説明

2方向に操作可能な非対称カテーテル

【課題】曲率半径がそれぞれ互いに異なるよう偏向できるカテーテルを提供する。
【解決手段】カテーテルは、遠位端部に可撓性先端部分14を備えた可撓性カテーテル本体12を有する。先端部分は第1の軸外れルーメン及び第2の軸外れルーメン26,27,28,29を備える。第1の引きワイヤ及び第2の引きワイヤ52がそれぞれ、第1の軸外れルーメン及び第2の軸外れルーメンを貫通し、それぞれの遠位端部及び近位端部が先端部分内及び操作取っ手に繋留されている。第1の圧縮コイル及び第2の圧縮コイル58がそれぞれ、第1の引きワイヤ及び第2の引きワイヤを包囲した状態でカテーテル本体のルーメンを貫通して延びている。第1の圧縮コイル58は、第1繋留位置において第1の軸外れルーメン内に繋留される遠位端部を備える。第2の圧縮コイルは、第1繋留位置に対して遠位側の第2繋留位置で第2の軸外れルーメン内に繋留される遠位端部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非対称の偏向を可能にする2方向に操作可能なカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
医療行為では長年、各種の電極カテーテルが常用されている。これら電極カテーテルは、心臓内の電気的活性を刺激してこれをマッピングし、そして、異常な電気的活性部位のアブレーションを行うのに用いられる。
【0003】
使用にあたり、電極カテーテルを主要な静脈又は動脈、例えば、大腿動脈中へ挿入し、次に、関心のある心臓の室内へ案内する。心臓内においてカテーテル先端部分の正確な位置及び向きを制御できるかどうかは極めて重要なことであり、これにより、主としてカテーテルがどれほど有用であるかが決まる。
【0004】
操向性カテーテルが一般に周知である。例えば、米国再発行特許第34,502号は、遠位端部にピストン室が設けられているハウジングを備えた操作取っ手を有するカテーテルを記載している。ピストンが、ピストン室内に設けられ、長手方向運動が与えられる。カテーテル本体の近位端部は、ピストンに取り付けられている。引きワイヤが、ハウジングに取り付けられ、この引きワイヤは、ピストンを貫通し、そしてカテーテル本体を貫通して延びている。引きワイヤの遠位端部は、カテーテルの先端部分内に固定されている。この構成では、ハウジングに対するピストンの長手方向運動の結果として、カテーテルの先端部分が偏向することになる。
【0005】
2方向に操作可能なカテーテル、即ち、2つの方向、典型的には互いに反対側の方向に偏向できるカテーテルも又知られている。例えば、米国特許第6,210,407号は、貫通して延びる2つの引きワイヤを備えた2方向に操作可能なカテーテルを開示している。引きワイヤの遠位端部は、カテーテルの先端部分の互いに反対側の側部に繋留されている。各引きワイヤの長手方向運動を可能にし、それにより、2つの互いに反対側の方向へのカテーテルの偏向を可能にする適当な2方向操作取っ手が設けられている。
【0006】
2つの互いに異なる曲線、即ち、曲率半径がそれぞれ互いに異なる2つの曲線を形成するよう偏向できる2方向に操作可能なカテーテルを提供することが望ましい場合が多い。かかる設計は、外科医にとって好ましい場合が多い。というのは、かかるカテーテルにより、手技中、外科医に曲線についての選択肢が与えられるからである。既存のカテーテルはこの結果を、カテーテルの長さに沿う互いに異なる位置に繋留された遠位端部を備える2つの引きワイヤを備えることによって達成する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、2つの互いに異なる曲線、即ち、曲率半径がそれぞれ互いに異なる2つの曲線を形成するよう偏向できる2方向に操作可能なカテーテルに関する。本発明によれば、カテーテルは、近位端部、遠位端部及びこれらを貫通して延びるルーメンを備えた細長い可撓性の管状カテーテル本体を有する。先端部分がカテーテル本体の遠位端部のところに設けられている。先端部分は、少なくとも第1の軸外れルーメン及び第2の軸外れルーメンが貫通して延びる可撓性プラスチックチューブから成る。操作取っ手が、カテーテル本体の近位端部に設けられている。
第1の引きワイヤが、カテーテル本体のルーメン及び先端部分の第1の軸外れルーメンを貫通して延びている。第1の引きワイヤは、先端部分内に繋留された遠位端部及び操作取っ手に繋留された近位端部を備える。第2の引きワイヤが、カテーテル本体のルーメン及び先端部分の第2の軸外れルーメンを貫通して延びている。第2の引きワイヤは、先端部分内に繋留された遠位端部及び操作取っ手に繋留された近位端部を備える。
