説明

2‐置換ベンジル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステル誘導体及びそれらの製造方法

【課題】 本発明は、医農薬や機能性材料等の製造中間体として有用な2‐置換ベンジル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステル誘導体、及びそれらを安価な原料より簡便に収率良く製造することができる方法を提供することにある。
【解決手段】 2‐オキソ‐3‐置換フェニルプロピオン酸エステル誘導体(2)をジフルオロメチレンホスホラン類(3)と反応させることにより、新規な2‐置換ベンジル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステル誘導体(1)を収率及び選択性良く製造することができる。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医農薬や機能性材料等の製造中間体として有用な2‐置換ベンジル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステル誘導体及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジブロモジフルオロメタンとトリフェニルホスフィンなどの第三級ホスフィンからホスホニウム塩を経て調製したジフルオロメチレンホスホラン類(リンイリド)とカルボニル化合物とを反応させて、カルボニル基をジフルオロメチレン基へと変換する、いわゆるウィティッヒ型反応が古くから知られている。また、このホスホニウム塩は亜鉛や銅などのハロゲン原子捕捉剤の共存下に反応させることによってもリンイリドが生成し、カルボニル基のジフルオロメチレン化に供することができる(非特許文献1及び2)。しかしながら、本発明の2‐オキソ‐3‐置換フェニルプロピオン酸エステル誘導体(2)のジフルオロメチレン化反応についてはこれまで全く知られていない。
【0003】
一方、本発明に関連した製造方法として、特許文献1には、クロロジフルオロ酢酸ナトリウムとトリフェニルホスフィンから調製したジフルオロメチレン(トリフェニル)ホスホランを用いて、ベンゾイルギ酸エステルをジフルオロメチレン化することにより、2‐置換フェニル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステルを製造する方法について記載されている。しかし、具体的な実施例や化合物例は全く記載されておらず、反応条件や収率等は全く不明である。本発明者らは、クロロジフルオロ酢酸ナトリウムとトリフェニルホスフィンから通常の方法によりジフルオロメチレン(トリフェニル)ホスホランを調製し、ベンゾイルギ酸メチルのジフルオロメチレン化を行ったところ(比較例‐1参照)、3,3‐ジフルオロ‐2‐フェニルアクリル酸メチルが17%の収率で得られるものの、3,3,3‐トリフルオロ‐2‐フェニルプロピオン酸メチルが39%も副生することが判り、この方法は収率、選択性ともに優れた製造方法とは言い難い。また、本発明の2‐オキソ‐3‐置換フェニルプロピオン酸エステル誘導体(2)のジフルオロメチレン化反応に関する記述は一切ない。
【0004】
【化4】

また、特許文献2には、同じくクロロジフルオロ酢酸ナトリウムとトリフェニルホスフィンから調製したジフルオロメチレン(トリフェニル)ホスホランを用いて、2‐ナフチル‐α‐オキソ酢酸エステルをジフルオロメチレン化することにより、2‐ナフチル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステルを製造する方法について記載されているが、生成物の記載はあるものの、詳細な反応条件や生成物の収率などは記述されていない。また本発明の2‐オキソ‐3‐置換フェニルプロピオン酸エステル誘導体(2)のジフルオロメチレン化反応に関する記述は一切ない。
【0005】
【化5】

一方、本発明の2‐置換ベンジル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステル誘導体(1)に類似する化合物に関して、非特許文献3には、ベンジル位が無置換の2‐ベンジル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステルを、パラトルエンスルホン酸存在下にテトラブチルアンモニウムフルオリドで処理することにより、2‐ベンジル‐3,3,3‐トリフルオロプロピオン酸エステルを得る反応が記載されている。原料の2‐ベンジル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステルは、本発明の方法とは異なり、トリフルオロメチルアクリル酸エステルから下式の方法で合成されている。
【0006】
【化6】

【非特許文献1】D.J.Burton,J.Fluorine Chem.,23,339(1983)
【非特許文献2】D.J.Burtonら,Chem.Rev.,96,1641(1996)
【非特許文献3】北爪ら、Synthesis,1988,614
【特許文献1】特表2004‐503475号公報(国際特許公報WO2001/095721)
【特許文献2】米国特許US4001301公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、医農薬や機能性材料等の製造中間体として有用な2‐置換ベンジル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステル誘導体及びそれらの簡便かつ安価な工業的製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、2‐オキソ‐3‐置換フェニルプロピオン酸エステル誘導体(2)とジフルオロメチレンホスホラン類(3)を反応させることにより、2‐置換ベンジル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステル誘導体が収率及び選択性良く製造できることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、一般式(1)
【0010】
【化7】

