説明

17−アルキニル−7−ヒドロキシステロイドおよび関連する化合物の調製方法

本発明は、核エストロゲン受容体において結合活性を有するプロセス不純物を本質的に含まない、17−エチニル−10R13S−ジメチル2,3,4,7,8R,9S,10,11,12,13,14S,15,16,17−ヘキサデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3R,7R,17S−トリオール(17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールとも称する)などの、17−アルキニル−7−ヒドロキシ−ステロイドの調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本PCT国際出願は、2008年6月6日に出願された米国仮特許出願第61/059,658号からの優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明の実施形態は、性ステロイド受容体において望ましくない結合活性を有する反応によるステロイド不純物を本質的に含まない17−エチニル−10R,13S−ジメチル2,3,4,7,8R,9S,10,11,12,13,14S,15,16,17−ヘキサデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3R,7R,17S−トリオールおよびこれに関連する他の医薬活性化合物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
17−エチニル−10R,13S−ジメチル2,3,4,7,8R,9S,10,11,12,13,14S,15,16,17−ヘキサデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3R,7R,17S−トリオール(本明細書では、17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールまたは化合物1とも称する)は、慢性の非増殖性炎症に起因する病状の処置に有効である。他の抗炎症ステロイド類とは対照的に、化合物1は、かかる化合物による望ましくない副作用の一因となり得る活性である、性ステロイド核受容体における結合活性が本質的にないことがわかった。ステロイドの合成中間体、副産物、副生成物または性ステロイド受容体活性(1つもしくは複数)が影響あるいはモジュレートされることがあり得るような他の不純物、および化合物1の調製物中に存在し得るような他の不純物は、副作用の一因となり得るため望ましくない。したがって、核の性ステロイド活性(1つまたは複数)に影響またはモジュレートする不純物(合成中間体、ステロイド副生成物または副産物)の生成が回避される化合物1ならびにその類似体および誘導体の調製方法は有用である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
17α−アルキニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールを得るための反応シーケンスでは、予測に反して、別の場合では提示され得ない性ステロイド受容体活性(1つまたは複数)を付与する望ましくないステロイド不純物(1種類または複数種)を含有する物質が生成されることがわかった。このような不純物は、17α−アルキニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールの医薬としての許容性に有害な影響を及ぼす。17α−アルキニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールの調製物中にこのような不純物が存在することは報告されておらず、その存在により、該存在を除去または性ステロイド活性(1つもしくは複数)が存在しないであろうレベルまで低減させるためのさらなるコストが追加される。本明細書に開示する反応シーケンスは、望ましくないステロイド不純物(1種類または複数種)の生成を回避し、したがって、不純物(1種類または複数種)の除去またはレベル低減を行うために、このようにして得られる17α−アルキニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールの精製の必要性を回避するものである。
【0005】
本発明の一実施形態は、3位に酸素連結基および17位にケトンを有するアンドロスタ−5−エンに対して17位にアルキニル基および7位に酸素官能基を導入し、C7に酸素置換基がなく、したがって、性ステロイド受容体において望ましくない結合活性を有する副生成物が除外されるようにするための反応シーケンスを提供する。
【0006】
本発明の別の実施形態は、デヒドロエピアンドロステロン(本明細書では、DHEAまたは3β−ヒドロキシ−アンドロスタ−5−エン−17−オンとも称する)に対して17位にエチニル基および7位にヒドロキシ基を導入し、性ステロイド受容体における結合活性が本質的にない化合物1の調製物が形成されるようにするための反応シーケンスを提供する。
【0007】
別の実施形態において、本発明は、DHEAを出発物質として使用し、エストロゲン化合物である17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,17β−ジオールまたはその潜在的前駆体17α−エチニル−3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−17β−オールを本質的に含まない化合物1を含む調製物を得る反応シーケンスを提供する。
【0008】
本発明の一実施形態において、反応シーケンスは、3位および17位に第1および第2の酸素連結基を有する適切に保護されたアンドロスタ−5−エンを、第3の酸素連結基が7位に導入されるように酸化する事前工程、ならびに17位の第2の酸素連結基が=Oである中間体をアルキン由来のアニオンと反応させる後続工程を含む。
【0009】
本発明の別の実施形態では、反応シーケンスは、DHEA(適切に保護)を、第3の酸素連結基が7位に導入されるように酸化する事前工程、ならびに17位に置換基=Oを有する中間体をアセチレンアニオン(任意選択で保護)と反応させる後続工程を含む。
【0010】
本発明の別の実施形態では、反応シーケンスは、アンドロスタ−5−エン−17−オン−3β,7β−ジオール(適切に保護)を、アルキン由来のアニオンと反応させる工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細説明
定義 本明細書で用いる場合、特に記載のない限り、または文脈によって示唆されない限り、本明細書において定義する用語は、記載の意味を有する。記載の実施形態および実施例の説明は、本発明を例示するものであって、なんら本発明の限定を意図しない。特に矛盾または示唆のない限り(例えば、互いに排他的な要素または選択肢を含むことにより)、該説明において、および本明細書全体を通して、用語「a」および「an」は、1つ以上を意味し、用語「または/もしくは」は、および/またはを意味する。
【0012】
「アルキル」は、本明細書で用いる場合、連結されたノルマル、第2級、第3級または環状、すなわち、線形、分枝鎖、環状またはその任意の組合せの炭素原子をいう。アルキル基またはアルキル部分は、本明細書で用いる場合、飽和または不飽和であり得る、すなわち、該部分は、独立して選択される二重結合または三重結合を1つ、2つ、3つまたはそれ以上含むものであり得る。不飽和アルキル部分としては、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルおよびアリール部分について以下に記載する部分が挙げられる。アルキル部分内の炭素原子の数は1〜20個、好ましくは1〜8個である。C1〜8アルキルまたはC1〜8アルキルは、1、2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を含むアルキル部分を意味し、C1〜6アルキルまたはC1〜6アルキルは、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を含むアルキル部分を意味する。アルキル部分が指定されている場合、種としては、メチル、エチル、1−プロピル(n−プロピル)、2−プロピル(イソ−プロピル、−CH(CH)、1−ブチル(n−ブチル)、2−メチル−1−プロピル(イソ−ブチル、−CHCH(CH)、2−ブチル(sec−ブチル、−CH(CH)CHCH)、2−メチル−2−プロピル(t−ブチル、−C(CH)、1−ペンチル(n−ペンチル)、2−ペンチル(−CH(CH)CHCHCH)、3−ペンチル(−CH(CHCH)および2−メチル−2−ブチル(−C(CHCHCH)が挙げられ得る。
