1/2波長板
【課題】複数の1/2波長板を用いるなど部品点数の増加を招くことなく、複数の波長の光源の偏光状態を1/2波長板により制御(変更)できるようにする。
【解決手段】水晶板(第1の水晶部品)101および水晶板(第2の水晶部品)102を備える。水晶板101および水晶板102は、主面が平行な状態に配置されている。水晶板101および水晶板102は、例えば、YカットもしくはXカットの水晶板であり、例えば板厚0.193mmとされている。また、水晶板101および水晶板102は、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°とされている。
【解決手段】水晶板(第1の水晶部品)101および水晶板(第2の水晶部品)102を備える。水晶板101および水晶板102は、主面が平行な状態に配置されている。水晶板101および水晶板102は、例えば、YカットもしくはXカットの水晶板であり、例えば板厚0.193mmとされている。また、水晶板101および水晶板102は、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複屈折性結晶である水晶を用いて直線偏光の入射光の偏光を回転させる機能を有する1/2波長板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、高密度実装基板のビアホールの形成などにレーザ加工装置が用いられている。このようなレーザ加工装置では、例えば、基本波に対して高調波を発生させることで得られる複数の波長のレーザ光を同時に用いることで、様々な加工形状が得られるようにしている(特許文献1,2参照)。また、このレーザ加工においては、よく知られているように、直線偏光のレーザ光の偏光方向を、1/2波長板を用いて制御し、様々な加工を行うようにしている。
【0003】
上述した1/2波長板としては、光出力の高いレーザに耐えられるように、一般には、2枚の水晶板から構成されている。2枚の水晶板の板厚の差により、所望とする波長の光に対応させるようにしている。この1/2波長板は、例えば、2枚の水晶板の各々の主面に平行な光学軸(遅相軸)が互いに90°異なる状態とし、水晶板の主面に垂直に入射する光の偏光方向を、主面に平行な面内で90°回転させるようにしている。また、よく知られているように、水晶板をより高い精度で加工し、2枚の水晶板の光学軸の関係が正確に90°となるようにすることで、対象となる光が透過するときの常光と異常光との位相差が、より180°に近くなるようにしている。
【0004】
【特許文献1】特許第2815240号公報
【特許文献2】特許第3722731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の波長のレーザ光を用いる場合、波長毎に1/2波長板が必要になり、部品点数の増加を招くという問題がある。例えば、3つの波長のレーザ光を用いる場合、2枚の水晶板を貼り合わせた1/2波長板が3個必要となる。このように、複数の波長の光源の偏光状態を1/2波長板により制御しようとする場合、部品点数の増加を招くという問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、複数の1/2波長板を用いるなど部品点数の増加を招くことなく、複数の波長の光源の偏光状態を1/2波長板により制御(変更)できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る1/2波長板は、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°となる水晶板に対応する第1の水晶部品と、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°となる水晶板に対応する第2の水晶部品とを備える。
【0008】
上記1/2波長板において、第1の水晶部品および第2の水晶部品は、互いの遅相軸が41°異なっていればよい。この場合、第1の水晶部品は、波長532nmの光に対する位相差が1217.8°となる水晶板に対応し、第2の水晶部品は、波長532nmの光に対する位相差が1217.8°となる水晶板に対応するものである。
【0009】
また、上記1/2波長板において、第2の水晶部品は、主面に平行な平面内で、第1の水晶部品に対して回転可能とされていてもよい。
【0010】
上記1/2波長板において、第1の水晶部品は、1枚の水晶板から構成されていればよい。また、第2の水晶部品は、板厚の差が第1の水晶部品を構成する水晶板と同じにされた2枚の水晶板から構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°となる水晶板に対応する2つの水晶部品から構成したので、複数の1/2波長板を用いるなど部品点数の増加を招くことなく、複数の波長の光源の偏光状態を1/2波長板により制御(変更)できるようになるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0013】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1における1/2波長板の構成を示す斜視図である。本実施の形態における1/2波長板は、水晶板(第1の水晶部品)101および水晶板(第2の水晶部品)102を備える。また、水晶板101および水晶板102が、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°とされている。例えば、水晶板101および水晶板102は、波長532nmの光に対し、位相差が1217.8°とされている。
【0014】
加えて、本実施の形態における1/2波長板は、水晶板101の遅相軸と水晶板102の遅相軸とが、41°異なっている。また、水晶板101および水晶板102は、例えば、主面が平行な状態に配置されている。なお、水晶板101および水晶板102は、例えば、水晶板101の主面に対し、水晶板102の主面が5°程度傾いた状態に配置してもよい。いずれの場合においても、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°とされた2組の水晶部品から構成されていればよい。
【0015】
水晶板101および水晶板102は、いわゆるYカットもしくはXカットの水晶板を用いればよく、例えば板厚0.193mmとされている。なお、他のカットの水晶板を用いることも可能である。ここで、上記位相差は、XカットおよびYカットの水晶板の板厚に換算すると、0.1925〜0.2057mmとなる。なお、水晶の位相差は、よく知られているように、「位相差=(2π/対象光の波長)×(正常光と異常光の屈折率の差)×板厚」の関係を備えている。従って、水晶板101と水晶板102とは、同じ板厚とされている必要はない。
【0016】
上述した本実施の形態における1/2波長板によれば、図2に示すように、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmの光(レーザ光)に対し、P偏光およびS偏光の間の変換効率(PS変換効率)を100%とすることができる。言い換えると、本実施の形態における1/2波長板によれば、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光の偏光方向を、90°回転させることができる。このように、本実施の形態によれば、複数の波長の光源の偏光状態を1/2波長板により制御(変更)できる。
【0017】
また、本実施の形態における1/2波長板は、図3に示すように、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1197.3°〜1279.4°で、波長355,532,1064nmのレーザ光に対するPS変換効率が99%以上となる。なお、図3において、実線が波長355nmのレーザ光におけるPS変換効率の変化を示し、一点鎖線が波長532nmのレーザ光におけるPS変換効率の変化を示し、点線が波長1064nmのレーザ光におけるPS変換効率の変化を示している。これらのことから、水晶板101および水晶板102は、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°とされていればよいことがわかる。
