説明

100℃以下の温度で溶融塗布可能なヨウ素含有ホットメルト粘着剤および該粘着剤を用いた医療用粘着シート製品

【課題】ヨウ素の抗微生物効果を利用しながら、その製造、保存および使用の全ての段階においてヨウ素を粘着剤中に安定に保持することができる、有害な有機溶剤を利用しない、100℃以下の温度で溶融塗布可能なヨウ素含有ホットメルト粘着剤を提供する。
【解決手段】(a)(i)ポリビニルピロリドン−ヨウ素複合体と、(ii)ポリビニルピロリドンを溶解可能な親水性溶媒とを含む、ヨウ素含有親水性ゲル;(b)該ホットメルト粘着剤基剤の全重量を基準として(i)15〜30重量%の飽和型熱可塑性エラストマーからなる合成ゴムと(ii)20〜35重量%の非ヨウ素反応性の粘着付与剤と(iii)35〜50重量%の非ヨウ素反応性の可塑剤とを含む、100℃以下の軟化点を有するホットメルト粘着剤基剤;および(c)界面活性剤を含んでなる、100℃以下の温度で溶融塗布可能なヨウ素含有ホットメルト粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト粘着剤に関し、さらに詳細には、ヨウ素を含有し、100℃以下の温度で溶融及び塗布することができるホットメルト粘着剤、および該粘着剤を用いた外科用ドレープ、サージカルテープ、創傷ドレッシング等の医療用粘着シート製品に関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術時には、手術部位において微生物に対するバリアとしての皮膚が切り開かれ、本来無菌である内部組織が開放されるため、手術部位感染(surgical site infection:SSI)の成立する危険性が非常に高い。したがって、手術部位の周辺の皮膚を含め手術部位の微生物数をできる限り少なくするように消毒する必要がある。しかし、十分に消毒した後も皮膚に残留する微生物が手術時の感染事故を引き起こす場合がある。このような事故を未然に防止するために、「外科用切開用ドレープ」または「インサイズドレープ」(incise drape)と呼ばれる、滅菌された透明の薄い粘着フィルムでできた外科用ドレープが一般に用いられている。インサイズドレープは、手術前に手術部位の周辺の皮膚上に貼り付けられ、切開部位の周辺の皮膚に残留する微生物が切開部位から体内に侵入するのを防止しつつ、ドレープの上からメス等による皮膚の切開を可能にするものである。また、手術後にも、外からの感染を防ぎつつ治癒に最適な環境をつくるために、「創傷ドレッシング」と呼ばれる、薄くて柔軟なフィルムで創傷を被覆することが一般に行われている。
【0003】
米国特許第4,310,509号(特許文献1)、米国特許第5,829,442号(特許文献2)等に記載されているような、抗微生物医療用途のヨウ素含有粘着剤を用いたドレッシングフィルムや外科用ドレープがある。しかしながら、実際には、これらのヨウ素含有粘着剤はトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に溶解または分散されるものである。このような溶剤ベースの粘着剤は、人体や環境への悪影響ならびにコストおよびプロセスに関するある種の問題をかかえている。従って、人体や環境に悪影響を及ぼす有害な有機溶剤を利用しないヨウ素含有粘着剤とその製造方法が望まれていた。
【0004】
さらに、ヨウ素は昇華し易く、沸点も106℃であるので、ヨウ素含有ホットメルト粘着剤を作製し、それを塗布温度が110℃を超えるホットメルトコーターで塗布することは困難であった。ホットメルトコーター(通常約140〜160℃)での塗布を可能とするために275〜350°F(135〜177℃)の温度で安定な抗微生物剤ジヨードメチル−p−トリルスルホンを含有する、米国特許第5,829,442号(特許文献2)に記載されているような、ホットメルト粘着剤組成物も開発されている。しかしながら、この抗微生物の剤抗微生物スペクトルは、広く知られ使用されるヨウ素(I2 またはポリビニルピロリドン−ヨウ素複合体(単に「PVP−ヨウ素複合体」とも称される))のものとは異なり、その抗微生物効果は非常に低い。
【0005】
ヨウ素(I2 またはPVP−ヨウ素複合体)はグラム陽性菌、グラム陰性菌、結核菌、真菌、ウイルスおよびある種の胞子形成菌など広範囲スペクトルの微生物に対して抗微生物活性を示し、非常に有効な抗微生物剤である。このようなヨウ素の抗微生物効果は広く知られており、医療従事者に広く受け入れられている。従って、このようなヨウ素の抗微生物効果を保持しながら、高温でのヨウ素の損失を最小限に抑制して溶融塗布可能なヨウ素含有粘着剤が求められている。
【0006】
100℃以下で軟化塗布できる種々のホットメルト粘着剤が、スイスのコラノ社からEcomelt(登録商標)シリーズとして商業上利用可能である。中でも、Ecomelt(登録商標)M1−225は、ホットメルト粘着剤をベースとし、更に1重量%のヨウ素単体(I2 )を含有させた、ヨウ素含有ホットメルト粘着剤である。ベースのホットメルト粘着剤は、水素添加されたSEBSゴム、ハイドロカーボンレジン、鉱物油とその他の添加剤からなる。ベース粘着剤は100℃以下の温度で溶融塗布でき、ウオームメルト特性を有する。ヨウ素は粘着剤中の鉱物油に溶解するので、室温で保存できる。
【0007】
本発明者はヨウ素含有ホットメルト粘着剤Ecomelt(登録商標)M1−225を利用してインサイズドレープを作製したところ、その初期性能は良好であった。しかしながら、これを保湿袋に入れて49℃−9週(1年相当のエージング)保存後には、インサイズドレープの粘着剤中に溶解しているヨウ素が多量に昇華していることが分かった。このような粘着剤中でヨウ素を長期にわたって安定に保持することができず、この種のヨウ素含有ホットメルト粘着剤を利用したインサイズドレープその他の医療用粘着シート製品の実用化は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,310,509号明細書
【特許文献2】米国特許第5,829,442号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的の一つは、広く知られ使用されるヨウ素の抗微生物効果を利用しながら、その製造、保存および使用の全ての段階においてヨウ素を粘着剤中に安定に保持することができる、有害な有機溶剤を利用しない、100℃以下の温度で溶融塗布可能なヨウ素含有ホットメルト粘着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(a)(i)ポリビニルピロリドン−ヨウ素複合体と、(ii)ポリビニルピロリドンを溶解可能な親水性溶媒とを含む、ヨウ素含有親水性ゲル、(b)該ホットメルト粘着剤基剤の全重量を基準として、(i)15〜30重量%の飽和型熱可塑性エラストマーからなる合成ゴムと、(ii)20〜35重量%の非ヨウ素反応性の粘着付与剤と、(iii)35〜50重量%の非ヨウ素反応性の可塑剤とを含む、100℃以下の軟化点を有するホットメルト粘着剤基剤、および(c)界面活性剤を含んでなる、100℃以下の温度で溶融塗布可能なヨウ素含有ホットメルト粘着剤組成物に関する。
【0011】