【0013】
「シクロアルキル」は、本明細書で用いる場合、炭素原子のみで構成された単環式、二環式または三環式の環系をいう。シクロアルキル基またはシクロアルキル部分内の炭素原子の数は種々であり得るが、典型的には3〜約20、例えば好ましくは3〜8個である。C3〜8アルキルまたはC3〜C8アルキルは、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を含むシクロアルキル部分を意味し、C3〜6アルキルまたはC3〜C6は、3、4、5または6個の炭素原子を含むシクロアルキル部分を意味する。好ましいシクロアルキル置換基は、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびアダマンチルである。環式環系内に二重結合を有するシクロアルキル置換基は、シクロアルケニル置換基と称されることもある。
【0014】
「アルケニル」は、本明細書で用いる場合、1つ以上、例えば、1、2、3、4、5、6つ、またはそれ以上、典型的には1、2または3つの二重結合(−CH=CH−)を含み、アリール部分(ベンゼンなど)を含んでいてもよく、さらに、連結されたノルマル、第2級、第3級または環状、すなわち、線形、分枝鎖、環状またはその任意の組合せの炭素原子を含む(アルケニル部分がビニル(−CH=CH)である場合を除く)部分または基を意味する。多数の二重結合を有するアルケニル部分では、二重結合は、連続的に配置されていてもよく(すなわち、1,3ブタジエチル部分)、1つ以上の介在飽和炭素原子を伴って非連続的に配置されていてもよく、その組合せであってもよいが、二重結合の環状連続配置において、4n+2個の電子の環状共役系(すなわち、芳香族)は形成されないものとする。アルケニル部分内の炭素原子の数は2〜20個、好ましくは2〜8個であり得る(can is)。C2〜8アルケニルまたはC2〜8アルケニルは、2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を含むアルケニル部分を意味し、C2〜6アルケニルまたはC2〜6アルケニルは、2、3、4、5または6個の炭素原子を含むアルケニル部分を意味する。アルケニル部分が指定されている場合、種としては、例えば、1つ以上の二重結合を有する上記の任意のアルキル部分、例えば、メチレン(=CH)、メチルメチレン(=CH−CH)、エチルメチレン(=CH−CH−CH)、プロピルメチレン(=CH−CH−CH−CH)、ビニル(−CH=CH)、アリル(−CH=CHCH)、1−メチルビニル、ブテニル、イソ−ブテニル、3−メチル−2−ブテニルまたは1−ペンテニルなどが挙げられる。
【0015】
「アルキニル」は、本明細書で用いる場合、1つ以上、典型的には1、2または3つ、通常1つの三重結合(−C≡C−)が存在し、任意選択で1、2、3、4、5、6つ、またはそれ以上の二重結合を含み、残りの結合(存在する場合)が単結合であり、連結されたノルマル、第2級、第3級または環状、すなわち、線形、分枝鎖、環状またはその任意の組合せの炭素原子を含む(アルキニル部分がエチニルである場合を除く)連結されたノルマル、第2級、第3級または環状の炭素原子をいう。アルキニル基またはアルキニル部分内の炭素原子の数は2〜20個、好ましくは2〜8個である。C2〜8アルキニルまたはC2〜8アルキニルは、2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を含むアルキニル部分を意味する。アルキニル置換基が指定されている場合、好ましい種としては、−C=CH、−C≡CCH、−C≡CCHCH、−C≡CCおよび−C=CCHが挙げられる。特に好ましい種は、エチニル、プロピニルおよび1−ブチニルであり、エチニルが特に好ましい。
【0016】
「アリール」は、本明細書で用いる場合、環内ヘテロ原子がなく、1、2、3または4〜6個の環、典型的には1〜3個の環を含み(ここで、環は、炭素原子のみで構成された芳香族環系または縮合環系である)をいい、4n+2個の電子(ヒュッケル則)、典型的には6、10または14個の電子(その一部は、さらに環外共役(交差共役)に関与したものであり得る)の環状共役系をいう。アリール基が指定されている場合、種としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントリルおよびキノンが挙げられ得る。
【0017】
「ヘテロアリール」は、本明細書で用いる場合、アリール環系を構成する炭素原子の1つ以上、典型的には1、2または3つであるが全部ではない炭素原子が、炭素以外の原子であるヘテロ原子(例えば、N、O、S、Se、B、Si、P、典型的には、酸素(−O−)、窒素(−NX−)またはイオウ(−S−)(式中、Xは、−H、保護基またはC1〜6の任意選択で置換されたアルキルである)、該ヘテロ原子は共役系に、環系内の隣接原子とのπ結合またはヘテロ原子の孤立電子対いずれかによって参与している)で置き換えられており、1つ以上の炭素またはヘテロ原子または両方の組合せにおいて任意選択で置換されていてもよく、環状共役系が保持される様式で複素環を構成しているアリール環系をいい、意味する。
【0018】
「保護基」は、本明細書で用いる場合、結合対象の原子または官能基が、不要な反応に参与することを抑制または低減させる部分を意味する。例えば、−ORPRの場合、RPRは、ヒドロキシルに見られる酸素原子の保護基であり、一方、=Oでは、保護基はケタールもしくはチオケタール(この場合、二価酸素は、例えば、−X−(CH−Y−(式中、XおよびYは、独立して、SおよびOであり、nは2〜3である)で置き換えられ、スピロ環系が形成される)、またはオキシム(この場合、二価酸素は、=N−OR(式中、Rは、−H、アルキルもしくはアリールである)で置き換えられる)である。−C(O)−ORPRでは、RPRはカルボニルオキシ保護基であり、−SRPRでは、RPRはチオールのイオウの保護基であり、例えば、−NHRPRまたは−N(RPR−では、RPRは、第1級または第2級アミンの窒素原子保護基である。イオウまたは窒素または一価酸素原子の保護基は、通常、求電子性化合物との不要な反応を抑制するために使用される。二価酸素原子(すなわち、=O)の保護基は、通常、求核性化合物との不要な反応を抑制するために使用される。
【0019】
「任意選択で置換されたアルキル」、「任意選択で置換されたアルケニル」、「任意選択で置換されたアルキニル」、「任意選択で置換された複素環」、「任意選択で置換されたアリール」、「任意選択で置換されたヘテロアリール」などは、任意選択で水素原子(1つまたは複数)と置換される置換基(1つまたは複数)を有する本明細書において定義または開示したアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールまたは他の基もしくは部分を意味する。かかる置換基は、上記のものである。フェニル部分(−Ph)では、芳香族環上に存在する任意の2つの置換基の配置が、互いに対してオルト(o)、メタ(m)またはパラ(p)であり得る。好ましい任意選択で置換された部分は、−CF、−CHOH、−C≡C−Clおよび−Ph−Fである。
【0020】
「O連結基」、O連結置換基などの用語は、本明細書で用いる場合、自身が有する酸素原子を介してある部分に直接結合される基または置換基をいう。O連結基は、一価であってもよく(例えば、−OH、アセトキシ、すなわち、−O−C(O)−CH)、アシルオキシ、すなわち、−O−C(O)−R(式中、Rは、−H、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールもしくは任意選択で置換された複素環である)、アリールオキシ(アリール−O−)、フェノキシ(Ph−O−)、ヘテロアリールオキシ(ヘテロアリール−O−)、シリルオキシ、すなわち、RSiO−(式中、Rは、独立して、アルキルもしくはアリールである)、または任意選択で置換された−ORPR(式中、RPRは、先に定義した保護基である)などの基)、二価(すなわち、=O)であってもよい。
【0021】
用語「化合物1の調製物」は、具体的または一般的に記載した合成スキームのいずれか1つに従って調製される物質をいい、質量基準で主要成分としてみられる化合物1と、固形物として最初に単離したとき、あるいは固形物の再結晶およびまたは精製後のいずれかで化合物中に存在するプロセス不純物を含むものである。
【0022】
