説明

2次元コリメータモジュール、放射線検出器、X線CT装置、2次元コリメータモジュールの組立て方法、および2次元コリメータ装置の製造方法。

【課題】組立てが容易で位置精度の高い2次元コリメータモジュールを提供する。
【解決手段】CH(チャネル)方向に並ぶ複数の第1コリメータ板11と、SL(スライス)方向に並ぶ複数の第2コリメータ板12と、第1コリメータ板11をSL方向に挟む第1および第2ブロック13,14とを備え、複数の第1コリメータ板11は、放射線放射方向に沿ったスロット111がSL方向に複数形成された複数のスロット付き板11aと、1つのスロットなし板11bとを含み、スロット付き板11aは、2次元コリメータモジュールに対応する放射線検出素子群のCH方向の境界に対応して配置され、スロットなし板11bは、その放射線検出素子群のCH方向の片側の端辺に対応して配置され、第2コリメータ板12は、スロット111の列ごとに挿入されるとともにスロットなし板11bに当接しており、第2コリメータ板12の一方の板面は、スロット111の一方の側壁と当接する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元コリメータモジュール(collimator module)、放射線検出器、X線CT(Computed
Tomography)装置、2次元コリメータモジュールの組立て方法、および2次元コリメータ(collimator)装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、X線CT装置においては、X線検出器の多列化が進み、スライス(slice)方向の散乱線の影響が深刻になってきている。これに伴い、X線検出器のX線入射面側に配置される散乱線除去用のコリメータとして、コリメータ板がチャネル(channel)方向すなわちX線のファン(fan)角方向だけでなく、スライス方向すなわちX線のコーン(cone)角方向にも複数配列されている2次元コリメータが種々提案されている。
【0003】
例えば、チャネル方向のコリメータ板とスライス方向のコリメータ板とを格子状に組み合わせた2次元コリメータが提案されている(例えば、特許文献1,図1〜図7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−127630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これまでに提案されている2次元コリメータは、組立てが容易でない。例えば、特許文献1の例では、コリメータ板に形成された櫛状の切欠き部構造のために剛性が低くなるため、コリメータ板をその切欠き部に挿入する際、接触摩擦等によりコリメータ板が歪み易く、作業性がよくない。
【0006】
このような事情により、チャネル方向およびスライス方向の散乱線除去が可能であり、組立てが容易な2次元コリメータモジュールが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点の発明は、チャネル方向に配列されている複数の第1コリメータ板と、該複数の第1コリメータ板と組み合わされて格子を形成するようにスライス方向に配列されている複数の第2コリメータ板と、前記複数の第1コリメータ板をスライス方向に挟んで支持する第1ブロック(block)および第2ブロックとを備えた2次元コリメータモジュールであって、前記複数の第1コリメータ板は、放射線焦点からの放射方向に沿った複数のスロット(slot)がスライス方向に並んで形成されている複数のスロット付き第1コリメータ板と、スロットが形成されていない1つのスロットなし第1コリメータ板とを含んでおり、前記複数のスロット付き第1コリメータ板は、前記2次元コリメータモジュールに対応する複数の放射線検出素子のチャネル方向の各境界位置に対応して配置されており、前記スロットなし第1コリメータ板は、前記複数の放射線検出素子のチャネル方向に沿った一端部における端辺位置に対応して配置されており、前記複数の第2コリメータ板は、前記複数のスロット付き第1コリメータ板におけるチャネル方向に並ぶスロットの列ごとにそれぞれ挿入されるとともに、前記スロットなし第1コリメータ板に当接しており、前記第2コリメータ板のスライス方向における一方向側の板面は、前記スロットのスライス方向における2つの壁面のうちの一方と当接している2次元コリメータモジュールを提供する。
【0008】
ここで、「スロット」とは、細長い開口(孔)を意味し、切欠き形状の溝を含まない。
【0009】
第2の観点の発明は、前記2次元コリメータモジュールの放射線入射面側および放射線出射面側の少なくとも一方に、前記複数の第1コリメータ板と接着される固定シート(sheet)を有している上記第1の観点の2次元コリメータモジュールを提供する。
【0010】
第3の観点の発明は、前記複数の第1コリメータ板が、チャネル方向に沿って扇状に配列されている上記第1の観点または第2の観点の2次元コリメータモジュールを提供する。
