2次元フォトニック結晶共振器
本発明は、高いQ値を実現することができる2次元フォトニック結晶共振器を提供することを目的として成されたものである。スラブ状の本体21に空孔22を周期的に配列する。本体21を3つの領域31〜33に分け、空孔22の配列周期を、領域31内ではa1とし、領域32及び33ではa1よりも小さいa2とする。また、空孔22を線状に欠損させることにより、これら3つの領域を通過する導波路23を設ける。これにより、導波路23は空孔22の周期に依存した波長帯域の光を伝播させることができる。領域31と領域32及び33では、空孔の周期が異なるため導波路を伝播する光の波長帯域が異なる。そのため、領域31の導波路透過波長帯域には含まれるが領域32及び33の導波路透過波長帯域には含まれない波長の光は、領域31の導波路に閉じこめられて共振する。このように領域31の導波路が共振器として機能する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長分割多重通信用波長分合波器等に用いられる2次元フォトニック結晶に関し、特に、所定の波長の光を共振させる共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学機能材料であるフォトニック結晶が注目されている。フォトニック結晶は、それが有する周期により光や電磁波のエネルギーに対してバンド構造が形成され、光や電磁波の伝播が不可能となるエネルギー領域(フォトニックバンドギャップ)が形成されるという特徴を有する。なお、本明細書において用いる「光」には、電磁波を含むものとする。
【0003】
フォトニック結晶中に適切な欠陥を導入することにより、エネルギー準位(欠陥準位)がフォトニックバンドギャップ中に形成される。これにより、フォトニックバンドギャップ中のエネルギーに対応する波長(周波数)範囲のうち、欠陥準位のエネルギーに対応する波長の光のみがその欠陥の位置において存在可能になる。この欠陥を線状に設けることにより導波路が形成され、点状に設けることにより光共振器が形成される。この点状欠陥において共振する光の波長(共振波長)はその形状や屈折率に依存する。
【0004】
この共振器及び導波路を用いて様々な光デバイスを作製することが検討されている。例えば、この共振器を導波路の近傍に配置することにより、導波路内を伝播する様々な波長の光のうち共振器の共振波長に一致する波長の光を導波路から共振器を介して外部へ取り出す光分波器として機能すると共に、共振器の共振波長を有する光を外部から共振器を介して導波路に導入する光合波器としても機能する光分合波器となる。このような光分合波器は、例えば光通信の分野において、一本の導波路に複数の波長の光を伝播させてそれぞれの波長の光に別個の信号を乗せる波長分割多重方式通信に用いることができる。
【0005】
フォトニック結晶には2次元結晶と3次元結晶があるが、このうち2次元フォトニック結晶は製造が比較的容易であるという利点を有する。その一例として、特許文献1には、高屈折率の板材(スラブ)に、その材料よりも屈折率の低い物質を周期的に配列した2次元フォトニック結晶であって、その周期的配列を線状に欠陥させた導波路と、周期的配列を乱す点状欠陥(共振器)を導波路に隣接して設けた2次元フォトニック結晶及び光分合波器が記載されている。ここでは、低屈折率物質の周期的な配列は、スラブに周期的に孔を開けて形成されている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−272555号公報([0019]〜[0032]、[0055]、[0056]、図1、図22、図23)
【0007】
このような2次元フォトニック結晶を用いた共振器では、できるだけQ値を高くすることが重要である。Q値は共振器の性能を表す値であり、Q値が大きいほど共振器から外部への光の漏れが小さくなることを意味する。また、Q値を高くすることは、共振器自体の性能を高くするのみならず、このような共振器を用いた光分合波器の精度を高くすることをも意味する。具体的には、光分合波器では、共振器のQ値が大きいほど波長分解能が高くなり、共振波長以外の波長の光(ノイズ光)が分合波される確率が小さくなるため、分合波の精度がよくなる。
【0008】
しかし、2次元フォトニック結晶ではスラブ面に垂直な方向の光の閉じ込めが弱いため、一般に3次元フォトニック結晶よりもQ値が小さい。特許文献1に記載の光分合波器では、共振器のQ値はおよそ500であり、その共振器から分合波される光のスペクトルの半値全幅はおよそ3nmである。これらの値は、高密度波長分割多重方式の光通信に用いるためには不十分であり、波長分解能をおよそ0.8nm以下、Q値をおよそ2000以上にすることが望ましい。そのため、更にQ値の高い2次元フォトニック結晶共振器を実現することが求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、高いQ値を実現することができるような、新しい形態の2次元フォトニック結晶共振器、及びこのような共振器を用いた分合波器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために成された本発明に係る2次元フォトニック結晶共振器は、
a)第1透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第1領域と、
b)第1領域に隣接して設けた領域であって、第1領域の導波路と接続され第2透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第2領域と、
c)第1領域に隣接して設けた領域であって、第1領域の導波路と接続され第3透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第3領域と、
を備え、第1透過波長帯域の一部が第2透過波長帯域及び第3透過波長帯域に含まれないようにすることにより、第1領域の導波路内の光を第2領域及び第3領域との境界において反射させ、共振させることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る2次元フォトニック結晶共振器の他の態様のものは、
a)第1透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第1領域と、
b)第1領域を取り囲むように設けた領域であって、第1領域の導波路の両端と接続され第2透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第2領域と、
を備え、第1透過波長帯域の一部が第2透過波長帯域に含まれないようにすることにより、第1領域の導波路内の光を第2領域との2つの境界において反射させ、共振させることを特徴とする。
【0012】
上記2次元フォトニック結晶共振器は、具体的には以下に挙げる第1〜第4の態様のものとすることが望ましい。
【0013】
本発明に係る2次元フォトニック結晶共振器の第1の態様のものは、
a)第1周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第1領域と、
b)第1領域に隣接して設けた2つの領域であって、第1周期とは異なる第2周期及び第3周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第2領域及び第3領域と、
c)第2領域、第1領域、第3領域の順に通過する導波路と、
を備え、第1領域の導波路内の光を第2領域及び第3領域との境界において反射させることにより共振させることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る2次元フォトニック結晶共振器の第2の態様のものは、
a)第1周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第1領域と、
b)第1領域を取り囲むように設けた、第1周期とは異なる第2周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第2領域と、
c)第2領域、第1領域、第2領域の順に通過する導波路と、
を備え、第1領域の導波路内の光を第2領域との2つの境界において反射させることにより共振させることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る2次元フォトニック結晶共振器の第3の態様のものは、
a)スラブ状の本体と、
b)前記本体に該本体とは屈折率の異なる所定の大きさの異屈折率部を周期的に設けて成る第1領域と、
c)第1領域に隣接して設けた2つの領域であって、第1領域のものとは大きさの異なる異屈折率部を周期的に設けて成る第2領域及び第3領域と、
d)第2領域、第1領域、第3領域の順に通過する導波路と、
を備え、第1領域の導波路内の光を第2領域及び第3領域との境界において反射させることで共振させることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る2次元フォトニック結晶共振器の第4の態様のものは、
a)スラブ状の本体と、
b)前記本体に該本体とは屈折率の異なる所定の大きさの異屈折率部を周期的に設けて成る第1領域と、
c)第1領域を取り囲むように設けた、第1領域のものとは大きさの異なる異屈折率部を周期的に設けて成る第2領域と、
d)第2領域、第1領域、第2領域の順に通過する導波路と、
を備え、第1領域の導波路内の光を第2領域との2つの境界において反射させることにより共振させることを特徴とする。
【0017】
第1及び第2の態様の2次元フォトニック結晶共振器では、第1周期を他の周期よりも大きくすることが望ましい。ここで、「他の周期」とは、第1の態様においては第2周期及び第3周期を指し、第2の態様においては第2周期を指す。また、第3及び第4の態様の2次元フォトニック結晶共振器では、第1領域の異屈折率部の大きさを他の領域の異屈折率部の大きさよりも小さくすることが望ましい。
【0018】
本発明に係る2次元フォトニック結晶共振器は、少なくとも第1領域と、それぞれ第1領域に隣接する第2領域及び第3領域を有する。第1〜第3の各領域にそれぞれ導波路を形成する。このような導波路は、例えば各領域中の線状の範囲内の周期を乱すことにより形成することができる。第2領域の導波路及び第3領域の導波路はそれぞれ第1領域の導波路に接続される。即ち、第2領域、第1領域、第3領域の順に通過する導波路が形成される。
【0019】
導波路中を透過することができる光の波長帯域(透過波長帯域)は、2次元フォトニック結晶が有する周期や、その周期構造を構成する部材の大きさ・形状・材料、あるいは導波路の幅・材料等をパラメータとして、適宜設定することができる。本発明では、第1領域の導波路の透過波長帯域(第1透過波長帯域)の一部が第2及び第3領域の導波路の透過波長帯域(第2透過波長帯域及び第3透過波長帯域)の双方に含まれないようにする。このような一部波長帯域の光が後述のように本発明の共振器において共振するため、以下、この一部波長帯域を「共振波長帯域」と呼ぶ。
【0020】
図1(a)に示すように、第1透過波長帯域11(図の太枠内)よりも短波長側に第2透過波長帯域12及び第3透過波長帯域13を形成することにより、第1透過波長帯域11の長波長側に共振波長帯域111a(図の斜線部)を形成する。逆に、図1(b)に示すように第1透過波長帯域11よりも長波長側に第2及び第3透過波長帯域12及び13を形成することにより、透過波長帯域11の短波長側に共振波長帯域111bを形成する。
【0021】
