説明

2−ピロン誘導体の製造方法

【課題】環境負荷軽減の目的を達成しつつ効率的に目的物が得られる2−ピロン誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】一般式:Ni(cod)で表される化合物
〔但し、codは置換基を有していてもよい1,5−シクロオクタジエンを示す〕と、
一般式:P[R]で表されるトリアルキルホスフィン
〔但し、Rは置換基を有していてもよいアルキル基を示し、R、R及びRは互いに同一でもよく、異なっていてもよい〕との錯体であるゼロ価ニッケル錯体触媒の存在下、二酸化炭素を含む雰囲気中で、分子内に炭素−炭素三重結合を有する化合物と二酸化炭素とを環化付加反応させる方法であって、反応系を、反応生成物を除いて、該触媒、二酸化炭素を含む雰囲気及び分子内に炭素−炭素三重結合を有する化合物の3種類とすることを特徴とする2−ピロン誘導体の製造方法に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−ピロン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−ピロン誘導体は有用な有機合成中間体である上、2−ピロン環を有する生理活性天然物が幾つか知られており、従来その有用な合成方法の研究開発が行われている。
【0003】
2−ピロン誘導体の合成に際しては、近年二酸化炭素を利用することが試みられている。具体的には、遷移金属錯体触媒の中心金属上で活性化させた二酸化炭素を有機基質と反応させて目的物を合成する方法である。
【0004】
例えば、非特許文献1には、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(DPPB)錯体触媒上で活性化させた二酸化炭素とジアルキル置換アセチレンとの環化付加反応により、テトラアルキル置換2−ピロンを合成できることが報告されている。
【0005】
しかしながら、この合成方法は反応の選択性が不十分であり、2−ピロンとアセチレン三量体が約2:1の割合で生成するため、目的物の収率が低い。また、適用可能な有機基質の範囲が狭く、2−ブチンでは反応せず、2−ヘキシンでは反応するが、やはり目的物の収率が低いという問題がある。
【0006】
非特許文献2には、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)−トリエチルホスフィン錯体触媒又はビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)−ジメチルフェニルホスフィン錯体触媒上で活性化させた二酸化炭素とジアルキル置換アセチレンとの環化付加反応により、テトラアルキル置換2−ピロンを効率よく合成できることが報告されている。
【0007】
また、非特許文献3には、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)−トリアルキルホスフィン錯体触媒上で活性化させた二酸化炭素とジイン化合物との環化付加反応により、双環式2−ピロンを合成できることが報告されている。
【0008】
しかしながら、これらの製造方法はいずれもベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の有機溶媒を用いて反応を行っており、近年の環境負荷軽減に対する意識の高まりを考慮すれば、かかる有機溶媒の使用は避けることが望ましい。
【0009】
非特許文献4及び5には、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)錯体触媒により活性化した二酸化炭素と3−ヘキシンとの環化付加反応により2−ピロン誘導体を合成するに際して、超臨界二酸化炭素雰囲気を用いることが報告されている。超臨界二酸化炭素雰囲気は、例えば、カフェインレスコーヒーの抽出に利用されており、有機合成の際に反応場として用いる場合には、四塩化炭素を用いた溶媒環境と類似した環境を作り出せることが知られている。
【0010】
具体的には、非特許文献4には、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)−DPPB錯体触媒を用いて、3−ヘキシンからテトラエチル−2−ピロンを合成する方法が開示されている。超臨界二酸化炭素雰囲気を用いる場合には、反応系に有機溶媒を用いなくてもよいため、反応系の調整が容易であるという点で有利である。
【0011】
