説明

2−アザビシクロ[3.3.0]オクタン−3−カルボン酸誘導体の製造方法

本発明は、式(II)の中間体の環化の水素化によって、一般式(I)の化合物を製造する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I)
【化1】

の化合物を製造する方法に関する。
【0002】
この型の化合物は、生物活性剤の製造のために重要な中間体である。2−アザビシクロ[3.3.0]オクタン−3−カルボン酸は、たとえばRamipril(R)(N−(1−(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−(S)−アラニル−(S)−cis,endo−2−アザビシクロ[3.3.0]−オクタン−3−S−カルボン酸)、ACEインヒビター(A. Kleemann, J. Engel, Pharmaceutical Substances, 第4版、第1785頁、Thieme Verlag Stuttgart, 2001)である。
【0003】
ラセミ体の2−アザビシクロ[3.3.0]−オクタン−3−カルボン酸を製造するための多くの方法が記載されており、この場合、これらは、たとえば:
−N−アシルシクロペンタピロールの陽極酸化および引き続いてのシアン化および加水分解(DE 3151690)、
−ビシクロ[3.3.0]−ノナン−2−オンから出発しての、ベックマン転位、ハロゲン化およびファボルスキー転位(DE 3151690)、
−シクロペンテンから出発して、有機水銀化合物を介する(DE 3300316, R. Henning, H. Urbach, Tetrahdron Letters, 24, 5343-6 (1983))、
−ブロモシクロペンテンおよびセリンから出発して、かつ中間体ヨードアニリンのBuSnHでの分子内環化(DE 297620, H. Urbach, R. Henning, Heteterocycles 28, 957-65 (1989)、
−テトラヒドロシクロペンタピロール−2−カルボン酸の水素化(WO86/00896, US 4,587,258)、
−アゾメチンの1,3−二極性付加環化(L.M. Harwood, L. C. Kitchen, Tetrahedron Lett., 34, 6603 (1993) )、
が、記載されている。
【0004】
おそらく好ましい方法((A. Kleemann, J. Engel, Pharmaceutical Substances,第4版、第1785頁、Thieme Verlag Stuttgart, 2001); EP 79022; V. Teetz, R. Geiger, H. Gaul, Tetrahedron Letters, 25, 4479-82 (1984))は、3工程の反応機序において、セリンからメチル2−アセトアミノ−3−クロロプロピオネートを、最初に製造することから成る(DE 19941062)。これは、ピロリジノシクロペンテンと反応させ、メチルシクロペンタノニルアセトアミドプロピオネートを提供する。強酸を用いて、これをアシルアミドおよびエステル基の切断をしながら環化し、二環式のイミノエステルを生じる。引き続いての接触水素化により、ラセミ体の2−アザビシクロ[3.3.0]−オクタン−3−カルボン酸が得られる。この反応機序は、反応式1に示す:
【化2】

【0005】
2−アザビシクロ[3.3.0]−オクタン−3−カルボン酸は、主に、シス−endo配座の形で、すなわち、主に、RRR−およびSSS−化合物の混合物を生じる。ラセミ体の分離のために、カルボン酸はエステルに、好ましくはベンジルステルに変換される。これは、キラル酸との塩形成によって、ジアステレオマーの純粋な二環式化合物に分離する。O,O−ジアシル酒石酸(DE 3345355)、光学活性のN−アクリルアミノ酸(EP 115345)およびマンデル酸(J. Martens, S. Lubben, Journal f. prakt Chemie, 332, 1111 1117 (1990))は、キラル酸として記載されている。
【0006】
エステル基を選択的に除去して、最終的な活性薬剤Ramiprilにすることを可能にするために、ベンジルエステルをカップリングのために使用し、したがって好ましくは、さらにラセミ体の分離のために使用する。
【0007】
好ましい方法において(Kleemann Engel, V. Teetz, R Geiger, H. Gaul, Tetrahdron Letters, 25, 4479-82 (1984))、ベンジルエステルのラセミ体の分離は、N−ベンジルオキシカルボニル−L−フェニルアラニン(ZL-Phe-OH)を用いて実施する。SSS−ベンジルエステルとN−(1−(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルピロピル)−(S)−アラニン(NEPA)とのカップリング、および引き続いてのベンジルエステルの水素化によって、最終的にRamiprilを生じる(反応式2)。
【0008】
【化3】