この2次元フォトニック結晶共振器の作用について説明する。上記のように第1〜第3透過波長帯域を設定することにより、共振波長帯域に含まれる波長の光は、第1領域の導波路を伝播することはできるが、第2及び第3領域の導波路を伝播することはできない。そのため、この波長の光が第1領域の導波路内に存在する場合、この光は第1領域と第2領域の境界及び第1領域と第3領域の境界において反射される。これにより、第1領域の導波路が共振器として作用する。
【0022】
本発明の2次元フォトニック結晶共振器では、上記のように第1領域に隣接した2つの領域を設ける代わりに、第1領域を取り囲むような第2領域を1つ設けてもよい。この場合、第2領域の導波路は第1領域の導波路の両端に接続する。即ち、第2領域、第1領域、第2領域の順に通過するような導波路が形成される。第1領域の導波路の透過波長帯域の一部が第2領域の導波路の透過波長帯域に含まれないようにすることにより、上記と同様に、第1領域の導波路内の光を第2領域の導波路との2つの境界において反射させ、共振させることができる。
【0023】
共振波長帯域は、2次元フォトニック結晶の周期や、この周期を形成する異屈折率部の大きさ等を調節することにより設定することができる。以下、そのような共振波長帯域の調節が成された構成を有する4つの態様の2次元フォトニック結晶共振器について説明する。第1及び第2の態様のものは周期を、第3及び第4の態様のものは異屈折率部の大きさを調節したものである。
【0024】
第1の態様の2次元フォトニック結晶共振器について説明する。
この2次元フォトニック結晶共振器は、第1領域と、それぞれ第1領域に隣接する第2領域及び第3領域を有する。これら第1〜第3領域はそれぞれ第1〜第3周期を有する。第2周期と第1周期、及び第3周期と第1周期は異なる値とする。各領域が有する周期により、各領域においてフォトニックバンドギャップが形成され、そのバンドギャップ内の波長の光はフォトニック結晶中に存在できなくなる。
【0025】
第2領域、第1領域、第3領域の順に、これら3つの領域を導波路が通過する。導波路透過波長帯域は各領域の周期に依存するため、第1領域の導波路透過波長帯域の一部は第2領域及び第3領域における導波路透過波長帯域に含まれないようになる。
【0026】
このような導波路は、例えば各領域中の線状の範囲内の周期を乱すことにより形成することができる。この線状範囲内では、フォトニックバンドギャップ中の一部の波長範囲の光が存在可能となり、その波長範囲の光が伝播可能となる。このように形成される導波路は、透過波長帯域に含まれる波長の光を導波路を伝播させることができるのに対して、透過波長帯域に含まれない波長の光を伝播させることができない。2次元フォトニック結晶の周期が大きくなるほど、透過波長帯域は長波長側にシフトする。そのため、第1周期を第2周期及び第3周期よりも大きくすることにより、図1(a)に示すように、第1透過波長帯域11(図の太枠内)の長波長側に、第2及び第3透過波長帯域12及び13に含まれない共振波長帯域111aを形成することができる。逆に、第1周期を第2周期及び第3周期よりも小さくすることにより、図1(b)に示すように、第1透過波長帯域11の短波長側に、第2及び第3透過波長帯域12及び13に含まれない共振波長帯域111bを形成することができる。
【0027】
第1の態様の2次元フォトニック結晶の共振器としての作用について説明する。共振波長帯域に含まれる波長の光が第1領域の導波路に存在する場合、この光は第2領域及び第3領域の導波路透過波長帯域に含まれないため、第2領域及び第3領域の導波路を伝播することができず、第1領域と第2領域の境界及び第1領域と第3領域の境界において反射される。そのため、この光が第1領域の導波路内で共振し、第1領域の導波路が共振器として作用する。
【0028】
2次元フォトニック結晶の周期の構成によっては、導波路透過波長帯域の一部に、結晶の面の外に光が漏れる波長帯域が形成されてしまう場合がある。本発明では、このような漏れの生じる波長帯域が共振波長帯域内に形成されないようにすることが望ましい。例えば、結晶本体とは異なる屈折率を有する物質を三角格子状に配置した2次元フォトニック結晶の場合、この物質を線状に欠損させて形成される導波路は、その導波路透過波長帯域中の短波長側に、結晶面の外に光が漏れる波長帯域を有する。この場合、第1周期を第2周期及び第3周期よりも小さくすると図1(b)に示す共振波長帯域111b内の光が共振器から結晶面の外に漏れる。図1(a)の場合にはそのような漏れは生じない。従って、この例の2次元フォトニック結晶では、第1周期を第2周期及び第3周期よりも大きくすることが望ましい。
【0029】
次に、第2の態様の2次元フォトニック結晶共振器について説明する。
この共振器は、第1周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第1領域を有し、その第1領域を取り囲むように、第1周期とは異なる第2周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第2領域を有する。そして第2領域、第1領域、第2領域の順に通過する導波路を有する。従って、第1領域の導波路はその両端が第2領域に接する。第1周期と第2周期とが異なることにより、上記と同様に、第1領域の導波路透過波長帯域の一部が第2領域に含まれないようになり、第1領域の導波路に共振波長帯域が形成される。
【0030】
第2の態様の2次元フォトニック結晶では、前記第1の態様のものと同様の理由により第1領域の導波路が共振器として機能する。即ち、共振波長帯域に含まれる波長の光が第1領域の導波路に存在する場合、この光は第1領域の導波路の両端で反射され、共振する。
【0031】
共振波長帯域と第2又は第3領域の透過波長帯域との境界付近の波長の光は、その一部が第1領域の導波路から第2又は第3領域の導波路への漏れが生じる。従って、このような漏れの生じない波長帯域を形成するために、共振波長帯域の幅を一定以上広くすることが望ましい。そのために、第1及び第2の態様のものでは、第1周期とそれ以外の周期の差を0.1%以上設けることが望ましい。一方、第1透過波長帯域又は第2・第3透過波長帯域の双方をフォトニックバンドギャップ内に形成する必要がある。第1及び第2の態様のものにおいて、第1周期とそれ以外の周期の差が10%以下であれば、いずれの領域の透過波長帯域もフォトニックバンドギャップ内に収めることが可能である。
【0032】
第1及び第2の態様の2次元フォトニック結晶共振器において、各領域の周期は、典型的には、2次元フォトニック結晶を面内に拡大又は縮小することにより設定することができる。一方、面内の特定の方向にのみ拡大又は縮小することにより設定してもよい。本発明者が時間領域差分法(Finite Difference Time Domain method;FDTD法)により計算を行ったところ、導波路に平行な方向にのみ拡大・縮小を行い、導波路に垂直な方向には拡大・縮小しないことによりQ値をより高くすることができることが明らかになった。この場合、導波路の幅は周期の拡大・縮小に合わせて拡大・縮小してもよい。しかし、更にQ値を高くするためには、導波路の幅は周期に合わせた拡大・縮小をせず、第1領域と他の領域の導波路の幅を等しくすることが望ましい。
【0033】
次に、第3及び第4の態様の2次元フォトニック結晶共振器について説明する。
これらの2次元フォトニック結晶共振器では、スラブ状の本体にそれとは屈折率が異なる領域(異屈折率部)を周期的に設けることにより形成される2次元フォトニック結晶を用いる。第3の態様では第1領域に隣接して第2領域及び第3領域を設け、第4の態様では第1領域を取り囲むように第2領域を設ける。ここで、第1領域の異屈折率部の大きさを他の領域と異なるものとする。そして、第1及び第2の態様のものと同様に、各領域を通過する導波路を形成する。
【0034】
この2次元フォトニック結晶に導波路を設けた時、異屈折率部を小さくすると、その導波路の透過波長帯域はより長波長側に形成される。これを利用して上記と同様に、図1(a)又は(b)に示すような透過波長帯域11〜13及び共振波長帯域111a又は111bを形成し、それにより第1領域の導波路を共振器とすることができる。また、上記の理由により、図1(b)の場合よりも(a)の場合の方が望ましいため、第1領域の異屈折率部は他の領域の異屈折率部よりも小さくすることが望ましい。
【0035】
これらのフォトニック結晶共振器はいずれも、第1領域と他の領域の導波路とのわずかな周期或いは異屈折率部の大きさの差によって、その境界において共振波長の光がゆるやかに、しかし(すなわち、或る程度の範囲まで浸み出しは生ずるものの)、100%反射される。このため、導波路長手方向の光強度の変化が緩やかになり、その結果、面外方向への光の閉じ込め効果が大きくなる。この閉じ込め効果により、本発明の2次元フォトニック結晶共振器では高いQ値を得ることができる。特に、各領域の周期がスラブ状の本体に空孔を周期的に配置することにより形成され、導波路が該空孔を線状に欠損させることにより形成された2次元フォトニック結晶では、後述のように、本発明に係る共振器は、従来の点状欠陥による共振器の数百倍〜数千倍の高いQ値を有する。
【0036】
第2領域と第3領域の周期(第1及び第2の態様の場合)或いは異屈折率部の大きさ(第3及び第4の態様)は異なるものとしてもよいが、両者を同じものとすることにより結晶の対称性を高くした方が望ましい。
【0037】
導波路長手方向の光強度の変化を更にゆるやかにして面外方向への光の閉じ込め効果をより大きくするために、第1及び第2の態様の2次元フォトニック結晶共振器では、第1領域と第2領域との間に第1周期と第2周期の間の周期を有する領域を1つ以上設け、第1領域と第3領域との間に第1周期と第3周期の間の周期を有する領域を1つ以上設けることが望ましい。同様に、第3及び第4の態様のものでは、第1領域と他の領域との間に、第1領域の異屈折率部と当該他の領域の異屈折率部の中間の大きさを有する異屈折率部を周期的に配置した領域を1つ以上設けることが望ましい。このような領域は第1領域−第2領域間、第1領域−第3領域間にそれぞれ複数個設けてもよい。このような領域を設けることにより、隣接領域同士の周期又は異屈折率部の大きさの差がより小さくなるため、各境界において共振波長の光がよりゆるやかに反射される。そのため、面外方向への光の閉じ込め効果をより大きくすることができる。
【0038】
第1領域の導波路の共振器の近傍に別途導波路(入出力用導波路)を設けることにより、入出力用導波路を伝播する様々な波長の光(重畳光)のうち共振器の共振波長に一致する波長の光を入出力用導波路から共振器を介して外部へ取り出したり、共振器の共振波長を有する光を外部から共振器を介して入出力用導波路に導入する光分合波器が形成される。また、この第1領域の導波路の共振器を挟んで入出力用導波路を1本ずつ設けることにより、一方の入出力用導波路中の重畳光のうち共振器の共振波長に一致する波長の光を共振器を介して他方の入出力用導波路へ取り出したり、共振器の共振波長に一致する波長の光を一方の入出力用導波路から共振器を介して他方の入出力用導波路に導入することができる。この2本の入出力用導波路の間で分合波を行う場合には、入出力用導波路の近傍に更に、前記共振波長に一致する共振波長を有する点状欠陥を設けて、入出力用導波路において分合波された光をこの点状欠陥と結晶外部との間で取り出し又は導入を行うようにしてもよい。ここで、共振器の共振波長の光を入出力用導波路に通すために、入出力用導波路の幅は、共振器の属する導波路の幅と異なるようにする。
【0039】