[式中、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を表す。R及びRは各々独立に、置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜6のアルケニル基又は置換されていてもよい炭素数2〜6のアルキニル基を表す。あるいはRとRは一体となって置換されていてもよい炭素数2〜7のポリメチレン基を表す。Xは水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数2〜6のアルケニルオキシ基、置換されていてもよい炭素数2〜6のアルキニルオキシ基、(置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ)カルボニル基、ビニル基、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルスルホニル基を表す。nは1〜5の整数を表し、nが2〜5の時、Xは異なっていてもよい。]で示される2‐置換ベンジル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステル誘導体に関するものである。
【0011】
さらに本発明は、一般式(2)
【0012】
【化8】

(式中、R、R、R、X及びnは前記と同じ意味を表す。)で示される2‐オキソ‐3‐置換フェニルプロピオン酸エステル誘導体と、一般式FC=P(R(3)[式中、Rは置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基又はジ(炭素数1〜4のアルキル)アミノ基を表す。]で示されるジフルオロメチレンホスホラン類と反応させることを特徴とする、一般式(1)
【0013】
【化9】

(式中、R、R、R、X及びnは前記と同じ意味を表す。)で示される2‐置換ベンジル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステル誘導体の製造方法に関するものである。
【0014】
本発明の製造方法に用いるジフルオロメチレンホスホラン類(3)は、ハロゲン捕捉剤の存在下に一般式P(R(4)(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)で示される第三級ホスフィンと、一般式FCYZ(5)(式中、Y及びZは各々独立にハロゲン原子を表す。)で示されるジハロジフルオロメタンから、あるいは、一般式P(R(4)(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)で示される第三級ホスフィンとクロロジフルオロ酢酸ナトリウムから調製することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の2‐置換ベンジル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステル誘導体(1)は、ジフルオロメチレン基やエステルなど官能基変換可能な置換基を有し、医農薬や機能性材料等の製造中間体として極めて有用である。また、これらのアクリル酸エステル誘導体(1)は本発明の製造方法により、安価な原料より簡便に収率及び選択性良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明において、一般式(1)及び(2)のRで表される炭素数1〜12のアルキル基としては、直鎖状、分枝状あるいは環状のいずれであってもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、ブチル基、イソブチル基、tert‐ブチル基、sec‐ブチル基、ペンチル基、2‐ペンチル基、3‐ペンチル基、シクロペンチル基、1‐メチルシクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等を例示することができる。容易に入手できることや調製が簡便であることからメチル基やエチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0017】
及びRで表される置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基としては、直鎖状、分枝状あるいは環状のいずれであってもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、ブチル基、イソブチル基、tert‐ブチル基、sec‐ブチル基、ペンチル基、tert‐ペンチル基、2‐ペンチル基、3‐ペンチル基、シクロペンチル基、1‐メチルシクロペンチル基、ヘキシル基、2‐ヘキシル基、3‐ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2‐エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等を例示することができる。これらのアルキル基はハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、(炭素数1〜4のアルコキシ)カルボニル基等で1個以上置換されていてもよい。
【0018】
とRが一体となって形成された置換されていてもよいポリメチレン基としては、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘプタメチレン基等を例示することができる。これらのポリメチレン基はハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、(炭素数1〜4のアルコキシ)カルボニル基等で1個以上置換されていてもよい。
【0019】
Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を例示することができる。
【0020】
Xで表される置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基としては、直鎖状、分枝状あるいは環状のいずれであってもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、ブチル基、イソブチル基、tert‐ブチル基、sec‐ブチル基、ペンチル基、tert‐ペンチル基、2‐ペンチル基、3‐ペンチル基、シクロペンチル基、1‐メチルシクロペンチル基、ヘキシル基、2‐ヘキシル基、3‐ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2‐エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等を例示することができる。これらのアルキル基はハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、(炭素数1〜4のアルコキシ)カルボニル基等で1個以上置換されていてもよい。
【0021】
