説明

2−ヒドロキシイソ酪酸含有メタクリル酸流れを精製する方法

【課題】2−ヒドロキシイソ酪酸含有メタクリル酸流れを精製する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、蒸留塔を利用する精製プロセスにおいて2−ヒドロキシイソ酪酸含有メタクリル酸流れを精製する方法であって:蒸留塔のボトムセクションでの前記メタクリル酸流れの滞留時間を48時間以下に維持して、これにより2−ヒドロキシイソ酪酸分解を最小限に抑えることを含む、2−ヒドロキシイソ酪酸含有メタクリル酸流れを精製する方法に関する。本発明のプロセスは、特殊MAAポリマーの製造に特に適した高純度のメタクリル酸生成物を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも99重量%のメタクリル酸、0.05重量%以下の水、および他の等級のメタクリル酸と比較して一定の減少した量の他の不純物を有する実質的に純粋なメタクリル酸の製造法に関する。より詳細には、本発明の方法により製造される実質的に純粋なメタクリル酸は、ある種の特殊ポリマー(specialty polymer)用フィードストックとしての使用に適している。
【背景技術】
【0002】
メタクリル酸(「MAA」)は広範囲の用途において用いられる。典型的な最終用途としては:アクリル系プラスチックシート;成形用樹脂;ポリ塩化ビニル改質剤;加工助剤;アクリル系ラッカー;床磨き剤;シーラント;車のトランスミッション液;クランクケースオイル改質剤;自動車コーティング;イオン交換樹脂;セメント改質剤;水処理ポリマー;電子接着剤;金属コーティング;およびアクリル繊維が挙げられる。MAAは、これが用いられている生成物に付与する硬度のためにこれらの用途および他の用途において特に貴重である。MAAはさらに、これが用いられる製品の化学安定性および光安定性、ならびに紫外線耐性を向上させる。従って、MAAは、優れた透明度、強度および耐候性を有する樹脂を要求する用途において用いられることが多い。MAA市場は、非常にコストに敏感であり、従ってプロセス収率における改良はわずかであっても、有意なコスト節減につながり得る。
【0003】
精製されていないMAAは一般に約5%以上の不純物量を有し、本発明において「粗メタクリル酸」または「粗MAA」と称する。MAA中の不純物は:水、酢酸、アクリル酸、アセトン、メタクロレイン、アクロレイン、イソ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸(HIBA)、メシチルオキシド、3−メタクリルオキシ−2−メチルプロピオン酸(「MOMPA」、メタクリル酸二量体ともいう)、メチルメタクリレート、プロピオン酸、およびメタクリルアミドの1以上を含み得る。未精製粗メタクリル酸中の特定の不純物の存在は、本来の粗メタクリル酸の製造に用いられる製造法に少なくとも一部依存する。
【0004】
例えば、粗メタクリル酸が、アセトンシアノヒドリンと硫酸を反応させてメタクリルアミド(MAM)中間体を形成することから誘導されるならば、MAM中間体を次に水と反応させて、メタクリル酸を形成し(本発明において「ACHプロセス」と称する)、HIBA、メタクリルアミド、および水などの不純物が典型的には存在し得る。
【0005】
別法として、粗メタクリル酸が、ブチレン、イソブチレン、ブタン、イソブタン、t−ブチルアルコール、またはメタクロレインを包含するリストから選択される1以上の原料の触媒気相酸化から誘導されるならば(本発明において「C−4プロセス」と称する)、メタクロレイン、アクロレイン、および水などの不純物が典型的に存在し得る。
【0006】
MAA中に存在する不純物は、MAAの最終用途の基本的性質に悪影響を及ぼし得る。従って、非常に低い重量パーセンテージの不純物を有するMAAが非常に望ましい。
【0007】
5重量%未満の不純物量を有する精製されたMAAは本発明において精メタクリル酸(glacial methacrylic acid)(GMAA)と称する。商業的に入手可能なGMAA製品は、典型的には約98.5〜99.5重量%のメタクリル酸含量、約0.2〜0.3重量%の水分、および約20〜25APHA(すなわち、American Public Health Associationにより確立された色測定基準)の製品色を有する(例えば、“Standard Specification for Glacial Methacrylic Acid”,D3845−96(2000)、ASTMおよび“Glacial Methacrylic Acid” Technical Information,TI/ED 1655e 2002年2月、BASF Aktiegesellschaft参照)。
【0008】
しかしながら、製品明細書においては確認されないが、商業的なGMAA製品はさらに水以外の不純物を含み、このような特定されない不純物が商業的なGMAAの高い製品色(すなわち、APHA値)の原因であることは、当業者には明らかである。これらの特定されない不純物は前記のような化合物を含み得、これらは一般に未精製粗MAAにおいてみられる。GMAAを製造する方法は水以外の不純物を一貫して調節しないので、かかる不純物の濃度が商業的GMAAの製品明細書において一致しないのは驚くべきことではない。
【0009】
1重量%以下の不純物量を有し、0.05重量%以下が水である精製されたMAAは、本発明において高純度精メタクリル酸(HPMAA)と称する。HPMAAが望ましい生成物であるが、これは製造するのにコストがかかる。
【0010】
粗メタクリル酸からHPMAAを製造するための3塔蒸留法が、同時係属出願中の米国特許番号10/420,273(2003年4月22日提出)に記載されているHPMAAの製造者らは、資本費用および運転費用をさらに減少させることができるHPMAAにおける改善を非常に歓迎するであろう。従って、製造業者にとって減少したコストでHPMAA製造するための方法に対する要望があるが取り組まれていない。
【0011】
水分含量が低いので、HPMAAはMAAを含む特殊ポリマーの製造においてフィードストックとして適当であり、本発明において「特殊MAAポリマー」と称する。特殊MAAポリマーおよびその製造法の代表例は、US5,002,979;US2003/0028071;US2002/0156220;US4,531,931;US5,973,046;およびUS3,264,272に記載されている。
【0012】
多くの特殊MAAポリマープロセスにおいて、水の存在は、ポリマー最終製品の形成および組成にとって特に有害である。したがって、特殊MAAポリマー製造者は残存する微量の水を除去するために原料モノマーを処理するのが一般的である。例えば、アニオン性重合において、水は連鎖停止剤としての働きをし、ジイミン触媒に基づく重合プロセスにおいては(例えばUS6,310,163)、水は触媒それ自身と干渉し得る。一般的処理法は、モノマーを中性アルミナを通すか、またはモノマーをモレキュラシーブ上で乾燥することを含む。しかしながら、このような追加の精製工程により、特殊MAAポリマー製造に不要なコストおよび複雑さが加わる。このコストは、モノマーが高濃度の水を含む場合に増大する。従って、たとえ水分量を0に減少させることができなくても、原料モノマーの水分量を減少させることが、かかる処理工程の程度および関連するコストを減少させることによりポリマー製造プロセスに有益な影響を及ぼすことは明らかである。GMAAを包含するメタクリル酸中に存在し得る水以外の不純物も特殊MAAポリマーの製造に有害な影響を及ぼし得る。
【0013】
例えば、MAA中に存在し得る有機不純物、例えば酢酸およびアルデヒド(例えば、メタクロレイン)は、特殊MAAポリマー調製中に望ましくない連鎖移動剤として作用し得る。他の有機不純物、例えば、MAAの二量体(MOMPA)およびメチルメタクリレートはポリマー分子中に組み入れられ、ポリマーの性質における望ましくない変化につながる。
【0014】
メタクリル酸中の潜在的な有機不純物の中でも、HIBAの存在が特殊ポリマーの調製について特に問題である。HIBA二量体は、環化して、3,3,6,6−テトラメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン(テトラメチルグリコリドともいう)を生じ得る。テトラメチルグリコリドをポリマー鎖中に組み入れることにより、最終特殊ポリマーの酸および塩基に対する耐性が低下し、これはエチレン−MAA(E−MAA)コポリマーにおいて特に望ましくない。HIBAの二量化および環化はさらに、その場で水を生じ、これはポリマー製造プロセスをさらに複雑にする。
【0015】
メタクリル酸中のHIBAはさらに特殊MAAポリマー調製プロセス中に酸触媒分解を受け、水、アセトン、および一酸化炭素を包含する分解生成物を形成し、これによりポリマー最終製品の構造および分子量が変更される。この水形成反応は、例えばメタクリル酸が強酸触媒の溶媒として使用されるプロセスにおいて特に問題である(例えば、US5.948,874)。
【0016】
従って、メタクリル酸中に存在する不純物は特殊MAAポリマー特性、例えばメルトインデックス、透明性、または酸に対する耐性などに対して著しい悪影響を及ぼし得ることは当業者には明らかであろう。場合によっては、不純物の存在が特定の用途、例えば非生体反応性または眼適合性ポリマーのインビボ使用についてポリマーを不適当にする可能性がある。他の場合においては、望ましくない不純物の影響は、さらに加工した後にのみ、たとえば特殊MAAポリマーを他の物質と配合している間またはその後に明らかになる。
【0017】
従って、特殊MAAポリマーの製造に特に好適な高純度のメタクリル酸生成物を製造する取り扱われていない要望も存在する。生成物メタクリル酸中の不純物量がにごくわずか減少しただけでも、特殊MAAポリマーの品質および製造コストに、顕著なよい影響が得られるならば、特殊MAAポリマーの製造業者らは、典型的なHPMAA規格よりも不純物量がさらに低いメタクリル酸生成物を製造できる粗メタクリル酸を精製するための改良されたプロセスの出現を非常に歓迎するであろう。