【0011】
第4の観点の発明は、前記複数の第1コリメータ板が、それぞれ、放射線焦点からの放射線ビーム(beam)のコーン角方向に沿った扇形状を有している上記第1の観点から第3の観点のいずれか一つの観点の2次元コリメータモジュールを提供する。
【0012】
第5の観点の発明は、前記複数の第2コリメータ板が、放射線焦点からの放射線ビームのコーン角方向に沿って扇状に配列されている上記第1の観点から第4の観点のいずれか一つの観点の2次元コリメータモジュールを提供する。
【0013】
第6の観点の発明は、前記複数の第2コリメータ板が、それぞれ、チャネル方向に沿った扇形状を有している上記第1の観点から第5の観点のいずれか一つの観点の2次元コリメータモジュールを提供する。
【0014】
第7の観点の発明は、前記第2コリメータ板の板厚が、0.06mm〜0.22mmであり、前記スロットの幅が、0.1mm〜0.28mmであって、該板厚より幅広である上記第1の観点から第6の観点のいずれか一つの観点の2次元コリメータモジュールを提供する。
【0015】
第8の観点の発明は、前記スロットの幅が、0.20mm〜0.28mmである上記第7の観点の2次元コリメータモジュールを提供する。
【0016】
第9の観点の発明は、上記第1の観点から第8の観点のいずれか一つの観点の2次元コリメータモジュールが放射線入射面側に複数配置された放射線検出器を提供する。
【0017】
第10の観点の発明は、上記第9の観点の放射線検出器を備えているX線CT装置を提供する。
【0018】
第11の観点の発明は、上記第1の観点から第8の観点のいずれか一つの観点の2次元コリメータモジュールの組立て方法であって、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間に、前記複数のスロット付き第1コリメータ板と前記スロットなし第1コリメータ板とを含む複数の第1コリメータ板を、チャネル方向に間隔を置いて配置する工程と、前記複数の第1コリメータ板を前記第1ブロック側に寄せることにより、前記複数の第1コリメータ板を前記第1ブロックの壁面に当接させ、前記スロット付き第1コリメータ板に形成されている複数のスロットの位置を揃える工程と、前記複数の第2コリメータ板を、位置が揃った前記スロットの列ごとにそれぞれ挿入して前記スロットなし第1コリメータ板に当接させる工程と、前記複数の第2コリメータ板を、スライス方向の一方向側に寄せて、前記スロットのスライス方向における一方の壁面に当接させる工程と、前記第1および第2ブロックと前記複数の第1コリメータ板とを接着するとともに、前記複数の第1コリメータ板と前記複数の第2コリメータ板とを接着する工程とを有する2次元コリメータモジュールの組立て方法を提供する。
【0019】
第12の観点の発明は、上記第11の観点の組立て方法により複数の2次元コリメータモジュールを組み立てる工程と、前記2次元コリメータモジュールをチャネル方向に複数配設する工程とを有する、2次元コリメータ装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
上記観点の発明によれば、第2コリメータ板がスロット付き第1コリメータ板のスロットに挿入され、スロットなし第1コリメータ板に当接し、スロットの側壁にも当接していることにより、第1コリメータ板と第2コリメータ板との間で位置合せが良好に行われ、チャネル方向およびスライス方向の散乱線除去が可能であり、組立てが容易で位置精度が高い2次元コリメータモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】X線CT装置の外観図である。
【図2】X線管およびX線検出装置を示す図である。
【図3】2次元コリメータモジュールの斜視図である。
【図4】X線検出装置をスライス方向に見たときの一部拡大断面図である。
【図5】第1コリメータ板と第2コリメータ板を示す図である。
【図6】2次元コリメータモジュールの組立て方法を示すフロー図である。
【図7】トップエンドブロックおよびボトムエンドブロックを位置決めする工程を説明するための図である。
【図8】トップエンドブロックとボトムエンドブロックとの間に複数の第1コリメータ板を挿入する工程を説明するための図である。
【図9】複数の第2コリメータ板をスロットに挿入する工程を説明するための図である。
【図10】複数の第2コリメータ板をトップエンドブロック側に寄せて位置決めする工程を説明するための図である。
【図11】X線入射面側および/またはX線射出面側にX線透過性の固定シートを貼り付ける工程を説明するための図である。
【図12】当て板を使って第2コリメータ板を位置決めするケースを説明するための図である。
【図13】治具を用いて複数の第1コリメータ板をチャネル方向に位置決めする様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明の実施形態について説明する。
【0023】
