説明

1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物及びその製造法

【課題】1,4−ジヒドロアントラセン骨格を有し、かつラジカル重合性基を有する高屈折率アクリレート化合物を提供すること。
【解決手段】代表製造例として、9,10−ジヒドロキシ−1,4ージヒドロアントラセンとエピクロロヒドリンを苛性ソーダ等のアルカリで縮合させて、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテルを生成させ、このオキシラン環をアクリル酸で、テトラブチルアンモニウムブロマイド等を触媒として開環し、目的の1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテルを得ることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率材料として有用な1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、光学レンズの分野などにおいてガラス代替材料としてプラスチックが盛んに用いられている。たとえば、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレートなどがよく知られている。これらプラスチック材料は、軽量性、安全性、意匠性を有している反面、屈折率の面では無機ガラスより低く、分厚くなりやすいという欠点がある。そこで、近年、高屈折率プラスチック材料に対する要望が高くなってきている。特に、高屈折率プラスチック材料の光学用物品への進出は著しく、液晶ディスプレイ用パネル、カラーフィルター、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、 TFT用のプリズムレンズシート、非球面レンズ、光ディスク、ホログラム、光ファイバー、光道波路等への応用検討が盛んに行われている。
【0003】
有機化合物の屈折率を高くする方法としては、分子構造中にハロゲン原子(フッ素を除く。)や硫黄原子を導入することが有用であることは既に良く知られている。たとえば、ハロゲン原子の有する高い固有屈折率を利用し、ビフェニル骨格にハロゲン原子を導入した高屈折率重合体が報告されている(特許文献1)。しかし、ハロゲン化によって、耐光性が著しく劣化し、また、高比重であるという欠点があった。
又、ハロゲン以外に高い固有屈折率を示す硫黄原子を有する単量体組成物も報告されている(特許文献2)。しかし、これらは高い屈折率、優れた耐衝撃性を有するものの、得られたポリマーの耐光性が著しく劣り、また硫黄特有の不快臭が問題となる欠点があった。
【0004】
一方、芳香族骨格を有するアクリレート化合物の重合物は脂環式アクリレートの重合物に比較し、屈折率が高いことが知られており、高屈折率の重合物を得るための原料として、例えばフェニル基を有するフェノキシエチルアクリレート化合物について報告例がある(特許文献3)。これら芳香族骨格を有するアクリレート化合物は、軽くて透明性に優れ、バランスの良い高屈折率材料となる(特許文献4など)。導入する芳香族環としては、ベンゼン環より、ビフェニル環がより高屈折率となる。そして、ナフタレン骨格を有するアクリレートについても高屈折率化合物としていくつか報告例がある(特許文献5、6)。また、さらに縮合度の高い環あるいはさらに多環式の環を導入することにより、さらに、高屈折率の材となることが知られており、フルオレン骨格等の導入(特許文献7)やアントラセン骨格の導入(特許文献8)が検討されている。
【0005】
また、アントラセン骨格にエチレンオキサイド結合を介してアクリレート基を結合させた化合物が開示されており、その重合体が高屈折率を有することが示されている(特許文献9)。
【0006】
しかしながら、アントラセン基やフルオレン基の導入により比較的高い屈折率をもつポリマーが得られるが、フルオレン基を導入した場合は、紫外領域に吸収があり、光照射により着色しやすくなり、耐光性に問題が出てくる。またアントラセン基を導入した場合はアントラセン基が蛍光を発するため、光学材料分野での適用は困難である等の問題がある。
【0007】
よって、高屈折率を有する芳香族多環化合物であり、アントラセン基やフルオレノン基にみられるような紫外域の吸収や蛍光の問題が無い透明性にすぐれた化合物基を持つ重合可能なモノマーの開発が望まれている。
【0008】
一方、本発明の化合物とは構造が異なるが、類似の1,4−ジヒドロアントラセン骨格を持つ化合物については、1,4−ジヒドロアントラセン骨格の9,10位のヒドロキシ基にアクリレート基がついたものもしくはエチレンオキサイドを介在してアクリレート基がついたものが近年報告されている。しかし、これらの化合物については、難燃性ポリマー原料あるいは光重合増感剤としての用途は開示されているが、それらの屈折率については触れられておらず、高屈折重合体の原料として有用であることの記載はない(特許文献10、11)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平05−170702号公報
【特許文献2】特開2002−20433号公報
【特許文献3】特表2003−144538号公報
【特許文献4】特開2003−064296号公報
【特許文献5】特開2001−276587号公報
【特許文献6】特開2008−81682号公報
【特許文献7】特開2004−083855号公報
【特許文献8】特開2006−312709号公報
【特許文献9】特開2009−40811号公報
【特許文献10】特開2008−001637公報
【特許文献11】特開2008−169156公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の解決しようとする課題は、1,4−ジヒドロアントラセン骨格を有し、かつラジカル重合性基を有する高屈折率アクリレート化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するため、1,4−ジヒドロアントラセン化合物の構造と屈折率について鋭意検討した結果、下記一般式(1)に示される1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物が、ラジカル重合性基であるアクリル基を有し、かつ高い屈折率を示すことを見いだし、本発明を完成させた。
【0012】
即ち、本発明は、以下に記載の骨子を要旨とするものである。
【0013】
本発明の第一の要旨は、下記一般式(1)で示される新規な1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物に存する。
【0014】
【化1】

【0015】
一般式(1)において、Z及びZのいずれか一方は水素原子を示し他方は(メタ)アクリロイル基を示し、Z及びZのいずれか一方は水素原子を示し他方は(メタ)アクリロイル基を示し、Rは水素原子またはメチル基を示し、X及びYは同一であっても異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基のいずれかを示す。
【0016】
本発明の第2の要旨は、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物を(メタ)アクリル酸と反応させることよりなる上記一般式(1)で示される1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物の製造方法に存する。
【0017】
本発明の第3の要旨は、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物を(メタ)アクリル酸と反応させる際、4級オニウム塩を触媒として用いることよりなる上記一般式(1)で示される1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物の製造方法に存する。
【0018】
本発明の記述において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル又はメタクリロイルを表し、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを表す。
