説明

2光子吸収材料、2光子吸収記録材料および2光子吸収記録媒体

【課題】700nmよりも短波長の領域の光を2光子吸収できる2光子吸収材料、該2光子吸収材料を含有することにより、上記波長領域の記録光を用いて2光子吸収記録でき、かつ十分な記録再生特性を有する2光子吸収記録材料、及び2光子吸収記録媒体を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表される化合物を含有する2光子吸収材料、これを用いる2光子吸収記録材料、及び2光子吸収記録媒体。


(一般式(I)中、Arは芳香族炭化水素環を、HetおよびHetは芳香族へテロ環を表し、RおよびRは炭素数1〜30の置換基を、nは0または1を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2光子吸収材料、2光子吸収記録材料および2光子吸収記録媒体に関し、詳細には、700nmよりも短波長領域の光を顕著に非共鳴2光子吸収することができる2光子吸収材料、それを用いた2光子吸収記録材料および該記録材料を用いた2光子吸収記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、非線形光学効果とは、印加する光電場の2乗、3乗あるいはそれ以上に比例する非線型な光学応答のことであり、印加する光電場の2乗に比例する2次の非線形光学効果としては、第二高調波発生(SHG)、光整流、フォトリフラクティブ効果、ポッケルス効果、パラメトリック増幅、パラメトリック発振、光和周波混合、光差周波混合などが知られている。また印加する光電場の3乗に比例する3次の非線形光学効果としては第三高調波発生(THG)、光カー効果、自己誘起屈折率変化、2光子吸収などが挙げられる。
【0003】
これらの非線形光学効果を示す非線形光学材料としてはこれまでに多数の無機材料が見出されてきた。ところが無機物においては、所望の非線形光学特性や、素子製造のために必要な諸物性を最適化するためのいわゆる分子設計が困難であることから実用するのは非常に困難であった。一方、有機化合物は分子設計により所望の非線形光学特性の最適化が可能であるのみならず、その他の諸物性のコントロールも可能であるため、実用の可能性が高く、有望な非線形光学材料として注目を集めている。
【0004】
近年、有機化合物の非線形光学特性の中でも3次の非線形光学効果が注目されており、その中でも特に、非共鳴2光子吸収が注目を集めている。2光子吸収とは、化合物が2つの光子を同時に吸収して励起される現象であり、化合物の(線形)吸収帯が存在しないエネルギー領域で2光子の吸収が起こる場合を非共鳴2光子吸収という。なお、以下の記述において特に明記しなくても「2光子吸収」とは「非共鳴2光子吸収」を指す。また、「同時2光子吸収」の「同時」を略して単に「2光子吸収」と記すこともある。
【0005】
ところで、非共鳴2光子吸収の効率は印加する光電場の2乗に比例する(2光子吸収の2乗特性)。このため、2次元平面にレーザーを照射した場合においては、レーザースポットの中心部の電界強度の高い位置のみで2光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では2光子の吸収は全く起こらない。一方、3次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ2光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために2光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる線形吸収に比べて、非共鳴2光子吸収では、この2乗特性に由来して空間内部の1点のみで励起が起こるため、空間分解能が著しく向上する。
通常、非共鳴2光子吸収を誘起する場合には、化合物の(線形)吸収帯が存在する波長領域よりも長波でかつ吸収の存在しない、近赤外領域の短パルスレーザーを用いることが多い。いわゆる透明領域の近赤外光を用いるため、励起光が吸収や散乱を受けずに試料内部まで到達でき、非共鳴2光子吸収の2乗特性のために試料内部の1点を極めて高い空間分解能で励起できる。
【0006】
本出願人は、これまで、非共鳴2光子吸収を誘起する化合物を用いる2光子増感型3次元記録材料に関する種々の出願を行ってきた。この記録材料は、少なくとも(1)2光子吸収化合物(2光子増感剤)、(2)屈折率変調材料または蛍光強度変調材料、とを含み、(1)が効率よく2光子吸収を行い、獲得した光エネルギーを光誘起電子移動やエネルギー移動によって(2)へと受け渡して(2)の屈折率または蛍光強度を変化させることにより記録を行う記録材料である。光吸収過程に通常の光記録で用いる1光子吸収ではなく、非共鳴2光子吸収を用いることで、記録材料内部の任意の位置に3次元空間分解能を有して記録ピットを書き込むことができるようになる。
【0007】
例えば、特許文献1には、(2)屈折率または蛍光強度変調材料として、色素を発色させることで屈折率を変調するものと、無蛍光から蛍光発光または蛍光発光から無蛍光にさせることで蛍光変調するもの(色素発色または蛍光色素発色により屈折率または蛍光変調する材料)を用いた技術が開示されている。また、特許文献2には、(2)屈折率または蛍光強度変調材料として、極微小に色素発色または蛍光変化した種(潜像核)を形成し、その後に光照射または加熱することにより記録増幅するもの(屈折率/蛍光変調;潜像増幅方式、色素発色により屈折率/蛍光変調する潜像を形成する材料)を用いた技術が開示されている。また、特許文献3等には、(2)屈折率変調材料として、重合によって高分子のポリマーを作って屈折率を変調するもの(重合により屈折率変調する材料)を用いた技術が開示されている。さらに、特許文献4には、屈折率変調材料として、極微小の重合潜像核を形成した後に、重合の駆動を行うもの(屈折率変調;潜像重合方式、重合により屈折率変調する潜像を形成する材料)を用いた技術が開示されている。
【0008】
上記の特許文献1〜4に記載の2光子増感型3次元記録材料は、いずれも(1)2光子吸収化合物(2光子増感剤)として、700nm以上の光で2光子吸収を行うものを用いていた。しかし、近年、様々な要望があり、その中でも、より高い記録密度を得るべく、記録材料中により小さいピットを形成するために700nmよりも短波長の領域の記録光を用いて2光子吸収記録できる材料が求められている。
【0009】
なお、特許文献5〜6には、芳香族ヘテロ環と芳香族炭化水素環とが単結合にて連結した部位を含む液晶化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−87532号公報
【特許文献2】特開2005−320502号公報
【特許文献3】特開2005−29725号公報
【特許文献4】特開2005−97538号公報
【特許文献5】特開2007−45806号公報
【特許文献6】特開2007−204705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載の技術では、上記波長範囲のレーザー光の利用という観点では、感度が不十分なものであった。
本発明は、700nmよりも短波長の領域の光を2光子吸収できる2光子吸収材料、該2光子吸収材料を含有することにより、上記波長領域の記録光を用いて2光子吸収記録でき、かつ十分な記録再生特性を有する2光子吸収記録材料、及び2光子吸収記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らの鋭意検討の結果、下記構成により、上記課題を解決できることを見出した。
【0013】
(1)下記一般式(I)で表される化合物を含有する2光子吸収材料。
【0014】
【化1】

【0015】
(一般式(I)中、Arは置換または無置換の芳香族炭化水素環を表し、HetおよびHetはそれぞれ独立に芳香族へテロ環を表し、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜30の置換基を表し、nは0または1を表す。)
【0016】
(2)前記HetおよびHetが、それぞれ独立に1,2,4−オキサジアゾール環、1、3、4−オキサジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環または1、3、4−チアジアゾール環である、前記(1)の2光子吸収材料。
【0017】
(3)前記一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(II)で表される化合物である、前記(1)または(2)の2光子吸収材料。
【0018】
【化2】

【0019】
(一般式(II)中、Arは置換もしくは無置換のパラフェニレンまたはメタフェニレンを表す。X〜Xはそれぞれ独立に置換基を表す。j、kはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。環Aおよび環Bはそれぞれ1,2,4−オキサジアゾール−3,5−ジイル基、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル基、1,2,4−チアジアゾール−3,5−ジイル基または1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル基を表す。)
【0020】
(4)前記Het、Het、環Aおよび環Bが、それぞれ独立に1,2,4−オキサジアゾール環または1、3、4−オキサジアゾール環を表す、前記(2)または(3)の2光子吸収材料。
【0021】
(5)前記(1)〜(4)のいずれかの2光子吸収材料を含む2光子吸収記録材料。
(6)前記(5)の2光子吸収記録材料を含む2光子吸収記録媒体。
(7)前記(5)の2光子吸収記録材料を含む記録層を有する多層記録媒体。
(8)前記(5)の2光子吸収記録材料を含む記録層と記録光の照射によって変化が生じない非記録層とが交互に積層された構造を有することを特徴とする2光子吸収記録媒体。
【発明の効果】
【0022】
本発明の2光子吸収材料の構成によれば、700nmよりも短波長の領域の光を用いて2光子吸収でき、これを用いた2光子吸収記録材料及び2光子吸収記録媒体は、上記波長領域の記録光を用いて十分な記録再生特性を有することができた。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の2光子吸収材料は、2光子吸収化合物として、下記一般式(I)で表される化合物を含有するものである。
【0024】
【化3】