しかしながら、これらの方法にも目的物の収率が低いという問題がある。非特許文献4には、具体的に、反応時間が69時間の場合に、目的物の収率が35%と低く、副生物として3−ヘキシンの三量体が6%生成し、反応基質3−ヘキシンの未反応量が59%にも達することが示されている。また非特許文献5には、具体的に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)−トリエチルホスフィン錯体触媒を用いて16時間反応を行うと目的物の選択性はより高くなるが(92%)、目的物の収率は50%程度と依然として低いことが示されている。他方、収率を高めるために高圧且つ長時間の反応条件が必要となることも示されている。
【0012】
このように、既存の2−ピロン誘導体の合成方法は、環境負荷軽減の目的を達成しつつ効率的に2−ピロン誘導体を合成するという要求を十分に満足できておらず、さらなる改良の余地がある。
【非特許文献1】Yoshio Inoue, Yoshio Itoh, Haruo Kazama, and Harukichi Hashimoto,「Reaction of Dialkyl-substituted Alkynes with Carbon Dioxide Catalyzed by Nickel(0) Complexes. Incorporation of Carbon Dioxide in Alkyne Dimers and Novel Cyclotrimerization of the Alkynes」,Bull. Chem. Soc. Jpn. 53巻 3329 (1980)
【非特許文献2】Dirk Walther, Hartmut Schonberg, Eckard Dinjus, and Joachim Sieler,「Aktivierung von Kohlenoioxid an Ubergangsmetallzentren: Selektive Cooligomerization mit Hexin(-3) durch das Katalysatorsystem Acetonitril/Trialkylphosphane/Nickel(0) und Struktur eines Nickel(0)-Komplexes mit side-on gebundenem Acetonitril」, J. Organomet. Chem. 334巻 377 (1987)
【非特許文献3】Tetsuo Tsuda, Shohei Morikawa, Ritsuo Sumiya, and Takeo Saegusa,「Nickel(0)-Catalyzed Cycloaddition of Diynes and Carbon Dioxide to Bicyclic a-pyrones」, J. Org. Chem. 53巻 3140 (1988)
【非特許文献4】Manfred T. Reetz, Werner Konen, and Thomas Strack,「Supercritical Carbon Dioxide as a Reaction Medium and Reaction Partner」, Chimia 47 (1993) 493
【非特許文献5】Ulf Kreher, Sebastian Schebesta, and Dirk Walther, Ubergangsmetall-Organoverbindungen in superkritischem Kohlendioxide: Loslichkeiten, Reaktionen, Katalysen」, Z. anorg. allg. Chem. 624巻 602 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、環境負荷軽減の目的を達成しつつ効率的に目的物が得られる2−ピロン誘導体の製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のゼロ価ニッケル錯体触媒を存在させた二酸化炭素を含む雰囲気を用いる場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、下記の2−ピロン誘導体の製造方法に係るものである。
【0016】
1.一般式:Ni(cod)で表される化合物
〔但し、codは置換基を有していてもよい1,5−シクロオクタジエンを示す〕と、
一般式:P[R]で表されるトリアルキルホスフィン
〔但し、Rは置換基を有していてもよいアルキル基を示し、R、R及びRは互いに同一でもよく、異なっていてもよい〕との錯体であるゼロ価ニッケル錯体触媒の存在下、二酸化炭素を含む雰囲気中で、分子内に炭素−炭素三重結合を有する化合物と二酸化炭素とを環化付加反応させる方法であって、反応系を、反応生成物を除いて、該触媒、二酸化炭素を含む雰囲気及び分子内に炭素−炭素三重結合を有する化合物の3種類とすることを特徴とする2−ピロン誘導体の製造方法。