本発明はまた、(a)シート基材と、(b)前記シート基材上に塗布された、本発明による前記ヨウ素含有ホットメルト粘着剤組成物とを備えた、医療用粘着シート製品に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヨウ素含有ホットメルト粘着剤は、100℃以下の温度で溶融および塗布することができるため、ヨウ素の昇華による損失を最小限に抑制することができ、また、粘着剤基剤中にエチレン性不飽和結合やアセチレン性不飽和結合を含有する成分を含まないか含むとしても低レベルであるため、ヨウ素の反応による損失および粘着剤の劣化を防止することができる。さらに、本発明のヨウ素含有ホットメルト粘着剤は、界面活性剤によってヨウ素含有親水性ゲルとホットメルト粘着剤基剤とが均一に分散され、相分離することなく安定に存在するため、ヨウ素を粘着剤中に安定に保持することができる。したがって、本発明のヨウ素含有ホットメルト粘着剤組成物は、その製造、保存および使用の全ての段階においてヨウ素を粘着剤中に安定に保持することができる。さらにまた、本発明のヨウ素含有ホットメルト粘着剤は、人体や環境に有害な有機溶剤を含まないか含むとしても低レベル(例えば3%)であり、また好ましくは、皮膚刺激の少ない非イオン性界面活性剤を用いている点でも有利である。
【0013】
上述の本発明のヨウ素含有ホットメルト粘着剤を塗布して製造される医療用粘着シート製品は、その製造および保存の両段階でヨウ素を粘着剤中に安定に保持することができ、長期の保存後でもヨウ素の昇華を最小限に抑制することができる。さらに、本発明のヨウ素含有ホットメルト粘着剤は100℃以下の温度で軟化塗布することができるため、医療用粘着シート製品を製造する際に、熱による損傷を少なくしてシート基材に直接塗布することができる点でも有利である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、有害な有機溶剤を利用しない、100℃以下の温度で溶融塗布可能なヨウ素含有ホットメルト粘着剤、および該粘着剤を用いた医療用粘着シート製品に関する。
【0015】
従来から一般に用いられるホットメルト粘着剤は、通常約140℃〜160℃の温度でホットメルトコーターにより溶融塗布されるタイプのものである。ヨウ素は室温で容易に昇華し、また融点114℃を超えると激しく昇華する。軟化温度および塗布温度が100℃を超える場合には、ヨウ素は容易に昇華し、ヨウ素の損失によりその抗微生物効果が減少するので、好ましくない。
【0016】
ヨウ素はまた、非常に反応性が高く、不飽和官能基、特にエチレン性不飽和結合(>C=C<)やアセチレン性不飽和結合(−C≡C−)と容易に反応し得る。例えば、アクリル系粘着剤はエチレン性不飽和結合をもった残留モノマーを多く含み得るので、押出機によるアクリル系粘着剤とヨウ素との混合中に、ヨウ素は残留モノマーのエチレン性不飽和結合と反応し得る。これにより、ヨウ素の反応による損失を生じるだけでなく、同時に粘着剤が架橋されてしまうことになる。このことは、ヨウ素含有粘着剤の抗微生物効果を不十分にするだけでなく、押出機の中で混合されたヨウ素含有粘着剤を硬化して硬質化し、粘着剤を押し出すことを困難にするという問題も生じ得る。
さらに、ヨウ素は水分の存在下でヨウ化水素HIを生成し得る。その酸は非常に腐食性が強く、押出機等を腐食するという問題も生じ得る。
【0017】
そのため、抗微生物医療用途に使用されるヨウ素含有ホットメルト粘着剤は、以下の要求を満たす必要がある。
i)ヨウ素含有ホットメルト粘着剤は、その中に含まれるヨウ素の昇華による損失を防ぐために、100℃以下の温度、好ましくはお湯のような70〜90℃の温度で軟化することが好ましい。このような低温プロセスは生成し得るHIのレベルおよびHIによる腐食度を低減し得る点でも有利となる。
ii)ヨウ素含有ホットメルト粘着剤は、その製造段階、保存段階および使用段階の全てにおいて、ヨウ素を粘着剤中に安定に保持できるものであることが必要である。
iii)ヨウ素含有ホットメルト粘着剤に用いる材料は、非ヨウ素反応性の物質の組合せであることが好ましい。ここにおいて「非ヨウ素反応性」とは、粘着剤が製造、保存および使用される通常の条件(特に大気圧、100℃以下の温度)の下で、粘着剤中の成分が粘着剤中に含まれるヨウ素と反応しないことを意味し、より詳しくは、粘着剤中の成分がヨウ素と容易に反応し得るエチレン性不飽和結合とアセチレン性不飽和結合のいずれも本質的に含有しないことを意味する。ここで本質的に含有しないとは、エチレン性不飽和結合やアセチレン性不飽和結合を含有する化学種が一般に5%重量未満、より好ましくは3重量%未満、最も好ましくは1重量%未満であることを意味する。
【0018】
本発明のヨウ素含有ホットメルト粘着剤組成物は、以上の要求を満たすべく発明されたものである。本発明の粘着剤は、ホットメルト粘着剤のうち、特に100℃以下の温度で軟化し、100℃以下の温度で溶融塗布可能なものである。説明の便宜上、100℃以下の温度で溶融塗布可能なホットメルト粘着剤を、以下において「ウオームメルト粘着剤」と称する。また、100℃以下の温度で溶融塗布可能なホットメルト粘着剤であってヨウ素を含有するものを、以下において「ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤」と称する。以下、本発明のヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物の具体的事項を説明する。
【0019】
A.ウオームメルト粘着剤基剤
ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤のベースとなるウオームメルト粘着剤基剤は、ウオームメルト粘着剤と称されるように、100℃以下の温度で軟化することが必要である。さらに、上述のように、ウオームメルト粘着剤基剤に含まれる全ての成分は、エチレン性不飽和結合やアセチレン性不飽和結合を含有しない、非ヨウ素反応性の物質であることが必要である。これらの要件を満たすウオームメルト粘着剤基剤として適当なのは、(i)飽和型熱可塑性エラストマーからなる合成ゴム、(ii)非ヨウ素反応性の粘着付与剤、(iii)非ヨウ素反応性の可塑剤、および任意的な(iv)その他の非ヨウ素反応性の添加剤からなるものである。
【0020】
好ましくは、飽和型熱可塑性エラストマーからなる合成ゴムは、エチレン性不飽和結合やアセチレン性不飽和結合を本質的に含有せず、非ヨウ素反応性である。飽和型熱可塑性エラストマーとして好ましいのは、水素添加されたスチレン系熱可塑性エラストマー(水添SBC)である。水素添加されたスチレン系熱可塑性エラストマーの例としては、水素添加されたスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(水添SBS)、水素添加されたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(水添SIS)、水素添加されたスチレン−エチレン−スチレンブロック共重合体(水添SES)、水素添加されたスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(水添SEBS)、水素添加されたスチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(水添SEPS)、これらのポリマーアロイ、およびこれらのブレンド等が挙げられる。ウオームメルト粘着剤を形成するために特に好ましいのは、水素添加されたスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(水添SEBS)、水素添加されたスチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(水添SEPS)、これらのポリマーアロイ、およびこれらのブレンドである。
【0021】
これらの合成ゴムはそれ自体では、粘着性が弱いため粘着剤を形成するのが困難であるため、1種以上の粘着付与剤、1種以上の可塑剤および任意的な他の1種以上の成分が添加剤としてゴムに配合される。
【0022】