【0018】
なお、上述では、水晶板101および水晶板102より1/2波長板を構成したが、これに限るものではない。例えば、水晶板102を、2枚の水晶板から構成してもよい。2枚の水晶板により、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°となる状態が得られればよい。例えば、2枚の水晶板は、板厚の差が、水晶板102に等しいものとする。また、2枚の水晶板は、光学軸が直交するように配置する。例えば、2枚の水晶板を、光学軸が直交するように貼り合わせて用いればよい。このように2枚の水晶板から構成した水晶部品(第2の水晶部品)を、水晶板101に対して遅相軸が41°異なるように配置して構成すれば、前述同様に、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光の偏光方向を、90°回転させることができる。
【0019】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について図4を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態2における1/2波長板の構成を示す斜視図である。本実施の形態における1/2波長板は、水晶板(第1の水晶部品)101および水晶板(第2の水晶部品)102を備える。また、水晶板101および水晶板102が、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°とされている。例えば、水晶板101および水晶板102は、波長532nmの光に対し、位相差が1217.8°とされている。
【0020】
加えて、本実施の形態における1/2波長板は、水晶板102を、主面に平行な平面内で、水晶板101に対して回転可能としている。また、水晶板101および水晶板102は、例えば、主面が平行な状態に配置されている。なお、水晶板101および水晶板102は、例えば、水晶板101の主面に対し、水晶板102の主面が5°程度傾いた状態に配置してもよい。いずれの場合においても、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°とされた2組の水晶部品から構成されていればよい。
【0021】
水晶板101および水晶板102は、いわゆるYカットもしくはXカットの水晶板であり、例えば板厚0.193mmとされている。また、水晶板101および水晶板102は、他のカットの水晶板を用いることも可能である。ここで、上記位相差は、XカットおよびYカットの水晶板の板厚に換算すると、0.1925〜0.2057mmとなる。
【0022】
このように構成した本実施の形態による1/2波長板によれば、水晶板102を回転させることで、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光に対するPS変換効率を、0〜100%の範囲で可変させることができる。言い換えると、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光の偏光方向を、0〜90°の範囲で任意の角度に回転させることができる。
【0023】
従って、例えば、本実施の形態における1/2波長板を透過したレーザ光を、偏光ビームスプリッタ(PBS)401を透過させる構成とすれば、水晶板101に対する水晶板102の回転角度を変化させることで、PBS401を直進するレーザ光の強度を可変させることができる。
【0024】
例えば、入射する波長355nm,波長532nm,および波長1064nmの各々のレーザ光の偏光方向(P偏光)に対し、水晶板101の遅相軸を24〜26°または64〜66°となるように配置し、また、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸を41°回転させておく。この状態では、水晶板101および水晶板102よりなる1/2波長板を透過するレーザ光は、変換効率約100%でS偏光とされる。この結果、PBS401に入射したレーザ光は、直進することなく、垂直な方向に進路が変更される。従って、PBS401を直進するレーザ光の強度は0となる。
【0025】
一方、レーザ光の偏光方向(P偏光)に対し、水晶板101の遅相軸を24〜26°または64〜66°となるように配置し、また、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸を90°の関係としておく。この状態では、水晶板101および水晶板102よりなる1/2波長板は、光学軸が直交関係であるため1/2波長板の機能がなくなり、透過するレーザ光は、P偏光のままとされる。この結果、PBS401に入射したレーザ光は、ほぼ全てがPBS401を直進することになる。従って、PBS401を直進するレーザ光の強度は最大(100%)となる。
【0026】
次に、上述した水晶板101の遅相軸と水晶板102の遅相軸との角度と、PS変換効率との関係について説明する。以下では、本実施の形態における1/2波長板の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、各波長のレーザ光に対するPS変換効率との関係を示す図5〜図13を用いて説明する。
【0027】
まず、図5は、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1197.3°であり、入射するレーザ光に対して水晶板101の遅相軸を20°としたものである。なおこれは、入射方向から見て反時計回りに回転させた角度である。また、図5では、横軸の回転角が「0」は、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸が70°回転している状態である。なおこれは、入射方向から見て時計回りに回転させた角度である。
【0028】
次に、図6は、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1217.8°であり、入射するレーザ光に対して水晶板101の遅相軸を20°(反時計回り)としたものである。また、図6では、横軸の回転角が「0」は、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸が70°(時計回り)回転している状態である。
【0029】
次に、図7は、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1279.4°であり、入射するレーザ光に対して水晶板101の遅相軸を20°(反時計回り)としたものである。また、図7では、横軸の回転角が「0」は、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸が70°(時計回り)回転している状態である。
【0030】
次に、図8は、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1197.3°であり、入射するレーザ光に対して水晶板101の遅相軸を25°(反時計回り)としたものである。また、図8では、横軸の回転角が「0」は、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸が65°(時計回り)回転している状態である。
【0031】
次に、図9は、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1217.8°であり、入射するレーザ光に対して水晶板101の遅相軸を25°(反時計回り)としたものである。また、図9では、横軸の回転角が「0」は、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸が65°(時計回り)回転している状態である。
【0032】
