元素分析
計算値:C, 61.88; H, 6.67; N, 13.74; S, 15.73
実測値:C, 62.17; H, 6.38; N, 13.18; S, 15.02
NMR、IR、および元素分析の結果から得られた物質は目的とする1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体であることを確認した。
【0060】
この化合物のGPCによる分子量を表1に示す。
【実施例10】
【0061】
2−ドデシルアミノ−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの交互共重合体の合成
実施例6で用いた2,4−ジクロロ−6−ヘキシルアミノ−1,3,5−トリアジンをを2,4−ジクロロ−6−ドデシルアミノ−1,3,5−トリアジンに代えて合成し、黄色粉末(0.96 g 、収率93%)を得た。

1H NMR (CDCl3,400 MHz)
δ (ppm) = 8.09 (br, 2H, Th-H)
5.48 (br,1H, NH)
3.55 (br, 2H, α-CH2)
1.64 (br, 2H, β-CH2)
1.25 (br, 18H, -(CH2)9-)
0.86 (br, 3H, CH3)
IR (KBr) 3438, 2953, 2922, 2851, 1578, 1518, 1435, 1402, 1362, 1202, 806, 784 (cm-1)
元素分析
実測値: C, 65.05; H, 8.24; N, 15.97; S, 9.14
計算値: C, 65.05; H, 7.70; N, 15.34; S, 8.62
NMR、IR、および元素分析の結果から得られた物質は目的とする1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体であることを確認した。
【0062】
この化合物のGPCによる分子量を表1に示す。
【実施例11】
【0063】
2−ドデシル−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの共重合体のスピンコート法による成膜および膜の蛍光スペクトル
実施例4で得られた2−ドデシル−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの共重合体10mgをオルトジクロロベンゼン50mlに溶解し、ガラス基板に2000rpmでスピンコートした。この後、110℃、90分間、真空ベークを行い、室温まで除冷した。このスピンコート膜の蛍光スペクトルを測定(日本分光(株)製「FR−777」)したところ510nmに蛍光が観察された。結果を表2に示す。
【実施例12】
【0064】
2−デシル−1,3,5−トリアジンとビチオフェンとの交互共重合体のスピンコート法による成膜および膜の蛍光スペクトル
実施例5で得られた2−デシル−1,3,5−トリアジンとビチオフェンとの交互共重合体10mgをクロロホルム50mlに溶解し、ガラス基板に2000rpmでスピンコートした。この後、110℃、90分間、真空ベークを行い、室温まで除冷した。このスピンコート膜の蛍光スペクトルを測定したところ530nmに蛍光が観察された。結果を表2に示す。
【実施例13】
【0065】
2−ヘキシルアミノ−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの交互共重合体のスピンコート法による成膜および膜の蛍光スペクトル
実施例6で得られた2−ヘキシルアミノ−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの交互共重合体10mgをテトラハイドロフラン50mlに溶解し、ガラス基板に2000rpmでスピンコートした。この後、110℃、90分間、真空ベークを行い、室温まで除冷した。このスピンコート膜の蛍光スペクトルを測定したところ518nmに強い蛍光が観察された。結果を表2に示す。
【実施例14】
【0066】
2−オクチルアミノ−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの交互共重合体のスピンコート法による成膜および膜の蛍光スペクトル
実施例7で得られた2−オクチルアミノ−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの交互共重合体10mgをオルトジクロロベンゼン50mlに溶解し、ガラス基板に2000rpmでスピンコートした。この後、110℃、90分間、真空ベークを行い、室温まで除冷した。このスピンコート膜の蛍光スペクトルを測定したところ507nmに強い蛍光が観察された。結果を表2に示す。
【実施例15】
【0067】
2−デシルアミノ−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの交互共重合体のスピンコート法による成膜および膜の蛍光スペクトル
実施例8で得られた2−デシルアミノ−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの交互共重合体10mgをオルトジクロロベンゼン50mlに溶解し、ガラス基板に2000rpmでスピンコートした。この後、110℃、90分間、真空ベークを行い、室温まで除冷した。このスピンコート膜の蛍光スペクトルを測定したところ505nmに強い蛍光が観察された。結果を表2に示す。
【実施例16】
【0068】
2−ドデシルアミノ−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの交互共重合体のスピンコート法による成膜および膜の蛍光スペクトル
実施例10で得られた2−ドデシルアミノ−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの交互共重合体10mgをテトラハイドロフランン50mlに溶解し、ガラス基板に2000rpmでスピンコートした。この後、110℃、90分間、真空ベークを行い、室温まで除冷した。このスピンコート膜の蛍光スペクトルを測定したところ503nmに蛍光が観察された。結果を表2に示す。
【実施例17】
【0069】
2−オクチルアミノ−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの交互共重合体の電荷移動度
実施例7で得られた2−オクチルアミノ−1,3,5−トリアジンとチオフェンとの交互共重合体50mgをオルトジクロロベンゼン200mlに溶解し、予めITO電極を形成したガラス基板に500rpmでスピンコートした。この後、110℃、90分間、真空ベークを行い、室温まで除冷した。この上にアルミニウムの電極を真空蒸着で作製した。この膜の電子移動度をTOF法(Time of Flight((株)オプテル製「TOF−401」))で測定したところ、2×10−4cm2/(Vs)が得られ、比較的速いことが見出された。
【0070】
【表1】