また、このように入出力用導波路と共振器の属する導波路を異なる幅にすることにより、これらの導波路に共通の導波路透過波長帯域を狭くして、共振波長以外の波長を有する光がこれらの導波路の間で導入・導出されること(クロストーク)を抑制することができる。また、入出力用導波路を曲げ、共振器から離れるに従って共振器と導波路の間の距離が大きくなるようにすることによっても、クロストークを抑制することができる。
【0040】
本発明の2次元フォトニック結晶では、少なくとも第1領域の導波路を含む領域に発光媒質を含有させておくことにより、第1領域の導波路の共振器を光源とすることができる。このような発光媒質には例えばInGaAsP等がある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の2次元フォトニック結晶共振器における共振波長帯域を説明する図。
【図2】本発明の2次元フォトニック結晶共振器の第1実施例を示す斜視図及び平面図。
【図3】本発明の2次元フォトニック結晶共振器の第2実施例を示す平面図。
【図4】本発明の2次元フォトニック結晶共振器の他の実施例を示す平面図。
【図5】比較例である点状欠陥共振器を示す平面図。
【図6】本発明の2次元フォトニック結晶共振器において、導波路に垂直な方向の空孔の周期を各領域で等しくした実施例を示す平面図。
【図7】本発明の2次元フォトニック結晶共振器において、導波路に垂直な方向の空孔の周期及び導波路の幅を各領域で等しくした実施例を示す平面図。
【図8】多段構造を有する2次元フォトニック結晶共振器の実施例を示す平面図。
【図9】多段構造を有する2次元フォトニック結晶共振器において、(a)導波路に垂直な方向の空孔の周期を各領域で等しくした実施例、及び(b)それに加えて導波路の幅を各領域で等しくした実施例を示す平面図。
【図10】図6の構成において空孔の径を変化させた場合の周波数、Q値及び導波モードとの分離幅の変化を示すグラフ。
【図11】空孔の径を各領域で異なるものとした2次元フォトニック結晶共振器の実施例を示す平面図。
【図12】本発明の2次元フォトニック結晶分合波器の一実施例を示す平面図。
【図13】本発明の2次元フォトニック結晶分合波器の一実施例を示す平面図。
【図14】本発明の2次元フォトニック結晶分合波器の一実施例を示す平面図。
【符号の説明】
【0042】
11、12、13…導波路透過波長帯域
111a、111b…共振波長帯域
21…本体
22、961、962、963…空孔
23、24、25、75、97…導波路
231、241、251、252、261、76、98…共振器
31、41、51、71、91…第1領域
32、42、52、72、92…第2領域
43、53、73、93…第3領域
54、745、94…第4領域
55、746、95…第5領域
61…点状欠陥
741、742、743、744…中間領域
81、82、83…入出力用導波路
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の2次元フォトニック結晶共振器の第1実施例の斜視図(a)及び平面図(b)を図2に示す。本実施例は上記第1の態様のものである。スラブ状の本体21は、三角格子状に周期的に配置された空孔22を有する。本体21は、第1領域31と、第1領域31を挟んで配置される第2領域32及び第3領域33の3つの領域から成る。本実施例では、第2領域32及び第3領域33の空孔22の周期は共にa2とした。第1領域31の空孔22の周期は、a2よりも大きいa1とした。第1領域31、第2領域32及び第3領域33を通過するように導波路23が設けられている。導波路23は、三角格子の格子点1列分だけ空孔22が欠損した、即ち空孔22が存在しないように形成される。
【0044】
本発明の2次元フォトニック結晶共振器の第2実施例の平面図を図3に示す。本実施例は上記第2の態様のものである。本実施例では、第1領域41を取り囲むような第2領域42を有する。第1領域41及び第2領域42における空孔22の周期はそれぞれa1及びa2であり、a1>a2である。第2領域42、第1領域41、第2領域42の順に通過する導波路24が設けられる。導波路24の形成方法は上記と同様である。
【0045】
次に、これら2つの2次元フォトニック結晶共振器の作用について説明する。2つの実施例の共振器は同じ作用を有するため、ここでは第1実施例に基づいて説明する。第1領域31が第2領域32及び第3領域33よりも空孔の周期が大きいことにより、第1領域の導波路透過波長帯域には、図1に示すような共振波長帯域111aが形成される。この波長帯域内の波長を有する光が、例えば結晶表面から導波路23のうち第1領域31の部分の導波路231(図2の斜線部)に導入されると、この光は第2領域32及び第3領域33の導波路を伝播することができず、これらの領域同士の境界、即ち導波路231の両端において反射され、導波路231内で共振する。従って、導波路231が共振器として機能する。また、導波路231を含む本体21の一部、或いは本体21全体をInGaAsP等の発光媒質を含む材料で作製することにより、この導波路231を光源とすることができる。
【0046】
また、図4に示すように、第1領域51〜第5領域55の5つの領域とこれら各領域を束する導波路25を設けて、各領域の空孔22の周期a1〜a5を、a1>a2、a1>a3、a4>a3、a4>a5とすることにより、第1領域51及び第4領域54に各1個ずつ、合わせて2つの共振器251及び252を形成することができる。同様の方法により3個以上の共振器を形成することができること、及び第2の態様のものでも同様の方法により2個以上の共振器を形成することができることは言うまでもない。
【0047】
以下に、上記のように形成される共振器のQ値をFDTD法により計算した結果を示す。
まず、比較例として、図5に示すように、空孔を全て等しい周期a1で配置した2次元フォトニック結晶において、空孔22を直線状に3個欠損させることにより形成される点状欠陥61のQ値を計算したところ、Q=5,300であった。
【0048】
次に、図2の構成において、(i)a1=1.023a2、及び(ii)a1=1.0175a2とした場合のQ値を計算したところ、(i)ではQ=530,000、(ii)ではQ=1,000,000となる。これらの値は、図5の点状欠陥におけるQ値の100倍以上である。
【0049】
図2では、空孔の周期は面内に等方的に変化させている。更に、図6に示すように、基本的に空孔の周期を導波路に垂直な方向では各領域で等しく(30.5a2)、導波路に平行な方向では領域毎に異なる(a1及びa2)ようにした場合について検討した。ここではまず、導波路の幅は図2の場合と同様とし(そのため、図中の矢印34のように、共振器261に最近接の空孔のみを外側に(30.5/2)×(a1−a2)だけシフトさせる)、導波路に平行な方向の周期を(iii)a1=1.023a2、(iv)a1=1.0175a2、及び(v)a1=1.015a2とした場合についてQ値を計算した。その結果、(iii)ではQ=1,760,000、(iv)ではQ=3,100,000、(v)ではQ=8,100,000となり、従来の点状欠陥の数百から1000倍以上のQ値が得られた。
【0050】
導波路に垂直な方向の空孔の周期を各領域で等しくすることに加えて、図7に破線35で示すように導波路の幅(30.5a2−b:bは空孔の径)を各領域で等しくした場合についてQ値を計算した。ここでは、a1=1.024a2(a1=420nm、a2=410nm)の場合についてQ値を計算した。このパラメータa1及びa2の場合において、導波路の幅を図6のように領域毎に異なるようにするとQ値は1,700,000となるのに対して、導波路の幅を上記のように各領域で等しくするとQ値は2,400,000に向上する。
【0051】
次に、導波路長手方向の光強度の変化を更にゆるやかにして面外方向への光の閉じ込め効果をより大きくする構成について説明する。図8はその一実施例である。空孔22が周期a11で配置された第1領域71と、同様に周期a14を有する第2領域72の間に、第1領域71側から順に、周期a12を有する中間領域741及び周期a13を有する中間領域742を設ける。同様に、第1領域71と、周期a14を有する第3領域73の間に、第1領域71側から順に、周期a12を有する中間領域743及び周期a13を有する中間領域744を設ける。これらの周期a11〜a14は、a11>a12>a13>a14の関係を満たす。また、これら全ての領域を通過する導波路75を設ける。このように周期の異なる領域を多段に設けることにより、第1領域71と第2領域72、及び第1領域71と第3領域73とが直接隣接する場合よりも、各境界における空孔22の周期の差が小さくなるため、共振波長を有する光は、各領域の境界で第1領域71側に、よりゆるやかに反射される。そのため、第2領域72と第3領域73との間に形成される共振器76の面外方向への光の閉じ込め効果をより大きくすることができる。
【0052】
このような多段構成の場合においても、導波路に垂直な方向の周期は各領域で等しくすることが望ましい。更に、この場合において、導波路の幅を各領域で等しくすることがより望ましい。図9に、導波路75に平行な方向の空孔22の周期がa11である第1領域711と、その両側に同方向の周期がa13である第2領域721及び第2領域731を設け、第1領域711−第2領域721間及び第1領域711−第3領域731間に、同方向の周期がa12である第4領域745及び第5領域746をそれぞれ設けた例を示す。いずれの領域においても、導波路75に垂直な方向の空孔の周期(空孔2列分の距離)は30.5a13であり等しい。そして、導波路75の幅を、(a)では各領域毎に30.5ax−b(axはその領域における導波路75に平行な方向の周期)とし、(b)ではいずれの領域においても30.5a13−bとした。
【0053】
これら図9(a)、(b)について、各周期をa11=420nm、a12=415nm、a13=410nmとしてQ値を計算した。なお、これらのパラメータは、第1〜第3領域については図7のものと等しい。(a)ではQ=5,500,000、(b)ではQ=11,000,000となった。まず、これらのQ値は図7で得られたQ値よりも向上している。即ち、多段構成とすることによりQ値が向上する。そして、(a)よりも(b)の方がQ値が高いことから、導波路の幅は各領域で等しくすることがより望ましいといえる。
【0054】
ここまでは空孔の周期により透過波長帯域を制御して導波路に共振器を形成する例を示したが、併せて空孔の径を制御してもよい。図10に、図6の構成において全ての領域の径を変化させた場合の周波数(波長)、Q値及び導波モードの分離幅の変化を計算した結果を示す。ここで空孔の径(横軸)は、第1領域の空孔の周期a1に対する割合で示す。周波数はc/a1(cは光速)で規格化して示す。「導波モードの分離幅」は、共振波長と第2領域又は第3領域の透過波長帯域のうち最も該共振波長に近い波長との差により定義される。図10(a)から明らかなように、空孔の径により異なる共振周波数が得られる。また、空孔の径が小さくなるほどQ値が大きくなることから、この点では空孔の径は小さい方が望ましいといえる。一方、導波モードの分離幅は空孔の径が大きい方がより広くなる。共振波長が第2領域及び第3領域の導波路透過波長帯域から離れている方が望ましいため、この点では空孔の径が大きい方が望ましいといえる。従って、Q値及び導波モードの分離幅の双方を考慮して空孔の径を適宜設定することが望ましい。
【0055】