図1は、X線CT装置100の外観図である。図1に示すように、X線CT装置100は、被検体をスキャン(scan)して投影データ(data)を収集する走査ガントリ(gantry)101と、被検体を載置して撮影空間である走査ガントリ101のボア(bore)に出入りするクレードル(cradle)102とを有している。さらに、X線CT装置100は、X線CT装置100の操作を行ったり、収集された投影データを基に画像を再構成したりする操作コンソール(console)103を具備している。
【0024】
クレードル102は、その内部にモータ(motor)を内蔵し、クレードル102を昇降および水平直線移動する。そして、クレードル102は、被検体を載せて走査ガントリ101のボアに出入りする。
【0025】
操作コンソール103は、操作者からの入力を受け付ける入力装置と、画像を表示するモニタとを具備している。また、操作コンソール103は、その内部に被検体の投影データを収集するための各部の制御や3次元画像再構成処理等を行う中央処理装置と、走査ガントリ101で取得したデータを収集するデータ収集バッファ(buffer)と、プログラム(program)やデータ等を記憶する記憶装置とを備えている。
【0026】
走査ガントリ101は、被検体をスキャンするためのX線管およびX線検出装置を有している。
【0027】
図2は、X線管およびX線検出装置を示す図である。ここでは、図2に示すように、走査ガントリ101の回転軸方向(クレードル102の水平移動方向あるいは被検体の体軸方向)をスライス方向SL、X線ビーム23のファン角方向をチャネル方向CHとする。また、チャネル方向CHおよびスライス方向SLに直交し、走査ガントリ101の回転中心に向かう方向をアイソセンタ方向Iとする。なお、チャネル方向CH、スライス方向SLおよびアイソセンタ方向Iは、それぞれ、矢印の方向を+(プラス)方向とし、その逆方向を−(マイナス)方向とする。
【0028】
X線検出装置40は、X線を検出する複数のX線検出器モジュール50と、X線管20のX線焦点21からのX線ビーム(beam)23をコリメートする複数の2次元コリメータモジュール200と、複数のX線検出器モジュール50および複数の2次元コリメータモジュール200を基準位置に固定するベース(base)部60とを有している。
【0029】
複数の2次元コリメータモジュール200は、チャネル方向CHに沿って配設されて2次元コリメータ装置を形成している。複数のX線検出器モジュール50は、複数の2次元コリメータモジュール200に対してチャネル方向CHに沿って配列されている。ここでは、1つの2次元コリメータモジュール200に対して、1つのX線検出器モジュール50が取り付けられている。また、X線検出器モジュール50は、2次元コリメータモジュール200のX線出射側に設けられている。X線検出器モジュール50は、クレードル102に載置されてボアに搬送された被検体を透過したX線ビームを検出する。なお、2次元コリメータモジュール200とX線検出器モジュール50とは、1対1で対応している必要はなく、1つの2次元コリメータモジュール200に対して、複数のX線検出器モジュール50が取り付けられてもよい。
【0030】
X線検出器モジュール50は、X線を受けて可視光を発する不図示のシンチレータブロック(scintillator block)と、光電変換を行うフォトダイオード(photo
diode)がチャネル方向CHおよびスライス方向SLに沿って2次元的に配列された不図示のフォトダイオードチップ(chip)とを有している。また、X線検出器モジュール50は、基板に設けられたフォトダイオードチップからの出力を積算したり、スライス厚を変えるための出力切換えを行ったりする機能を有している不図示の半導体チップを備えている。
【0031】
ベース部60は、矩形の枠形状であり、一対の円弧状の基底材61およびこれら基底材61の端部を連結した一対の直線状の基底材62を備えている。また、基底材61には、複数の2次元コリメータモジュール200の位置決めをするためのベース側位置決めピンまたは位置決め孔が設けられている。
【0032】
ベース部60において、スライス方向SLの長さは、例えば350mm〜400mmであり、厚みは、例えば35mm〜40mmであり、基底材61および基底材62により構成された内部空間の長さは、例えば300mm〜350mmである。また、各2次元コリメータモジュール200のチャネル方向CHの幅は、例えば50mmである。2次元コリメータモジュール200の詳細については後述する。
【0033】
ベース部60の材料としては、例えば、アルミ(aluminum)合金、カーボン(carbon)繊維と熱硬化樹脂との複合材料である炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等が用いられる。アルミ合金またはCFRPは、軽くて強く、高い耐久性を持っているため、ベース部60がX線CT装置100の走査ガントリ101中で高速回転する際に、余計な離心力を生じることなく、回転することができる。また、ベース部60は歪みにくくなり、それに固定された2次元コリメータモジュール200も歪みにくい。