【0025】
(一般式(I)中、Arは置換または無置換の芳香族炭化水素環を表し、HetおよびHetはそれぞれ独立に芳香族へテロ環を表し、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜30の置換基を表し、nは0または1を表す。)
Arは、置換もしくは無置換のベンゼン環または置換もしくは無置換のナフタレン環であることが好ましく、置換もしくは無置換のベンゼン環であることがより好ましく、無置換のベンゼン環であることがさらに好ましい。
【0026】
HetおよびHet2は、それぞれ独立に、5員環であることが好ましく、1,2,4−オキサジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、または1,3,4−チアジアゾール環であることがより好ましく、1,2,4−オキサジアゾール環であることがさらに好ましい。
【0027】
HetおよびHet2とArとの結合位置は本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではない。
例えば、HetおよびHet2が1,2,4−オキサジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、または1,3,4−チアジアゾール環である場合、それぞれ、3位または5位での結合が可能であり、それぞれ、いずれの位置でArに結合していてもよい。
一方、Arがベンゼン環である場合、HetおよびHet2は該ベンゼン環のいずれの位置に結合していてもよいが、1位および2位、1位および3位、1位および4位に結合していることが好ましく、1位および3位に置換していることがより好ましい。
【0028】
Arが有してもよい置換基の好ましい例としては下記のものが挙げられる。
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基)、アルケニル基(好ましくは、炭素数2〜30のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基)、ビシクロアルケニル基(ビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)基、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30のアリール基、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは、5または6員環の、芳香族又は非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5または6員環の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくは、ホルミルオキシ基、炭素数2〜30のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30のアルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30のアルキルアミノ基、炭素数6〜30のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30のアルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30のアルキルスルフィニル基、6〜30のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキルスルホニル基もしくはアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30のアルキルスルホニル基、6〜30のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイルベンゾイル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、アリールおよびヘテロ環アゾ基(好ましくは、炭素数6〜30のアリールアゾ基、炭素数3〜30のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)を表わす。
【0029】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていてもよい。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられ、より具体的には、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0030】
上記置換基の中で、より好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基およびアルコキシカルボニルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子である。
【0031】
1およびR2である、炭素数1〜30の置換基としては、上記のAr1が有してもよい置換基の例が挙げられ、アリール基またはヘテロ環基(置換基を有するものを含む)であることが好ましい。
【0032】
Het1とR1およびHet2とR2の結合の位置関係は、特に定めるのではないが、例えば、Het1およびHet2が1,2,4−オキサジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、または1,3,4−チアジアゾール環である場合、それぞれ、3位または5位での結合が可能であり、いずれかの位置でAr1と結合し、他方においてR1およびR2に結合していることが好ましい。
【0033】
一般式(I)で表される化合物の好ましい例として、下記一般式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【化4】

【0035】
(一般式(II)中、Arは置換もしくは無置換のパラフェニレンまたはメタフェニレンを表す。X〜Xはそれぞれ独立に置換基を表す。j、kはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。環Aおよび環Bはそれぞれ独立に1,2,4−オキサジアゾール−3,5−ジイル基、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル基、1,2,4−チアジアゾール−3,5−ジイル基または1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル基を表す。)
〜Xは、具体的には、上記に示したRおよびRが有してもよい置換基の好ましい例が挙げられる。
、Xは、好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子である。XとXは同じでも異なっていてもよいし、同じでもよい。
、Xは、好ましくはアルキル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、ハロゲン原子である。
【0036】
一般式(I)で表される化合物の具体例としては特に限定されないが、特開2007−45806号公報(特許文献5)の〔0040〕〜〔0045〕及び特開2007−204705号公報(特許文献6)の〔0055〕〜〔0074〕に記載のものの他、下記のものが挙げられる。
【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