【0009】
本発明の課題は、一般式(I)の中間体を製造するための従来技術と比較して、改善された方法を提供することである。特にこの方法は、有利には工業的スケールで実施することができ、かつ、経済的および環境的観点において、従来技術よりも優れている。
【0010】
本発明の課題は、特許請求の範囲にしたがって達成される。請求項1から4に記載の方法は、一般式(I)の化合物を製造するための方法である。請求項4は、一般式(II)の新規中間体化合物を保護する。請求項5から7は、一般式(II)の化合物の製造のための本発明による方法を含む。
【0011】
触媒の存在下での水素化の結果として、一般式(I)
【化4】

[式中、RはH、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アリール、(C〜C19)−アルアルキル、(C〜C)−アリキル−(C〜C18)−アリール、(C〜C)−シクロアルキル、(C〜C)−アルキル−(C〜C)−シクロアルキル、(C〜C)−シクロアルキル−(C〜C)−アルキルである]のの化合物またはその塩を製造するための方法において、一般式(II)
【化5】

(式中、Rは前記に示したとおりであり、かつ、Rは、水素化分解可能な基である)の化合物は、前記対象物を得るのに極めて有利であるが、しかしながらこれは予測されるものではなかった。一般式(II)の化合物において、基Rが、水素化分解可能な基であるという事実から、いわゆる当業者であれば、1工程の驚異的に簡単な方法で、ラセミ体の通常の分離に関する後続の工程で、さらなる二重の分割工程またはエステル化を実施することなく直ぐに使用できる、一般式(I)の化合物が得られる。3個の化学的工程(N−保護基の分離、環化および水素化)が、極めて有利に1工程で実施できることは、従来技術からは予測できるものではない。
【0012】
前記に示した基の可変の幅において、いわゆる当業者であれば、コスト/利益の割合から自由に選択することは特に有利である。基Rとして、有利にはHまたは(C1〜C)−アルキルを使用し、Rは、環置換されたかまたは置換されていないベンジルであってもよい。基Rは、たとえばメチルまたはエチルが好ましい。好ましくはRとしてベンジルを使用することができる。
【0013】
本発明による方法のために、いわゆる当業者であれば、これに適した種々の有機溶剤を使用することができる。有利な有機溶剤は、使用された生成物を、適した範囲で溶解するものであり、かつさもなければ、反応に対して不活性であることが証明されているものである。したがって、好ましい有機溶剤は、アルコール、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、エーテル、たとえばジイソプロピルエーテル、メチル tert−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、THF、芳香族、たとえばトルエン、キシレン、カルボン酸エステル、たとえば酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、第2級アミド、たとえばDHF、NMPである。基Rに相当するアルコールの使用は、特に好ましい。したがって、エタノールまたはメタノールは溶剤として極めて好ましい。
【0014】
対象となる方法は、有利には当業者に公知の方法で実施することができる。触媒として、好ましくは、それぞれC=CおよびC=N二重結合の水素化を生じさせ、かつ前記に示した基の水素化分解を生じることができる触媒を使用する。可能な触媒は、不均一系および均一系触媒の双方であり、特にパラジウム、白金、ロジウム、ニッケル、コバルトまたはHouben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry], 第4/lc巻、第14-480頁、Thieme Verlag Stuttgart, 1974において、この目的のために示された触媒から成る群から選択される。
【0015】
水素化は、有利には0〜100℃、好ましくは10〜80℃、特に好ましくは20〜30℃の温度で実施する。
【0016】
水素圧は、当業者に公知の技術に適した値による反応中で、実施することができる。圧力は、好ましくは1〜50バール、好ましくは1〜30バール、より好ましくは1〜20バールである。
【0017】
本発明による水素化は、元素水素を用いて通常の方法で実施することができる。しかしながら、さらに、原則として、転移水素化(transfer hydrogenation)の形で実施することが可能であり、この場合、この方法は当業者に公知である (Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie,第4/lc巻、第67-76頁, Thieme Verlag Stuttgart, 1974)。
【0018】
本発明の対象は同様に、一般式(II)
【化6】

[式中、RはH、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アリール、(C〜C19)−アルアルキル、(C〜C)−アルキル−(C〜C18)−アリール、(C〜C)−シクロアルキル、(C〜C)−アルキル−(C〜C)−シクロアルキル、(C〜C)−シクロアルキル−(C〜C)−アルキルであり、かつ、Rは水素化分解可能な基である]の化合物であるか、あるいは、RがHである場合にはその塩である。
【0019】
ここで示された化合物は、一般式(I)の化合物を製造するための、有利な中間体である。好ましい実施態様は、前記に示すように、基RおよびRに対して有利に適用されるものである。
【0020】
最終的な実施態様において、本発明は、一般式(II)の化合物の製造方法に関する。これは、有利には本発明による方法において、一般式(III)
【化7】

