説明

2成分塗料混合物を製造するための方法および装置

本発明は、2成分塗料混合物を製造するデバイスに関する。特に、本発明は、イソシアネート反応性水素原子を有する水性バインダー分散体とポリイソシアネートとから成る水性2成分ポリウレタン塗料エマルジョンを製造する装置に関する。装置は、第1塗料成分(1)と第2塗料成分(2)を混合することによって2成分塗料混合物を製造するミキサー(5)を有して成る。また、装置は、2成分塗料混合物を均一化させるホモジナイザー(7)を含んでいる。かかるホモジナイザー(7)は、ミキサー(5)の下流側に配置されている。本発明では、循環ラインが、ホモジナイザー(7)の出口領域から分岐しており、ホモジナイザー(7)の入口領域へと通じている。従って、ホモジナイザー(7)によって均一化された2成分塗料混合物の一部が循環し、更なる均一化が促進されることになる。更に、本発明は、対応する方法、および製造された塗料でコーティングされた基材にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、2成分塗料混合物を製造するための方法に関しており、特に、イソシアネート反応性水素原子を含んで成る水性バインダー分散体(またはバインダー分散液)とポリイソシアネートとを混合することによって、それらの塗料成分から水性2成分ポリウレタン塗料エマルジョン(または水性2成分ポリウレタン系塗料エマルジョン、aqueous two−component polyurethane coating emulsion)を製造する方法に関している。更に、本発明は、かかる方法を実施するための装置、および本発明の方法で製造された塗料(または塗膜もしくは塗層)で被覆された基材(または基板)にも関している。
【0002】
2成分ポリウレタン塗料(2成分PUR塗料)では、ポットライフ(2成分ポリウレタン塗料を塗布できる期間)が限られているため、塗布(または適用)する直前に2種類の塗料成分が混合される。塗料成分の反応性に応じて、ポットライフは数分〜数時間の間で変化し得る。
【0003】
これまで、かかる2成分系は、有機溶剤の溶液として用いられてきたが、最近では水に分散する2成分系が多く開発されている。一般的には、水に分散する2成分系は、水酸基を含んで成る樹脂成分(バインダー、ポリオール)とポリイソシアネート成分(硬化剤、架橋剤)とから成る。水酸基を有する樹脂成分は、一般的に、水性分散体として存在する一方、ポリイソシアネート成分は、無水の100%の成分として存在するか、または、溶媒溶液として存在する。このような2成分系は、本発明に使用することができ、例えば、欧州特許(EP−A)第358979号、同496205号、同469389号、同5202666号、同540985号、同542105号、同543228号、同548669号、同562282号および同583728号に開示されている。かかる塗料系の不利益な点は、使用目的によっては、純粋な有機溶媒に基づく2成分系で得られるような塗料品質を達成できないことである。かかる不利益な点は、光特性および抵抗に関して特に厳しい要件が存在する用途に特に該当する。
【0004】
高い品質の塗料表面は、できる限り小さい粒子サイズを有する塗料分散体を用いて得ることができることは知られている。従って、水性2成分ポリウレタン塗料で使用されるポリオール分散体は、500nm未満、好ましくは10〜200nmの十分に小さい粒子サイズを有する分散体である。ポリイソシアネート成分は水と反応するために、水の存在下では貯蔵安定性をほとんど有していない。従って、塗料を塗布する直前に、本質的に疎水性を有したイソシアネート成分を分散させている。
【0005】
化学的に変性させて疎水性を施したポリイソシアネート、又は、外部から乳化剤が混ぜられたポリイソシアネートは開発されている。このようなポリイソシアネートは、スタティック・ミキサーを用いることによって1000nm未満の平均粒子サイズになるように直接的に分散できるものの、硬化した塗料フィルムの抵抗は、多くの用途に対して不適当である。それに対して、良好な抵抗を有する塗料フィルムは、疎水性ポリイソシアネート成分を用いることよって得ることができる。
【0006】
イソシアネート成分の分散性は、前存する粒子の表面上で進行する安定化反応によって制限されていることを考慮すれば、できる限り迅速に細かく分散した分散体を得る必要がある。従って、表面安定化が評価できる程に生じない十分に短い時間で分散体を処理する必要がある。特に、熱は、ポリイソシアネート成分と水との反応を促進させるために、分散させる間で加熱を回避しなければならない。
【0007】
欧州特許(EP−B)第0685544号には、イソシアネート反応性水素原子を含んで成るバインダー樹脂およびポリイソシアネートを水と混合させることによって、かかる成分に基づく水性2成分ポリウレタン塗料エマルジョンを製造する方法が開示されている。連続操作において、ポリオール/水分散体がジェット・ディスパーサーに供給される一方、ポリイソシアネートもまたジェット・ディスパーサーに供給されることによって分散処理が行われる。約0.2μmの粒子径の水性ポリオール系エマルジョン中で約0.5μmの粒子径のポリイソシアネートが細かく分散したエマルジョンを得るには、約5MPaの均一化圧力が必要とされる。イソシアネート粒子は、イオン的に変性されたポリオール粒子によって安定化される。乳化剤は必要としない。
【0008】
更に、ドイツ国特許(DE−A)第19933441号には、調節可能なジェット・ディスパーサーの1〜30MPaの圧力でもって、イソシアネート反応性基を含んで成る水性バインダー分散体とポリイソシアネートとを混合し、それによって、かかる2成分に基づく水性2成分ポリウレタン塗料エマルジョンを製造する方法が開示されている。この調節可能なジェット・ディスパーサーには、ドイツ国特許(DE−A)第19933440号に記載されたような操作可能又は閉鎖可能なノズル穴もしくはノズル・スロットが設けられている。かかる製造方法では、最初に、例えば0.1MPaという比較的低い圧力で予備エマルジョンが形成される。そして、調節可能なジェット・ディスパーサー内で1〜30MPaの圧力でもって均一化が行われる。フィードバック制御されるピストン(空気圧シリンダに備えられている)を調整することによって、穴(もしくは複数の穴)又はスロットが開くことになる。このように、分散される材料の流量(または処理量)を連続的に変えることによって、一定した良好な分散状態が得られる。しかしながら、ドイツ国特許(DE−A)第19933441号には、細かく分散した一定の分散状態が得られることになる分散材料の流量は記載されていない。更に、ドイツ国特許(DE−A)第19933441号には、一例として自動車塗装が開示されている。