第1の圧縮コイルが、第1の引きワイヤを包囲した状態でカテーテル本体のルーメンを貫通して延びている。第1の圧縮コイルは、第1の繋留位置において、カテーテル本体内又は先端部分の第1の軸外れルーメン内に繋留される遠位端部を備える。第2の圧縮コイルが、第2の引きワイヤを包囲した状態でカテーテル本体のルーメンを貫通して第2の軸外れルーメン内へ延びている。第2の圧縮コイルは、第1の繋留位置に対して遠位側に位置した第2の繋留位置において、先端部分の第2の軸外れルーメン内に繋留される遠位端部を備える。この設計により、先端部分の偏向により達成される各曲線の曲率半径は、適当なほうの引きワイヤを包囲する圧縮コイルの繋留位置により制御される。
【0008】
本発明のこれらの特徴及び他の特徴は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むと一層よく理解されよう。
【発明の効果】
【0009】
上述のことから理解されるように、本発明によれば、2つの互いに異なる曲線、即ち、曲率半径がそれぞれ互いに異なる2つの曲線を形成するよう偏向できる2方向に操作可能なカテーテルが提供される。即ち、本発明のカテーテルは、細長い可撓性の管状カテーテル本体の近位端部に操作取っ手を設け、遠位端部に可撓性プラスチックチューブから成る先端部分を設けたものである。この先端部分は、貫通して延びる第1の軸外れルーメン及び第2の軸外れルーメンを備える。第1の引きワイヤ及び第2の引きワイヤがそれぞれ、カテーテル本体のルーメン及び先端部分の第1の軸外れルーメン及び第2の軸外れルーメンを貫通して延びる。第1の引きワイヤ及び第2の引きワイヤのそれぞれの遠位端部を先端部分内に繋留すると共にそれぞれの近位端部を操作取っ手に繋留してある。さらに、第1の圧縮コイル及び第2の圧縮コイルをそれぞれ、第1の引きワイヤ及び第2の引きワイヤを包囲した状態でカテーテル本体のルーメンを貫通して設けてある。第1の圧縮コイル及び第2の圧縮コイルの遠位端部はそれぞれ、第1の軸外れルーメン及び第2の軸外れルーメン内に繋留されるが、これらの繋留位置は互いに異なっている。より詳細には、例えば、第2の圧縮コイルの第2の繋留位置は、第1の圧縮コイルの第1の繋留位置よりも遠位側にある。
【0010】
本発明の上記構成によれば、例えば第1の圧縮コイルによって包囲された第1の引きワイヤを長手方向に運動させることにより、先端部分は第1の曲率半径を持つ第1の曲線を形成するよう偏向し、第2の圧縮コイルによって包囲された第2の引きワイヤを長手方向に運動させることにより、先端部分は第1の曲率半径とは異なる第2の曲率半径を持つ第2の曲線を形成するよう偏向することになる。かくして、単一の偏向可能なカテーテルを用いて2つの互いに異なる曲線を形成することができるので、外科医は、手技中、カテーテルの先端に現れる曲線を選択できるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のカテーテルの実施形態の側面図である。
【図2】本発明のカテーテルの実施形態のカテーテル本体と先端部分の接合部の側面断面図である。
【図3】図2に示すカテーテル本体の3−3線矢視横断面図である。
【図4】(a)は、先端部分の遠位端部の断面側面図であり、小径軸外れルーメン及び引きワイヤを示す図である。(b)は、先端部分の遠位端部の断面側面図であり、大径軸外れルーメン、センサ、センサケーブル及び電気的導線を示す図である。
【図5】先端部分の5−5線矢視横断面図である。
【図6】本発明のカテーテル先端部分の横断面図であり、引きワイヤが先端部分の側壁に繋留されている状態を示す図である。
【図7】好ましい引きワイヤのT字形バー繋留部の縦断面図である。
【図8】端に設けられたクロスピースを示すために図7の引きワイヤのT字形バー繋留部を90°回転させた状態で示す縦断面図である。
【図9】長い圧縮コイル及び短い圧縮コイルの相対的位置関係を示す先端部分の側面図である。
【図10】長い圧縮コイル及び短い圧縮コイルを貫通して延びる引きワイヤの偏向の際に形成される互いに異なる曲線を示す先端部分の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の特に好ましい実施形態では、2つの互いに異なる曲線、即ち、曲率半径がそれぞれ互いに異なる2つの曲線を形成するよう2つの互いに異なる方向に偏向できる操作可能な2方向電極カテーテルが提供される。図1に示すように、カテーテル10は、近位端部及び遠位端部を備えた細長いカテーテル本体12と、カテーテル本体12の遠位端部のところに設けられた先端部分14と、カテーテル本体12の近位端部のところに設けられた操作取っ手16とを有している。
