説明

2次元及び/又は3次元の画像コンテンツを提示するディスプレイ用の光変調器

本発明は、2次元及び/又は3次元の画像コンテンツ、あるいは画像シーケンスを提示するディスプレイ用光変調器に関する。光変調器は、2つの対抗する基板及び電極を有する。液晶を含む少なくとも1つの層は、2つの基板間に提供される。配向手段は、液晶の予め決定可能なプレチルトを設定する液晶層に対面する基板の表面に設けられる。液晶の配向は、電極により生じた電界により所定の範囲で制御されうる。配向手段は、調節可能なタイプのものであり、これによって液晶のプレチルトが変更されるように制御される。液晶のプレチルトが変更された場合、電場における液晶の配向は、所定の範囲外に配向される、あるいは液晶のプレチルトがある位置で厳密に設定されるように制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元及び/又は3次元の画像コンテンツを提示するディスプレイ用の光変調器に関する。また本発明は、光変調器を動作するディスプレイ及び動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
《LC配向層》
従来の液晶ディスプレイ(LCディスプレイ)は、一般に、LC分子と表面との相互作用及びLC分子と電界との相互作用の平衡に基づいている。
【0003】
表面相互作用は、電界がない間、LC分子の好適な配向を規定する。電界が適用されると、一般に面配向に対抗する、あるいは所定の方向に有効である分子において力が作用する。電界強度及びLC分子間の弾性力に依存して、LC分子は合成後の方向に回転する。一般には、それ以下では電界が存在しない状態とLC分子の配向に変化がない閾値電界強度が存在する。また、飽和電界強度が存在し、該飽和電界強度より強い電界においてLC分子の配向はそれ以上変化しない。閾値電界強度と飽和電界強度との間では、LC配向は、特に連続して電界強度に伴って変化する。
【0004】
PCモニタ等の従来のLCディスプレイにおいて、この可変配向性は、LC画素の制御電圧に依存してグレイスケール値を示す。
【0005】
表面相互作用を規定することに関し、従来多数の方法が知られている。基準として、機械摩擦又はブラッシングにより好適な配向を与えられるポリイミド層が、LCディスプレイにおいて使用される。ポリイミド層との界面において、LC分子は、長軸が摩擦方向に対して平行であるように配向する。表面相互作用の強度は、製造中に特定のパラメータを適応的に選択する、例えば異なる機械摩擦圧力を加えることにより変動されうる。
【0006】
LCディスプレイの種類に依存して、LC分子の好適な配向がガラス基板の表面に対して平行である面配向、LC分子の好適な配向がガラス基板の表面に対して垂直であるホメオトロピック配向、及びLC分子の好適な配向がガラス基板の表面に対して規定の角度を有する傾斜配向の3つの配向のうちの1つが要求される。例えば、面配向は、一般に面内スイッチング(IPS:in-plane switching)ディスプレイで使用され、ホメオトロピック配向は、垂直配向(VA:vertical alignment)ディスプレイで実質的に使用される。
【0007】
特定の種類のLC材料、例えば正の誘電異方性を有するネマティックLCは、長軸が電界に対して平行であるように配向することが好ましい。他のLC材料、例えば負の誘電異方性を有するネマティックLCは、長軸が電界に対して垂直であるように配向することが好ましい。
【0008】
1つ又はいずれかの基板上の面配向とLC材料の種類及び電極の配置との特定の組み合わせは、以下LCモードと呼ぶ。例えば、いずれかの基板上の面配向、正の誘電異方性を有するネマティックLC、及び面内電界を発生させるように配置される電極の組合せを、IPSモードと呼ぶ。
【0009】
次に、表面相互作用は、多数の異なる材料及び様々な方法を使用して規定されてもよい。上述したポリイミドを摩擦する方法に加え、さらに蒸着される酸化ケイ素フィルムの形態の材料が使用可能であり、その場合蒸着処理のパラメータは、LC分子の適切な好適な配向を実現するように選択される。また、感光性高分子材料は、光学的な方法、例えば紫外線を使用して好適な配向を与えられてもよく(光配向)、その場合好適な配向は適応的にLC分子を配向する。文献[1]は、従来技術において既知である配向層の概要を開示している。
【0010】
通常、LCディスプレイのディスプレイパネル全体は、均一で固定の好適な配向を与えられる。しかし、例えば各画素についてLC分子の異なる配向が実現可能な、空間的に構造化された好適な配向が代わりに与えられてもよい。
【0011】
また更に、切り替え可能な好適な配向が従来技術(ブリノフ/チグリノフの著書「液晶材料における電気光学効果」の125ページ、表題「多重安定配向(Multistable Orientation)」以下(文献[2]))として知られている。従来技術では、結晶のn(整数)重回転対称を有する結晶基板と接触するネマティック液晶に対して、一般にLC分子は、結晶により規定される方向のうちの1つに沿ってn個の異なる配向を有しうる。個々の領域は、これらのn個の方向のうちの1つに沿って種々の配向で形成されてもよい。外部面内電界は、個々の領域について、とり得るn個の方向のうちの異なる方向に配向を切り替えてもよい。また、蒸着酸化ケイ素フィルムを利用することで多重安定配向も実現できることが開示される。そして電界は、安定配向のうちの1つから別の安定配向に切り替える。2つのとり得る面配向間におけるネマティックLCのスイッチングに基づいた双安定LCディスプレイの概要についても開示されている。電界が存在しない場合、分子は、とり得る好適な配向のうちの1つに留まる。不変なコンテンツの表示には電力が必要ないため、双安定強誘電性LCと同様の節電機能を有するディスプレイが実現される。