【発明の効果】
【0019】
本発明の1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物は新規な化合物であり、重合性基を有し、かつ高い屈折率をしめす工業的に有用な化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物は、下記一般式(1)に記載の構造を有する新規な化合物で、一般式(1)において、Z及びZのいずれか一方は水素原子を示し他方は(メタ)アクリロイル基を示し、Z及びZのいずれか一方は水素原子を示し他方は(メタ)アクリロイル基を示し、Rは水素原子またはメチル基を示し、X及びYは同一であっても異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基のいずれかを示す。
【0021】
【化2】

【0022】
一般式(1)に示す1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物は、下記の異性体が存在する。すなわち、Z及びZが(メタ)アクリロイル基であり、かつ、Z及びZが水素原子である場合が下記一般式(2)で表される1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物である。
【0023】
【化3】

【0024】
一般式(2)において、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、X及びYで表す置換基の種類は一般式(1)の場合と同じである。
【0025】
さらに、Z及びZが(メタ)アクリロイル基であり、Z及びZが水素原子である場合は下記一般式(3)で表される1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物である。
【0026】
【化4】

【0027】
一般式(3)において、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、X及びYで表す置換基の種類は一般式(1)の場合と同じである。
【0028】
またさらに、Z及びZが水素原子であり、かつ、Z及びZが(メタ)アクリロイル基である場合は下記一般式(4)で表される1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物である。
【0029】
【化5】

【0030】
一般式(4)において、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、X及びYで表す置換基の種類は一般式(1)の場合と同じである。
【0031】
一般式(1)乃至一般式(4)に於いて、X及びYで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、アミル基、2-エチルヘキシル基、4−メチルペンチル、4−メチル−3−ペンテニル基等が挙げられ、X及びYで表されるハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、X及びYで表されるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基,n―プロポキシ基,n−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられ、X及びYで表されるアリールオキシ基としては、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、o−トリルオキシ基、ナフチルオキシ等が挙げられ、X及びYで表されるアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基,ブチルチオ基、ヘキシルチオ基等が挙げられ、X及びYで表されるアリールチオ基としては、フェニルチオ基、o―トリルチオ基、m−トリルチオ基、p−トリルチオ基、p−ヒドロキシフェニルチオ基等が挙げられる。
【0032】
一般式(1)で表される1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物としては、例えば、次のものが挙げられる。すなわち、一般式(2)で表される1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、一般式(3)で表される1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、一般式(4)で表される1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル等である。
【0033】
更に、上記1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物の1,4−ジヒドロアントラセン骨格に、アルキル基が置換した化合物としては、2−メチル−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−メチル−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−メチル−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−メチル−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−メチル−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−メチル−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−エチル−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−エチル−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−エチル−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−エチル−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−エチル−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−エチル−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−(t−ブチル)−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−(t−ブチル)−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−(t−ブチル)−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−(t−ブチル)−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−(t−ブチル)−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−(t−ブチル)−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル等が挙げられる。
【0034】