粘着付与剤も、エチレン性不飽和結合やアセチレン性不飽和結合を本質的に含有しない、非ヨウ素反応性の物質から選択される。非ヨウ素反応性の粘着付与剤としては、水素添加されたロジン系樹脂、水素添加およびエステル化されたロジン系樹脂、水素添加されたテルペン系樹脂、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、芳香族系石油樹脂を水素添加して得られる脂環族系石油樹脂、等が挙げられる。ウオームメルト粘着剤を形成するための粘着付与剤として好ましいのは、脂肪族系(C5系)石油樹脂、特にC5系液状炭化水素樹脂である。
【0023】
可塑剤も、エチレン性不飽和結合やアセチレン性不飽和結合を本質的に含有しない、非ヨウ素反応性の物質から選択される。非ヨウ素反応性の可塑剤としては、鉱物油、フタル酸エステル類、グリコールエステル類、炭化水素系可塑剤(例えばポリブテン、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレンオリゴマー)、等が挙げられる。これらのうち、ウオームメルト粘着剤を形成するための可塑剤として好ましいのは、鉱物油等のようなゴム成分を溶解でき、安定に保存できる物質である。
【0024】
必要に応じて、公知のホットメルト粘着剤に一般的に使用される公知の添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、老化防止剤等を、ウオームメルト粘着剤基剤に配合してよいが、これらの添加剤もエチレン性不飽和結合やアセチレン性不飽和結合を含有しない、非ヨウ素反応性の物質から選択する必要がある。
【0025】
100℃以下で溶融塗布可能なウオームメルト粘着剤基剤を形成するためには、その成分の配合比率が重要である。この配合比率は、ウオームメルト粘着剤基剤の軟化温度、塗布温度、皮膚粘着力、接着時間に対する粘着力変化などの所望される諸特性に依存して決定される。一般に、粘着剤中に可塑剤が多く含まれると粘着剤の軟化温度が低下し、粘着付与剤が多く含まれると高いタックおよび皮膚接着力を与える。100℃以下で軟化および塗布可能であって十分な皮膚接着力を得るための配合として、一般的な範囲は、ウオームメルト粘着剤基剤の全体重量を基準として、15重量%≦熱可塑性エラストマー≦30重量%、20重量%≦可塑剤≦35重量%、35重量%≦粘着付与剤≦50重量%の範囲である。
【0026】
ウオームメルト粘着剤基剤は、通常の方法により成分を混合することによって調製してよく、又は商業上利用できるウオームメルト粘着剤を用いてよい。商業上利用できるウオームメルト粘着剤基剤としては、例えば、スイスのコラノ社からEcomelt(登録商標)シリーズとして供給される以下のものが挙げられる:Ecomelt(登録商標)M1−186(軟化点:77℃)、M1−193(軟化点:84℃)、M1−328(軟化点:88℃)、M1−340(軟化点:93℃)等。軟化点はASTM D36/E28により測定される。
【0027】
B.粘着剤中のヨウ素を安定化する方法
ヨウ素は室温でも容易に昇華するので、ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤を製造、使用および保存する段階、該ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤を使用して医療用粘着シート製品を製造する段階、ならびに該ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤を使用して製造された医療用粘着シート製品を保存する段階の全てを通じて、ヨウ素が粘着剤中に安定に保持されることが要求される。本発明のヨウ素含有親水性ゲルは、以下に述べるように粘着剤中にヨウ素を安定に固定する手法を鋭意研究した結果、開発されたものである。
【0028】
(1)ウオームメルト粘着剤中のヨウ素単体
ヨウ素単体は鉱物油に良く溶けるので、A.で前述したようなウオームメルト粘着剤中の鉱物油成分に溶解させることができ、ヨウ素が均一に溶解したウオームメルト粘着剤を得ることができる。このようなヨウ素含有ウオームメルト粘着剤は100℃以下の温度で溶融および塗布可能である。しかしながら、粘着剤中に溶解されたヨウ素は、保存中の防湿性包装袋内で容易に多量に昇華する。従って、ウオームメルト粘着剤中にヨウ素を溶解させる手法では、粘着剤中にヨウ素を長期にわたって安定に保持することはできない。
【0029】
(2)ウオームメルト粘着剤+PVP−ヨウ素複合体
ヨウ素を安定に固定する手法として、ポリビニルピロリドン(PVP)−ヨウ素複合体を利用することがよく知られ広く利用されている。所定温度に制御された標準的な混合手段(例えばプラネタリーミキサー)により、PVP−ヨウ素複合体をA.で前述したようなウオームメルト粘着剤と混合することができる。しかしながら、参考例として後述するように、PVP−ヨウ素複合体中のヨウ素はウオームメルト粘着剤中の鉱物油成分に溶解するが、PVP粉体は、ウオームメルト粘着剤中のどの成分にも溶解せず、ウオームメルト粘着剤中に不均一に分散する。従って、PVP−ヨウ素複合体を単にウオームメルト粘着剤と混合する手法は、結局のところウオームメルト粘着剤中にヨウ素を溶解させる手法と異ならず、粘着剤中にヨウ素を長期にわたって安定に保持することができない。
【0030】
(3)(親水性溶媒中のPVP−ヨウ素複合体)+ウオームメルト粘着剤
PVP−ヨウ素複合体は、ある種の親水性溶媒に溶解させることにより、均一な親水性ゲルを得ることができる。PVP−ヨウ素複合体と親水性溶媒からなる親水性ゲルは、所定温度に制御された標準的な混合手段(例えばプラネタリーミキサー)により、ウオームメルト粘着剤と混合することができる。しかしながら、参考例として後述するように、親水性ゲルはウオームメルト粘着剤から容易に分離する。従って、PVP−ヨウ素複合体を単に親水性溶媒に溶解してウオームメルト粘着剤と混合する手法では、均一かつ安定なヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物を得ることができない。
【0031】
(4)(親水性溶媒中のPVP−ヨウ素複合体)+界面活性剤+ウオームメルト粘着剤
参考例および実施例として後述するように、PVP−ヨウ素複合体と親水性溶媒からなるヨウ素含有親水性ゲルは、ある種の界面活性剤を利用することにより、ウオームメルト粘着剤中にW/O(オイル中の水)型エマルジョンとして、均一に分散できる。ある種の界面活性剤によってヨウ素含有親水性ゲルがウオームメルト粘着剤中に分散されたヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物は、均一かつ安定であり、100℃以下の温度でメルトおよび塗布可能である。しかも、ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物およびこれを使用して製造された医療用粘着シート製品は、粘着剤組成物中にヨウ素が安定に保持され、その保存段階において防湿性包装袋内でヨウ素の昇華をほぼ完全に抑制することができ、長期の保存期間後でも、包装袋内でのヨウ素の昇華が少ない。ただし、条件によっては微量のヨウ素が包装袋内で昇華する場合もある。
【0032】
(5)(親水性溶媒中のPVP−ヨウ素複合体+ヨウ化物塩)+界面活性剤+ウオームメルト粘着剤
実施例として後述するように、PVP−ヨウ素複合体と親水性溶媒からなるヨウ素含有親水性ゲルに更にある種のヨウ化物塩を添加することによって、粘着剤組成物(W/O型エマルジョン)中にヨウ素を全く安定に保持することができる。このようなヨウ化物塩の添加により、ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物およびこれを用いて製造された医療用粘着シート製品は、その保存段階において防湿性包装袋内でヨウ素の昇華を完全に抑制することができ、長期の保存期間後でも、包装袋内でのヨウ素の昇華が殆ど見られない。