【0012】
また、文献[3]は微細パターンの表面構造に基づく三安定LC装置を開示している。種々の好適な配向の超微細空間パターンは、ポリイミド面に書き込まれる。マイクロパターンにより、3つの同等に安定したLC配向は肉眼で見えるように実現される。面内電界はそれらを切り替える。
【0013】
光配向技術は、例えば高分子材料の表面層における感光分子が紫外線の影響下で構造を変更することにで、該高分子材料の表面層に装着されるLC分子の種々の好適な配向が誘起されるような、面配向間の光学的な切り替えを更に利用してもよい。このように、LC配向は、光学的にアドレスされた空間光変調器(OASLM)における表面相互作用を介して切り替えられてもよい。例えばこの光配向技術は、LC分子の面配向からホメオトロピック配向にも切り替えられうる。光スイッチングは、速度が遅いことが欠点であるため、高リフレッシュレートで動作することが想定される光変調器での使用には全く適さない。
【0014】
種々の液晶相がある。ネマティック液晶において、分子軸の均一配向がエネルギー的に好ましい。しかし、個々の分子の位置は統計的に分布する。スメクティック液晶において、分子はさらに層中にも存在している。特別な形式のスメクティック液晶、すなわちキラルスメクティックC相(SmC*)は強誘電特性を備える。強誘電性により発生するヒステリシスのため、この形式では双安定ディスプレイが実現できる。LC分子を1つの状態に切り替えるために、特定の電圧閾値が必要となる。正負が異なり、かつ絶対値が上述の閾値を上回る電圧が適用されるまで、LC分子は現在の状態に留まる。それからLC分子は他の状態に切り替わる。この間、面外電界が適用される。しかし、LC分子は、基板に対して平行に存在する面内で回転する。強誘電性LC(FLC:ferroelectric LC)に加え、例えば反強誘電性及びフェリ誘電性等の、同様の特性を有する更なる相が存在する。強誘電性LCは、高速のスイッチング速度を特徴とする。しかし、強誘電性LCは他の欠点を有する。また、SmC* LCを有するがヒステリシスを有さないため、双安定性を持たず、印加された電圧が変化した場合のLC分子における連続的な変化を実現する配置を、V型FLCモードと呼ぶ。
【0015】
国際公開第00/003288号A1パンフレットにおいて、表面層自体が液晶特性、より正確にはキラルスメクティック特性を有する電気光学装置を開示している。該装置は、例えばネマティックLCであってもよいバルクLC層を更に備える。
【0016】
表面層における液晶の配向は、電界を適用することにより切り替えられてもよい(「一次面スイッチング」)。次にその表面層は、バルク層における特定の配向を誘起する(「誘導バルクスイッチング」)。例えば、バルク層におけるLCは、表面層におけるLC分子の好適な配向に対して平行である好適な配向を有してもよい。動的表面層のスメクティックLC分子を、双安定スイッチング状態において独立層に関連して配向するために、絶対的な配向を決定する更なる(従来の)固定の独立表面層が提供されてもよい。以下、制御可能な表面層を配向手段とも呼ぶ。
【0017】
文献において、表面層におけるスメクティックLCの高速なスイッチング速度は主な利点として強調される。文献のアイデアは、バルク層において誘起された配向により、例えばバルク層のネマティックLCについて、バルク層を直接的に制御する場合よりも短縮化した応答時間を実現することである。
【0018】
また文献は、表面層により誘起されるバルク層の配向が、電界により実現されるバルク層の直接配向とともに二段階の効果として組み合わされうる一実施形態を含む。該実施形態において、バルク層の直接配向に対する電界強度の閾値は、表面層の切り替えに必要な電界強度より高い。従って、基板と平行な面におけるバルク層の分子配向の変化は、閾値電界強度を下回る低面外電界の適用、ひいては表面層の切り替えにより誘起されうる。同一の電極に適用されるより強い面外電界は、LC分子が基板と平行な面の外で回転するように直接バルク層を制御する。
【0019】
バルク層と混合しない独立表面層の代わりに、国際公開第03/081326号は、バルク層に分布するが、表面にしっかりと装着された分子にバルク層をドープする方法を開示している。表面層及びバルク層の空間分離はその方法によって克服されるが、それにしてもバルク層における配向は、表面層における規定の配向により誘起される。例えば表面層は、その側鎖が主鎖に対して回転、すなわち配向され得、骨格鎖が表面としっかり接続する側鎖状高分子を含んでもよい。
【0020】
《位相変調》
位相変調SLMは、ホログラフム表示装置等の可干渉性の光学的アプリケーションに必要である。一般にこれらは、x及びyの次元で規則的に配置された画素を有する光変調器である。該画素は、光変調器と相互作用する光の位相を変調するように作られる。画素と相互作用する光の変調は、別の画素と相互作用する光の変調と特に関連する。例えば可視域の所定の波長について、0〜2πの位相変調が必要となる。ホログラム表示装置は、特に高速位相変調型光変調器を必要とする。
【0021】
従来の振幅変調型LCディスプレイのいくつかは、例えば入射光の偏光を変化させることにより、振幅の代わりに位相を変調するように容易に変形されうる。しかし、このような変形がなされたディスプレイパネルの位相範囲は例えば0〜πであり、要求される最大2πの位相範囲の殆どがサポートされない。
【0022】