更に、上記1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物の1,4−ジヒドロアントラセン骨格に、ハロゲン原子が置換した化合物としては、2−クロロ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−クロロ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−クロロ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−クロロ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−クロロ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−クロロ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−フルオロ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−フルオロ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−フルオロ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−フルオロ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−フルオロ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−フルオロ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−ブロモ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−ブロモ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−ブロモ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−ブロモ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−ブロモ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−ブロモ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2,6−ジクロロ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2,6−ジクロロ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2,6−ジクロロ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2,6−ジクロロ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2,6−ジクロロ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2,6−ジクロロ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル等が挙げられる。
【0035】
更に、上記1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物の1,4−ジヒドロアントラセン骨格に、アルコキシ基が置換した化合物としては、2−メトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−メトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−メトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−メトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−メトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)アントラセン、2−メトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−エトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−エトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−エトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−エトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−エトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−エトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2,6−ジメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2,6−ジメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2,6−ジメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2,6−ジメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2,6−ジメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2,6−ジメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル等が挙げられる。
【0036】
更に、上記1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物の1,4−ジヒドロアントラセン骨格に、アリールオキシ基が置換した化合物としては、2−フェノキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−フェノキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−フェノキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−フェノキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−フェノキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−フェノキシ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル等が挙げられる。
【0037】
更に、上記1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物の1,4−ジヒドロアントラセン骨格に、アルキルチオ基が置換した化合物としては、2−メチルチオ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−メチルチオ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−メチルチオ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−メチルチオ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−メチルチオ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−メチルチオ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−エチルチオ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−エチルチオ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−エチルチオ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−エチルチオ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−エチルチオ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−エチルチオ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル等が挙げられる。
【0038】
