説明

2つのライザを備える接触分解単位装置中の操作条件を制御するためのデバイス

本発明は、接触分解単位装置を用いる石油製造およびプロピレン共製造の方法であって、該接触分解単位装置は、触媒再生領域と、異なる厳格条件下に並行に操作する2つのライザ反応領域とを含み、触媒は、2つの並行回路、すなわち、いわゆる主要回路およびいわゆる補助回路に沿って再生領域と反応領域との間を流れ、該主要回路は、第1の外部触媒冷却システムを含み該補助回路は、第2の外部触媒冷却システムを含む、方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルカット、より特定的には重質留分と称される留分の接触分解の分野に関する。
【0002】
重質留分のFCC(fluidized bed catalytic cracking:流動床式接触分解)の主たる供給原料は、一般的には、炭化水素または340℃超の沸点を有する分子を本質的に(少なくとも80%)含有する炭化水素の混合物である。この供給原料は、限定された量、一般的には50ppm未満、好ましくは20ppm未満の金属(Ni+V)と、一般的には11重量%超、典型的には11.5〜14.5重量%、好ましくは11.8〜13重量%の含有量の水素とを含有する。窒素含有量を0.5重量%未満に制限することも好ましい。
【0003】
供給原料中のコンラドソン残炭率(Conradson Carbon Residue:CCRと略される)(標準ASTM D 482によって規定される)は、熱平衡を満足させるために、単位装置(unit)の寸法決定に強い影響を有する。供給原料のコンラドソン残炭率に応じて、コークスの産生により、熱平衡を満足させるために単位装置の寸法決定が特定的であることが必要となる。
【0004】
これらの重質留分は、特に、常圧蒸留、減圧蒸留、水素化分解単位装置、または脱歴に由来し得る。
【0005】
精油所の接触分解単位装置は、ガソリン用のベース、すなわち、35〜250℃の範囲の蒸留範囲を有する留分の製造を対象とする。ますます頻繁に、この主要な目的は、新しい目的、すなわち、軽質オレフィン、本質的にはエチレンおよびプロピレンの共製造に附随して起こる。
【0006】
ガソリンの製造は、第一反応器(触媒の上昇流および反応器の細長い形態のため、本明細書の以降において、当業者の用語法に従って主要ライザと称される)中の重質供給原料の分解によって保証される。
【0007】
プロピレンの共製造は、一般的に、追加反応器(追加ライザと称される)へ、接触分解単一装置によって製造されたガソリン留分の一部を再循環させることによってまたは等価供給原料、例えば、C5、C6、C7またはC8オリゴマーから得られる。
【0008】
本明細書の以降の部分において、用語「主要ライザ」(1)は、ガソリンの製造の方に向けられたライザを指すために用いられることになり、用語「補助ライザ」(2)は、プロピレンの製造専用のライザを指すために用いられることになる。
【0009】
プロピレンの共製造には、主要ライザの操作条件と比較して補助ライザの操作条件への大きな改変が必要である。
【0010】
補助ライザの最適プロピレン製造条件は、550〜650℃の範囲、好ましくは、580〜610℃の範囲のライザ出口温度、20〜500ms(ms=ミリ秒)の範囲、好ましくは50〜200msの範囲の接触時間、150〜600kg/s/mの範囲の固体の流れに関して得られ、接触時間は、反応操作条件下に反応器中を通過する流体の体積測定の流量に対する反応器中に存在する触媒の体積の比として定義される。
【0011】
これらの条件は、補助ライザが触媒対供給原料比(C/Oと示される):10〜35の範囲、好ましくは14〜25で操作されることを意味する。典型的には、ガソリン製造条件下で操作する伝統的なライザは、触媒対供給原料比:4〜15、好ましくは5〜10、およびライザ出口温度(TSと示される):510〜580℃、好ましくは520〜570℃で機能する。
【0012】
C/O比の増大および出口温度TSの上昇は、総称して、より厳格な操作条件と呼ばれることになる。
【0013】
従って、補助ライザは、実質的に、主要ライザより厳格な操作条件下に機能する。
【0014】
この2つのライザは再生触媒を供給され、その触媒の温度は、コークスの燃焼から生じる。所望の分解温度のために、単位装置中を流通する触媒の量は、それ故に、再生温度に依存する。第1ライザの操作の変化は、それ故に、再生温度を改変し、直接的に、第2ライザの機能に影響を与え得る。