次に、図10は、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1279.4°であり、入射するレーザ光に対して水晶板101の遅相軸を25°(反時計回り)としたものである。また、図10では、横軸の回転角が「0」は、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸が65°(時計回り)回転している状態である。
【0033】
次に、図11は、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1197.3°であり、入射するレーザ光に対して水晶板101の遅相軸を30°(反時計回り)としたものである。また、図11では、横軸の回転角が「0」は、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸が60°(時計回り)回転している状態である。
【0034】
次に、図12は、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1217.8°であり、入射するレーザ光に対して水晶板101の遅相軸を30°(反時計回り)としたものである。また、図12では、横軸の回転角が「0」は、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸が60°(時計回り)回転している状態である。
【0035】
次に、図13は、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1279.4°であり、入射するレーザ光に対して水晶板101の遅相軸を30°(反時計回り)としたものである。また、図13では、横軸の回転角が「0」は、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸が60°(時計回り)回転している状態である。
【0036】
以上の結果からわかるように、いずれの波長に対しても、水晶板101の遅相軸と水晶板102の遅相軸との角度に対するPS変換効率が、初期状態より最大値が得られる範囲までは、ほぼ同様に変化している。また、全てにおいて、PS変換効率を0〜100%の範囲で変化させることができている。特に、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差を1217.8°としたものは、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmに対して同じ状態となっている。また、入射側となる水晶板101の遅相軸を、入射光に対して変化させても、PS変換効率を0〜100%の範囲で変化させることができている。
【0037】
このように、本実施の形態によれば、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光に対するPS変換効率を0〜100%の範囲で変化させることができる。言い換えると、0〜90°の範囲で、各波長に対して同様に偏光方向を回転させることができる。なお、これらのことは、水晶板101および水晶板102を、各々の主面が平行な状態に配置して相対的に回転させることで得られるものであることはいうまでもない。例えば、入射側の水晶板101を固定し、これに対して出射側の水晶板102を回転させるようにしてもよい。また、出射側の水晶板102を固定し、これに対して入射側の水晶板101を回転させるようにしてもよい。
【0038】
また、PS変換効率が100%となる条件、言い換えると偏光の方向を90°回転させることができる条件は、図中の回転角が49°の場合であり、水晶板101の遅相軸と水晶板102の遅相軸とが41°(反時計回り)となる。これは、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差を1217.8°とした場合である。従って、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差を1217.8°とし、水晶板101の遅相軸と水晶板102の遅相軸とが41°異なる状態とすれば、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光の偏光方向を、90°回転させることができる。
【0039】
なお、本実施の形態において、PBS401は、必要なものではない。本実施の形態における1/2波長板は、水晶板102を水晶板101に対して回転させることで、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光の偏光方向を、0〜90°の範囲で任意の角度に回転させることできるところに特徴がある。例えば、レーザ加工においては、加工方向と照射するレーザの偏光方向との関係が重要となる。このため、加工方向を変更する場合、照射するレーザの偏光方向も変更させる必要がある。
【0040】
このような加工において、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光を利用する場合、一般には、各波長に対応させて、各々1/2波長板を用いることになり、部品点数の増加を招くことになる。一方、本実施の形態によれば、1つの1/2波長板で、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光に対応し、各波長のレーザ光の偏光状態を制御することができる。このため、部品点数の増加が抑制できるようになる。
【0041】
次に、水晶板102を回転させる保持治具について説明する。図14は、水晶板102を回転可能とする保持治具の1例を示す斜視図である。この保持治具は、定盤1401の上に、水晶板101を固定して配置する固定ホルダ1402と、水晶板102を保持する円筒形状のホルダ1403と、ホルダ1403を定盤1401の上に回転可能に支持する回転ガイド1404とを備える。なお、水晶板101および水晶板102のレーザ光入出射面には、反射防止膜を形成しておくとよい。
【0042】
回転ガイド1404は、水晶板102をこの主面が円筒の底面に平行となるように保持している。また、回転ガイド1404は、円筒の底面が、固定ホルダ1402に固定されている水晶板101の主面に平行とされている。また、回転ガイド1404は、ホルダ1403の円筒側面の形状に合わせた曲面のガイド部を備え、ガイド部に沿ってホルダ1403が摺動可能な状態とされている。この摺動により、ホルダ1403は、円筒の円周方向に回転する。このようなホルダ1403の回転により、ホルダ1403に保持されている水晶板102は、水晶板101および水晶板102の主面に平行な平面内で、水晶板101に対して水晶板102を回転させることができる。
【0043】
次に、他の保持治具について説明する。図15は、水晶板102を回転可能とする保持治具の他の例を示す断面図(a)および平面図(b)である。この保持治具は、まず、水晶板101が固定される固定ガイドホルダ1501と、水晶板102が固定される円筒形回転ホルダ1502と、円筒形回転ホルダ1502を固定ガイドホルダ1501の内部に駐止するための抑え蓋1503とを備える。
【0044】
図15に示すように、円筒形回転ホルダ1502は、大径部1521と小径部1522とを備える。大径部1521は、小径部1522につながる開口部を有する底部を備えた有底円筒であり、この底部に水晶板102を固定している。円筒形回転ホルダ1502は、大径部1521の外底部の部分で固定ガイドホルダ1501により駐止され、大径部1521が、固定ガイドホルダ1501の内部に収容されている。一方、円筒形回転ホルダ1502の小径部1522は、抑え蓋1503の円形開口部を嵌通して外部に延出している。
【0045】
固定ガイドホルダ1501においては、円筒形回転ホルダ1502の小径部1522の延長部に開口部1501aを備える。また、開口部1501aの箇所において、固定ガイドホルダ1501の内側に、水晶板101を固定している。このようにして固定ガイドホルダ1501に固定された水晶板101と、円筒型回転ホルダ1502に固定された水晶板102とは、各々の主面が平行な状態とされている。また、固定ガイドホルダ1501の内部において、大径部1521の先端部との間にリング1504を備え、円筒型回転ホルダ1502の位置を固定している。