Xで表される置換されていてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基としては、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロプロピルメチルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert‐ブチルオキシ基、sec‐ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、tert‐ペンチルオキシ基、2‐ペンチルオキシ基、3‐ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、1‐メチルシクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2‐ヘキシルオキシ基、3‐ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2‐エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基等を例示することができる。これらのアルコキシ基はハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、(炭素数1〜4のアルコキシ)カルボニル基等で1個以上置換されていてもよい。
【0022】
Xで表される置換されていてもよい炭素数2〜6のアルケニルオキシ基としては、アリルオキシ基、2‐メチル‐1‐プロペン‐3‐イルオキシ基、2‐ブテン‐4‐イルオキシ基、2‐メチル‐2‐ブテン‐4‐イルオキシ基、1‐ブテン‐4‐イルオキシ基、2‐メチル‐1‐ブテン‐4‐イルオキシ基、1‐ペンテン‐5‐イルオキシ基等を例示することができる。これらのアルケニルオキシ基はハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、(炭素数1〜4のアルコキシ)カルボニル基等で1個以上置換されていてもよい。
【0023】
Xで表される置換されていてもよい炭素数2〜6のアルキニルオキシ基としては、プロパルギルオキシ基、2‐ブチン‐4‐イルオキシ基、4‐メチル‐2‐ブチン‐4‐イルオキシ基、1‐ブチン‐4‐イルオキシ基、2‐ペンチン‐5‐イルオキシ基等を例示することができる。これらのアルキニルオキシ基はハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、(炭素数1〜4のアルコキシ)カルボニル基等で1個以上置換されていてもよい。
【0024】
Xで表される置換されていてもよい(炭素数1〜6のアルコキシ)カルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、シクロプロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、tert‐ブチルオキシカルボニル基、sec‐ブチルオキシカルボニル基、シクロプロピルメチルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基等を例示することができる。これらのアルコキシカルボニル基はハロゲン原子等で1個以上置換されていてもよい
Xで表される置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、シクロプロピルチオ基、シクロプロピルメチルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert‐ブチルチオ基、sec‐ブチルチオ基、ペンチルチオ基、tert‐ペンチルチオ基、2‐ペンチルチオ基、3‐ペンチルチオ基、シクロペンチルチオ基、1‐メチルシクロペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、2‐ヘキシルチオ基、3‐ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基等を例示することができる。これらのアルキルチオ基はハロゲン原子等で1個以上置換されていてもよい。
【0025】
Xで表される置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基としては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、シクロプロピルスルフィニル基、シクロプロピルメチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、イソブチルスルフィニル基、tert‐ブチルスルフィニル基、sec‐ブチルスルフィニル基、ペンチルスルフィニル基、tert‐ペンチルスルフィニル基、2‐ペンチルスルフィニル基、3‐ペンチルスルフィニル基、シクロペンチルスルフィニル基、1‐メチルシクロペンチルスルフィニル基、ヘキシルスルフィニル基、2‐ヘキシルスルフィニル基、3‐ヘキシルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基等を例示することができる。これらのアルキルスルフィニル基はハロゲン原子等で1個以上置換されていてもよい。
【0026】
Xで表される置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、シクロプロピルスルホニル基、シクロプロピルメチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、tert‐ブチルスルホニル基、sec‐ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、tert‐ペンチルスルホニル基、2‐ペンチルスルホニル基、3‐ペンチルスルホニル基、シクロペンチルスルホニル基、1‐メチルシクロペンチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、2‐ヘキシルスルホニル基、3‐ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基等を例示することができる。これらのアルキルスルホニル基はハロゲン原子等で1個以上置換されていてもよい。
【0027】
一般式FC=P(R(3)及び一般式P(R(4)のRで表される置換されていてもよいフェニル基としては、フェニル基、オルトトリル基、tert‐ブチルフェニル基等を例示することができる。Rで表される置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、ブチル基、イソブチル基、tert‐ブチル基、sec‐ブチル基、ペンチル基、tert‐ペンチル基、2‐ペンチル基、3‐ペンチル基、シクロペンチル基、1‐メチルシクロペンチル基、ヘキシル基、2‐ヘキシル基、3‐ヘキシル基、シクロヘキシル基等を例示することができる。Rで表されるジ(炭素数1〜4のアルキル)アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルイソプロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基等を例示することができる。収率が良い点や入手の容易さから、フェニル基、オルトトリル基、ブチル基、tert‐ブチル基、ジメチルアミノ基等が好ましく、フェニル基及びジメチルアミノ基がさらに好ましい。
【0028】
一般式FCYZ(5)のY及びZで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を例示することができる。入手の容易さや収率が良い点で臭素原子が好ましい。
【0029】
次に本発明の製造方法を詳細に説明する。本発明の2‐置換ベンジル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステル誘導体(1)は、下記反応式で示すように、2‐オキソ‐3‐置換フェニルプロピオン酸エステル誘導体(2)とジフルオロメチレンホスホラン類(3)との反応により製造することができる。
【0030】
【化10】