[式中、RおよびRは、前記意味を示すものとされる]の化合物を、一般式(IV)
【化8】

[式中、RおよびRは互いに独立して(C〜C)−アルキル、(C〜C18)−アリール、(C〜C19)−アルアルキル、(C〜C)−アルキル−(C〜C18)−アリール、(C〜C)−シクロアルキル、(C〜C)−アルキル−(C〜C)−シクロアルキル、(C〜C)−シクロアルキル−(C〜C)−アルキルであってもよいか、あるいは、RまたはRは一緒になって、場合によりヘテロ原子を含有する(C〜C)−アルキレン架橋を形成する]のエナミンと反応させる。ここでまた、好ましい実施態様はすでに前記に挙げられた、基RおよびRに関するものである。基RおよびRのための好ましい実施態様は、基RおよびRが、窒素原子を有する5または6−員のヘテロ環を形成する基から選択される。式(IV)の化合物は、特に有利には、基RおよびRが窒素原子と一緒になって、ピロリジン、ピペリジンまたはモルホリンである。
【0021】
有利には、本明細書中で挙げられた本発明による方法は、有機溶剤中で実施される。好ましくは適しているこれらのものはエーテル、たとえばジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、THF、芳香族、たとえばトルエン、キシレン、カルボン酸エステル、たとえば酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、第2級アミド、たとえばDMF、NMP、塩化炭化水素、たとえばクロロホルム、塩化メチレンである。ハロゲン化有機溶剤は、これに関して特に好ましい。クロロホルムまたは塩化メチレンは極めて好ましくは使用される。
【0022】
一般式(IV)の化合物と、一般式(III)の化合物との反応は、好ましくは0〜100℃、好ましくは10〜50℃、特に好ましくは15〜30℃の温度で実施することができる。
【0023】
本発明によれば、一般式(I)の化合物の製造において、方法は以下のとおりである。N−アシル誘導体と同様に(M. Bergmann, K. Grafe, Hoppe-Seylers Zeitschrift Physiologische Chem.187, 187 (1930))、式(III)のウレタンを、式(V)
【化9】

