説明

2層構造の菓子の製造方法

【課題】 包餡菓子の製造に際し、包餡機を使用して、工業的に簡便且つ安定的にタルトケーキができる製造方法を提供すること。具体的には、簡単に焼成でき、しかも生地が完全包餡なので、冷凍保存しても乾燥、風味劣化等が少なく、生産性も良好で風味豊かな、タルト型を用いて焼成してなる2層構造のケーキが安定的に製造方法を提供すること。
【解決手段】 小麦粉100重量部に対して、卵5〜15重量部、水5〜15重量部、油脂40〜60重量部、砂糖25〜45重量部を含む外生地と、小麦粉100重量部に対して、卵210〜245重量部、クリームチーズ1800〜2150重量部、生クリーム250〜300重量部、砂糖150〜175重量部を含む内生地を包餡後、焼成してなる2層構造の菓子を、外生地、内生地共に−5℃〜−10℃で冷却することを特徴とする2層構造の菓子の製造方法に従って製造すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
包餡機を使った従来に無い、タルト型を用いて焼成してなる2層構造のケーキの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タルト型を用いて焼成してなる2層構造のケーキは、一般的に焼成型に外皮生地を予め敷き込み、その上に内皮生地を充填し焼成して型からはずし商品となる。つまり、外生地と内生地は別々に成型、充填しなければならず、包餡機を用いてタルト型を用いて焼成してなる2層構造のケーキを作る技術はこれまでなかった。
【0003】
包餡機を用いた、工業的な菓子の製造としては、パイ・シュー生地が、餡と同程度の粘度が得られるため、包餡機を用いて大量に生地を生産することができる、シュー生地層がパイ生地に包み込まれてなる2層構造の菓子がある(特許文献1)。しかし、配合がタルト生地とは全く異なるため、タルト型を用いて焼成してなる2層構造のケーキの包餡機による安定的な製造法については何の記載も示唆もない。
【特許文献1】登録実用新案第3086215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
包餡機を使って、工業的に簡便且つ安定的にタルト型を用いて焼成してなる2層構造のケーキができる製造方法を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、今回発明した特定の配合、製造方法を用いてタルト型を用いて焼成してなる2層構造のケーキを作製すると、作業性が従来に比べ簡略化でき、しかも焼成前の生地を冷凍保管しても、包餡されているのでケーキ生地(内材)の劣化(乾燥)が抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の第一は、小麦粉100重量部に対して、卵5〜15重量部、水5〜15重量部、油脂40〜60重量部、砂糖25〜45重量部を含む外生地と、小麦粉100重量部に対して、卵210〜245重量部、クリームチーズ1800〜2150重量部、生クリーム250〜300重量部、砂糖150〜175重量部を含む内生地を包餡後、焼成してなる2層構造の菓子の製造方法、に関する。好ましい実施態様は、包餡された球形の生地を冷やし固め、これを半分にカットし焼成用タルト型に入れて焼成することを特徴とする上記記載の2層構造の菓子の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0006】
包餡菓子の製造に際し、包餡機を使用して、簡単に焼成でき、しかも生地が完全包餡なので、冷凍保存しても乾燥、風味劣化等が少なく、生産性も良好で風味豊かな、タルト型を用いて焼成してなる2層構造のケーキが安定的に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明による2層構造のケーキとは、小麦粉、卵、砂糖を主体とする外生地でチーズ、卵、砂糖、小麦粉を主体とする内生地を包餡し、カットして焼成型に詰め焼成したものである。焼成型としては、タルト型を用いることが好ましい。
【0008】
本発明における小麦粉は、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、特級薄力粉等が挙げられるが、中でも薄力粉、特級薄力粉が好ましい。本発明における卵は、特に限定はしないが、液全卵、生卵黄、生卵白、凍結卵黄、凍結卵白等が挙げられ、中でも液全卵を用いることが好ましい。卵の割合は小麦粉100重量部に対して、外生地では好ましくは5〜15重量部、より好ましくは8〜12重量部の範囲内であればよい。内生地では好ましくは210〜245重量部、より好ましくは220〜235重量部の範囲内であればよい。外生地で5重量部より少ないと、生地はまとまりにくく、風味も劣る場合がある。また、内生地で210重量部より少ないと、やはり風味が劣る場合がある。外生地で15重量部より多い場合は、風味は好くなるが、生地がべたつき作業しづらい場合があり好ましくない。また、内生地で245重量部より多いと、やはり風味は良くなるが、生地がゆるみ包餡しづらくなる場合がある。
【0009】
本発明における外生地中の油脂の種類は、特に限定はしないが、牛脂、豚脂、バターなどの動物油、菜種油、コーン油、パーム油、綿実油などの植物油、それらをエステル交換、分別、硬化したものを、単独或いは2種以上混合したものが挙げられるが、中でも常温で固体の油脂が好ましい。油脂の割合は小麦粉100重量部に対して、外生地では好ましくは40〜60重量部、より好ましくは45〜55重量部の範囲内であればよい。40重量部より少ないと、生地がまとまりにくく、食感も硬くなる場合がある。60重量部より多いと、生地がべたつき作業性が悪くなる場合がある。一方、内生地中の油脂は、クリームチーズ、生クリームからの乳脂肪として供給される。
【0010】