【0013】
図2及び図3に示すように、カテーテル本体12は、単一の軸方向又は中央ルーメン18を備えた細長い管状構造のものである。カテーテル本体12は、可撓性であり、即ち、曲げることができるが、その長さ方向沿いには実質的に非圧縮性である。カテーテル本体12は、任意適当な構造のものであってよく、また、任意適当な材料で作られたものであってよい。現時点において好ましい構成は、ポリウレタン又はペバックス(PEBAX)で作られた外壁20を有している。外壁20は好ましくは、カテーテル本体12の捩り剛性を高めるようステンレス鋼等で作られた埋込み編組メッシュから成り、したがって、操作取っ手16を回転させると、先端部分14はこれと対応関係をなして回転するようになっている。
【0014】
カテーテル10の全長及び直径は、用途に応じて様々であってよい。現時点において好ましいカテーテル10の全長は、約48インチ(なお、1インチ=2.54cm)である。カテーテル本体12の外径は重要な要件ではないが、好ましくは約8フレンチ(fr)(なお、3fr=1mm)以下である。外壁20の内面は補剛管22で内張りされ、この補剛管は任意適当な材料で作られたものであってよく、その構成材料は好ましくはナイロン又はポリイミドである。補剛管22は、編組外壁20と一緒になって、曲げ及び捩り安定性を向上させると同時にカテーテル本体12の肉厚を最小限に抑え、かくして、中央ルーメン18の直径が極力大きくなる。補剛管22の外径は、外壁20の内径とほぼ同一又はこれよりも僅かに小さい。特に好ましいカテーテル10の外径は、約0.092インチ、ルーメン18の直径は、約0.052インチである。所望ならば、補剛管22を省いてもよい。
【0015】
図4及び図5に示すように、先端部分14は、4つの軸外れ又は心ずれルーメンを備えた短い部分としての可撓性チューブ24を有している。可撓性チューブ24は、適当な無毒性材料で作られ、この無毒性材料は好ましくは、カテーテル本体12よりも可撓性が高い。チューブ24の現時点において好ましい材料は、カテーテル本体12の外壁20と類似した編組ポリウレタン、即ち、編組状態のステンレス鋼等のメッシュが埋め込まれたポリウレタンである。先端部分14の外径は、カテーテル本体12の外径と同様、好ましくは約8fr以下であり、より好ましくは約6.5fr以下である。
【0016】
サイズがほぼ同一の第1の小径軸外れルーメン26及び第2の小径軸外れルーメン27が、チューブ24の互いに反対側に位置する四分円内に位置決めされている。第1の小径軸外れルーメン26及び第2の小径軸外れルーメン27よりも大径のほぼ同一サイズの第1の大径軸外れルーメン28及び第2の大径軸外れルーメン29が、第1の小径軸外れルーメンと第2の小径軸外れルーメンとの間でチューブ24の互いに反対側に位置した四分円内に位置決めされている。図示の実施形態では、4つのルーメンは、可撓性チューブ24の軸線回りにほぼ等間隔を置いて配置されている。特に好ましい実施形態では、カテーテルの直径は、約7frであり、第1の小径軸外れルーメン26及び第2の小径軸外れルーメン27のそれぞれの直径は、約0.17インチ乃至0.18インチであり、第1の大径軸外れルーメン28及び第2の大径軸外れルーメン29のそれぞれの直径は、約0.26インチ乃至0.27インチである。より明らかになるように、先端部分内のカテーテルの正確な数及びサイズは本発明にとっては重要な要件ではなく、少なくとも2つの軸外れルーメンが設けられる限り、所望に応じて様々であってよい。
【0017】
カテーテル本体12を先端部分14に取り付ける好ましい手段が、図2に示されている。先端部分14の近位端部は、カテーテル本体12の外壁20の内面を受け入れる外側円周方向切欠き34を有している。先端部分14とカテーテル本体12は、グルー等によって取り付けられている。しかしながら、先端部分14とカテーテル本体12を取り付ける前に補剛管22がカテーテル本体12内へ挿入される。補剛管22の遠位端部は、ポリウレタングルー等で接着部を形成することによりカテーテル本体12の遠位端部の近くに固定的に取り付けられる。好ましくは、カテーテル本体12が先端部分14の切欠き34を受け入れる余地をもつことができるようにするために、カテーテル本体12の遠位端部と補剛管22の遠位端部の間には例えば約3mmの僅かな距離を置くことが好ましい。