【0039】
なお、2光子吸収化合物が2光子吸収を行う効率は2光子吸収断面積δで表され、1GM=1×10-50 cm4 s/photonで定義される。本発明の2光子吸収光材料における2光子吸収化合物の2光子吸収断面積δは100GM以上であることが、書き込み速度向上、レーザー小型化・安価化等の点で好ましく、1000GM以上であることがより好ましく、5000GM以上であることがより好ましく、10000GM以上であることが最も好ましい。
【0040】
上記一般式(I)で表される化合物を含有する、本発明の2光子吸収材料は、2光子吸収記録材料(以下、本発明の2光子吸収記録材料とも称する)に用いることができる。
2光子吸収記録材料とする場合には、上記一般式(I)で表される化合物の他に、様々な記録成分を併用する。
このような記録成分としては、例えば、屈折率および蛍光強度のうち少なくともいずれかが変化するものが挙げられる。
【0041】
<屈折率および蛍光強度のうちの少なくともいずれかが変化する記録成分>
本発明の非共鳴2光子吸収材料において用いる、「屈折率および蛍光強度のうちの少なくともいずれかが変化する記録成分」について、以下に説明する。
【0042】
〔色素発色または蛍光色素発色により屈折率または蛍光変調する材料〕
色素発色または蛍光色素発色により屈折率または蛍光変調する材料としては、例えば、
(A)酸により可視域に吸収帯が出現する色素前駆体
(B)塩基により可視域に吸収帯が出現する色素前駆体
(C)酸化により可視域に吸収帯が出現する色素前駆体
(D)還元により可視域に吸収が出現する色素前駆体
のうち、少なくとも1種類以上を含むことが好ましい。
以下、それぞれについて説明する。
【0043】
(A)酸により可視域に吸収帯が出現する色素前駆体
当該色素前駆体は、酸発生剤により発生した酸により、元の状態から吸収が変化した発色体となることができる色素前駆体である。該酸発色前駆体としては、酸により吸収が長波長化する化合物が好ましく、酸により無色から発色する化合物がより好ましい。
【0044】
酸発色型色素前駆体として好ましくは、トリフェニルメタン系、フタリド系(インドリルフタリド系、アザフタリド系、トリフェニルメタンフタリド系を含む)、フェノチアジン系、フェノキサジン系、フルオラン系、チオフルオラン系、キサンテン系、ジフェニルメタン系、クロメノピラゾール系、ロイコオーラミン、メチン系、アゾメチン系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、フルオレン系、スピロピラン系の化合物が挙げられる。これらの化合物の具体例は、例えば特開2002−156454号およびその引用特許、特開2000−281920号、特開平11−279328号、特開平8−240908号等に開示されている。
【0045】
酸発色型色素前駆体としてより好ましくは、ラクトン、ラクタム、オキサジン、スピロピラン等の部分構造を有するロイコ色素であり、フルオラン系、チオフルオラン系、フタリド系、ローダミンラクタム系、スピロピラン系の化合物が挙げられ、キサンテン(フルオラン)色素またはトリフェニルメタン色素であることがさらに好ましい。なお、これらの酸発色型色素前駆体は、必要に応じて任意の比率で2種以上の混合物として用いてもよい。
【0046】
前記酸発色型色素前駆体の好ましい具体例としては、特開2007−87532号公報に開示されている一般式(21)〜(23)、同段落0122で示される化合物(フタリド系色素前駆体(インドリルフタリド系色素前駆体、アザフタリド系色素前駆体を含む))、同一般式(24)、同段落0126(トリフェニルメタンフタリド系色素前駆体)、同一般式(25)、同段落0130(フルオラン系色素前駆体)、同段落0131(ローダミンラクタム系色素前駆体)、同段落0132(スピロピラン系色素前駆体)で開示されている化合物を用いることができる。
【0047】
また、該酸発色型色素前駆体としては、特開2008−284475公報に開示されている一般式(6)で示されるBLD化合物や特開2000−144004に開示されているロイコ色素、特開2007−87532号公報に開示されている〔化38〕で示される構造のロイコ色素も好適に用いることができる。
さらに該色素前駆体は、酸(プロトン)付加により発色する特開2007−87532号公報に開示されている一般式(26)、同〔化40〕で示される化合物を用いることができる。
本発明で用いられる酸発色型色素前駆体の好ましい具体例としては、上記特開2007−87532号公報に記載の化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
(B)塩基により可視域に吸収帯が出現する色素前駆体
当該色素前駆体は、塩基発生剤により発生した塩基により、元の状態から吸収が変化した発色体となることができる色素前駆体である。
本発明の塩基発色型色素前駆体としては、塩基により吸収が長波長化する化合物が好ましく、塩基によりモル吸光係数が大きく増加する化合物がより好ましい。
【0049】
本発明における塩基発色型色素前駆体は好ましくは解離型色素の非解離体である。なお、解離型色素とは、色素クロモフォア上にpKa12以下、より好ましくはpKa10以下の解離してプロトンを放出しやすい解離基を有しており、非解離型から解離型になることにより、吸収が長波長化、あるいは無色から有色となる化合物のことである。解離基として好ましくは、OH基、SH基、COOH基、PO基、SOH基、NR9192+基、NHSO93基、CHR9495基、NHR96基が挙げられる。
ここで、R91、R92、R96はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル)、シクロアルキル基(好ましくはC数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ) 、好ましくは水素原子またはアルキル基を表す。R93はアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し(置換基として好ましくはR91、R92、R96にて挙げた置換基の例と同じ) 、好ましくは置換しても良いアルキル基または置換しても良いアリール基を表し、置換しても良いアルキル基であることがより好ましく、その際、置換基としては電子求引性であることが好ましく、フッ素であることが好ましい。
【0050】
94、R95は、それぞれ独立に置換基を表す(置換基として好ましくはR91、R92、R96にて挙げた置換基の例と同じ)が、電子求引性の置換基が好ましく、シアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基であることが好ましい。
本発明の解離型色素の解離基としては、OH基、SH基、COOH基、PO基、SOH基、NR9192+基、NHSO93基、CHR9495基がより好ましく、OH基、CHR9495基基がさらに好ましく、OH基が最も好ましい。
【0051】
本発明における塩基発色型色素前駆体として好ましい解離型色素非解離体としては、解
離型アゾ色素、解離型アゾメチン色素、解離型オキソノール色素、解離型アリーリデン色素、解離型キサンテン(フルオラン)色素、解離型トリフェニルアミン型色素の非解離体であり、解離型アゾ色素、解離型アゾメチン色素、解離型オキソノール色素、解離型アリーリデン色素の非解離体であることがさらに好ましい。
塩基発色型色素前駆体の好ましい具体例としては、特開2007−87532号公報中、段落0144〜0146に開示されているで示される化合物が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
(C)酸化により可視域に吸収帯が出現する色素前駆体
当該色素前駆体は、酸化反応により吸光度が増大する化合物であれば特に限定はないが、ロイコキノン化合物類、チアジンロイコ化合物類、オキサジンロイコ化合物類、フェナジンロイコ化合物類およびロイコトリアリールメタン化合物類のいずれかの化合物を少なくとも1種類以上含むことが好ましい。
ロイコキノン化合物としては、特開2007−87532号公報に開示されている一般式(6)〜(10)、同段落0149、0150に示される部分構造を有する化合物を用いることができる。
チアジンロイコ化合物類、オキサジンロイコ化合物類、フェノキサジンロイコ化合物類としては、特開2007−87532号公報に開示されている一般式(11)、(12)、同段落0156〜0160に示される化合物を用いることができる。
ロイコトリアリールメタン化合物類としては、特開2007−87532号公報に開示されている一般式(13)、同段落0166、0167に表される部分構造を有する化合物が好ましい。
【0053】
本発明で用いられる、酸化により可視域に吸収帯が出現する色素前駆体の好ましい具体例としては、特開2007−87532号公報の段落0152(ロイコキノン化合物)、同公報の段落0162〜0164(チアジンロイコ化合物類、オキサジンロイコ化合物類、フェナジンロイコ化合物類)、同公報の段落0169〜0170(ロイコトリアリールメタン化合物類)に記載の化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
(D)還元により可視域に吸収が出現する色素前駆体
当該色素前駆体としては、特開2007−87532号公報に開示されている一般式(A)で示される化合物を用いることができ、具体的には同公報段落0172〜0195に記載の化合物を用いることができる。
なお、本発明の記録成分が前記色素前駆体を含むとき、本発明の2光子吸収光記録材料は、生成する解離型色素を解離させる目的で、必要によりさらに塩基を含むことも好ましい。塩基は有機塩基でも無機塩基でもよく、好ましくは例えば、アルキルアミン類、アニリン類、イミダゾール類、ピリジン類、炭酸塩類、水酸化物塩類、カルボン酸塩類、金属アルコキシドなどが挙げられる。あるいは、それらの塩基を含むポリマーも好ましく用いられうる。
なお、上記の本発明に用いる色素前駆体は市販品であるか、あるいは公知の方法により合成することができる。
【0055】
2光子記録過程において、2光子吸収記録によって記録が行われた部位における色素前駆体の発色によるスペクトル変化は、2光子吸収色素の線形吸収スペクトルの極大波長よりも長波長領域で発現することが好ましい。あるいは、前記吸収スペクトル変化が読み出し波長よりも短波長領域において発現し、かつ読み出し波長での吸収スペクトル変化が存在しないことが好ましい。このような構成により、色素が発色することで出現する屈折率の異常分散に由来して、発色色素吸収極大波長よりも長波長側に出現する大きな屈折率変化を利用して、反射光により効率よく記録信号を読み出すことが可能となる。
2光子記録過程において、2光子吸収記録によって記録が行われた部位における色素の消色によるスペクトル変化は、読み出し波長または読み出し波長よりも短波長の波長領域で発現し、読み出し波長での色素吸収が存在しないことが好ましい。このような構成により、読出し波長での屈折率変化を増大させることができ、反射光により効率よく記録信号を読み出すことが可能となる。
【0056】
本発明の光記録材料には、上記成分以外のその他の成分として、2光子吸収化合物または/および記録成分を構成する化合物へ電子を供与することのできる電子供与性化合物、酸発生剤、塩基発生剤を必要に応じて含むことができる。電子供与性化合物としては特開2007−87532号公報の段落0199〜0217に記載された化合物を、酸発生剤としては同段落0218〜0245に記載された化合物を、塩基発生剤としては同段落0246〜0267に記載された化合物を用いることができる。
以上、色素発色または蛍光色素発色により屈折率または蛍光変調する材料については、特開2007−87532号公報により詳細に記載されている。
【0057】
〔重合により屈折率変調する材料〕
重合により屈折率変調する材料としては、少なくとも重合性化合物と重合開始剤とからなる。以下、材料の詳細について説明する。
【0058】
(重合性化合物)
重合性化合物とは、ラジカルまたは酸(ブレンステッド酸またはルイス酸)により、付加重合を起こしてオリゴマーまたはポリマー化が可能な化合物のことである。
重合性化合物としては、単官能性でも多官能性でもよく、一成分でも多成分でもよく、モノマー、プレポリマー(例えばダイマー、オリゴマー)でもこれらの混合物でもいずれでもよい。また、その形態は、液状であっても固体状であってもよい。
重合性化合物は、ラジカル重合可能な重合性化合物とカチオン重合可能な重合性化合物に大別される。
【0059】
ラジカル重合性化合物としては、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を分子中に有する化合物が好ましく、具体的には以下の重合性モノマーおよびそれから成るプレポリマー(ダイマー、オリゴマー等)が挙げられる。これらは単官能型であっても多官能型であってもよい。例としては、たとえばエチレン性不飽和酸化合物、脂肪族及び芳香族型官能基含有(メタ)アクリレート、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドのモノマー等が挙げられる。具体例としては、特開2005−29725号公報の段落0019〜0026に記載の化合物を用いることができる。
さらに、該ラジカル重合性化合物としては、特開2005−29725号公報の段落0027(ポリイソシアネート化合物)、同段落0028(ウレタンアクリレート類)、同0030(リンを含むモノマー)、市販品としては同0031〜0032に記載された化合物を用いることができる。
さらに、日本接着協会誌Vol.20、No7、300〜30頁に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0060】
カチオン重合性化合物は、2光子吸収化合物とカチオン重合開始剤により発生した酸により重合が開始される化合物で、例えば「ケムテク・オクト(Chemtech.Oct.)」[J.V.クリベロ(J.V.Crivello)、第624頁(1980)]、特開昭62−149784号公報、日本接着学会誌[第26巻、No.5、第179−187頁(1990)]などに記載されているような化合物が挙げられる。
カチオン重合性化合物として好ましくは、オキシラン環、オキセタン環、ビニルエーテル部位を分子中に少なくとも1個有する化合物であり、より好ましくはオキシラン環を有する化合物である。具体的には、以下のカチオン重合性モノマーおよびそれらからなるプレポリマー(例えばダイマー、オリゴマー等)が挙げられる。