【0015】
本発明は、2つのライザ中の触媒入口温度の独立した制御によって各々のライザの機能的条件の独立した最適の制御を可能にする。
【0016】
本明細書の以降の部分において、「触媒クーラー(cat cooler)」という用語は、再生帯域外部の熱交換器であって、触媒を冷却することができるもの(この触媒は前記帯域中の1つのポイントから除去されかつ冷却の後に再生帯域中の他のポイントに再導入される)を指すために用いられることになる。
【0017】
本発明において用いられる触媒クーラー(単数または複数)が従来技術の触媒クーラーとは異なる点は、それ(それら)が、冷却済み触媒を直接的にライザの一つに戻す少なくとも1つの特定の出口を有することである。
【背景技術】
【0018】
2つのライザ(一方がガソリンの製造のための従来のものであり、他方が軽質オレフィンを製造するためにより厳格な条件下に操作する)を有する接触分解単位装置に関する従来技術は、特許文献1に記載されている。
【0019】
この出願には、各々のライザの温度の独立したかつ最適化された制御を達成する手段は記載されていない。
【0020】
本発明の目的は、各々のライザへの入口における触媒の温度を調節するために効率的に用いられて、主要ライザにおけるガソリン製造と補助ライザにおけるプロピレンの共製造を同時に最適化することができる手段を記載することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】仏国特許出願公開第07/04672号明細書
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、2つのライザと、2つの触媒クーラーとを備える本発明の接触分解単位装置のレイアウトを示しており、各々のライザは、対応するライザの専用の触媒クーラーに直接的に由来する触媒を供給される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
(発明の簡単な説明)
本発明は、それ故に、ガソリンの製造専用の従来の供給原料を供給され、中程度の厳格条件下に操作する主要ライザおよびプロピレンの製造専用のガソリンまたは等価な留分を供給され、高い厳格条件下に操作する補助ライザにおける温度および接触時間の条件の独立した制御を可能にする接触分解単位装置の新規な構成を用いるガソリンの製造とプロピレンの共製造の方法に存する。
【0024】
図1は、本発明の好ましい実施の図を示す。
【0025】
主要ライザ(1)は、再生帯域に由来する触媒を供給される。この触媒は、主要触媒クーラーと称される触媒クーラー(7)において冷却され、前記触媒クーラーからの出口から移送ライン(10)を介して主要ライザ(1)の基部へ直接的に送られる。
【0026】
再生帯域、触媒クーラー(7)、移送ライン(10)および主要ライザ(1)を介して通過する触媒の回路は、主要回路と称される。
【0027】
補助ライザ(2)は、再生帯域に由来する触媒を供給される。この触媒は、主要触媒クーラー(7)とは異なる、補助触媒クーラー(6)と称される触媒クーラー(6)において冷却され、前記補助触媒クーラーからの出口から移送ライン(12)を介して補助ライザ(2)の基部へ直接的に送られる。
【0028】
再生帯域、触媒クーラー(6)、移送ライン(12)および補助ライザ(2)を介して通過する触媒の回路は、補助回路と称される。
【0029】
2つの相異なる触媒クーラーの存在(それ故に、異なる交換表面を含み、再生帯域から除去された同一の触媒から供給される)は、最適化された条件下に冷却された一部の触媒が主要ライザ(1)に送達され得、最適化された条件下に冷却された一部の触媒が補助ライザ(2)に供給され得ることを意味する。触媒クーラーが各々の触媒回路上に配置されるという事実は、各々のライザに送られる触媒の温度が独立して制御され得、従って各々のライザの機能が独立して最適化され得るということを意味する。
【0030】
主要ライザ(1)は、中程度の厳格条件下に操作するように最適化され、補助ライザ(2)は高い厳格条件下に操作するように最適化される。
【0031】