力を補剛管22の近位端部に加え、そして、補剛管22が圧縮力を受けている間に速乾性のグルー、例えば、スーパーグルー(Super Glue(登録商標))によって第1の接着部(図示せず)を補剛管22と外壁20との間に形成する。しかる後、これよりも乾燥が遅いが強固なグルー、例えばポリウレタンを用いて第2の接着部を補剛管22及び外壁20の近位端部相互間に形成する。所望ならば、スペーサ(図示せず)を、米国特許第5,897,529号に詳細に記載されているように補剛管22の遠位端部と先端部分14の近位端部との間でカテーテル本体12内に設けるのがよく、かかる米国特許の開示内容を本明細書の一部を形成するものとしてここに引用する。
【0018】
図4に示すように、先端部分14の遠位端部は、先端側電極38を支持している。先端側電極38の長さは、重要な要件ではなく、カテーテルを用いようとする特定の用途で決まる。代表的な先端側電極38は、約2mm乃至約6mmの露出長さ、例えば、チューブ24の外に位置する長さを有している。
【0019】
先端側電極38は、好ましくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で作られたプラスチックハウジング36によって先端部分14のチューブ19に連結されている。先端側電極38の遠位端部は、ステム39を形成し、このステムは、プラスチックハウジング36の遠位端部の内側に嵌まり、ポリウレタングルー等によってハウジングに接着されている。プラスチックハウジング36の近位端部は、ポリウレタングルー等によって先端部分14のチューブ19の遠位端部に接着されている。
【0020】
2つのリング電極40が遠位端部の近くで先端部分14の長さに沿って設けられている。各リング電極40の長さは重要な要件ではないが、好ましくは約1mm乃至約3mmの範囲にある。同様に、リング電極40相互間の距離は、重要な要件ではないが、典型的には約2mm乃至約6mmの範囲にあるのがよい。所望ならば、これよりも多い数又は少ない数のリング電極を設けることができる。所望ならば、リング電極40及び(又は)先端側電極38を、カテーテルの特定の用途に応じて全て省いてもよい。所望ならば、リング電極を、先端部分14のチューブ19に追加してもよく、或いはこれに設置するのではなくプラスチックハウジング36に設けてもよい。
【0021】
先端側電極38及びリング電極40はそれぞれ別個の導線30に接続されている。各電気的導線30は、先端部分14の第1の大径軸外れルーメン28を通り、カテーテル本体12の中央ルーメン18を通り、そして操作取っ手16を通って延びている。各導線30の近位端部は、適当なコネクタに接続されており、このコネクタは、適当なモニター、エネルギー源等にプラグ接続し又は他の手法で接続できる。
【0022】
導線30は、任意の従来方法により先端側電極38及びリング電極40に接続されている。導線30と先端側電極38の相互接続は好ましくは、導線30の遠位端部を先端側電極に設けられた第1の盲穴42に納め、そしてはんだ等によって取り付けることにより達成される。
【0023】
導線30とリング電極40の相互接続は好ましくは、まず最初にチューブ24に小さな穴44を開けることによって行われる。かかる穴44を作るには、例えば、針をチューブ24に差し込み、針を永続的な穴を形成するのに十分に加熱するのがよい。導線30をマイクロフック等の使用により穴44から引き抜く。次に、導線30の端部から被膜をはぎ取り、そしてリング電極40の下側に溶接し、次にこのリング電極を穴44上の適所に滑らせ、そしてポリウレタングルー等で定位置に固定する。
【0024】
加うるに、位置センサ46、好ましくは、電磁式位置センサが、先端部分14の遠位端部内に納められている。本発明に用いられる適当な電磁式センサは例えば米国特許第6,201,387号、同第5,558,091号、同第5,443,489号、同第5,480,422号、同第5,546,951号、同第5,568,809号、同第5,391,199号及びPCT出願公開第WO95/02995号に記載されており、これら技術文献の開示内容を本明細書の一部を形成するものとしてここに引用する。電磁式位置センサ46の近位端部は、先端側電極36に設けられた第2の盲穴50内に位置し、ポリウレタングルー等によってこの中に固定されている。センサ46の残部は、先端側電極36と先端部分の可撓性チューブ19との間に設けられたプラスチックハウジング36内に収納されている。望ましくは、プラスチックハウジング36を不要にすることができ、この場合、センサ46の一部をプラスチックチューブ19の遠位端部内に設ける。