更に、各領域の空孔の周期は等しくし、空孔の大きさのみが領域毎に異なるようにしてもよい。そのような2次元フォトニック結晶共振器の例を図11に示す。(a)は、第1領域91に径b1の空孔961を三角格子状に周期aで配置し、第1領域91の両隣に、径b2(>b1)の空孔962を第1領域91と同じ周期aで三角格子状に配置した第2領域92及び第3領域93を設けたものである。(b)は、第1領域91−第2領域92間及び第1領域91−第3領域93間に、b1よりも大きくb2よりも小さい径b3の空孔963を他の領域と同じ周期aで三角格子状に配置した第4領域94及び第5領域95を設けたものである。いずれの場合も上記各実施例と同様に、各領域を貫くように導波路97を設ける。これにより、(a)、(b)いずれの場合にも第2領域92と第3領域93の間の導波路97に共振器98が形成される。本実施例では導波路に最近接の空孔を三角格子の格子点上に配置しているため、領域毎の空孔の径の違いにより、第1領域の方が他の領域よりも導波路の幅が広い。更に、導波路に最近接の空孔の位置を移動させて導波路の幅を調節することにより、Q値等を設定することもできる。
【0056】
空孔の径が小さい程、図1(a)のように共振波長帯域が長波長側にシフトするため、第1領域91の導波路透過波長帯域の長波長側に共振波長帯域が形成される。そのため、上記各実施例の場合と同様に第1領域内の導波路が共振器として作用する。また、(b)のように多段構造とすることにより得られる効果も上記図8の場合と同様である。
【0057】
図11(a)の構成においてb2=0.62aとし、(i)b1=0.54a,(ii)b1=0.58aとした場合についてそれぞれ計算した。その結果、いずれも第1領域の導波路が共振器として機能することが確認された。計算値は、(a)では共振周波数が0.266c/a、Q値が34000、導波モードとの分離幅が20nm(a=420nmの場合)、(b)では共振周波数が0.267c/a、Q値が76000、導波モードとの分離幅が13nm(同上)であった。
【0058】
次に、本発明の2次元フォトニック結晶共振器を用いた分合波器の実施例について説明する。
図12は、図6の2次元フォトニック結晶共振器から空孔3列分だけ離れた位置に、三角格子の1列だけ空孔22を欠損させた入出力用導波路81を設けた例を示す。また、この例では、入出力用導波路81から見て導波路26とは反対側にある空孔22を入出力用導波路81から離れる方向にシフトさせることにより、入出力用導波路81の幅を導波路26の幅の1.1倍とした。これは、入出力用導波路81の導波路透過波長帯域に共振波長が含まれるようにするためである。図12では、図6の構成を用いて導波路26に垂直な方向の空孔の周期を各領域で等しくしたことにより、入出力用導波路81が各領域の境界でスムーズにつながる。図12の構成により、入出力用導波路81を流れる重畳光から共振器261の共振波長の光を該共振器が結晶外部に取り出す分波器として、及び該共振波長の波長の光を該共振器が結晶外部から入出力用導波路81に導入する合波器として機能する。
【0059】
図13は、導波路26を挟んで入出力用導波路81及び82を1本ずつ設けたものである。この構成により、例えば入出力用導波路81に重畳光を伝播させた場合、共振器261の共振波長の光を入出力用導波路81から入出力用導波路82へ取り出す分波器として、及び入出力用導波路82から入出力用導波路81に導入する合波器として機能する。
【0060】
図14は、入出力用導波路83を曲げることにより、共振器261から遠ざかるに従って導波路26と入出力用導波路83との間隔を大きくしたものである。これにより、共振器261と入出力用導波路83との間では共振器261の共振波長の光の取り出し及び導入が行われやすく、それ以外の領域では導波路26と入出力用導波路83との間で該共振波長以外の波長の光が流出入し難くすることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長分割多重通信用波長分合波器等に用いられる2次元フォトニック結晶に関し、特に、所定の波長の光を共振させる共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学機能材料であるフォトニック結晶が注目されている。フォトニック結晶は、それが有する周期により光や電磁波のエネルギーに対してバンド構造が形成され、光や電磁波の伝播が不可能となるエネルギー領域(フォトニックバンドギャップ)が形成されるという特徴を有する。なお、本明細書において用いる「光」には、電磁波を含むものとする。
【0003】
フォトニック結晶中に適切な欠陥を導入することにより、エネルギー準位(欠陥準位)がフォトニックバンドギャップ中に形成される。これにより、フォトニックバンドギャップ中のエネルギーに対応する波長(周波数)範囲のうち、欠陥準位のエネルギーに対応する波長の光のみがその欠陥の位置において存在可能になる。この欠陥を線状に設けることにより導波路が形成され、点状に設けることにより光共振器が形成される。この点状欠陥において共振する光の波長(共振波長)はその形状や屈折率に依存する。
【0004】
この共振器及び導波路を用いて様々な光デバイスを作製することが検討されている。例えば、この共振器を導波路の近傍に配置することにより、導波路内を伝播する様々な波長の光のうち共振器の共振波長に一致する波長の光を導波路から共振器を介して外部へ取り出す光分波器として機能すると共に、共振器の共振波長を有する光を外部から共振器を介して導波路に導入する光合波器としても機能する光分合波器となる。このような光分合波器は、例えば光通信の分野において、一本の導波路に複数の波長の光を伝播させてそれぞれの波長の光に別個の信号を乗せる波長分割多重方式通信に用いることができる。
【0005】
フォトニック結晶には2次元結晶と3次元結晶があるが、このうち2次元フォトニック結晶は製造が比較的容易であるという利点を有する。その一例として、特許文献1には、高屈折率の板材(スラブ)に、その材料よりも屈折率の低い物質を周期的に配列した2次元フォトニック結晶であって、その周期的配列を線状に欠陥させた導波路と、周期的配列を乱す点状欠陥(共振器)を導波路に隣接して設けた2次元フォトニック結晶及び光分合波器が記載されている。ここでは、低屈折率物質の周期的な配列は、スラブに周期的に孔を開けて形成されている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−272555号公報([0019]〜[0032]、[0055]、[0056]、図1、図22、図23)
【0007】
このような2次元フォトニック結晶を用いた共振器では、できるだけQ値を高くすることが重要である。Q値は共振器の性能を表す値であり、Q値が大きいほど共振器から外部への光の漏れが小さくなることを意味する。また、Q値を高くすることは、共振器自体の性能を高くするのみならず、このような共振器を用いた光分合波器の精度を高くすることをも意味する。具体的には、光分合波器では、共振器のQ値が大きいほど波長分解能が高くなり、共振波長以外の波長の光(ノイズ光)が分合波される確率が小さくなるため、分合波の精度がよくなる。
【0008】
しかし、2次元フォトニック結晶ではスラブ面に垂直な方向の光の閉じ込めが弱いため、一般に3次元フォトニック結晶よりもQ値が小さい。特許文献1に記載の光分合波器では、共振器のQ値はおよそ500であり、その共振器から分合波される光のスペクトルの半値全幅はおよそ3nmである。これらの値は、高密度波長分割多重方式の光通信に用いるためには不十分であり、波長分解能をおよそ0.8nm以下、Q値をおよそ2000以上にすることが望ましい。そのため、更にQ値の高い2次元フォトニック結晶共振器を実現することが求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、高いQ値を実現することができるような、新しい形態の2次元フォトニック結晶共振器、及びこのような共振器を用いた分合波器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために成された本発明に係る2次元フォトニック結晶共振器は、
a)第1透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第1領域と、
b)第1領域に隣接して設けた領域であって、第1領域の導波路と接続され第2透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第2領域と、
c)第1領域に隣接して設けた領域であって、第1領域の導波路と接続され第3透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第3領域と、
を備え、第1透過波長帯域の一部が第2透過波長帯域及び第3透過波長帯域に含まれないようにすることにより、第1領域の導波路内の光を第2領域及び第3領域との境界において反射させ、共振させることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る2次元フォトニック結晶共振器の他の態様のものは、
a)第1透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第1領域と、
b)第1領域を取り囲むように設けた領域であって、第1領域の導波路の両端と接続され第2透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第2領域と、
を備え、第1透過波長帯域の一部が第2透過波長帯域に含まれないようにすることにより、第1領域の導波路内の光を第2領域との2つの境界において反射させ、共振させることを特徴とする。
【0012】
上記2次元フォトニック結晶共振器は、具体的には以下に挙げる第1〜第4の態様のものとすることが望ましい。
【0013】
本発明に係る2次元フォトニック結晶共振器の第1の態様のものは、
a)第1周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第1領域と、
b)第1領域に隣接して設けた2つの領域であって、第1周期とは異なる第2周期及び第3周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第2領域及び第3領域と、
c)第2領域、第1領域、第3領域の順に通過する導波路と、
を備え、第1領域の導波路内の光を第2領域及び第3領域との境界において反射させることにより共振させることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る2次元フォトニック結晶共振器の第2の態様のものは、
a)第1周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第1領域と、
b)第1領域を取り囲むように設けた、第1周期とは異なる第2周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第2領域と、
c)第2領域、第1領域、第2領域の順に通過する導波路と、
を備え、第1領域の導波路内の光を第2領域との2つの境界において反射させることにより共振させることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る2次元フォトニック結晶共振器の第3の態様のものは、
a)スラブ状の本体と、
b)前記本体に該本体とは屈折率の異なる所定の大きさの異屈折率部を周期的に設けて成る第1領域と、
c)第1領域に隣接して設けた2つの領域であって、第1領域のものとは大きさの異なる異屈折率部を周期的に設けて成る第2領域及び第3領域と、
d)第2領域、第1領域、第3領域の順に通過する導波路と、
を備え、第1領域の導波路内の光を第2領域及び第3領域との境界において反射させることで共振させることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る2次元フォトニック結晶共振器の第4の態様のものは、