用語「結合活性」は、特定の化合物、化合物1を含む調製物、または化合物1の調製物中の不純物(1種類もしくは複数種)が、受容体、典型的には性ステロイド受容体(アンドロゲン受容体またはエストロゲン受容体など)と結合または会合して、該受容体の生物学的活性に奏功またはモジュレートする能力をいう。結合は、通常、アッセイにおいて、化合物(通常、化合物1を含む調製物中の不純物)が、競合アッセイにおいて受容体(すなわち、参照リガンド)に結合された該受容体の生理学的に関連するリガンドと置き換わる能力として測定される。参照リガンドは、典型的には、受容体の天然リガンドまたは放射性プローブもしくは分光分析用プローブで標識された受容体アゴニスト(その存在は、シンチレーション計数もしくは分光分析法(蛍光放射あるいは蛍光偏光など)によって確認(query)され得る)である。
【0023】
放射性プローブは、典型的にはHおよび/または14Cであり、この場合、アッセイ条件下で、アッセイ結果の解釈を複雑にしたり、または混乱させ得る程度まで放射性標識の減少が起こり得ない位置で、リガンドの1個以上の原子が放射性原子(1つまたは複数)で置き換えられている。分光分析用プローブは、典型的にはフルオロフォアであり、これは、参照リガンドに、0.1〜100nMの範囲のKを有する標識参照リガンドをもたらす位置であって、アッセイ条件下で、アッセイ結果の解釈を複雑にしたり、または混乱させ得る程度まで蛍光標識が減少しない位置で結合される。具体的な化合物または化合物1の調製物の結合活性は、典型的にはKで表示され、Kは、具体的な化合物または調製物が受容体に対する標識参照リガンドと50%置き換わる濃度と、標識参照リガンドのKdから求められる。
【0024】
「性ステロイド受容体」は、生殖器官の成長または機能ならびに第二次性徴の発達
への影響と通常関連している核受容体をいい、アンドロゲン受容体、エストロゲン受容体−α(ERα)、エストロゲン受容体−β(ERβ)およびプロゲステロン受容体が挙げられる。
【0025】
「〜が本質的にない」は、本明細書で用いる場合、化合物1の調製物中に不純物または不純物の性質が存在しないか、または化合物1の所望の薬理学的活性に有害な影響を及ぼし得る、もしくは消失させ得る量で測定可能でないことをいう。例えば、用語「本質的に性ステロイド受容体結合活性がない」は、化合物1の調製物について、性ステロイド核受容体に対して、該受容体への結合に関するK>10μMの値(標準的な受容体結合アッセイ条件を用いて測定)によって規定される受容体結合活性がないことをいい、該調製物中に存在し得る性受容体結合活性をもたらし得る不純物の実体とは無関係である。同様に、本質的にエストロゲン受容体結合活性がないエストロゲン受容体は、化合物1の調製物について、核エストロゲン受容体ERαとERβに対して、該受容体への結合に関するK>10μMの値(標準的な受容体結合アッセイ条件を用いて測定)によって規定される受容体結合活性がないことをいい、該調製物中に存在し得るエストロゲン受容体結合活性をもたらし得る不純物の実体とは無関係である。用語「〜を本質的に含まない」が、化合物1の調製物中に存在する不純物の量を示すために使用されている場合、該用語は、通常、核エストロゲン受容体の活性化に起因し、かつこの受容体における不純物の結合活性による副作用に対する一因となることにより、化合物1のその意図された用途に対する薬理学的活性に有害な影響を及ぼし得る量で不純物が存在しないことを意味する。不純物(例えば、17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,17β−ジオール)は、エストロゲン受容体に対する結合もしくはモジュレーションによって化合物1の薬理学的活性に直接影響を及ぼすことがあり得、または化合物1の調製物を含む組成物での処置対象の被検体内において、加水分解(自発的もしくは酵素的のいずれか)によって、エストロゲン受容体に影響を及ぼす、もしくはモジュレートする化合物に変換される(例えば、17α−エチニル−3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−17β−オールが17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,17β−オールに変換される)ことにより、化合物1の薬理学的活性に間接的に影響を及ぼすこともあり得る。
【0026】
用語「不純物」または「プロセス不純物」は、本明細書で用いる場合、化合物1の合成中に形成されるステロイド副産物、副生成物または分解生成物であって、調製物全体の質量に対する寄与が小さい(典型的には約2%未満である)化合物1の調製物中の成分をいう。
【0027】
「製剤」または「薬学的に許容され得る製剤」は、本明細書で用いる場合、化合物1の調製物と、1種類以上の薬学的に許容され得る賦形剤とを含む組成物をいう。
【0028】
本明細書に記載の発明は、3位、7位および17位に酸素置換基を有し、性ステロイド受容体において望ましくない結合活性を有する不純物を本質的に含まない17−アルキニルステロイドの調製方法を提供する。このようにして調製されるかかる17−アルキニルステロイドは、1種類以上の不純物を本質的に含まず、望ましくない結合活性の原因であるC7の酸素置換基がないと特性評価されるものである。
【0029】
本方法は、化合物1に見られた予想外のエストロゲン性効果に対応して開発された。化合物1は、プロセスAと称する以下の工程:
(1)好適に保護されたアセチレンアニオンを、好適に保護されたデヒドロエピアンドロステロンと接触させ、17位の=O官能基へのアセチレンアニオンの付加によって17位αにエチニル基を導入する工程;
(2)好適に保護された17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,17α−ジオールを酸化剤と接触させ、=O官能基を7位に導入する工程;および
(3)好適に保護された17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−7−オン−3β,17α−ジオールを還元剤と接触させ、7位の=O官能基をβ−ヒドロキシルに直接変換する工程を含む経路によって調製した。
【0030】
プロセスAの実施形態をスキームI(本明細書では、プロセスA,経路1と称する)に示す。このようにして調製された化合物1は、予測に反して、エストロゲン性効果を有することがわかった。この経路によって調製した化合物1の不純物プロファイリングでは、7位のβ−ヒドロキシ基が存在しないこと以外は化合物1と同じ構造を有する17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,17β−ジオールの存在が示された。受容体結合試験では、17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,17β−ジオールは、エストロゲン受容体ERαとErβにおいて有意な結合活性を有するが、この不純物を本質的に含まない化合物1は、10μMまで試験した場合、これらの受容体において活性をもたないことが示された。この望ましくない性ステロイド活性に基づき、エストロゲン副生成物である17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,17β−ジオールの生成が回避されるプロセスBと称する新たなプロセスを開発した。
【0031】
プロセスBは、以下の工程
(a)好適に保護されたデヒドロエピアンドロステロンを酸化剤と接触させ、
7位に=O官能基を直接導入する工程;
(b)好適に保護されたアンドロスタ−5−エン−7,17−ジオン−3β−オールを還元剤と接触させ、7位の=O官能基をβ−ヒドロキシルに変換する工程;
(c)好適に保護されたアセチレンアニオンを、好適に保護されたアンドロスタ−5−エン−17−オン−3β,7β−ジオールと接触させ、17位の=O官能基へのアセチレンアニオンの付加によって17α位にエチニル基を導入する工程
を含む。
【0032】
工程(a)を行うための手順は、Wuts,P.G.M.“A chemobiological synthesis of eplerenone”Synlett(3):418−422(2008)に記載の微生物による酸化;オキソクロム系試薬での酸化[例えば、Koutsoureaら,“Synthetic approaches to the synthesis of a cytostatic steroidal B−D bilactam”Steroids 68:569−666(2003)およびCondomら,“Preparation of steroid−antigens through positions of the steroid not bearing functional group”Steroids 23:483−498(1974)参照]、ペルオキシド補助型アリル酸化[例えば、Marwah,P.ら“An economical and green approach for the oxidation of olefins to eneones”Green Chem.6:570−577(2004)およびMarwah,P.ら,“Ergosteroids IV:synthesis and biological activity of steroid glucuronosides,ethers and alkylcarbonates”Steroids 66:581−595(2001)参照]、N−ヒドロキシスクシンイミド/AIBNでの酸化[例えば、Lardyら“Ergosteroids II:Biologically active metabolites and synthesis derivatives of dehydroepiandrosterone”Steroids 63:158−165(1998)参照]を含む