【0061】
オキシラン環を有するカチオン重合性モノマーの具体例としては、特開2005−29725号公報の段落0035〜0036が挙げられる。
オキセタン環を有するカチオン重合性モノマーの具体例としては、前記のオキシラン環を有するカチオン重合性モノマーの具体例のオキシランをオキセタン環に置き換えた化合物等が挙げられる。具体的には、特開2005−29725号公報の段落0038が挙げられる。
【0062】
(重合開始剤)
次に重合開始剤について説明する。本発明の重合開始剤とは、非共鳴2光子吸収により生じた2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動(電子を与えるまたは電子を受ける)を行うことによりラジカルまたは酸(ブレンステッド酸またはルイス酸)を発生し、重合性化合物の重合を開始することができる化合物のことである。
本発明の重合開始剤は好ましくは、ラジカルを発生して重合性化合物のラジカル重合を開始することができるラジカル重合開始剤と、ラジカルを発生することなく酸のみ発生して重合性化合物のカチオン重合のみを開始することができるカチオン重合開始剤と、ラジカル及び酸を両方発生して、ラジカル及びカチオン重合両方を開始することができる重合開始剤のいずれかである。
重合開始剤として好ましくは、以下の14個の系が上げられる。なお、これらの重合開始剤は、必要に応じて任意の比率で2種以上の混合物として用いてもよい。
【0063】
1)ケトン系重合開始剤
2)有機過酸化物系重合開始剤
3)ビスイミダゾール系重合開始剤
4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤
5)ジアゾニウム塩系重合開始剤
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7)スルホニウム塩系重合開始剤
8)ホウ酸塩系重合開始剤
9)ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
10)スルホニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
11)金属アレーン錯体系重合開始剤
12)スルホン酸エステル系重合開始剤
【0064】
上記重合開始剤の好ましい例としては、特開2005−29725号公報の段落0117〜0120(ケトン系重合開始剤)、同公報段落0122(有機化酸化物系開始剤)、同0124〜0125(ビスイミダゾール系重合開始剤)、同0127〜0130(トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤)、同0132〜0135(ジアゾニウム塩系重合開始剤)、同0137〜0140(ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤)、同0142〜0145(スルホニウム塩系重合開始剤)、同0147〜0150(ホウ酸塩系重合開始剤)、同0153〜0157(ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤)、同0159〜0164(スルホニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤)、同0179(金属アレーン系重合開始剤)、同1081〜0182(スルホン酸エステル系重合開始剤)に記載の化合物が挙げられる。
【0065】
13)その他の重合開始剤
前記1)〜12)以外の重合開始剤としては、4,4’−ジアジドカルコンのような有機アジド化合物、N−フェニルグリシンなどの芳香族カルボン酸、ポリハロゲン化合物(CI4、CHI3、CBrCI3)、フェニルイソオキサゾロン、シラノールアルミニウム錯体、特開平3−209477号公報に記載されるアルミナート錯体などが挙げられる。
【0066】
ここで、本発明の重合開始剤は、
a)ラジカル重合を活性化できる重合開始剤
b)カチオン重合のみ活性化できる重合開始剤
c)ラジカル重合とカチオン重合を同時に活性化できる重合開始剤
に分類することができる。
【0067】
a)ラジカル重合を活性化できる重合開始剤とは、非共鳴2光子吸収により生じた2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動(2光子吸収化合物に電子を与えるまたは2光子吸収化合物から電子を受ける)を行うことによりラジカルを発生し、重合性化合物のラジカル重合を開始することができる重合開始剤のことである。
前記の中では、以下の系がラジカル重合を活性化することができる重合開始剤系である;1)ケトン系重合開始剤、2)有機過酸化物系重合開始剤、3)ビスイミダゾール系重合開始剤、4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤、5)ジアゾニウム塩系重合開始剤、6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤、7)スルホニウム塩系重合開始剤、8)ホウ酸塩系重合開始剤、9)ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤、10)スルホニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤、11)金属アレーン錯体系重合開始剤。
【0068】
ラジカル重合を活性化できる重合開始剤としてより好ましくは、1)ケトン系重合開始剤、3)ビスイミダゾール系重合開始剤、4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤、6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤、7)スルホニウム塩系重合開始剤が挙げられ、さらに好ましくは、3)ビスイミダゾール系重合開始剤、6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤、7)スルホニウム塩系重合開始剤、が挙げられる。
カチオン重合のみ活性化できる重合開始剤とは、非共鳴2光子吸収により生じた2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動を行うことによりラジカルを発生することなく酸(ブレンステッド酸またはルイス酸)を発生し、酸により重合性化合物のカチオン重合を開始することができる重合開始剤のことである。
前記の系の中では、以下の系がカチオン重合のみを活性化することができる重合開始剤系である。;14)スルホン酸エステル系重合開始剤。
【0069】
なお、カチオン重合開始剤としては、例えば「UV硬化;科学と技術(UVCURING;SCIENCEANDTECHNOLOGY)」[p.23〜76、S.ピーター・パーパス(S.PETERPAPPAS)編集、ア・テクノロジー・マーケッティング・パブリケーション(ATECHNOLOGYMARKETINGPUBLICATION)]及び「コメンツ・インオーグ.ケム.(Co mments Inorg.Chem.)」[B.クリンゲルト、M.リーディーカー及びA.ロロフ(B.KLINGERT、M.RIEDIKER andA.ROLOFF)、第7巻、No.3、p109−138(1988)]などに記載されているものを用いることもできる。
【0070】
ラジカル重合とカチオン重合を同時に活性化できる重合開始剤とは、非共鳴2光子吸収により生じた2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動を行うことによりラジカルまたは酸(ブレンステッド酸またはルイス酸)を同時発生し、発生するラジカルにより重合性化合物のラジカル重合を、また発生する酸により重合性化合物のカチオン重合を開始することができる重合開始剤のことである。
前記の系の中では、以下の系がラジカル重合とカチオン重合を同時に活性化できる重合開始剤系である;4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤、5)ジアゾニウム塩系重合開始剤、6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤、7)スルホニウム塩系重合開始剤、13)金属アレーン錯体系重合開始剤。
ラジカル重合とカチオン重合を活性化できる重合開始剤として好ましくは、6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤、7)スルホニウム塩系重合開始剤、を挙げることができる。
以上、重合により屈折率変調する材料としては、特開2005−29725号公報に、より詳細に記載されている。
【0071】
〔重合性基を有する色素の重合により屈折率変調する材料〕
また、重合性基を有する色素(色素モノマーとも称する)の重合により屈折率変調する材料を用いることができる。
【0072】
(色素モノマー)
色素モノマーにおける「色素」とは、波長300〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光のいずれかを吸収する化合物のことを称し、より好ましくは波長330〜700nmの紫外光または可視光を吸収する化合物のことを称し、さらに好ましくは400〜700nmの可視光を吸収する化合物のことを称す。その際その領域のモル吸光係数としては5000以上が好ましく、10000以上がより好ましく、20000以上が最も好ましい。
色素モノマーを使用する場合には、該色素モノマーに加えて、少なくとも増感色素、重合開始剤、及びバインダーを有し、色素部分を有さない重合性化合物をさらに有することが好ましい。重合開始剤、色素部分を有さない重合性化合物としては、前述と同様のものが挙げられる。
【0073】
色素モノマーを使用する場合には、2光子記録光照射により光を吸収して生成した2光子吸収化合物励起状態が、電子移動またはエネルギー移動により重合開始剤を活性化して、重合性基を有する色素及び色素部分を有さない重合性化合物の重合を起こし、その際、光照射部では重合性基を有する色素及び色素部分を有さない重合性化合物が主に移動し、光未照射部にバインダーが主に追いやられることによる屈折率変調により、記録ピットを記録することを特徴とする。
【0074】
したがって、この場合、再生波長における屈折率が、バインダーよりも重合性基を有する色素の方が大きいことが好ましい。
一般に、色素の屈折率は、吸収極大波長(λmax)付近からそれより長波長な領域で高い値を取り、特にλmaxからλmaxより200nm程長波長な領域において非常に高い値を取り、色素によっては2を超え、さらには2.5を超えるような高い値をとる。
一方で、バインダーポリマー等の色素ではない有機化合物は通常1.4〜1.6程度の屈折率である。
したがって、この場合、屈折率変調に屈折率の大きい色素を用いるため、高感度化の点で有利である。また、高感度化のためには、重合性基を有する色素は、好ましくは吸収スペクトルにおいて、ホログラム再生波長よりも10〜200nm短波長であるλmaxを有し、より好ましくは30〜130nm短波長であるλmaxを有し、εが10000以上であり、より好ましくは20000以上であることが好ましい。
【0075】
さらに、色素部分を有さない重合性化合物を用いる場合も、再生波長における屈折率が、バインダーよりも色素部分を有さない重合性化合物の方が大きいことが好ましい。
その際、色素部分を有さない重合性化合物が、少なくとも1個以上のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含み、バインダーはそれらを含まないことがより好ましい。
この重合反応は、重合反応がラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合のいずれかであることが好ましく、ラジカル重合またはカチオン重合であることが好ましい。
その際、重合性基を有する色素、色素部分を有さない重合性化合物の重合性基が、重合がラジカル重合の時は、重合性基としてアクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニル基等のエチレン性不飽和基部分を有し、好ましくはアクリロイル基またはメタクリロイル基を有し、重合がカチオン重合またはアニオン重合の時は重合性基としてオキシラン環、オキセタン環、ビニルエーテル基、N−ビニルカルバゾール部位のいずれかを有し、好ましくはオキシラン環またはオキセタン環を有することが好ましい。
【0076】
次に、重合性基を有する色素について詳しく説明する。
重合性基を有する色素のうち、色素の部分として好ましくは、シアニン色素、スクワリリウムシアニン色素、スチリル色素、ピリリウム色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、アズレニウム色素、クマリン色素、ケトクマリン色素、スチリルクマリン色素、ピラン色素、キサンテン色素、チオキサンテン色素、フェノチアジン色素、フェノキサジン色素、フェナジン色素、フタロシアニン色素、アザポルフィリン色素、ポルフィリン色素、縮環芳香族系色素、ペリレン色素、アゾメチン色素、アントラキノン色素、金属錯体色素、アゾ色素等が挙げられ、より好ましくは、シアニン色素、スクワリリウムシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、クマリン色素、キサンテン色素、フェノチアジン色素、縮環芳香族系色素、アゾ色素が挙げられ、さらに好ましくは、シアニン色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、クマリン色素、キサンテン色素、アゾ色素が挙げられる。
【0077】
その他に「色素ハンドブック」(大河原信他編 講談社 1986年)、「機能性色素の化学」(大河原信他編 シーエムシー 1981年)、「特殊機能材料」(池森忠三郎他編 シーエムシー 1986年)に記載される色素および染料も色素部分として用いることができる。
重合性基を有する色素について、重合性基については前述した通りである。重合性基としては色素のどの部分に置換していても良い。
以下に重合性基を有する色素の具体例を示すが、これに限定されるものではない。
【0078】
【化7】