a)スラブ状の本体と、
b)前記本体に該本体とは屈折率の異なる所定の大きさの異屈折率部を周期的に設けて成る第1領域と、
c)第1領域を取り囲むように設けた、第1領域のものとは大きさの異なる異屈折率部を周期的に設けて成る第2領域と、
d)第2領域、第1領域、第2領域の順に通過する導波路と、
を備え、第1領域の導波路内の光を第2領域との2つの境界において反射させることにより共振させることを特徴とする。
【0017】
第1及び第2の態様の2次元フォトニック結晶共振器では、第1周期を他の周期よりも大きくすることが望ましい。ここで、「他の周期」とは、第1の態様においては第2周期及び第3周期を指し、第2の態様においては第2周期を指す。また、第3及び第4の態様の2次元フォトニック結晶共振器では、第1領域の異屈折率部の大きさを他の領域の異屈折率部の大きさよりも小さくすることが望ましい。
【0018】
本発明に係る2次元フォトニック結晶共振器は、少なくとも第1領域と、それぞれ第1領域に隣接する第2領域及び第3領域を有する。第1〜第3の各領域にそれぞれ導波路を形成する。このような導波路は、例えば各領域中の線状の範囲内の周期を乱すことにより形成することができる。第2領域の導波路及び第3領域の導波路はそれぞれ第1領域の導波路に接続される。即ち、第2領域、第1領域、第3領域の順に通過する導波路が形成される。
【0019】
導波路中を透過することができる光の波長帯域(透過波長帯域)は、2次元フォトニック結晶が有する周期や、その周期構造を構成する部材の大きさ・形状・材料、あるいは導波路の幅・材料等をパラメータとして、適宜設定することができる。本発明では、第1領域の導波路の透過波長帯域(第1透過波長帯域)の一部が第2及び第3領域の導波路の透過波長帯域(第2透過波長帯域及び第3透過波長帯域)の双方に含まれないようにする。このような一部波長帯域の光が後述のように本発明の共振器において共振するため、以下、この一部波長帯域を「共振波長帯域」と呼ぶ。
【0020】
図1(a)に示すように、第1透過波長帯域11(図の太枠内)よりも短波長側に第2透過波長帯域12及び第3透過波長帯域13を形成することにより、第1透過波長帯域11の長波長側に共振波長帯域111a(図の斜線部)を形成する。逆に、図1(b)に示すように第1透過波長帯域11よりも長波長側に第2及び第3透過波長帯域12及び13を形成することにより、透過波長帯域11の短波長側に共振波長帯域111bを形成する。
【0021】
この2次元フォトニック結晶共振器の作用について説明する。上記のように第1〜第3透過波長帯域を設定することにより、共振波長帯域に含まれる波長の光は、第1領域の導波路を伝播することはできるが、第2及び第3領域の導波路を伝播することはできない。そのため、この波長の光が第1領域の導波路内に存在する場合、この光は第1領域と第2領域の境界及び第1領域と第3領域の境界において反射される。これにより、第1領域の導波路が共振器として作用する。
【0022】
本発明の2次元フォトニック結晶共振器では、上記のように第1領域に隣接した2つの領域を設ける代わりに、第1領域を取り囲むような第2領域を1つ設けてもよい。この場合、第2領域の導波路は第1領域の導波路の両端に接続する。即ち、第2領域、第1領域、第2領域の順に通過するような導波路が形成される。第1領域の導波路の透過波長帯域の一部が第2領域の導波路の透過波長帯域に含まれないようにすることにより、上記と同様に、第1領域の導波路内の光を第2領域の導波路との2つの境界において反射させ、共振させることができる。
【0023】
共振波長帯域は、2次元フォトニック結晶の周期や、この周期を形成する異屈折率部の大きさ等を調節することにより設定することができる。以下、そのような共振波長帯域の調節が成された構成を有する4つの態様の2次元フォトニック結晶共振器について説明する。第1及び第2の態様のものは周期を、第3及び第4の態様のものは異屈折率部の大きさを調節したものである。
【0024】
第1の態様の2次元フォトニック結晶共振器について説明する。
この2次元フォトニック結晶共振器は、第1領域と、それぞれ第1領域に隣接する第2領域及び第3領域を有する。これら第1〜第3領域はそれぞれ第1〜第3周期を有する。第2周期と第1周期、及び第3周期と第1周期は異なる値とする。各領域が有する周期により、各領域においてフォトニックバンドギャップが形成され、そのバンドギャップ内の波長の光はフォトニック結晶中に存在できなくなる。
【0025】
第2領域、第1領域、第3領域の順に、これら3つの領域を導波路が通過する。導波路透過波長帯域は各領域の周期に依存するため、第1領域の導波路透過波長帯域の一部は第2領域及び第3領域における導波路透過波長帯域に含まれないようになる。
【0026】
このような導波路は、例えば各領域中の線状の範囲内の周期を乱すことにより形成することができる。この線状範囲内では、フォトニックバンドギャップ中の一部の波長範囲の光が存在可能となり、その波長範囲の光が伝播可能となる。このように形成される導波路は、透過波長帯域に含まれる波長の光を導波路を伝播させることができるのに対して、透過波長帯域に含まれない波長の光を伝播させることができない。2次元フォトニック結晶の周期が大きくなるほど、透過波長帯域は長波長側にシフトする。そのため、第1周期を第2周期及び第3周期よりも大きくすることにより、図1(a)に示すように、第1透過波長帯域11(図の太枠内)の長波長側に、第2及び第3透過波長帯域12及び13に含まれない共振波長帯域111aを形成することができる。逆に、第1周期を第2周期及び第3周期よりも小さくすることにより、図1(b)に示すように、第1透過波長帯域11の短波長側に、第2及び第3透過波長帯域12及び13に含まれない共振波長帯域111bを形成することができる。
【0027】
第1の態様の2次元フォトニック結晶の共振器としての作用について説明する。共振波長帯域に含まれる波長の光が第1領域の導波路に存在する場合、この光は第2領域及び第3領域の導波路透過波長帯域に含まれないため、第2領域及び第3領域の導波路を伝播することができず、第1領域と第2領域の境界及び第1領域と第3領域の境界において反射される。そのため、この光が第1領域の導波路内で共振し、第1領域の導波路が共振器として作用する。
【0028】
2次元フォトニック結晶の周期の構成によっては、導波路透過波長帯域の一部に、結晶の面の外に光が漏れる波長帯域が形成されてしまう場合がある。本発明では、このような漏れの生じる波長帯域が共振波長帯域内に形成されないようにすることが望ましい。例えば、結晶本体とは異なる屈折率を有する物質を三角格子状に配置した2次元フォトニック結晶の場合、この物質を線状に欠損させて形成される導波路は、その導波路透過波長帯域中の短波長側に、結晶面の外に光が漏れる波長帯域を有する。この場合、第1周期を第2周期及び第3周期よりも小さくすると図1(b)に示す共振波長帯域111b内の光が共振器から結晶面の外に漏れる。図1(a)の場合にはそのような漏れは生じない。従って、この例の2次元フォトニック結晶では、第1周期を第2周期及び第3周期よりも大きくすることが望ましい。
【0029】
次に、第2の態様の2次元フォトニック結晶共振器について説明する。
この共振器は、第1周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第1領域を有し、その第1領域を取り囲むように、第1周期とは異なる第2周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第2領域を有する。そして第2領域、第1領域、第2領域の順に通過する導波路を有する。従って、第1領域の導波路はその両端が第2領域に接する。第1周期と第2周期とが異なることにより、上記と同様に、第1領域の導波路透過波長帯域の一部が第2領域に含まれないようになり、第1領域の導波路に共振波長帯域が形成される。
【0030】
第2の態様の2次元フォトニック結晶では、前記第1の態様のものと同様の理由により第1領域の導波路が共振器として機能する。即ち、共振波長帯域に含まれる波長の光が第1領域の導波路に存在する場合、この光は第1領域の導波路の両端で反射され、共振する。
【0031】
共振波長帯域と第2又は第3領域の透過波長帯域との境界付近の波長の光は、その一部が第1領域の導波路から第2又は第3領域の導波路への漏れが生じる。従って、このような漏れの生じない波長帯域を形成するために、共振波長帯域の幅を一定以上広くすることが望ましい。そのために、第1及び第2の態様のものでは、第1周期とそれ以外の周期の差を0.1%以上設けることが望ましい。一方、第1透過波長帯域又は第2・第3透過波長帯域の双方をフォトニックバンドギャップ内に形成する必要がある。第1及び第2の態様のものにおいて、第1周期とそれ以外の周期の差が10%以下であれば、いずれの領域の透過波長帯域もフォトニックバンドギャップ内に収めることが可能である。
【0032】
第1及び第2の態様の2次元フォトニック結晶共振器において、各領域の周期は、典型的には、2次元フォトニック結晶を面内に拡大又は縮小することにより設定することができる。一方、面内の特定の方向にのみ拡大又は縮小することにより設定してもよい。本発明者が時間領域差分法(Finite Difference Time Domain method;FDTD法)により計算を行ったところ、導波路に平行な方向にのみ拡大・縮小を行い、導波路に垂直な方向には拡大・縮小しないことによりQ値をより高くすることができることが明らかになった。この場合、導波路の幅は周期の拡大・縮小に合わせて拡大・縮小してもよい。しかし、更にQ値を高くするためには、導波路の幅は周期に合わせた拡大・縮小をせず、第1領域と他の領域の導波路の幅を等しくすることが望ましい。
【0033】
次に、第3及び第4の態様の2次元フォトニック結晶共振器について説明する。
これらの2次元フォトニック結晶共振器では、スラブ状の本体にそれとは屈折率が異なる領域(異屈折率部)を周期的に設けることにより形成される2次元フォトニック結晶を用いる。第3の態様では第1領域に隣接して第2領域及び第3領域を設け、第4の態様では第1領域を取り囲むように第2領域を設ける。ここで、第1領域の異屈折率部の大きさを他の領域と異なるものとする。そして、第1及び第2の態様のものと同様に、各領域を通過する導波路を形成する。
【0034】
この2次元フォトニック結晶に導波路を設けた時、異屈折率部を小さくすると、その導波路の透過波長帯域はより長波長側に形成される。これを利用して上記と同様に、図1(a)又は(b)に示すような透過波長帯域11〜13及び共振波長帯域111a又は111bを形成し、それにより第1領域の導波路を共振器とすることができる。また、上記の理由により、図1(b)の場合よりも(a)の場合の方が望ましいため、第1領域の異屈折率部は他の領域の異屈折率部よりも小さくすることが望ましい。
【0035】
これらのフォトニック結晶共振器はいずれも、第1領域と他の領域の導波路とのわずかな周期或いは異屈折率部の大きさの差によって、その境界において共振波長の光がゆるやかに、しかし(すなわち、或る程度の範囲まで浸み出しは生ずるものの)、100%反射される。このため、導波路長手方向の光強度の変化が緩やかになり、その結果、面外方向への光の閉じ込め効果が大きくなる。この閉じ込め効果により、本発明の2次元フォトニック結晶共振器では高いQ値を得ることができる。特に、各領域の周期がスラブ状の本体に空孔を周期的に配置することにより形成され、導波路が該空孔を線状に欠損させることにより形成された2次元フォトニック結晶では、後述のように、本発明に係る共振器は、従来の点状欠陥による共振器の数百倍〜数千倍の高いQ値を有する。