【0009】
最近の塗布設備では、例えば自動車塗装を行う際に、ロボット(または機械)によって仕上塗装(またはクリアコート)を静電的に行うことが多い。塗料を塗布する際、ロボット・アームによって噴霧ノズルは自動車ボディーの上方を移動するように操作される。長い配管経路を短くするために、また、それに関連する多量の洗浄液(若しくはすすぎ液)または廃液を少なくするために、ロボット・アームに設けられた噴霧ノズルに導入する直前に、ポリイソシアネートを水性ポリオール成分中に連続的に乳化させることが好ましい。このため、移送および加圧に必要な分散ノズルおよびポンプを十分に小さく軽くして、ロボット内に組み込むことができるようにする必要がある。従って、自動車塗装では、仕上塗装にギアポンプが用いられることが好ましい。
【0010】
今日の常套的なギアポンプは、自動車塗装に常套的な仕上塗料の粘度範囲内および常套的な吸引速度では、吐出圧が2.5MPa以下となるように適当に使用することができる。自動車ボディーの形状に起因して、噴霧ノズルの吸引速度は、分散される材料の吸引速度が迅速に制御されるように非常に短い時間間隔で変化する。自動車塗装において典型的な噴霧ノズルの吸引速度は、50〜400g/分である。
【0011】
既知の分散装置および分散方法の不利益な点は、細かく分散したエマルジョンを製造するのに必要な圧力が比較的高いことである。ドイツ国特許(DE−A)第19933440号では、バインダー成分および硬化剤を移送する2つのポンプによって、上流の混合ノズルおよび調整可能なホモジナイジング・ノズルに必要とされる差圧を発生させている。調整可能な分散装置では5MPaの差圧となっている。従って、ギアポンプは、かかる分散圧力に適しているものではない。例えば、ダイヤフラムピストンポンプ等の他のポンプを、そのサイズおよび重量に応じて外部から配置しなければならず、上述の不利益な点がもたらされる。
【0012】
既知の方法の他の不利益な点は、400〜500g/分のオーダーの2個以上の噴霧ノズルを備えた完全な設備に対して流量が低いと、分散状態が明らかに低下し、自動車の塗膜(または塗料)で必要とされる光学的性質の高い条件が満たされなくなることである。
【0013】
更に、ドイツ国特許(DE−A)第19933441号に記載の分散装置の好ましくない点は、かかる分散装置が、ホモジナイジング穴を備えたセラミック・スリーブと、チャンバー内にて移動可能なセラミック・ピストンとから好ましくは構成される点である。ピストンとスリーブとの間のリークを防止するために、セラミック要素を研磨処理に付して非常に精度の良いフィットを実現する必要がある。従って、好ましいフィットとなるように研磨処理に付される可動要素を必要としない分散装置は有利となる。
【0014】
既知の分散方法および分散装置では上述の不利益な点が存在するために、水性2成分ポリウレタン塗料エマルジョンのロボット塗装は、多くの不利益な点を伴っているか、または、全く達成することができない。
【0015】
従って、本発明の目的は、イソシアネート反応性水素原子を含んで成る水性バインダー分散体とポリイソシアネートとを乳化させることによって、水性2成分ポリウレタン塗料エマルジョンを製造する方法であって、上述の不利益な点を有していない方法を提供することである。かかる方法では、分散圧力が比較的小さく、また、分散される材料の流量が比較的少ない条件で、細かく分散したエマルジョンを製造することができる。
【0016】
本発明の更なる目的は、イソシアネート反応性水素原子を含んで成る水性バインダー分散体とポリイソシアネートとを乳化させることによって、水性2成分ポリウレタン塗料エマルジョンを製造する装置であって、分散圧力が比較的小さく、また、分散される材料の流量が比較的少ない条件で、一定した良好な乳化状態を得ることができる装置を提供することである。
【0017】
請求項1の第1段に記載された方法をベースとして、請求項1の特徴、および、それに対応する装置の請求項10の特徴によって上記目的を達成することができる。
【0018】
従って、本発明では、2成分塗料混合物を製造する方法、特に、イソシアネート反応性水素原子を含んで成る水性バインダー分散体とポリイソシアネートとを混合させることによって、それらから水性2成分ポリウレタン塗料エマルジョンを製造する方法であって、
(a)ミキサーで第1塗料成分と第2塗料成分とを混合して2成分塗料混合物を得る工程、および
(b)ホモジナイザーによって2成分塗料混合物を均一化させる工程であって、2成分塗料混合物の少なくとも一部を引き続き再び均一化させる工程
を好ましくは含む方法が提供される。
【0019】
第1塗料成分は、イソシアネート反応性水素原子を含んで成る水性バインダー分散体を含んで成ることが好ましい。また、第2塗料成分はポリイソシアネートを含んでいることが好ましい。しかしながら、本発明は、そのような特定の塗料成分に限定されず、他の塗料成分を用いてもかまわない。但し、便宜上、上述の好ましい塗料成分に基づいて本発明を説明する。
【0020】
本発明では、例えば、2成分ポリウレタン塗料に用いられるバインダーおよび架橋成分を用いることが可能であり、例えば欧州特許(EP−A)第358979号、欧州特許(EP)第496205号、同469389号、同520266号、同540985号、同542105号、同543228号、同548669号、同562282号および同583728号で開示されたバインダーおよび架橋成分を用いることが可能である。
【0021】
イソシアネート反応性水素原子を含んで成る水性バインダー分散体として適当な化合物は、例えば、イソシアネート反応性基を含んで成り、特に1000〜10000g/molの分子量を有するポリアクリレート、ポリエステル、ウレタン変性ポリエステル、ポリエステル、ポリカーボネートまたはポリウレタンである。イソシアネート反応性基としては、好ましくは水酸基である。水性分散体としては、バインダー樹脂が用いられる。
【0022】
ポリイソシアネート成分としては、脂肪族、脂環式化合物、芳香脂肪族および/または芳香族等に導入されるイソシアネート基を有した何れの所望の有機ポリイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネート成分は、20〜1000mPa・sの粘度、好ましくは500mPa・s未満の粘度を一般的に有する。しかしながら、適当な溶剤分でポリイソシアネート成分の粘度を下げる場合には、より高い粘度を有するポリイソシアネートを用いてもよい。
【0023】