【0017】
2.二酸化炭素を含む雰囲気が、1〜35MPaの圧力の雰囲気である、上記項1記載の製造方法。
【0018】
3.一般式:P[R]で表されるトリアルキルホスフィンが、P(C、P(C13及びP(C17からなる群から選択された少なくとも1種である上記項1又は2記載の製造方法。
【0019】
4.上記項1〜3のいずれかに記載の製造方法により製造された2−ピロン誘導体。
【0020】
5.P[R]で表されるトリアルキルホスフィンのR、R及びR部分が、それぞれ炭素数4〜10の炭化水素基である上記項1又は2記載の製造方法。

以下、本発明の2−ピロン誘導体の製造方法について詳細に説明する。
【0021】
本発明の2−ピロン誘導体の製造方法は、
一般式:Ni(cod)で表される化合物
〔但し、codは置換基を有していてもよい1,5−シクロオクタジエンを示す〕と、
一般式:P[R]で表されるトリアルキルホスフィン
〔但し、Rは置換基を有していてもよいアルキル基を示し、R、R及びRは互いに同一でもよく、異なっていてもよい〕との錯体であるゼロ価ニッケル錯体触媒の存在下、二酸化炭素を含む雰囲気中で、分子内に炭素−炭素三重結合を有する化合物と二酸化炭素とを環化付加反応させる方法であって、反応系を、反応生成物を除いて、該触媒、二酸化炭素を含む雰囲気及び分子内に炭素−炭素三重結合を有する化合物の3種類とすることを特徴とする。
【0022】
本発明の製造方法は、二酸化炭素を含む雰囲気中で、分子内に炭素−炭素三重結合を有する化合物と二酸化炭素とを環化付加反応させて、2−ピロン誘導体を製造するものであり、二酸化炭素の反応性を高活性化するために本発明触媒を使用し、目的物である2−ピロン誘導体の選択率及び収率を高めるものである。
【0023】
本発明の製造方法は二酸化炭素を含む雰囲気中で行う。
【0024】
二酸化炭素を含む雰囲気は、二酸化炭素のみの雰囲気、及び二酸化炭素と他の不活性ガスとの混合雰囲気のいずれでもよい。混合雰囲気を用いる場合の二酸化炭素の割合は、環化付加反応が十分に進行する限り特に限定されない。
【0025】
不活性ガスの種類は、環化付加反応に影響を与えない限り特に限定されない。例えば、エタン、プロパン、窒素、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等が挙げられる。
【0026】
二酸化炭素を含む雰囲気の圧力は特に限定されないが、環化付加反応速度、反応効率等を考慮すると、通常1〜35MPa、好ましくは2〜30MPa程度である。
【0027】
分子内に炭素−炭素三重結合を有する化合物としては特に限定されず、例えば、2−ブチン、3−ヘキシン、4−オクチン、5−デシン、6−ドデシン、1,4−ジメトキシ−2−ブチン、1,4−ジエトキシ−2−ブチン、1,4−ジアセトキシ−2−ブチン、2,5−ジメトキシ−3−ヘキシン、2,5−ジエトキシ−3−ヘキシン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン等のモノイン化合物、2,8−デカジイン、3,9−ドデカジイン、ジ−2−ブチニルエーテル、ジ−2−ペンチニルエーテル、N−n−プロピル−ジ−2−ブチニルアミン、N−n−プロピル−ジ−2−ペンチニルアミン、2,2−ジ−2−ブチニルマロン酸ジメチル、2,2−ジ−2−ブチニルマロン酸ジエチル、2,2−ジ−2−ペンチニルマロン酸ジメチル、2,2−ジ−2−ペンチニルマロン酸ジエチル、5,5−ジ−2−ブチニル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサンなどのジイン化合物等が挙げられる。
【0028】
本発明触媒は、一般式:Ni(cod)で表される化合物(Ni部分とも言う)と一般式:P[R]で表されるトリアルキルホスフィン(トリアルキルホスフィン部分とも言う)との錯体である。Ni部分とトリアルキルホスフィン部分とは、1:2の割合で錯体化する場合が多いが、その他の割合もとり得る。
【0029】
Ni部分の「cod」は、置換基を有していてもよい1,5−シクロオクタジエンを示す。codとしては、例えば、1,5−シクロオクタジエン、1,5−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン、1,6−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン等が挙げられる。これらのシクロオクタジエンの中でも、特に1,5−シクロオクタジエンが好ましい。
【0030】