【0033】
C.親水性溶媒
B.で前述したようなヨウ素含有親水性ゲルを形成するために用いる親水性溶媒として適当なのは、ポリビニルピロリドン(PVP)を溶解できる溶媒である。例えば、国際公開公報WO03/091354号には、様々なタイプの可溶化液("solubilizing liquids")または可塑剤("plasticizers")の例、例えば以下:(1)水;(2)C1−C10アルコール類、例えばエタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、フェノキシエタノール、ブタノール等;(3)C3−C6ケトン類、例えばアセトン、メチルエチルケトン等;(4)C2−C8エステル類、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等;(5)C2−C8エーテル類、例えばテトラヒドロフラン等、(6)アミド類、例えばN−メチルピロリドン等;(7)ラクトン類、例えばブチロラクトン;(8)芳香族有機溶媒、例えばトルエン、キシレン等;(9)1つ以上のヒドロキシル基を有する化合物、特にグリコール類、例えばグリセリン;1,2−ペンタンジオール;2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール;2−メチル−1,3−プロパンジオール、および単官能化合物、例えば3−メトキシメチルブタノール(MMB);(10)ポリエトキシル化フェノール類、例えばPycal 94 (フェノキシポリエチレングリコール);(11)アルキル、アリールおよびアラルキルエーテルグリコール類、例えばDow Chemical社より商品名Dowanolとして販売されるもの、例えばプロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol(登録商標) PnB)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol(登録商標) TPnB)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol(登録商標) DPnB)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(Dowanol(登録商標) PPH)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol(登録商標) PM);(12)ポリエトキシレート化アルキルフェノール類、例えばTriton(登録商標) X35およびTriton(登録商標) X102;(13)モノまたはポリエチレングリコール類、例えばPEG 400ジエチルヘキサノエート(TegMer 809,CP Hall)、PEG 400モノラウレート(CHP−30N,CP Hall)、PEG 400モノオレエート(CHP−41N,CP Hall);(14)アミド類、例えば高級アルキル置換N−アルキルピロリドン、例えば、N−オクチルピロリドン;(15)スルホンアミド類、例えばN−ブチルベンゼンスルホンアミド(CP Hall);(16)安息香酸エステル類、例えばVelsicol Chemical社より商品名Benzoflexとして入手できるもの、例えばジプロピレングリコールジベンゾエート(Benzoflex(登録商標) 50)、ジエチレングリコールジベンゾエート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールの安息香酸ジエステル(Benzoflex(登録商標) 354)、エチレングリコールジベンゾエート、テトラエチレングリコールジベンゾエート等;(17)分子量10,000ダルトン未満、好ましくは約5,000ダルトン未満、より好ましくは約2,500未満のポリエチレングリコール類およびエチレンオキシド/プロピレンオキシドのランダムおよびブロックコポリマー;(18)ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、C2−C4アルキレンオキシドのランダムおよびブロックコポリマー等のポリアルキレングリコール、等の化合物が記載されている。これらのいずれの化合物も本発明に使用し得る。ここでポリエチレングリコール類とは、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、スクロース等に、エチレンオキシドまたは2ハロエタノールを反応させて得られた2〜6のヒドロキシル基を有するグリコール類をいう。
医療用途に用いるためには、更に人体および環境に無害であり、皮膚刺激性の低い溶媒であることが好ましい。このようなPVP溶解可能な親水性溶媒としては、ヒドロキシル基のみを官能基として有する溶媒、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール等の一価アルコール類;エチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)類、プロピレングリコール等の二価アルコール類;グリセリン等の三価アルコール類;が挙げられ、これらの2種以上の混合溶媒を用いることもできる。このうち、ポリエチレングリコール(PEG)類、例えばPEG100からPEG600、プロピレングリコール等のグリコール類;およびグリセリンが、親水性ゲルとウオームメルト粘着剤基剤のW/O型エマルジョンの安定化の点で、特に好ましい。最も有用な親水性溶媒は、PEG300およびグリセリンである。
【0034】
D.界面活性剤
界面活性剤は、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、および非イオン性界面活性剤;に分類できるが、いずれのタイプの界面活性剤も本発明に使用し得る。医療用途に用いるための界面活性剤としては、皮膚刺激性が少ないことから、非イオン性界面活性剤が望ましい。非イオン性界面活性としては、(1)ソルビタンエステル型界面活性剤、例えばICI社からSpan(登録商標)シリーズおよびTween(登録商標)シリーズ販売されているもの;(2)ポリエトキシレート化アルキルフェノール類、例えばTriton(登録商標) X35およびTriton(登録商標) X102として販売されているもの;(3)ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステル類、例えばポリエチレングリコール400モノラウレート、ポリエチレングリコール400モノオレート、等が挙げられる。