【0018】
本発明の精製法は、粗メタクリル酸から望ましくない不純物を除去し、これによりHPMAA、ならびに特殊MAAポリマー製造において使用するために特に望ましい最小量の不純物量を有するMAAのグレードを経済的に製造するために用いることができる。
【0019】
本発明の目的、特徴および利点は、以下の本発明のいくつかの具体例の記載から明らかになるであろう。これらの具体例は開示の目的のためであって、添付の図面と関連させて考慮することができる。以下の記載事項を添付の図面と関連させて参照することにより、本発明の具体例およびその利点をさらによく理解することができる。図中、同じ参照番号は、同じ機構を示す。
【0020】
【特許文献1】米国特許番号10/420,273号明細書
【特許文献2】米国特許第5,002,979号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0028071号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0156220号明細書
【特許文献5】米国特許第4,531,931号明細書
【特許文献6】米国特許第5,973,046号明細書
【特許文献7】米国特許第3,264,272号明細書
【特許文献8】米国特許第6,310,163号明細書
【特許文献7】米国特許第5.948,874号明細書
【非特許文献1】“Standard Specification for Glacial Methacrylic Acid”,D3845−96(2000)、ASTM
【非特許文献2】“Glacial Methacrylic Acid” Technical Information,TI/ED 1655e 2002年2月、BASF Aktiegesellschaft
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明はHPMAAを製造するための新規でかつ経済的な方法を提供する。本発明は、様々な不純物(一般に、軽質留分不純物(light impurities)、重質留分不純物(heavy impurities)、および水)をMAA流れから除去して、結果として得られる生成物が実質的に精製されたメタクリル酸になるように蒸留塔を使用することにより、粗MAA、または他の商業的等級のMAAを精製してHPMAAを製造にすることを包含する。さらに詳細には、実質的に精製されたメタクリル酸、HPMAAは、HPMAAの合計重量に基づいて0.05重量%以下の水を有する少なくとも99%純粋なMAAである。本発明の向上されたプロセスは、投資が軽減され、操作の複雑さが最小限に抑えられた2−塔蒸留システムを含む。運転費用も従って軽減される。本発明の向上された方法は、典型的なHPMAAの純度規格を超えるメタクリル酸を製造する方法で操作することができ、これにより特殊MAAポリマーの調製において使用するために特に有利なメタクリル酸が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
すでに記載したように、MAAから不純物を排除してHPMAAを製造することにより、特殊MAAポリマーの最終用途の前駆体としてのMAAの機能が向上される。HPMAAに起因する特徴のいくつかは、低色相(APHA値)、酸性または塩基性物質の影響に対する耐性、およびポリマーの反応温度を制御する能力を包含する。HPMAAはまた特殊MAAポリマー製造中に用いられる触媒の機能または操作を妨害しないものであるべきである。特殊MAAポリマーの多くの最終用途、例えばフィルムおよびコンタクトレンズも、色の均一性または高度の透明性を要求する。低色相MAAもE−MAAコポリマーを製造する場合、特に目的が透明性が重要な特徴であることが多いイオノマーを製造することである場合に好ましい。加えて、色は一般に不純物量が増大するにつれて増大するので、メタクリル酸生成物の色はその相対的純度の指数である。この理由のために、特殊MAAポリマー製造業者らは色の低い原料メタクリル酸、すなわち生成物の色が20APHA以下、たとえば15APHA未満、または10APHA未満のものを利用することが望ましいことを見いだした。生成物の色の測定値は5APHA程度、またはそれ以下である。本発明のプロセスは、低色相および低レベルの不純物、たとえばこれらに限定されないが、酢酸、アクリル酸、アルデヒド、HIBA、MOMPA、メチルメタクリレート、アセトン、および水などを有する生成物メタクリル酸を製造する。
【0023】
明確にするために、次の定義を本明細書において使用する:「トップ」とは蒸留塔の最上部に存在する蒸気スペースである;「ボトム」とは、蒸留塔の最下部に存在する液体溜である;「上部セクション」とは「トップ」の下方に隣接する蒸留塔のほぼ最上部1/3である;「下部セクション」とは、「ボトム」の上方に隣接する蒸留塔のほぼ最下部1/3である;「中間セクション」とは、「上部セクション」と「下部セクション」の中間の蒸留塔のほぼ1/3である;「ライン」とは、ユニット中へ、ユニットから外へ、または2以上のユニット間で蒸気および/または液体を輸送するための流体接続であり、バルブ、コンデンサー、流量計などの通常の周辺装置を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の一具体例を図1に示し、これは2つの蒸留塔を使用する。この具体例において、粗MAA流れ100が2つの蒸留塔の第一のものであるHPMAA軽質留分塔110に提供される。粗MAA流れ100は、例えばACH−プロセスから発する粗MAA流れまたはC−4プロセスから発する粗MAA流れ、または別の精製プロセスから発する部分的に精製された商業的等級のMAA流れを包含する、精製を必要とするメタクリル酸を含む任意の流れであり得る。軽質留分塔110において、粗MAA製造プロセスにおいて製造される軽質留分不純物はMAAから分離され、軽質留分塔110から軽質留分オーバーヘッド流れ105として分離される。軽質留分オーバーヘッド流れ105の正確な組成は、粗MAAの特定の供給源によって変わる。図1に示すプロセスに関して、軽質留分オーバーヘッド流れ105は、これらに限定されないが、アセトン、水、酢酸、アクリル酸、メタクロレイン、およびアクロレインを包含する1以上の成分を含む。HPMAA軽質留分塔110は塔付属部品(図示せず)も含み、ここにおいて「塔付属部品」なる用語は、あらゆる二次装置および塔に連結した関連する配管、例えば真空装置、リボイラー、コンデンサー、ポンプ、およびこれらに限定されないが、フィードライン、ボトムライン、オーバーヘッドライン、ベントライン、阻害剤添加ライン、酸素添加ライン、リフラックスライン、およびランダウンライン、例えば当業者に周知のものを包含するプロセスラインを意味する。
【0025】
HPMAA軽質留分塔110およびその塔付属部品は好ましくは腐食耐性の物質で構築される。適当な腐食作用に対して耐性の構築物質は、これらに限定されないが:300シリーズステンレス鋼、904L、6−molyステンレス鋼、HASTELLOY(登録商標)(例えば、B、B−2、B−3、C−22、およびC−276)、タンタル、およびジルコニウムを包含する。いくつかの具体例において、製造業者らは被覆されたベースメタル(base metal)を用いることにより建築費用を低減することができる。「被覆されたベースメタル」材料は、ガラス、エポキシ、エラストマー、フルオロポリマー(例えば、TEFLON(登録商標))、または前記腐食耐性金属の一つなどの腐食に対抗できるその上の皮膜と組合わされた炭素鋼などの一般に腐食耐性でないと考えられる材料である。被覆されたベースメタルは、腐食に対抗できる皮膜をベースメタル上に置き、任意により該被膜をベースメタルと結合させることにより構築される。被膜は、ベースメタルとプロセス流れ間の接触を防止する。被覆された卑金属構造は、大直径配管(呼称直径3.8cm以上)および高速送達(流体速度0.15メートル/秒以上)における熱交換チューブおよび他の構成物について特に好ましく、ここにおいて構造的強度を提供するためにかなりの金属の厚さ(3mm以上の金属の厚さ)を使用できる。前記物質、たとえば300シリーズステンレス鋼、904L、6−molyステンレス鋼、HASTELLOY(登録商標)(例えば、B、B−2、B−3、C−22、およびC−276)、タンタル、ジルコニウム)、および被覆されたベースメタル材料を以下、包括的に「腐食耐性金属」と称する。
【0026】
内部成分、例えばトレイまたはパッキングをHPMAA軽質留分塔110において必要に応じて用いることができる。かかる内部成分は、存在するならば塔自体と同じ材料から作るかまたは1以上の異なる材料から構築することができる;例えば、塔の上部は300シリーズステンレス鋼パッキングを含み、塔の下部はHASTELLOY(登録商標) B−2パッキングを含む。トレイをHPMAA軽質留分塔110において用いることができる。有孔プレートトレイはMAAポリマー蓄積に対して特に耐性であることが判明しているので有効である。本発明において用いられる「有孔プレートトレイ(perforated plate tray)」なる用語は、平面部分を貫通する複数の孔を有する平面部分を含むトレイを意味する。これらに限定されないが、堰、下降管、バッフル、ディストリビューター、バルブ、バブルキャップ、およびドレン穴を包含する任意のトレイ機構も存在してよい。有孔プレートトレイの例は、シーブトレイ、デュアルフロートレイ、およびコンビネーションバルブおよび有孔トレイを包含する。2つの理論的分離段階がHPMAA軽質留分塔110内で望ましい。トレイを用いるならば、2〜10の有孔プレートトレイを用いるのが好ましい。
【0027】
塔のボトムでの温度を最低限に抑えるために、HPMAA軽質留分塔110を真空下で操作することができる。例えば、一具体例において、塔のボトムでの圧力を40mmHg〜80mmHgに維持して、塔のボトムを70℃から110℃の範囲の温度で操作できるようにすることができる。
【0028】