トリアルキルホスフィンは特に限定されず、アルキル基R、R及びRは、互いに同一でもよく、異なってもよい。トリアルキル部分:[R]のR、R及びRは、それぞれ炭素数4〜10の炭化水素基であることが好ましい。
【0031】
このようなトリアルキルホスフィンとしては、例えば、P(C、P(C13、P(C17、P(C(CHCH13)、P(C13(CHCH13)、P(C17(CHCH13)、P(CH(CH、P(CH(CH)(C))、P(CH(CH)(C))、P(CH(CH)(C11))、P(CH(CH)(C13))、P(CH(C)(C))、P(CH(C)(C))、P(CH(C)(C11))、P(CH(C、P(C11等が挙げられる。これらの中でも、取り扱いの容易さ、入手の容易さ等の点から、特にP(C、P(C13及びP(C17等が好ましい。
【0032】
本発明触媒は、codの種類、トリアルキルホスフィンのアルキル基の違い等により、各種のものが使用できるが、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0033】
このような本発明触媒は、例えば、Ni(cod)とP[R]を有機溶媒中で混合し、錯化させることにより得られる。本発明の製造方法では、あらかじめ作製した本発明触媒を反応系に当初から存在させてもよい。また、Ni(cod)で表されるNi部分とP[R]で表されるトリアルキルホスフィン部分とを、錯体形成に必要な割合(例えば、Ni部分:トリアルキルホスフィン部分=1:2、モル比)で反応系に存在させて、環化付加反応を進行させるために加える熱により、前記両者を錯化して触媒としてもよい。
【0034】
本発明触媒を用いて2−ピロン誘導体を製造する際は、例えば、置換基を有してもよい分子内に少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を有する化合物(100mol)に対して、本発明触媒0.01〜20mol、好ましくは0.1〜10molを配合すればよい。
【0035】
反応温度は特に限定されないが、通常20〜170℃、好ましくは50〜150℃程度とすればよい。反応時間は、反応温度に応じて適宜設定できるが、通常1〜48時間、好ましくは1〜24時間程度である。反応系の圧力は、前記の通り、通常1〜35MPa、好ましくは2〜30MPa程度である。
【0036】
本発明の製造方法では、反応系を、反応生成物を除いて、本発明触媒、二酸化炭素を含む雰囲気及び分子内に少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を有する化合物の3種類とする。該3種類とする場合には、二酸化炭素を含む雰囲気が溶媒のように作用するため、所定の反応を、有機溶媒を使用せず進めることができる。有機溶媒を添加すると反応系が複雑化するおそれがあるため、所定の反応を効率よく進行させるための系の調整が却って困難となる場合がある。また、有機溶媒を使用すると有機物の廃棄物が発生し、さらには溶媒の除去などに多大な手間とエネルギーを要することにもなり得る。
【0037】
本発明の製造方法により得られる2−ピロン誘導体としては、例えば、テトラメチル−2−ピロン、テトラエチル−2−ピロン、テトラプロピル−2−ピロン、テトラブチル−2−ピロン、テトラペンチル−2−ピロン、テトラ(メトキシメチル)−2−ピロン、テトラ(エトキシメチル)−2−ピロン、テトラ(アセトキシメチル)−2−ピロン、テトラ(1−メトキシエチル)−2−ピロン、テトラ(1−エトキシエチル)−2−ピロン、テトラ(トリメチルシリル)−2−ピロン、1,4−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロイソクロメン−3−オン、1,4−ジエチル−5,6,7,8−テトラヒドロイソクロメン−3−オン、4,7−ジメチル−1H,3H−フロ[3,4−c]ピラン−6−オン、4,7−ジエチル−1H,3H−フロ[3,4−c]ピラン−6−オン、4,7−ジメチル−2−プロピル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラノ[3,4−c]ピロール−6−オン、4,7−ジエチル−2−プロピル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラノ[3,4−c]ピロール−6−オン、1,4−ジメチル−3−オキソ−3,5−ジヒドロ−7H−シクロペンタ[c]ピラン−6,6−ジカルボン酸ジメチル、1,4−ジメチル−3−オキソ−3,5−ジヒドロ−7H−シクロペンタ[c]ピラン−6,6−ジカルボン酸ジエチル、1,4−ジエチル−3−オキソ−3,5−ジヒドロ−7H−シクロペンタ[c]ピラン−6,6−ジカルボン酸ジメチル、1,4