の簡単に入手可能な化合物および同様に簡単に入手可能な式(VI)
【化10】

の化合物から製造することができる。
【0024】
基RおよびRに関しては、したがって前記定義が適用される。エチルピルベートおよびベンジルエタンの使用は、これに関して高度に好ましい。反応は、好ましくは、反応の生じる水を、共沸蒸留によって除去することにより実施する。これに関して、特に適した溶剤はトルエンである。しかしながら、さらにこの場合において、適した溶剤については当業者に公知である。
【0025】
式(III)の化合物は、後続の反応のための十分な純度で、さらに精製することなく得ることができる。式(III)のアクリル酸誘導体の偶発的重合を回避するために、フリーラジカルスカベンジャー、好ましくはハイドロキノリンを添加する。一般式(III)の化合物を、その後に、ミハエル反応において記載したように、一般式(II)の化合物に添加することができ、これによって、一般式(IV)の化合物を生じる。引き続いての水素化において、N−保護基を分解し、かつ化合物を環化することで(I)を生じる。
【0026】
EP 79022に記載の方法とは対照的に、強酸の添加は、この反応には必要とされない。N−保護基の分解は、本発明による方法においてin situで、接触水素化によって実施する。これによって生じる式(II)の中間体は、遊離された形で極めて不安定で(その際、RはHである)、自然に環化される。従来技術において要求されているような(EP 79022)強酸の使用は、必要とされない。
【0027】
本発明による方法の他の利点は、式(I)の生成物(式中、RはHではない)は、光学活性の酸、たとえばN−ベンジルオキシカルボニル−L−フェニルアラニンを用いて、ラセミ分割を直接生じさせる必要がなくエステル基として保持される。EP 79022に記載されたような新鮮なエステル化カチオンは必要ではない。さらに水素化を、酸の添加なく実施する場合には、式(I)のエステルは、遊離塩基として得られ、かつ直接的に光学活性酸と、さらなる精製なく反応させることができる。
【0028】
本発明により製造された2−アザビシクロ[3.3.0]−オクタン−3−カルボン酸のこのようにして得られたジアステレオ異性的に純粋な塩は、公知方法でその成分に分割することができる。これによって得られた、エナンチオ濃縮された2−アザビシクロ[3.3.0]−オクタン−3−カルボン酸エステルは、酸性加水分解によって相当する遊離酸に変換することができる。この遊離は、好ましくは、(S)−シス−endo−2−アザビシクロ[3.3.0]−オクタン−3−カルボン酸エステルを、水中で酸性のpHで溶解し、かつ得られる光学活性の補助的酸を、有機溶剤で抽出し、かつ再循環する程度に実施する。その後にエステルを、酸性水溶液の加熱によって分解することができる。2−アザビシクロ−[3.3.0]−オクタン−3−カルボン酸は、好ましくは内部塩(internal salt)として単離されてもよいが、しかしながら、好ましくは塩酸塩として、反応溶液の蒸発によって単離することができる。(S)−シス−endo−2−アザビシクロ−[3.3.0]−オクタン−3−カルボン酸は、公知方法で(前記参照)、N−(1−(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−(S)−アラニン(NEPA)と一緒に反応することができ、これによってRamipril(R)が生じる。
【0029】
したがって、本発明による方法は、生物活性剤Ramipril(R)の合成を、極めて簡単に工業的規模にすることに役立つ。この簡略化は、従来技術に対して自動的に予測されるものではなく、対照的に、反応中に形成された中間体は、多くの副反応、たとえば重合に導入することが可能な、極めて反応性の中間体化合物である。結果として、その危険性にもかかわらず、3個の化学反応工程を1個の工程に好適に組み合わせることが可能であるという事実は、驚異的である。
【0030】
(C−C)−アルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルまたはオクチル、これらすべての結合異性体と解されるべきである。
【0031】
基(C−C)−アルコキシは、基(C−C)−アルキルに相応するが、但し分子に酸素原子を介して結合している。(C〜C)−アルコキシアルキルは、アルキル鎖が少なくとも1個の酸素官能基により中断されてもよく、この場合、これらは2個の酸素原子に対して、互いに結合することができる。炭素原子数は、その基に含まれる炭素原子の全数である。(C−C)−アルキレン架橋は、3〜5個の炭素原子を有する炭素鎖であり、その鎖は挙げられた分子と2個の異なる炭素原子を介して結合している。
【0032】
前記パラグラフ中で記載された基は、ハロゲンおよび/またはN、O、P、S、Si原子含有基によってモノ−またはポリ置換されていてもよい。これらは、原則として、前記型のアルキル基であり、この場合、これらのヘテロ原子の1個またはそれ以上をその鎖中に含有するか、あるいは、これらのヘテロ原子の1個を介して分子と結合する。
【0033】
(C〜C)−シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチル基等の意味として理解される。これらの基は、1個以上のハロゲン及び/又はN、O、P、S、Si原子含有基で置換されていてよいか、および/または、N、O、P、S原子を環中に含有してよく、例えば1−、2−、3−、4−ピペリジル、1−、2−、3−ピロリジニル、2−、3−テトラヒドロフリル、2−、3−、4−モルホリニルである。
【0034】
(C−C)−シクロアルキル−(C−C)−アルキル基は、分子に前記アルキル基を介して結合する、前記シクロアルキル基を示す。
【0035】
本発明の範囲内において、(C〜C)−アシルオキシ基は、アルキル基、たとえばせいぜい8個の炭素原子を有する前記に示されたアルキル基であり、この場合、これらは、COO−官能基を介して分子と結合するものである。
【0036】
本発明の範囲内において、(C〜C)−アシル基は、たとえばせいぜい8個の炭素原子を有する前記に示されたアルキル基であり、この場合、これらは、CO−官能基を介して分子と結合するものである。
【0037】
(C〜C18)−アリール基は、6〜18個の炭素原子を有する芳香族基を意味するものと理解される。特に、これに含まれる化合物は、たとえばフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリルまたはビフェニル基または考えられる分子と融合した前記型の系、たとえば、インデニル系であり、この場合、これは、場合によりハロゲン、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルコキシ、NH、NH(C〜C)−アルキル、N((C〜C)−アルキル)、OH、CF、NH(C〜C)−アシル、N((C〜C)−アシル)、(C〜C)−アシル、(C〜C)−アシルオキシである。
【0038】
(C−C19)−アラルキル基は、分子に(C−C)−アルキル基を介して結合する(C−C18)−アリール基である。
【0039】
本発明の範囲内において、(C〜C18)−ヘテロアリール基は、3〜18個の炭素原子の5、6、または7員の芳香族系であり、この場合、これはヘテロ原子、たとえば窒素、酸素または硫黄を環中に含有するものである。このようなヘテロ原子は、特に、1−、2−、3−フリル、1−、2−、3−ピロリル、1−、2−、3−チエニル、2−、3−、4−ピリジル、2−、3−、4−、5−、6−、7−インドリル、3−、4−、5−ピラゾリル、2−、4−、5−イミダゾリル、アクリジニル、キノリニル、フェナントリジニル、2−、4−、5−、6−ピリミジニルのような基であると解される。この基は、前記アリール基に関して記載されたのと同様の基によって置換されていてもよい。
【0040】
(C−C19)−ヘテロアラルキルは、(C−C19)−アラルキル基に相応するヘテロ芳香族系であると解される。
【0041】
好適なハロゲン(Hal)はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素である。
【0042】
N−保護基は、一般には、アミノ酸化学において、窒素原子の保護のために通常使用された保護基であるとして理解される。これに関して特に挙げられるものは、ホルミル、アセチル、Moc、Eoc、フタル、Boc、Alloc、Z、Fmoc等である。水素化分解可能な基は、好ましくは、場合により環置換されたベンジルから成る基から選択されたN−保護基である。適した環置換された変異体は、好ましくは4−置換ハロゲン、ニトロ、アルキルまたはアルコキシ誘導体(Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie、第15/1巻、第69頁、Thieme Verlag Stuttgart, 1974)である。
【0043】
用語「エナンチオ濃縮された」または「エナンチオ過剰量」は、その光学的対掌体との混合物中でのエナンチオマーの割合を意味するものと理解され、この場合、これらは、>50%および<100%の範囲である。ee値は以下のようにして算定される:
([エナンチマー1]−[エナンチオマー2])/([エナンチオマー1]+[エナンチオマー2])=ee値
本明細書中に示される化合物の名称は、本明細書中の範囲内において、すべての可能なジアステレオマーを含み、この場合、これは、それぞれのジアステレオマーの2個の光学対掌体として挙げられる。
【0044】
本明細書中で挙げられた参考試料は、開示に含まれる。
【0045】