【0034】
図2では、2次元コリメータモジュール200を簡略化して描いているが、実際には、1つのベース部60に数十個の2次元コリメータモジュール200が固定されている。
【0035】
これより、2次元コリメータモジュールの構造について詳しく説明する。
【0036】
図3は、本実施形態による2次元コリメータモジュールの斜視図であり、図4は、本実施形態による2次元コリメータモジュールが実装されたX線検出装置をスライス方向SLに見たときの一部拡大断面図である。また、図5は、この2次元コリメータモジュールを構成する第1コリメータ板および第2コリメータ板を示す図である。
【0037】
図3に示すように、2次元コリメータモジュール200は、複数の第1コリメータ板11と、複数の第2コリメータ板12と、トップエンドブロック(第1ブロック)13と、ボトムエンドブロック(第2ブロック)14とを有している。複数の第1コリメータ板11は、複数のスロット付き第1コリメータ板11aと、1枚のスロットなし第1コリメータ板11bとにより構成されている。なお、図3では、構造を分かりやすくするために、第1コリメータ板11および第2コリメータ板12を少なめに描いているが、実際には、第1コリメータ板11は、32枚〜64枚程度、第2コリメータ板12は、129枚〜257枚程度が想定される。
【0038】
図3に示すように、複数の第1コリメータ板11は、板面同士が略平行になるようにチャネル方向CHに間隔を空けて配置されている。より詳しくは、図3および図4に示すように、スロット付き第1コリメータ板11aは、実装されたときに対応するX線検出器モジュール50の各検出素子51のチャネル方向CHにおける境界に位置するように配置されている。また、スロットなし第1コリメータ板11bは、実装されたときに対応するX線検出器モジュール50のチャネル方向CHにおける所定の片方の端部に位置する検出素子の外側端辺と対応する位置に配置されている。本例では、+CH方向の端部に位置する検出素子51bの外側端辺と対応する位置に配置されている。なお、X線検出器モジュール50のチャネル方向CHにおける所定の片方とは逆の端部に位置する検出素子、本例では、+CH方向の端部に位置する検出素子51aの外側端辺と対応する位置には、第1コリメータ板11は配置されていない。
【0039】
トップエンドブロック13およびボトムエンドブロック14は、複数の第1コリメータ板11をスライス方向SLで挟むように配置されている。
【0040】
複数の第2コリメータ板12は、複数の第1コリメータ板11と略直交するように組み合わされている。すなわち、複数の第1コリメータ板11と複数の第2コリメータ板12とは、組み合わさって、格子状の2次元コリメータ部分を形成している。
【0041】
2次元コリメータモジュール200がチャネル方向CHに並んで配置されると、スロットなし第1コリメータ板11bは、互いに隣接する検出器モジュール50間の境界に対応する位置に配置されるようになっている。
【0042】
トップエンドブロック13、ボトムエンドブロック14、複数の第1コリメータ板11、および複数の第2コリメータ板12は、それぞれ所定の方法で位置決めされ、接着剤等により互いに接着されている。
【0043】
これより、2次元コリメータモジュールの構成要素について、さらに詳しく説明する。
【0044】
図5に示すように、第1コリメータ板11は、矩形状または緩やかに曲がった扇状である。第1コリメータ板11は、X線を吸収しやすい重金属、例えばモリブデン(molybdenum)、タングステン(tungsten)、鉛などにより構成されている。2次元コリメータモジュール200がベース部60に取り付けられた際には、第1コリメータ板11の板面は、X線焦点21からのX線ビーム23の放射方向と平行になり、その長辺方向はスライス方向SLまたはX線ビームのコーン角方向と一致する。なお、ここでは、第1コリメータ板11の板厚は、約0.2mmである。
【0045】
スロット付き第1コリメータ板11aの板面には、第2コリメータ板12を挿入するための細長い開口(孔)、いわゆるスロット111が複数形成されている。複数のスロット111は、2次元コリメータモジュール200がベース部60に取り付けられた際には、X線焦点21からのX線ビーム23の放射方向に沿うように形成されている。
【0046】
スロットなし第1コリメータ板11bは、スロット付き第1コリメータ板11aと外形は同一であるが、その板面にスロットは形成されていない。
【0047】
ところで、スロット付き第1コリメータ板11aに形成されたスロット111のスライス方向SLの幅は、第2コリメータ板12の挿入を容易にするには、第2コリメータ板12の板厚に対して十分な余裕を持つ方がよい。一方、スロット111の幅が広すぎると、第1コリメータ板11の剛性が低くなり、組立て時やスキャン時に歪みが生じ易くなる。これらを考慮すると、第2コリメータ板12の板厚は、0.06mm〜0.22mmであり、スロット111のスライス方向SLの幅は、0.1mm〜0.28mmであって、第2コリメータ板12の板厚より幅広であることが好ましい。