さらに、各々の触媒クーラー(主要または補助)を出る触媒を対応するライザ(それぞれ主要または補助)へ直接的に送ることには、無視できないエネルギーの節約が伴い、このエネルギー節約は、再生帯域において内部冷却を提供する単一の触媒クーラーと比較して、すなわち、再生帯域内部の冷却触媒のための一つの出口を有するものと比較して、触媒クーラーのそれぞれによって交換された全熱の約10%に算出された。この節約は、本発明の構成では、伝統的な配置と対照的に燃焼空気が冷却されないという事実によって説明される。
【0032】
本発明は、再生帯域が1段階であろうと連続して操作する2段階であろうと、あらゆるタイプの再生帯域構成と適合する。
【0033】
従って、本発明は、反応の間に形成されたコークスを空気が燃焼する再生帯域を改変する必要もなく、既存の単位装置を再構築することに適用され得る。
【0034】
より正確には、本発明は、それ故に、2つの独立した触媒回路を含む流動床接触分解単位装置であって、触媒の温度は、別々の方式:
・ 「主要」回路と称される第1の回路:これは、中程度の厳格条件下に操作する主要ライザを含み、かつ、再生帯域と反応帯域の間に配置される触媒冷却システム(主要触媒クーラー)を含む;
・ 「補助」回路と称される第2回路:これは、高い厳格条件下に操作する補助ライザを含み、かつ、再生帯域と反応帯域の間に配置される触媒冷却システム(補助触媒クーラー)を含む
で制御される単位装置として定義され得る。
【0035】
補助ライザは、50〜200msの範囲の接触時間、および150〜600kg/m・sの範囲の触媒流量で操作する(msはミリ秒の略号、すなわち10−3秒である)。
【0036】
ライザの各入口温度を独立して制御するだけでなく、各々のライザの2つの入口温度の相違も独立して制御するための別の手段を用いて本発明を実施することも可能である。
【0037】
この場合、主要ライザ(1)に供給する触媒は、単一の触媒クーラーにより冷却される。この単一の触媒クーラーは、2つの相異なる冷却触媒用出口(再生帯域への第1出口および特定のラインを用いる補助ライザへの第2出口)を有する。
【0038】
主要ライザ(1)のための触媒は、再生帯域中に位置する前記触媒を取り出すための一点から供給される。
【0039】
補助ライザ(2)における熱は、再生帯域を出る触媒の一部を、特定のラインを介して触媒クーラーを直接的に出る触媒の別の部分と混合することによって制御される。
【0040】
これが、このバリエーションにおける触媒クーラーが、2つの相異なる触媒用出口を有し、一方の出口が、冷却された触媒を再生帯域中の1点に戻し、他方の出口が、特定のラインを介して冷却された触媒を補助ライザ(2)に送る理由である。
【0041】
触媒の2つの流れの比を調節することによって、補助ライザにおいて所望の条件が引き出され得る。この場合、主要ライザへ送られる触媒の温度は、補助ライザの温度によって影響を受ける。この構成では、各ライザに送られる触媒間の温度の相違が制御される。従って、各ライザの最適条件は、単一の触媒クーラー用に適合したデザインによって提供される。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(発明の詳細な説明)
以下の記載は、本発明の基本的な場合に相当する添付の図1を活用してより良好に理解されるであろう。
【0043】
本発明の接触分解単位装置は、主要ライザと称される第1ライザ(1)と補助ライザと称される第2ライザ(2)とを有し、第1ライザ(1)は、水素化処理されていてもされてなくてもよい従来の減圧蒸留液または残渣を処理し、第2ライザ(2)は、軽質供給原料をオレフィンの製造のために処理する。この軽質供給原料は、ガソリン留分、特に、分解単位装置自体によって製造されたガソリンの部分(したがって、これは、補助ライザ(2)の基部に再循環させられる)または蒸留範囲が35〜250℃である任意の留分、例えばC5、C6、C7およびC8オリゴマーによって構成され得る。
【0044】
主要ライザ(1)は、以下のように要約され得る従来の分解条件下に操作する:
・C/O比:4〜15、好ましくは5〜10;
・ライザ出口における温度:510〜580℃、好ましくは520〜570℃の範囲。
【0045】
補助ライザ(2)は、以下のように要約され得るより厳格な条件下に操作する:
・接触時間:20〜500ms、好ましくは50〜200ms;
・C/O比:10〜35、好ましくは14〜25;
・ライザ出口温度:550〜650℃、好ましくは580〜610℃;