使用されるポリイソシアネートは、平均して2.2〜5.0のNCO基および23℃で50〜500mPa・sの粘度を有した、もっぱら脂肪族および/または脂環式化合物に導入されるようなイソシアネート基を有するポリイソシアネートが特に好ましい。本発明では、そのように粘度が低いと、溶剤を全く加えることなく十分に小さい粒子サイズを有した分散体を得ることが可能となる。
【0024】
更に、塗料に関する化学の分野で知られている常套的な添加剤および調整剤を用いてもよい。
【0025】
好ましくは、均一化した2成分塗料混合物の一部をホモジナイザー出口からホモジナイザー入口へと戻りライン(または循環ライン)を介して循環させる(または戻す)ことによって、2成分塗料混合物の均一化を繰り返して行う。従って、循環する2成分塗料混合物は、ホモジナイザーを繰り返し通過することになり、ホモジナイザーの出口では2成分塗料混合物の均一化の程度が相当に増加する。本発明では、2成分塗料混合物を少なくとも2回ホモジナイザーに通過させることが好ましいものの、それよりも多い回数ホモジナイザーに通過させてもよい。
【0026】
好ましくは、ミキサーは混合ノズル形態を有している。例えば、フラット・ジェット・ノズル(flat jet nozzle)が適当である。更に、ドイツ国特許(DE)第19510651号で開示されたようなジェット・ディスパーサーで予備乳化させる場合と同様の機能を有した混合ノズルを用いることができる。しかしながら、ミキサーの設計に関して、本発明は混合ノズルに限定されるわけではなく、別の手法でミキサーを設計してもよい。
【0027】
また、ホモジナイザーは、生じる剪断力で2成分塗料混合物を均一化するジェット・ディスパーサー(または噴流分散機、jet disperser)の形態を有することが好ましい。例えば、ドイツ国特許(DE)第19510651号で開示されたジェット・ディスパーサーを用いてもよい。しかしながら、ホモジナイザーの設計に関して、本発明はジェット・ディスパーサーに限定されるわけではなく、別の手法でホモジナイザーを設計してもよい。例えば、スロットノズル、環状スロットノズルまたは穿孔ノズル(もしくは絞りノズル)を代替的に用いてもよい。
【0028】
2種類の塗料成分はミキサーに供給されるが、好ましくは別個のポンプで2種類の塗料成を個々に供給することが好ましい。この場合、ポンプの最大圧力(または吐出圧)は2.5MPaであることが好ましい。
【0029】
好ましくは、ミキサーとホモジナイザーとの間に更なるポンプが設けられる。かかるポンプは、塗料成分をミキサーに送るいずれのポンプよりも大きい移送能力(または配送能力)を有することが好ましい。このことは、2成分塗料混合物の一部が、ミキサーだけでなく、ミキサーとホモジナイザーとの間のポンプによっても、戻りラインを介してホモジナイザーから移送される点で好ましい。
【0030】
本発明の方法の工程(a)では、イソシアネート反応性水素原子を含んで成る水性バインダー分散体とポリイソシアネートとが混合ノズルに供給されて予備エマルジョン(または予め形成されるエマルジョン、pre−emulsion)が得られるが、好ましくはイソシアネート反応性水素原子を含んで成る水性バインダー分散体とポリイソシアネートとが別個のポンプで個々に供給されることが好ましい。かかるポンプの各々の圧力は、好ましくは2.5MPa以下であり、0.001〜2MPaであることが好ましい。圧力が低いので、比較的サイズの小さいポンプを選択することが可能となる。本発明の方法の好ましい態様では、ポンプはギアポンプである。かかるギアポンプは、比較的小さくて軽量であり、塗布設備のロボット・アームに設けることができる。
【0031】
本発明の方法の工程(b)では、予備エマルジョンが均一化されるが、好ましくはホモジナイジング・ノズル(homogenising nozzle)において2.5MPa以下の圧力、好ましくは0.001〜2MPaの圧力で均一化される。なお、予備エマルジョンは、混合ノズルの下流側に接続されたポンプを更に有するホモジナイジング・ノズルに供給されることが好ましい。このように圧力が低いために、比較的サイズの小さいポンプを選択することが可能となる。従って、本発明の方法の好ましい態様において、ポンプはギアポンプである。かかるギアポンプは、小さくて軽量であるために、塗布設備のロボット・アームに設けることができる。従って、本発明の好ましい態様では、塗料エマルジョンを製造するのに必要とされる装置は、混合ノズルとホモジナイジング・ノズルと3つのポンプとから少なくとも構成されており、かかる装置が、例えばロボットまたはロボット・アーム等の塗布デバイスに配置されることになる。このことは、従来技術として既知の方法(またはプロセス)よりも、供給ラインが短くなり、装置の洗浄(又はすすぎ)がシンプルとなる点で有利である。
【0032】
混合ノズルの下流側に接続されるポンプの移送速度(または送出し速度)は、バインダー分散体を混合ノズルに移送するポンプの移送速度とポリイソシアネートを混合ノズルに移送するポンプの移送速度との合計よりも大きいことが好ましい。塗料エマルジョンの分散される量が、混合ノズルの下流側に接続されたポンプの体積流量よりも小さい場合、過剰な量の塗料エマルジョンが循環することになる。予備エマルジョンの体積流量が小さいと、即ち、バインダー分散体を混合ノズルへと供給するポンプおよびポリイソシアネートを混合ノズルへと供給するポンプの移送速度が小さいと、塗料エマルジョンが循環する回数が多くなり、ホモジナイジング・ノズルで均一化される回数が多くなる。予備エマルジョンの体積流量が小さく、圧力が低いと、比較的粗く分散された塗料エマルジョンが生じることになるので、繰り返して均一化が行われることによって、細かく分散した塗料エマルジョンを得ることができる。予備エマルジョンを繰り返して均一化することによって、粒子サイズ分布(particle size frequency distribution)が変化することになる。粒子サイズ範囲の粗い部分がより小さい粒子サイズへとシフトするので、かかる粒子分布は狭くなる。
【0033】
好ましくは、予備エマルジョンの体積流量は50〜3000g/分である。体積流量がこのような値となると、細かく分子した塗料エマルジョンを得ることができる。予備エマルジョンの体積流量は、実質的に一定であってよく、または、不連続的もしくは連続的に変化するものであってもよい。一定の細かく分散したエマルジョンが得られる体積流量の連続的に変化する範囲は、特にノズルのジオメトリー(または幾何学的形状)に依存する。
【0034】
本発明の方法または本発明の装置の別の利点は、例えばジェット・ディスパーサーのようにスリーブ内で可動するピストン等の可動要素または移動要素を用いることなく、塗料エマルジョンの分散量を変えることができることである。このため、従来技術の既知の装置と比べて、本発明の装置に必要とされるメンテナンスが軽減される。