【0071】
GPCの溶媒:オルトジクロロベンゼン(実施例1〜5),テトラハイドロフラン(実施例6〜10)。
スタンダード:ポリスチレン
Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量、Mw/Mn:分子量分布
【0072】
【表2】

【0073】
λmax:蛍光波長(nm)
強度:相対値
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体は、汎用の有機溶媒に可溶であり、その有機溶媒を用いてスピンコート法、塗布法、インクジェット法で薄膜を形成することが可能で、その薄膜がアモルファスであり、有機電界素子材料としてきわめて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、Aは二価の置換もしくは無置換の芳香族環基、または二価の置換もしくは無置換の複素環基であり、Rは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリール基または水素原子を示す。]で表される1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有することを特徴とする共重合体。
【請求項2】
一般式(2)
【化2】

[式中、Bは二価の置換もしくは無置換の芳香族環基、または二価の置換もしくは無置換の複素環基であり、R1、R2は同一または相異なってアリール基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または水素原子を示す。]
で表される1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有することを特徴とする共重合体。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が、一般式(3)
【化3】

[式中mは1または2を示し、Rは前記定義に同じ。]
で表される化合物である前記請求項1に記載の1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体。
【請求項4】
前記一般式(2)で表される化合物が、一般式(4)
【化4】

[式中mは1または2を示し、RおよびRは前記定義に同じ。]
で表される化合物である、前記請求項2に記載の1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体。
【請求項5】
一般式(5)
【化5】

[式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリール基または水素原子を示す。Xは臭素、塩素またはヨウ素を示す。]
で表される4,6−ジハロゲン化−1,3,5−トリアジン類または一般式(6)
【化6】

[式中、R1、R2は同一または相異なって、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリール基または水素原子を示す。Xはヨウ素、塩素または臭素のハロゲンを示す。]
で表される2−アミノ−4,6−ジハロゲン化−1,3,5−トリアジン類と、化学式(7)
【化7】

で示される2,5−ビス(トリメチルスタニル)チオフェンまたは、化学式(8)
【化8】

で示される2,2’−ジトリメチルスタニル−5,5’−ビチオフェンとを反応させることを特徴とする、一般式(3)
【化9】

[mおよびRは前記定義に同じ。]
または一般式(4)
【化10】

[m、R1およびR2は前記定義に同じ。]
で表される1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体をスピンコート法、塗布法またはインクジェット法で成膜することにより形成されることを特徴とする薄膜。
【請求項7】
前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体からなることを特徴とする、電子輸送材。
【請求項8】
前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の1,3,5−トリアジン環を主鎖中に有する共重合体からなることを特徴とする、発光材。

【公開番号】特開2006−225428(P2006−225428A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37638(P2005−37638)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】