【0079】
【化8】

【0080】
【化9】

【0081】
【化10】

【0082】
(バインダー)
上記色素モノマーと併用するバインダーとしては、重合前の組成物の成膜性、膜厚の均一性、保存時安定性を向上させる等の目的で通常使用される。バインダーとしては、重合性化合物、重合開始剤、2光子吸収化合物と相溶性の良いものが好ましい。
バインダーとしては、溶媒可溶性の熱可塑性重合体が好ましく、単独又は互いに組合せて使用することができる。
前記したように上記色素モノマーと併用するバインダーは重合性化合物と屈折率が違うことが好ましく、重合性化合物の方がより屈折率が大きくても、バインダーの方がより屈折率が大きくてもどちらでも構わないが、重合性化合物の方がバインダーよりも屈折率が大きいことがより好ましい。
そのためには、重合性化合物またはバインダーのいずれか一方が、少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含み、残りの一方はそれらを含まないことが好ましく、より好ましくは、重合性化合物が少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含み、バインダーはそれらを含まないことが好ましい。
【0083】
以下に、重合性化合物の屈折率の方がバインダーの屈折率よりも大きい場合の好ましいバインダーの例を説明する。
好ましい低屈折率バインダーの具体例としては、アクリレート及びアルファ−アルキルアクリレートエステル及び酸性重合体及びインターポリマー(例えばポリメタクリル酸メチル及びポリメタクリル酸エチル、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体)、ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸/アクリル酸ビニル、ポリ酢酸/メタクリル酸ビニル及び加水分解型ポリ酢酸ビニル)、エチレン/酢酸ビニル共重合体、飽和及び不飽和ポリウレタン、ブタジエン及びイソプレン重合体及び共重合体及びほぼ4,000〜1,000,000の重量平均分子量を有するポリグリコールの高分子量ポリ酸化エチレン、エポキシ化物(例えば、アクリレート又はメタクリレート基を有するエポキシ化物)、ポリアミド(例えば、N−メトキシメチルポリヘキサメチレンアジパミド)、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートサクシネート及びセルロースアセテートブチレート)、セルロースエーテル(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルベンジルセルロース)、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラール及びポリビニルホルマール)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、米国特許3,458,311中及び米国特許4,273,857中に開示されている酸含有重合体及び共重合体、並びに米国特許4,293,635中開示されている両性重合体バインダーなどが挙げられ、より好ましくはセルロースアセテートブチレート重合体、セルロースアセテートラクテート重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/メタクリル酸及びメタクリル酸メチル/アクリル酸共重合体を含むアクリル系重合体及びインターポリマー、メタクリル酸メチル/アクリル酸又はメタクリル酸C2〜C4アルキル/アクリル酸又はメタクリル酸の3元重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、並びにそれらの混合物などが挙げられる。
【0084】
また、フッ素原子含有高分子も低屈折率バインダーとして好ましい。好ましいものとしては、フルオロオレフィンを必須成分とし、アルキルビニルエーテル、アリサイクリックビニルエーテル、ヒドロキシビニルエーテル、オレフィン、ハロオレフィン、不飽和カルボン酸およびそのエステル、およびカルボン酸ビニルエステルから選ばれる1種もしくは2種以上の不飽和単量体を共重合成分とする有機溶媒に可溶性の重合体である。好ましくは、その質量平均分子量が5,000〜200,000で、またフッ素原子含有量が5〜70質量%であることが望ましい。
【0085】
フッ素原子含有高分子におけるフルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどが使用される。また、他の共重合成分であるアルキルビニルエーテルとしては、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなど、アリサイクリックビニルエーテルとしてはシクロヘキシルビニルエーテルおよびその誘導体、ヒドロキシビニルエーテルとしてはヒドロキシブチルビニルエーテルなど、オレフィンおよびハロオレフィンとしてはエチレン、プロピレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど、カルボン酸ビニルエステルとしては酢酸ビニル、n−酪酸ビニルなど、また不飽和カルボン酸およびそのエステルとしては(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸、および(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸のC1からC18のアルキルエステル類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のC2からC8のヒドロキシアルキルエステル類、およびN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらラジカル重合性単量体はそれぞれ単独でも、また2種以上組み合わせて使用しても良く、更に必要に応じて該単量体の一部を他のラジカル重合性単量体、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリルなどのビニル化合物と代替しても良い。また、その他の単量体誘導体として、カルボン酸基含有のフルオロオレフィン、グリシジル基含有ビニルエーテルなども使用可能である。
【0086】
前記したフッ素原子含有高分子の具体例として、例えば水酸基を有する有機溶媒可溶性の「ルミフロン」シリーズ(例えばルミフロンLF200、重量平均分子量:約50,000、旭硝子社製)が挙げられる。この他にも、ダイキン工業(株)、セントラル硝子(株)、ペンウオルト社などからも有機溶媒可溶性のフッ素原子含有高分子が上市されており、これらも使用することができる。
【0087】
これらのバインダーは、非3次元架橋構造を形成するものが多い。次に、3次元架橋構造を形成する構造のバインダーについて述べる。
【0088】
(3次元架橋構造を形成するバインダー)
また、上記のバインダーは非3次元架橋構造を形成するものが多いが、本発明の光記録材料には3次元架橋構造を形成する構造のバインダーを用いることもできる。3次元架橋構造を形成する構造のバインダーは、塗膜性、膜強度、記録性能の向上という点で好ましい。なお、「3次元架橋構造を形成する構造のバインダー」を「マトリックス」と呼ぶ。
上記マトリックスは、その3次元架橋構造を形成する成分を含み、本発明における該成分は熱硬化性化合物を含むことができる。前記硬化性化合物としては、熱硬化性化合物、触媒などを使用して光照射により硬化する光硬化性化合物を用いることができ、熱硬化性化合物が好ましい。
【0089】
本発明に用いる熱硬化性マトリックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、イソシアネート化合物とアルコール化合物から形成されるウレタン樹脂やオキシラン化合物から形成されるエポキシ化合物、メラミン化合物、フォルマリン化合物、(メタ)アクリル酸やイタコン酸等の不飽和酸のエステル化合物やアミド化合物を重合して得られる重合体などが挙げられる。中でもイソシアネート化合物とアルコール化合物から形成されるポリウレタンマトリックスが好ましく、記録の保持性から考えて、多官能イソシアネートと多官能アルコールから形成されるポリウレタンマトリックスが最も好ましい。
【0090】
以下に、ポリウレタンマトリックスを形成することができる、多官能イソシアネートおよび多官能アルコールについて具体例を述べる。
前記多官能イソシアネートとしては、具体的には、ビスシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレン−1,3−ジイソシアネート、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、1−メトキシフェニレン−2,4−ジイソシアネート、1−メチルフェニレン−2,4−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ビフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシビフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、シクロブチレン−1,3−ジイソシアネート、シクロペンチレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキシレン−2,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキシレン−2,6−ジイソシアネート、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチルシクロヘキサン、シクロヘキサン−1,3−ビス(メチルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、ドデカメチレン−1,12−ジイソシアネート、フェニル−1,3,5−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,5,4’−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−2,4’,4”−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,2’,4’−テトライソシアネート、ジフェニルメタン−2,5,2’,5’−テトライソシアネート、シクロヘキサン−1,3,5−トリイソシアネート、シクロヘキサン−1,3,5−トリス(メチルイソシアネート)、3,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3,5−トリス(メチルイソシアネート)、1,3,5−トリメチルシクロヘキサン−1,3,5−トリス(メチルイソシアネート)、ジシクロヘキシルメタン−2,4,2’−トリイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4,4’−トリイソシアネートリジンジイソシアネートメチルエステル、またはこれらの有機イソシアネート化合物の化学量論的過剰量と多官能性活性水素含有化合物との反応により得られる両末端イソシアネートプレポリマー、などが挙げられる。これらの中でも、ビスシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
前記多官能アルコールとは、多官能アルコール単独であってもよく、他の多官能アルコールと混合状態であってもよい。多官能アルコールとしては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、テトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノール類、またはこれらの多官能アルコールをポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、デカントリオール等のトリオール類などのこれらの多官能アルコールをポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合物、などが挙げられる。
【0092】
上記色素モノマーを用いた光記録用組成物における前記マトリックス形成成分の含有量は、10〜95質量%が好ましく、35〜90質量%がより好ましい。
【0093】
〔色素発色により屈折率/蛍光変調する潜像を形成する材料〕
色素発色により屈折率/蛍光変調する潜像を形成する材料としては、酸化反応により発色する色素前駆体を含むものが挙げられる。
酸化反応により発色する色素前駆体は、酸化反応により吸光度が増大する化合物であれば特に限定はないが、ロイコキノン化合物類、チアジンロイコ化合物類、オキサジンロイコ化合物類、フェナジンロイコ化合物類およびロイコトリアリールメタン化合物類のいずれかの化合物を少なくとも1種類以上含むことが好ましい。
前記ロイコキノン化合物類、チアジンロイコ化合物類、オキサジンロイコ化合物類、フェナジンロイコ化合物類、ロイコトリアリールメタン化合物類の好ましい例としては、上記の化合物が挙げられ、それらを用いることができる。
以上、色素発色により屈折率/蛍光変調する潜像を形成する材料については、特開2005−320502号公報により詳細に記載されている。
【0094】
〔重合により屈折率/蛍光変調する潜像を形成する材料〕
重合により屈折率変調する潜像を形成する材料としては、
1)前記2光子吸収化合物の励起状態から、電子移動またはエネルギー移動することにより、元の状態から吸収が長波長化しかつ2光子吸収化合物の線形吸収のモル吸光係数が5000以下の波長域に吸収を有する発色体となることができる色素前駆体、