工程(a)では、好適に保護されたデヒドロエピアンドロステロンは、3β−ヒドロキシルと、ヒドロキシルおよびケトンに対して典型的に使用される保護基(Greene,T.W.“Protecting groups in organic synthesis”Academic Press,1981に示されている)で保護された=O官能基を有する。ヒドロキシ保護基は、(1)17位の=O官能基を保護するため(既に存在しない場合)(または(1)17位に事前に導入されたケトン保護基に有害な影響を及ぼすものを導入するための条件が必要とされない)、および(2)7位に=O官能基を直接導入するために必要とされる条件に適したものであるのがよい。また、好ましいヒドロキシ保護基は、(3)7位に導入される=O官能基を充分な選択性を伴って還元し、7β−ヒドロキシを主要異性体として得るために必要とされる条件に適したもの、および(4)=O官能基の還元によって形成されるアリルアルコールが充分な安定性を有する条件下で除去されるものである。(1)〜(4)の条件を満たすヒドロキシ保護基としては、エステル、通常、アリールエステルまたはC1〜6アルキルエステル、(17位の=O官能基の保護基がケタールであり、使用される還元剤がボロヒドリド系還元剤である場合)が挙げられる。より強力なヒドリド還元剤の使用では、ヒドロキシ保護基の早期の減少を抑制するためのヒドロキシ保護基として、ヒンダードエステルまたは置換メチルエーテルが必要とされ得る。好ましい=O保護基は、ジメチルケタール、ジエチルケタールまたはエチレングリコールから調製されるスピロケタールなどのケタールである。好ましい好適に保護されたデヒドロエピアンドロステロンは、3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−17−オンのエチレンケタールである。
【0033】
工程(b)を行うための手順は、金属ヒドリド系試薬、例えば、ボロヒドリド系試薬など(Zn(BH、NaBHが挙げられる)での還元、任意選択で、遷移金属塩(CeCl、NiCl、CoClまたはCuClなど)、L−Selectride(リチウムトリ−sec−ブチルボロヒドリド)またはN−Selectride(ナトリウムトリ−sec−ブチルボロヒドリド)での還元を含む。また、水素化アルミニウムリチウム系または水素化アルミニウムナトリウム試薬も使用され得るが、かかる試薬の還元強度のため、選択性に欠点を有することがあり得る。これは、反応性を低下させるためのアルミニウムに対するアルコキシ配位子を有する水素化アルミニウムリチウム系試薬を使用することにより改善され得る。かかる試薬は、一般式LiAl−H(OR)4−n(式中、n=1、2、3,Rは、C1〜6アルキルである)を有し、LTMA(水素化トリエトキシアルミニウムリチウムLTEAH(水素化トリエトキシアルミニウムリチウム)、RED−AL(水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム)が挙げられる。ボロヒドリド系試薬が使用される還元はアルコール溶媒中で行われ得るが、水素化アルミニウム系試薬が使用される還元は、THFなどのエーテル溶媒が必要とされる。選択性は、特に、水素化アルミニウム試薬では、反応を0℃〜−78℃の温度で行うことにより改善され得、低温の方が水素化アルミニウム試薬には、より適している。
【0034】
工程(c)を行うための手順は、インサイチュでのアセチレンアニオンの調製後、このようにして形成されるアセチリドを好適に保護されたアンドロスタ−5−エン−17−オン−3β,7β,17β−トリオールと接触させることを含む。アセチリドは、アセチレンを、アミドアニオン(例えば、NaNH)と炭化水素溶媒(例えば、ベンゼン、トルエンまたはキシレン)中で、例えばUS2,251,939の場合のようにして接触させることにより、金属ナトリウムまたはカリウムと液体アンモニア中で、例えばUS2,267,257の場合のようにして接触させることにより、あるいは、モノシリル保護アセチレン(トリメチルシリルアセチレンなど)をオルガノリチウム試薬と接触させることにより調製してもよい。好適なオルガノリチウム試薬としては、市販のn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、メチルリチウム、t−ブチルリチウムまたはフェニルリチウムが挙げられ、あるいはアルキルまたはアリールブロミドと金属リチウムとの不活性溶媒(例えば、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン)中での反応によって調製したものであってもよい。このようにして調製されるアセチリドを、次いで、好適に保護されたアンドロスタ−5−エン−17−オン−3β,17β−ジオールと接触させる。
【0035】
工程(c)では、好適に保護されたアンドロスタ−5−エン−17−オン−3β,7β−ジオールはヒドロキシル保護基を有し、該保護基は、カルバニオン化学反応において典型的に使用され、末端アルキンおよびアリルアルコールの存在と適合性である条件下で除去され得るものであり、中性条件または弱酸性条件下、典型的にはpH3〜7で除去され、アリルアルコールと適合性である条件下で導入され得る保護基が挙げられる。好ましい保護基は、式(RSiO−(式中、Rは、独立して、アリールまたはC1〜6アルキルであり、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、メチルジイソプロピルシリル、メチル−t−ブチルシリル、トリベンジルシリルおよびトリフェニルシリルエーテルが挙げられる)のシリルエーテルである。好ましいシリルエーテルは、トリメチルシリルエーテルおよびt−ブチルジメチルシリルエーテルである。一部の置換メチルエーテルが使用され得、2−(トリメチルシリル)−エトキシメチルエーテル(SEMエーテル)、テトラヒドロピラニルエーテル(THPエーテル)、テトラヒドロチオピラニルエーテル、4−メトキシ−テトラヒドロピラニルエーテル、4−メトキシテトラヒドロチオピラニルエーテル、テトラヒドロフラニルエーテルおよびテトラヒドロチオフラニルエーテルが挙げられる。一部の置換エチルエーテルがヒドロキシ保護基として使用され得、1−エトキシエチルエーテルおよびt−ブチルエーテルが挙げられる。好ましいヒドロキシ保護基は、立体要件が少なく(トリメチルシリルエーテルなど)、3βと7βのヒドロキシ基の同時保護が可能なものである。
【0036】
工程(c)を行うための他の手順は、好適に保護されたアンドロスタ−5−エン−17−オン−3β,7β−ジオールを、ナトリウムアセチリド、リチウムアセチリド(そのエチレンジアミン複合体として)、エチニルマグネシウムハライド(例えば、塩化物もしくは臭化物)またはエチニル亜鉛ハライドと、例えば、US2,243,887の場合のようにして、ジエチルエーテルまたは他のエーテル溶媒中(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、2−メトキシエチルエーテルなど)で接触させることを含むものである。
【0037】
プロセスBの一実施形態では、3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−7−オン−17,17−エチレンジオキシが好適に保護されたアンドロスタ−5−エン−7,17−ジオン−3β−オールとして使用される(スキームII参照;本明細書では、プロセスB,経路1と称する)。
【0038】
プロセスBの別の実施形態では、3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−7−オン−17−オキシムが好適に保護されたアンドロスタ−5−エン−7,17−ジオン−3β−オールとして使用される(スキームIII参照;本明細書では、プロセスB,経路2と称する)。
【0039】
以下の実施例およびスキームにより、本発明をさらに説明する。これらは、なんら本発明を限定することを意図しない。
【0040】
スキームI.プロセスA,経路1
【0041】
【化1】