(式中、R、R、R、X及びnは前記と同じ意味を表す。)
本反応は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中で実施することができる。このような溶媒としては、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチルなどのエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4‐ジオキサン、1,2‐ジメトキシエタン(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)などのエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリルなどのニトリル系溶媒、N,N‐ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)、N‐メチルピロリドンなどの酸アミド系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホランなどの硫黄系溶媒、さらにはこれらの混合溶媒を例示することができる。中でも収率が良い点でDMF、DMAc、DMSO、THF、1,4‐ジオキサン、DME、ジエチレングリコールジメチルエーテル又はトリエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。さらに、DMF又はDMAcが好ましい。
【0031】
本反応は、0〜150℃から適宜選ばれた反応温度で実施することが高収率で目的物を得ることができる点で好ましく、20〜120℃がさらに好ましい。
【0032】
2‐オキソ‐3‐置換フェニルプロピオン酸エステル誘導体(2)に対するジフルオロメチレンホスホラン類(3)のモル比は、1〜10、好ましくは1〜5の範囲で用いられる。1未満の場合は収率が低い点で、10を超える場合は経済性が劣る点で好ましくない。
【0033】
反応終了後は抽出など通常の後処理により目的物を得ることができ、再結晶、カラムクロマトグラフィー、蒸留などにより精製することができる。反応終了後の溶液を直接蒸留することによっても目的物を得ることもできる。
【0034】
また、本発明の2‐置換ベンジル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステル誘導体は通常のエステル加水分解により、一般式(1)においてRが水素原子である対応するカルボン酸へと変換することができ、これらのカルボン酸誘導体も本発明に含まれるものである。
【0035】
本反応原料である2‐オキソ‐3‐置換フェニルプロピオン酸エステル誘導体(2)は、例えば、特許文献3記載の方法によって得ることができる。
【特許文献3】特開平03‐007245号公報
【0036】
ジフルオロメチレンホスホラン類(3)は、調製法‐1に示したように、ハロゲン原子捕捉剤の存在下に第三級ホスフィン(4)とジハロジフルオロメタン(5)との反応により調製することができる。
【0037】
【化11】

(式中、R、Y及びZは前記と同じ意味を表す。)
調製法‐1の反応はハロゲン原子捕捉剤の存在下に実施する。ハロゲン原子捕捉剤としては原料である第三級ホスフィン(4)を代用することもできる。この際、第三級ホスフィン(4)の量はジハロジフルオロメタン(5)に対して2等量以上用いることが好ましい。また、亜鉛、銅、カドミウムなどの金属をハロゲン原子捕捉剤として用いてもよい。この際、金属ハロゲン原子捕捉剤の使用量はジハロジフルオロメタン(5)に対して1等量以上用いることが収率が良い点で好ましい。
【0038】
ハロゲン原子捕捉剤としては、反応の簡便さの点あるいは収率が良い点でトリフェニルホスフィンやトリス(ジメチルアミノ)ホスフィンのような第三級ホスフィンあるいは金属亜鉛が好ましい。また金属亜鉛を用いる場合にはすみやかに反応が進行する点で粉末状が好ましい。
【0039】
調製法‐1の反応は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中で実施することができる。このような溶媒としては、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチルなどのエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、THF、1,4‐ジオキサン、DME、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、CPMEなどのエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリルなどのニトリル系溶媒、DMF、DMAc、N‐メチルピロリドンなどの酸アミド系溶媒、DMSO、スルホランなどの硫黄系溶媒、さらにはこれらの混合溶媒を例示することができる。中でも収率が良い点でDMF、DMAc、DMSO、THF、1,4‐ジオキサン、DME、ジエチレングリコールジメチルエーテル又はトリエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。さらにDMF又はDMAcが好ましい。
【0040】
反応温度は、0〜120℃から適宜選ばれた温度で実施することが収率が良い点で好ましい。さらに0〜80℃が好ましい。
【0041】
また、ジフルオロメチレンホスホラン類(3)は、調製法‐2に示したように第三級ホスフィン(4)とクロロジフルオロ酢酸ナトリウムとの反応により調製することができる。
【0042】
【化12】