エチルN−ベンジルオキシカルボニル−2−アミノアクリレート
288gのエチルピルベート、250gのベンジルウレタン、2.5gのp−トルエンスルホン酸および1gのヒドロキノンを、2.5lのトルエン中に導入し、かつ9時間に亘って、分水器中に還流した。その後に反応溶液を、シリカゲルを介して濾過し、かつ500mlのトルエンを用いて洗浄した。濾液を、1gのヒドロキノンで処理し、かつロータリエバポレーター上で可能な限り高度に濃縮した。376gのエチルN−ベンジルオキシカルボニル−2−アミノアクリレートが油として得られ、この場合、これは、HPLCによれば約90%の純度を有していた。
【0046】
【表1】

【0047】
エチル−2−N−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3(2−オキソシクロペンチル)−プロピオネート
366gのエチルN−ベンジルオキシカルボニル−2−アミノアクリレート(約90%の濃度)および191gのシクロペンテノピロリジンを、CHCl中に溶解し、かつ溶液を、室温で16時間に亘って撹拌した。引き続いて反応溶液を、350mlの酢酸および1lの水で処理し、かつ激しく15分に亘って撹拌した。相分離後に、有機相を再度、180mlの酢酸および1lの水の混合物を用いて抽出し、引き続いて500mlの水を用いて洗浄した。その後に、溶液を、シリカゲルを介して濾過し、引き続いて、完全に真空下で蒸発させた。463gのエチル2−N−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3(2−オキソシクロペンチル)プロピオネートが、油として得られた。
【0048】
【表2】

【0049】
エチル シス−2−アザビシクロ[3.3.0]−オクタン−3−カルボキシレート
200gのエチル2−N−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3(2−オキソシクロペンチル)プロピオネートを、1000mlのエタノール中に溶解し、5gの触媒を用いて処理し(活性炭素上5%のパラジウム)、引き続いて5バールで水素化した。4時間後に、出発材料は、HPLCではもはや検出されなかった。触媒を濾過し、かつ濾液を可能な限り高度に濃縮した。103gのエチル シス−2−アザビシクロ−[3.3.0]−オクタン−3−カルボキシレートが黄色の油として得られ、この場合、これは、さらに精製することなく反応する。H−NMRスペクトルによれば、シス−endo−異性体の割合は、78モル%である。
【0050】
【表3】