電気的に制御された複屈折(ECB:electrically controlled birefringence)又は垂直配向(VA)等のLCモードは、振幅変調に対しては式Δn・d=λ/2を満たし、また最大2πである位相変調に対しては好ましくはΔn・d≧λ/2を満たす、層の厚さdと複屈折Δnとの組合せを必要とする。ここで、λは変調される光の波長である。
【0023】
振幅変調型光変調器と比較して、これらのLCモードのうちの1つを使用する位相変調型光変調器は、大抵は粘度がより高い、即ち反応がより低速であるLC分子、あるいは層厚がより大きいLC材料であって、より大きな屈折率を有するLC材料を必要とする。なお、慣習的にネマティックLCの応答時間は層厚の二乗にほぼ比例する。このため、これらの表示方式に基づく位相変調型光変調器は、同等の振幅変調型ディスプレイよりも不都合なほどに低速となる。
【0024】
しかしながら、LCのとり得る配向の範囲を維持しつつ動的配向層を使用することで、これらのLCモードを促進することが一般に可能である。しかし、最も低速なスイッチング動作は、振幅変調型ディスプレイにおける中間階調応答速度遷移、あるいは位相変調に適応された中間位相シフト遷移である。限られた数の規定の面配向状態しかないため、要求される位相ステップの全てが要望通りに促進されるわけではないことを疑う必要がある。
【0025】
上述の構成におけるECB及びVAは、位相変調のために直線偏光光を必要とする。
【0026】
パンチャラトナム[4]に係る位相変調の別の手段は、円偏光光及び制御可能なλ/2板(従って、この場合Δn・d=λ/2が当てはまる)を利用する。表面に対して平行な面においてλ/2板の光軸が角度φだけ傾く場合、2φの位相変調が得られる。180度の角度φについては、2πの位相の実現が必要になる。
【0027】
同様に、反射配置は、円偏光光が回転可能に配置されたλ/2板を通過し、次に固定のλ/4板を通過した後反射層に到達し、そして再度固定のλ/4板及び回転可能に配置されたλ/2板に経路を戻るように提供されてもよい。回転可能に配置されたλ/2板は、例えば液晶の適切な層形状で実現されてもよい。固定のλ/4板は、例えば高分子フィルムの形態で実現されてもよい。λ/2板が角度φだけ回転する場合、光は、反射器までの経路において該角度の2倍、即ち2φだけ位相変調され、反射後の戻る経路おいてさらに2φ、即ち全体で4φだけ位相変調される。その後、φ=90度までの全角度範囲については、最大360度(2π)の位相変調を実現する必要がある。
【0028】
従来技術に係る反射配置を採用する別の手段は、回転可能に配置されたλ/4板及び反射層を使用する。この場合λ/4板は、2度、すなわち反射器に向かう経路及び反射器から戻る経路において通過されることで、光に対して回転可能に配置された透過型λ/2板と同様の効果が実現する。回転可能に配置されたλ/4板は、例えば液晶の適切な層形状で実現されてもよい。その場合、λ/4板が角度φだけ回転された場合に実現される位相変調は、ここでもその回転角の2倍、すなわち2φである。全体でφ=180度の角度範囲については、ここでも最大360度(2π)の位相変調を実現する必要がある。LCに基づく位相変調型光変調器が使用される場合、λ/4板の層厚は、応答時間に対して良好な影響を与えうる透過型変調器の半分である。
【0029】
反射型変調器についての手段は、両方とも文献[7]において説明され、図2に概略的に示される。
【0030】
LCの場合、一般に光軸は、LC分子の長軸に対応する。従って、光軸は、面内のLC分子の傾斜に応じて傾斜されうる。
【0031】
例えば米国特許出願公開第2007−002267号公報に示される、面内スイッチング(IPS)又は分極遮蔽型スメクティック(PSS:polarisation-shielded smectic)等の特定の種類のLCディスプレイは、Δn・d=λ/2の層厚を使用して、面内電界を介した制御によりLC分子を回転する。PSS型振幅ディスプレイは特に高速である。最大1kHz以上の制御周波数が実現される。IPSは、ネマティックLC及び面内電界を使用する。PSSは、スメクティック分子及び面外電界を使用する。振幅変調を実現するため、これらのLCモードは、従来直線偏光光を使用して動作する。しかし、偏光状態は容易に変更できる。例えばλ/4板は、直線偏光光を円偏光光に変換するために用いられうる。ネマティック分子及びスメクティック分子は、ネマティック分子が印加された電圧の符号に関係なく同一の方向に配向するのに対し、特定のスメクティックLC分子の配向が、正または負の電圧が印加されているかに依存する点で異なる。
【0032】
PSS型の位相変調型光変調器において、回転、即ち位相の方向は、電圧の符号に依存する。独国特許第10 2009 002 987.7号明細書は、電圧の符号を考慮した、円偏光光を用いる位相変調型光変調器におけるPSSモードの使用について開示する。しかし、IPSモード及びPSSモードにおけるLC分子の従来の回転角は、2πの位相変調の実現には十分でない。
【0033】
入射光の適切な直線偏光を伴う透過PSS型の振幅変調型光変調器では、回転角2φの2倍に対する二乗正弦に比例する透過プロファイルが現れる。
【0034】
最小透過率はφ=0度の場合に実現され、最大透過率は、φ=+45度又はφ=−45度の場合に実現される。理想的には、透過PSS型の振幅変調型光変調器は、+45度〜−45度の回転角範囲を使用する。該角度範囲において、回転可能に配置されたλ/2板及び固定のλ/4板を含む反射位相変調型光変調器を使用することも可能である。
【0035】