【0046】
固定ガイドホルダ1501,円筒形回転ホルダ1502,抑え蓋1503,およびリング1504は、例えば、アルミニウム、ステンレス,鉄ニッケル合金などの金属材料から構成すればよい。また、フェノール樹脂、ポリアセタール樹脂など、耐熱性に優れたプラスチックを用いるようにしてもよい。また、水晶板101および水晶板102は、例えば、熱硬化性エポキシ接着材、ガラス転移点が600℃以下の低融点ガラス,ろう材などにより接着・固定されている。
【0047】
また、水晶板101と水晶板102とは、対向する面が近設配置され、これらの間にマッチングオイル(屈折率整合剤)1505が狭入されている。言い換えると、水晶板101と水晶板102とは、マッチングオイル1505を介して摺接している。マッチングオイル1505は、水晶と同じ屈折率に調整されている。マッチングオイル1505により、水晶板101を出射して水晶板102に入射する光の減衰を抑制できるようになる。なお、水晶板101のレーザ光入射面および水晶板102のレーザ光出射面には、反射防止膜を形成しておくとよい。
【0048】
円筒型回転ホルダ1502は、大径部1521の外周と固定ガイドホルダ1501の一部内壁との接触面が摺動し、小径部1522の外周と抑え蓋1503の開口部の側面との接触面が摺動し、円周方向に回転可能とされている。この回転により、円筒型回転ホルダ1502に保持されている水晶板102は、水晶板101および水晶板102の主面に平行な平面内で、水晶板101に対して水晶板102を回転させることができる。
【0049】
なお、上述では、水晶板101および水晶板102より1/2波長板を構成したが、これに限るものではない。例えば、水晶板102を、2枚の水晶板から構成してもよい。2枚の水晶板により、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°となる状態が得られればよい。例えば、2枚の水晶板は、板厚の差が、水晶板102に等しいものとする。また、2枚の水晶板は、光学軸が直交するように配置する。例えば、2枚の水晶板を、光学軸が直交するように貼り合わせて用いればよい。このように2枚の水晶板から構成した水晶部品(第2の水晶部品)を、前述したように水晶板101に対して回転させれば、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光の偏光方向を、0〜90°の範囲で任意の角度に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態1における1/2波長板の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1における1/2波長板の光学特性(位相差の波長依存性)を示す特性図である。
【図3】波長532nmの光に対する位相差と、波長355,532,1064nmのレーザ光に対するPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図4】本発明の実施の形態2における1/2波長板の構成を示す斜視図である。
【図5】位相差が1197.3°の水晶板101の遅相軸を入射するレーザ光に対して20°とした場合の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmにおけるPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図6】位相差が1217.8°の水晶板101の遅相軸を入射するレーザ光に対して20°とした場合の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmにおけるPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図7】位相差が1279.4°の水晶板101の遅相軸を入射するレーザ光に対して20°とした場合の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmにおけるPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図8】位相差が1197.3°の水晶板101の遅相軸を入射するレーザ光に対して25°とした場合の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmにおけるPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図9】位相差が1217.8°の水晶板101の遅相軸を入射するレーザ光に対して25°とした場合の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmにおけるPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図10】位相差が1279.4°の水晶板101の遅相軸を入射するレーザ光に対して25°とした場合の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmにおけるPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図11】位相差が1197.3°の水晶板101の遅相軸を入射するレーザ光に対して30°とした場合の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmにおけるPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図12】位相差が1217.8°の水晶板101の遅相軸を入射するレーザ光に対して30°とした場合の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmにおけるPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図13】位相差が1279.4°の水晶板101の遅相軸を入射するレーザ光に対して30°とした場合の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmにおけるPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図14】水晶板102を回転可能とする保持治具の1例を示す斜視図である。
【図15】水晶板102を回転可能とする保持治具の他の例を示す断面図(a)および平面図(b)である。
【符号の説明】
【0051】
101…水晶板(第1の水晶部品)、102…水晶板(第2の水晶部品)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複屈折性結晶である水晶を用いて直線偏光の入射光の偏光を回転させる機能を有する1/2波長板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、高密度実装基板のビアホールの形成などにレーザ加工装置が用いられている。このようなレーザ加工装置では、例えば、基本波に対して高調波を発生させることで得られる複数の波長のレーザ光を同時に用いることで、様々な加工形状が得られるようにしている(特許文献1,2参照)。また、このレーザ加工においては、よく知られているように、直線偏光のレーザ光の偏光方向を、1/2波長板を用いて制御し、様々な加工を行うようにしている。
【0003】
上述した1/2波長板としては、光出力の高いレーザに耐えられるように、一般には、2枚の水晶板から構成されている。2枚の水晶板の板厚の差により、所望とする波長の光に対応させるようにしている。この1/2波長板は、例えば、2枚の水晶板の各々の主面に平行な光学軸(遅相軸)が互いに90°異なる状態とし、水晶板の主面に垂直に入射する光の偏光方向を、主面に平行な面内で90°回転させるようにしている。また、よく知られているように、水晶板をより高い精度で加工し、2枚の水晶板の光学軸の関係が正確に90°となるようにすることで、対象となる光が透過するときの常光と異常光との位相差が、より180°に近くなるようにしている。