更に、上記1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物の1,4−ジヒドロアントラセン骨格に、アリールチオ基が置換した化合物としては、2−フェニルチオ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−フェニルチオ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、2−フェニルチオ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−フェニルチオ−1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−フェニルチオ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、2−フェニルチオ−1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル等が挙げられる。
【0039】
上記例示した1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物の中では、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル(下記構造式(5)の化合物)、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル(下記構造式(6)の化合物)が、合成が容易な点から好ましい。
【0040】
【化6】

【0041】
【化7】

【0042】
[製造方法]
一般式(1)に示す、本発明の1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物は、一般式(8)で表される9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセン化合物を塩基性化合物の存在下、エピハロヒドリンと反応させて一般式(7)で表される1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物となす第一反応と、第一反応で得られた1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物をさらに、アクリル酸又はメタクリル酸と反応させる第二反応より得ることが出来る。
【0043】
【化7】

【0044】
第一反応において原料となる9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセン化合物としては、9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、2−メチル−9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、2−エチル−9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、2−(t−ブチル)−9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、2−クロロ−9,10−ジメトキシアントラセン、2−フルオロ−9,10−ジメトキシアントラセン、2−ブロモ−9,10−ジメトキシアントラセン、2,6−ジクロロ−9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、2−メトキシ−9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、2−エトキシ−9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、2−フェノキキシ−9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、2−メチルチオ−9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、2−エチルチオ−9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、2−フェニルチオ−9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセン等が挙げられる。
【0045】
エピハロヒドリン化合物としては、例えば、エピクロロヒドリン、2−メチルエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、2−メチルエピブロモヒドリン等が挙げられる。エピハロヒドリン化合物は9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセン化合物に対して、2モル倍から10モル倍添加する。より好ましくは2.0モル倍から7モル倍添加する。2モル倍未満では、未反応の9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセン化合物が残留し好ましくない。また、エピハロヒドリンの添加量が過剰な場合、例えば、10モル倍を越えて添加した場合は、生成物の純度が低下し、同様に好ましくない。
【0046】
塩基性化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。塩基性化合物の添加量は9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセン化合物対して2倍モルから3倍モルが望ましい。反応は通常溶媒の存在下行われる。使用する溶媒としては、水、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、エチレングリコール、ジメトキシエタノール、等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジクロルメタン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒が用いられる。
【0047】
反応温度は、40℃以上、120℃以下が望ましい。40℃未満では反応が遅く、120℃を超える温度では副反応による副生物が増加するため好ましくない。反応時間は反応温度によるが、通常0.5時間から2時間である。
【0048】
このようにして得た1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物中には、副生物としてアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物がかなりの量含まれている場合がある。これは空気中の酸素によって、目的物が酸化されたためと考えられる。
【0049】
この副生物は目的物である1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物と種々の溶媒に対する溶解度が似通っているため、通常の再結晶操作では、ほとんど除くことができない。この除去方法について鋭意検討した結果、この1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物と副生物であるアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物の混合物に、無水マレイン酸のようなジエンを添加して反応を行うと、アントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物のみが無水マレイン酸とディールス・アルダー反応を起こして付加体を形成し種々の溶媒に対する溶解度が変化し、従って両者の溶解度が大きく異なる結果、再結晶精製が可能になることを見出した。この操作によって高純度の1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物の精製が可能になる。この場合のジエン成分としては、無水マレイン酸以外に次の化合物が挙げられる。例えば、2−メチル無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、N−フェニルマレイミド、N−トリルマレイミド、アセチレンジカルボン酸、アセチレンジカルボン酸ジメチル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、ベンゾキノン、1,4−ナフトキノン、アクロレイン等である。ジエン成分との反応を促進するために、触媒を使用することが反応速度を上げるために有効である。触媒としては、例えば三フッ化ホウ素エチルエーテルコンプレクスが挙げられる。