しかし、PSSについての回転角φの有効範囲は、PSS(特に、スメクティックC)に使用されるスメクティック相において、LC分子のチルト角により制限される。このチルト角は、実際に使用された液晶基板に依存し、温度によっても変動する材料特有のパラメータである。従来のLCディスプレイではネマティック材料が頻繁に使用されるため、多くのLC製造業者は、殆どネマティックLC材料を提供する。市販のスメクティックLC材料の選択肢は非常に少ない。
【0036】
このため、−45度〜+45度の角度範囲は、使用可能なLC材料を用いる場合、狭い温度範囲を除いて大抵は実現不可能である。例えば、達成可能な角度範囲はせいぜい−35度〜+35度である。
【0037】
別の制限は、理論的には45度の角度は得られるが、そのような角度を実現するために必要な電圧は非常に高く、従来のLCバックプレーンで実現可能な範囲を超えるということである。
【0038】
角度範囲が小さすぎる場合の欠点は、振幅変調及び位相変調において異なった強い影響を及ぼす。振幅変調の場合、35度の角度で、例えば最大透過率の88パーセントが得られる。このことは、ディスプレイの発光効率が僅かに低くなり、及びその結果としてディスプレイの消費電力が僅かに高くなるという小さな欠点が受け入れられるのであれば、振幅変調型ディスプレイがこの角度範囲でも動作しうることを意味する。しかし、反射型の位相変調型SLMにおいて、−35度〜+35度の回転角は要求される最大2πの変調ではなく、1.55πの最大位相変調のみを可能にするだろう。
【0039】
そのような位相変調SLMがホログラム表示装置で使用される場合、これはホログラム再構成の品質に悪影響を及ぼすだろう。これは重大な欠点を示す。
【0040】
IPSモードを用いる振幅変調は、0度〜45度の回転角を必要とする。これは直線偏光光について、出口において固定の偏光子と組み合わせることで、完全な透過又は完全な消光を実現するために十分である、0度〜90度の回転を達成する。PSSモードを用いる振幅変調は、−45度〜+45度の角度を利用する。なお、この場合、正の角度及び負の角度は同一の振幅をもたらす。
【0041】
位相変調については、この角度範囲は、回転可能に配置されたλ/4板であるLCの実施形態で、透過型の位相変調型光変調器又は反射型の位相変調型光変調器における0〜π/2(IPS)及び0〜π(PSS)の位相に対応する。最大2πの所望の位相変調を実現するため、LC分子が配向される角度は増大される、すなわちIPSの場合に4倍、PSSの場合に2倍にされる必要があった。これは大抵実現されない。従来のIPS型ディスプレイにおいて達成可能な最大の回転角は90度である。PSSについての理論限界は±90度を示すが、実際には達成されることはない。
【0042】
従って、本発明の目的は、使用可能なLC配向の角度範囲が拡張された、最大2πの変調範囲を有する高速位相変調型SLMを提供することである。
【0043】
文献[6]は、強誘電性高分子液晶(FLCP:ferroelectric liquid-crystal polymer)を使用する切り替え可能な表面配列を開示する。
【0044】
低分子液晶は、高分子の移動側鎖を形成するようにポリシロキサン骨格と化学的に結合される。骨格は、この配置に機械的安定性を与え、側鎖は、低分子液晶と同様に、電界において配向してもよい。
【0045】
LCセルは、ガラス基板上に蒸着され、機械摩擦により処理されたポリイミド層に提供される。FLCPは、ポリイミドの上の少なくとも1つの基板への追加層としてスピンコーティングで適用され、また機械的に摩擦される。その後、LC材料は2つの基板間に充填される。FLCP層に対抗する面において、LC材料は、FLCPの側鎖に対して実質的に平行に配向する。FLCPの側鎖は、電界を適用することにより異なる配向を与えられてもよい。これにより、LC材料の面配向が変化する。文献[6]は、約−15度〜+15度の角度範囲のFLCPの配向が実験的に証明されたことを開示している。印加電圧に応じて、これらの角度は類似的に、即ち連続的に変更可能である。電力がoffに切り替えられる場合、LCは、摩擦方向に対して平行の配向に戻る。その場合、バイナリスイッチングはない。表面層は、代わりにV形FLCのように振る舞う。
【0046】
《位相偏向器》
観察者追跡のためにホログラム表示装置で使用される位相偏向器等の回折光学素子では、高い回折効率を実現することが課題である。このような位相偏向器は、例えば独国特許第10 2009 028 626.8号明細書及び国際公開第2010/149587号において、回折装置として開示される。以下、位相偏向器を更に詳細に説明するため、独国特許第10 2009 028 626.8号明細書及び国際公開第2010/149587号の開示内容は、本明細書において完全に含まれるものとする。
【0047】
追跡装置において、好ましくない方向に回折された光が別の観察者の眼球に入射しうるため、ディスプレイを見る観察者の他方の眼球についての潜在的な光のクロストークも、回折効率が低いことにより生じるだろう。観察者の2つの眼球は互いに常に一定の距離を有しており、眼球間のクロストークは効率的に防止できるため、このことはシングルユーザシステムではそれ程問題とならないが、特に個々の観察者の相対位置が変動するマルチユーザシステムにおいては、クロストークは不要な制限を生じうる。
【0048】