【0004】
【特許文献1】特許第2815240号公報
【特許文献2】特許第3722731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の波長のレーザ光を用いる場合、波長毎に1/2波長板が必要になり、部品点数の増加を招くという問題がある。例えば、3つの波長のレーザ光を用いる場合、2枚の水晶板を貼り合わせた1/2波長板が3個必要となる。このように、複数の波長の光源の偏光状態を1/2波長板により制御しようとする場合、部品点数の増加を招くという問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、複数の1/2波長板を用いるなど部品点数の増加を招くことなく、複数の波長の光源の偏光状態を1/2波長板により制御(変更)できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る1/2波長板は、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°となる水晶板に対応する第1の水晶部品と、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°となる水晶板に対応する第2の水晶部品とを備える。
【0008】
上記1/2波長板において、第1の水晶部品および第2の水晶部品は、互いの遅相軸が41°異なっていればよい。この場合、第1の水晶部品は、波長532nmの光に対する位相差が1217.8°となる水晶板に対応し、第2の水晶部品は、波長532nmの光に対する位相差が1217.8°となる水晶板に対応するものである。
【0009】
また、上記1/2波長板において、第2の水晶部品は、主面に平行な平面内で、第1の水晶部品に対して回転可能とされていてもよい。
【0010】
上記1/2波長板において、第1の水晶部品は、1枚の水晶板から構成されていればよい。また、第2の水晶部品は、板厚の差が第1の水晶部品を構成する水晶板と同じにされた2枚の水晶板から構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°となる水晶板に対応する2つの水晶部品から構成したので、複数の1/2波長板を用いるなど部品点数の増加を招くことなく、複数の波長の光源の偏光状態を1/2波長板により制御(変更)できるようになるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0013】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1における1/2波長板の構成を示す斜視図である。本実施の形態における1/2波長板は、水晶板(第1の水晶部品)101および水晶板(第2の水晶部品)102を備える。また、水晶板101および水晶板102が、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°とされている。例えば、水晶板101および水晶板102は、波長532nmの光に対し、位相差が1217.8°とされている。
【0014】
加えて、本実施の形態における1/2波長板は、水晶板101の遅相軸と水晶板102の遅相軸とが、41°異なっている。また、水晶板101および水晶板102は、例えば、主面が平行な状態に配置されている。なお、水晶板101および水晶板102は、例えば、水晶板101の主面に対し、水晶板102の主面が5°程度傾いた状態に配置してもよい。いずれの場合においても、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°とされた2組の水晶部品から構成されていればよい。
【0015】
水晶板101および水晶板102は、いわゆるYカットもしくはXカットの水晶板を用いればよく、例えば板厚0.193mmとされている。なお、他のカットの水晶板を用いることも可能である。ここで、上記位相差は、XカットおよびYカットの水晶板の板厚に換算すると、0.1925〜0.2057mmとなる。なお、水晶の位相差は、よく知られているように、「位相差=(2π/対象光の波長)×(正常光と異常光の屈折率の差)×板厚」の関係を備えている。従って、水晶板101と水晶板102とは、同じ板厚とされている必要はない。
【0016】
上述した本実施の形態における1/2波長板によれば、図2に示すように、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmの光(レーザ光)に対し、P偏光およびS偏光の間の変換効率(PS変換効率)を100%とすることができる。言い換えると、本実施の形態における1/2波長板によれば、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光の偏光方向を、90°回転させることができる。このように、本実施の形態によれば、複数の波長の光源の偏光状態を1/2波長板により制御(変更)できる。
【0017】
また、本実施の形態における1/2波長板は、図3に示すように、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1197.3°〜1279.4°で、波長355,532,1064nmのレーザ光に対するPS変換効率が99%以上となる。なお、図3において、実線が波長355nmのレーザ光におけるPS変換効率の変化を示し、一点鎖線が波長532nmのレーザ光におけるPS変換効率の変化を示し、点線が波長1064nmのレーザ光におけるPS変換効率の変化を示している。これらのことから、水晶板101および水晶板102は、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°とされていればよいことがわかる。
【0018】
なお、上述では、水晶板101および水晶板102より1/2波長板を構成したが、これに限るものではない。例えば、水晶板102を、2枚の水晶板から構成してもよい。2枚の水晶板により、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°となる状態が得られればよい。例えば、2枚の水晶板は、板厚の差が、水晶板102に等しいものとする。また、2枚の水晶板は、光学軸が直交するように配置する。例えば、2枚の水晶板を、光学軸が直交するように貼り合わせて用いればよい。このように2枚の水晶板から構成した水晶部品(第2の水晶部品)を、水晶板101に対して遅相軸が41°異なるように配置して構成すれば、前述同様に、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光の偏光方向を、90°回転させることができる。
【0019】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について図4を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態2における1/2波長板の構成を示す斜視図である。本実施の形態における1/2波長板は、水晶板(第1の水晶部品)101および水晶板(第2の水晶部品)102を備える。また、水晶板101および水晶板102が、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°とされている。例えば、水晶板101および水晶板102は、波長532nmの光に対し、位相差が1217.8°とされている。
【0020】
加えて、本実施の形態における1/2波長板は、水晶板102を、主面に平行な平面内で、水晶板101に対して回転可能としている。また、水晶板101および水晶板102は、例えば、主面が平行な状態に配置されている。なお、水晶板101および水晶板102は、例えば、水晶板101の主面に対し、水晶板102の主面が5°程度傾いた状態に配置してもよい。いずれの場合においても、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°とされた2組の水晶部品から構成されていればよい。