【0035】
予備エマルジョンを得る工程(工程a)と予備エマルジョンを均一化する工程(工程b)とを少なくとも含んで成る本発明の方法は、連続的に実施することができるだけでなく、2つの別個の工程をバッチ処理で実施することもできる。
【0036】
ホモジナイジング・ノズルからの排出された後、本発明の方法で得られる塗料エマルジョンは、できるだけ迅速に適当なディスペンス装置(例えば噴霧ノズル)へと移送される。
【0037】
本発明の方法の利点は、分散される材料の流量が50g/分〜3000g/分と比較的少なく、圧力が2.5MPa以下と比較的小さい場合であっても、粒子分布d90(frequency distribution d90)が2.5μm以下の細かく分散した塗料エマルジョンを得ることができることである。
【0038】
本発明の方法で得られるエマルジョンは、木材、金属およびプラスチック等の種々の基材および材料上に非常に品質の良いコーティングを施す(またはコーティング層もしくは塗膜を形成する)のに適当である。このような本発明の方法で得られるエマルジョンは、好ましくは、自動車のボディーまたはボディー・パーツを塗装するのに用いられる。
【0039】
図面を参照することによって、本発明をより詳細に説明する。
【0040】
図1の模式図では、イソシアネート反応性水素原子を含んで成る水性バインダー分散体1を貯留するタンクおよびポリイソシアネート2を貯留するタンクと2つの貯留タンクが示されている。
【0041】
2つの貯留タンクは、別個の供給ラインおよび別個の計量ポンプ3,4を介して、ミキサー5に接続されている。かかるミキサー5は、混合ノズル形態を有しており、バインダー分散体1とポリイソシアネート2とを混合して予備エマルジョンを形成する。計量ポンプ3,4として、好ましくは、計量ギアポンプまたはピストン計量ポンプが使用される。
【0042】
ポンプ6によって予備エマルジョンがミキサー5からホモジナイジング・ノズル形態のホモジナイザー7へと送られることによって、予備エマルジョンが均一化される。ポンプ6は、例えば、ギアポンプまたはピストン計量ポンプである。
【0043】
ポンプ6の移送速度は、計量ポンプ3の移送速度と計量ポンプ4の移送速度とを足し合わせたものよりも大きい。分散された塗料エマルジョンの量が、ポンプ6の移送速度より少ないので、かかる差が、分散されていない塗料エマルジョンをホモジナイザー7へと戻りライン8を介して循環させることによって補償されることになる。計量ポンプ3および計量ポンプ4の移送速度が小さいと、即ち、予備エマルジョンの体積流量が小さいと、エマルジョンが循環する回数が平均してより多くなり、繰り返して均一化が行われる。より粗く分散した予備エマルジョンは、移送速度が小さいと得られるので、このようにして、より程度の高い均一化を促進する後処理が行われる。
【0044】
図2は、本発明の方法の工程(a)で予備エマルジョン9を得るのに使用されるミキサー5の態様を示している。ミキサー5では、ノズル穴11を介してポリイソシアネート2が予備混合チャンバー12中へと送られることになり、イソシアネート反応性水素原子を含んで成るバインダー分散体1(例えばポリオール)に対して供給される。ポリイソシアネート2とバインダー分散体1とは一体的にノズル穴13を通るので、それによって、予備エマルジョン9が形成される。なお、逆に、イソシアネート反応性水素原子を含んで成るバインダー分散体1をミキサー5中のポリイソシアネート2に対して供給してもよい。
【0045】
図3では、予備エマルジョン9がホモジナイザー7に入れられる態様が示されている。ホモジナイザー7は、ジェット・ディスパーサーの形態を有しており、横方向のノズル穴を備えたインサート(または挿入物)16およびチューブとから構成されている。予備エマルジョン9はノズル穴を介して移送される。ジェット・ディスパーサー7の一方の端部から塗料エマルジョン10は排出される。かかるジェット・ディスパーサーは、ドイツ国特許(DE)第19510651号で開示されている。同様の原理で作動するジェット・ディスパーサーを用いてもよい。
【0046】
実施例
実施例および比較例では、イソシアネート反応性水素原子を含んで成る水性バインダー分散体として以下に示す組成物を選択した:
・OH基を有するポリアクリレート分散体が29.7重量%(1500mPa・s以下の粘度(23℃,DIN EN ISO 3219)を有する約46重量%の非揮発分(DIN EN ISO 3251)および固体樹脂に対して4.5重量%のOH分を含んでいる)、
・OH基を有するポリウレタン分散体が29.7重量%(1200mPa・s以下の粘度(23℃,DIN EN ISO 3219)を有する約45重量%の非揮発分(DIN EN ISO 3251)および固体樹脂に対して3.8重量%のOH分を含んでいる)、
・Byk(登録商標)345(ドイツのByk Chemie GmbH)が0.3重量%、
・Byk(登録商標)333の25重量%水溶液(Byk Chemie GmbH)が0.3重量%、ならびに
・蒸留水が9.4重量%。
【0047】
ポリイソシアネートとして以下に示す組成物を選択した:
・NCO含量が23.2%、NCO基が平均3.2(ゲル透過クロマトグラフィーに基づく)、モノマーのHDI含量が0.25%未満、および粘度が1200mPa・s(23℃)の1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)に基づくイソシアヌレート基を含んだポリイソシアネートが18.7重量%、
・50%のRhodiasov(登録商標)RP DE(ドイツのBrenntag GmbH)中のTinuvin(登録商標)1130が1.8重量%、
・Rhodiasov(登録商標)RP DE中のTinuvin(登録商標)292の50重量%溶液が0.9重量%、ならびに
・共溶媒Rhodiasolv RP DEが9.2重量%。
【0048】
実施例1:(本発明の実施例)
ポリオール成分1とポリイソシアネート成分2とが重量比で2.28:1となるように、計量ギアポンプ形態の計量ポンプ3および計量ポンプ4(図1参照)を調整した。計量ポンプ3,4の体積流量を200〜800g/分の範囲で変化させる一方、計量ポンプ3,4の全体積流量よりも大きい体積流量となるようにギアポンプ形態のポンプ6を調整した。ミキサー5は、0.4mmのノズル穴11と0.6mmのノズル穴13とから構成されるものであった。ジェット・ディスパーサー7には、各々が0.6mmの2つのノズル穴16が設けられているものであった。
【0049】
このようにして製造される水性2成分ポリウレタン分散体は、分散状態および塗布状態を評価するために以下に示す試験に付した。