【0048】
また、スロット111をワイヤ(wire)放電で加工する場合、使用するワイヤとして、0.1mm径、0.2mm径、0.3mm径などの選択肢があるが、コストと加工精密度とのバランスは、0.2mm径がよい。これを考慮すると、スロット111のスライス方向SLの幅は、0.2mm〜0.28mm程度がさらに好ましい。
【0049】
ここでは、スロット111のスライス方向SLの幅は、約0.24mmであり、スロット111のアイソセンタ方向Iの長さは、約15.4mmである。
【0050】
図4に示すように、第2コリメータ板12は、矩形に近い扇形状を有している。第2コリメータ板12は、第1コリメータ板11と同様に、X線を吸収しやすい重金属により構成されている。2次元コリメータモジュール200がベース部60に取り付けられた際には、第2コリメータ板12の板面は、X線焦点21からのX線ビーム23の放射方向と平行になり、その扇形状を形成する湾曲した長辺の方向はチャネル方向CHに一致する。
【0051】
図3に示すように、第2コリメータ板12は、複数のスロット付き第1コリメータ板11aにおけるチャネル方向CHに並ぶスロット111の列ごとに当該スロット111を貫くように挿入されている。複数の2次元コリメータモジュール200がベース部60に取り付けられた際には、図4に示すように、互いに隣接する2次元コリメータモジュール200の一方における、最も−CH方向寄りのスロット付き第1コリメータ板11aおよび第2コリメータ板12により形成される壁板と、互いに隣接する2次元コリメータモジュール200の他方における、スロットなし第1コリメータ板11bの壁板とが、チャネル方向CHで合わさり、格子状の2次元コリメータの一部を形成するようになっている。
【0052】
ところで、第2コリメータ板12は、熱変形等による位置ずれが生じる。このような位置ずれが起こると、X線の遮蔽状況が変化して検出セル間でのクロストークが発生し、X線検出装置20の検出特性が変動する。これを抑えるには、第2コリメータ板12の板厚を薄くすることが有効である。一方、板厚を薄くし過ぎると剛性が低くなり、組立て時やスキャン時に歪みを生じ易くなる。これらを考慮すると、第2コリメータ板12の板厚は、0.06mm〜0.14mm程度が好適であり、0.08mm〜0.12mm程度がより好ましい。ここでは、第2コリメータ板12の板厚は、約0.1mmである。また、第2コリメータ板12の短辺方向の幅は、約15mmである。
【0053】
トップエンドブロック13およびボトムエンドブロック14は、アルミニウムなどの軽量な金属またはプラスチック(plastic)により構成されている。
【0054】
図3に示すように、トップエンドブロック13は、チャネル方向CHおよびスライス方向SLに直交する方向、すなわちアイソセンタ方向Iに延びる柱部13Tと、−SL方向に張り出したフランジ(flange)部13Fとを有しており、これらは一体的に形成されている。したがって、トップエンドブロック13は、−CH方向に見ると、概ね逆「L」字形状を有している。
【0055】
同様に、ボトムエンドブロック14は、アイソセンタ方向Iに延びる柱部14Tと、+SL方向に張り出したフランジ(flange)部14Fとを有しており、これらは一体的に形成されている。したがって、ボトムエンドブロック14は、−CH方向に見ると、概ね「L」字形状を有している。
【0056】
また、図3に示すように、トップエンドブロック13およびボトムエンドブロック14のフランジ部13F,14Fの中央には、位置決め用の孔が形成されており、この孔に位置決めピン135,145が挿入され、配置されている。この位置決めピン135,145をあるべき位置に固定すると、2次元コリメータモジュール200は、ベース部60の基準位置に位置決めされる。
【0057】
位置決めピン135(145)の周囲には4つの位置決め孔136(146)が形成されている。これら4つの位置決め孔136(146)は、図2で示されたX線検出モジュール50が正確に取り付けられるよう形成されている。
【0058】
図3に示すように、トップエンドブロック13およびボトムエンドブロック14の互いに対向するそれぞれの面13a,14aは、2次元コリメータモジュール200がベース部60に取り付けられた際には、X線焦点21からのX線ビーム23の放射方向に沿うように形成されている。
【0059】
スロット付き第1コリメータ板11aに形成されたスロット111の−SL方向側の側壁111Kは、基準面であり、第1コリメータ板11のスライス方向SLの端辺に対して所定の正確な位置関係を持つように形成されている。
【0060】
第1コリメータ板11の−SL方向側の端辺は、トップエンドブロック13の壁面13aと当接している。また、第1コリメータ板11の+SL方向側の端辺は、ボトムエンドブロック14の壁面14aにほぼ当接しているが、形状のバラツキによりわずかな空間を持って近接しているものもある。