例えば光は、偏向方向に依存して線形増加あるいは線形減少する位相プロファイルに準じた回折格子において偏向される。位相が2πを法としてのみ変調される場合、位相プロファイルは2πから0へのジャンプバック(フライバック領域)を示すだろう。従って、位相プロファイルは鋸歯のような見た目であり、この特定のケースでは、鋸歯形状は実質的に線形増加する稜線と略垂直的に減少する稜線との周期を有する。実際にはこれらの領域は、鋭敏あるいは垂直的な減少を理想的に示さず、滑らかに傾斜される。位相プロファイルの減少稜線では回折効率が低下するため、潜在的なクロストークは増加する。このとき位相プロファイルの増加稜線に関して減少稜線の相対部分が増加するため、格子周期が短くなるほど効率低下は増大する。より短い格子周期は、より大きな偏向角度に対応する。パンチャラトナムの位相変調にも基づく偏光格子(PG:polarisation grating)を使用することで、この影響は回避可能である。LCPGにおけるLC分子は、0度〜360度等の角度分、2つの格子周期にわたって連続的に回転する。これは、2つの格子周期にわたる0〜4πの位相に対応する。要求されるLC配向にジャンプがないため、位相プロファイルは、2π〜0の領域に分布されない、すなわち要望に応じて設定されてよい。光は、ほぼ100%の高い効率で回折されうる。
【0049】
観察者の眼球を追跡する追跡ユニットは、格子周期を変更することで偏向角度を変更可能なように、可変周期を有する偏光格子を必要とする。従来のLCPGは、光配向により作成され、固定周期を有する。V−COPAと呼ばれる特別な種類の偏光格子(米国特許出願公開第2009/0073331号明細書及び文献[5]を参照)は、電界により制御される可変周期を有する。V−COPAは、負の誘導異方性を有するLCを使用する。電界がない場合、分子は、実質的に表面に対して直角に配向される。面外電界が適用される場合、分子は面内で配向する。更なる面内電圧差により、面内の配向は規定され得、従って格子周期は変動しうる。しかし、この種の偏光格子を用いることで、電界が適用された場合に、偏光格子に必要なLC配向の螺旋構造が生成されるように、面配向は回折格子の所定のピッチ間の選択位置において定義されなければならない。しかし、この定義された面配向は、電界を利用して制御される場合に、偏光格子の可変周期の作成を妨害する。これは、所望の偏光格子と比べ、LC配向における欠点となる。
【0050】
従って、文献において説明されたようなV−COPA、すなわちホログラムディスプレイにおいて追跡を行う位相偏向器を、高効率かつ僅かなクロストークで使用することは不可能である。
【発明の概要】
【0051】
可変周期の偏光格子に対する他のとり得るLCモードは、達成可能な分子の回転角が180度もしくは選択的に360度である場合においてのみ、ここでもIPS及びPSSを含む。従って、これらのLCモードを使用する場合、位相偏向器において光変調器(SLM)における問題と同様の問題がある。
【0052】
本発明に係るIPS/PSS型の位相変調型SLM又は位相偏向器は、選択的に、本発明に係る回転可能に配置されたλ/2板を有する透過型か、本発明に係る回転可能に配置されたλ/4板を有する反射型である。
【0053】
位相変調型SLMにおいて設定されうる位相値の範囲を拡張するために、画素化されたSLM(又はストライプ電極を有する偏向器)におけるLC分子の画素毎(又はストライプ毎)の切り替え可能な、あるいは可変の面配向は、面配向とLC分子の直接制御との組み合わせによる拡張を目的とする、とり得るLC配向の角度範囲が固定の面配向によって可能な値を超えるように、電界によるLC分子の直接制御と組み合わせて使用される。
【0054】
特に、約180度のLC配向の角度範囲は、切り替え可能なあるいは可変の面配向と電界によるLC分子の直接制御とを組み合わせることにより、IPS又はPSS等のLCモードにより実現される。これにより、最大2πの位相変調を実現できる。
【0055】
これは、ホログラム表示装置内の、あるいはシングルユーザ又はマルチユーザのホログラムシステムにおいて位相偏向器として使用される、高い回折効率を有する位相偏向器内の位相変調型SLMにおいてこのようなLCモードを使用するための主な条件を満たす。従来技術において説明されている面配向を切り替えるかあるいは変更する、いかなる技術が使用されてもよい。スイッチングは、スメクティック液晶自体を含む動的表面層により実現されることが好ましい。
【0056】
一実施形態は以下の通りであってもよい。電界により制御される所定の面配向に対して、面内で最大±45度のLC配向角を有するPSS型ディスプレイにおいて、「表面で90度+電界で+45度」の制御可能な角度が「表面で90度+電界で−45度」の制御可能な角度と結び付くように、好ましくは90度の面配向のスイッチングが追加される。位相変調器として使用される場合、例えば0〜πの位相は、0度の表面配向、及び−45度(位相0)〜+45度(位相π)の、電界に中の表面に対する相対配向により設定されるだろう。π〜2πの位相は、90度の面配向、及び−45度(位相π)〜+45度(位相2π)の、電界中の相対配向により設定されるだろう。
【0057】
これは、閾値電圧及び飽和電圧を考慮した電界強度の変更により制御される。例えば、面配向を切り替えるのに必要な電圧は、+45度又は−45度の角度が形成されるPSSモードの飽和電圧より高いはずである。二値で切り替え可能な面配向は、本実施形態に必要である。
【0058】
実際の構成に依存して、特定の面配向を規定するために使用された電界の方向は、一般に、LC層の直接制御を実現するために使用された電界の方向とは異なる方法で選択されてもよい。
【0059】
追加の動的スメクティック表面LC層を含むIPS型ディスプレイにおいて、例えば面外電界は、2つの双安定状態間で表面層を切り替えてもよい。その後LC分子は、面内電界により直接制御される。
【0060】