【0050】
試験A:塗料エマルジョンのフィルムをガラスシート上に形成して、厚さ90μmの湿ったフィルムを形成した。透過光検査によって透明度、白化および斑点を0〜5で評価した(0=非常に良好な分散状態、即ち、フィルムは完全に透明で斑点および白化がない;5=フィルムの分散状態が非常に劣る状態、即ち、フィルムは乳白色を有しており、斑点/白化が多く存在する)。
【0051】
試験B:ガラスシート上に形成された水性2成分ポリウレタン分散物を130℃の下で30分間硬化させた。フィルムの外観を0〜5で評価した(0=非常に望ましい外観、即ち、フィルムは完全に透明で斑点および白化がない状態;5=フィルムの外観が非常に劣る状態、斑点/白化が多く存在する)。
【0052】
試験C:超遠心分離機による粒子サイズ分布の測定(H.G.Mueller,Colloid Polym.Sci.267(1989)第1113頁〜第1116頁に記載されているような測定)。度数分布の値d10、d50およびd90を用いる。
【0053】
実施例2:(比較例)
比較例として、本発明の装置または本発明の方法とは以下の点で異なったアレンジメントを有する試験装置を用いた。ギアポンプ形態の計量ポンプ3,4、およびミキサー5に関しては、本発明の実施例と同じ態様で用いたものの、予備エマルジョンは、ジェット・ディスパーサーで更なる均一化に付すことなく、実施例1で説明した試験A,試験Bおよび試験Cに付した。
【0054】
実施例3:(比較例)
比較例として、本発明の装置または本発明の方法とは以下の点で異なったアレンジメントを有する試験装置を用いた。ギアポンプ形態の計量ポンプ3,4、およびミキサー5に関しては、本発明の実施例と同じ態様で用いたものの、予備エマルジョンは、均一化に付すべく、ポンプ6(図1参照)を用いることによって調整可能なジェット・ディスパーサー(10×0.1mmのスロットを有したジェット・ディスパーサーであって、ドイツ国特許(DE)第19933440号の図1に示されたようなジェット・ディスパーサー)へと供給された。図1に示すような戻りライン8は設けていない。このように製造された塗料エマルジョンは、実施例1で説明した試験A,試験Bおよび試験Cに付した。
【0055】
本発明の実施例および比較例に関する試験パラメーターおよび結果は以下の表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
図4の断面図は、図1のアレンジメントで用いることができるミキサー5’であって、水性バインダー1とポリイソシアネート2とから予備エマルジョンを製造することができるミキサー5’の別の実施態様を示している。
【0058】
ポリイソシアネート2は硬化剤として作用するが、接続部17を介してミキサー5’へと供給される。その一方、水性バインダー分散体1は、別の接続部18を介してミキサー5’に供給される。
【0059】
予備エマルジョン9が排出されるように、ミキサー5’は、接続部17の反対側において接続部17と同軸上に配置された接続部19を有している。
【0060】
ポリイソシアネート2のための接続部17は、流通チャンネル(または流路)を介して、予備エマルジョン9のための接続部19に接続されている。接続部17と接続部19との間の流通チャンネルには、ノズル状の狭小ポイント20が設けられているので、流通チャンネル内の圧力が増加するようになっている。狭小ポイント20は、交換可能なノズル・ボディー内に設けられており、その交換可能なノズル・ボディーを交換することによって狭小ポイント20の断面は種々なものとなる。
【0061】
バインダー分散体1の供給は、可動状態でバルブ穴に設けられたバルブ・ニードル21によって制御されることになる。なお、バルブ・ニードルの位置に応じて、接続部17と接続部19との間の流通チャンネルへのアクセスが許容されたり、又はかかるアクセスが妨げられたりする。図4に示すバルブ・ニードル21の位置では、接続部18からの流通チャンネルへのアクセスが妨げられているので、バインダー分散体1がポリイソシアネート2中へと混合されることはない。
【0062】
ポリイソシアネート2をバインダー分散体1中へと混合させるために、空気圧でバルブ・ニードル21を上方へ動かすことができる。それゆえ、ミキサー5’は、制御空気ラインが接続され得る接続部22を有している。ミキサー5’では、流通チャンネル23を介して接続部22が圧力チャンバー24に接続されており、圧力チャンバー24内に及ぼされる圧力は、バルブ・ニードル21の上部に設けられたピストンに作用する。更に、ミキサー5’の上部に渦巻きバネ26が設けられており、それによって、バルブ・ニードル21が狭小ポイント20の方向へと軸方向下向きに押圧されることになる。圧力チャンバー24内の圧力が増加すると、バルブ・ニードル21が渦巻きバネ26のスプリング力に逆らって上方向に動き、接続部18と接続部19と間の弁座が開くまで動くことになる。
【0063】
バルブ・ニードル21の凸部では、バインダー分散体1が、接続部18から接続部17と接続部19との間の流通チャンネルへと移動することができるので、バインダー分散体1がポリイソシアネート2と混合される。
【0064】
ミキサー5’は、バルブ・ニードル21のガイド穴を封止する2つの封止リング27,28を更に有して成り、それによって、接続部18を介して供給されるバインダー分散体1が、バルブ・ニードル21のガイド穴に沿って上方へは移動していくことはない。
【0065】
ミキサー5’は、リーク穴29を更に有して成る。かかるリーク穴29が存在するので、下方封止リング28が損傷した際、バルブ・ニードル21のガイド穴に沿って上方に移動してきたバインダー分散体1を排出することができる。
【0066】
ミキサー5’によって得られた予備エマルジョン9から最終塗料エマルジョンを製造するホモジナイザー7’の代替的な態様に関しては、図5の断面図を参照して以下で説明する。
【0067】
ホモジナイザー7’の入口側には、ポンプ6と接続される外側ネジ山31を有したねじ込みフランジ30が設けられており、対応する供給ラインのチューブ・フランジが、かかる外側ネジ山31にネジ付けされて取り付けられることになる。
【0068】
ねじ込みフランジ30はノズル・ボディー32に形成されており、ノズル・ボディー32内では流通チャンネル33が円錐形状に広がるように設けられている。
【0069】
ノズル・ボディー32内には環状ノズル・プレート34が挿入されている。この環状ノズル・プレート34のスクリュー・フランジ30に面する側には、相互に対向する半径方向穴35が設けられている。この半径方向穴35によって、流通チャンネル33を流れる予備エマルジョンの流れ方向が変えられることになる。