少なくとも一つの熱交換器をHPMAA軽質留分塔110の加熱装置として用いることができる。緩熱蒸気はこれらの熱交換器の有効な熱源である。リボイラーが熱交換器として用いられるならば、これは蒸留塔の内部であっても、外部であってもよい。ボルテックスブレーカーもHPMAA軽質留分塔110のボトムにおいて有用である。
【0029】
メタクリル酸の重合を阻害するために、水溶性または有機可溶性重合禁止剤をHPMAA軽質留分塔110に添加するのが有用であることが多い。適当な例としては、これらに限定されないが:ヒドロキノン(HQ);4−メトキシフェノール(MEHQ);4−エトキシフェノール;4−プロポキシフェノール;4−ブトキシフェノール;4−ヘプトキシフェノール;ヒドロキノンモノベンジルエーテル;1,2−ジヒドロキシベンゼン;2−メトキシフェノール;2,5−ジクロロヒドロキノン;2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン;2−アセチルヒドロキノン;ヒドロキノンモノベンゾエート;1,4−ジメルカプトベンゼン;1,2−ジメルカプトベンゼン;2,3,5−トリメチルヒドロキノン;4−アミノフェノール;2−アミノフェノール;2−N,N−ジメチルアミノフェノール;2−メルカプトフェノール;4−メルカプトフェノール;カテコールモノブチルエーテル;4−エチルアミノフェノール;2,3−ジヒドロキシアセトフェノン;ピロガロール−1,2−ジメチルエーテル;2−メチルチオフェノール;t−ブチルカテコール;ジ−tert−ブチルニトロキシド;ジ−tert−アミルニトロキシド;2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−ジメチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−エタノールオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジニルオキシ;3−アミノ−2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジニルオキシ;2,2,5,5−テトラメチル−1−オキサ−3−アザシクロペンチル−3−オキシ;2,2,5,5−テトラメチル−3−ピロリニル−1−オキシ−3−カルボン酸;2,2,3,3,5,5,6,6−オクタメチル−1,4−ジアザシクロヘキシル−1,4−ジオキシ;4−ニトロソフェノレートの塩;2−ニトロソフェノール;4−ニトロソフェノール;ジメチルジチオカルバミン酸銅;ジエチルジチオカルバミン酸銅;ジブチルジチオカルバミン酸銅;サリチル酸銅;メチレンブルー;鉄;フェノチアジン(PTZ);3−オキソフェノチアジン;5−オキソフェノチアジン;フェノチアジン二量体;1,4−ベンゼンジアミン;N−(1,4−ジメチルペンチル)−N’−フェニル−1,4−ベンゼンジアミン;N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−1,4−ベンゼンジアミン;N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンおよびその塩;酸化窒素;ニトロソベンゼン;p−ベンゾキノン;またはその異性体;これらの2以上の混合物;前記の1以上と分子酸素との混合物が挙げられる。
【0030】
阻害剤は単独で使用できるか、または適当な希釈剤と組み合わせることができる。好ましい希釈剤としては、これらに限定されないが、MAA、水、およびアセトンを含む有機混合物が挙げられる。ヒドロキノン(HQ)阻害剤はHPMAA軽質留分塔110における使用に特に有効であり、直接、または希釈剤と共にHPMAA軽質留分塔110およびその付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。用いられる場合、阻害剤は、10000kgのHPMAA軽質留分塔フィードあたり1kg〜10kgのHQの割合、例えば、10000kgのHPMAA軽質留分塔フィードあたり1.3kg〜8kgのHQの割合で添加することができる。別の例は、10000kgのHPMAA軽質留分塔フィードあたり1.5kg〜5kgのHQである。
【0031】
フェノール系阻害剤、例えばHQおよびMeHQを使用する場合、阻害剤の有効性を向上させるために酸素含有ガスを蒸留塔に添加することができる。本発明において用いられる「酸素含有ガス」なる用語は、0.01%から100%までの酸素を含むガスを意味する。酸素含有ガスは、HPMAA軽質留分塔110およびその塔付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。操作温度および圧力は精製システム内の引火限界および酸素溶解度に影響を及ぼし、これらの特性は酸素含有ガスについて使用される適当な酸素濃度を決定する際に考慮しなければならない。当業者らはこれらのファクターを考慮することができ、純粋な酸素または大気が一般的に用いられうる。驚くべきことに、本発明者らは酸素添加に関して従来考慮されなかった精製システム内での阻害−すなわち、MAA含有流れそれ自体内での高酸素濃度を回避すること−の有効性に影響を及ぼす重要なファクターがあることを見いだした。酸素濃度が阻害剤濃度に対して高い場合、酸素はモノマーラジカルの形成を促進することにより実際に重合速度を増大させることができる。この理由のために、阻害剤が存在しない場合に酸素含有ガスをHPMAA軽質留分塔110に添加することは推奨されない。さらに、酸素含有ガスおよび阻害剤が精製システムに添加される場合、酸素含有ガスを阻害剤添加速度に対して規定された割合で添加することができる。最適の酸素対阻害剤比は、使用される阻害剤に関して変化するであろう。
【0032】
HQが選択された阻害剤である場合、精製システムに添加される、酸素含有ガスフィードとHQ阻害剤フィードの比は、0.65モル〜10モルO/モルHQ、例えば、1モル〜8.5モルO/モルHQまたは1.5モル〜6モルO/モルHQに維持されうる。
【0033】
MEHQが選択された阻害剤である場合、精製システムに添加される、酸素含有ガスフィードとMEHQ阻害剤フィードの比は、1モル〜11.5モルO/モルMEHQ、例えば、1.5モル〜9モルO/モルMEHQまたは2モル〜6モルO/モルMEHQに維持されうる。
【0034】
軽質留分オーバーヘッド流れ105は、他の場所(例えばMAAプロセス)で使用するためにリサイクルしてもよいし、またはアセトン回収容器に送ってもよい。縮合重合を最小限に抑えるために、HPMAA軽質留分塔110およびその付属部品(コンデンサーおよび相互連結蒸気ラインを含む)上の蒸気スペースをMAAの露点より高い温度に維持することができる。断熱および電気または蒸気トレーシングがこの目的のために有効である。
【0035】
HPMAA軽質留分塔110から除去された後に、軽質留分オーバーヘッド流れ105が1以上のコンデンサー(図示せず)中で凝縮されるならば、流れ中のMAAが凍結するのを回避するために、16℃より高い温度の冷媒をコンデンサーにおいて使用することができる。特定の態様においては、16℃〜35℃の範囲の温度の水がコンデンサーの冷媒として使用される。一具体例において、凝縮物の一部を再循環ライン(図示せず)を通ってコンデンサーと任意にコンデンサーの蒸気インレットラインに再循環させて、付着物を最小限に抑え、コンデンサー効率を向上させることができる。凝縮物を再循環ラインから外部に自由に流出させるか、またはチューブシート、コンデンサー内部表面、および/またはインレット蒸気ライン内壁に適用することができる。阻害剤がコンデンサーに添加されるならば、これは阻害剤の分配を向上させるためにこの凝縮物再循環流れ中に添加されるう。もう一つの例において、凝縮物をHPMAA軽質留分塔110および/またはその付属部品の内部表面上にスプレーできる装置にこの凝縮物再循環流れの少なくとも一部を通して、重合可能な凝縮物を洗い流すことができる。
【0036】
もう一つの具体例において、任意の部分コンデンサー配列(図示せず)が用いられ、ここにおいて、軽質留分オーバーヘッド流れ105は、少なくとも一つのMAA/水流れおよび一つの水/アセトン流れを含む2以上の流れに分割される。このようにして、MAA/水流れをMAAプロセス中に直接リサイクルすることができ、水/アセトン流れを、アセトン回収操作、スクラバー、またはフレアなどの別のプロセスに導くことができる。
【0037】
HPMAA軽質留分塔110のボトムセクションから抜き取られるのは、典型的にはMAAおよび重質留分、例えばHIBAを含有し、一般に実質的にはアセトンおよび水のないボトム流れ115である。ボトム流れ115を第二の不純物除去装置、HPMAA重質留分塔120に供給する。HPMAA重質留分塔120において、粗MAA製造プロセスにおいて生じる重質留分不純物をMAAから分離する。重質留分不純物は、これらに限定されないが、イソ酪酸、HIBA、メシチルオキシド、MOMPA、メチルメタクリレート、プロピオン酸、メタクリルアミド、スルフェートおよびPTZを包含する。HPMAA重質留分塔120およびその塔付属部品は好ましくはHPMAA軽質留分塔110についてすでに記載したような腐食耐性物質で構築される。
【0038】
トレイまたはパッキングなどの内部成分を必要に応じてHPMAA重質留分塔120において用いることができる。もし存在するならば、内部成分は塔それ自体と同じ材料で作ってもよいし、あるいは1以上の異なる材料から構築してもよい;例えば、HPMAA重質留分塔120の上部は300シリーズステンレス鋼トレイを含み、一方、塔の下部は904Lトレイを含むことができる。トレイ、例えば有孔プレートトレイは、MAAポリマー蓄積に対して特に耐性であることが判明しているので、HPMAA重質留分塔120において用いることができる。少なくとも5の理論的分離段階がHPMAA重質留分塔120内で望ましいことが確認された。トレイを使用するならば、5〜15の有孔プレートトレイを使用するのが好ましい。さらに、ボトム温度を最低に抑えるために、HPMAA重質留分塔120を真空下で操作することが可能である。例えば、HPMAA重質留分塔120のボトムでの圧力は50mmHg〜100mmHgに維持され、HPMAA重質留分塔120のボトムが80℃〜120℃の範囲の温度で操作されるようにするべきである。