【0042】
【化2】

【実施例】
【0043】
実施例
実施例1. 3β−トリメチルシリルオキシ−アンドロスタ−5−エン−17−オン(TMS−DHEA)の合成:DHEAを、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(HMDS)およびサッカリン(触媒として)と、アセトニトリル中で合わせる。反応混合物を数時間、窒素雰囲気下で攪拌しながら還流加熱した。遊離アンモニアを微真空下でパージした。次いで、容量を蒸留によって減少させた後、混合物を冷却し、析出した生成物を濾過によって収集した。TMS−DHEA生成物の濾過ケークを冷アセトニトリルで洗浄し、0.5%以下の乾燥減量(LOD)まで温窒素で乾燥させ、単離収率ほぼ90%の標題化合物を得た。
【0044】
実施例2. 17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,17β−ジオールの合成:n−ブチルリチウムをTHF中のMeSi−C≡CHに、窒素雰囲気下、ほぼ0℃でゆっくりと添加し、リチウムアセチリドMeSi−C≡C−Liを得る。温度を約20℃まで上げ、TMS−DHEA THF中の溶液として添加し、約3時間攪拌した。温度を約40℃まで上げることにより反応をクエンチした後、メタノールをゆっくりと添加した。遊離アセチレンを微真空下でパージする。次いで濃KOHをゆっくりと、ガスの発生がおさまるまで添加し、ほぼ45℃での真空蒸留によって容量をほぼ50%減少させた。温度をほぼ40℃に維持しながら、過剰の6N HClをゆっくりと添加した。反応混合物を水で希釈し、ほぼ5℃まで冷却した後、生成物を濾過によって収集し、濾過ケークを冷50/50メタノール水で洗浄した。生成物を0.5%(not more than to)のLODまで温窒素で乾燥させ、単離収率ほぼ87%の標題化合物を得た。
【0045】
実施例3. 17α−エチニル−3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−17β−オールの合成:17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,17β−ジオールを、無水酢酸、トリエチルアミンおよび触媒量のDMAP(THF中)と、還流温度で少なくとも4時間混合した。反応の進行をHPLCによってモニターし、残留する出発物質が1%以下になるまで進行させた。次いで混合物を30〜50℃まで冷却し、水を添加した後、ほぼ0℃まで1時間冷却した。粗製生成物を濾過によって回収し、冷アセトニトリルで洗浄し、5%以下のLODまで温窒素で乾燥させた。粗製生成物をHPLCによって特性評価し、標題化合物が、HPLCによるピーク面積純度95%未満で存在する場合は、アセトニトリルから再結晶させた。再結晶させた生成物を濾過によって回収し、乾燥させ、単離全収率83%の標題化合物を得た。
【0046】
実施例4: 17α−エチニル−3β−アセトキシ−17β−オール−アンドロスタ−5−エン−7−オンの合成:17α−エチニル−3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−17β−オールを、t−ブチルヒドロペルオキシドとヨウ化銅(I)を含むアセトニトリルと合わせ、2時間還流した。次いで約50℃まで冷却した後、大過剰のチオ硫酸ナトリウム水溶液を、攪拌しながら少なくとも30分間添加することにより、反応をクエンチした。この条件下では、有機相と水相は混和性ではない。攪拌を停止して相分離させ、水相(下側)を廃棄する。有機相を亜硫酸ナトリウム水溶液とブラインで、約45℃で少なくとも30分間混合した後、相分離させることによって2回抽出し、水相を除去した。得られた有機相を、45℃未満での真空蒸留によって元の容量のほぼ25%まで濃縮し、次いで約5℃まで冷却した。粗製生成物17α−エチニル−3β−アセトキシル−アンドロスタ−5−エン−7−オン−17β−オールを濾過によって回収した。濾過ケークを冷アセトニトリル/水で洗浄し、1.0%以下のLODまで温窒素で乾燥させた。粗製生成物を、N−メチル−ピロリジノン(NMP)にほぼ90℃で溶解させた後、0℃でほぼ1時間冷却することによって2回再結晶させた。標題化合物を濾過によって、単離全収率ほぼ30%で回収した。
【0047】
実施例5: 17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールの合成:17α−エチニル−3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−7−オン−17β−オールをNaBH含有THF/メタノールで、CeClの存在下、ほぼ0℃で約2時間還元した。反応の進行をHPLCによってモニターした。希HClをゆっくりと添加するとともに、遊離水素を微真空除去しながら、反応をクエンチした。メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)を添加し、反応混合物をブラインで2回洗浄し、水相を廃棄した。メタノール性KOHを有機相に、ほぼ0℃で約2時間添加することによって、粗製生成物から3β−アセトキシ基を除去し、反応の進行をHPLCによってモニターした。終了後、反応混合物を酢酸で中和し、反応容量のほぼ2分の1を、45℃未満での真空蒸留によって除去した。元の反応混合物の容量のほぼ3分の2を、イソプロパノール(IPA)として添加し、続いて、45℃未満での真空蒸留によって、容量を元の容量のほぼ4分の1まで減少させた。残渣混合物を0℃まで冷却し、粗製17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールを濾過によって回収し、冷IPAで洗浄し、温窒素で乾燥させた。
【0048】
実施例6. プロセスAによる17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールの再結晶:実施例5の粗製17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールを、還流メタノール/水(約10/1)に溶解させた。メタノールを、攪拌しながら真空蒸留によって除去し、充分な水と交換して、結晶化生成物の懸濁液を維持した。この懸濁液を、攪拌しながらほぼ5℃まで冷却し、生成物を濾過によって回収した。濾過ケークを水で洗浄し、真空下で水分0.5%未満まで乾燥させ、標題化合物をほぼ69%の単離収率で得た。
【0049】
スキームII:プロセスB,経路1
【0050】
【化3】