【0061】
第2コリメータ板12の−SL方向側の板面は、上記の位置決めされた壁面、すなわち、スロット付き第1コリメータ板11aにおけるスロット111のスライス方向SLにおける両壁面のうち、−SL方向側の側壁111Kと当接している。
【0062】
そして、第2コリメータ板12の+CH方向の端辺は、それぞれ、スロットなし第1コリメータ板11bの板面に当接している。
【0063】
このような状態で、複数の第1コリメータ板11、複数の第2コリメータ板12、トップエンドブロック13、およびボトムエンドブロック14は、互いに接着剤で接着され、固定されている。
【0064】
これより、本実施形態に係る2次元コリメータモジュールの組立て方法について説明する。図6は、本実施形態に係る2次元コリメータモジュールの組立て方法を示すフロー図である。
【0065】
ステップS111では、図7に示すように、トップエンドブロック13およびボトムエンドブロック14を、治具等を用いて所定の位置に位置決めする。
【0066】
ステップS112では、図8に示すように、トップエンドブロック13とボトムエンドブロック14との間に、複数の第1コリメータ板11をチャネル方向CHに間隔を置いて配置する。このとき、2次元コリメータモジュールと対応する複数のX線検出素子のチャネル方向CHにおける境界に対応する位置に配置されるものを、スロット付き第1コリメータ板11aとする。また、上記複数のX線検出素子の+CH方向における端部のX線検出素子の端辺に対応する位置に配置される一枚だけを、スロットなし第1コリメータ板11bとする。
【0067】
ステップS113では、複数の第1コリメータ板11を、治具等を用いて大まかに位置決めする。例えば図13に示すように、第1コリメータ板11の上下端を、複数の切欠き部を有するくし状の部材301,302でチャネル方向CHに軽く挟み込む。この時点では、第1コリメータ板11はスライス方向SLに移動可能である。
【0068】
ステップS114では、複数の第1コリメータ板11をトップエンドブロック13側(−SL方向)に押圧して寄せる。すると、第1コリメータ板11の−SL方向側の端辺がトップエンドブロック13の壁面13aに当接する。その結果、スロット付き第1コリメータ板11aの各スロット111は、チャネル方向CHにほぼ重なる。これにより、第2コリメータ板12をスロット111に容易に挿入することができるようになる。
【0069】
ステップS115では、図9に示すように、複数の第2コリメータ板12をスロット111に挿入し、スロットなし第1コリメータ板11bに当接して止まるまで押し込む。
【0070】
ステップS116では、第2コリメータ板12を、−SL方向に押圧して寄せる。その結果、図10に示すように、第2コリメータ板12は、スロット111の−SL方向側の壁面111Kに当接し、位置決めされる。
【0071】
ステップS117では、この状態で、複数の第1コリメータ板11、複数の第2コリメータ板12、トップエンドブロック13、およびボトムエンドブロック14を固定し、互いに接着剤等で接着する。これで、2次元コリメータモジュール200が完成する。
【0072】
なお、2次元コリメータモジュール200の剛性をさらに高めるために、図11に示すように、X線入射面側およびX線射出面側の少なくとも一方に、複数の第1コリメータ板11と接着されるX線透過性の固定シート15を貼り付けてもよい。固定シート15は、例えば、剛性が高く、軽量で、X線透過性が高い、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)により構成されている。また、固定シート15は、例えば、第1コリメータ板11の長辺に合わせた溝が形成されており、この溝に第1コリメータ板11の長辺側の端辺を挿入して、接着させるようにしてもよい。
【0073】
このように、上記の2次元コリメータモジュールの組立て方法によれば、第1コリメータ板11のスライス方向SLの移動により、スロット111の位置を揃えて第2コリメータ板12のスロット111への挿入を容易にしたり、第1コリメータ板11および第2コリメータ板12を基準面に押し当てて位置決めを行ったりすることができるので、組立てが容易であり、かつ、位置決め精度が高い。
【0074】
ところで、第2コリメータ板12のスロット111への挿入を容易にするには、第2コリメータ板12の板厚に対してスロット111の幅を十分に大きくする必要がある。この場合、いわゆる遊びが大きくなり、通常であれば、第2コリメータ板12の位置決め精度が悪くなる。反対に、第2コリメータ板12の板厚に対してスロット111の幅をギリギリまで小さくすると、第2コリメータ板12の位置決め精度はよくなるが、第2コリメータ板12のスロット111への挿入は難しくなり、組立ての生産性が悪くなる。
【0075】