【0039】
少なくとも一つの熱交換器(図示せず)をHPMAA重質留分塔120の加熱装置として使用することができる。緩熱蒸気が熱交換器の熱源として好ましい。リボイラーを熱交換器として用いるならば、これは塔の内部であっても、外部であってもよい。ボルテックスブレーカーもHPMAA重質留分塔120のボトムにおいて有用である。
【0040】
重質留分、例えば、HIBAおよび他の不純物は、HPMAA重質留分塔120のボトムから重質留分ボトム流れ130を経て除去される。HPMAA重質留分塔ボトム流れ130は廃棄されうるが、任意にこの流れのいくつかの成分を回収し、燃料として用いることができる。任意に、ボトム流れ130をさらに独立したストリッピングシステム(図示せず)において処理して、残存するMAAを回収することができる。独立したストリッピングシステムの一具体例(図示せず)において、ボトム流れ130を1以上のガラスで裏打ちされたストリッピング容器中で生蒸気(MAA含有重質留分塔ボトム流れと直接接触するようになる流れ)で加熱することができる。MAAの回収を最大にするために、ストリッピング容器を大気圧以下で操作することができる。回収されたMAAを、例えばMAAプロセスまたはメタクリル酸エステルプロセス中にリサイクルすることができる。一具体例において、硫黄を回収するために、重質留分塔ボトムはさらに廃硫酸ユニットにおいて、単独またはACHベースのMAAプロセス酸残留物、ACHベースのMMAプロセス酸残留物、およびアクリルエステルプロセス酸残留物から選択される廃酸流れと組み合わせて処理される。
【0041】
縮合重合を最小限に抑えるために、HPMAA重質留分塔120およびその付属部品(コンデンサーおよび相互連結蒸気ラインを含む)上の蒸気スペースをMAAの露点より高い温度に維持することができる。断熱および電気または蒸気トレーシングがこの目的に有効である。
【0042】
HPMAA重質留分オーバーヘッド流れ125は著しい量のMAAならびに水、アセトン、および他の軽質留分を含有する。軽質留分の少なくとも一部を除去するために、オーバーヘッド流れ125は1以上のコンデンサー(図示せず)において少なくとも部分的に凝縮させることができる。オーバーヘッド流れ125がこのように凝縮されるならば、流れ中のMAAの凍結を回避するために、予熱された水をコンデンサーにおいて用いることができる。生成物流れ135の所望の純度を維持するために、しばしば凝縮物の一部を、重質留分リフラックス流れ155を経てHPMAA重質留分塔120に戻す必要がある。戻される凝縮物のフラクションは、HPMAA重質留分塔120の操作条件および生成物流れ135において望ましいMAA純度によって0%から100%まで変化し得る。一具体例において、付着物を最小限に抑え、コンデンサー効率を向上させるために、凝縮物の一部をコンデンサーと任意にコンデンサーインレットラインに再循環させることができる。凝縮物を再循環ラインから自由に流出させるてもよいし、あるいはチューブシート、コンデンサー内部表面、および/またはインレット蒸気ライン内壁に適用することができる。阻害剤がコンデンサーに添加されるならば、これは阻害剤の分散を向上させるためにこの凝縮物再循環流れ中に添加される。もう一つの例において、この凝縮物再循環流れの少なくとも一部を、凝縮物をHPMAA重質留分塔120および/またはその付属部品の内部表面上にスプレーできる装置を通して、重合可能な凝縮物を洗い流すことができる。MAAおよび軽質留分不純物を含む残存する凝縮物を次にHPMAA軽質留分塔110に重質留分塔リサイクル流れ165として戻す。
【0043】
塔120のトップからではなく、プロセスの第二の蒸留塔のサイドから、すなわち、図1に示すHPMAA重質留分塔120から生成物流れ135を除去することにより、HPMAA重質留分塔120の操作が向上され、高純度のHPMAAが製造される。この構造は、「サイドドロー」構造と呼ばれる。HPMAAの純度の増大は、塔のトップでのトレイよりも軽質留分不純物が少ないHPMAA重質留分塔120の中間セクションにおけるトレイ組成のためにサイドドロー構造を使用することにより達成できる。
【0044】
さらに、最高温度は、HPMAA重質留分塔120のボトムで起こり、ポリマーまたは形成され得る他の望ましくない不溶性不純物は、塔のボトムから直接抜き取られるHPMAA生成物に対してサイドドロー流れ中に存在する可能性が低い。生成物流れ135の当該分野において公知の手段を通した任意の濾過を用いることができるが、この具体例におけるサイドドロー構造の使用は、HPMAA生成物流れにおける潜在的な不溶性不純物の量を減少させることができる。したがって、濾過の必要性は最小限に抑えられるかまたはおそらくは排除され、操作費用が軽減される。サイドドロー構造は、本発明に従って、第二の塔が重質留分塔でなく、軽質留分塔である場合でさえも、2塔精製システムの第二の蒸留塔に代わりに適用することができる。これは、図3に示す具体例の記載と関連して以下で明らかにされる。
【0045】
図2は、図1の重質留分除去塔120に関する使用に適用されるサイドドロー構造の一具体例を表す概略断面図である。このサイドドロー構造は、シーブトレイなどの有孔蒸留トレイに関して使用することができるが、他のタイプのトレイに関する使用についても好適である。図2に示すように、配管接続200は蒸留塔202の内壁で作られる。図1の具体例に関して、図2の蒸留塔202は重質留分除去塔120と類似している。図2に示す配管接続は、下降管210における液体の蓄積を、開口部205を通って抜き取ることができるようにする。インレット堰225は、サイドドロートレイ220上への下降管210からの流出を制限し、これにより開口部205を通って液体を流出させるように下降管210における十分な液体ヘッドが維持される。この液体流出は、サイドドロー生成物流れ135である。堰225の適当な高さは、下降管210内の液体の高さ215(「下降管バックアップ」ともいう)、サイドドロートレイ220上の圧力、下降管クリアランス230、サイドドロー生成物流れ135の所望の流速、および開口部205の直径を包含する多くの変数によって変わる。蒸留設計の通常の熟練者らはインレット堰225について適当な高さを選択することができる。例えば、可能な一配列において、下降管210内の液体の高さ215は11インチ(27.94cm)であり、サイドドロートレイ220上の圧力は45mmHgであり、下降管クリアランス230は3/4インチ(1.91cm)であり、サイドドロー生成物流れ135の所望の流速は約11000kg/時であり、開口部205の直径は3インチ(7.62cm)であり、堰225の高さは6インチ(15.24cm)である。
【0046】
前記のような1以上の阻害剤をHPMAA重質留分塔120に希釈剤の有無にかかわらず添加することが有用である場合が多い。阻害剤はHPMAA重質留分塔120およびその付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。
【0047】
HQ阻害剤を使用する場合、阻害剤は、HPMAA重質留分塔120フィード10000kgあたり1kg〜10kgのHQの割合、例えば、HPMAA重質留分塔120フィード10000kgあたり1.3kg〜8kgのHQの割合、またはHPMAA重質留分塔120フィード10000kgあたり1.5kg〜5kgのHQの割合で添加することができる。
【0048】
MEHQが特に有効な阻害剤であり、直接、またはMAAなどの希釈剤とともに、HPMAA重質留分塔120およびその付属部品全体にわたって1以上の場所において添加することができる。使用される場合、MEHQは10000kgのHPMAA重質留分塔フィード流れ115につき1kg〜15kgのMEHQの割合、例えば、10000kgのHPMAA重質留分塔フィード流れ115につき1.5kg〜12kgのMEHQの割合、または10000kgのHPMAA重質留分塔フィード流れ115につき2kg〜9kgのMEHQの割合で添加することができる。
【0049】
前記のように、フェノール系阻害剤、例えばHQおよびMEHQを使用する場合、阻害剤の有効性を向上させるために酸素含有ガスを蒸留塔に添加することができる。酸素含有ガスをHPMAA重質留分塔120およびその付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。HPMAA重質留分塔120に関する操作条件および装置および推奨される酸素対阻害剤の比は、HPMAA軽質留分塔110に関して記載したのと同じである。
【0050】
HPMAA生成物流れのサイドドロー除去は、HPMAA重質留分塔120において使用される阻害剤の選択肢の数を増大させる。これは、阻害剤が一般にボトム流れから蒸留塔120を出る重質留分成分であるという事実による。従って、生成物流れが塔120のボトムから抜き取られる一具体例において、任意の添加される阻害剤はこれとともに流出する。対照として、生成物が図1に示すように塔のサイドから抜き取られる場合、阻害剤は全て生成物とともに抜き取られるわけではない。従って、図1に示す具体例において、広範囲に及ぶ阻害剤をHPMAA重質留分塔120それ自体に直接供給することができ、サイドドロー流れが除去される地点より下の位置で塔に添加されると仮定すると、生成物HPMAAにおいて望ましくない阻害剤さえも含んでもよい。
【0051】
従って、いくつかの具体例において、塔のボトムにおけるポリマー形成を最小限に抑えるために、PTZを直接HPMAA重質留分塔120の下部セクションに添加することができる。使用されるならば、PTZは10000kgのHPMAA重質留分塔120フィードにつき0.005kg〜8kgのPTZの割合、例えば10000kgのHPMAA重質留分塔120フィードにつき0.01kg〜5kgのPTZの割合、または10000kgのHPMAA重質留分塔120フィードにつき0.05kg〜1kgのPTZの割合で添加することができる。