【0036】
第2領域と第3領域の周期(第1及び第2の態様の場合)或いは異屈折率部の大きさ(第3及び第4の態様)は異なるものとしてもよいが、両者を同じものとすることにより結晶の対称性を高くした方が望ましい。
【0037】
導波路長手方向の光強度の変化を更にゆるやかにして面外方向への光の閉じ込め効果をより大きくするために、第1及び第2の態様の2次元フォトニック結晶共振器では、第1領域と第2領域との間に第1周期と第2周期の間の周期を有する領域を1つ以上設け、第1領域と第3領域との間に第1周期と第3周期の間の周期を有する領域を1つ以上設けることが望ましい。同様に、第3及び第4の態様のものでは、第1領域と他の領域との間に、第1領域の異屈折率部と当該他の領域の異屈折率部の中間の大きさを有する異屈折率部を周期的に配置した領域を1つ以上設けることが望ましい。このような領域は第1領域−第2領域間、第1領域−第3領域間にそれぞれ複数個設けてもよい。このような領域を設けることにより、隣接領域同士の周期又は異屈折率部の大きさの差がより小さくなるため、各境界において共振波長の光がよりゆるやかに反射される。そのため、面外方向への光の閉じ込め効果をより大きくすることができる。
【0038】
第1領域の導波路の共振器の近傍に別途導波路(入出力用導波路)を設けることにより、入出力用導波路を伝播する様々な波長の光(重畳光)のうち共振器の共振波長に一致する波長の光を入出力用導波路から共振器を介して外部へ取り出したり、共振器の共振波長を有する光を外部から共振器を介して入出力用導波路に導入する光分合波器が形成される。また、この第1領域の導波路の共振器を挟んで入出力用導波路を1本ずつ設けることにより、一方の入出力用導波路中の重畳光のうち共振器の共振波長に一致する波長の光を共振器を介して他方の入出力用導波路へ取り出したり、共振器の共振波長に一致する波長の光を一方の入出力用導波路から共振器を介して他方の入出力用導波路に導入することができる。この2本の入出力用導波路の間で分合波を行う場合には、入出力用導波路の近傍に更に、前記共振波長に一致する共振波長を有する点状欠陥を設けて、入出力用導波路において分合波された光をこの点状欠陥と結晶外部との間で取り出し又は導入を行うようにしてもよい。ここで、共振器の共振波長の光を入出力用導波路に通すために、入出力用導波路の幅は、共振器の属する導波路の幅と異なるようにする。
【0039】
また、このように入出力用導波路と共振器の属する導波路を異なる幅にすることにより、これらの導波路に共通の導波路透過波長帯域を狭くして、共振波長以外の波長を有する光がこれらの導波路の間で導入・導出されること(クロストーク)を抑制することができる。また、入出力用導波路を曲げ、共振器から離れるに従って共振器と導波路の間の距離が大きくなるようにすることによっても、クロストークを抑制することができる。
【0040】
本発明の2次元フォトニック結晶では、少なくとも第1領域の導波路を含む領域に発光媒質を含有させておくことにより、第1領域の導波路の共振器を光源とすることができる。このような発光媒質には例えばInGaAsP等がある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の2次元フォトニック結晶共振器における共振波長帯域を説明する図。
【図2】本発明の2次元フォトニック結晶共振器の第1実施例を示す斜視図及び平面図。
【図3】本発明の2次元フォトニック結晶共振器の第2実施例を示す平面図。
【図4】本発明の2次元フォトニック結晶共振器の他の実施例を示す平面図。
【図5】比較例である点状欠陥共振器を示す平面図。
【図6】本発明の2次元フォトニック結晶共振器において、導波路に垂直な方向の空孔の周期を各領域で等しくした実施例を示す平面図。
【図7】本発明の2次元フォトニック結晶共振器において、導波路に垂直な方向の空孔の周期及び導波路の幅を各領域で等しくした実施例を示す平面図。
【図8】多段構造を有する2次元フォトニック結晶共振器の実施例を示す平面図。
【図9】多段構造を有する2次元フォトニック結晶共振器において、(a)導波路に垂直な方向の空孔の周期を各領域で等しくした実施例、及び(b)それに加えて導波路の幅を各領域で等しくした実施例を示す平面図。
【図10】図6の構成において空孔の径を変化させた場合の周波数、Q値及び導波モードとの分離幅の変化を示すグラフ。
【図11】空孔の径を各領域で異なるものとした2次元フォトニック結晶共振器の実施例を示す平面図。
【図12】本発明の2次元フォトニック結晶分合波器の一実施例を示す平面図。
【図13】本発明の2次元フォトニック結晶分合波器の一実施例を示す平面図。
【図14】本発明の2次元フォトニック結晶分合波器の一実施例を示す平面図。
【符号の説明】
【0042】
11、12、13…導波路透過波長帯域
111a、111b…共振波長帯域
21…本体
22、961、962、963…空孔
23、24、25、75、97…導波路
231、241、251、252、261、76、98…共振器
31、41、51、71、91…第1領域
32、42、52、72、92…第2領域
43、53、73、93…第3領域
54、745、94…第4領域
55、746、95…第5領域
61…点状欠陥
741、742、743、744…中間領域
81、82、83…入出力用導波路
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の2次元フォトニック結晶共振器の第1実施例の斜視図(a)及び平面図(b)を図2に示す。本実施例は上記第1の態様のものである。スラブ状の本体21は、三角格子状に周期的に配置された空孔22を有する。本体21は、第1領域31と、第1領域31を挟んで配置される第2領域32及び第3領域33の3つの領域から成る。本実施例では、第2領域32及び第3領域33の空孔22の周期は共にa2とした。第1領域31の空孔22の周期は、a2よりも大きいa1とした。第1領域31、第2領域32及び第3領域33を通過するように導波路23が設けられている。導波路23は、三角格子の格子点1列分だけ空孔22が欠損した、即ち空孔22が存在しないように形成される。
【0044】
本発明の2次元フォトニック結晶共振器の第2実施例の平面図を図3に示す。本実施例は上記第2の態様のものである。本実施例では、第1領域41を取り囲むような第2領域42を有する。第1領域41及び第2領域42における空孔22の周期はそれぞれa1及びa2であり、a1>a2である。第2領域42、第1領域41、第2領域42の順に通過する導波路24が設けられる。導波路24の形成方法は上記と同様である。
【0045】
次に、これら2つの2次元フォトニック結晶共振器の作用について説明する。2つの実施例の共振器は同じ作用を有するため、ここでは第1実施例に基づいて説明する。第1領域31が第2領域32及び第3領域33よりも空孔の周期が大きいことにより、第1領域の導波路透過波長帯域には、図1に示すような共振波長帯域111aが形成される。この波長帯域内の波長を有する光が、例えば結晶表面から導波路23のうち第1領域31の部分の導波路231(図2の斜線部)に導入されると、この光は第2領域32及び第3領域33の導波路を伝播することができず、これらの領域同士の境界、即ち導波路231の両端において反射され、導波路231内で共振する。従って、導波路231が共振器として機能する。また、導波路231を含む本体21の一部、或いは本体21全体をInGaAsP等の発光媒質を含む材料で作製することにより、この導波路231を光源とすることができる。
【0046】
また、図4に示すように、第1領域51〜第5領域55の5つの領域とこれら各領域を束する導波路25を設けて、各領域の空孔22の周期a1〜a5を、a1>a2、a1>a3、a4>a3、a4>a5とすることにより、第1領域51及び第4領域54に各1個ずつ、合わせて2つの共振器251及び252を形成することができる。同様の方法により3個以上の共振器を形成することができること、及び第2の態様のものでも同様の方法により2個以上の共振器を形成することができることは言うまでもない。
【0047】
以下に、上記のように形成される共振器のQ値をFDTD法により計算した結果を示す。
まず、比較例として、図5に示すように、空孔を全て等しい周期a1で配置した2次元フォトニック結晶において、空孔22を直線状に3個欠損させることにより形成される点状欠陥61のQ値を計算したところ、Q=5,300であった。
【0048】
次に、図2の構成において、(i)a1=1.023a2、及び(ii)a1=1.0175a2とした場合のQ値を計算したところ、(i)ではQ=530,000、(ii)ではQ=1,000,000となる。これらの値は、図5の点状欠陥におけるQ値の100倍以上である。
【0049】
図2では、空孔の周期は面内に等方的に変化させている。更に、図6に示すように、基本的に空孔の周期を導波路に垂直な方向では各領域で等しく(30.5a2)、導波路に平行な方向では領域毎に異なる(a1及びa2)ようにした場合について検討した。ここではまず、導波路の幅は図2の場合と同様とし(そのため、図中の矢印34のように、共振器261に最近接の空孔のみを外側に(30.5/2)×(a1−a2)だけシフトさせる)、導波路に平行な方向の周期を(iii)a1=1.023a2、(iv)a1=1.0175a2、及び(v)a1=1.015a2とした場合についてQ値を計算した。その結果、(iii)ではQ=1,760,000、(iv)ではQ=3,100,000、(v)ではQ=8,100,000となり、従来の点状欠陥の数百から1000倍以上のQ値が得られた。
【0050】
導波路に垂直な方向の空孔の周期を各領域で等しくすることに加えて、図7に破線35で示すように導波路の幅(30.5a2−b:bは空孔の径)を各領域で等しくした場合についてQ値を計算した。ここでは、a1=1.024a2(a1=420nm、a2=410nm)の場合についてQ値を計算した。このパラメータa1及びa2の場合において、導波路の幅を図6のように領域毎に異なるようにするとQ値は1,700,000となるのに対して、導波路の幅を上記のように各領域で等しくするとQ値は2,400,000に向上する。
【0051】
次に、導波路長手方向の光強度の変化を更にゆるやかにして面外方向への光の閉じ込め効果をより大きくする構成について説明する。図8はその一実施例である。空孔22が周期a11で配置された第1領域71と、同様に周期a14を有する第2領域72の間に、第1領域71側から順に、周期a12を有する中間領域741及び周期a13を有する中間領域742を設ける。同様に、第1領域71と、周期a14を有する第3領域73の間に、第1領域71側から順に、周期a12を有する中間領域743及び周期a13を有する中間領域744を設ける。これらの周期a11〜a14は、a11>a12>a13>a14の関係を満たす。また、これら全ての領域を通過する導波路75を設ける。このように周期の異なる領域を多段に設けることにより、第1領域71と第2領域72、及び第1領域71と第3領域73とが直接隣接する場合よりも、各境界における空孔22の周期の差が小さくなるため、共振波長を有する光は、各領域の境界で第1領域71側に、よりゆるやかに反射される。そのため、第2領域72と第3領域73との間に形成される共振器76の面外方向への光の閉じ込め効果をより大きくすることができる。
【0052】