【0070】
更に、ノズル・ボディー32内には、更なるノズル・ボディー36がネジ付けされて取り付けられている。このノズル・ボディー36には、ノズル・ボディー32内のノズル・プレート34が取り付けられている。また、ノズル・ボディー36には、ノズル・プレート34を通って流通チャンネル33の円錐形状に広がる領域内へと突出する円錐形状突出部37が設けられている。半径方向穴35は、突出部37内へと通じている。
【0071】
この実施例では、円錐形状を成すようにテーパー付けされたパーツ37の領域に半径方向穴35が配置されているものの、代替的に、かかる半径方向穴35をノズル・ボディー36の円筒形状領域に配置してもよい。
【0072】
ノズル・ボディー36の出口側には、内側ネジ山38が設けられている。このネジ山38には、供給ラインの対応する接続フランジがネジ付けされて取り付けられ得る。
【0073】
操作に際して、流通チャンネル33内の予備エマルジョンは、ノズル・プレート34の半径方向穴35を通ることになるので、均一化が行われる。
【0074】
次に、図6の断面図を参照することによって、図1に示す本発明の装置の変更態様であって、洗浄操作(又はすすぎ操作)の間でホモジナイザー7を迂回するバイパス・ライン(BP)が設けられた態様を以下で説明する。洗浄操作の間でホモジナイザー7を迂回する経路を設けると、ホモジナイザー7の流れ抵抗でホモジナイザー7の下流側の洗浄剤の圧力が減じることが防止されるので有利となる。
【0075】
図1に関して上述した事項をほぼ参照することができるために、重複を避けるべく説明を繰り返して行わない。なお、同じ参照番号は、対応する要素に対して用いているが、変更態様では参照番号にアポストロフィが付記されている。
【0076】
ホモジナイザー7の上流側にはバルブ・ユニット39が配置されている。バルブ・ユニット39は、部分的に、図4に示すミキサー5’と同様の構造を有している。従って、バルブ・ユニット39は、図4に関して上述した事項を補足的に参照することで説明できる。
【0077】
バルブ・ユニット39の入口側には接続部40が設けられている。接続部40は、予備エマルジョン9が受容されるように、供給ライン41を介してミキサー5’に接続され得る。バルブ・ユニット39の出口側には、ホモジナイザー7(例えば図3または図5のように構成され得るホモジナイザー)と連結される更なる接続部42が設けられている。
【0078】
バイパス・ライン(BP)は、バルブ・ユニット39の接続部43から、ホモジナイザー7の下流領域へと通じている。接続部43は、バルブ・ニードル44のガイド穴と接続されている。従って、洗浄操作の間、洗浄剤をホモジナイザー7に通すことなく、バイパス・ライン(BP)を経由させることができる。このようにバイパス・ライン(BP)を経由させるには、バルブ・ニードル44が上方へ動くことが必要である(以下で詳細に説明する)。
【0079】
接続部40と接続部42との間の中心に狭小ポイントを含んで成る流通チャンネルは、バルブ・ユニット39の入口側接続部40と出口側接続部42との間に設けられている。
【0080】
バルブ・ニードル44の位置は、制御エアー・ライン46が接続される更なる接続部45によって制御される。なお、接続部45は、流通チャンネル47を介して、圧力チャンバー48へと通じている。圧力チャンバー48内の圧力は、ピストン49に作用する。このピストン49は、バルブ・ニードル44の上部に取り付けられており、バルブ・ユニット39のヘッド内で動くことができ、また、渦巻きバネ50によって下方向に予め力が加えられている。圧力チャンバー48内の圧力が増加すると、図6に示す位置から軸方向上側へとバルブ・ニードル44が持ち上げられることになるので、それによって、接続部40と接続部42との間の流通チャンネルの狭小ポイントが開くことになる。
【0081】
図5に関して既に上述したように、バルブ・ニードル44は、可動状態でガイド穴に設けられており、バルブ・ニードル44とガイド穴の内壁との間の環状ギャップが、2つの封止リングによって封止されている。バルブ・ユニット39には、下方封止リングが機能を損ねた場合に、戻りライン(BP)を介して供給される塗料エマルジョンを排出することができるリーク穴51が更に備えられている。
【0082】
バルブ・ユニット39の下方部には、噴射空気ライン53と接続された接続部52が設けられている。従って、必要に応じて、空気を供給することによって、バルブ・ユニット39内をきれいにすることができる。なお、噴射空気は、別の接続部55によって空気圧で駆動するバルブ・ニードル54を用いることによって制御される。バルブ・ニードル54は、バルブ・ユニット39の上方パーツと同様に、接続部55を介して駆動するものであるために、バルブ・ニードル54に関して上述の事項を参照することができ、重複を避けるべく説明は繰り返さない。
【0083】
図7には、イソシアネート反応性水素原子を含んで成る水性バインダー分散体とポリイソシアネートとから水性2成分ポリウレタン塗料エマルジョンを製造するためのアレンジメントであって、図1に示したおよび上述したアレンジメントに略相当するアレンジメントを示している。重複を避けるために、図7に示すアレンジメントの特徴に関してのみ説明する(他の点は図1に関して説明した事項を参照のこと)。なお、図7に示す要素には、図1の場合と同様の参照番号が付けられているものの、区別するために、図7の場合では参照番号に2つのアポストロフィを付記している。
【0084】
図7に示すアレンジメントの特徴は、バインダー分散体1”の残分、ポリイソシアネート2”の残分、予備エマルジョンの残分、そして、かかるアレンジメントで生じ得る最終塗料エマルジョンの残分を除去するために、洗浄を行うことができることである。
【0085】
このため、計量ポンプ3”とミキサー5”との間に3方向バルブ56”が配置されている。かかる3方向バルブ56”によって、塗布操作の間でミキサー5”と計量ポンプ3”とが接続される一方、洗浄操作の間でミキサー5”と洗浄剤ライン57”とが接続される。
【0086】
また、計量ポンプ4”とミキサー5”との間に3方向バルブ58”が配置されている。かかる3方向バルブ58”によって、塗布操作の間でミキサー5”と計量ポンプ4”とが接続される一方、洗浄操作の間ではミキサー5”と洗浄剤ライン59”とが接続される。
【0087】
洗浄操作の間では、ミキサー5”およびホモジナイザー7”の流れ抵抗によって、ミキサー5”およびホモジナイザー7”の下流側の洗浄剤圧力が減少してしまう。従って、かかる不利益な点を回避するために、バイパス・ライン60”、61”および62”が設けられ、そのようなバイパス・ラインによって、ミキサー5”およびホモジナイザー7”を迂回する経路がもたらされる。従って、ミキサー5”およびホモジナイザー7”の下流側で適当な洗浄剤圧力を達成することができる。