【0052】
重合を阻害するために、HPMAA生成物流れ135を貯蔵前に冷却することができる。全ての重合可能なモノマーについて、輸送および貯蔵における重合を防止するために、生成物メタクリル酸が重合禁止剤を含むのが有益である。蒸留塔において使用するのに好適なものとして、上述された任意の阻害剤が本発明の目的のために使用することができる。しかしながら、MAAを特殊ポリマー製造においてにおいて用いる場合、MeHQが阻害剤として最も一般的に用いられ、典型的には200ppmから300ppmの間の濃度で用いられる。本発明のいくつかの具体例において、HPMAA生成物流れ阻害剤濃度が最終生成物規格内にあることを確実にするために、変動可能な量のMeHQ阻害剤をHPMAA生成物流れ135に直接添加することができる。
【0053】
メタクリル酸は、重合反応においてポリマー製造業者により使用される前にMeHQ阻害剤が存在してはならないわけでなはい。これは、MAAが混合物の合計重量に基づいてモノマー混合物の50重量%未満であるコポリマーの調製に特に当てはまる。このような場合、阻害されていないモノマーについてよりも幾分多い開始剤を使用できる。別法として、MeHQはフェノール系阻害剤であるので、特殊MAAポリマー製造業者の一部は代わりに酸素の不在下で重合反応を行うことを選択し、これによりMeHQを反応系において実質的に不活性にすることができる。しかしながら、開始剤量を調節するか、または酸素を反応系から排除することは現実的でないならば、使用前にMeHQ阻害剤を除去するために、メタクリル酸生成物のアルカリ洗浄、適当なイオン交換樹脂での処理、または蒸留などの公知方法を用いることができる。
【0054】
本発明により製造されるHPMAA生成物流れの例は、MAAのアッセイが少なくとも99重量%であり、水が500ppm(0.05重量%H2O)までの濃度で存在し、MAAのメタクロレイン含量が1000ppm(0.1重量%メタクロレイン)までであり、MAAのHIBA含量が9000ppm(0.9重量%HIBA)までである(全ての重量百分率はHPMAA生成物流れの合計重量に基づく)組成物を包含する。
【0055】
本発明のHPMAA生成物流れのもう一つの例は、HPMAAのアッセイが少なくとも99重量%であり、水が300ppm(0.03重量%H2O)までの濃度で存在し、MPMAAのメタクロレイン含量が500ppm(0.05重量%メタクロレイン)までであり、HPMAAのHIBA含量が5000ppm(0.5重量%HIBA)までである(全ての重量百分率はHPMAA生成物流れの合計重量に基づく)組成物を包含する。
【0056】
本発明のHPMAA生成物流れのさらにもう一つの例は、HPMAAのアッセイが少なくとも99重量%であり、水が200ppm(0.02重量%H2O)までの濃度で存在し、HPMAAのメタクロレイン含量が200ppm(0.02重量%メタクロレイン)までであり、HPMAAのHIBA含量が1500ppm(0.15重量%HIBA)までである(全ての重量百分率はHPMAA生成物流れの合計重量に基づく)組成物を包含する。
【0057】
本発明により製造される生成物HPMAA流れのさらなる例は、HPMAAのアッセイが少なくとも99重量%であり、水が150ppm(0.015重量%H2O)までの濃度で存在し、HPMAAのメタクロレイン含量が50ppm(0.005重量%メタクロレイン)までであり、HPMAAのHIBA含量が1000ppm(0.10重量%HIBA)までである(全ての重量百分率はHPMAA生成物流れの合計重量に基づく)組成物を包含する。
【0058】
本発明により製造されるHPMAA生成物流れの一例は、さらに、HPMAAのMOMPAとMMAとの合計含量が1000ppm(MOMPAとMMAの両方で0.1重量%)までであり、HPMAAのメタクリルアミド含量が750ppm(0.075重量%MAM)までである(全重量百分率はHPMAA生成物流れの合計重量に基づく)組成物を包含する。
【0059】
本発明のHPMAA生成物流れのもう一つの例は、さらに、HPMAAのMOMPAとMMAとの合計含量が500ppm(MOMPAとMMAの両方で0.05重量%)までであり、HPMAAのメタクリルアミド含量が500ppm(0.05重量%MAM)までである(全重量百分率はHPMAA生成物流れの合計重量に基づく)組成物を包含する。
【0060】
本発明のHPMAA生成物流れのさらにもう一つの例は、さらに、HPMAAのMOMPAとMMAとの合計含量が200ppm(MOMPAとMMAの両方で0.02重量%)までであり、HPMAAのメタクリルアミド含量が100ppm(0.01重量%MAM)までである(全重量百分率はHPMAA生成物流れの合計重量に基づく)組成物を包含する。
【0061】
本発明により製造される生成物HPMAA流れのさらにもう一つ例は、さらに、HPMAAのMOMPAとMMAとの合計含量が100ppm(MOMPAとMMAの両方で0.01重量%)までであり、HPMAAのメタクリルアミド含量が25ppm(0.0025重量%MAM)までである(全重量百分率はHPMAA生成物流れの合計重量に基づく)組成物を包含する。
【0062】
本発明により製造されるHPMAA生成物流れの例は、さらに、HPMAA生成物流れの酢酸含量が1000ppm(0.1重量%酢酸)までであり、アセトン含量が800ppm(0.08重量%アセトン)までであり、アクリル酸含量が400ppm(0.04重量%アクリル酸)までであり、プロピオン酸含量が200ppm(0.02重量%プロピオン酸)までである(全重量百分率はHPMAA生成物流れの合計重量に基づく)組成物を包含する。
【0063】
本発明のHPMAA生成物流れのもう一つの例は、さらに、HPMAA生成物流れの酢酸含量が750ppm(0.075重量%酢酸)までであり、アセトン含量が400ppm(0.04重量%アセトン)までであり、アクリル酸含量が200ppm(0.02重量%アクリル酸)までであり、プロピオン酸含量が150ppm(0.015重量%プロピオン酸)までである(全重量百分率はHPMAA生成物流れの合計重量に基づく)組成物を包含する。
【0064】
本発明のHPMAA生成物流れのさらにもう一つの例は、さらに、HPMAA生成物流れの酢酸含量が200ppm(0.02重量%酢酸)までであり、アセトン含量が50ppm(0.005重量%アセトン)までであり、アクリル酸含量が25ppm(0.0025重量%アクリル酸)までであり、プロピオン酸含量が100ppm(0.01重量%プロピオン酸)までである(全重量百分率はHPMAA生成物流れの合計重量に基づく)組成物を包含する。
【0065】
本発明により製造されるHPMAA生成物流れのさらなる例は、さらに、HPMAA生成物流れの酢酸含量が100ppm(0.01重量%酢酸)までであり、アセトン含量が25ppm(0.0025重量%アセトン)までであり、アクリル酸含量が10ppm(0.001重量%アクリル酸)までであり、プロピオン酸含量が50ppm(0.005重量%プロピオン酸)までである(全重量百分率はHPMAA生成物流れの合計重量に基づく)組成物を包含する。
【0066】
改良されたHPMAA精製システムのもう一つの例を図3に示す。この具体例は、本発明に従って粗MAA流れ300を精製してHPMAA生成物流れにするために「逆順序(reverse−order)」の構造を利用する。粗MAA流れ300をまず第一の不純物除去装置、HPMAA重質留分塔310に供給する。HPMAA重質留分塔310において、HIBAを含む重質留分を塔のボトムからライン315を通って除去する。当業者には理解されるように、この具体例において重質留分を早期に除去することにより、次の塔におけるHIBAの水および軽質留分への分解が最小限に抑えられる。
【0067】
HPMAA重質留分塔310およびその塔付属部品は、HPMAA軽質留分塔110についてすでに記載したように、好ましくは腐食耐性材料で構築される。内部成分、例えばトレイまたはパッキングをHPMAA重質留分塔310において必要に応じて用いることができる。内部成分は、もし存在するならば塔自体と同じ材料から作るかまたは1以上の異なる材料から構築することができる。トレイ、例えば有孔プレートトレイがMAAポリマー蓄積に対して特に耐性であることが判明しているので、これらをHPMAA重質留分塔310において使用することができる。少なくとも5の理論的分離段階がHPMAA重質留分塔310内で望ましいことが確認された。トレイを使用するならば、5〜15の有孔プレートトレイを使用するのが好ましい。塔のボトムでの温度を最低に抑えるために、HPMAA重質留分塔310を真空下で操作することが可能である。例えば、一具体例において、HPMAA重質留分塔310のボトムでの圧力は50mmHg〜90mmHgに維持され、HPMAA重質留分塔310のボトムが85℃〜125℃の範囲の温度で操作されるようにする。少なくとも一つの熱交換器(図示せず)をHPMAA重質留分塔310の加熱装置として使用することができる。緩熱蒸気が熱交換器の熱源として有効に使用される。リボイラーを熱交換器として用いるならば、これは塔の内部であっても、外部であってもよい。ボルテックスブレーカーもHPMAA重質留分塔310のボトムにおいて有用である。
【0068】
いくつかの阻害剤が処理前から粗MAA中に存在し得るが、前記のような阻害剤を希釈剤の有無にかかわらずHPMAA重質留分塔310に添加するのが有用であることが多い。HQ阻害剤は特に有効であり、直接または水などの希釈剤とともに、HPMAA高沸点留部分塔310およびその付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。もし使用するならば、阻害剤を、HPMAA重質留分塔310へのフィード10000kgあたり1kgから10kgのHQの割合、例えば、HPMAA重質留分塔310へのフィード10000kgあたり1.3kgから8kgのHQの割合、またはHPMAA重質留分塔310へのフィード10000kgあたり1.5kgから5kgのHQの割合で添加することができる。
【0069】