このような多段構成の場合においても、導波路に垂直な方向の周期は各領域で等しくすることが望ましい。更に、この場合において、導波路の幅を各領域で等しくすることがより望ましい。図9に、導波路75に平行な方向の空孔22の周期がa11である第1領域711と、その両側に同方向の周期がa13である第2領域721及び第2領域731を設け、第1領域711−第2領域721間及び第1領域711−第3領域731間に、同方向の周期がa12である第4領域745及び第5領域746をそれぞれ設けた例を示す。いずれの領域においても、導波路75に垂直な方向の空孔の周期(空孔2列分の距離)は30.5a13であり等しい。そして、導波路75の幅を、(a)では各領域毎に30.5ax−b(axはその領域における導波路75に平行な方向の周期)とし、(b)ではいずれの領域においても30.5a13−bとした。
【0053】
これら図9(a)、(b)について、各周期をa11=420nm、a12=415nm、a13=410nmとしてQ値を計算した。なお、これらのパラメータは、第1〜第3領域については図7のものと等しい。(a)ではQ=5,500,000、(b)ではQ=11,000,000となった。まず、これらのQ値は図7で得られたQ値よりも向上している。即ち、多段構成とすることによりQ値が向上する。そして、(a)よりも(b)の方がQ値が高いことから、導波路の幅は各領域で等しくすることがより望ましいといえる。
【0054】
ここまでは空孔の周期により透過波長帯域を制御して導波路に共振器を形成する例を示したが、併せて空孔の径を制御してもよい。図10に、図6の構成において全ての領域の径を変化させた場合の周波数(波長)、Q値及び導波モードの分離幅の変化を計算した結果を示す。ここで空孔の径(横軸)は、第1領域の空孔の周期a1に対する割合で示す。周波数はc/a1(cは光速)で規格化して示す。「導波モードの分離幅」は、共振波長と第2領域又は第3領域の透過波長帯域のうち最も該共振波長に近い波長との差により定義される。図10(a)から明らかなように、空孔の径により異なる共振周波数が得られる。また、空孔の径が小さくなるほどQ値が大きくなることから、この点では空孔の径は小さい方が望ましいといえる。一方、導波モードの分離幅は空孔の径が大きい方がより広くなる。共振波長が第2領域及び第3領域の導波路透過波長帯域から離れている方が望ましいため、この点では空孔の径が大きい方が望ましいといえる。従って、Q値及び導波モードの分離幅の双方を考慮して空孔の径を適宜設定することが望ましい。
【0055】
更に、各領域の空孔の周期は等しくし、空孔の大きさのみが領域毎に異なるようにしてもよい。そのような2次元フォトニック結晶共振器の例を図11に示す。(a)は、第1領域91に径b1の空孔961を三角格子状に周期aで配置し、第1領域91の両隣に、径b2(>b1)の空孔962を第1領域91と同じ周期aで三角格子状に配置した第2領域92及び第3領域93を設けたものである。(b)は、第1領域91−第2領域92間及び第1領域91−第3領域93間に、b1よりも大きくb2よりも小さい径b3の空孔963を他の領域と同じ周期aで三角格子状に配置した第4領域94及び第5領域95を設けたものである。いずれの場合も上記各実施例と同様に、各領域を貫くように導波路97を設ける。これにより、(a)、(b)いずれの場合にも第2領域92と第3領域93の間の導波路97に共振器98が形成される。本実施例では導波路に最近接の空孔を三角格子の格子点上に配置しているため、領域毎の空孔の径の違いにより、第1領域の方が他の領域よりも導波路の幅が広い。更に、導波路に最近接の空孔の位置を移動させて導波路の幅を調節することにより、Q値等を設定することもできる。
【0056】
空孔の径が小さい程、図1(a)のように共振波長帯域が長波長側にシフトするため、第1領域91の導波路透過波長帯域の長波長側に共振波長帯域が形成される。そのため、上記各実施例の場合と同様に第1領域内の導波路が共振器として作用する。また、(b)のように多段構造とすることにより得られる効果も上記図8の場合と同様である。
【0057】
図11(a)の構成においてb2=0.62aとし、(i)b1=0.54a,(ii)b1=0.58aとした場合についてそれぞれ計算した。その結果、いずれも第1領域の導波路が共振器として機能することが確認された。計算値は、(a)では共振周波数が0.266c/a、Q値が34000、導波モードとの分離幅が20nm(a=420nmの場合)、(b)では共振周波数が0.267c/a、Q値が76000、導波モードとの分離幅が13nm(同上)であった。
【0058】
次に、本発明の2次元フォトニック結晶共振器を用いた分合波器の実施例について説明する。
図12は、図6の2次元フォトニック結晶共振器から空孔3列分だけ離れた位置に、三角格子の1列だけ空孔22を欠損させた入出力用導波路81を設けた例を示す。また、この例では、入出力用導波路81から見て導波路26とは反対側にある空孔22を入出力用導波路81から離れる方向にシフトさせることにより、入出力用導波路81の幅を導波路26の幅の1.1倍とした。これは、入出力用導波路81の導波路透過波長帯域に共振波長が含まれるようにするためである。図12では、図6の構成を用いて導波路26に垂直な方向の空孔の周期を各領域で等しくしたことにより、入出力用導波路81が各領域の境界でスムーズにつながる。図12の構成により、入出力用導波路81を流れる重畳光から共振器261の共振波長の光を該共振器が結晶外部に取り出す分波器として、及び該共振波長の波長の光を該共振器が結晶外部から入出力用導波路81に導入する合波器として機能する。
【0059】
図13は、導波路26を挟んで入出力用導波路81及び82を1本ずつ設けたものである。この構成により、例えば入出力用導波路81に重畳光を伝播させた場合、共振器261の共振波長の光を入出力用導波路81から入出力用導波路82へ取り出す分波器として、及び入出力用導波路82から入出力用導波路81に導入する合波器として機能する。
【0060】
図14は、入出力用導波路83を曲げることにより、共振器261から遠ざかるに従って導波路26と入出力用導波路83との間隔を大きくしたものである。これにより、共振器261と入出力用導波路83との間では共振器261の共振波長の光の取り出し及び導入が行われやすく、それ以外の領域では導波路26と入出力用導波路83との間で該共振波長以外の波長の光が流出入し難くすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第1透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第1領域と、
b)第1領域に隣接して設けた領域であって、第1領域の導波路と接続され第2透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第2領域と、
c)第1領域に隣接して設けた領域であって、第1領域の導波路と接続され第3透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第3領域と、
を備え、第1透過波長帯域の一部が第2透過波長帯域及び第3透過波長帯域に含まれないようにすることにより、第1領域の導波路内の光を第2領域及び第3領域との境界において反射させ、共振させることを特徴とする2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項2】
a)第1透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第1領域と、
b)第1領域を取り囲むように設けた領域であって、第1領域の導波路の両端と接続され第2透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第2領域と、
を備え、第1透過波長帯域の一部が第2透過波長帯域に含まれないようにすることにより、第1領域の導波路内の光を第2領域との2つの境界において反射させ、共振させることを特徴とする2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項3】
a)第1周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第1領域と、
b)第1領域に隣接して設けた2つの領域であって、第1周期とは異なる第2周期及び第3周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第2領域及び第3領域と、
c)第2領域、第1領域、第3領域の順に通過する導波路と、
を備え、第1領域の導波路内の光を第2領域及び第3領域との境界において反射させることで共振させることを特徴とする2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項4】
第2周期と第3周期が等しいことを特徴とする請求項3に記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項5】
第1領域と第2領域との間に第1周期と第2周期の間の周期を有する領域を1つ以上設け、第1領域と第3領域との間に第1周期と第3周期の間の周期を有する領域を1つ以上設けたことを特徴とする請求項3又は4に記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項6】
a)第1周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第1領域と、
b)第1領域を取り囲むように設けた、第1周期とは異なる第2周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第2領域と、
c)第2領域、第1領域、第2領域の順に通過する導波路と、
を備え、第1領域の導波路内の光を第2領域との2つの境界において反射させることにより共振させることを特徴とする2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項7】
第1領域と第2領域との間に第1周期と第2周期の間の周期を有する領域を1つ以上設けたことを特徴とする請求項6に記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項8】
第1周期が他の周期よりも大きいことを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項9】
第1周期と他の周期の差が第1周期の0.1%〜10%であることを特徴とする請求項8に記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項10】
前記導波路に平行な方向の周期を第1領域と他の領域で異なるようにし、導波路に垂直な方向の周期を第1領域と他の領域で等しくすることを特徴とする請求項3〜9のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項11】
前記導波路の幅が第1領域と他の領域で等しいことを特徴とする請求項10に記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項12】
各領域の周期がスラブ状の本体に空孔を周期的に配置することにより形成され、導波路が該空孔を線状に欠損させることにより形成されることを特徴とする請求項3〜11のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項13】
a)スラブ状の本体と、
b)前記本体に該本体とは屈折率の異なる所定の大きさの異屈折率部を周期的に設けて成る第1領域と、
c)第1領域に隣接して設けた2つの領域であって、第1領域のものとは大きさの異なる異屈折率部を周期的に設けて成る第2領域及び第3領域と、
d)第2領域、第1領域、第3領域の順に通過する導波路と、