各種の非イオン性界面活性剤のうち、B.で前述したようなヨウ素含有親水性ゲルとウオームメルト粘着剤基剤との均一な分散体を形成するために好ましいのは、ソルビタンエステル型界面活性剤である。ソルビタンエステル型界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル(ソルビタン脂肪酸モノ−、ジ−およびトリ−エステルを含む);ソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド(EO)付加体;等が挙げられる。商業上利用できるソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤としては、ICI社から販売されているSpan(登録商標)シリーズ、例えばSpan(登録商標)20(ソルビタンラウリン酸モノエステル)、Span(登録商標)40(ソルビタンパルミチン酸モノエステル)、Span(登録商標)60(ソルビタンステアリン酸モノエステル)、Span(登録商標)65(ソルビタンステアリン酸トリエステル)、Span(登録商標)80(ソルビタンオレイン酸モノエステル)、Span(登録商標)85(ソルビタンオレイン酸トリエステル)等が挙げられる。商業上利用できるソルビタン脂肪酸エステルEO付加体としては、ICI社から販売されているTween(登録商標)シリーズ、例えばTween(登録商標)20(ソルビタンラウリン酸モノエステルEO付加体)、Tween(登録商標)40(ソルビタンパルミチン酸モノエステルEO付加体)、Tween(登録商標)60(ソルビタンステアリン酸モノエステルEO付加体)、Tween(登録商標)65(ソルビタンステアリン酸トリエステルEO付加体)、Tween(登録商標)80(ソルビタンオレイン酸モノエステルEO付加体)、Tween(登録商標)85(ソルビタンオレイン酸トリエステルEO付加体)等が挙げられる。このうち、本発明に好ましいのはSpan(登録商標)シリーズのようなソルビタン脂肪酸エステルである。特に、Span(登録商標)20(ソルビタンモノラウレート)が、ヨウ素含有親水性ゲルをウオームメルト粘着剤基剤中に均一かつ安定に分散できるだけでなく、室温でも透明な分散体を形成できることから、最も好ましい界面活性剤である。
【0035】
界面活性剤の添加量は、ヨウ素含有親水性ゲルの安定性と接着力に対して、鋭敏な影響を及ぼす。界面活性剤の添加量が多すぎると、得られる粘着剤組成物はベタベタした状態となって接着力を低下させる傾向にある。一方、界面活性剤の添加量が少なすぎると、容易に相分離を起こし、安定な粘着剤組成物が得られない。界面活性剤の添加量として好ましい範囲は、ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物の全重量を基準として、0.1〜5重量%であり、最も好ましい範囲は0.3〜0.5重量%である。
【0036】
E.ヨウ化物塩
本発明のヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物は、B.で前述したように粘着剤組成物の保存中に防湿性包装袋内でのヨウ素の昇華を抑制するために、ヨウ素含有親水性ゲル中に任意的にヨウ化物塩を含んでよい。ここにおけるヨウ化物塩は、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムおよび他の前記親水性溶媒(例えばグリコール類、グリセリン等)に溶解可能なヨウ化物塩である。
【0037】
F.ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物の製造
本発明のヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物は、PVPを溶解可能な親水性溶媒(グリコール類、グリセリン等)中に、PVP−ヨウ素複合体粉末および任意的にヨウ化物塩を添加し、均一になるまで混合し;次に、この混合物に界面活性剤を添加し、混合して均一なヨウ素含有親水性ゲルを形成し;次に、ウオームメルト粘着剤基剤とヨウ素含有親水性ゲルを、70℃〜100℃、好ましくは80℃〜95℃の温度の標準的な混合手段(例えばプラネタリーミキサー)により混合することによって、製造することができる。このような方法で得られるヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物は、均一であり、室温の保存条件でも相分離や硬化を起こすことなく、冷却後も劣化や相分離などの変化を受けないで再溶融可能である。従って、ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物は、その製造段階および保存段階において安定である。
【0038】
G.ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物の塗布
本発明のヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物は、標準的な押出機付きホットメルトコーターを使用して、100℃以下の温度、好ましくは70〜90℃の温度で、殆どヨウ素を損失することなく、溶融および塗布することができる。ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物は、押出機中で相分離、劣化、ヨウ素損失なしに安定した状態で存在するとともに、塗布ヘッド中で劣化することなく再溶融することができる。従って、ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物は、その使用段階において安定である。
【0039】
H.ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物の用途
本発明のヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物は、ヨウ素の抗微生物効果を利用することが所望される用途に広く使用することができる。ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物の用途としては、限定されないが、医療用途、スキンケア用途、美容用途等に有用であり、医療用粘着シート製品または粘着テープ製品(本願において「医療用粘着シート製品」と総称する)に特に有用である。本発明のヨウ素含有ウオームメルト粘着剤を用いて製造された医療用粘着シート製品は、粘着剤組成物中にヨウ素が安定に保持され、保存中にヨウ素の昇華をほぼ完全に抑制できる点で有利である。医療用粘着シート製品としては、限定されないが、外科用切開用ドレープまたはインサイズドレープ等の外科用ドレープ、サージカルテープ、創傷ドレッシング、絆創膏等が挙げられる。
【0040】
本発明のヨウ素含有ウオームメルト粘着剤は、塗布温度が100℃以下であるので、シート基材に粘着剤を塗布する際にシート基材の熱による損傷が少ない点で有利である。特に、外科用切開用ドレープ等のような薄型の医療用粘着シート製品を製造する場合に、ポリウレタンエラストマーフィルムやポリエステルエラストマー等のような、ある種の薄いエラステックフィルムに、加熱による損傷なしに直接塗布することができる。
【0041】
I.医療用粘着シート製品の滅菌
外科用切開用ドレープ等のような医療用粘着シート製品は、無菌状態であることが要求されるので、粘着剤が塗布された後に滅菌されなければならない。本発明のヨウ素含有ウオームメルト粘着剤を用いて製造された医療用粘着シート製品を滅菌するために適当な方法は、医療用粘着シート製品を入れた密封包装に対して、一般に10KGy以上、好ましくは20KGy以上、より好ましくは25KGy以上のガンマ線を照射することである。
【0042】
J.ウオームメルト粘着剤組成物の粘着力
ガンマ線の照射後、医療用粘着シート製品に塗布された粘着剤の接着力は増大する。そのため、この現象を考慮に入れて、粘着剤に所望される初期の接着力レベルを決定する必要がある。皮膚に対して貼付される粘着剤の初期接着力レベルとして適当なのは、100g/インチ〜500g/インチの範囲である。手術中に剥がれない信頼性のある接着力を得るために好ましい初期接着力レベルは、150g/インチ〜350g/インチの範囲である。手術後に医療用粘着シート製品の剥離時に皮膚の損傷を防ぐために、接着強度が高すぎることは好ましくない。初期接着力が高くても、手術後の接着強度がそれほど高くなければ問題ない。手術後の剥離時における好ましい接着強度は、100g/インチ〜200g/インチの範囲である。