【0050】
このようにして、第一反応で得られた1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物をアクリル酸またはメタクリル酸と反応させる第二反応により、一般式(1)に示す1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物となす事が出来る。
【0051】
一般的に、グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の付加反応においては、塩基性触媒が用いられる。用いられる触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジブチルアミンなどの有機塩基が知られている。また特開昭59−70642号公報にグリシジルフェノキシフェニルエーテルと(メタ)アクリル酸の付加反応において4級アンモニウム塩が触媒効果を持つことが示されている。
【0052】
本反応に用いられる1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物の(メタ)アクリル酸による付加反応におけるこれら触媒の効果について鋭意検討した結果、活性及び選択性の両面から、4級アンモニウム塩及び4級ホスホニウム塩が本反応に適していることを見いだした。4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド等が挙げられ、4級ホスホニウム塩としては、トリブチルメチルホスホニウムアイオダイド、トリブチルオクチルホスホニウムブロマイド、トリブチルヘキサデイシルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
【0053】
用いられる4級アンモニウム塩及び/又は4級ホスオニウム塩の量は、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物に対して0.3モル%以上、30モル%以下が好ましい。より好ましくは1モル%以上、10モル%以下である。0.3モル未満であれば、反応速度が遅く反応時間がかかりすぎ、30モル%を超えると生成物の純度が低くなり、いずれも好ましくない。
【0054】
1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物に対する(メタ)アクリル酸の付加反応において用いられる溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等などのケトン系溶媒、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒など各種の溶媒が用いられる。
【0055】
1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物に対する(メタ)アクリル酸の添加量は2モル倍以上5モル倍以下が好ましい。より好ましくは2.4モル倍以上4モル倍以下である。2モル倍未満であれば、未反応の1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物が残り、また、5モル倍を超えると副生物が生成しやすくなり、いずれも好ましくない。
【0056】
反応温度は50℃から150℃の間で行うのが好ましい。より好ましくは70℃から120℃の範囲である。50℃未満では反応時間がかかりすぎ、また、150℃を超えると(メタ)アクリル酸の重合が進み、いずれも好ましくない。
【0057】
反応は、窒素雰囲気下で実施することが好ましい。空気雰囲気下では、反応液が着色しやすく、生成物の色調が悪化するので好ましくない。
【0058】
当該反応において、(メタ)アクリル酸又は生成物が重合することを防止するために重合禁止剤を存在させてもよい。重合禁止剤としては、4−メトキシフェノール、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)等が用いられる。重合禁止剤の添加量としては、(メタ)アクリル酸に対して0.05〜5重量%添加するのが好ましい。
【0059】
反応終了後、酢酸エチルなどの抽出溶媒を加えた後、飽和重炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄することで、過剰に用いた(メタ)アクリル酸を除去する。次いで水で洗浄後、溶媒を留去することで、一般式(2)乃至一般式(4)の3種の異性体混合物として高純度の目的物が得られる。
【0060】
得られた異性体混合物は、再結晶又はシリカゲルカラムクロマトグラフィ等による分離精製により、それぞれを単離することができる。これらの構造異性体は、いずれも高屈折率の1,4−ジヒドロアントラセン骨格を有しており、かつラジカル重合性基を有しているので、それぞれを単独の化合物とし単離したものでも、あるいはこれらの構造異性体の混合物のままでも、高屈折率重合物を合成する原料とすることができる。
【0061】
得られた化合物の同定は、赤外スペクトル、マススペクトル、H−NMRスペクトルを用いて行い、これらの化合物が一般式(1)に示す1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物であることを確認した。
【0062】
下記の実施例により本発明を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0063】
生成物の確認は下記の機器による測定により行った。
(1)融点:ゲレンキャンプ社製の融点測定装置、型式MFB−595(JIS K0064に準拠)
(2)赤外線(IR)分光光度計:日本分光社製、型式IR−810
(3)核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式GSX FT NMR Spectorometer
(4)Massスペクトル:島津製作所社製、質量分析計、型式GCMS−QP5000
【実施例1】
【0064】
<9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセンとエピクロロヒドリンとの反応による1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテルの合成>
温度計、攪拌機つきの300mlの三口フラスコにエピクロロヒドリン39.4g(0.43モル)、9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセン15.1g(0.071モル)、トルエン15g、メタノール25g加え、次いで苛性ソーダ8.19g(0.21モル)を水15gに溶解した溶液を液温を60℃に保ちながら、1時間かけて滴下した。滴下後さらに、0.5時間加熱し、ついで、有機層を水30gで水洗した。有機層中のエピクロロヒドリンを減圧濃縮し、有機層の容量を1/2まで落としたところで、メチルイソブチルケトン35g、苛性ソーダ1.4gを水2gに溶かした溶液を加え、バス温70℃で1時間加熱した。その後、有機層を水10gで水洗いして水酸化ナトリウムを除き、減圧濃縮してメチルイソブチルケトンを留去して、反応液を1/2に減容させた。
【0065】
この濃縮液に、メタノール25g、水12gの混合液を加え、良くリスラリーし、吸引ろ過し、得られた結晶をメタノールでロート上洗いして、そののち乾燥した。この操作により、薄黄色の結晶が19.1g得られた。このもののIR、H−NMR分析より1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテルであることが明らかとなった。原料の9,10−ジヒドロキシ−1,4−ジヒドロアントラセンに対する単離収率は83モル%であった。
【0066】
・融点 116℃
・IR(KBr、cm−1):1594,1392,1370,1322,1262,1063,1008,910,858,778,690.