前記のように、フェノール系阻害剤、例えばHQおよびMEHQを使用する場合、阻害剤の有効性を向上させるために酸素含有ガスを蒸留塔に添加することができる。酸素含有ガスをHPMAA重質留分塔310およびその付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。HPMAA重質留分塔310に関する操作条件および装置および推奨される酸素対阻害剤の比は、HPMAA軽質留分塔110に関して記載したのと実質的に同じである。
【0070】
HIBA、および他の重質留分不純物は、HPMAA重質留分塔310のボトムから流れ315を経て除去され、廃棄してもよいし、燃料として使用するために回収してもよい。任意に、重質留分塔ボトムは、残存するMAAを回収するために独立したストリッピングシステムにおいてさらに処理することができる。独立したストリッピングシステムの一具体例(図示せず)において、重質留分塔ボトムは1以上のガラスで裏打ちされたストリッピング容器中で生蒸気で加熱される。MAAの回収を最大にするために、ストリッピング容器を減圧下で操作することができる。一具体例において、重質留分塔ボトムを廃硫酸ユニットにおいて、単独またはACHベースのMAAプロセス酸残留物、ACHベースのMMAプロセス酸残留物、およびアクリルエステルプロセス酸残留物を含む群から選択される廃酸流れとの組み合わせにおいてさらに処理して、硫黄を回収することができる。
【0071】
HPMAA重質留分塔オーバーヘッド流れ305はかなりの量のMAAならびに水、アセトン、他の軽質留分、および微量の重質留分を含有する。HPMAA重質留分オーバーヘッド流れ305は、1以上のコンデンサー(図示せず)において少なくとも部分的に凝縮することができる。さらに、凝縮された流れをリフラックス流れ355およびフィード流れ365に分割することができる。
【0072】
軽質留分塔フィード流れ365の必要とされる純度を維持するために、しばしば凝縮物の一部を重質留分塔310にリフラックス流れ355を介して戻す必要があり;戻される凝縮物のフラクションは、HPMAA重質留分塔310の操作条件およびフィード流れ365の所望の純度レベルによって、0%〜100%まで変化し得る。残存する凝縮物を次いでフィード流れ365を介してHPMAA軽質留分塔320に移す。流れにおけるMAAの凍結を回避するために予熱された水を重質留分塔コンデンサー(図示せず)において使用することができる。縮合重合を最小限に抑えるために、HPMAA重質留分塔310上の蒸気スペース、およびコンデンサーおよび相互連結蒸気ラインを包含するその付属部品をMAAの露点より高い温度に維持することができる。断熱および電気または蒸気トレーシングがこの目的について有効である。
【0073】
一具体例において、凝縮物の一部をコンデンサー(図示せず)、および任意にコンデンサーインレットラインに再循環させて、付着物を最小限に抑え、コンデンサー効率を向上させることができる。凝縮物を再循環ラインから外部に自由に流出させるか、またはチューブシート、コンデンサー内部表面、および/またはインレット蒸気ライン内壁に適用することができる。阻害剤がコンデンサーに添加されるならば、これは阻害剤の分配を向上させるためにこの凝縮物再循環流れに添加される。一具体例において、この凝縮物再循環流れの少なくとも一部を、凝縮物をHPMAA重質留分塔310および/またはその付属部品の内部表面上にスプレーできる装置を通して、重合可能な凝縮物を洗い流すことができる。
【0074】
HPMAA軽質留分塔320は、水、アセトンおよび他の軽質留分不純物が存在する場合にこれをMAAから流れ325を介して除去する。部分コンデンサー配列(図示せず)を使用することができ、ここにおいて流れ325は少なくとも部分的に凝縮されて液体になる。流れ325がこのように凝縮されるならば、予熱された水を冷媒として用いて流れ325におけるMAAの凍結を回避することができる。縮合重合を最小限に抑えるために、HPMAA軽質留分塔320上の蒸気スペース、およびコンデンサーおよび相互接続蒸気ラインを包含するその付属部品をMAAの露点より高い温度に維持することができる。断熱および電気または蒸気トレーシングがこの目的について有効である。一具体例において、凝縮物の一部をコンデンサーおよび任意にコンデンサーインレットラインに再循環させて、付着物を最小限に抑え、コンデンサー効率を向上させることができる。凝縮物を再循環ラインから外部に自由に流出させるか、またはチューブシート、コンデンサー内部表面、および/またはインレット蒸気ライン内壁に適用することができる。阻害剤がコンデンサーに添加されるならば、これは阻害剤の分配を向上させるためにこの凝縮物再循環流れに添加される。一具体例において、この凝縮物再循環流れの少なくとも一部を、凝縮物をHPMAA軽質留分塔320および/またはその付属部品の内部表面上にスプレーできる装置を通して、重合可能な凝縮物を洗い流すことができる。
【0075】
HPMAA軽質留分塔320およびその塔付属部品は、HPMAA軽質留分塔110についてすでに記載したように、好ましくは腐食耐性材料で構築される。内部成分、例えばトレイまたはパッキングをHPMAA重質留分塔320において必要に応じて用いることができる。内部成分は、もし存在するならば塔自体と同じ材料から作るかまたは1以上の異なる材料から構築することができる。有孔プレートトレイがMAAポリマー蓄積に対して特に耐性であることが判明しているので、特に有効である。少なくとも2の理論的分離段階がHPMAA重質留分塔320内で望ましいことが確認された。トレイを用いるならば、2〜10の有孔プレートトレイを使用するのが好ましい。HPMAA軽質留分塔320は、ボトム温度を最低にするために、真空下(すなわち、大気圧以下)で操作することができる。一具体例において、HPMAA軽質留分塔320のボトムでの圧力は60mmHg〜100mmHgに維持され、HPMAA軽質留分塔320のボトムが75℃〜115℃の範囲の温度で操作されるようにする。
【0076】
少なくとも一つの熱交換器(図示せず)をHPMAA軽質留分塔320の加熱装置として使用することができる。緩熱蒸気が熱交換器の熱源として好ましい。リボイラーを熱交換器として用いるならば、これは塔の内部であっても、外部であってもよい。ボルテックスブレーカーもHPMAA軽質留分塔320のボトムにおいて有用である。
【0077】
HPMAA生成物流れ350は、99%以上の純度を有し、0.05%未満の水を含有する塔320のサイドからHPMAA軽質留分塔320を出る。流れ350の配管を塔320のサイドに連結するために、適当な連結手段、例えば前記の、図2に示すようなものが使用される。重質留分除去塔120のサイドドローと同様に、図3のHPMAA軽質留分塔のサイドドローの詳細を図2に示す。図3の逆順序のプロセスに関して、図2に示す蒸留塔202はHPMAA軽質留分塔320である。同様に、開口部205を出る流れは生成物流れ350である。生成物流れ350は重合を阻害するために貯蔵前に冷却することができる。
【0078】
生成物流れ350の任意の濾過を図1に示す前記具体例において記載したように使用することができるが、この具体例におけるサイドドロー構造の使用は、HPMAA生成物流れにおける潜在的な不純物の量を減少させることができる。従って、濾過の必要性を最小限に抑え、操作費用を減少させることができる。
【0079】
図3に示すように、HPMAA軽質留分塔320のボトムに蓄積し得る重質留分不純物は、流れ330を介して除去され、HPMAA重質留分塔310にリサイクルされる。このリサイクル工程により、流れ330中に存在するMAAを塔310中に回収できる。流れ330中に存在する任意の重質留分および望ましくない不純物は、流れ315中の他の重質留分成分とともにHPMAA重質留分塔310から流出する。
【0080】
阻害剤、例えば前記のようなものをHPMAA軽質留分塔320に、任意に希釈剤とともに添加することが有用であることが多い。阻害剤をHPMAA軽質留分塔320およびその付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。
【0081】
HPMAA生成物流れ350のサイドドロー除去は、HPMAA軽質留分塔320において使用される阻害剤の選択肢の数を増大させる。これは、阻害剤が一般にそのボトムから蒸留塔を出る高沸点成分であるという事実による。従って、生成物流れが塔のボトムから抜き取られる場合、塔に添加される任意の阻害剤はこれと共に出ていく。対照的に、生成物が塔のサイドから抜き取られる場合、生成物除去地点より下、例えば、サイドドロートレイより下で塔に添加される任意の阻害剤は、生成物とともに抜き取られず;むしろ生成物は除去するために塔のボトムに落下する。従って、図3に示す逆順序の具体例において、広範囲に及ぶ阻害剤をHPMAA軽質留分塔320において使用することができ、異なる阻害剤を必要に応じてHPMAA軽質留分塔320における異なる位置で添加することができる。
【0082】
PTZはHPMAA軽質留分塔320のボトムにおけるポリマー形成を最小限に抑えるために特に有用である。使用される場合、PTZは(任意に希釈剤とともに)サイドドロートレイより下のHPMAA軽質留分塔320上の一地点で、HPMAA軽質留分塔320フィード10000kgあたり0.005kg〜8kgのPTZの割合、例えばHPMAA軽質留分塔320フィード10000kgあたり0.01kg〜5kgのPTZの割合、またはHPMAA軽質留分塔320フィード10000kgあたり0.05kg〜1kgのPTZの割合で添加することができる。
【0083】
HQ阻害剤を使用するならば、HPMAA軽質留分塔320フィード10000kgあたり1kg〜10kgのHQの割合、例えば、HPMAA軽質留分塔320フィード10000kgあたり1.3kg〜8kgのHQの割合、またはHPMAA軽質留分塔320フィード10000kgあたり1.5kg〜5kgのHQの割合で(任意に希釈剤とともに)添加することができる。
【0084】