【0025】
電磁式センサ46は、電磁式センサケーブル47に接続され、このケーブルは、先端部分14の第2の大径軸外れルーメン29を通り、カテーテル本体12を通り、そして操作取っ手16内へ延びている。電磁式センサケーブル47は、プラスチック被覆シース内に納められた多数本のワイヤ又は導線から成る。センサケーブル47は、回路板(図示せず)に接続され、この回路板は、電磁式センサ46から受け取った信号を増幅し、これをコンピュータにとって理解可能な形態でコンピュータに伝送する。好ましくは、回路板は、操作取っ手内に収納される。変形例として、回路板を、センサケーブルが取っ手の近位端部から延び出た状態で操作取っ手の外部に設けてもよい。
【0026】
先端部分14の偏向のため、2つの引きワイヤ52がカテーテル10を貫通して延びている。各引きワイヤ52は、操作取っ手16からカテーテル本体12内の中央ルーメン18を通り、そしてチューブ24の小径軸外れルーメン26,27のうちの一方の中へ延びている。各引きワイヤ52の近位端部は、操作取っ手16内に繋留され、各引きワイヤの遠位端部は、先端部分14内に繋留されている。
【0027】
各引きワイヤ52は、任意適当な金属、例えば、ステンレス鋼又はニチノール(Nitinol)で作られている。好ましくは、各引きワイヤ52は、被膜、例えば、テフロン(登録商標)等の被膜を有している。各引きワイヤ52の直径は好ましくは、約0.006インチ乃至約0.0010インチである。好ましくは、引きワイヤ52は共に同一の直径を有している。
【0028】
各引きワイヤ52は、先端部分14の遠位端部の近くに繋留されている。図4に示す実施形態では、引きワイヤ52の遠位端部は両方とも、溶接等によって先端側電極38の盲穴51内に繋留されている。
【0029】
変形例として、引きワイヤ52のうち一方又は両方を先端部分14の側壁に繋留してもよい。図6乃至図8に示すように、第1の小径軸外れルーメン26を貫通して延びる引きワイヤ52は、引きワイヤ52の遠位端部に固定的に取り付けられたアンカー又は繋留部54によってチューブ24の側壁に取り付けられる。繋留部54は、例えば圧着により引きワイヤ52の遠位端部に固定的に取り付けられた金属管55、例えば、短いセグメント状の皮下用素材によって形成されている。この金属管55は、引きワイヤ52の遠位端部を短い距離を越えて延びる部分を有している。ステンレス鋼製リボン等の小さな部品で作られたクロスピース56が、作業中に平らにされる金属管の遠位端部に横方向配列関係をなしてはんだ付け又は溶接される。これにより、T字形バー形繋留部54が作られる。切欠き57が先端部分14のチューブ24の側部に設けられ、その結果、引きワイヤ52を支持した第1の小径軸外れルーメン26に開口部が形成されることになる。クロスピース56は、切欠き57内に横断方向に位置する。クロスピース56を形成するリボンの長さは、第1の小径軸外れルーメン26内への切欠き57の直径よりも大きいので、繋留部54をこの軸外れルーメン内に完全には引き込むことができない。次に切欠き57をポリウレタングルー等で封止して滑らかな外面を生じさせる。グルーが第1の小径軸外れルーメン26内へ流れて繋留部54を完全に固定する。当業者であれば、引きワイヤ52を先端部分14内に繋留する他の手段を想到できるはずであり、かかる手段は本発明の範囲に属する。
【0030】
図示の実施形態では、引きワイヤ52の遠位端部は、先端部分14のチューブ24の互いに反対側の側部に取り付けられている。この設計により、互いに反対側の方向における先端部分14の偏向が可能になる。変形例として、互いに反対側に位置しない先端部分14の周囲の周りの互いに異なる位置に引きワイヤ52を取り付けてもよく、これにより、2つの互いに異なる方向(ただし、互いに反対の方向ではない)への偏向が可能になる。
【0031】
カテーテル10は、図2及び図9に示すように各々が対応関係にある引きワイヤ52を包囲した状態の2つの圧縮コイル58を更に有している。各圧縮コイル58は、任意適当な金属、例えばステンレス鋼で作られている。各圧縮コイル58は、可撓性をもたらし、即ち、曲げを可能にするが圧縮に抵抗するようそれ自体密巻きされたものである。各圧縮コイル58の内径は、これと関連した引きワイヤ52の直径よりも僅かに大きい。例えば、引きワイヤ52の直径が約0.007インチであれば、これと対応関係にある圧縮コイル58の内径は好ましくは、約0.008インチである。引きワイヤ52の被膜により、これら引きワイヤは圧縮コイル58内で自由に摺動することができる。