【0051】
【化4】

【0052】
【化5】

実施例7. 3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−17,17−エチレンジオキシの合成:300L容反応器に、36kgのオルトギ酸トリエチル、20kgの3β−アセトキシ−5−アンドロステン−17−オン、12.6kgのエチレングリコールおよび400gのp−トルエンスルホン酸を仕込んだ。混合物を、窒素下、反応が終了するまで(約2〜3時間)還流加熱した。次いで混合物を60℃まで冷却し、16kgの無水エタノールおよび400mlのピリジンを添加した。得られた溶液を容器に移し、一晩冷蔵した。形成された固形物を濾過し、80kgの50%エタノールで洗浄し、40〜50℃で乾燥させ、18.5〜21.0kg(81.5〜92.5%)の標題化合物を得た。
【0053】
実施例8. 3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−7−オン−17,17−エチレンジオキシの合成:500L容反応器に、200kgの酢酸エチルおよび25kgの3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−17,17−エチレンジオキシを仕込んだ。混合物を30分間攪拌し、この時点で、55kgの70%t−ブチルペルオキシドおよび9kgの重炭酸ナトリウムを添加した。次いで反応混合物を0℃まで冷却し、116kgの13%過塩素酸ナトリウム(水溶液)を10時間かけて、反応温度が5℃未満であり、かつpH7.5〜8.5が維持されるように添加した。反応終了後、有機層を分離し、水相を酢酸エチル(35kg×2)で抽出した。合わせた有機相を、33kgの亜硫酸ナトリウムを含む167kgの水の溶液と合わせ、得られた混合物を40℃で3時間攪拌した。有機相を50kgのブラインで洗浄し、55〜60kgまで濃縮し、この時点で、50kgのメタノールを添加した。一晩冷蔵後、白色固形物が形成され、これを濾過し、10kgのメタノールで洗浄し、40〜50℃で乾燥させ、7.1〜7.8kg(27.4〜30.1%)の標題化合物を得た。
【0054】
実施例9. 3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−17,17−エチレンジオキシ−7β−オールの合成。500L容反応器に、48kgのTHF、10kgの3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−7−オン−17,17−エチレンジオキシおよび9.6kgのCeCl・7HOを含む95kgメタノールの溶液を仕込んだ。この混合物を0℃までを冷却し、この時点で、2.0kgのNaBHを、温度が5℃未満に維持されるようにバッチ式で3時間かけて添加した。30分間以上攪拌後、28kgのアセトンを、温度が5℃未満に維持されるようにゆっくりと添加し、攪拌をさらに30分間継続した。この混合物に、240kgの水を添加し、攪拌を1時間継続した。有機溶媒を真空除去し、残渣を酢酸エチル(100kg+50kg)で抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄した。次いで溶媒を除去し、8.6〜8.9kg(85.1〜88.1%)の標題化合物を得た。
【0055】
実施例10. 3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−17−オン−7β−オールの合成:500L容反応器に、315kgのアセトンおよび18kgの3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−17,17−エチレンジオキシ−7β−オールを仕込んだ。混合物を5℃まで冷却し、2.34kgのp−トルエンスルホン酸を、温度が10℃未満に維持されるようにゆっくりと添加した。混合物を8〜15℃で36〜48時間攪拌後、3.0kgの重炭酸ナトリウムを添加し、攪拌を1時間継続した。アセトンを真空除去し、残渣に100kgの水を添加した。混合物をを冷蔵庫に一晩入れ、白色沈殿物を得、これを濾過し、33kg(湿潤)の標題化合物を得た。
【0056】
実施例11. アンドロスタ−5−エン−17−オン−3β,7β−ジオールの合成:500L容反応器に、230kgメタノール、33kg(湿潤)の3β−アセトキシ−7β−ヒドロキシ−5−アンドロステン−17−オン、108kgの水および15kgのNaCOを仕込んだ。混合物を3時間還流加熱した。メタノールを真空除去し、この時点で、残渣に250kgの水を添加した。混合物をを冷蔵庫に一晩入れ、析出物を得た。固形物を濾過によって回収し、次いで水で洗浄し、40〜50℃で乾燥させ、9.5〜10.5kg(67.9〜75.0%)の標題化合物を白色固形物として得た。
【0057】
実施例12. アンドロスタ−5−エン−17−オン−3β,7β−ジオールの精製:500L容反応器に、20kgの粗製3β,7β−ジヒドロキシアンドロスタ−5−エン−17−オンおよび200kgメタノールを仕込み、すべての固形物が溶解するまで加熱した。この溶液を高温の間に濾過し、濾液を冷却すると、白色の結晶性固形物が形成された。固形物を濾過によって回収し、少量のメタノールで洗浄し、40〜50℃で乾燥させた。次いで、固形物を50kgの酢酸エチル中で20分間還流した。冷却後、固形物を濾過し、40〜50℃で真空乾燥させ、15.2kg(76%)の精製標題化合物を得た。
【0058】
実施例13. 3β,7β−ビス−(トリメチルシリルオキシ(siloxy))−5−アンドロステン−17−オンの合成:14.87Kgのアンドロスタ−5−エン−17−オン−3β,7β−ジオール、23.8KgのHMDSおよび0.7Kgのサッカリン触媒と100Lのアセトニトリルの混合物を、窒素雰囲気下で攪拌しながら、8時間還流加熱した。遊離アンモニアを微真空下でパージした。次いで、反応容量を蒸留によって減少させ、30Lの蒸留液を収集した(約2時間を要する)。反応容量を、減圧下(700mmHg)での蒸留によって元の反応容量の半分までさらに減少させた(これは、50℃での約2時間の加熱を要する)。得られた均一な粘稠性のスラリーを5℃まで冷却し、(約3時間を要する)、さらなるアセトニトリルを、混合容量が最小限に維持されるように添加し、該温度に1保持した。析出した生成物を濾過によって回収し、真空下(29mmHg)、45〜50℃で1%以下の乾燥減量(LOD)まで乾燥させ(20時間を要する)、16Kg(81%収率)の標題化合物(95%純度)を得た。
【0059】
実施例14. 17α−エチニル−5−アンドロステン−3β,7β,17β−トリオールの合成:11.02KgのTMS−アセチレンを含む56.5Lのテトラヒドロフラン(THF)に、窒素雰囲気下、−27℃で、8.51Lの10M n−BuLiを添加した。このn−ブチルリチウムは、温度が−7〜−27℃が維持されるように非常にゆっくりと添加し(約2時間を要する)、得られた反応液をほぼ0℃で10分間攪拌し、TMS−リチウム−アセチリドを得た。このTMS−リチウム−アセチリド溶液に、25.41Kgの3β,7β−ビス−(トリメチルシロキシ)−5−アンドロステン−17−オンを含む95.3LのTHFの溶液を添加し、反応温度を20〜25℃に上げながら、25μmフィルターに通して濾過した。添加が終了した後、反応温度を40〜45℃に上昇させた。反応器の内容物をクエンチするため、31.8Lのメタノールを約1時間にわたって添加した後、3.81KgのKOHを含む18.4Lの水を添加し、最終反応器温度を50℃にした。遊離アセチレンを微真空下でパージする。次いで、反応器の内容物を80℃で1時間、次いで、真空下(175mmHg)、約70℃(バンピング(bumping)を回避するため、初期温度は25℃)の蒸留によって、元のポット容量(pot volume)の半分まで濃縮した。残渣を約10℃まで冷却し、35.0Kgの脱イオン水を添加した後、約10℃のポット温度を維持しながら16.4Kgの12N HClを添加し、最終pHを1にした。さらに26.0kgの脱イオン水を添加し、得られた混合物を約5℃で1時間攪拌した。得られたスラリーを濾過し、メタノール/水の75/25混合物(16.9Lのメタノール、5.6Lの水)で洗浄した。回収した固形物を真空下(28水銀柱インチ)、45℃で12時間、0.5%以下の乾燥減量に乾燥させ、9.6Kgの標題化合物(83%収率)を得た。
【0060】
実施例15. 17α−エチニル−5−アンドロステン−3β,7β,17β−トリオールの再結晶:実施例14で調製した粗製9.6Kgの17α−エチニル−5−アンドロステン−3β,7β,17β−トリオールを、還流50/50メタノール/水(4.2Kgのメタノールおよび5.4Kgの水)に溶解させた。この溶液に、33.4Kgのメタノール、続いて37.6KgのTHFを添加した。混合物を還流加熱し、すべての固形物が溶解するまで攪拌を継続し、この時点で、反応器の温度を60〜75℃に維持しながら、99.8Kgの脱イオン水を添加した。混合物を2時間かけて0〜5℃まで冷却し、攪拌を継続しながら、該温度で1時間維持した。固形物を濾過によって回収し、9.6Kgの冷50/50メタノール水で洗浄し、真空下(28水銀柱インチ)、50℃で8時間乾燥させ、8.2Kgの17α−エチニル−5−アンドロステン−3β,7β,17β−トリオールを得た。この最初の再結晶は、微量の着色不純物を最初の生成物から除去するために用いる。最初の再結晶による固形物を約10:1メタノール:水(145.8Kgのメタノールおよび18.2Kgの水)中で80℃まで、すべての固形物が溶解するまで加熱することにより、2度目の再結晶を行った。この溶液(55〜60℃)を25μmフィルターに通して濾過し、微粒状不純物を除去し、この時点で、55〜60℃の2.5Kgのメタノール(反応器のすすぎ洗いのために使用)を添加した。125mmHgで70℃での真空蒸留を、反応器に添加したメタノールの容量の0.9〜1.2倍の容量が蒸留液として回収されるまで、攪拌が可能であるように必要に応じて水を添加しながら(約120〜160Kgの水を添加)行った。最終反応容量を200〜225Lとした。反応器の混合物を0〜5℃まで冷却し、該温度で1時間維持した。得られたスラリーを濾過し、濾過ケークを10Kgの脱イオン水ですすぎ洗いし、真空下(28水銀柱インチ)、50℃で12時間、残留水分含量0.5%未満まで乾燥させた。この単離手順を用いて、最終生成物中のTHF含量を減少させた。収量は、再結晶標題化合物8.0Kgであった(83%収率)。
【0061】
スキームII:プロセスB,経路2
【0062】
【化6】