(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
調製法‐2の反応は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中で実施することができ、調製法‐1の反応で例示した溶媒を例示することができる。
【0043】
反応温度は、20〜150℃から適宜選ばれた温度で実施することが収率が良い点で好ましい。さらに60〜120℃が好ましい。
【0044】
第三級ホスフィン(4)は、収率が良い点でクロロジフルオロ酢酸ナトリウムに対して1〜10等量、さらに1〜5等量用いることが好ましい。
【0045】
このようにして調製したジフルオロメチレンホスホラン類(3)は、単離することなく反応溶液のまま本発明の反応に供しても良い。さらに、本反応と本発明のジフルオロメチレン化反応を同時に同じ反応容器中で実施し、系中で発生させたジフルオロメチレンホスホラン類(3)を本発明のジフルオロメチレン化反応に供しても良い。この際、原料や反応試剤の添加順序に制限はないが、まず第三級ホスフィン(4)とジハロジフルオロメタン(5)を反応させ、ホスホニウム塩を調製した後、場合によってはハロゲン原子捕捉剤を加えてジフルオロメチレンホスホラン類(3)を生成させ、次いで原料の2‐オキソ‐3‐置換フェニルプロピオン酸エステル誘導体(2)を添加して反応させるか、ホスホニウム塩を調製した後に原料の2‐オキソ‐3‐置換フェニルプロピオン酸エステル誘導体(2)を加え、次いでハロゲン原子捕捉剤を添加してジフルオロメチレンホスホラン類(3)を発生させながらジフルオロメチレン化反応を進行させることが、収率が良い点で好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例‐1
【0047】
【化13】

トリフェニルホスフィン(7.90g,30.1mmol)の無水DMAc(30mL)溶液を氷冷し、アルゴン雰囲気下でジブロモジフルオロメタン(6.30g,30.0mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。この溶液に2‐オキソ‐3‐メチル‐3‐フェニルブタン酸メチル(3.09g,15.0mmol)を氷冷下に加え、次いで、亜鉛末(1.96g,29.9mmol)を少しずつ加えた。この間、反応溶液の温度は8〜15℃程度に上昇した。全量の亜鉛を添加後、さらにそのままの温度で2時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を減圧蒸留に付し、43〜46℃/1.33×10Paで留出する成分を得た。得られた留分に水(150mL)を加え、ジエチルエーテル(50mL×4)で抽出した。有機層を合わせ、水(30mL)と飽和食塩水(30mL)で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液から溶媒を減圧下留去することにより、3,3‐ジフルオロ‐(2‐フェニル‐2‐プロピル)アクリル酸メチルを黄色油状物(1.39g,収率:39%)として得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:1)で精製し、純粋な目的物を得た。H-NMR(250MHz,CDCl)δ1.59(6H,s),3.63(3H,s),7.15〜7.38(5H,m);19F‐NMR(235MHz,CDCl)δ‐78.6(1F,d,J=25Hz),‐77.2(1F,d,J=25Hz).
実施例‐2
【0048】
【化14】

トリフェニルホスフィン(7.90g,30.1mmol)の無水DMAc(30mL)溶液を氷冷し、アルゴン雰囲気下でジブロモジフルオロメタン(6.30g,30.0mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。この溶液に3‐メチル‐3‐(4‐メチルフェニル)‐2‐オキソブタン酸メチル(3.30g,15.0mmol)を氷冷下に加え、次いで、亜鉛末(1.96g,29.9mmol)を少しずつ加えた。全量の亜鉛を添加後、さらにそのままの温度で2時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を減圧蒸留に付し、37〜54℃/2.66×10Paで留出する成分を得た。得られた留分に水(150mL)を加え、ジエチルエーテル(50mL×4)で抽出した。有機層を合わせ、水(30mL)と飽和食塩水(30mL)で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液から溶媒を減圧下留去することにより、3,3‐ジフルオロ‐{2‐(4‐メチルフェニル)‐2‐プロピル}アクリル酸メチルを黄色油状物(1.23g,収率:32%)として得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:1)で精製し、純粋な目的物を得た。H‐NMR(250MHz,CDCl)δ1.56〜1.57(6H,m),2.32(3H,s),3.64(3H,s),7.11(2H,d,J=8.0Hz),7.24(2H,d,J=8.3Hz);19F‐NMR(235MHz,CDCl)δ‐78.8(1F,d,J=26Hz),‐77.4(1F,d,J=26Hz).
実施例‐3
【0049】
【化15】