2)前記2光子吸収化合物の励起状態から電子移動またはエネルギー移動することにより、重合性化合物の重合を開始することができる重合開始剤、
3)重合性化合物、および
4)バインダー
からなる。
2)重合開始剤、3)重合性化合物、および4)バインダーについては、前述のものと同様のものであるため、本項目においては、「1)前記2光子吸収化合物の励起状態から、電子移動またはエネルギー移動することにより、元の状態から吸収が長波長化しかつ2光子吸収化合物の線形吸収のモル吸光係数が5000以下の波長域に吸収を有する発色体となることができる色素前駆体」(以下単に色素前駆体とも称す)について、詳細に述べる。
【0095】
本項目における色素前駆体は、2光子吸収化合物または発色体励起状態から直接電子移動またはエネルギー移動することにより、あるいは2光子吸収化合物または発色体励起状態から酸発生剤または塩基発生剤に電子移動またはエネルギー移動することにより発生した酸または塩基により、元の状態から吸収が長波長化した発色体となることができる色素前駆体であることが好ましい。
本項目における色素前駆体を用いた2光子吸収光記録材料は、屈折率変調により記録を行うことが好ましい。つまり、再生時には、発色体が再生光波長に吸収を有さないか、ほとんど吸収を有さないことが好ましい。
したがって、該色素前駆体は、再生光波長に吸収を有さずに、それよりも短波長側に吸収を有する発色体となることが好ましい。
または一方で、再生光波長に吸収を有する場合でも、潜像を励起することにより重合を起こす工程またはその後の定着の際に発色体が分解してその吸収及び増感機能を失うことも好ましい。
【0096】
本項目における色素前駆体として好ましくは、以下の組み合わせが挙げられる。
A)少なくとも色素前駆体としての酸発色型色素前駆体と、さらに酸発生剤を含む組み合わせ、必要によりさらに酸増殖剤を含む組み合わせ。
B)少なくとも色素前駆体としての塩基発色型色素前駆体と、さらに塩基発生剤を含む組み合わせ、必要によりさらに塩基増殖剤を含む組み合わせ。
C)2光子吸収化合物または発色体励起状態との電子移動またはエネルギー移動により共有結合を切断する機能を有する有機化合物部位と、共有結合している際と放出された際に発色体となる特徴を有する有機化合物部位が共有結合している化合物を含む場合。あるいはさらに塩基を含む組み合わせ。
D)2光子吸収化合物または発色体励起状態との電子移動により反応し、吸収形を変化させることができる化合物を含む場合。
【0097】
いずれの場合も2光子吸収化合物または発色体励起状態からのエネルギー移動機構による場合は、2光子吸収化合物または発色体の1重項励起状態からエネルギー移動が起こるフェルスター型機構でも、3重項励起状態からエネルギー移動が起こるデクスター型機構でもどちらでも良い。
その際、エネルギー移動が効率良く起こるためには、2光子吸収化合物または発色体の励起エネルギーが、色素前駆体の励起エネルギーよりも大きいことが好ましい。
【0098】
一方、2光子吸収化合物または発色体励起状態からの電子移動機構の場合は、2光子吸収化合物または発色体の1重項励起状態から電子移動が起こる機構でも、3重項励起状態から電子移動が起こる機構でもどちらでも良い。
また、2光子吸収化合物または発色体励起状態が色素前駆体、酸発生剤または塩基発生剤に電子を与えても、電子を受け取っても良い。2光子吸収化合物または発色体励起状態から電子を与える場合、電子移動が効率良く起こるためには、2光子吸収化合物または発色体の励起状態における励起電子の存在する軌道(LUMO)エネルギーが、色素前駆体、酸発生剤または塩基発生剤のLUMO軌道のエネルギーよりも高いことが好ましい。
2光子吸収化合物または発色体励起状態が電子を受け取る場合、電子移動が効率良く起こるためには、2光子吸収化合物または発色剤の励起状態におけるホールの存在する軌道(HOMO)エネルギーが、色素前駆体、酸発生剤または塩基発生剤のHOMO軌道のエネルギーよりも低いことが好ましい。
【0099】
以下に色素前駆体の好ましい組み合わせについて詳しく説明していく。
まず、色素前駆体が酸発色型色素前駆体であり、さらに酸発生剤を含む場合について説明する。
その際、酸発生剤とは、2光子吸収化合物または発色体励起状態からのエネルギー移動または電子移動により酸を発生することができる化合物である。酸発生剤は暗所では安定であることが好ましい。本項目における酸発生剤は2光子吸収化合物または発色剤励起状態からの電子移動により酸を発生することができる化合物であることが好ましい。
本項目の色素前駆体における酸発生剤として好ましくは以下の6個の系が挙げられ、好ましい例は先述したカチオン重合開始剤と同じである。
【0100】
すなわち、1)トリハロメチル置換トリアジン系酸発生剤、2)ジアゾニウム塩系酸発生剤、3)ジアリールヨードニウム塩系酸発生剤、4)スルホニウム塩系酸発生剤、5)金属アレーン錯体系酸発生剤、6)スルホン酸エステル系酸発生剤が好ましく、より好ましくは、3)ジアリールヨードニウム塩系酸発生剤、4)スルホニウム塩系酸発生剤、6)スルホン酸エステル系酸発生剤、が挙げられる。
なお、カチオン重合と酸発色型色素前駆体を同時に用いる時は、カチオン重合開始剤と酸発生剤は同じ化合物がその機能を果たすことが好ましい。なお、これらの酸発生剤は、必要に応じて任意の比率で2種以上の混合物として用いてもよい。
【0101】
次に、本項目の色素前駆体が酸発色型色素前駆体であり、さらに酸発生剤を含む場合における酸発色型色素前駆体について説明する。
本項目における酸発色型色素前駆体は、酸発生剤により発生した酸により、元の状態から吸収が変化した発色体となることができる色素前駆体である。本項目の酸発色型色素前駆体としては、酸により吸収が長波長化する化合物が好ましく、酸により無色から発色する化合物がより好ましい。
【0102】
酸発色型色素前駆体として好ましくは、トリフェニルメタン系、フタリド系(インドリルフタリド系、アザフタリド系、トリフェニルメタンフタリド系を含む)、フェノチアジン系、フェノキサジン系、フルオラン系、チオフルオラン系、キサンテン系、ジフェニルメタン系、クロメノピラゾール系、ロイコオーラミン、メチン系、アゾメチン系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、フルオレン系、スピロピラン系の化合物が挙げられ、より好ましくはラクトン、ラクタム、オキサジン、スピロピラン等の部分構造を有するロイコ色素であり、フルオラン系、チオフルオラン系、フタリド系、ローダミンラクタム系、スピロピラン系の化合物が挙げられる。これらの化合物の具体例は、例えば特開2002−156454およびその引用特許、特開2000−281920、特開平11−279328、特開平8−240908等に開示されている。
【0103】
本項目の酸発色型色素前駆体から生成する色素はキサンテン色素、フルオラン色素、トリフェニルメタン色素であることが好ましい。
なお、これらの酸発色型色素前駆体は、必要に応じて任意の比率で2種以上の混合物として用いてもよい。
本発明で用いる酸発色型色素前駆体の好ましい具体例としては、上記に記載した化合物が挙げられ、それらを用いることができる。
【0104】
本項目の色素前駆体群が、少なくとも色素前駆体としての酸発色型色素前駆体と、酸発生剤を含む時、さらに酸増殖剤を含んでも良い。
酸増殖剤は、酸が存在しない場合は安定であるのに対し、酸が存在すると分解して酸を放出し、その酸でまた別の酸増殖剤を分解させてまた酸を放出する、というように酸発生剤により発生した小量の酸をトリガーとして酸を増殖する化合物である。
該酸増殖剤の好ましい例としては、特開2005−97538号公報にて、一般式(34−1)〜(34−6)で示される構造の化合物が挙げられる。より好ましい具体例としては、同段落0299〜0301に示される化合物が挙げられる。
酸増殖時には加熱することが好ましいため、潜像を励起することにより重合を起こす工程またはそれとは別の定着工程にて熱処理することが好ましい。
【0105】
次に、色素前駆体が塩基発色型色素前駆体であり、さらに塩基発生剤を含む場合について説明する。
その際、塩基発生剤とは、2光子吸収化合物または発色体励起状態からのエネルギー移動または電子移動により塩基を発生することができる化合物である。塩基発生剤は暗所では安定であることが好ましい。本項目における塩基発生剤は、2光子吸収化合物または発色体励起状態からの電子移動により塩基を発生することができる化合物であることが好ましい。
本項目の塩基発生剤は、光によりブレンステッド塩基を発生することが好ましく、有機塩基を発生することがさらに好ましく、有機塩基としてアミン類を発生することが特に好ましい。
本項目の色素前駆体における塩基発生剤として好ましい例は、先述したアニオン重合開始剤用塩基発生剤と同じである。
なお、アニオン重合と塩基発色型色素前駆体を同時に用いる時は、アニオン重合開始剤と塩基発生剤は同じ化合物がその機能を果たすことが好ましい。
なお、これらの塩基発生剤は、必要に応じて任意の比率で2種以上の混合物として用いてもよい。
【0106】
次に、本項目における色素前駆体が塩基発色型色素前駆体であり、さらに塩基発生剤を含む場合における塩基発色型色素前駆体について説明する。
本項目における塩基発色型色素前駆体は、塩基発生剤により発生した塩基により、元の状態から吸収が変化した発色体となることができる色素前駆体である。
本項目の塩基発色型色素前駆体としては、塩基により吸収が長波長化する化合物が好ましく、塩基により無色から発色する化合物がより好ましい。
本項目における塩基発色型色素前駆体の好ましい具体例としては、上記に記載した化合物が挙げられ、それらを用いることができる。
【0107】
本項目の色素前駆体が、塩基発色型色素前駆体であるとき、塩基発生剤の他に、さらに塩基増殖剤を含んでも良い。
本項目の塩基増殖剤は、塩基が存在しない場合は安定であるのに対し、塩基が存在すると分解して塩基を放出し、その塩基でまた別の塩基増殖剤を分解させてまた塩基を放出する、というように塩基発生剤により発生した小量の塩基をトリガーとして塩基を増殖する化合物である。
塩基増殖剤としては、特開2005−97538号公報にて、一般式(34−1)〜(34−6)、同段落0287より示される構造の化合物が挙げられる。より好ましい具体例としては、同段落0299〜0301に示される化合物が挙げられる。
塩基増殖時には加熱することが好ましいため、塩基増殖剤を用いる場合は、潜像を励起することにより重合を起こす工程またはそれとは別の定着工程にて熱処理することが好ましい。
【0108】
次に、本項目の色素前駆体が、2光子吸収化合物または発色体励起状態との電子移動またはエネルギー移動により共有結合を切断する機能を有する有機化合物部位と、共有結合している際と放出された際に発色体となる特徴を有する有機化合物部位が共有結合している化合物である場合について説明する。
本項目に用いることができる化合物としては、特開2005−97538号公報にて一般式(32)、より具体的には同段落0326〜0348で示された構造の化合物が挙げられる。
本発明の2光子吸収光記録材料は、生成する解離型色素を解離させる目的で、必要によりさらに塩基を含むことも好ましい。塩基は有機塩基でも無機塩基でも良く、好ましくは例えば、アルキルアミン類、アニリン類、イミダゾール類、ピリジン類、炭酸塩類、水酸化物塩類、カルボン酸塩類、金属アルコキシドなどが挙げられる。あるいは、それらの塩基を含むポリマーも好ましく挙げられる。
【0109】
次に、本項目の色素前駆体が2光子吸収化合物または発色体励起状態との電子移動により反応し吸収形を変化させることができる化合物である場合を説明する。前記の変化を起こすことができる化合物は、いわゆる「エレクトロクロミック化合物」として総称されている。
本項目で色素前駆体として用いるエレクトロクロミック化合物として好ましくは、ポリピロール類(好ましくは例えばポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(N−メチルインドール)、ポリピロロピロール)、ポリチオフェン類(好ましくは例えばポリチオフェン、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリイソチアナフテン、ポリジチエノチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン)、ポリアニリン(好ましくは例えばポリアニリン、ポリ(N−ナフチルアニリン)、ポリ(o−フェニレンジアミン)、ポリ(アニリン−m−スルホン酸)、ポリ(2−メトキシアニリン)、ポリ(o−アミノフェノール))、ポリ(ジアリ−ルアミン)、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、Coピリジノポルフィラジン錯体、Niフェナントロリン錯体、Feバソフェナントロリン錯体である。
【0110】
またさらに、ビオローゲン類、ポリビオローゲン類、ランタノイドジフタロシアニン類、スチリル色素類、TNF類、TCNQ/TTF錯体類、Ruトリスビピリジル錯体類等のエレクトロクロミック材料も好ましい。
また、色素前駆体が2光子吸収化合物または発色体励起状態との電子移動により反応し吸収形を変化させることができる化合物である場合、本項目の色素前駆体は少なくとも特開2005−97538号公報にて一般式(37)、より具体的には同段落0352〜0352で表される構造の化合物であることが好ましい。好ましい具体例としては、同段落0354の化合物が挙げられる。
本項目の色素前駆体は市販品であるか、あるいは公知の方法により合成することができる。
【0111】
本発明の2光子吸収光記録材料には、2光子吸収化合物または発色体のラジカルカチオンを還元する能力を有する電子供与性化合物、もしくは2光子吸収化合物または発色体のラジカルアニオンを酸化する能力を有する電子受容性化合物を好ましく用いることができる。特に電子供与性化合物の使用は発色速度向上の点でより好ましい。