【0021】
水晶板101および水晶板102は、いわゆるYカットもしくはXカットの水晶板であり、例えば板厚0.193mmとされている。また、水晶板101および水晶板102は、他のカットの水晶板を用いることも可能である。ここで、上記位相差は、XカットおよびYカットの水晶板の板厚に換算すると、0.1925〜0.2057mmとなる。
【0022】
このように構成した本実施の形態による1/2波長板によれば、水晶板102を回転させることで、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光に対するPS変換効率を、0〜100%の範囲で可変させることができる。言い換えると、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光の偏光方向を、0〜90°の範囲で任意の角度に回転させることができる。
【0023】
従って、例えば、本実施の形態における1/2波長板を透過したレーザ光を、偏光ビームスプリッタ(PBS)401を透過させる構成とすれば、水晶板101に対する水晶板102の回転角度を変化させることで、PBS401を直進するレーザ光の強度を可変させることができる。
【0024】
例えば、入射する波長355nm,波長532nm,および波長1064nmの各々のレーザ光の偏光方向(P偏光)に対し、水晶板101の遅相軸を24〜26°または64〜66°となるように配置し、また、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸を41°回転させておく。この状態では、水晶板101および水晶板102よりなる1/2波長板を透過するレーザ光は、変換効率約100%でS偏光とされる。この結果、PBS401に入射したレーザ光は、直進することなく、垂直な方向に進路が変更される。従って、PBS401を直進するレーザ光の強度は0となる。
【0025】
一方、レーザ光の偏光方向(P偏光)に対し、水晶板101の遅相軸を24〜26°または64〜66°となるように配置し、また、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸を90°の関係としておく。この状態では、水晶板101および水晶板102よりなる1/2波長板は、光学軸が直交関係であるため1/2波長板の機能がなくなり、透過するレーザ光は、P偏光のままとされる。この結果、PBS401に入射したレーザ光は、ほぼ全てがPBS401を直進することになる。従って、PBS401を直進するレーザ光の強度は最大(100%)となる。
【0026】
次に、上述した水晶板101の遅相軸と水晶板102の遅相軸との角度と、PS変換効率との関係について説明する。以下では、本実施の形態における1/2波長板の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、各波長のレーザ光に対するPS変換効率との関係を示す図5〜図13を用いて説明する。
【0027】
まず、図5は、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1197.3°であり、入射するレーザ光に対して水晶板101の遅相軸を20°としたものである。なおこれは、入射方向から見て反時計回りに回転させた角度である。また、図5では、横軸の回転角が「0」は、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸が70°回転している状態である。なおこれは、入射方向から見て時計回りに回転させた角度である。
【0028】
次に、図6は、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1217.8°であり、入射するレーザ光に対して水晶板101の遅相軸を20°(反時計回り)としたものである。また、図6では、横軸の回転角が「0」は、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸が70°(時計回り)回転している状態である。
【0029】
次に、図7は、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1279.4°であり、入射するレーザ光に対して水晶板101の遅相軸を20°(反時計回り)としたものである。また、図7では、横軸の回転角が「0」は、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸が70°(時計回り)回転している状態である。
【0030】
次に、図8は、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1197.3°であり、入射するレーザ光に対して水晶板101の遅相軸を25°(反時計回り)としたものである。また、図8では、横軸の回転角が「0」は、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸が65°(時計回り)回転している状態である。
【0031】
次に、図9は、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1217.8°であり、入射するレーザ光に対して水晶板101の遅相軸を25°(反時計回り)としたものである。また、図9では、横軸の回転角が「0」は、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸が65°(時計回り)回転している状態である。
【0032】
次に、図10は、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1279.4°であり、入射するレーザ光に対して水晶板101の遅相軸を25°(反時計回り)としたものである。また、図10では、横軸の回転角が「0」は、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸が65°(時計回り)回転している状態である。
【0033】
次に、図11は、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1197.3°であり、入射するレーザ光に対して水晶板101の遅相軸を30°(反時計回り)としたものである。また、図11では、横軸の回転角が「0」は、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸が60°(時計回り)回転している状態である。
【0034】
次に、図12は、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1217.8°であり、入射するレーザ光に対して水晶板101の遅相軸を30°(反時計回り)としたものである。また、図12では、横軸の回転角が「0」は、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸が60°(時計回り)回転している状態である。
【0035】
次に、図13は、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差が1279.4°であり、入射するレーザ光に対して水晶板101の遅相軸を30°(反時計回り)としたものである。また、図13では、横軸の回転角が「0」は、水晶板101の遅相軸に対して水晶板102の遅相軸が60°(時計回り)回転している状態である。
【0036】