トリフェニルホスフィン(7.90g,30.1mmol)の無水DMAc(30mL)溶液を氷冷し、アルゴン雰囲気下でジブロモジフルオロメタン(6.30g,30.0mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。この溶液に3‐メチル‐3‐(3‐メチルフェニル)‐2‐オキソブタン酸メチル(3.30g,15.0mmol)を氷冷下に加え、次いで、亜鉛末(1.96g,29.9mmol)を少しずつ加えた。全量の亜鉛を添加後、そのままの温度でさらに2時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を減圧蒸留に付し、43〜46℃/1.33×10Paで留出する成分を得た。得られた留分に水(150mL)を加え、ジエチルエーテル(50mL×4)で抽出した。有機層を合わせ、水(30mL)と飽和食塩水(30mL)で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液から溶媒を減圧下留去することにより、3,3‐ジフルオロ‐{2‐(3‐メチルフェニル)‐2‐プロピル}アクリル酸メチルを黄色油状物(1.36g,収率:36%)として得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:1)で精製し、純粋な目的物を得た。H‐NMR(250MHz,CDCl)δ1.57(6H,dd,J=0.5 and 2.0Hz),2.35(3H,s),3.64(3H,s),7.00〜7.01(1H,m),7.03〜7.23(3H,m);19F‐NMR(235MHz,CDCl)δ‐78.6(1F,d,J=25Hz),‐77.3(1F,d,J=25Hz).
実施例‐4
【0050】
【化16】

トリフェニルホスフィン(5.24g,20.0mmol)の無水DMAc(20mL)溶液を氷冷し、アルゴン雰囲気下でジブロモジフルオロメタン(4.20g,20.0mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。この溶液に3‐(4‐メトキシフェニル)‐3‐メチル‐2‐オキソブタン酸メチル(1.99g,8.44mmol)を氷冷下に加え、次いで、亜鉛末(1.30g,20.0mmol)を少しずつ加えた。全量の亜鉛を添加後、そのままの温度でさらに3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を減圧蒸留に付し、38〜48℃/1.33×10Paで留出する成分を得た。得られた留分に水(150mL)を加え、ジエチルエーテル(50mL×4)で抽出した。有機層を合わせ、水(30mL)と飽和食塩水(30mL)で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液から溶媒を減圧下留去することにより、3,3‐ジフルオロ‐{2‐(4‐メトキシフェニル)‐2‐プロピル}アクリル酸メチルを黄色油状物として得た。H‐NMR(250MHz,CDCl)δ1.56〜1.57(6H,m),3.64(3H,s),3.79(3H,s),6.84(2H,d,J=9.0Hz),7.27(2H,d,J=8.8Hz);19F‐NMR(235MHz,CDCl)δ‐79.1(1F,d,J=27Hz),‐77.6(1F,d,J=26Hz).
実施例‐5
【0051】
【化17】

【0052】
トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン(1.63g,10.0mmol)の無水DMAc(10mL)溶液を氷冷し、アルゴン雰囲気下でジブロモジフルオロメタン(2.10g,10.0mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。この溶液に3‐メチル‐3‐(4‐メチルチオフェニル)‐2‐オキソブタン酸メチル(1.26g,5.00mmol)を氷冷下に加え、次いで、亜鉛末(654mg,10.0mmol)を少しずつ加えた。全量の亜鉛を添加後、そのままの温度でさらに3時間撹拌した。反応終了後、2N塩酸(50mL)を加え、ジエチルエーテル(30mL×3)で抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水(30mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液から溶媒を減圧下留去することにより、3,3‐ジフルオロ‐{2‐(4‐メチルチオフェニル)‐2‐プロピル}アクリル酸メチルを黄褐色油状物として得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で精製し、純粋な目的物を得た。H‐NMR(250MHz,CDCl)δ1.56(6H,dd,J=0.5 and 1.8Hz),2.47(3H,s),3.65(3H,s),7.20(2H,d,J=8.5Hz),7.28(2H,d,J=8.8Hz);19F‐NMR(235MHz,CDCl)δ‐78.4(1F,d,J=25Hz),‐76.9(1F,d,J=25Hz).
実施例‐6
【0053】
【化18】