本発明に用いる電子供与性化合物の好ましい例としては、特開2005−97538号公報の段落0357に示される化合物や、上記〔色素発色または蛍光色素発色により屈折率または蛍光変調する材料〕で用いることができる例として示した化合物が例として挙げられる。一方、本発明に用いる電子受容性化合物の好ましい例としては、同公報段落0358に示される化合物及び特開2007−87532号の段落2022〜0212に示される化合物が挙げられる。
電子供与性化合物の酸化電位は2光子吸収化合物または発色体の酸化電位、もしくは2光子吸収化合物または発色体の励起状態の還元電位よりも卑(マイナス側)であることが好ましく、電子受容性化合物の還元電位は2光子吸収化合物または発色体の還元電位、もしくは2光子吸収化合物または発色体の励起状態の酸化電位よりも貴(プラス側)であることが好ましい。
【0112】
以上、重合により屈折率/蛍光変調する潜像を形成する材料については、特開2005−97538号公報により詳細に記載されている。
【0113】
〔その他の成分〕
本発明の2光子吸収光記録材料にはさらにバインダーを用いることができる。本発明の高分子組成物に用いるポリマーマトリックスとしては特に制限はなく、有機高分子化合物でも無機高分子化合物でもよい。有機高分子化合物としては、溶媒可溶性の熱可塑性重合体が好ましく、単独でか又は互いに組合せて使用することができ、該高分子組成物に分散される各種成分と相溶性の良いものが好ましい。
【0114】
本発明の記録材料に用いるバインダーとしては、上記〔重合性基を有する色素の重合により屈折率変調する材料〕項にて用いることができるバインダーの好ましい例を全て用いることができる。その他の具体例としては、特開2005−320502公報中、段落0022に記載されている化合物(アクリレート及びアルファーアルキルアクリレートエステル及び酸性重合体及びインターポリマー、ポリビニルエステル、エチレン/酢酸ビニル共重合体、飽和及び不飽和ポリウレタン、ブタジエン及びイソプレン重合体及び共重合体、ポリグリコールの高分子量ポリ酸化エチレン、エポキシ化合物、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリカーボネート、ノルボルネン系ポリマー、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等)が挙げられる。また、同段落に記載のポリスチレン重合体およびその共重合体、コポリエステルのポリメチレングリコールと芳香族酸化合物の反応生成物から製造されたポリマーとその混合物、ポリN − ビニルカルバゾール及びその共重合体、カルバゾール含有重合体等が挙げられる。さらに、同公報中、段落0023〜0024に記載のフッ素原子含有高分子も好ましい具体例として挙げられる。
【0115】
本発明に用いるバインダーとしてはアクリレート及びアルファーアルキルアクリレートエステル、ポリスチレン、ポリアルキルスチレン、ポリスチレン共重合体が好ましく、アクリレート、アルファーアルキルアクリレート、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体が検出感度の向上という点でさらに好ましい。これら具体例としては、アクリレート及びアルファーアルキルアクリレートエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンゼン環を持った(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物(メタ)アクリレート等が挙げられる。特に好ましいベンゼン環を持った(メタ)アクリレートは、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートである。これらの単量体は1種類のみ用いても2種類以上を併用してもよい。(メタ)アクリレート系共重合体は、アルキル(メタ)アクリレート、ベンゼン環を持った(メタ)アクリレート、窒素を含むラジカル重合性単量体と共重合可能な他の共重合性単量体を共重合させてもよく、そのような他の共重合性単量体としては、アリルグリシジルエーテル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類、グリシジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(無水)マレイン酸、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、等が挙げられる。親水性極性基を持つ化合物を共重合してもよく、極性基としては、−SO3M、−PO(OM)2、−COOM(Mは水素原子、アルカリ金属あるいはアンモニウムを表す)。
【0116】
ポリアルキルスチレン化合物としては、ポリメチルスチレン、ポリエチルスチレン、ポリプロピルスチレン、ポリブチルスチレン、ポリイソブチルスチレン、ポリペンチルスチレン、ヘキシルポリスチレン、ポリオクチルスチレン、ポリ2−エチルヘキシルスチレン、ポリラウリルスチレン、ポリステアリルスチレン、ポリシクロヘキシルスチレン、ベンゼン環を持った(メタ)アクリレートとしては、ポリベンジルスチレン、ポリフェノキシエチルスチレン、ポリフェノキシポリエチレングリコールスチレン、ポリノニルフェノールスチレン等が挙げられる。アルキルの位置はα、パラが好ましい。これらの単量体は1種類のみ用いても2種類以上を併用してもよい。ポリスチレン共重合体は、共役ジエン化合物、アルキルスチレン、ベンゼン環を持ったスチレン、窒素を含むラジカル重合性単量体と共重合可能な他の共重合性単量体を共重合させてもよく、そのような他の共重合性単量体としては、アセチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、ポリエチレン、アリルグリシジルエーテル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、等が挙げられる。
【0117】
本発明の2光子吸収光記録材料には、保存時の保存性を向上させるために熱安定剤を添
加することができる。
有用な熱安定剤にはハイドロキノン、フェニドン、p−メトキシフェノール、アルキルおよびアリール置換されたハイドロキノンとキノン、カテコール、t−ブチルカテコール、ピロガロール、2 -ナフトール、2 , 6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、フェノチアジン、およびクロルアニールなどが含まれる。Pazos氏の米国特許第4,168,982号中に述べられた、ジニトロソダイマ類もまた有用である。
本発明の2光子吸収光記録材料には、該光記録材料の接着性、柔軟性、硬さ、およびその他の機械的諸特性を変えるために可塑剤を用いることができる。可塑剤としては例えば、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジエチルセバケート、ジブチルスベレート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフタレート等が挙げられる。
【0118】
本発明の2光子吸収光記録材料は通常の方法で調製されてよい。例えば上述の必須成分および任意成分をそのままもしくは必要に応じて溶媒を加えて調製することができる。
溶媒としては例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールジアセテート、乳酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶媒、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールなどのフッ素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、N、N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒などが挙げられる。
【0119】
本発明の2光子吸収光記録材料は、スピンコーター、ロールコーターまたはバーコーターなどを用いることによって基板上に直接塗布することも、あるいはフィルムとしてキャストしついで通常の方法により基板にラミネートすることもでき、それらにより2光子吸収光記録材料とすることができる。
ここで、「基板」とは、任意の天然又は合成支持体、好適には柔軟性又は剛性フィルム、シートまたは板の形態で存在することができるものを意味する。
基板として好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、樹脂下塗り型ポリエチレンテレフタレート、火炎又は静電気放電処理されたポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラス等である。
使用した溶媒は乾燥時に蒸発除去することができる。蒸発除去には加熱や減圧を用いても良い。
【0120】
さらに、2光子吸収光記録材料の上に、酸素遮断のための保護層を形成してもよい。保護層は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートまたはセロファンフィルムなどのプラスチック製のフィルムまたは板を静電的な密着、押し出し機を使った積層等により貼合わせるか、前記ポリマーの溶液を塗布してもよい。また、ガラス板を貼合わせてもよい。また、保護層と感光膜の間および/または、基材と感光膜の間に、気密性を高めるために粘着剤または液状物質を存在させてもよい。
【0121】
さらに、本発明の2光子吸収光記録材料は、記録成分を含む記録層と、記録成分を含まない非記録層が互いに積層した多層構造を有していてもよい。記録層と非記録層とが交互に積層された構造を有することで、記録層間に非記録層が介在するので、記録層面に垂直な方向での記録領域の拡大が遮断される。従って、記録層を照射光の波長オーダーの厚みに制約しても、クロストークを小さくすることが可能である。この結果、記録層自体の厚みを薄くすることができるとともに、非記録層を含めた記録層の層間距離を縮小することができる。
【0122】
以上の記録層の層厚としては、記録時における記録層の屈折率変化量と、光の入射方向
に対する各記録層の表面および裏面での反射光による干渉条件を満たす必要があるため、用いる記録層材料の屈折率変化量に応じて、50nm以上5000nm以下の範囲内とすることが好ましく、100nm以上1000nm以下の範囲内であることがより好ましく、100nm以上500nm以下あることがさらに好ましい。
【0123】
非記録層は、記録光の照射によって吸収スペクトルまたは発光スペクトルに変化が生じない材料を薄膜状に形成した層である。
非記録層に用いる材料としては、多層構造形成における製造の容易さの観点から、記録
層に用いられている材料を溶解しない溶媒に溶解する材料であることが好ましく、そのような材料の中でも、可視光領域に吸収をもたない透明ポリマー材料が好ましい。このよう
な材料としては、水溶性ポリマーが好適に用いられる。
【0124】
前記水溶性ポリマーの具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン等を挙げることができる。中でも、好ましくは、PVA、ポリビニルピリジン、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ゼラチンであり、最も好ましくは、PVAである。
【0125】
非記録層は、その材料として水溶性ポリマーを使用する場合、水溶性ポリマーを水に溶
解して得られた塗布液を、例えば、スピンコートなどの塗布法により塗布することにより
形成することができる。
【0126】
以上の非記録層の層厚としては、該非記録層を挟む記録層間のクロストークを低減するため、記録および再生に用いる光の波長、記録パワー、再生パワー、レンズのNA、および記録層材料の記録感度の観点から、1μm以上50μm以下の範囲内とすることが好ましく、1μm以上20μm以下の範囲内であることがより好ましく、1μm以上10μm以下あることがさらに好ましい。
【0127】
また、記録層と非記録層の交互に積層した対の数は、該2光子吸収記録媒体に求められる記録容量と、用いる光学系によりきまる収差の観点から、9以上200以下の範囲内であることが好ましく、10以上100以下の範囲であることがより好ましく、10以上30以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0128】
以下に、本発明の具体的な実施例について実験結果を基に説明する。勿論、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0129】
<2光子記録材料の調製>
(2光子吸収記録材料1の調製)
以下の組成で、2光子吸収記録材料1を調製した。
【0130】
2光子吸収化合物:D−11 1.0質量部
色素前駆体:DP−1 5.0質量部
酸発生剤:PAG−1 5.0質量部
バインダ:ポリスチレン 100質量部
塗布溶剤:ジクロロメタン 2800質量部
【0131】
(2光子吸収記録材料2の調製)
上記の2光子吸収化合物をD−11の代わりにD−45を用いた以外は2光子吸収記録材料1と同様にして2光子吸収記録材料2を調製した。
【0132】
(比較用2光子吸収記録材料1(比較材料1)の調製)
上記に記載の2光子吸収記録材料1の2光子吸収化合物をD−11の替わりに特開2007−87532号公報に記載の2光子吸収化合物D−128を用いる以外は2光子吸収記録材料1と同様にして比較材料1を調製した。
なお、使用した色素前駆体:DP−1、酸発生剤:PAG−1、モノマー:M−1、重合開始剤:I−1は、以下の通りのものである。
【0133】
【化11】