一方、本例の場合、第2コリメータ板12をスロット111へ挿入する際には、複数の第1コリメータ板11をトップエンドブロック13側に寄せて第1コリメータ板11のスライス方向SLの位置を揃え、チャネル方向CHで対応するスロット111同士を重ねるので、スロット111の幅が大きいほど、第2コリメータ板12の挿入を容易にすることができる。そして、第2コリメータ板12の挿入後は、第2コリメータ板12を基準面であるスロット111の側壁111Kに当接させるので、よい精度で位置決めすることができる。つまり、本例の2次元コリメータモジュールは、第2コリメータ板12の板厚に対してスロット111の幅を比較的大きくしたとしても、第2コリメータ板12の挿入の容易さと、位置決め精度のよさとの両立を図ることができるという優れた特徴を有している。そのため、スロット111の幅および第2コリメータ板12の板厚の自由度が上がり、それぞれ好適な大きさにすることができる。
【0076】
また、+CH方向の端部には、スロットなし第1コリメータ板11bを配置しているので、第2コリメータ板12をこの第1コリメータ板11bの板面に当接させるだけで、第2コリメータ板12のCH方向の位置決めを行うことができる。
【0077】
仮に、+CH方向の端部にも、スロット付き第1コリメータ板11aを配置させた場合を考える。この構成は、スロットなし第1コリメータ板11bを用意する必要がなく、パーツの種類を極力減らすという観点から見れば、通常は最初に検討されるであろうスタンダードな構成と言える。
【0078】
しかし、この場合には、第2コリメータ板12がこの端部のスロット付き第1コリメータ板11aのスロット111を貫通しないで位置決めができるよう、図12に示すように、この端部のスロット付き第1コリメータ板11aの外側の板面に当て板19を当てておかなければならない。このようにすると、まずは、当て板19を配置する手間が増える。
【0079】
また、スロット付き第1コリメータ板11aは、板厚が薄く、さらにスロット111も多数形成されているために、剛性が低く歪みやすい。そのため、当て板19とその+CH方向の端部のスロット付き第1コリメータ板1aとの間に隙間が生じ、第2コリメータ板12の先端がスロット111を貫通して外側にわずかに突出することがある。この状態で接着されてしまった場合には、その突出部分を削り取る作業が必要になり、煩雑な作業が増えることになる。
【0080】
また、端部のスロット付き第1コリメータ板11aと第2コリメータ板12とを接着剤で接着する際に、接着剤がスロット111から漏れて、当て板19も共に接着してしまうことがある。この場合には、当て板19をスロット第1コリメータ板11aから剥がしたり、固まった接着剤を削り取る作業が必要になる。
【0081】
このように、+CH方向の端部にだけ、スロットなし第1コリメータ板11bを配置することのメリットは非常に大きいことが分かる。
【0082】
本実施形態によれば、シンプルな構造で、位置精度や角度精度の高い2次元コリメータモジュールを実現することができる。また、2次元コリメータモジュールの組立ても非常に容易である。
【0083】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明の実施形態は、上記の実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加・変更が可能である。
【0084】
なお、発明の実施形態の例は、コリメータモジュールおよびその組立て方法だけでなく、このようコリメータモジュールが複数配置されているX線検出器、さらに、このようなX線検出器を備えたX線CT装置もまた発明の実施形態の例である。
【0085】
また、発明の実施形態は、X線用に限定されず、他の放射線、例えばSPECT装置が扱うようなγ(ガンマ)線用にも適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
11 第1コリメータ板
11a スロット付き第1コリメータ板
11b スロットなし第1コリメータ板
12 第2コリメータ板
13 トップエンドブロック(第1ブロック)
14 ボトムエンドブロック(第2ブロック)
13T,14T 柱部
13F,14F フランジ部
15 固定シート
19 当て板
20 X線管
21 X線焦点
23 X線ビーム
40 X線検出装置
50 X線検出器モジュール
60 ベース部
61 基底材
62 基底材
100 X線CT装置
101 走査ガントリ
102 クレードル
103 操作コンソール
111 スロット
111K 壁面(基準面)
135,145 位置決めピン
136,146 位置決め孔
200 2次元コリメータモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル方向に配列されている複数の第1コリメータ板と、該複数の第1コリメータ板と組み合わされて格子を形成するようにスライス方向に配列されている複数の第2コリメータ板と、前記複数の第1コリメータ板をスライス方向に挟んで支持する第1ブロックおよび第2ブロックとを備えた2次元コリメータモジュールであって、