【0032】
各圧縮コイル58の外面は、その長さの大部分に沿って、カテーテル本体12の中央ルーメン18内での圧縮コイル58と導線30との接触を防止するための可撓性で非導電性のシース59で被覆されている。薄肉のポリイミド製チューブで作られた非導電性シース59が現時点においては好ましい。各シース59は、その近位端部及び遠位端部がポリウレタングルー等でそれぞれ対応関係にある圧縮コイル58に接着されている。
【0033】
カテーテル本体12の遠位端部のところでは、2つの圧縮コイル58は、補剛管22内に直径方向反対側に位置し、したがって、これら圧縮コイルを先端部分14内の2つの小径軸外れルーメン26,28と整列させることができるようになっている。圧縮コイル58及び補剛管22は、圧縮コイルが補剛管内に緊密に且つ摺動自在に嵌まるように寸法決めされている。この設計では、導線30及びセンサケーブル47は、2つの圧縮コイル58を心ずれさせることなくこれら圧縮コイル58の周りにぐるりと分布して位置する。
【0034】
圧縮コイル58はそれぞれ、関連の引きワイヤ52と一緒に別々の小径軸外れルーメン26,27中へ延びている。各圧縮コイル58の近位端部は、ポリウレタングルー等でカテーテル本体12内に固定されている。各圧縮コイル58はその近位端部が接着部(図示せず)によってカテーテル本体12内の補剛管22の近位端部に繋留されている。補剛管22を用いない場合、各圧縮コイル58はカテーテル本体12の外壁20に直接繋留される。
【0035】
各圧縮コイル58の遠位端部は、接着部(図示せず)によってこれと対応関係をなす小径軸外れルーメン26,27内に繋留されている。圧縮コイル58は、互いに異なる長さを有している。短いほうの圧縮コイル58aは、第1の小径軸外れルーメン26の中へ少し、例えば、約5mm乃至約10mmの距離にわたって延びている。短い圧縮コイル58aは、ポリウレタングルー等によって定位置に繋留される。好ましい製造方法では、マンドレル(図示せず)を短い圧縮コイル58aの遠位端部内に挿入し、次に、接着剤を短い圧縮コイルの遠位端部に塗布する。マンドレルは、グルーが圧縮コイルの内側を遮断することがないようにする。次に、短い圧縮コイル58aの遠位端部を第1の小径軸外れルーメン26内へ挿入し、マンドレルを取り外し、そして次に引きワイヤ52のうちの一方を圧縮コイル中へ挿入する。
【0036】
長いほうの圧縮コイル58bは、その遠位端部が短い圧縮コイル58aの遠位端部に対して遠位側へ位置決めされた状態で第2の小径軸外れルーメン27内へ延びている。長い圧縮コイル58bを短い圧縮コイル58aと同様な方法で先端部分14内へ導入するのがよい。好ましい実施形態では、長い圧縮コイル58bは、先端部分14内の2つの位置に繋留されている。繋留穴48を先端部分14のチューブ19の側部に形成することにより、接着部が長い圧縮コイル58bの遠位端部から約1mm乃至2mm手前のところに設けられている。加うるに、長い圧縮コイル58bを先端部分14の近位端部内で、短い圧縮コイル58aの遠位端部を繋留しているのと同一の位置に接着する。
【0037】
圧縮コイル58を先端部分14の長さに沿う互いに異なる位置まで延長させることにより、カテーテルを2つの互いに異なる方向に偏向させて図10に示すように2つの互いに異なる曲線、即ち、曲率半径がそれぞれ互いに異なる2つの曲線を形成することができる。先端部分14を偏向させないとき、即ち、これが中立位置1にあるとき、これは全体として真っ直ぐである。第1の小径軸外れルーメン26内に延びる引きワイヤ(即ち、短い圧縮コイル58aによって包囲された引きワイヤ)の長手方向運動により、先端部分14は第1の曲率半径を持つ第1の曲線2を形成するよう偏向することになる。第1の曲線2は、短い圧縮コイル58aの遠位端部にほぼ相当する先端部分14の長さに沿う第1の位置3から曲がることになる。第2の小径軸外れルーメン27内に延びる引きワイヤ(即ち、長い圧縮コイル58bによって包囲された引きワイヤ)の長手方向運動により、先端部分14は第2の曲率半径を持つ第2の曲線4を形成するよう偏向することになる。第2の曲線4は、長い圧縮コイル58bの遠位端部にほぼ相当する先端部分14の長さに沿う第2の位置5から曲がることになる。かくして、第2の位置5は、第1の位置3の遠位側に位置し、第1の曲線2の曲率半径は、第2の曲線4の曲率半径よりも大きい。その結果、単一の偏向可能なカテーテルを用いると2つの互いに異なる曲線を形成することができる。