実施例16. 3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−7−オン−17−オキシムの合成:3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−7,17−ジオン(45g,130mmol)を、800mLのメタノール、200mLのジクロロメタンおよび14.5gのEtN(144mmol)に溶解させた。この溶液に、室温で、10gの塩酸ヒドロキシルアミンを200mLのメタノールに溶解させた溶液を添加した。一晩攪拌後、200mLの水を添加した後、揮発性有機物質を減圧下でのエバポレーションによって除去した。得られた残渣に、さらに1Lの水を添加して白色固形物を得、これを濾過し、水で充分に洗浄した。45gの粗製標題オキシムが(H−NMRによる純度95%で)得られ、これを、さらに精製せずに次の工程で使用した。
【0063】
実施例17. 3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−17−オキシム−7β−オールの合成:44gの3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−7−オン−17−オキシム(100mol%)を含む800mLのメタノールと200mLのテトラヒドロフランの溶液に、50gの塩化セリウム七水和物(110mol%)を含む20mLのメタノールを添加した。得られた混合物を、固形物が完全に溶解するまで攪拌した。約−5℃まで冷却したこの溶液に、7gの水素化ホウ素ナトリウムを30分間かけて添加した。さらに1.5時間−5℃で攪拌後、反応混合物をアセトン(100mL)でクエンチし、次いで、室温まで30分間かけて昇温させた。クエンチした反応混合物を真空濃縮し、揮発性有機物質を除去した。残渣に、800mLの水を添加した後、酢酸エチル(3×500mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、次いで濃縮し、42gの標題化合物を白色泡状物として得、これを、さらに精製せずに次の工程で使用した。
【0064】
実施例18. 3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−17−オン−7β−オール:42gの3β−アセトキシ−アンドロスタ−5−エン−17−オキシム−7β−オール(100mol%)を含む200mLのエタノールの溶液に、100mLの水を添加した後、80g(400mol%)の亜ジチオン酸ナトリウムを添加した。反応液を55℃で加熱し、16時間攪拌した。冷却後、反応液を減圧濃縮した。残渣を100mLの水で希釈し、得られた固形物を濾過によって回収し、1Lのジクロロメタンに再溶解させた。このDCM溶液に1gの活性炭を添加した。一晩攪拌後、混合物を濾過し、得られた濾液を水で洗浄し、乾燥させ、濃縮し、25gの粗製生成物を得た。酢酸エチルからの再結晶により22gの標題化合物を得た。
【0065】
実施例19. エストロゲン受容体結合アッセイ:好適な系の一例は、ERβ用のPanVera製のエストロゲン受容体キットであり、これは、組換えエストロゲン受容体βリガンド、蛍光標識エストロゲンリガンドであるFLUORMONETM ES2(ES2)、および適切なバッファーを含む。この系を蛍光偏光競合アッセイにおいて使用した。該アッセイでは、化合物1の調製物などの試験物品または陽性対照がES2をその結合部位から移動させる。ERβに結合すると、ES2はゆっくりと転動し、高い蛍光偏光値を有する。未結合ES2は、急速に転動し低い蛍光偏光値を示す。次いで、試験化合物の存在下での偏光値の変化により、該試験化合物のERβに対する相対結合親和性(これは、偏光の最大半量シフトがもたらされる試験化合物の濃度であるIC50で示される)を測定する。IC50から、Kを、チェン−プルソフの方程式[Biochem.Pharmacol.22:3099−3108,(1973)]:K=IC50/(1+D/K)(式中、Dは、ES2の濃度であり、Kは、ERβに対するES2の結合の解離定数(K=4±2nM)である)を用いて計算した。
【0066】
競合アッセイは、製造業者のプロトコル(Lit.No.L0712,Rev.10/03)に従って行った。使用したアッセイ試薬は、バキュロウイルスで発現させた完全長ヒトERβ 4.5pmol/μLを含む50mM ビス−Trisプロパン(pH=9)、400mM KCl、2mM DTT、1mM EDTA、10%グリセロール、ES2 400nMを含むメタノール、および100mMリン酸カリウム(pH=7.4)、100μg/mL BGG、0.02%NaNからなるE2スクリーニングバッファーであった。ES2−ERβ複合体は、20μLの20nM ERβ(0.020pmol/μL)と20μLの2nM ES2(0.002pmol/μL)を用いて形成した。陽性対照(エストロゲン)溶液は、20μLの1.0mMストック溶液含有DMSOおよび80μLのDMSOを用いて調製した。1回目の希釈では、50μLのこの溶液を50μLのDMSOに添加し、続いて、これを2倍増ずつ希釈し、14点希釈曲線を得る。2回目の希釈では、1回目の希釈の4μLの各DMSO溶液に、400μLのES2スクリーニングバッファーを添加する。20μLの試験化合物(384ウェル黒色平底マイクロタイタープレート内で、直前に記載のようにして連続希釈したもの)に、20μLのES2−ERβ複合体(0.5%最終DMSO濃度)を添加した後、暗所で20〜30℃にて1〜4時間インキュベーションした。試験化合物を、開始濃度を10mMにしたこと以外は同様にして処理した。蛍光偏光値は、485nm励起および530nm発光干渉フィルターを用いて取得する。ERαの結合アッセイは、バキュロウイルスで発現させた完全長ヒトERα 2.8pmol/μLを試薬として使用し、ERα−ES2複合体を、20μLの30nM(0.030pmol/μL)と20μLの2nM ES2(0.002pmol/μL)から形成したこと以外は、Erβの場合のようにして行った。
【0067】
実施例20. AR、GRおよびPR受容体結合アッセイ。AR競合アッセイは、製造業者のプロトコル(Lit.No.L0844,Rev.05/02)に従って、以下のこと以外はERβで記載のようにして行った。使用した試薬は、組換えラットアンドロゲン受容体リガンド結合ドメイン(Hisでタグ化)とGST[AR−LBD(His−GST)]を0.38pmol/μLで含むバッファー(タンパク質安定化剤およびグリセロールを含有)(pH=7.5)、200nMのFLUORMONETM AL Green(蛍光標識アンドロゲンリガンド)を含む20mMのTris、90%メタノール、ならびにARスクリーニングバッファー(安定化剤およびグリセロールを含有,pH=7.5,スクリーニングバッファー1mLあたり2μLの1mMのDTTを添加(添加DTT中、ARスクリーニングバッファーは2mM))とし、試薬として使用した。AL Green−AR複合体は、20μLの50nM AR(0.050pmol/μL)と20μLの2nM AL Green(0.002pmol/μL)を用いて形成した。Kは、受容体に対するフルオロフォアの結合の解離定数であるK=20±10nMを用いて計算した。
【0068】
PR競合アッセイは、製造業者のプロトコル(Lit.No.L0503,Rev.06/03)に従って、以下のこと以外はERβで記載のようにして行った。使用した試薬は、組換えヒトプロゲステロン受容体リガンド結合ドメイン(GSTでタグ化)[PR−LBD(GST)を3.6pmol/μLで含む50mMのTris(pH=8.0)、500mM KCl、1M尿素、5mM DTT、1mM EDTAおよび50%グリセロール、400nMのFLUORMONETM PL Green(蛍光標識プロゲステロンリガンド)を含む20mMのTris90%メタノール(pH=6.8)、ならびにPRスクリーニングバッファー(タンパク質安定化剤およびグリセロールを含有(pH=7.4)、スクリーニングバッファー1mLあたり4μLの1mM DTTを添加(添加DTT中、PRスクリーニングバッファーは4mM))とした。PL Green−PR複合体は、20μLの80nM PR(0.080pmol/μL)と20μLの4nM PL Green(0.004pmol/μL)を用いて形成した。Kは、受容体に対するフルオロフォアの結合の解離定数であるK=40nMを用いて計算した。
【0069】
GR競合アッセイは、製造業者のプロトコル(Lit.No.L0304,Rev.12/01)に従って、以下のこと以外はERβで記載のようにして行った。使用した試薬は、組換え完全長ヒトグルココルチコイド受容体を0.240pmol/μLで含む10mMリン酸バッファー(pH=7.4)、200mM NaMoO、0.1mM EDTA、5mM DTTおよび10%グリセロール、200nMのFLUORMONETM GS1(蛍光標識グルココルチコイドリガンド)を含む75%メタノール、ならびにGRスクリーニングバッファー(100mMリン酸カリウム(pH=7.4)、200mM NaMoO4、1mM EDTA、20%DMSOを含有、スクリーニングバッファー1mLあたり5μLの1mM DTTを添加(添加DTT中、GRスクリーニングバッファーは5mM))、1mM GR安定化ペプチド(これは、コアクチベーター関連ペプチドである[Chang,CY.Mol.Cell Biol.19:8226−36(1999)参照])を含む10mMリン酸バッファー(pH=7.4)および1M DTT含有水とし、試薬として使用した。2.5mLのGRスクリーニングバッファーに、2.5mLのGR安定化ペプチド溶液および125μLの1M DTTを添加し、GR安定化ペプチド−グルココルチコイド受容体複合体を形成させる。マイクロタイタープレートへの添加順は、20μLの試験化合物含有1%DMSO、10μLの16nM GR(0.016pmol/μL)および最後に10μLの4nM GS1とし、続いて、暗所にて20〜30℃で4時間インキュベーションを行った(全実験時間は7時間を超えてはならない)。Kは、受容体に対するフルオロフォアの結合の解離定数であるK=0.3±0.1nMを用いて計算した。
【0070】
実施例21. 17α−エチニル−5−アンドロステン−3β,7β,17β−トリオール(化合物1)の調製物の不純物プロファイリング
プロセスA:プロセスBによる化合物1の調製物の不純物プロファイリングのためのHPLC条件を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