IPS LCモードにおいて面配向は、(面内電圧の符号に関係なく)1つの面配向について設定されうる0(最大電圧絶対値)〜約π(電界なし)の位相が一方の面配向か、あるいは他方の面配向について設定されうる約π(電界なし)〜2π(最大電圧絶対値)の位相が規定されることが好ましい。PSSモードとは異なり、2つの必要な面配向は、本実施形態では小さな相対角分異なるだけである。IPSモードにおいて、2つの双安定状態間で面配向が二値に切り替えられうる表面層、あるいは適用された電界変化として面配向が連続的に変動する表面層のいずれかを使用することが可能である。
【0061】
図1〜図6を用いて、本発明の該部分について以下により詳細に説明する。
【0062】
《本発明に係るV−COPA位相偏向器》
本発明によってV−COPAの概念は、少なくとも3つのとり得る状態(すなわち、少なくとも三安定又は連続的に可変)間で切り替えられるように、画素毎又はストライプ毎に制御されうる面配向が、固定の面配向ではなく、実際に設定される必要のあるLCPGの格子周期に可変的に適応されるように変形される。これにより、電界を介して実現される、このような周期のLCPGの生成は支持され、固定の面配向により発生するLCPGにおける欠陥は回避あるいは低減される。
【0063】
面配向の3つの状態は、例えば以下の通りである。
【0064】
1.面配向は、LC分子が実質的に電極に対して垂直に配向されるように規定される。
【0065】
2.面配向は、LC分子が面法線に対して僅かに傾斜した第1の角度で配向されるように規定される。
【0066】
3.面配向は、LC分子が面法線に対して僅かに傾斜した、第1の角度とは実質的に異なる方向に傾いており、かつ実質的に同一の絶対値を有する第2の角度で配向されるように規定される。
【0067】
一般に面配向は、光変調器の第1の局所領域において、LC分子(液晶)が実質的に予め決定可能な第1のプレチルトを有して配向されるように設定されうる。光変調器の第2の局所領域では、液晶は配向手段によって、第1のプレチルトに対して第1の角度だけ回転された、予め決定可能な第2のプレチルトを有して配向されうる。光変調器の第3の局所領域では、液晶は配向手段によって、第1のプレチルトに対して第2の角度だけ回転された、予め決定可能な第3のプレチルトを有して配向されうる。ここで第2の角度は、第1の角度と実質的に同一の絶対値を有するが、反対の方向に傾斜されている、すなわち反対の符号を有する。
【0068】
ここで、液晶の予め決定可能な第1のプレチルトは、V−COPA配置又はIPS/PSS配置を実現できるように、実質的に基板の面法線に対して平行又は垂直であってもよい。あるいは、液晶の予め決定可能な第1のプレチルトは、IPS配置が概して実現されうる、実質的な直線電極の縦軸に対して実質的に平行又は垂直であってもよい。
【0069】
IPS/PSSモードにおいて、2つのプレチルト間でのみ切り替えられる、二値挙動を示す配向層(配向手段)も選択的に可能である。該2つのプレチルトは、例えば実質的な直線電極の縦軸に対して、同一の絶対値を有するが正反対の方向に配向される角度で対照的に回転する。これは、上記の説明における第2のプレチルト及び第3のプレチルトに対応しており、電極の縦軸に対して平行又は垂直な上述の第1のプレチルトは、二値挙動を有する配向層を使用する場合には省略されてよい。
【0070】
面配向2及び3は、それらの距離がLCPGの格子周期とほぼ対応するように、特定の位置で設定される。装置が画素毎に制御される場合、設定2又は3に係る面配向は、各々1つの電極により影響を受けた領域において設定される。設定1に係る配向は、他の電極により設定される。
【0071】
格子周期が電極ピッチの整数倍と厳密に対応する場合、位置2と位置3との間の距離は格子周期と一致する。格子周期が電極ピッチの整数倍と厳密には対応しない場合、面配向2及び3は最も近い電極により設定されるだろう。
【0072】
例えば、面配向2及び3が交互に3画素及び4画素、すなわち平均で3.5画素の距離において設定されるため、電極ピッチの3.5倍の格子周期が設定されてもよい。
【0073】
図7〜図12を用いて、本発明のこの部分を以下により詳細に説明する。
【0074】
本発明に係る光変調器は、特にディスプレイにおいて2次元及び/又は3次元の画像コンテンツを提示するものとする。光変調器は、2つの対抗する基板及び電極を備える。少なくとも1つの電極は、一方だけ、あるいは双方の基板上に提供されてもよい。少なくとも1つの液晶層は、2つの基板間に提供される。配向手段は、液晶層に対向して予め決定可能な液晶のプレチルトを設定する基板の表面上に提供される。液晶の配向は、電極により発生する電界を介して、特に閾値電界強度及び飽和電界強度により規定されるような予め決定可能な範囲で制御可能である。予め決定可能な液晶のプレチルトは、上述したLC分子の好適な方向又は好適な配向になるように特に理解されるべきである。
【0075】
配向手段は、制御可能な種類のものであり、液晶のプレチルトを変更するように制御されうる。液晶のプレチルトが変更される場合、電界における液晶の配向は、液晶を前回の予め決定可能なプレチルトにより規定された範囲外に配向されるように制御されうる。予め決定可能な範囲外の液晶の配向は、特に予め決定可能なプレチルトにおいて定められる液晶の範囲において可能であった前回の配向あるいは回転方向の連続を示す。次に、液晶が面内の予め決定可能な範囲で傾き及び配向されてもよい場合、該液晶は、プレチルトが変更される際にこの面内の拡張された範囲で傾き及び配向されてもよい。
【0076】