【0088】
バイパス・ライン60”、61”および62”を開ける又は閉めるために、制御バルブ63”、64”、65”が、各々のバイパス・ライン60”、61”、62”に設けられている。
【0089】
図8は、ミキサーの代替的な態様のミキサー5'''を示している。このミキサー5'''は、図4に示すミキサー5’に略相当しており、図4に関して説明した事項を参照することができるので、重複を避けるために、かかるミキサー5'''の特徴に関してのみ説明する。なお、図4に対応する要素には、図4の場合と同様の参照番号が付けられているものの、区別するために、図8の場合では参照番号に3つのアポストロフィを付記している。
【0090】
ミキサー5'''の特徴の1つは、狭小ポイント20'''によって損なわれることなく、洗浄を良好に行うことができる点である。
【0091】
このような特徴を有しているため、ミキサー5'''は、外側接続部19'''と更なるバルブ・ニードル68'''のガイド穴67'''とを接続するバイパス・ライン66'''を有している。ガイド穴67'''は狭小ポイント20'''に通じている。従って、洗浄に際して、バルブ・ニードル21'''は上方へと移動する一方、バルブ・ニードル68'''は下方向へと移動する。洗浄剤は、接続部18'''を介して供給されることになり、バルブ・ニードル21'''のガイド穴を介して狭小ポイント20'''を通った後、ガイド穴67'''からバイパス・ライン66'''を介して接続部19'''へと移送されることになる。従って、バイパス・ライン66'''によって、洗浄操作の間では狭小ポイント20'''を迂回する経路が設けられるため、狭小ポイント20'''の流れ抵抗でミキサー5'''の下流側の洗浄剤圧力が影響を受けることはない。
【0092】
本発明は、上述の好ましい実施態様にのみ限定されるものではない。むしろ、本発明の範囲内で本発明の概念を利用した多くの変更および修正をすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、本発明の装置の模式図である。
【図2】図2は、本発明の方法によって予備エマルジョンを得る図1の装置のミキサーを示す。
【図3】図3は、図1の装置のホモジナイザーであって、本発明の方法で塗料エマルジョンを製造するジェット・ディスパーサー形態のホモジナイザーを示す。
【図4】図4は、図1のミキサーの代替的な態様を示す。
【図5】図5は、図1のホモジナイザーの代替的な態様を示す。
【図6】図6は、図1の装置の変更例を示す。
【図7】図7は、図1の装置の代替的な態様を示す。
【図8】図8は、図1のミキサーの代替的な態様を示す。
【符号の説明】
【0094】
1,1”…バインダー分散体、2,2”…ポリイソシアネート、3,3”…計量ポンプ、4,4”…計量ポンプ、5,5’,5”…ミキサー、6,6”…ポンプ、7,7”…ホモジナイザー、8,8”…戻りライン、9…予備エマルジョン、10…塗料エマルジョン、11…ノズル穴、12…予備混合チャンバー、13…ノズル穴、16…インサート、17…接続部、18…接続部、19…接続部、20…狭小ポイント、21…バルブ・ニードル、22…接続部、23…流通チャンネル、24…圧力チャンバー、25…ピストン、26…渦巻きバネ、27…封止リング、28…封止リング、29…リーク穴、30…ねじ込みフランジ、31…外側ネジ山、32…ノズル・ボディー、33…流通チャンネル、34…ノズル・プレート、35…半径方向の穴、36…ノズル・ボディー、37…突出部、38…内側ネジ山、39…バルブ・ユニット、40…接続部、41…供給ライン、42…接続部、43…接続部、44…バルブ・ニードル、45…接続部、46…制御空気ライン、47…流通チャンネル、48…圧力チャンバー、49…ピストン、50…渦巻きバネ、51…リーク穴、52…接続部、53…噴射空気ライン、54…バルブ・ニードル、55…接続部、56”…3方向バルブ、57”…洗浄剤供給ライン、58”…3方向バルブ、59”…洗浄剤供給ライン、60”…バイパス・ライン、61”…バイパス・ライン、62”…バイパス・ライン、63”…バルブ、64”…バルブ、65”…バルブ、66'''…バイパス・ライン、67'''…ガイド穴、および、68'''…バルブ・ニードル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2成分塗料混合物を製造する方法、特に、イソシアネート反応性水素原子を含んで成る水性バインダー分散体とポリイソシアネートとから、水性2成分ポリウレタン塗料エマルジョンを製造する方法であって、
ミキサー(5,5',5”,5''')で第1塗料成分(1,1”)と第2塗料成分(2,2”)とを混合して2成分塗料混合物(9)を得る工程、および
ホモジナイザー(7,7',7”)によって2成分塗料混合物(10)を均一化させる工程
を含んで成り、
2成分塗料混合物(10)の少なくとも一部を引き続きホモジナイザー(7,7',7”)で再び均一化させることを特徴とする、方法。
【請求項2】
2.5MPa以下の圧力でもって、2種類の塗料成分(1,1”,2,2”)を個々にミキサー(5,5',5”,5''')に供給することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ホモジナイザー(7,7',7”)の出口から得られる2成分塗料混合物の一部をホモジナイザー(7,7',7”)の入口へと循環させることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1塗料成分(1,1”)は、イソシアネート反応性水素原子を含んで成る水性バインダー分散体であり、第2塗料成分(2,2”)はポリイソシアネートを含んでいる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ミキサー(5,5',5”,5''')とホモジナイザー(7,7',7”)との間では、2成分塗料混合物(9)が、50g/分〜3000g/分の質量流量を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ホモジナイザー(7,7',7”)は、ジェット・ディスパーサーであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
第1ポンプ(4,4”)によって第1塗料成分(1,1”)をミキサー(5,5',5”,5''')に供給すること、
第2ポンプ(3,3”)によって第2塗料成分(2,2”)をミキサー(5,5',5”,5''')に供給すること、および/または