H−NMR(CDCl,270MHz):δ=2.79(dd,J=6Hz,J=4Hz,2H),2.93(dd、J=5Hz,J=2.5Hz,2H),3.43−3.54(m,2H),3.57(s,4H),3.89(dd,J=8Hz,J=3Hz,2H),4.24(dd,J=9Hz,J=2Hz,2H),5.01(s,2H),7.42−7.52(m,2H),8.02−8.13(m,2H).
【実施例2】
【0067】
<1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテルの合成(構造式(5))>
窒素気流下、温度計、冷却器付きの300ml三口フラスコに、実施例1と同様の方法で合成した1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル8.0g(24.7ミリモル)とアクリル酸4.44g(61.1ミリモル)、触媒としてテトラブチルアンモニウムブロマイド600mg、重合禁止剤として4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル、フリーラジカル(以下、TEMPOと略す)8mgを仕込み、溶媒としてメチルイソブチルケトン60mlを加えた。この原料組成物を反応温度110℃に保って3.0時間反応を行った。反応液の一部をサンプリングし、液体クロマトグラフィーで分析し、原料の1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテルが完全に消費されていることを確認し、反応を終了した。反応液を室温まで冷却し、抽出溶媒として酢酸エチルを30ml加え、この有機層を飽和重曹水で洗浄し、過剰のアクリル酸を除いた。次いで水で洗浄後、溶媒を減圧溜去すると、灰白色の固体10.6gが得られた。
【0068】
液体クロマトグラフィーで分析したところ、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物の異性体と思われる3本のピーク、A1、B1、C1が検出された。この3本のピークを合わせた純度は94.4%(ピーク面積比規準、以下同じ)であった。また異性体の組成は、A1が4.2%、B1が34.3%、C1が61.5%であった。
【0069】
<異性体混合物のカラムクロマトグラフィーによる分離精製と確認>
上記の異性体混合物1.1gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分離精製した。溶離液として、酢酸エチル/ヘキサン(容量比、1.0/1.2)を用いた。溶出液を処理し、質量分析、IR及びH−NMRで分析したところ、溶出順位の最も早い成分は最も含有割合の多い異性体C1であり、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテルであること、また二番目の溶出成分は、次に含有割合が多い異性体B1であり、1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(2−アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシプロピル)エーテルであることが分かった。最も遅い成分は、量が少なくてスペクトルをとれなかったが最も含有割合が少ない異性体A1であり、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(2−アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシプロピル)エーテルと推測した。
【0070】
<分析結果及びその物理化学的性質>
1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル(C1)
・白色固体
・融点:138.5〜141.4℃
・質量分析:(M)468
・IRスペクトル(KBr,cm−1):3430,3040,2940,2880,1725,1640,1590,1455,1415,1358,1295,1195,1180,1120,1065,990,810,760
H−NMRスペクトル(CDCl,270MHz): δ=2.91(d,2H),3.50(s,4H),3.92−4.07(m,4H),4.34−4.56(m,6H),5.85−6.02(m,4H),6.21(dd,2H),6.48(d,2H),7.40−7.48(m,2H),7.97−8.08(m,2H),
・屈折率(n): 1.587
【0071】
<分析結果及びその物理化学的性質>
1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(2−アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシプロピル)エーテル (B1)
・淡黄色液体
・質量分析:(M)468
・IRスペクトル(cm−1):3450,3040,2930,2860,1723,1710,1640,1590,1455,1410,1358,1295,1195,1065,982,810,760
H−NMRスペクトル(CDCl,270MHz):δ=2.27−2.41(m,1H),2.94−3.08(m,1H),3.50(s,4H),4.00(d,2H),4.08−4.20(m,4H),4.33−4.56(m,3H),5.30−5.45(m,1H),5.82−6.00(m,4H),6.15−6.32(m,2H),6.45−6.60(m,2H),7.37−7.49(m,2H),7.95−8.08(m,2H).