・触媒流量:150〜600kg/m・s。
【0046】
各ライザについての厳格条件は、主要ライザ(1)用の主要触媒クーラー(7)および補助ライザ(2)用の補助触媒クーラー(6)と称される各ライザのための特定の冷却システムによって引き出される。
【0047】
用語「触媒クーラー」は、流動床として操作する再生帯域に対して外部の交換器であって、再生帯域から取り出された触媒を冷却することができるものを意味し、触媒クーラーを出る冷却触媒はライザの基部に運ぶラインを介して触媒を反応帯域に再導入される。この移送ラインは、主要ライザ(1)に供給するのは(10)と示され、補助ライザ(2)に供給するのは(12)と示される。
【0048】
再生帯域が2段を含む場合(図1中第1段については(4)、第2段については(3)と示す)、触媒は、一般的に715〜800℃の範囲、好ましくは750℃付近の温度で第2段から取り出される。再生帯域が1段だけを含む場合、触媒は、650〜780℃の範囲、好ましくは750℃付近の温度で前記段から取り出される。
【0049】
当業者に知られているあらゆるシステム、例えば、特許出願FR-06/10982に記載されているシステムを用いて反応帯域中の気−固分離が行われ得る。
【0050】
気−固分離システム後に回収された触媒は、ストリッピング帯域(8)に、次いで、スタンドパイプ(5)と称されるラインを介して再生帯域に送られる。このスタンドパイプ(5)中で、触媒は、450〜600kg/mの範囲の密度で流通する。
【0051】
本発明に使用される触媒系は、少なくとも1種のベースのゼオライトを含み、これは、通常、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナなどの適切なマトリクス中に分散させられ、これに、形態選択性を有する少なくとも1種のゼオライトが加えられ得る。
【0052】
最も高い頻度で用いられるベースのゼオライトはYゼオライトであるが、有利には、別のゼオライトが単独で用いられても、またはYゼオライトとの混合物として用いられてもよい。
【0053】
本発明の方法における触媒は、特に、形態選択性を有する少なくとも1種のゼオライトを含んでよく、前記ゼオライトは、ケイ素と、アルミニウム、鉄、ガリウム、リンおよびホウ素によって構成される群から選択される少なくとも1種の元素、好ましくはアルミニウムとを含む。
【0054】
形態選択性を有するゼオライトは、以下の構造型のうちの1種であってよい:MEL(例えば、ZSM−11)、MFI(例えば、ZSM−5)、NES、EUO、FER、CHA。
【0055】
ゼオライトの総量に対する形態選択性を有するゼオライトの割合は、用いられる供給原料および所望の生成物の範囲に応じて変化し得る。本発明では、2〜60重量%、好ましくは3〜40重量%、より好ましくは3〜30重量%の形態選択性を有するゼオライト(単数または複数)が用いられる。
【0056】
(実施例)
本発明を例証するために、1、2および3で示される3実施例が用いられることになる。
【0057】
実施例1および2は従来技術に関連する;実施例3は本発明に合致する。
【0058】
主要ライザのための供給原料は、以下の特性を有する水素化処理された常圧残渣であった:
含量=12重量%
コンラドソン炭素(CCR)=5.7%;
(Ni+V)の含量=21ppm
密度=0.935
触媒は、10重量%のZSM−5を補充されたYゼオライトであった。
【0059】
補助ライザに再循環させられた軽質留分は、主要な重質供給原料転化ライザからのC6+−220℃留分であり、製造された全ガソリンの50%は、二ライザ分解単位装置に再循環させられた。
【0060】
(実施例1)
本実施例は、2つのライザおよび1つの触媒クーラーおよび二段階の再生帯域を備える接触分解単位装置の事例を例証し、ライザ(1)はガソリンの製造のために最適化されており、最適化されていないライザ(2)は、主要ライザに由来する接触ガソリンの一部を供給されている。
【0061】
新鮮な供給原料の流量(主要ライザ) 294t/h
補助ライザに再循環させられた軽質供給原料の流量 57t/h
新鮮な供給原料の温度(主要ライザ) 200℃
温度(補助ライザに再循環させられた軽質供給原料) 70℃
温度(主要ライザ出口) 560℃
温度(補助ライザ出口) 580℃
温度(段階1の再生器) 671℃
温度(段階2の再生器) 718℃