以上の結果からわかるように、いずれの波長に対しても、水晶板101の遅相軸と水晶板102の遅相軸との角度に対するPS変換効率が、初期状態より最大値が得られる範囲までは、ほぼ同様に変化している。また、全てにおいて、PS変換効率を0〜100%の範囲で変化させることができている。特に、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差を1217.8°としたものは、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmに対して同じ状態となっている。また、入射側となる水晶板101の遅相軸を、入射光に対して変化させても、PS変換効率を0〜100%の範囲で変化させることができている。
【0037】
このように、本実施の形態によれば、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光に対するPS変換効率を0〜100%の範囲で変化させることができる。言い換えると、0〜90°の範囲で、各波長に対して同様に偏光方向を回転させることができる。なお、これらのことは、水晶板101および水晶板102を、各々の主面が平行な状態に配置して相対的に回転させることで得られるものであることはいうまでもない。例えば、入射側の水晶板101を固定し、これに対して出射側の水晶板102を回転させるようにしてもよい。また、出射側の水晶板102を固定し、これに対して入射側の水晶板101を回転させるようにしてもよい。
【0038】
また、PS変換効率が100%となる条件、言い換えると偏光の方向を90°回転させることができる条件は、図中の回転角が49°の場合であり、水晶板101の遅相軸と水晶板102の遅相軸とが41°(反時計回り)となる。これは、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差を1217.8°とした場合である。従って、水晶板101および水晶板102の波長532nmの光に対する位相差を1217.8°とし、水晶板101の遅相軸と水晶板102の遅相軸とが41°異なる状態とすれば、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光の偏光方向を、90°回転させることができる。
【0039】
なお、本実施の形態において、PBS401は、必要なものではない。本実施の形態における1/2波長板は、水晶板102を水晶板101に対して回転させることで、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光の偏光方向を、0〜90°の範囲で任意の角度に回転させることできるところに特徴がある。例えば、レーザ加工においては、加工方向と照射するレーザの偏光方向との関係が重要となる。このため、加工方向を変更する場合、照射するレーザの偏光方向も変更させる必要がある。
【0040】
このような加工において、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光を利用する場合、一般には、各波長に対応させて、各々1/2波長板を用いることになり、部品点数の増加を招くことになる。一方、本実施の形態によれば、1つの1/2波長板で、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光に対応し、各波長のレーザ光の偏光状態を制御することができる。このため、部品点数の増加が抑制できるようになる。
【0041】
次に、水晶板102を回転させる保持治具について説明する。図14は、水晶板102を回転可能とする保持治具の1例を示す斜視図である。この保持治具は、定盤1401の上に、水晶板101を固定して配置する固定ホルダ1402と、水晶板102を保持する円筒形状のホルダ1403と、ホルダ1403を定盤1401の上に回転可能に支持する回転ガイド1404とを備える。なお、水晶板101および水晶板102のレーザ光入出射面には、反射防止膜を形成しておくとよい。
【0042】
回転ガイド1404は、水晶板102をこの主面が円筒の底面に平行となるように保持している。また、回転ガイド1404は、円筒の底面が、固定ホルダ1402に固定されている水晶板101の主面に平行とされている。また、回転ガイド1404は、ホルダ1403の円筒側面の形状に合わせた曲面のガイド部を備え、ガイド部に沿ってホルダ1403が摺動可能な状態とされている。この摺動により、ホルダ1403は、円筒の円周方向に回転する。このようなホルダ1403の回転により、ホルダ1403に保持されている水晶板102は、水晶板101および水晶板102の主面に平行な平面内で、水晶板101に対して水晶板102を回転させることができる。
【0043】
次に、他の保持治具について説明する。図15は、水晶板102を回転可能とする保持治具の他の例を示す断面図(a)および平面図(b)である。この保持治具は、まず、水晶板101が固定される固定ガイドホルダ1501と、水晶板102が固定される円筒形回転ホルダ1502と、円筒形回転ホルダ1502を固定ガイドホルダ1501の内部に駐止するための抑え蓋1503とを備える。
【0044】
図15に示すように、円筒形回転ホルダ1502は、大径部1521と小径部1522とを備える。大径部1521は、小径部1522につながる開口部を有する底部を備えた有底円筒であり、この底部に水晶板102を固定している。円筒形回転ホルダ1502は、大径部1521の外底部の部分で固定ガイドホルダ1501により駐止され、大径部1521が、固定ガイドホルダ1501の内部に収容されている。一方、円筒形回転ホルダ1502の小径部1522は、抑え蓋1503の円形開口部を嵌通して外部に延出している。
【0045】
固定ガイドホルダ1501においては、円筒形回転ホルダ1502の小径部1522の延長部に開口部1501aを備える。また、開口部1501aの箇所において、固定ガイドホルダ1501の内側に、水晶板101を固定している。このようにして固定ガイドホルダ1501に固定された水晶板101と、円筒型回転ホルダ1502に固定された水晶板102とは、各々の主面が平行な状態とされている。また、固定ガイドホルダ1501の内部において、大径部1521の先端部との間にリング1504を備え、円筒型回転ホルダ1502の位置を固定している。
【0046】
固定ガイドホルダ1501,円筒形回転ホルダ1502,抑え蓋1503,およびリング1504は、例えば、アルミニウム、ステンレス,鉄ニッケル合金などの金属材料から構成すればよい。また、フェノール樹脂、ポリアセタール樹脂など、耐熱性に優れたプラスチックを用いるようにしてもよい。また、水晶板101および水晶板102は、例えば、熱硬化性エポキシ接着材、ガラス転移点が600℃以下の低融点ガラス,ろう材などにより接着・固定されている。
【0047】
また、水晶板101と水晶板102とは、対向する面が近設配置され、これらの間にマッチングオイル(屈折率整合剤)1505が狭入されている。言い換えると、水晶板101と水晶板102とは、マッチングオイル1505を介して摺接している。マッチングオイル1505は、水晶と同じ屈折率に調整されている。マッチングオイル1505により、水晶板101を出射して水晶板102に入射する光の減衰を抑制できるようになる。なお、水晶板101のレーザ光入射面および水晶板102のレーザ光出射面には、反射防止膜を形成しておくとよい。
【0048】
円筒型回転ホルダ1502は、大径部1521の外周と固定ガイドホルダ1501の一部内壁との接触面が摺動し、小径部1522の外周と抑え蓋1503の開口部の側面との接触面が摺動し、円周方向に回転可能とされている。この回転により、円筒型回転ホルダ1502に保持されている水晶板102は、水晶板101および水晶板102の主面に平行な平面内で、水晶板101に対して水晶板102を回転させることができる。
【0049】