プロセスB:プロセスBによる化合物1の調製物の不純物プロファイリングのためのHPLC条件は、表1のものと同一である。
【0074】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)好適に保護されたデヒドロエピアンドロステロンを酸化剤と接触させ、7位に=O(ケトン)官能基を直接導入する工程;
(b)好適に保護されたアンドロスタ−5−エン−7,17−ジオン−3β−オールを還元剤と接触させ、7位の該=O(ケトン)官能基を主にβ−配置のヒドロキシルに変換する工程;ならびに
(c)任意選択で保護されたアルキニルアニオンを、好適に保護されたアンドロスタ−5−エン−17−オン−3β,7β−ジオールと接触させ、17位の該=O(ケトン)官能基への該アルキニルアニオンの付加によって17位に主にα−配置のアルキニル置換基を導入する工程
を含む、7位に酸素置換基がないステロイド副生成物を本質的に含まない17α−アルキニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールの調製方法。
【請求項2】
前記17α−アルキニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールが、17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記好適に保護されたデヒドロエピアンドロステロンが、
【化7】

(式中、Rは、−H、C1〜6アルキル、C3〜6シクロアルキル、任意選択で置換されたアリールまたは任意選択で置換されたヘテロアリールである)
の構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記好適に保護されたアンドロスタ−5−エン−7,17−ジオン−3β−オールが、
【化8】

の構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記好適に保護されたアンドロスタ−5−エン−7,17−ジオン−3β−オールが、
【化9】

(式中、Rは、−H、C1〜6アルキル、C3〜6シクロアルキル、任意選択で置換されたアリールまたは任意選択で置換されたヘテロアリールであり、Rは、−H、C1〜6アルキルまたはアリールである)
の構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
がC1〜6アルキルまたはフェニルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記好適に保護されたアンドロスタ−5−エン−17−オン−3β,7β−ジオールが、
【化10】

(各Rおよび各Rは、独立してC1〜6アルキルまたはアリールである)
の構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アルキニルアニオンが、M−C≡C−Si(R(式中、Rは、独立してC1〜6アルキルまたはアリールであり、Mは、第I族、第II族または遷移金属である)の構造を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
MがLi、MgまたはZnである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
、R、RおよびRが−CHである、請求項1〜9いずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
(a)
【化11】

の構造を有する好適に保護されたアンドロスタ−5−エン−7,17−ジオン−3β−オールを、還元剤と接触させ、7位の=O(ケトン)官能基を主にβ−配置のヒドロキシに変換する工程;
(b)工程(a)の生成物の17位のケタール官能基を、=O(ケトン)官能基に変換する工程;および
(c)3位のアセトキシ基を3β−ヒドロキシに変換する工程、または
(b’)工程(a)の生成物の3位のアセトキシ基を3β−ヒドロキシに変換する工程;および
(c’)17位のケタール基を=O(ケトン)官能基に変換する工程;ならびに
(d)
【化12】

の構造を有する工程(b)と(c)または工程(b’)と(c’)の生成物の3β位および7β位のヒドロキシル基をMeSiO−基に変換する工程;ならびに
(e)工程(e)の生成物を、リチウムトリメチルシリル−アセチリドと接触させ、17位の=O(ケトン)官能基へのアセチリドの付加によってエチニル置換基を17位に、主にα−配置で導入する工程;
(f)
【化13】

の構造を有する工程(e)の反応生成物を水性の酸と接触させ、−SiMeを−Hと交換し、それにより、17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,17β−ジオールを本質的に含まない17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールを得る工程
を含む、17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,17β−ジオールを本質的に含まない17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールの調製方法。
【請求項12】
(a)構造
【化14】

好適に保護されたアンドロスタ−5−エン−7,17−ジオンを還元剤と接触させ、7位の=O(ケトン)官能基を、主にβ−配置のヒドロキシに変換する工程;
(b)工程(a)の反応生成物の17位のオキシムを=O(ケトン)官能基に変換する工程;
(c)工程(b)の反応生成物のアシルオキシ基を3β−ヒドロキシに変換する工程;
(d)工程(c)の生成物の3位と7位のヒドロキシ基をMeSiO基に変換する工程;および
(e)工程(d)の反応生成物をリチウムトリメチルシリルアセチリドと接触させ、17位の=O(ケトン)官能基へのアセチリドの付加によってエチニル置換基を17位に、主にα−配置で導入し、それにより、17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,17β−ジオールを本質的に含まない17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールを得る工程
を含む、17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,17β−ジオールを本質的に含まない17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールの調製方法。
【請求項13】
17α−アルキニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオール生成物を再結晶によって精製するさらなる工程を含む、請求項1、11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記17α−アルキニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオール生成物を、再結晶によってメタノール−水から精製する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記17α−アルキニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールが、17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3β,7β,17β−トリオールである、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2011−522836(P2011−522836A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512712(P2011−512712)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/046477
【国際公開番号】WO2009/149392
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(503314680)ハーバー バイオサイエンシーズ,インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】