MEHQ阻害剤をこの具体例においてHPMAA軽質留分塔320に添加することもでき、HPMAA軽質留分塔320およびその付属部品全体にわたって、直接またはMAAなどの希釈剤とともに添加することができる。一般に、前記のようなHPMAA重質留分塔120についてのMEHQ添加割合を使用するならば、HPMAA軽質留分塔320において満足できる性能が達成される。HPMAA生成物流れ阻害剤濃度が最終生成物規格内にあることを確実にするために、任意に、変化し得る量のMEHQ阻害剤をHPMAA生成物流れ350に直接添加することができる。
【0085】
前記のように、フェノール系阻害剤、例えばHQおよびMEHQを使用する場合、阻害剤の有効性を向上させるために酸素含有ガスを蒸留塔に添加することができる。酸素含有ガスをHPMAA軽質留分塔320およびその塔付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。HPMAA軽質留分塔320に関する操作条件および装置および推奨される酸素対阻害剤の比は、HPMAA軽質留分塔110に関して記載したのと実質的に同じである。
【0086】
かなりの量のHIBAを含むメタクリル酸生成物から特殊MAAポリマーを製造することは前記のように困難であることに加えて、粗メタクリル酸中のHIBAの存在も、本発明の精製プロセスその他を含む精製プロセスにおいて有害な影響を及ぼし得ることが知られている。特に、粗メタクリル酸中に存在するHIBAは精製中に熱分解して、アセトン、一酸化炭素、および水を含む分解生成物を生じ得る。かかるインサイチュ分解生成物形成は、水およびアセトン除去の目的に対して逆効果であり、望ましい不純物量が少ない生成物MAAの達成が場合によっては妨げられ得る。
【0087】
精製中のHIBAの分解が硫酸などの酸触媒により促進されることが確認されている。1以上のかかる酸触媒は、先の処理の結果として粗メタクリル酸中に存在し得る。たとえば、ACHプロセスから誘導される粗メタクリル酸は、残存する硫酸またはスルフェート(SO−2)イオンを提供できる他の化合物を含有することができる。
【0088】
HIBA分解の程度は、塔のボトムにおける酸触媒濃度、塔ボトム温度、およびボトム滞留時間を包含するいくつかのプロセス変数によって変わる。1以上のこれらの変数を調節することにより、精製中のHIBA分解の程度を最小限に抑えることができ、これにより、精製システムにかかる水負荷量を減少させることにより精製プロセスの操作を向上させる。
【0089】
大気圧未満(トレイ1より下の蒸気スペースにおいて測定)でMAA精製蒸留塔を操作することにより、150℃より低い塔ボトム温度を維持することが可能である。MAA精製塔におけるHIBA分解を最小限に抑えるために、塔のボトムでの温度を145℃以下、例えば120℃以下または100℃以下に維持することができる。塔のボトムでの温度を90℃以下に維持することもできる。
【0090】
MAA精製塔において低いボトム滞留時間を維持することは、HIBAの分解を最小限に抑える働きをする。本発明において使用する場合、「ボトム滞留時間」なる用語は、塔およびその付属部品(これらに限定されないが、リボイラーおよび廃液溜とリボイラー間の相互接続配管を含む)のボトム廃液溜内に所定の単位体積の物質が残存する平均的時間を意味する。一般に、定常操作条件で、塔のボトム(廃液溜)、リボイラー、および関連するボトム配管中の合計プロセス流体体積を計算し、次いでこの合計プロセス流体体積をボトム流れの体積流速(除去速度)で割ることによりボトム滞留時間を決定できる。最大滞留時間は精製装置の物理的寸法(蒸留塔直径など)により最終的に決定されるが、用いられる実際のボトム滞留時間は、溜操作レベル、ボイルアップ速度、塔供給速度、および塔ボトム除去速度などのプロセス操作変数を調節することによりさらに制御することができる。HIBA分解は、ボトム滞留時間が48時間以下、例えば24時間以下、または15時間以下、さらには5時間以下に維持される場合に最小限に抑えることができることが確認されている。
【0091】
精製におけるHIBAの分解は、蒸留塔のボトムにおける合計酸触媒濃度(ボトム流れにおいて測定)を、ボトム流れの合計重量に基づいて2.5重量%(25000ppm)以下、例えば1.5重量%(15000ppm)以下、または0.5重量%(5000ppm)以下に維持することにより最小限に抑えることができる。これは、精製への粗MAAフィード中で低い酸触媒濃度を維持するか、またはMAA蒸発化速度およびボトム滞留時間などの塔操作変数の調節によりボトム組成を調節することにより達成することができる。酸触媒の少なくとも一部を中和し、これにより酸触媒濃度を低下させるために、任意の処理法、たとえば安定剤(後記)での処理も用いることができる。
【0092】
前記方法に加えて、精製前の粗メタクリル酸中のHIBA含量を最小限に抑えることにより、HIBAの熱分解の問題が少なくとも一部回避される。ACHプロセスから誘導される粗メタクリル酸の場合において、HIBAの形成、およびかくして得られる粗メタクリル酸中の最終HIBA含量を、様々な粗MAA製造工程の最適化により最小限に抑えることができる。例えば、加水分解プロセス工程において本質的に無水条件を用いることにより、HIBA形成を最小限に抑えることができる。かかる無水条件は、HIBAの形成を最小限に抑えるためのMAA製造プロセスの加水分解工程における、乾燥アセトンシアノヒドリン、乾燥硫酸(例えば、オレウム)、およびSO添加(単独または組み合わせにおいて)の使用により達成することができる。加えて、高温、長い滞留時間、およびプラグフロー条件の使用(単独または組み合わせにおいて)は、MAA製造プロセスの熱変換(aka:「クラッキング」)工程中のHIBAのMAMへの変換を向上させる。
【0093】
粗メタクリル酸のHIBA含量は、HIBA中間体を経てMAAを形成しないプロセスの使用によっても最小限に抑えることができることは当業者には明らかであろう。例えば、C−4ベースのメタクリル酸プロセスは典型的にはメタクロレインを中間体として利用し、従って結果として得られる粗MAA生成物中にかなりの量のHIBA不純物を含有しないことが無理なく予想できる。低HIBA含量メタクリル酸を得るための前記蒸留プロセスにおけるかかる「低HIBA」粗メタクリル酸流れの精製は、本発明の範囲内である。
【0094】
精製前に粗メタクリル酸中のHIBA含量を最小限に抑えることに加えて、さらに生成物メタクリル酸の品質を向上させ、不純物量を減少させるために、任意のHIBA処理法を精製プロセス中、例えば本発明の蒸留法との組み合わせにおいて用いることができる。これらのHIBA処理法は、精製中の熱分解を妨げるためのHIBAの安定化、および精製前のHIBAの除去を含む。
【0095】
このような任意の処理法は、粗MAA生成物中のHIBA含量を最小限に押さえるために単独または前記粗MAA製造工程と組み合わせて用いることができる。これらの任意のHIBA処理法を使用することにより、前記の任意に処理された生成物メタクリル酸の品質をさらに向上させることができる。
【0096】
すでに記載したように、HIBAの熱分解反応は、硫酸などの酸触媒の存在により触媒されることが見いだされた。これらの酸触媒の少なくとも一部を粗メタクリル酸流れの精製前に中和することにより、HIBAの分解を実質的に回避することができる。
【0097】
このHIBA処理法の一具体例において、粗メタクリル酸の、例えば酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、苛性、またはアンモニアなどの安定剤での処理は、酸触媒を中和させる働きをする。酸触媒の中和により形成される塩を次いで、公知濾過法により処理されたメタクリル酸から除去し、これによりHIBAを安定化し、熱分解を実質的に回避できる。
【0098】
硫酸が粗MAA中に存在する酸触媒である一具体例において、酸化マグネシウムが安定剤として使用される。しかしながら、この具体例において、中和の結果生じる実質的に不溶性の硫酸マグネシウム塩は処理後に粗メタクリル酸から濾過されない。処理された粗メタクリル酸を次いで本発明の蒸留プロセスにおいて精製する。蒸留プロセスからの重質留分流れは硫酸マグネシウム(MgSO)を含み、廃酸回収ユニット(図示せず)においてさらに処理される。廃酸回収ユニットにおける硫酸マグネシウムの存在は、プロセス装置の腐食の防止に有利である。
【0099】
別の具体例において、粗メタクリル酸流れを適当なイオン交換樹脂(IER)、例えば塩基性官能基を有する適当なIERと接触させて、酸触媒を除去することができる。粗MAA流れをIER床を通すか、またはIERを直接粗MAA流れに添加することにより接触させることができ、続いて処理が完了した後に濾過する。塩基性官能基を有する適当なIERは、これらに限定されないが、AMBERLYST(登録商標) A−21またはAMBERLYST(登録商標) A−26(両方ともRohm and Haas Company(Philadelphia,PA)から入手可能)を含む群から選択される1以上を包含する。これらの方法を用いて、HIBAを安定化させ、精製中のHIBAの分解が実質的に回避される。
【0100】
HIBAの安定化と比較して、精製前のHIBAの分解は、精製プロセスにおけるHIBAの熱分解を最小限に抑え、粗MAA流れ中のHIBAの濃度を減少させるHIBA処理法である。HIBA分解処理法は、粗MAA流れを1以上のルイス酸成分(例えば、強ルイス酸)と接触させることを含む。ルイス酸成分は、硫酸、リン酸、「超酸」(例えば、TiOSO−HSOまたはZrOSO−HSO)、酸性官能基を有するイオン交換樹脂(これらに限定されないが、Rohm and Haas Company(Philadelphia,PA)から入手可能なAMBERLYST(登録商標)15など)、およびその組み合わせを含み得る。ルイス酸の添加後、混合物を次いで例えば90℃以上に加熱して、最終精製前にHIBAを実質的に分解して、水、アセトン、および一酸化炭素にする。かかるHIBA分解生成物は前記の本発明の精製プロセスにおいて軽質留分として除去され、その結果、少量の水およびHIBA不純物を有するMAA生成物が得られる。