【0043】
K.シート基材
本発明のヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物を塗布するためのシート基材として、医療用粘着シート製品に一般に用いられる寸法および材料のシートを使用してよい。医療用粘着シート製品に通常用いられるシート基材は、通常、ポリウレタンエラストマーフィルム、ポリエステルエラストマーフィルム等のエラステックフィルムである。シート基材は、多孔質または非孔質のいずれのシートを使用してもよいが、皮膚への貼付時の蒸れによる粘着剤の接着力の低下を防止するためには、多孔質の透湿性のシート基材を用いることが好ましい。透湿性シート基材の水蒸気透過性(MVTR)は、一般に500g/m2・24hよりも大きい。
【0044】
L.透湿性の付与
本発明のヨウ素含有ウオームメルト粘着剤の水蒸気透過性(MVTR)は、透湿性シート基材に比べて遥かに低い(<約100g/m2・24h)ので、透湿性シート基材を使用する場合であっても、蒸れによって医療用粘着シート製品中の粘着剤の接着力が減少することになる。蒸れによる粘着剤の接着力の減少を防止するためには、医療用粘着シート製品(すなわちヨウ素含有ウオームメルト粘着剤が塗布されたシート基材)は、約100g/m2・24h以上のMVTRを有することが好ましく、約500g/m2・24h以上のMVTRを有することがさらに好ましい。このようなMVTRを有する医療用粘着シート製品を製造するために、エンボス加工(好適実施態様)、熱バリ等の手段により粘着剤層のみに1以上、好ましくは多数の穴を形成することによって、医療用粘着シート製品のMVTRを改善することができる。エラステックフィルム等のシート基材には穴が形成されないので、抗微生物バリアは破壊されない。粘着剤層に形成される穴の口径および穴密度は、所望されるMVTRによって異なるが、当業者は本願の開示に基づき容易に決定できる。エンボス加工は、室温〜100℃以下、好ましくは室温〜90℃以下の温度のエンボスロールを使用することによって行うことができる。
【0045】
以下の実施例は本発明を例示するために示されるものであり、その範囲を限定することを意図するものではない。特に明記しない限り、比率は全て重量を基準とする。
【実施例】
【0046】
比較例
ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤:
商業上利用できるスイス コラノ社の1%ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤Ecomelt(登録商標)M1−225を用意した。Ecomelt(登録商標)M1−225は、Ecomelt(登録商標)M1−186(軟化点:77℃)に1重量%のヨウ素単体を添加したものである。ヨウ素は前述のように粘着剤中の鉱物油成分によく溶ける。
【0047】
インサイズドレープの作製および滅菌:
インサイズドレープを作製するために、厚み25μmポリエステルエラステックフィルムHytrel(登録商標)4056(デュポン社)と、シリコーン剥離剤が塗布された厚み50μmのポリエステルライナーを用意した。90〜100℃の温度に設定したホットメルトハンドコーターを使用して、上記1%ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤Ecomelt(登録商標)M1−225を上記ポリエステルライナーに塗布した。塗布ギャップは50μmである。次に、このポリエステルライナーに塗布されたヨウ素含有ウオームメルト粘着剤層を上記ポリエステルエラステックフィルムに貼り合わせて、インサイズドレープを得た。
このヨウ素含有ウオームメルト粘着剤層をもったインサイズドレープを、アルミ箔タイプ防湿パウチを利用した包装に入れ、ヒートシールした。インサイズドレープを入れた包装パウチは、25KGy以上のガンマ線を照射して滅菌された。
【0048】
インサイズドレープの性能:
上記のヨウ素含有ウオームメルト粘着剤層をもった滅菌済みインサイズドレープの性能を、ウオームメルト粘着剤層の塗布厚み、ヨウ素含有量、皮膚接着力、ヨウ素昇華、塗布されたウオームメルト粘着剤層の変形と粘着剤しみ出しについて試験し評価した。皮膚粘着力は、皮膚用粘着剤について一般的なJIS−Z0237に準ずる引張り速度30cm/分の180度ピール試験により測定した。ヨウ素含有量は蛍光X線分析装置により分析した。ヨウ素昇華は目視による外観検査による。
【0049】
これらの性能試験は、ガンマ線照射後の初期状態と、FDA(米国食品医薬品局)のガイダンスで利用されているVon’t Hoff則に従う1年相当または2年相当の加速エージング試験である49℃−9週または49℃−18週のエージング後の両方で行った。加速エージング期間(Accelerated Aging Time Duration:AATD)は、加速エージング率(Accelerated Aging rate:AAR)とともに、次のVon’t Hoff則の式から概算される。
AATD=(所望されるエージング実時間)/(加速エージング率(AAR))
加速エージング率(AAR)=Q10 ((試験温度)-(周囲温度))/10
ここで、Q10 =2.0, 周囲温度=22℃, 試験温度=49℃
【0050】
表1にヨウ素含有ウオームメルト粘着剤M1−225を用いたインサイズドレープフィルムの性能の結果を示す。
【表1】

【0051】
インサイズドレープの初期性能は良かったが、1年相当の49℃−9週エージング試験後では、ヨウ素が防湿パウチ袋内およびHytrel(登録商標)フィルム上に多量に付着していることが確認された。ヨウ素はこのような粘着剤中で不安定なため、ヨウ素含有粘着剤をもったインサイズドレープの実用化は困難であった。
【0052】
参考例1
ウオームメルト粘着剤+PVP−ヨウ素複合体:
この例では、粘着剤中にヨウ素を安定に固定するために、ポリビニルピロリドン(PVP)−ヨウ素複合体の利用を検討した。
ウオームメルト粘着剤として、ヨウ素を含有しないコラノ社のEcomelt(登録商標)M1−186(軟化点:77℃)を用いた。85〜95℃の温度に制御された標準的プラネタリーミキサーにより、PVP−ヨウ素複合体(アルドリッチ社、ヨウ素含有量11.6%)を、ウオームメルト粘着剤と混合したところ、PVP−ヨウ素複合体中のヨウ素は、ウオームメルト粘着剤中の鉱物油成分に溶解したが、PVP粉体は、ウオームメルト粘着剤中のどの成分にも溶解せず、ウオームメルト粘着剤中に不均一に分散した。
【0053】
参考例2
(親水性溶媒中のPVP−ヨウ素複合体)+ウオームメルト粘着剤:
この例では、PVP粉体を溶解させるために、親水性溶媒の利用を検討した。
PVP−ヨウ素複合体は、グリコール類、グリセリン等の親水性溶媒に溶解させることができ、均一な親水性ゲルが得られた。85〜95℃の温度に制御された標準的プラネタリーミキサーにより、これら親水性ゲルを、前述したようなウオームメルト粘着剤と混合したところ、PVP−ヨウ素複合体と親水性溶媒からなる親水性ゲルは、ウオームメルト粘着剤から容易に分離した。
【0054】
参考例3
(親水性溶媒中のPVP−ヨウ素複合体)+界面活性剤+ウオームメルト粘着剤:
親水性ゲル相とウオームメルト粘着剤相の分離を防止し、均一かつ安定なヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物を得るために、各種非イオン性界面活性剤の利用を検討した。