【0051】
エチル(S)−シス−endo−2−アザビシクロ−[3.3.0]−オクタン−3−カルボキシレート Z−L−フェニルアラニン塩
例3で製造された100gのエチル シス−2−アザビシクロ−[3.3.0]−オクタン−3−カルボキシレートを、熱く製造された200mlのエチルアセテート中、84gのN−ベンジルオキシカルボニル−L−フェニルアラニンの溶液で処理した。1lのMTBEを透明な溶液に添加した。接種後に、4時間に亘って室温で撹拌し、その際、懸濁液は、粘性となった。
【0052】
生成物を濾別し、かつ2回に亘って、MTBE100mlで洗浄した。真空下で、50℃で乾燥後に、66.4gのエチル(S)−シス−endo−2−アザビシクロ−[3.3.0]−オクタン−3−カルボキシレート Z−L−フェニルアラニン塩が得られた。
【0053】
【表4】

【0054】
(S)−シス−endo−2−アザビシクロ[3.3.0]−オクタン−3−カルボン酸塩酸塩
3.0gのエチル(S)−シス−endo−2−アザビシクロ−[3.3.0]−オクタン−3−カルボキシレート Z−L−フェニルアラニン塩を、20mlの水および40mlのMTBE中に懸濁した。1mlの37%濃度の塩酸を添加した後に、混合物を、透明な溶液になるまで撹拌した。水層を分離除去し、かつ再度40mlのMTBEで抽出した。その後に簡単に真空下でストリッピングし、14mlの37%濃度の塩酸塩で処理し、かつ14時間に亘って100℃〜105℃で加熱した。この混合物をその後に真空下で蒸発させ、かつ残留物を酢酸10mlで処理し、かつ再度蒸発させた。その後に残留物を、10mlの酢酸中に溶解し、かつMTBEを添加することにより結晶化した。(S)−シス−endo−2−アザビシクロ[3.3.0]−オクタン−3−カルボン酸塩酸塩が得られた。
【0055】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

[式中、RはH、(C〜C)−アルキル、(C〜C18)−アリール、(C〜C19)−アルアルキル、(C〜C)−アルキル−(C〜C18)−アリール、(C〜C)−シクロアルキル、(C〜C)−アルキル−(C〜C)−シクロアルキル、(C〜C)−シクロアルキル−(C〜C)−アルキルである]の化合物またはその塩を製造する方法において、
一般式(II)
【化2】

[式中、Rは前記意味を有し、かつ、Rは、水素化分解可能な基である]の化合物を、触媒の存在下で水素化することを特徴とする、一般式(I)の化合物またはその塩を製造する方法。
【請求項2】
式中、RがHまたは(C〜C)−アルキルであり、かつ、Rが環置換されたかまたは置換されていないベンジルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水素化を溶剤としてのアルコール中で実施する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
一般式(II)
【化3】

[式中、RはH、(C〜C)−アルキル、(C〜C18)−アリール、(C〜C19)−アルアルキル、(C〜C)−アルキル−(C〜C18)−アリール、(C〜C)−シクロアルキル、(C〜C)−アルキル−(C〜C)−シクロアルキル、(C〜C)−シクロアルキル−(C〜C)−アルキルであり、かつ、
は水素化分解可能な基である]の化合物またはその塩(RがHである場合)。
【請求項5】
一般式(III)
【化4】

[式中、RおよびRは、請求項4に記載の意味である]の化合物を、
一般式(IV)
【化5】

[式中、RおよびRは互いに独立して、(C〜C)−アルキル、(C〜C18)−アリール、(C〜C19)−アルアルキル、(C〜C)−アルキル−(C〜C18)−アリール、(C〜C)−シクロアルキル、(C〜C)−アルキル−(C〜C)−シクロアルキル、(C〜C)−シクロアルキル−(C〜C)−アルキルであるか、あるいは、RおよびRは一緒になって、(C〜C)−アルキレン架橋を形成する]のエナミンと反応させることを特徴とする、請求項4に記載の化合物を製造する方法。
【請求項6】
反応を、ハロゲン化有機溶剤中で実施する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
反応を、20〜100℃で実施する、請求項5または6に記載の方法。

【公表番号】特表2008−533185(P2008−533185A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502368(P2008−502368)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060406
【国際公開番号】WO2006/100168
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】