【0101】
HIBA還元の一具体例において、HIBAを含むメタクリル酸を20%HSOと組み合わせ、少なくとも100℃に加熱し、任意に混合する。この混合物の加熱は、大気圧で行われる。HIBAを実質的に分解し、結果として得られる軽質留分を次いで本発明の精製法にしたがって蒸留により除去する。
【0102】
本発明の開示により、精メタクリル酸、HPMAA、および低HIBA含量のHPMAAを包含する様々なMAA生成物を製造するために、これらの任意のHIBA処理法は単独または他のメタクリル酸精製プロセスと組み合わせて使用することができることは、当業者には明らかであろう。これらの任意のHIBA処理法はまた、これらに限定されないが、同時係属出願中の米国特許出願番号10/420,273(2003年4月22日提出)に記載されている3塔蒸留プロセス、米国特許第3,414,485号に記載されている溶媒抽出法、ならびに結晶化法およびハイブリッド蒸留/結晶化精製プロセスを包含する他のメタクリル酸精製プロセスにもうまく適用できる。
【実施例】
【0103】
実施例1
本発明の精製プロセスに従ってHPMAAを製造するために図1および図2に示す種類の2塔サイドドロー精製装置を使用した。この例において、軽質留分塔110は、5のシーブトレイを含み、重質留分塔120は10のシーブトレイを含んでいた。各塔内の各トレイの位置は、参照番号を付けて表わされる(一番下のトレイを例えば「トレイ1」とする)。軽質留分塔110におけるシーブトレイは1/2”(1.27cm)直径の穴および13%の開放スペースを有する。全ての軽質留分塔トレイはその間に33インチ(83.82cm)の間隔をあけて設置される。重質留分塔120におけるシーブトレイは1/2”(1.27cm)直径の穴および10.2%の開放スペースを有する。重質留分塔120におけるトレイは、その間に様々な間隔をあけて設置される:トレイ1〜4は互いに24インチ(60.96cm)離れ、トレイ5はトレイ4の上方36インチ(91.44cm)であり、トレイ5〜10は互いに33インチ(83.82cm)離れて設置される。重質留分塔トレイ7は図2において示し、すでに詳細に記載した種類のサイドドロートレイである。この例において、両方の塔は大気圧未満で操作した。約7250kg/時の粗MAAフィード流れ100を軽質留分塔110に供給した。粗MAAフィード流れ100はACHプロセスから誘導され、粗MAA流れの合計重量に基づいて、95.05重量%のMAA、2.00重量%の水、0.8重量%のHIBA、0.25重量%のメタクリルアミド、0.90重量%のアセトン、および1.00重量%のMOMPAを含んでいた。粗MAA流れは重質留分塔リサイクル流れ165とともに軽質留分塔110のトレイ5(トップ)に同時供給された。水性HQ阻害剤を軽質留分塔110に供給し;大気も塔110のボトムセクションにHQ阻害剤の有効性を確実にするために十分な速度で供給した。58mmHgボトム圧力で90℃のボトム温度を維持するために十分な蒸気を軽質留分塔リボイラー(図示せず)に供給した。水およびアセトンを含む約900kg/時の軽質留分流れ105を軽質留分塔110から除去した。軽質留分ボトム流れの合計重量に基づいて98重量%より多いMAAおよび1.0重量%以下のHSOを含む軽質留分ボトム流れ115を軽質留分塔110から抜き取り、重質留分塔120の廃液溜領域(トレイ1の下)に供給した。
【0104】
MeHQ阻害剤のMAA中溶液を重質留分塔120に提供した。大気も重質留分塔120のボトムセクションにMeHQ阻害剤の有効性を確実にするために十分な速度で供給した。重質留分塔120において75mmHgのボトム圧力で100℃のボトム温度を維持するために十分な蒸気を重質留分塔リボイラー(図示せず)に供給した。オーバーヘッド流れ125を重質留分塔120の上部セクションから抜き取り、凝縮させ、部分的に還流させた。約2800kg/時のMAA含有重質留分塔リサイクル流れ165を軽質留分塔110に戻した。MOMPA、MAM、およびHIBAを含む約1550kg/時のボトム流れ130を重質留分塔120から除去した。重質留分塔120のボトムは、内径2.1mであり、作用体積4mを提供した。リボイラーおよび関連するボトム配管(図示せず)はさらに8.3mの体積を追加し、合計プロセス流体体積は12.3mとなった。ボトム除去速度1550kg/時で、結果として得られる滞留時間は約8時間と計算された。
【0105】
約5080kg/時のサイドドローHPMAA生成物流れ135を重質留分塔120のトレイ7から除去した。サイドドローHPMAA生成物流れ135は、サイドドローHPMAA生成物流れ135の合計重量に基づいて99.860重量%のMAA、0.108重量%のHIBA、0.007重量%のMOMPA、0.002重量%(20ppm)の酢酸、0.001重量%(7ppm)のMMA、0.004重量%のアセトン、および0.013重量%の水を含んでいた。サイドドローHPMAA生成物流れ135中のメタクリルアミド、アクリル酸、およびメタクロレイン濃度は、検出可能な限界より下であり、生成物色相測定値は2〜7APHA間で変化した。この向上された低不純物グレードのHPMAAは、エチレン−MAAコポリマーおよびイオノマーを含む特殊MAAポリマーの製造において使用するのに特に望ましい。
【0106】
本発明のプロセスの前記例に多くの変更および修正ができることは当業者には明らかであろう。例えば、重質留分塔120におけるトレイの合計数の増加は一定の製造速度で製造されるHPMAAの純度をさらに増大させる。かかる変化は本発明の範囲内に含まれる。
【0107】
さらに、リサイクル流れ165および/またはリフラックス流れ155の流速における変更も純度またはスループットを増大させるためにできることが理解されるであろう。例えば、リサイクル流れ165の流速を増大させることにより、生成物MAAの純度を増大させることができるが、スループット(すなわち、生成物MAA流れ135の製造速度)は同時に減少する。別法として、リサイクル流れ165の流速を減少させることにより、生成物MAAの純度は減少するが、生成物メタクリル酸の製造速度は増大する。経済的観点から、同じプロセス装置の製造速度が低いと、一般に全体的な製造コストが増大し、一方、高速では全体的な製造コストが一般的に下がる。従って、本発明のプロセスを使用して、合計製造コストを生成物純度に対してバランスをとって所定の特殊MAAポリマー用途について最適の溶液を得ることが可能である。かかる純度対製造コストの最適化−および例えばリボイラーへの蒸気流れおよび阻害剤添加速度などの関連する操作パラメータの必要とされる調節は本発明のプロセスおよび生成物の前記記載事項により当業者らがおこなうことができる。
【0108】
本明細書に記載した本発明は、目的を実行し、記載された目的および利点、ならびにこれに固有のその他のものを達成するためによく適合される。本発明のいくつかの具体例を記載したが、本発明の目的および範囲から逸脱することなく、手順、プロセス、操作条件および装置において多くの変更を行うことができる。例えば、本発明の精製プロセスは、プロセスの一部として粗MAA流れを含む任意の工業プロセスにうまく適用できる。これらおよび他の同様の修正は当業者には容易に理解され、本発明の精神および範囲内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は本発明にしたがってHPMAAを製造するための方法の一具体例の流れ図である。
【図2】図2は本発明のHPMAAの製造法に関連して有用なサイドドロー構造の一具体例の概略図である。
【図3】図3は本発明に従ってHPMAAを製造する方法の別の例の流れ図である。
【符号の説明】
【0110】
100 粗MAA流れ
105 HPMAA軽質留分オーバーヘッド流れ
110 HPMAA軽質留分塔
115 ボトム流れ
120 HPMAA重質留分塔
125 HPMAA重質留分オーバーヘッド流れ
130 重質留分ボトム流れ
135 生成物流れ
155 重質留分リフラックス流れ
165 重質留分リサイクル流れ
200 配管接続
202 蒸留塔
205 開口部
210 下降管
215 下降管210内の液体の高さ
220 サイドドロートレイ
225 インレット堰
230 下降管クリアランス
300 粗MAA流れ
305 HPMAA重質留分塔オーバーヘッド流れ
310 HPMAA重質留分塔
315 重質留分不純物流れ
320 HPMAA軽質留分塔
325 軽質留分不純物流れ
330 重質留分不純物流れ
350 生成物流れ
355 リフラックス流れ
365 フィード流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸留塔を利用する精製プロセスにおいて2−ヒドロキシイソ酪酸含有メタクリル酸流れを精製する方法であって:
蒸留塔のボトムセクションでの前記メタクリル酸流れの滞留時間を48時間以下に維持して、これにより2−ヒドロキシイソ酪酸分解を最小限に抑えることを含む、
2−ヒドロキシイソ酪酸含有メタクリル酸流れを精製する方法。
【請求項2】
蒸留塔を利用する精製プロセスにおいて2−ヒドロキシイソ酪酸含有メタクリル酸流れを精製する方法であって:
蒸留塔のボトムセクションでの前記メタクリル酸流れの温度を145℃以下に維持して、これにより2−ヒドロキシイソ酪酸分解を最小限に抑えることを含む、
2−ヒドロキシイソ酪酸含有メタクリル酸流れを精製する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−291137(P2007−291137A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−206443(P2007−206443)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【分割の表示】特願2004−55722(P2004−55722)の分割
【原出願日】平成16年3月1日(2004.3.1)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】