【0038】
圧縮コイル58の遠位端部の繋留位置は、先端部分14の偏向によって形成される曲線を定めることになる。正確な繋留位置は、重要な要件ではなく、特定の用途について望ましい曲線で決まることになる。好ましい実施形態では、圧縮コイル58の遠位端部相互間の距離は、約0.5cm乃至約2.5cm、より好ましくは、約1cm乃至約2cmである。
【0039】
小径軸外れルーメン26,27内において、各引きワイヤ52は、好ましくはテフロン(登録商標)で作られたプラスチックシース49で包囲されている。プラスチックシース49は、先端部分を偏向させたときに引きワイヤ52が先端部分14の壁の中へ切れないようにする。好ましくは、各シース49の遠位端部は、各引きワイヤ52の遠位端部の近くで終端し、各シース49の近位端部は、各圧縮コイル58の遠位端部の遠位側へ少し進んだところで終端している。
【0040】
結果的に先端部分14の偏向をもたらすカテーテル本体12に対する引きワイヤ52の長手方向運動は、操作取っ手16を適切に操作することによって達成される。本発明に用いられる適当な2方向操作取っ手は、2001年3月30日に出願された同時係属米国特許出願第09/822,087号(発明の名称:プーリ機構を備えた操作取っ手付きの操向性カテーテル(Steerable Catheter with a Control Handle Having a Pulley Mechanism)に記載されており、かかる米国特許出願の開示内容を本明細書の一部を形成するものとしてここに引用する。他の適当な2方向操作取っ手は、米国特許第6,123,699号、同第6,171,277号、同第6,183,463号及び同第6,198,974号に記載されており、これら米国特許の開示内容を本明細書の一部を形成するものとしてここに引用する。
【0041】
本発明の具体的な実施形態は、以下の通りである。
(A) 2方向に操作可能なカテーテルであって、近位端部、遠位端部及びこれらを貫通して延びるルーメンを備えた細長い可撓性の管状カテーテル本体と、カテーテル本体の遠位端部のところに設けられていて、近位端部及び遠位端部を備えた先端部分とを有し、前記先端部分は、少なくとも第1の軸外れルーメン及び第2の軸外れルーメンが貫通して延びる可撓性プラスチックチューブから成り、前記カテーテルは、カテーテル本体の近位端部に設けられた操作取っ手と、カテーテル本体のルーメン及び先端部分の第1の軸外れルーメンを貫通して延びていて、先端部分内に繋留された遠位端部及び操作取っ手に繋留された近位端部を備える第1の引きワイヤと、カテーテル本体のルーメン及び先端部分の第2の軸外れルーメンを貫通して延びていて、先端部分内に繋留された遠位端部及び操作取っ手に繋留された近位端部を備える第2の引きワイヤと、第1の引きワイヤを包囲した状態でカテーテル本体のルーメンを貫通して延びていて、第1の繋留位置において、カテーテル本体内又は先端部分の第1の軸外れルーメン内に繋留される遠位端部を備えた第1の圧縮コイルと、第2の引きワイヤを包囲した状態でカテーテル本体のルーメンを貫通して第2の軸外れルーメン内へ延びていて、第1の繋留位置に対して遠位側に位置した第2の繋留位置において、先端部分の第2の軸外れルーメン内に繋留される遠位端部を備えた第2の圧縮コイルとを更に有していることを特徴とするカテーテル。
(1)第1の引きワイヤの遠位端部は、先端部分の一方の側部に取り付けられ、第2の引きワイヤの遠位端部は、先端部分の反対側の側部に取り付けられていることを特徴とする実施態様(A)記載のカテーテル。
(2)一方の引きワイヤの遠位端部は、第1の位置でカテーテル本体の遠位端部に取り付けられ、他方の引きワイヤの遠位端部は、第1の位置の近くの第2の位置でカテーテル本体の遠位端部に取り付けられていることを特徴とする実施態様(A)記載のカテーテル。
(3)第1の圧縮コイルの遠位端部は、先端部分の第1の軸外れルーメン内に繋留されていることを特徴とする実施態様(A)記載のカテーテル。
(4)第1の圧縮コイルの遠位端部は、先端部分のほぼ近位端部のところから約5mm乃至約10mmの距離のところで先端部分の第1の軸外れルーメン内に繋留されていることを特徴とする実施態様(A)記載のカテーテル。
(5)第1の繋留位置と第2の繋留位置との間の距離は、約0.5cm乃至約2.5cmの範囲にあることを特徴とする実施態様(A)記載のカテーテル。