その結果、ICI社から販売されているSpan(登録商標)シリーズおよびTween(登録商標)シリーズとして販売されるような、ソルビタンエステル型界面活性剤を利用することによって、PVP−ヨウ素複合体と親水性溶媒からなるヨウ素含有親水性ゲルがウオームメルト粘着剤中にW/O(オイル中の水)型エマルジョンとして均一に分散し得ることが分かった。特に、Span(登録商標)20(ソルビタンモノラウレート)を利用した場合には、ヨウ素含有親水性ゲルをウオームメルト粘着剤中に均一かつ安定に分散できるだけでなく、室温でも透明な分散体を形成できた。
【0055】
実施例1
ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物の調製:
ウオームメルト粘着剤基剤として、ヨウ素を含有しないコラノ社のEcomelt(登録商標)M1−186(軟化点:77℃)を用い、ポリビニルピロリドン(PVP)−ヨウ素複合体、親水性溶媒(PEG300またはグリセリン)および界面活性剤(Span(登録商標)20)からなる親水性ゲルを有する数種のウオームメルト粘着剤組成物を調製した。一部のウオームメルト粘着剤組成物には更にヨウ化ナトリウムを添加した。表2に各組成物の配合を示す。
【0056】
ウオームメルト粘着剤組成物の調製は、次のようにして行った。シールキャップ付きガラス容器内で親水性溶媒(PEG300またはグリセリン)にヨウ化ナトリウムを添加し混合して溶解させた。次にこの溶液にPVP−ヨウ素複合体粉末(アルドリッチ社、ヨウ素含有率11.6重量%)を添加混合し、90℃で溶解させて、高粘度ペースト状混合物を得た。次に界面活性剤Span(登録商標)20を添加し、よく混合して、高粘度のヨウ素含有親水性ゲルペーストを得た。次にベースウオームメルト粘着剤のEcomelt(登録商標)M1−186ブロックと高粘度のヨウ素含有親水性ゲルペーストを、温度85℃のプラネタリーミキサーで混合した。このような工程で調製されたヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物は均一であり、室温の保管条件でも分離や硬化を起こすことなく、冷却後も殆ど変化なしに再溶融可能であった。
【0057】
【表2】

【0058】
インサイズドレープの作製および滅菌:
上記のように調製したヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物A〜Eの各々を、85℃の標準的な単軸押出機で供給して、85℃の温度に設定したホットメルトコーターヘッドから、比較例で用いたのと同じ厚み50μmのポリエステルライナーに塗布した。塗布ギャップは50μmに調節された。次に、このポリエステルライナーに塗布されたヨウ素含有ウオームメルト粘着剤層を、比較例で用いたのと同じ厚み25μmのポリエステルエラステックフィルムHytrel(登録商標)4056に貼り合わせて、インサイズドレープを得た。
上記組成物A〜Eの各々のヨウ素含有ウオームメルト粘着剤層をもったインサイズドレープフィルムを、比較例で用いたのと同様の防湿パウチを利用した包装に入れ、ヒートシールした。インサイズドレープを入れた包装パウチを、比較例で述べたように25KGy以上のガンマ線を照射して滅菌した。
【0059】
インサイズドレープの性能:
上記組成物A〜Eのヨウ素含有ウオームメルト粘着剤層をもった滅菌済みインサイズドレープフィルムの各々の性能を、比較例と同様に、ウオームメルト粘着剤層の塗布厚み、ヨウ素含有量、接着性、ヨウ素昇華、塗布されたウオームメルト粘着剤層の変形と粘着剤しみ出しについて、試験し、評価した。これらの性能試験は、ガンマ線照射後の初期状態と、1年相当または2年相当の加速エージング試験である49℃−9週および49℃−18週のエージング後の状態の両方で行った。
表3〜表7にヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物A〜Eを用いた各インサイズドレープの性能の結果を示す。
【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
【表6】

【0064】
【表7】

【0065】
PVP−ヨウ素複合体、親水性溶媒および界面活性剤からなる親水性ゲルにより、防湿パウチ袋内のヨウ素の昇華が抑制され、粘着剤組成物中のヨウ素が安定化された。しかしながら、Hytrel(登録商標)フィルム内を通じて該フィルム上に微量のヨウ素の昇華が確認された。ヨウ化ナトリウムを添加した場合には、フィルム上へのヨウ素の昇華も抑制され、粘着剤組成物中のヨウ素が全く安定に保持されることが確認された。
【0066】
界面活性剤の添加はウオームメルト粘着剤基剤(油性相)中にヨウ素含有親水性ゲル(水性相)をW/O型エマルジョンとして安定かつ均一に分散させるのに効果的であるが、界面活性剤を多量に添加した場合には、粘着力低下およびエージング試験後のHytrel(登録商標)フィルム上に界面活性剤のしみ出しが生じた。
【0067】
ウオームメルト粘着剤基剤Ecomelt(登録商標)M1−186が比較的に軟らかいことに起因して、エージング試験後、ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤層の変形が生じた。また、粘着力もやや弱いものであった。
【0068】
実施例2
ヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物の調製:
粘着剤層の変形の改善および粘着力の増強のために、比較的高い軟化点を有するウオームメルト粘着剤基剤を使用するとともに、界面活性剤および親水性溶媒の量を変えた、更に数種のウオームメルト粘着剤組成物を調製した。使用したウオームメルト粘着剤基剤はコラノ社のEcomelt(登録商標)M1−193(軟化点:84℃)とEcomelt(登録商標)M1−328(軟化点:88℃)である。表8に各組成物の配合を示す。ウオームメルト粘着剤組成物の調製方法は、実施例1で述べた方法と同様であるが、ウオームメルト粘着剤基剤の軟化温度が84℃と88℃であることから、使用されるプラネタリーミキサーの温度を90℃とした。
【0069】
【表8】

【0070】
インサイズドレープの作製および滅菌:
上記のように調製したヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物F〜Iの各々を、90℃の標準的な単軸押出機で供給して、90℃の温度に設定したホットメルトコーターヘッドから、比較例で用いたのと同じ厚み50μmのポリエステルライナーに塗布した。塗布ギャップは50μmに調節された。次に、このポリエステルライナーに塗布されたヨウ素含有ウオームメルト粘着剤層を、比較例で用いたのと同じ厚み25μmのポリエステルエラステックフィルムHytrel(登録商標)4056に貼り合わせて、インサイズドレープフィルムを得た。
上記組成物F〜Iの各々のヨウ素含有ウオームメルト粘着剤層をもったインサイズドレープフィルムを、比較例で用いたのと同様の防湿パウチを利用した包装に入れ、ヒートシールした。インサイズドレープを入れた包装パウチを、比較例で述べたように25KGy以上のガンマ線を照射して滅菌した。
【0071】
インサイズドレープの性能;
上記組成物F〜Iのヨウ素含有ウオームメルト粘着剤層をもった滅菌済みインサイズドレープフィルムの各々の性能を、比較例および実施例1と同様に、試験し評価した。これらの性能試験は、ガンマ線照射後の初期状態と、1年相当の加速エージング試験である49℃−9週エージング後の状態の両方で行った。
表9にヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物F〜Iを用いた初期状態の各インサイズドレープの性能の結果を示す。
【0072】
【表9】

【0073】