−ジエチル−3−オキソ−3,5−ジヒドロ−7H−シクロペンタ[c]ピラン−6,6−ジカルボン酸ジエチル、11,11−ジメチル−10,12−ジオキサ−スピロ[4.5]デシル−3,6−ジメチル−ピラン−2−オン等が挙げられる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の製造方法は、特定のゼロ価ニッケル錯体触媒を存在させた二酸化炭素を含む雰囲気において、分子内に炭素−炭素三重結合を有する化合物と二酸化炭素とを環化付加反応させ、且つ反応系を、反応生成物を除いて、該触媒、二酸化炭素を含む雰囲気及び分子内に炭素−炭素三重結合を有する化合物の3種類とするため、従来法の2−ピロン誘導体の製造方法に比して、効率的に目的物を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。なお、本明細書における収率は、キャピラリーカラム(Agilent Technologies製、HP−5、内径0.25mm×長さ30cm)付き島津製作所製ガスクロマトグラフ「GC−14A」を用いた50〜250℃における分析結果から算出したものである。
【0040】
実施例1〜5及び比較例1
3−ヘキシン(2mmol)と過剰量の二酸化炭素とを、Ni(cod)(0.2mmol)、表1に示す配位子L(0.4mmol)の存在下、二酸化炭素雰囲気(二酸化炭素のみの雰囲気、以下同じ)中で環化付加反応させて、2−ピロン誘導体を製造した。反応温度は120℃、反応時間は20時間とした。
【0041】
二酸化炭素雰囲気(反応系)の圧力、3−ヘキシンの反応率、2−ピロン誘導体の収率を表1に併せて示す。反応率及び収率は、ガスクロマトグラフによる分析結果より算出、決定した。
【0042】
【表1】

【0043】
表1中、生成物1、2、3は、各々下記[化1]、[化2]、[化3]に示される2−ピロン誘導体を示す。<1%は、1%未満であることを示す。
【0044】
【化1】

【0045】
【化2】

【0046】
【化3】

【0047】
実施例6
4−オクチン(2mmol)、Ni(cod)(0.2mmol)、P(C17(0.4mmol)および過剰量の二酸化炭素を、120℃、二酸化炭素雰囲気中(圧力15MPa)で20時間加熱した。
【0048】
反応容器を冷却した後に過剰の二酸化炭素を放出し、油状の残渣をガスクロマトグラフで分析したところ、テトラプロピル−2−ピロンの収率は99%であり、二酸化炭素を含まない4−オクチンの三量体の生成量は1%以下であった。
【0049】
実施例7
3,9−ドデカジイン(1mmol)、Ni(cod)(0.1mmol)、P(C11(0.4mmol)および過剰量の二酸化炭素を、50℃、二酸化炭素雰囲気中(圧力17MPa)で20時間加熱した。
【0050】
反応容器を冷却した後に過剰の二酸化炭素を放出し、油状の残渣をガスクロマトグラフで分析したところ、1,4−ジエチル−5,6,7,8−テトラヒドロイソクロメン−3−オンの収率は65%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:Ni(cod)で表される化合物
〔但し、codは置換基を有していてもよい1,5−シクロオクタジエンを示す〕と、
一般式:P[R]で表されるトリアルキルホスフィン
〔但し、Rは置換基を有していてもよいアルキル基を示し、R、R及びRは互いに同一でもよく、異なっていてもよい〕との錯体であるゼロ価ニッケル錯体触媒の存在下、二酸化炭素を含む雰囲気中で、分子内に炭素−炭素三重結合を有する化合物と二酸化炭素とを環化付加反応させる方法であって、反応系を、反応生成物を除いて、該触媒、二酸化炭素を含む雰囲気及び分子内に炭素−炭素三重結合を有する化合物の3種類とすることを特徴とする2−ピロン誘導体の製造方法。
【請求項2】
二酸化炭素を含む雰囲気が、1〜35MPaの圧力の雰囲気である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
一般式:P[R]で表されるトリアルキルホスフィンが、P(C、P(C13及びP(C17からなる群から選択された少なくとも1種である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により製造された2−ピロン誘導体。

【公開番号】特開2006−213687(P2006−213687A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30814(P2005−30814)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】