触媒の温度(主要ライザ入口) 718℃
触媒の温度(補助ライザ入口) 718℃
C/O比(主要ライザ) 8
C/O比(補助ライザ) 13
触媒クーラー中で交換された熱 42000Mcal/h
得られた収率の構成を下の表1に示す:
【0062】
【表1】

【0063】
(実施例2)
本実施例は、2つのライザおよび1つの触媒クーラーおよび二段階の再生帯域を備える接触分解単位装置の事例を例証し、ライザ(1)は最適化されておらず、ライザ(2)は、オレフィンの製造のために最適化されている。
【0064】
新鮮な供給原料の流量(主要ライザ) 294t/h
補助ライザに再循環させられた軽質供給原料の流量 57t/h
新鮮な供給原料の温度(主要ライザ) 200℃
温度(補助ライザに再循環させられた軽質供給原料) 70℃
温度(主要ライザ出口) 560℃
温度(補助ライザ出口) 580℃
温度(段階1の再生器) 620℃
温度(段階2の再生器) 651℃
触媒の温度(主要ライザ入口) 651℃
触媒の温度(補助ライザ入口) 651℃
C/O比(主要ライザ) 14
C/O比(補助ライザ) 25
触媒クーラー中で交換された熱 50500Mcal/h
本実施例によって、従来の場合では、各々のライザの最適化条件は同時に達成され得ないことが示される。補助ライザの最適のC/O条件を引き出すには、触媒クーラーを介して再生器(2)と再生器(1)との間の冷却をより大きくすることが必要である。この過度の冷却の結果として、再生器(1)(620℃)および再生器(2)(651℃)の温度の低下が大きすぎることになり、これは好ましい範囲外であるので、このことは再生に最適の条件を得ることはできなかったということを意味する。さらに補助ライザの最適化によって、主要ライザが不安定化され、これはそのC/Oが8から14に変化したことを意味する。
【0065】
得られた収率の構成を下の表2に示す:
【0066】
【表2】

【0067】
補助ライザの条件がより厳格にされた場合、プロピレン、エチレンおよびLPGの収率ははるかに高くなるが、主要ライザの高いC/Oは、8%超の過剰乾性ガスの収率、従って、プロピレン対乾性ガスの選択性の損失(1.56に対して1.45)をもたらした。
【0068】
この比の低下は、プロピレンの増加がそれに伴う乾性ガスの増加を補償しなかったという事実からもたらされる。乾性ガスは、品質向上することができず、それらの製造は最小化されなければならない。
【0069】
最終的に、主要ライザ中の最適化条件の損失によって、13.5%というガソリンの収率の大きな損失が生じた(32.82%に対して28.4%)。
【0070】
(実施例3)
本実施例(本発明に合致する)は、2つのライザを備え、それぞれが各ライザが最適条件下に操作することを可能とする専用の触媒クーラーを有する、接触分解単位装置の事例を例証する。
【0071】
二段階再生帯域は、実施例1および2におけるのと同じであった。
【0072】
新鮮な供給原料の流量(主要ライザ) 294t/h
補助ライザに再循環させられた軽質供給原料の流量 57t/h
新鮮な供給原料の温度(主要ライザ) 200℃
温度(補助ライザに再循環させられた軽質供給原料) 70℃
温度(主要ライザ出口) 560℃
温度(補助ライザ出口) 580℃
温度(段階1の再生器) 681℃
温度(段階2の再生器) 732℃
触媒の温度(主要ライザ入口) 718℃
触媒の温度(補助ライザ入口) 652℃
C/O比(主要ライザ) 8
C/O比(補助ライザ) 25
主要触媒クーラー中で交換された熱 9500Mcal/h
補助触媒クーラー中で交換された熱 32500Mcal/h
この事例は、各ライザのC/Oが独立して調節され得る本発明を例証する。
【0073】
C/O比25が補助ライザについて達成され、C/O比8が主要ライザにおいて維持された。
【0074】
再生器(1)の温度681℃および再生器(2)の温度732℃は、所望の機能的な範囲内であり、この触媒の最適化再生を保証し得る。
【0075】
下の表3は、得られた収率を実施例1の収率と比較する。
【0076】
【表3】

【0077】
プロピレンの1.05ポイントの増大(すなわち、10%超の増大)およびLPGの1.9ポイントの増大(すなわち、6%超の増大)を見ることができ、これは関与するトン数を考慮すれば極めて重大である。
【0078】