【0072】
<異性体混合物(灰白色固体)の液体クロマトグラフィー質量分析>
シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製した上記2種の異性体に相当する液体クロマトグラム上の2本のピークはともにMとして468を示したが、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(2−アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシプロピル)エーテルと推測していた最小量の異性体(A1)も同じMが468を示し、この推測が正しいことを確認した。また、混合物のH−NMR及びIRスペクトルはこれら異性体の混合物として矛盾しない結果であった。
【0073】
上記の異性体混合物を再結晶してほぼ優位な異性体C1のみからなる目的物を得ることもできる。すなわち、粗生成物をアセトン30ml、水19mlの混合溶媒から再結晶すると、淡黄色結晶4.36gが得られる。当該結晶を液体クロマトグラフィーで分析したところ、異性体を合わせた純度は96.2%であった。また異性体の比はA1が0.4%、B1が11.2%、C1が88.4%であり、上記分析結果よりこのものは、優位な異性体、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテルが主成分であることが分かった。再結晶体(9.31ミリモル)の原料1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテルに対する収率は38モル%であった。
【実施例3】
【0074】
<1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテルの合成(構造式(6))>
窒素気流下、温度計、冷却器付きの300ml三口フラスコに、実施例1と同様の方法で合成した1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル4.0g(18.8ミリモル)とメタクリル酸3.18g(37.0ミリモル)、触媒としてテトラブチルアンモニウムブロマイド300mg、重合禁止剤としてTEMPO5mgを仕込み、溶媒としてメチルイソブチルケトン30mlを加えた。この原料組成物を反応温度、110℃に保って3.0時間反応を行う。反応液の一部をサンプリングし、液体クロマトグラフィーで分析し、原料の1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテルが完全に消費されていることを確認し、反応を終了した。反応液を室温まで冷却し、抽出溶媒として酢酸エチルを20ml加え、この有機層を飽和重曹水で洗浄し、過剰のメタクリル酸を除く。次いで水で洗浄後、溶媒を減圧溜去すると、黄白色の固体5.9gが得られた。
【0075】
液体クロマトグラフィーで分析したところ、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物の異性体と思われる3本のピーク、A2、B2、C2が検出された。この3本のピークを合わせた純度は91.6%であった。また異性体の組成は、A2が4.8%、B2が33.5%、C2が61.7%であった。
【0076】
<異性体混合物のカラムクロマトグラフィーによる分離精製と確認>
上記の異性体混合物1.8gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分離精製した。溶離液として、酢酸エチル/ヘキサン(容量比、2/3)を用いた。溶出液を処理し、質量分析、IR及びH−NMRで分析したところ、溶出順位の最も早い成分は最も含有割合の多い異性体C2であり、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテルであること、また二番目の溶出成分は、最も含有割合の多い異性体B2であり、1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(2−メタクリロイルオキシ−3−ヒドロキシプロピル)エーテルであることが分かった。最も遅い成分は、量が少なくてスペクトルをとれなかった異性体A2であり、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(2−メタクリロイルオキシ−3−ヒドロキシプロピル)エーテルと推測した。
【0077】
<分析結果及びその物理化学的性質>
1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル(C2)
・白色固体
・融点:136.2〜138.6℃
・質量分析:(M)468
・IRスペクトル:(KBr,cm−1):3400,3040,2970,2940,2870,1725,1640,1595,1455,1398,1356,1340,1320,1165,1105,1065,990,958,810,76
H−NMRスペクトル(CDCl,270MHz):δ=1.99(d,6H),2.94(d,2H),3.50(s,4H),3.97−4.08(m,4H),4.35−4.54(m,6H),5.64(d,2H),5.97(s,2H),6.18(d,2H),7.38−7.48(m,2H),7.97−8.08(m,2H).