なお、上述では、水晶板101および水晶板102より1/2波長板を構成したが、これに限るものではない。例えば、水晶板102を、2枚の水晶板から構成してもよい。2枚の水晶板により、波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°となる状態が得られればよい。例えば、2枚の水晶板は、板厚の差が、水晶板102に等しいものとする。また、2枚の水晶板は、光学軸が直交するように配置する。例えば、2枚の水晶板を、光学軸が直交するように貼り合わせて用いればよい。このように2枚の水晶板から構成した水晶部品(第2の水晶部品)を、前述したように水晶板101に対して回転させれば、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmのレーザ光の偏光方向を、0〜90°の範囲で任意の角度に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態1における1/2波長板の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1における1/2波長板の光学特性(位相差の波長依存性)を示す特性図である。
【図3】波長532nmの光に対する位相差と、波長355,532,1064nmのレーザ光に対するPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図4】本発明の実施の形態2における1/2波長板の構成を示す斜視図である。
【図5】位相差が1197.3°の水晶板101の遅相軸を入射するレーザ光に対して20°とした場合の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmにおけるPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図6】位相差が1217.8°の水晶板101の遅相軸を入射するレーザ光に対して20°とした場合の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmにおけるPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図7】位相差が1279.4°の水晶板101の遅相軸を入射するレーザ光に対して20°とした場合の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmにおけるPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図8】位相差が1197.3°の水晶板101の遅相軸を入射するレーザ光に対して25°とした場合の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmにおけるPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図9】位相差が1217.8°の水晶板101の遅相軸を入射するレーザ光に対して25°とした場合の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmにおけるPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図10】位相差が1279.4°の水晶板101の遅相軸を入射するレーザ光に対して25°とした場合の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmにおけるPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図11】位相差が1197.3°の水晶板101の遅相軸を入射するレーザ光に対して30°とした場合の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmにおけるPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図12】位相差が1217.8°の水晶板101の遅相軸を入射するレーザ光に対して30°とした場合の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmにおけるPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図13】位相差が1279.4°の水晶板101の遅相軸を入射するレーザ光に対して30°とした場合の、水晶板101に対する水晶板102の回転角と、波長355nm,波長532nm,および波長1064nmにおけるPS変換効率との関係を示す特性図である。
【図14】水晶板102を回転可能とする保持治具の1例を示す斜視図である。
【図15】水晶板102を回転可能とする保持治具の他の例を示す断面図(a)および平面図(b)である。
【符号の説明】
【0051】
101…水晶板(第1の水晶部品)、102…水晶板(第2の水晶部品)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°となる水晶板に対応する第1の水晶部品と、
波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°となる水晶板に対応する第2の水晶部品と
を備えることを特徴とする1/2波長板。
【請求項2】
請求項1記載の1/2波長板において、
前記第1の水晶部品および前記第2の水晶部品は、互いの遅相軸が41°異なっている
ことを特徴とする1/2波長板。
【請求項3】
請求項2記載の1/2波長板において、
前記第1の水晶部品は、波長532nmの光に対する位相差が1217.8°となる水晶板に対応し、
前記第2の水晶部品は、波長532nmの光に対する位相差が1217.8°となる水晶板に対応する
ことを特徴とする1/2波長板。
【請求項4】
請求項1記載の1/2波長板において、
前記第2の水晶部品は、前記主面に平行な平面内で、前記第1の水晶部品に対して回転可能とされている
ことを特徴とする1/2波長板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の1/2波長板において、
前記第1の水晶部品は、1枚の水晶板から構成されている
ことを特徴とする1/2波長板。
【請求項6】
請求項5記載の1/2波長板において、
前記第2の水晶部品は、板厚の差が前記第1の水晶部品を構成する水晶板と同じにされた2枚の水晶板から構成されている
ことを特徴とする1/2波長板。
【請求項1】
波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°となる水晶板に対応する第1の水晶部品と、
波長532nmの光に対して位相差が1197.3°〜1279.4°となる水晶板に対応する第2の水晶部品と
を備えることを特徴とする1/2波長板。
【請求項2】
請求項1記載の1/2波長板において、
前記第1の水晶部品および前記第2の水晶部品は、互いの遅相軸が41°異なっている
ことを特徴とする1/2波長板。
【請求項3】
請求項2記載の1/2波長板において、
前記第1の水晶部品は、波長532nmの光に対する位相差が1217.8°となる水晶板に対応し、
前記第2の水晶部品は、波長532nmの光に対する位相差が1217.8°となる水晶板に対応する
ことを特徴とする1/2波長板。
【請求項4】
請求項1記載の1/2波長板において、
前記第2の水晶部品は、前記主面に平行な平面内で、前記第1の水晶部品に対して回転可能とされている
ことを特徴とする1/2波長板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の1/2波長板において、
前記第1の水晶部品は、1枚の水晶板から構成されている
ことを特徴とする1/2波長板。
【請求項6】
請求項5記載の1/2波長板において、
前記第2の水晶部品は、板厚の差が前記第1の水晶部品を構成する水晶板と同じにされた2枚の水晶板から構成されている
ことを特徴とする1/2波長板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−128329(P2010−128329A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304770(P2008−304770)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】
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