処理された供給原料の流量294t/hに基づくと、この利得は、基本的な事例(実施例1)の3.09t/hを上回る補足のプロピレン製造をもたらした。
【0079】
C3=/乾性ガスの選択性は保持されるか、または、従来の事例についての比1.56に対して比1.60で改善さえされた。従って、3つの事例での乾性ガスにおける増大は、関連したプロピレンの利得によって補われた。
【0080】
ガソリンの収率は、そのLPGへの転化に起因してより低いものの、所望の範囲内にとどまっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒分解単位装置を用いるガソリンの製造およびプロピレンの共製造の方法であって、該触媒分解単位装置は、一段階または二段階触媒再生帯域と、2つのライザを有する反応帯域とを含み、該ライザの一方は、主要ライザと称され、他方は、補助ライザと称され、該2つのライザは、異なる厳格条件下に並行して操作し、主要ライザのC/O比は、6〜14の範囲であり、補助ライザのC/O比は、10〜35の範囲であり、主要ライザの出口温度は、510〜580℃の範囲であり、補助ライザの出口温度は、550〜650℃の範囲であり、補助ライザにおける接触時間は、20〜500msの範囲であり、触媒は、2つの並行回路における再生帯域と反応帯域との間を循環し、主要回路と称される回路は、主要ライザと、第1の外部触媒冷却システム(主要触媒クーラーと称される)とを含み、補助回路と称される回路は、補助ライザと、第2外部触媒冷却システム(補助触媒クーラーと称される)とを含み、第1の冷却システムは、再生帯域から除去された触媒を供給され、主要ライザに直接的に供給する冷却された触媒を送達し、第2の冷却システムは、再生帯域から除去された触媒を供給され、補助ライザに直接的に供給する冷却された触媒を送達する、方法。
【請求項2】
補助ライザは、50〜200msの範囲の接触時間、150〜600kg/s・mの範囲の固体の流量で機能する、請求項1に記載のガソリン製造およびプロピレン共製造の方法。
【請求項3】
主要ライザのC/O比は、7〜12の範囲であり、補助ライザのC/O比は、14〜25の範囲である、請求項1に記載の接触分解単位装置を用いるガソリン製造およびプロピレン共製造の方法。
【請求項4】
主要ライザの出口温度は、520〜570℃の範囲であり、補助ライザの出口温度は、580〜610℃の範囲である、請求項1に記載の接触分解単位装置を用いるガソリン製造およびプロピレン共製造の方法。
【請求項5】
主要ライザに供給する供給原料の水素含量は、11.5〜14.5%の範囲、好ましくは11.8〜13%の範囲であり、補助ライザに供給する供給原料の蒸留範囲は、35〜250℃の範囲である、請求項1に記載の接触分解単位装置を用いるガソリン製造およびプロピレン共製造の方法。
【請求項6】
補助ライザに供給する軽質供給原料は、接触分解単位装置自体によって製造されるガソリンの一部によって構成される、請求項1に記載の接触分解単位装置を用いるガソリン製造およびプロピレン共製造の方法。
【請求項7】
補助ライザに供給する軽質供給原料は、C5、C6、C7およびC8のオリゴマーによって構成される、請求項1に記載の接触分解単位装置を用いるガソリン製造およびプロピレン共製造の方法。
【請求項8】
接触分解のために用いられる触媒は、以下の群:MEL、NES、EUO、FER、CHAから選択される形態選択性を有するゼオライトを含む、請求項1に記載の接触分解単位装置を用いるガソリン製造およびプロピレン共製造の方法。
【請求項9】
ゼオライトの総量に対する形態選択性を有するゼオライトの割合は、2〜60重量%、好ましくは3〜40重量%、より好ましくは3〜30重量%である、請求項1に記載の接触分解単位装置を用いるガソリン製造およびプロピレン共製造の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−524453(P2011−524453A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514081(P2011−514081)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000639
【国際公開番号】WO2009/153441
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】