親水性溶媒(PEG300)と界面活性剤(Span(登録商標)20)の含有量を減少させた場合(組成物HおよびI)には、150g/インチ以上という信頼性のある高い粘着力が得られた。また、49℃−9週エージング試験後、粘着剤層の変形が比較的に少なく、特にEcomelt(登録商標)M1−328(軟化点:88℃)を使用した組成物Gについては変形が殆どなかった。より高い軟化点をもったウオームメルト粘着剤基剤の利用が、粘着剤層の変形の改良に効果的であった。
【0074】
実施例3
上記実施例でインサイズドレープの作製に使用したポリエステルエラステックフィルムは透湿性のものであるが、その上に塗布された親水性ヨウ素ゲル含有ウオームメルト粘着剤層の透湿性は比較的に低いので、そのような粘着剤層を有するインサイズドレープフィルムを皮膚に貼り付けると、粘着力は蒸れにより減少する。そこで、本実施例では、高い水蒸気透過性(MVTR)を有するウオームメルト粘着剤層を得るため、以下のようなエンボス加工により、粘着剤層のみに多数の穴を形成したインサイズドレープを作製した。エラステックフィルムには穴の形成がされないので、抗微生物バリアは破壊されない。
【0075】
粘着剤層にエンボス加工したインサイズドレープの作製:
実施例2のヨウ素含有ウオームメルト粘着剤組成物Fを、実施例2で述べたのと同様に、50μmのギャップで、厚み50μmのポリエステルライナーに塗布した。このポリエステルライナー上に塗布されたヨウ素含有ウオームメルト粘着剤層を、25℃(室温)のエンボスロールで加工して、該ウオームメルト粘着剤層に多数の穴(口径約0.2mm、穴密度約100個/cm2 )を形成した。該ウオームメルト粘着剤層を、上記実施例および比較例と同様に、厚み25μmのポリエステルエラステックフィルムHytrel(登録商標)4056に貼り合わせて、エンボス加工されたヨウ素含有ウオームメルト粘着剤層をもったインサイズドレープを得た。該インサイズドレープを、上記実施例および比較例と同様に、包装パウチに入れて、ヒートシールし、25KGy以上のガンマ線を照射して滅菌した。
【0076】
水蒸気透過性(MVTR):
上記エンボス加工されたヨウ素含有ウオームメルト粘着剤層(組成物F)をもったインサイズドレープと、エンボス加工されていない実施例2で作製したウオームメルト粘着剤層(組成物F)をもったインサイズドレープについて、37℃−40%RH、24時間の水蒸気透過性(MVTR)を測定した。結果を表10に示す。
【0077】
【表10】

【0078】
粘着剤層上でのエンボス加工により、水蒸気透過性が改善されることが確認された。
【0079】
以上インサイズドレープについて本発明を例示したが、他の医療用シート製品にも同様に本発明を適用し得ることが当業者には明らかであろう。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のヨウ素含有ウオームメルト粘着剤は、ヨウ素の抗微生物効果を利用することが所望される用途に広く使用することができ、例えば医療用途、スキンケア用途、美容用途等に有用である。例えば外科用切開用ドレープまたはインサイズドレープ等の外科用ドレープ、サージカルテープ、創傷ドレッシング等のような医療用粘着シート製品に特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)ポリビニルピロリドン−ヨウ素複合体と、(ii)ポリビニルピロリドンを溶解可能な親水性溶媒とを含む、ヨウ素含有親水性ゲル、
(b)該ホットメルト粘着剤基剤の全重量を基準として、(i)15〜30重量%の飽和型熱可塑性エラストマーからなる合成ゴムと、(ii)20〜35重量%の非ヨウ素反応性の粘着付与剤と、(iii)35〜50重量%の非ヨウ素反応性の可塑剤とを含む、100℃以下の軟化点を有するホットメルト粘着剤基剤、および
(c)界面活性剤
を含んでなる、100℃以下の温度で溶融塗布可能なヨウ素含有ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項2】
前記親水性溶媒がグリコール類またはグリセリンより選択される、請求項1に記載のヨウ素含有ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、請求項1または請求項2に記載のヨウ素含有ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤がソルビタンエステル型界面活性剤である、請求項3に記載のヨウ素含有ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項5】
前記ソルビタンエステル型界面活性剤がソルビタン脂肪酸エステルである、請求項4に記載のヨウ素含有ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項6】
前記ソルビタン脂肪酸エステルがソルビタンラウリン酸モノエステルである、請求項5に記載のヨウ素含有ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が、該ヨウ素含有ホットメルト粘着剤組成物の全重量を基準として、0.1〜5重量%の範囲の量で存在する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のヨウ素含有ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項8】
前記ホットメルト粘着剤基剤が(i)水素添加されたスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体、水素添加されたスチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体、これらのポリマーアロイおよびこれらのブレンドからなる群より選択される熱可塑性エラストマーからなる合成ゴムと、(ii)C5系炭化水素樹脂からなる粘着付与剤と、(iii)鉱物油とを含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のヨウ素含有ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項9】
(d)前記親水性溶媒に溶解可能なヨウ化物塩を更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のヨウ素含有ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項10】
(a)シート基材と、(b)前記シート基材上に塗布された請求項1〜9のいずれか一項に記載のヨウ素含有ホットメルト粘着剤組成物とを備えた、医療用粘着シート製品。
【請求項11】
前記粘着剤組成物の層上でのエンボス加工により、前記シート基材には穴を形成することなく、前記粘着剤組成物の層のみに1以上の穴が形成された、請求項10に記載の医療用粘着シート製品。
【請求項12】
前記医療用粘着シート製品が外科用切開用ドレープである、請求項10または請求項11に記載の医療用粘着シート製品。

【公開番号】特開2011−94158(P2011−94158A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29029(P2011−29029)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【分割の表示】特願2004−142280(P2004−142280)の分割
【原出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】