本発明における内生地中のクリームチーズは、特にその種類に限定は無いが、フランス産、デンマーク産等が例示できる。クリームチーズの添加量は、内生地中に使用される小麦粉100重量部に対して、1800〜2150重量部が好ましい。添加量が1800重量部よりも少ないと風味が劣る場合があり、2150重量部より多いと味が濃厚過ぎる場合がある。また、内生地中の生クリームは、所謂、乳脂肪入りの生クリームの事であり、生クリームの添加量は、内生地中に使用される小麦粉100重量部に対して、250〜300重量部が好ましい。添加量が250重量部よりも少ないとやはり風味が劣る場合があり、300重量部より多いとやはり味が濃厚過ぎる場合がある。上記範囲の添加量でクリームチーズ及び生クリームが内生地中に含有されると、所望の乳脂肪分量となる。
【0011】
本発明における砂糖は、上白糖、ぶどう糖、果糖、麦芽糖、液糖等が例示できるが、中でも上白糖が好ましい。砂糖の割合は小麦粉100重量部に対して、外生地では好ましくは25〜45重量部、より好ましくは30〜35重量部の範囲内であればよい。25重量部より少ないと、甘さの足りない、淡白な味になる場合がある。45重量部より多いと、甘さが強く、濃厚な味になりすぎる場合がある。内生地では好ましくは150〜175重量部、より好ましくは160〜165重量部の範囲内であればよい。150重量部より少ないと、やはり甘さの足りない、淡白な味になる場合がある。175重量部より多いと、やはり甘さが強く、濃厚な味になりすぎる場合がある。
【0012】
本発明における包餡時の内生地、外生地の割合は、特に制限はないが、1:1(重量:重量)が一般的で、重量も特に制限はないが、内生地と外生地を合わせて50g〜60g程度がカットして焼成した際の形状として好ましい。
【0013】
本発明における生地の製法は、例えば以下の手順で行う。まず外生地であるタルト生地を先に調製しておく。即ち、油脂、砂糖、食塩を擦り合わせる。次に卵、水などの液体類を均一に混合する。次に、予め篩った小麦粉、必要に応じて、膨張剤、香料を順次加え、均一に混合する。包餡機で包餡しやすい固さまで冷却する。次に内生地を調製する。即ち、まずクリームチーズ類を軟らかくほぐしておく。次に砂糖、卵、生クリームを順次加え均一に混合する。次に予め篩った小麦粉、必要に応じて、香料を加え、均一に混合する。外生地同様、包餡機で包餡しやすい固さまで冷却する。次に包餡機で所定の割合、大きさに包餡する。包餡された生地は一旦冷凍して固める。次に包餡された生地を半分にカットして、外生地を型の底になるように入れる。最後に、温度180〜190℃のオーブンで、15〜20分焼成してタルト型を用いて焼成してなる2層構造のケーキを得ることができる。
【実施例】
【0014】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0015】
(実施例1)
マーガリン(商品名:アラアルデンヌガトー、鐘淵化学工業(株)社製)50部、上白糖30部、食塩0.6部を擦り合わせる。次に、全卵12部、水8部、バニラ0.2部を加え混合する。最後に、薄力粉(商品名:バイオレット、日清製粉(株)社製)100部を篩いに通し混合する。この生地を冷却して包餡用の外材(タルト生地)とする。次に、包餡用内材(チーズケーキ生地)として、クリームチーズ(商品名:ノヴァクリームチーズ100、鐘淵化学工業(株)社製)200部、サワークリームペースト(商品名:CCTサワー、鐘淵化学工業(株)社製)400部をペースト状にする。次に、上白糖45部、全卵70部、生クリーム(商品名:フレッシュブレンド50、鐘淵化学工業(株)社製)80部、レモン果汁10部を加え混合する。最後に、薄力粉(商品名:バイオレット、日清製粉(株)社製)30部を篩いに通し混合する。これを冷却後包餡用内材とする。これを先ほどの外材と共に包餡機を使って、約60g(外材部約30g、内材部約30g)に包餡し、一旦−7℃で冷凍して固めた後、半分にカットしたものを型に入れて、180℃で20分焼成した。焼成後のケーキは、外生地であるタルトを底にした綺麗なタルト型を用いて焼成してなる2層構造のチーズケーキが得られた。
【0016】
(実施例2)
実施例1において、外生地/内生地の包餡の割合を外生地/内生地=1/2にした以外は、同様の方法にてタルト型を用いて焼成してなる2層構造のケーキを作製した。形状、食感、口溶けは良好だが、味のバランスでチーズ味が強くなった。
【0017】
(実施例3)
実施例1において、外生地/内生地の包餡の割合を外生地/内生地=2/1にした以外は、同様の方法にてタルト型を用いて焼成してなる2層構造のケーキを作製した。形状、食感、口溶けは良好だが、味のバランスでチーズ味が弱くなった。
【0018】
(比較例1)
実施例1において、外生地、内生地を冷却しない以外は、同様の方法にてタルト型を用いて焼成してなる2層構造のケーキを作製した。包餡状態は悪く、生地はべたつき、内材の粘度が低すぎて重量のばらつきがみられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉100重量部に対して、卵5〜15重量部、水5〜15重量部、油脂40〜60重量部、砂糖25〜45重量部を含む外生地と、小麦粉100重量部に対して、卵210〜245重量部、クリームチーズ1800〜2150重量部、生クリーム250〜300重量部、砂糖150〜175重量部を含む内生地を包餡後、焼成してなる2層構造の菓子の製造方法であって、外生地、内生地共に−5℃〜−10℃で冷却することを特徴とする2層構造の菓子の製造方法。
【請求項2】
包餡された球形の生地を−5℃〜−10℃で冷やし固め、これを半分にカットし焼成用タルト型に入れて焼成することを特徴とする請求項1記載の2層構造の菓子の製造方法。

【公開番号】特開2006−81447(P2006−81447A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268728(P2004−268728)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】