第3ポンプ(6,6”)によって2成分塗料混合物(9)をミキサー(5,5',5”,5''')からホモジナイザー(7,7',7”)へと移送すること、
を特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
第1ポンプ(4,4”)および第2ポンプ(3,3”)の移送能力よりも大きい移送能力で第3ポンプ(6,6”)を操作することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ポンプ(3,3”,4,4”,6,6”)の少なくとも1つがギアポンプであることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
2成分塗料混合物を製造する装置、特に、イソシアネート反応性水素原子を含んで成る水性バインダー分散体とポリイソシアネートとから、水性2成分ポリウレタン塗料エマルジョンを製造する装置であって、
第1塗料成分(1,1”)と第2塗料成分(2,2”)とを混合して2成分塗料混合物(9)を得るミキサー(5,5',5”,5''')、および
ミキサー(5,5',5”,5''')の下流側に配置された、2成分塗料混合物(9)を均一化するホモジナイザー(7,7',7”)
を有して成り、
ホモジナイザー(7,7',7”)の出口領域で分岐し、ホモジナイザー(7,7',7”)の入口領域へと通じる戻りライン(8,8’)であって、ホモジナイザー(7,7',7”)によって均一化された2成分塗料混合物の一部を循環させて均一化を繰り返すための戻りライン(8,8’)を特徴とする装置。
【請求項11】
第1供給ラインを介してミキサー(5,5',5”,5''')と接続された、第1塗料成分(1,1”)を移送する第1ポンプ(4,4”)、
第2供給ラインを介してミキサー(5,5',5”,5''')と接続された、第2塗料成分(2,2”)を移送する第2ポンプ(3,3”)、および
ミキサー(5,5',5”,5''')とホモジナイザー(7,7',7”)との間に配置された、2成分塗料混合物(9)を移送する第3ポンプ(6,6”)
を特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
第3ポンプ(6,6”)が、第1ポンプ(4,4”)および/または第2ポンプ(3,3”)の移送能力よりも大きい移送能力を有することを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
第1ポンプ(4,4”)および/または第2ポンプ(3,3”)および/または第3ポンプ(6,6”)が、2.5MPa以下の吐出圧を有することを特徴とする、請求項11または12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
第1ポンプ(4,4”)および/または第2ポンプ(3,3”)および/または第3ポンプ(6,6”)が、ギアポンプであることを特徴とする、請求項11〜13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
ミキサー(5,5',5”,5''')の上流側の第1供給ラインおよび/または第2供給ラインおよび/または第3供給ラインにフィルターが設けられていることを特徴とする、請求項11〜14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
ホモジナイザー(7,7',7”)が、ジェット・ディスパーサーである、請求項10〜15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
第1塗料成分(1,1”)が、イソシアネート反応性水素原子を含んで成る水性バインダー分散体であり、第2塗料成分(2,2”)がポリイソシアネートを含んでいることを特徴とする、請求項10〜16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
戻りライン(8,8”)は、ミキサー(5,5',5”,5''')と第3ポンプ(6,6”)との間の領域に通じていることを特徴とする、請求項10〜17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
ミキサー(5,5',5”,5''')および/またはホモジナイザー(7,7',7”)が、洗浄剤用の接続部を有して成ることを特徴とする、請求項10〜18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
ミキサー(5,5',5”,5''')が、第1塗料成分(1,1”)の供給流れを制御する、および/または、第2塗料成分(2,2”)の供給流れを制御する、および/または、2成分塗料混合物(10)の排出を制御する制御可能なバルブ(21〜26)を有して成ることを特徴とする、請求項10〜19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
洗浄操作の間、ミキサー(5,5',5”,5''')および/またはホモジナイザー(7,7',7”)を迂回するように、少なくとも1つのバイパス・ライン(60”,61”,62”)が設けられていることを特徴とする、請求項10〜20のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
バイパス・ライン(60”,61”,62”)に制御可能なバルブ(63”,64”,65”)が設けられていることを特徴とする、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法によって製造される2成分塗料混合物(10)を用いてコーティングされた基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−519277(P2006−519277A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501842(P2006−501842)
【出願日】平成16年2月14日(2004.2.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001401
【国際公開番号】WO2004/076515
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【出願人】(505324331)デュール・システムズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】DUERR SYSTEMS GMBH
【Fターム(参考)】