特に、電界が適用される際に、液晶が2つの対抗する回転方向に任意に傾き及び配向されてもよい場合、制御可能な配向手段は、液晶のプレチルトが変更されるように制御されうるものとして提供されてもよい。液晶のプレチルトが変更される場合、液晶の配向は、液晶を決定論的な方法で傾ける、すなわち1つの回転方向にのみ傾けるように、電界によって制御されうる。
【0077】
PGの場合、配向手段は、制御可能な種類のものであってもよく、好ましくは電極を含む少なくとも2つの領域を介して、場所に依存して予め決定可能な方法で液晶のプレチルトが制御されるように、配向手段は制御されうる。
【0078】
本発明は、更にディスプレイに関し、特に請求項1乃至15のいずれか1項に記載の光変調器により特徴付けられる立体視ディスプレイ又はホログラムディスプレイに関する。更に、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の光変調器を動作する方法に関する。本発明に係る方法は、以下の処理工程を備える。
a)予め決定可能な液晶の少なくとも1つの配向、及び場合によっては配向手段を用いて予め決定可能な液晶の少なくとも1つのプレチルトを設定する工程
b)予め決定可能な液晶の配向と異なる配向を設定する工程
c)予め決定可能な液晶の配向と異なる配向が、液晶配向の所定の範囲外である場合に、予め決定可能な液晶の配向と異なる配向が設定可能なように、配向手段を用いて、予め決定可能な液晶のプレチルトを設定する工程
【0079】
《回転可能に配置されたλ/2板を含む本発明に係る反射位相変調型光変調器》
本発明によれば、反射PSSモード位相変調型光変調器は、可変又は回転可能なλ/2板の機能を実現する光装置を備える光学部品として設計される。光学部品は、固定のλ/4層及び反射層をその後部に更に備える。少なくとも±45度のLC分子の軸回転の角度範囲は、光装置を制御することにより、すなわち電界を利用して更に制御される、可変の面配向とPSS分子の直接制御とを組み合わせることにより実現される。このことは、PSSモードについての既に市販されているスメクティック液晶材料の使用、及び切り替え可能な面配向についての既に証明されている角度範囲の使用を、好ましくは許容する。ここで、電界と同様に変動する面配向が使用されることが好ましい。
【0080】
光変調器は、液晶層が可変のλ/2板の機能を実現する反射モードにおいて動作してもよいものとする。変調される円偏光光は、液晶層、及び液晶層の後段に配置されるλ/4板を通過し、反射層により反射され、そして再度λ/4板及び液晶層を通過する。あるいは光変調器は、液晶層が可変のλ/4板の機能を実現する反射モードにおいて動作してもよい。この場合変調される円偏光光は、液晶層を通過し、反射層により反射され、そして再度液晶層を通過する。
【0081】
位相変調型光変調器は、好ましくは、規則的に配置された、光変調器と相互作用する光の位相を、特に連続的に変調するように作られた画素を有する。ここで、1つの画素は、画素の断面全体にわたり実質的に同一の方法で、画素と相互作用する光を変調する。例えば、画素は図2に示される矩形の1つであってよい。図は、非常に拡大した状態を示しており、光変調器の微小部分の詳細のみを示している。
【0082】
局所的に異なる強度及び/又は方向の電界を適用することにより、可変制御可能な格子周期を有するプレチルトに対して0度〜360度の範囲の連続的な液晶の角度分布が達成されるように、液晶は予め決定可能な方法で配向されてもよい。
【0083】
以下の実施形態は、上述したいかなる透過位相変調型SLM又は反射位相変調型SLM、あるいは位相偏向器と組み合わされてもよい。
【0084】
本発明の特定の一実施形態において、温度キャリブレーションが提供される。
【0085】
LC材料の弾性パラメータは、例えば温度変動と同様に変化する。分子間の弾性相互作用と表面及び電界の組み合わせの結果として得られる全配向について、一般に分子の回転角は温度変化と共に変動するが、電圧は一定のままである。連続的に電圧が与えられたとすると、温度が上昇するのに伴い、角度はより大きくなることが多い。しかし、これは分子に依存する。従って、これは通常の場合ではあるが、温度が上昇するのに伴い、可動性は必ずしも増加しなくてもよい。
【0086】
温度変動に伴って発生する弾力性や偏向角度の変化は、可逆的であり、キャリブレーションされてもよい。このキャリブレーションは、ルックアップテーブル(LUT)に格納されることが好ましい。
【0087】
少なくとも1つの温度センサが、温度キャリブレーションを考慮できるように位相変調型光変調器において与えられる。温度を局所的に測定できるように温度センサの行列が与えられうる。
【0088】
場合によっては、最大回転角は、例えば温度上昇に応じて減少する等、温度変化に伴って変動してもよい。位相変調型光変調器が規定の動作温度範囲で起動されるものである場合、スメクティックLC及びFLCP、並びに使用された電圧は、動作温度範囲のうち、最小角度に関する温度においても、角度45度が常に達成されるように選択される。
【0089】
本発明の特定の一実施形態において、装置の老化を補償するいくつかの手段が提供される。
【0090】
ディスプレイの前面に配設されるUVフィルタは、紫外線放射の高い光子エネルギーにより発生する化学結合の崩壊を広く防止することで、ディスプレイの材料の化学的老化を軽減する。化学結合は安定したままとなる。FLC分子の強固な化学結合は、特に切り替え可能な面配向層におけるこれらの分子とPSS LC層におけるLC分子との不要な混合も防止する。
【0091】