【0134】
<2光子吸収記録媒体の作製>
本発明の2光子吸収記録媒体は、上記2光子吸収記録材料1〜2を、それぞれ、スライドグラス上にスピンコートすることで薄膜状フィルムとして作製した。なお、比較用媒体も同様にしてスピンコート法により作製した。2光子吸収記録材料1から得られた記録媒体を2光子吸収記録媒体1とした。その他の記録媒体についても同様である。
【0135】
<2光子記録性能の評価>
2光子記録には、1045nmのフェムト秒レーザー(パルス幅200fs、繰返し2.85GHz、ピークパワー1kW)の第二高調波522nmを用いた。記録信号の再生は、405nmの半導体レーザー光照射による反射光シグナルを読み出した。2光子記録か否かの判別には、再生シグナルの記録光強度依存性を測定し、記録光強度に対してシグナル強度が2乗に比例した場合に2光子吸収による記録が行われたと評価した(2乗特性評価)。結果を下記表1に示す。
【0136】
【表1】

【0137】
2光子吸収記録媒体1、2においては2光子記録が可能であったが、比較媒体1では、特開2007−87532に記載の2光子吸収化合物D−128が、本発明に用いた2光子記録波長522nmに線形吸収を有するため、2光子記録が不可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物を含有する2光子吸収材料。
【化1】

(一般式(I)中、Arは置換または無置換の芳香族炭化水素環を表し、HetおよびHetはそれぞれ独立に芳香族へテロ環を表し、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜30の置換基を表し、nは0または1を表す。)
【請求項2】
前記HetおよびHetが、それぞれ独立に1,2,4−オキサジアゾール環、1、3、4−オキサジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環または1、3、4−チアジアゾール環である、請求項1に記載の2光子吸収材料。
【請求項3】
前記一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(II)で表される化合物である、請求項1または2に記載の2光子吸収材料。
【化2】

(一般式(II)中、Arは置換もしくは無置換のパラフェニレンまたはメタフェニレンを表す。X〜Xはそれぞれ独立に置換基を表す。j、kはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。環Aおよび環Bはそれぞれ1,2,4−オキサジアゾール−3,5−ジイル基、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル基、1,2,4−チアジアゾール−3,5−ジイル基または1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル基を表す。)
【請求項4】
前記Het、Het、環Aおよび環Bが、それぞれ独立に1,2,4−オキサジアゾール環または1、3、4−オキサジアゾール環を表す、請求項2または3に記載の2光子吸収材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の2光子吸収材料を含む2光子吸収記録材料。
【請求項6】
請求項5に記載の2光子吸収記録材料を含む2光子吸収記録媒体。
【請求項7】
請求項5に記載の2光子吸収記録材料を含む記録層を有する多層記録媒体。
【請求項8】
請求項5に記載の2光子吸収記録材料を含む記録層と記録光の照射によって変化が生じない非記録層とが交互に積層された構造を有することを特徴とする2光子吸収記録媒体。

【公開番号】特開2010−237628(P2010−237628A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88505(P2009−88505)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】