・屈折率(n): 1.586
【0078】
<分析結果及びその物理化学的性質>
1,4−ジヒドロアントラセン−9−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−10−(2−メタリロイルオキシ−3−ヒドロキシプロピル)エーテル (B2)
・淡黄色液体
・質量分析:(M)468
・IRスペクトル(cm−1):3450,3040,2960,2940,2880,1720,1640,1590,1455,1356,1335,1320,1300,1170,1070,922,815,770
H−NMRスペクトル(CDCl,270MHz):δ=1.99(d,3H),2.04(d,3H),2.37−2.50(m,1H),3.02(d,1H),3.50(s,4H),3.98−4.25(m,6H),4.32−4.55(m,3H),5.28−5.43(m,1H),5.63(t,1H),5.90(t,1H),5.96(s,2H),6.17(s,1H),6.26(s,1H),7.34−7.46(m,2H),7.94−8.07(m,2H).
【0079】
<異性体混合物(灰白色固体)の液体クロマトグラフィー質量分析>
シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製した上記2種の異性体に相当する液体クロマトグラム上の2本のピークはともにMとして496を示したが、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(2−メタクリロイルオキシ−3−ヒドロキシプロピル)エーテルと推測していた最少量の異性体(A2)も同じMを示し、この推測が正しいことを確認した。また、混合物のH−NMR及びIRスペクトルはこれら異性体の混合物として矛盾しない結果であった。
【0080】
上記の異性体混合物を再結晶してほぼ優位な異性体C2のみからなる目的物を得ることもできる。すなわち、粗生成物をアセトン20ml、水8mlの混合溶媒から再結晶すると、淡灰白色結晶、2.43gが得られる。液体クロマトグラフィーで分析したところ、異性体を合わせた純度は97.8%であった。また異性体の比はA2が0.3%、B2が8.0%、C2が91.7%であり、上記分析結果よりこのものは、優位な異性体、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテルが主成分であることが分かった。再結晶体(4.90ミリモル)の原料1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテルに対する収率は26モル%であった。
【実施例4】
【0081】
<1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテルの合成(構造式(5)) その2>
触媒としてテトラブチルアンモニウムブロマイドの代わりにテトラブチルホスホニウムブロマイドを用いた以外は、実施例2とまったく同じ条件で反応を行った。反応終了後、同様の後処理操作によって灰白色固体5.1gが得られた。液体クロマトグラフィーで分析したところ、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物の異性体と思われる3本のピーク、A2、B2、C2が検出された。この3本のピークを合わせた純度は93.6%であった。また異性体の組成は、A2が4.7%、B2が32.9%、C2が62.4%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるで示される1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物。
【化1】


(一般式(1)において、Z及びZのいずれか一方、又は、Z及びZのいずれか一方が水素原子を示し、他方は(メタ)アクリロイル基を示し、Rは水素原子またはメチル基を示し、X及びYは同一であっても異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基のいずれかを示す。)
【請求項2】
1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物を(メタ)アクリル酸と反応させることよりなる、請求項1に記載の1,4−ジヒドロアントラセン9,10−ジエーテル化合物の製造方法。
【請求項3】
1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジグリシジルエーテル化合物を(メタ)アクリル酸と反応させる際、4級オニウム塩を触媒として用いることよりなる、請求項1に記載の1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジエーテル化合物の製造方法。

【公開番号】特開2010−275236(P2010−275236A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129817(P2009−129817)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000199795)川崎化成工業株式会社 (133)
【Fターム(参考)】