を備え、第1領域の導波路内の光を第2領域及び第3領域との境界において反射させることで共振させることを特徴とする2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項14】
前記第2領域と第3領域の異屈折率部の大きさが等しいことを特徴とする請求項13に記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項15】
第1領域と第2領域との間に、第1領域の異屈折率部と第2領域の異屈折率部の中間の大きさを有する異屈折率部を周期的に配置した領域を1つ以上設け、第1領域と第3領域との間に、第1領域の異屈折率部の大きさと第3領域の異屈折率部の大きさの中間の大きさを有する異屈折率部を周期的に配置した領域を1つ以上設けたことを特徴とする請求項13又は14に記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項16】
a)スラブ状の本体と、
b)前記本体に該本体とは屈折率の異なる所定の大きさの異屈折率部を周期的に設けて成る第1領域と、
c)第1領域を取り囲むように設けた、第1領域のものとは大きさの異なる異屈折率部を周期的に設けて成る第2領域と、
d)第2領域、第1領域、第2領域の順に通過する導波路と、
を備え、第1領域の導波路内の光を第2領域との2つの境界において反射させることにより共振させることを特徴とする2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項17】
第1領域と第2領域との間に、第1領域の異屈折率部と第2領域の異屈折率部の中間の大きさを有する異屈折率部を周期的に配置した領域を1つ以上設けたことを特徴とする請求項16に記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項18】
第1領域の異屈折率部の大きさが他の領域の異屈折率部の大きさよりも小さいことを特徴とする請求項13〜17に記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項19】
異屈折率部が空孔により形成され、導波路が該空孔を線状に欠損させることにより形成されることを特徴とする請求項13〜18のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項20】
少なくとも第1領域の導波路を含む領域が発光媒質を含有することを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項21】
請求項1〜20に記載の2次元フォトニック結晶共振器の第1領域の導波路の近傍に更に導波路を備えることを特徴とする2次元フォトニック結晶分合波器。
【請求項1】
a)第1透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第1領域と、
b)第1領域に隣接して設けた領域であって、第1領域の導波路と接続され第2透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第2領域と、
c)第1領域に隣接して設けた領域であって、第1領域の導波路と接続され第3透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第3領域と、
を備え、第1透過波長帯域の一部が第2透過波長帯域及び第3透過波長帯域に含まれないようにすることにより、第1領域の導波路内の光を第2領域及び第3領域との境界において反射させ、共振させることを特徴とする2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項2】
a)第1透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第1領域と、
b)第1領域を取り囲むように設けた領域であって、第1領域の導波路の両端と接続され第2透過波長帯域を有する導波路を備えた2次元フォトニック結晶から成る第2領域と、
を備え、第1透過波長帯域の一部が第2透過波長帯域に含まれないようにすることにより、第1領域の導波路内の光を第2領域との2つの境界において反射させ、共振させることを特徴とする2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項3】
a)第1周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第1領域と、
b)第1領域に隣接して設けた2つの領域であって、第1周期とは異なる第2周期及び第3周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第2領域及び第3領域と、
c)第2領域、第1領域、第3領域の順に通過する導波路と、
を備え、第1領域の導波路内の光を第2領域及び第3領域との境界において反射させることで共振させることを特徴とする2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項4】
第2周期と第3周期が等しいことを特徴とする請求項3に記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項5】
第1領域と第2領域との間に第1周期と第2周期の間の周期を有する領域を1つ以上設け、第1領域と第3領域との間に第1周期と第3周期の間の周期を有する領域を1つ以上設けたことを特徴とする請求項3又は4に記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項6】
a)第1周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第1領域と、
b)第1領域を取り囲むように設けた、第1周期とは異なる第2周期を有する2次元フォトニック結晶から成る第2領域と、
c)第2領域、第1領域、第2領域の順に通過する導波路と、
を備え、第1領域の導波路内の光を第2領域との2つの境界において反射させることにより共振させることを特徴とする2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項7】
第1領域と第2領域との間に第1周期と第2周期の間の周期を有する領域を1つ以上設けたことを特徴とする請求項6に記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項8】
第1周期が他の周期よりも大きいことを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項9】
第1周期と他の周期の差が第1周期の0.1%〜10%であることを特徴とする請求項8に記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項10】
前記導波路に平行な方向の周期を第1領域と他の領域で異なるようにし、導波路に垂直な方向の周期を第1領域と他の領域で等しくすることを特徴とする請求項3〜9のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項11】
前記導波路の幅が第1領域と他の領域で等しいことを特徴とする請求項10に記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項12】
各領域の周期がスラブ状の本体に空孔を周期的に配置することにより形成され、導波路が該空孔を線状に欠損させることにより形成されることを特徴とする請求項3〜11のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項13】
a)スラブ状の本体と、
b)前記本体に該本体とは屈折率の異なる所定の大きさの異屈折率部を周期的に設けて成る第1領域と、
c)第1領域に隣接して設けた2つの領域であって、第1領域のものとは大きさの異なる異屈折率部を周期的に設けて成る第2領域及び第3領域と、
d)第2領域、第1領域、第3領域の順に通過する導波路と、
を備え、第1領域の導波路内の光を第2領域及び第3領域との境界において反射させることで共振させることを特徴とする2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項14】
前記第2領域と第3領域の異屈折率部の大きさが等しいことを特徴とする請求項13に記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項15】
第1領域と第2領域との間に、第1領域の異屈折率部と第2領域の異屈折率部の中間の大きさを有する異屈折率部を周期的に配置した領域を1つ以上設け、第1領域と第3領域との間に、第1領域の異屈折率部の大きさと第3領域の異屈折率部の大きさの中間の大きさを有する異屈折率部を周期的に配置した領域を1つ以上設けたことを特徴とする請求項13又は14に記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項16】
a)スラブ状の本体と、
b)前記本体に該本体とは屈折率の異なる所定の大きさの異屈折率部を周期的に設けて成る第1領域と、
c)第1領域を取り囲むように設けた、第1領域のものとは大きさの異なる異屈折率部を周期的に設けて成る第2領域と、
d)第2領域、第1領域、第2領域の順に通過する導波路と、
を備え、第1領域の導波路内の光を第2領域との2つの境界において反射させることにより共振させることを特徴とする2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項17】
第1領域と第2領域との間に、第1領域の異屈折率部と第2領域の異屈折率部の中間の大きさを有する異屈折率部を周期的に配置した領域を1つ以上設けたことを特徴とする請求項16に記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項18】
第1領域の異屈折率部の大きさが他の領域の異屈折率部の大きさよりも小さいことを特徴とする請求項13〜17に記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項19】
異屈折率部が空孔により形成され、導波路が該空孔を線状に欠損させることにより形成されることを特徴とする請求項13〜18のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項20】
少なくとも第1領域の導波路を含む領域が発光媒質を含有することを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶共振器。
【請求項21】
請求項1〜20に記載の2次元フォトニック結晶共振器の第1領域の導波路の近傍に更に導波路を備えることを特徴とする2次元フォトニック結晶分合波器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【国際公開番号】WO2005/022220
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513432(P2005−513432)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012115
【国際出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/012115
【国際出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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