説明

2−アセトキシ−6−ビニルナフタレン、およびその製造方法

【課題】医農薬、機能性高分子などの原料として有用と期待される2−アセトキシ−6−ビニルナフタレンとその製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(2)で表される2−t−ブトキシ−6−ビニルナフタレンと無水酢酸を酸触媒下、反応させて得られる、下記一般式(1)で表される2−アセトキシ−6−ビニルナフタレン。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医農薬、機能性高分子などの原料として有用な2−アセトキシ−6−ビニルナフタレン(以下、ACVNと略記する)とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ACVNと類似の構造を有する化合物としてp−アセトキシスチレンが知られている。同化合物は、医農薬、機能性高分子などの原料として有用であり、特にレジスト原料として注目されている(特許文献1:特開2000−191598号公報)。ACVNも同様の分野への展開が期待でき、特にレジスト原料としての用途では、耐熱性、耐エッチング耐性などの物性改善が期待できることから、ArFレジスト、液浸ArFレジストなどの原料としての使用が想定されるものである。
しかしながら、本発明が提供するACVNは、文献未記載の新規物質であり、製造法などについては知られていない。
【特許文献1】特開2000−191598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、医農薬、機能性高分子などの原料として有用と期待されるACVNとその製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、下記一般式(1)で表される2−アセトキシ−6−ビニルナフタレンに関する。
【0005】
【化1】

【0006】
次に、本発明は、下記一般式(2)で表される2−t−ブトキシ−6−ビニルナフタレンと無水酢酸を酸触媒下、反応させることを特徴とする上記2−アセトキシ−6−ビニルナフタレンの製造方法に関する。
【0007】
【化2】

【0008】
ここで、上記酸触媒としては、ブレンステッド酸、ルイス酸および陽イオン交換樹脂の群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。