トリフェニルホスフィン(7.90g,30.1mmol)の無水DMAc(30mL)溶液を氷冷し、アルゴン雰囲気下でジブロモジフルオロメタン(6.30g,30.0mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。この溶液に3‐(4‐クロロフェニル)‐3‐メチル‐2‐オキソブタン酸メチル(3.61g,15.0mmol)を氷冷下に加え、次いで、亜鉛末(1.96g,29.9mmol)を少しずつ加えた。全量の亜鉛を添加後、さらにそのままの温度で2時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を減圧蒸留に付し、46〜49℃/1.33×10Paで留出する成分を得た。得られた留分に水(150mL)を加え、ジエチルエーテル(50mL×4)で抽出した。有機層を合わせ、水(30mL)と飽和食塩水(30mL)で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液から溶媒を減圧下留去することにより、3,3‐ジフルオロ‐{2‐(4‐クロロフェニル)‐2‐プロピル}アクリル酸メチルを黄色油状物(1.41g,収率:34%)として得た。H-NMR(250MHz,CDCl)δ1.56(6H,dd,J=0.3 and 1.8Hz),3.65(3H,s),7.28(4H,s);19F‐NMR(235MHz,CDCl)δ‐78.0(1F,d,J=24Hz),‐76.4(1F,d,J=24Hz).
実施例‐7
【0054】
【化19】

トリフェニルホスフィン(2.62g,10.0mmol)の無水DMAc(10mL)溶液を氷冷し、アルゴン雰囲気下でジブロモジフルオロメタン(2.10g,10.0mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。この溶液に3‐メチル-2‐オキソ‐3‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)ブタン酸メチル(1.37g,5.00mmol)を氷冷下に加え、次いで、亜鉛末(654mg,10.0mmol)を少しずつ加えた。全量の亜鉛を添加後、そのままの温度でさらに3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を減圧蒸留に付し、45〜48℃/1.33×10Paで留出する成分を得た。得られた留分に水(150mL)を加え、ジエチルエーテル(50mL×4)で抽出した。有機層を合わせ、水(30mL)と飽和食塩水(30mL)で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液から溶媒を減圧下留去することにより、3,3‐ジフルオロ‐{2‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)‐2‐プロピル}アクリル酸メチルを黄色油状物(707mg,収率:46%)として得た。H‐NMR(250MHz,CDCl)δ1.60(6H,dd,J=0.5 and 1.6Hz),3.65(3H,s),7.47(2H,d,J=8.5Hz),7.57(2H,d,J=8.5Hz);19F‐NMR(235MHz,CDCl)δ‐77.4(1F,d,J=23Hz),‐75.8(1F,d,J=22Hz),‐62.7(3F,s).
実施例‐8
【0055】
【化20】

トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン(1.63g,10.0mmol)の無水DMAc(10mL)溶液を氷冷し、アルゴン雰囲気下でジブロモジフルオロメタン(2.10g,10.0mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。この溶液に3‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐3‐メチル‐2‐オキソブタン酸メチル(1.32g,5.00mmol)の無水DMAc(5mL)溶液を氷冷下に加え、次いで、亜鉛末(654mg,10.0mmol)を少しずつ加えた。全量の亜鉛を添加後、そのままの温度でさらに2時間撹拌した。反応終了後、2N塩酸(50mL)を加え、ジエチルエーテル(30mL×3)で抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水(30mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液から溶媒を減圧下留去することにより、3,3‐ジフルオロ‐{2‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐2‐プロピル}アクリル酸メチルを黄褐色油状物(878mg,収率:59%)として得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:1)で精製し、純粋な目的物を得た。H‐NMR(250MHz,CDCl)δ1.395〜1.601(6H,m),3.64(3H,s),3.91(3H,s),7.42(2H,d,J=8.5Hz),7.98(2H,d,J=8.5Hz);19F‐NMR(235MHz,CDCl)δ‐77.5(1F,d,J=23Hz),‐75.8(1F,d,J=22Hz).
実施例‐9
【0056】
【化21】

トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン(1.63g,10.0mmol)の無水DMAc(10mL)溶液を氷冷し、アルゴン雰囲気下でジブロモジフルオロメタン(2.10g,10.0mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。この溶液に2‐オキソ‐2‐(1‐フェニルシクロペンタン‐1‐イル)酢酸メチル(1.42g,5.00mmol)を氷冷下に加え、次いで、亜鉛末(654mg,10.0mmol)を少しずつ加えた。全量の亜鉛を添加後、そのままの温度でさらに1時間撹拌した。反応終了後、2N塩酸(50mL)を加え、ジエチルエーテル(30mL×3)で抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水(30mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液から溶媒を減圧下留去することにより、3,3‐ジフルオロ‐2‐(1‐フェニルシクロペンタン‐1‐イル)アクリル酸メチルを黄褐色油状物として得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:1)で精製し、純粋な目的物を得た。H‐NMR(250MHz,CDCl)δ1.55〜1.75(4H,m),2.01〜2.05(2H,m),2.28〜2.34(2H,m),3.69(3H,s),7.17〜7.23(1H,m),7.25〜7.33(2H,m),7.39〜7.42(2H,m);19F‐NMR(235MHz,CDCl)δ‐77.6(1F,d,J=21Hz),‐76.0(1F,d,J=21Hz).
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、医農薬や機能性材料等の製造中間体として有用な2‐置換ベンジル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステル誘導体(1)及びそれらを簡便に収率良く製造できる、工業的に極めて有用な製造方法を提供するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を表す。R及びRは各々独立に、置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜6のアルケニル基又は置換されていてもよい炭素数2〜6のアルキニル基を表す。あるいはRとRは一体となって置換されていてもよい炭素数2〜7のポリメチレン基を表す。Xは水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数2〜6のアルケニルオキシ基、置換されていてもよい炭素数2〜6のアルキニルオキシ基、(置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ)カルボニル基、ビニル基、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルスルホニル基を表す。nは1〜5の整数を表し、nが2〜5の時、Xは異なっていてもよい。]で示される2‐置換ベンジル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステル誘導体。
【請求項2】
一般式(2)
【化2】

[式中、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を表す。R及びRは各々独立に、置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜6のアルケニル基又は置換されていてもよい炭素数2〜6のアルキニル基を表す。あるいはRとRは一体となって置換されていてもよい炭素数2〜7のポリメチレン基を表す。Xは水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数2〜6のアルケニルオキシ基、置換されていてもよい炭素数2〜6のアルキニルオキシ基、(置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ)カルボニル基、ビニル基、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルスルホニル基を表す。nは1〜5の整数を表し、nが2〜5の時、Xは異なっていてもよい。]で示される2‐オキソ‐3‐置換フェニルプロピオン酸エステル誘導体と、一般式FC=P(R(3)[式中、Rは置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基又はジ(炭素数1〜4のアルキル)アミノ基を表す。]で示されるジフルオロメチレンホスホラン類と反応させることを特徴とする、一般式(1)
【化3】

(式中、R、R、R、X及びnは前記と同じ意味を表す。)で示される2‐置換ベンジル‐3,3‐ジフルオロアクリル酸エステル誘導体の製造方法。
【請求項3】
反応を0〜150℃の範囲から選ばれた反応温度で実施することを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
一般式FC=P(R(3)[式中、Rは置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基又はジ(炭素数1〜4のアルキル)アミノ基を表す。]で表されるジフルオロメチレンホスホラン類を、ハロゲン捕捉剤の存在下に一般式P(R(4)(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)で示される第三級ホスフィンと一般式FCYZ(5)(式中、Y及びZは各々独立にハロゲン原子を表す。)で示されるジハロジフルオロメタンから、あるいは、一般式P(R(4)(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)で示される第三級ホスフィンとクロロジフルオロ酢酸ナトリウムから調製することを特徴とする請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
がフェニル基又はジメチルアミノ基である請求項2から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
Y及びZが臭素原子である請求項4又は5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
ハロゲン原子捕捉剤が金属亜鉛である請求項4から6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
ジフルオロメチレンホスホラン類を0〜120℃の範囲から選ばれた反応温度で得ることを特徴とする請求項2から7のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−195679(P2008−195679A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34787(P2007−34787)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000173762)財団法人相模中央化学研究所 (151)
【出願人】(591180358)東ソ−・エフテック株式会社 (91)
【Fターム(参考)】