前記複数の第1コリメータ板は、放射線焦点からの放射方向に沿った複数のスロットがスライス方向に並んで形成されている複数のスロット付き第1コリメータ板と、スロットが形成されていない1つのスロットなし第1コリメータ板とを含んでおり、
前記複数のスロット付き第1コリメータ板は、前記2次元コリメータモジュールに対応する複数の放射線検出素子のチャネル方向の各境界位置に対応して配置されており、
前記スロットなし第1コリメータ板は、前記複数の放射線検出素子のチャネル方向に沿った一端部における端辺位置に対応して配置されており、
前記複数の第2コリメータ板は、前記複数のスロット付き第1コリメータ板におけるチャネル方向に並ぶスロットの列ごとにそれぞれ挿入されるとともに、前記スロットなし第1コリメータ板に当接しており、
前記第2コリメータ板のスライス方向における一方向側の板面は、前記スロットのスライス方向における2つの壁面のうちの一方と当接している2次元コリメータモジュール。
【請求項2】
前記2次元コリメータモジュールの放射線入射面側および放射線出射面側の少なくとも一方に、前記複数の第1コリメータ板と接着される固定シートを有している請求項1に記載の2次元コリメータモジュール。
【請求項3】
前記複数の第1コリメータ板は、チャネル方向に沿って扇状に配列されている請求項1または請求項2に記載の2次元コリメータモジュール。
【請求項4】
前記複数の第1コリメータ板は、それぞれ、放射線焦点からの放射線ビームのコーン角方向に沿った扇形状を有している請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の2次元コリメータモジュール。
【請求項5】
前記複数の第2コリメータ板は、放射線焦点からの放射線ビームのコーン角方向に沿って扇状に配列されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の2次元コリメータモジュール。
【請求項6】
前記複数の第2コリメータ板は、それぞれ、チャネル方向に沿った扇形状を有している請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の2次元コリメータモジュール。
【請求項7】
前記第2コリメータ板の板厚は、0.06mm〜0.22mmであり、
前記スロットの幅は、0.1mm〜0.28mmであって、該板厚より幅広である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の2次元コリメータモジュール。
【請求項8】
前記スロットの幅は、0.20mm〜0.28mmである請求項7に記載の2次元コリメータモジュール。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の2次元コリメータモジュールが放射線入射面側に複数配置された放射線検出器。
【請求項10】
請求項9に記載の放射線検出器を備えているX線CT装置。
【請求項11】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の2次元コリメータモジュールの組立て方法であって、
前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間に、前記複数のスロット付き第1コリメータ板と前記スロットなし第1コリメータ板とを含む複数の第1コリメータ板を、チャネル方向に間隔を置いて配置する工程と、
前記複数の第1コリメータ板を前記第1ブロック側に寄せることにより、前記複数の第1コリメータ板を前記第1ブロックの壁面に当接させ、前記スロット付き第1コリメータ板に形成されている複数のスロットの位置を揃える工程と、
前記複数の第2コリメータ板を、位置が揃った前記スロットの列ごとにそれぞれ挿入して前記スロットなし第1コリメータ板に当接させる工程と、
前記複数の第2コリメータ板を、スライス方向の一方向側に寄せて、前記スロットのスライス方向における一方の壁面に当接させる工程と、
前記第1および第2ブロックと前記複数の第1コリメータ板とを接着するとともに、前記複数の第1コリメータ板と前記複数の第2コリメータ板とを接着する工程とを有する2次元コリメータモジュールの組立て方法。
【請求項12】
請求項11に記載の組立て方法により複数の2次元コリメータモジュールを組み立てる工程と、前記2次元コリメータモジュールをチャネル方向に複数配設する工程とを有する、2次元コリメータ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−64627(P2013−64627A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202966(P2011−202966)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】