【発明の効果】
【0009】
本発明のACVNは、医農薬、機能性高分子などの原料として有用であり、また、本発明の製造方法は、このACVNを簡便に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の上記一般式(I)で表されるACVN(2−アセトキシ−6−ビニルナフタレン)は、上記一般式(2)で表される2−t−ブトキシ−6−ビニルナフタレンと無水酢酸を酸触媒下、反応させることにより得られる。
【0011】
本発明の方法において使用される酸触媒は、特に限定されるものではないが、酸性を有する化合物のことをいい、例えば、ブレンステッド酸、ルイス酸、陽イオン交換樹脂などが挙げられ、具体的には、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硝酸、リン酸、スルホン酸系触媒、カルボン酸系触媒、ルイス酸系触媒などが例示される。
【0012】
本発明においてスルホン酸系触媒とは、スルホン酸基を含有する化合物のことをいい、特に限定するものではないが、例えば、硫酸、フルオロスルホン酸、クロロスルホン酸などの無機スルホン酸類、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ヘプタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、テトラデカンスルホン酸、DL−カンファー−10−スルホン酸などの脂肪族スルホン酸類、トリフルオロメタンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、2−ブロモエタンスルホン酸、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸、N,N‘−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸、N−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−3−アミノプロパンスルホン酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−モルホリノプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルホン酸、タウリンなどの置換脂肪族スルホン酸類、ベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、グアヤコール−4−スルホン酸、p−スチレンスルホン酸、フェニルヒドラジン−p−スルホン酸、1,2−ベンゼンジスルホン酸、1,3−ベンゼンジスルホン酸、1,4−ベンゼンジスルホン酸、m−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2−メシチレンスルホン酸、p−エチルベンゼンスルホン酸、3,5−ジクロロ−2−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−キシリジン−6−スルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−5−メトキシ−2−メチルベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、2,6−ナフタレンジスルホン酸、2,7−ナフタレンジスルホン酸、1−ナフトール−2−スルホン酸、1−ナフトール−4−スルホン酸、1−ナフトール−8−スルホン酸、2−ナフトール−6−スルホン酸、2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸、1−ナフチルアミン−4−スルホン酸、1−ナフチルアミン−6−スルホン酸、1−ナフチルアミン−8−スルホン酸、2−ナフチルアミン−1−スルホン酸、2−ナフチルアミン−6−スルホン酸、2,3−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、8−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸、8−アミノナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸、8−アニリノ−1−ナフタレンスルホン酸、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、7−ヨード−8−ヒドロキシキノリン−5−スルホン酸、ジフェニルアミン−4−スルホン酸、1−ピレンスルホン酸、スルファニル酸、メタリル酸などの芳香族スルホン酸類、ナフィオン(デュポン社製)、スルホン酸型アンバーリスト、スルホン酸型アンバーライト(以上、ローム・アンド・ハース社製)、スルホン酸型ダイヤイオン(三菱化学社製)、スルホン酸型デュオライト(住友化学社製)、スルホン酸型ダウエックス(ダウ・ケミカル社製)、スルホン酸型ピュロライト(ピュロライト社製)、スルホン酸型レバチット(バイエル社製)などのスルホン酸型陽イオン交換樹脂類が挙げられる。
【0013】
本発明においてカルボン酸系触媒とは、カルボン酸基を含有する化合物のことをいい、特に限定するものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、4−アセチル安息香酸、o−フルオロ安息香酸、フタル酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−ビフェニルカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、9−アントラセンカルボン酸、2−キノリンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸などが挙げられる。
【0014】
本発明においてルイス酸系触媒としては、特に限定するものではないが、例えば、3フッ化ホウ素、3塩化ホウ素、3臭化ホウ素、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化(III)鉄、臭化(III)鉄、3塩化アンチモン、5塩化アンチモン、3塩化チタン、4塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化スズ、塩化銅、塩化タングステン、鉄粉、各種ゼオライト類などが挙げられる。
【0015】
これらのうち、本発明においては、スルホン酸系触媒が有効である。本発明の方法においては、上記した触媒を単独にまたは混合物として使用することができる。
本発明の方法において触媒の使用量については特に限定するものではないが、通常、2−t−ブトキシ−6−ビニルナフタレンに対して10−4〜1.0倍モル、好ましくは0.001〜0.1倍モル程度の使用量が選ばれる。
【0016】
本発明の方法で用いる無水酢酸の量は、特に限定するものではないが、2−t−ブトキシ−6−ビニルナフタレンに対し、好ましくは1.0〜20.0モル比、さらに好ましくは3.0〜10.0モル比の範囲である。このモル比が1.0より小では、2−t−ブトキシ−6−ビニルナフタレンの十分な転化率が得られない場合があり、一方20.0より大では、無水酢酸の量が著しく増加して経済的でない。
【0017】
本発明の反応は、無溶媒下で実施することができるが、溶媒の存在下に実施することもできる。
溶媒としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶剤などが用いられる。
溶媒の使用量は、2−t−ブトキシ−6−ビニルナフタレン100重量部に対し、通常、50〜500重量部、好ましくは100〜300重量部である。
【0018】
本発明において、反応温度は特に限定するものではないが、通常は、−20℃〜100℃、好ましくは10〜80℃、また反応時間は、通常、1〜10時間、好ましくは2〜5時間の条件下で実施される。
反応終了後は、反応液に水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリを加えて酸性触媒を中和後、さらに水洗して有機層を分離する。続いて、溶媒を留去した後、再結晶などの操作により、目的とするACVNを得る。
【0019】
このようにして得られるACVNは、H NMR、13C NMR、質量分析などによって、その構造を特定することができる。
【実施例】
【0020】
以下に、本発明の方法を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0021】
実施例1
50mLフラスコに、無水酢酸2.55g(0.025mol)、トリフルオロメタンスルホン酸0.007g(0.05mmol)を仕込み、50℃で2−t−ブトキシ−6−ビニルナフタレン2.26g(0.01mol)の無水酢酸溶液(50wt%)を0.5時間かけて滴下した。さらに同温度で0.5時間熟成した。
反応終了後、得られた反応液に10wt%水酸化ナトリウム水溶液0.05gを加えてトリフルオロメタンスルホン酸を中和した。さらに、トルエン20g、水10gを加え洗浄、分液後、得られた有機層に重合禁止剤(大内新興化学工業社製、ノクラックNS−6)を加えて濃縮し、褐色固体1.02gを得た。さらに、該結晶をメタノール中で再結晶し白色結晶0.95gを得た。(収率44.7%)
【0022】
核磁気共鳴分析、質量分析による分析の結果、上記白色固体はACVNであることを確認した。また、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、ACVNの純度は98.1%であった。
(分析結果)
(1)融点:98〜99℃
(2)1H−NMR(400MHz、CDCl3
δ(ppm)=2.354(s,3H),5.341(d,J=10.8Hz,1H),5.867(d,J=17.6Hz,1H),6.866(dd,J=10.8および17.6Hz,1H),7.213(dd、J=2.4および8.8Hz、1H)、7.520(d、J=2.4Hz、1H)7.633−7.761(m,4H)
(3)13C−NMR(400MHz、CDCl3
δ(ppm)=21.22、114.34、118.44、121.46、123.97、126.14、127.89、129.51、131.58、133.44、134.98、136.70、148.41、169.63
(4)質量分析(m/z):212(m+)
(5)元素分析 C(%)
H(%)
計算値 79.22 5.7
実測値 79.25 5.8
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の2−アセトキシ−6−ビニルナフタレンは、医薬・農薬や、レジスト、耐熱性樹脂などの機能性高分子の原料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される2−アセトキシ−6−ビニルナフタレン。
【化1】

【請求項2】
下記一般式(2)で表される2−t−ブトキシ−6−ビニルナフタレンと無水酢酸を酸触媒下、反応させることを特徴とする請求項1記載の2−アセトキシ−6−ビニルナフタレンの製造方法。
【化2】

【請求項3】
酸触媒が、ブレンステッド酸、ルイス酸および陽イオン交換樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である請求項2記載の2−アセトキシ−6−ビニルナフタレンの製造方法。

【公開番号】特開2008−303179(P2008−303179A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152440(P2007−152440)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(507119250)東ソー有機化学株式会社 (14)
【Fターム(参考)】