(6)第1の繋留位置と第2の繋留位置との間の距離は、約1cm乃至約2cmの範囲にあることを特徴とする実施態様(A)記載のカテーテル。
【0042】
上記説明を本発明の現時点において好ましい実施形態を参照して行った。当業者であれば、本発明の原理的な精神及び範囲から法的に逸脱することなく、上述の構造について種々の改造例及び設計変更例を想到できよう。
【0043】
したがって、上記説明は、添付の図面に示して説明した構造そのものだけに関するものとして解釈されてはならず、最も広く且つ合法的な本発明の範囲を定める請求項に記載の事項と一致し且つこれをサポートするものとして解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0044】
12 カテーテル本体
14 先端部分
16 操作取っ手
18 中央ルーメン
26,27 小径軸外れルーメン
28,29 大径軸外れルーメン
52 引きワイヤ
58 圧縮コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2方向に操作可能なカテーテルであって、
近位端部、遠位端部、及びこれらを貫通して延びるルーメンを備えた細長い可撓性の管状カテーテル本体と、
カテーテル本体の遠位端部のところに設けられていて、近位端部及び遠位端部を備えた先端部分であって、少なくとも第1の軸外れルーメン及び第2の軸外れルーメンが貫通して延びる可撓性プラスチックチューブを備える、先端部分と、
カテーテル本体の近位端部に設けられた操作取っ手と、
カテーテル本体のルーメン及び先端部分の第1の軸外れルーメンを貫通して延びていて、先端部分内に繋留された遠位端部、及び操作取っ手に繋留された近位端部を備える、第1の引きワイヤと、
カテーテル本体のルーメン及び先端部分の第2の軸外れルーメンを貫通して延びていて、先端部分内に繋留された遠位端部、及び操作取っ手に繋留された近位端部を備える、第2の引きワイヤと、
第1の引きワイヤを包囲した状態でカテーテル本体のルーメンを貫通して延びていて、第1の繋留位置において、カテーテル本体内または先端部分の第1の軸外れルーメン内に繋留される遠位端部を備えた、第1の圧縮コイルと、
第2の引きワイヤを包囲した状態でカテーテル本体のルーメンを貫通して第2の軸外れルーメン内へ延びていて、前記第1の引きワイヤの繋留位置の近位の第2の繋留位置において、先端部分の第2の軸外れルーメン内に繋留される遠位端部を備えた、第2の圧縮コイルと、
を有し、
前記第2の圧縮コイルの前記第2の繋留位置は前記第1の圧縮コイルの前記第1の繋留位置の遠位である、
カテーテル。
【請求項2】
請求項1記載のカテーテルにおいて、
第1の引きワイヤの遠位端部は、先端部分の一方の側部に取り付けられ、第2の引きワイヤの遠位端部は、先端部分の反対側の側部に取り付けられている、カテーテル。
【請求項3】
請求項1記載のカテーテルにおいて、
一方の引きワイヤの遠位端部は第1の位置でカテーテル本体の遠位端部に取り付けられ、他方の引きワイヤの遠位端部は第1の位置の近位の第2の位置でカテーテル本体の遠位端部に取り付けられている、カテーテル。
【請求項4】
請求項1記載のカテーテルにおいて、
第1の圧縮コイルの遠位端部は先端部分の第1の軸外れルーメン内に繋留されている、カテーテル。
【請求項5】
請求項1記載のカテーテルにおいて、
第1の圧縮コイルの遠位端部は、先端部分の近位端部から5mm〜10mmの距離のところで先端部分の第1の軸外れルーメン内に繋留されている、カテーテル。
【請求項6】
請求項1に記載のカテーテルにおいて、
前記第1の繋留位置と前記第2の繋留位置との間の距離は、0.5cm〜2.5cmの範囲にある、カテーテル。
【請求項7】
請求項1に記載のカテーテルにおいて、
前記第1の繋留位置と前記第2の繋留位置との間の距離は、1cm〜2cmの範囲にある、カテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−50855(P2012−50855A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243688(P2011−243688)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2002−126956(P2002−126956)の分割
【原出願日】平成14年4月26日(2002.4.26)
【出願人】(508080229)バイオセンス・ウエブスター・インコーポレーテツド (79)
【Fターム(参考)】