上述の従来技術は、FLC側鎖を有するポリシロキサンの形態のFLCPを利用する。しかし、これは、FLCPがLCセルに配設される追加層を必要とするという欠点を有する。
【0092】
従って、LCセルにおける表面配向に対して既に使用されている材料であるポリイミドとFLC分子を直接化学結合することを提案する。FLCをポリイミド配向層に化学結合することは、官能基をFLCに取り付けることにより実現されてもよい。この場合、官能基は、一方ではFLCに結合され、他方ではポリイミド配向層の分子に結合される。
【0093】
一般に、FLCPを使用することは、切り替え可能な表面配向を実現する1つの手段にすぎない。本明細書において提案される切り替え可能な表面配向を実現する別の手段は、カーボンナノチューブ(CNT:carbon nanotube)を使用することである。CNTは、適切な官能基と更に化学結合されてもよい。種々の官能基をCNTに取り付ける手段については、文献において説明される。このことは、特にこのコンテキストにおいて使用されてもよい。また、2つの官能基をFLC又はCNTに装着することも可能であり、この場合、一方の官能基は配向層に対する化学結合を提供し、他方の官能基はLC材料に対する化学結合を提供する。これらの2つの官能基は特定のものであってもよく、その結果、FLC又はCNTが両側で配向層に「ステープラ留めされる」ことを回避する。
【0094】
またLC層に拡散する他の分子も、例えば老化作用の形で悪影響を及ぼしうる。短鎖CH分子(及び可塑剤)はLCに拡散する。しかし、拡散係数はLC材料に依存し、LC材料への拡散が実際の材料の組合せにおいて最小限になるように選択されてもよい。短鎖CH分子は、拡散平衡に達するまでに生じる拡散を補償するために、より高い濃度で配向層に追加されてもよい。LC層に対して要求されるシーリングは、シールが該短鎖分子に対する拡散抑止物の役割となるように行われるべきである。
【0095】
概して、好ましい物理的形状及び教示の継続は、本発明の好適な実施形態の説明及び添付の図面とともに以下に説明される。図面は概略図である。全ての図面において、同一の、あるいは類似するパーツについては、同様の参照番号が付される。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】従来技術に係る、異なる電圧が印加された場合のPSS LC分子の配向を示した正面図(即ち、観測者からディスプレイパネルに向かう、基板の面法線と一致する方向の典型図)。
【図2】本発明の第1の実施形態の詳細を(簡略化された方法で)示す正面図。ここでPSS LC分子は、図1のように全体で90度の角度範囲(−45度〜+45度)内で配向されるだけでなく、90度で二値に切り替え可能な面配向により、全体で180度の角度範囲内で配向されてもよい。。
【図3】従来技術に係る円偏光光の位相変調原理を示す図。
【図4】IPSモードのディスプレイの詳細を示す正面図。具体的には、図において左は電界が適用されていない場合の分子の配向、右上及び右下は絶対値Vmaxの電圧により生成される電界が適用された場合の分子の配向を示す。
【図5】図4の配置と同様の配置を示す正面図。LC分子のプレチルトは電極配置に対して僅かに回転する。
【図6】図5の配置と同様の配置を示す正面図。ここで本発明の更なる一実施形態において、LC分子の回転方向は、二値で切り替え可能な、あるいは連続的に可変のプレチルトにより特定されうる。
【図7A】本例ではVA LCを有する従来の位相偏向器の詳細を示す正面図。
【図7B】LC分子が図7Aに示されるように配向される場合に結果として得られる位相プロファイルを示す概略図。
【図8A】円偏光光の位相変調のための従来のLCPGの詳細を示す正面図。
【図8B】LC分子が図8Aに示されるように配向される場合に結果として得られる位相プロファイルを示す概略図。
【図9】図9は、電界が存在しない間の従来のV−COPAの詳細を示す正面図。
【図10】電界が存在する間の、適切な周期に従って配向されたLC分子を有する図9のV−COPAを示す正面図。
【図11】電界が存在する間の、不適切な周期に従って配向されたLC分子を有する図9のV−COPAを示す正面図。
【図12】本発明の別の実施形態を、電界が存在する間に制御可能な面配向、及び周期に適応される面配向に従って配向されたLC分子を有するV−COPAの詳細の形で示した正面図。
【図13】従来技術において既知のLCセルを示す断面図。
【図14A】、
【図14B】、
【図14C】、
【図15A】、
【図15B】、
【図15C】本発明の更なる一実施形態を示す正面図。
【図16】フリンジ電界(FFS)電極配置及び切り替え可能な配向手段を有する、従来技術において既知のLCセルを示す断面図。
【図17】本発明の更なる一実施形態を示す断面図。
【図18】、
【図19】図17の実施形態についての電界分布を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0097】
図1は、表面配向により規定されるような、LCの固定的又は不変の好適な配向を有する、従来技術のPSS LCディスプレイの詳細を示す。該好適な配向は、矢印VRにより示される。図の中央には、電圧が印加されない、即ちU=0Vである場合が示されており、LC分子はこの好適な配向VRに対して平行に配向する。特定の閾値を上回る電圧が図面に対して垂直方向に印加される場合、分子は該方向に対して回転する。このとき、その回転方向は電圧の符号に依存し、回転角は電圧の絶対値に依存する。電圧飽和値を上回ると、固定の最大回転角が得られる。光の振幅を変調するLCDにおいて、一般にこの角度は、およそ±45度である。入射光の偏光方向は図示されない。振幅変調は直線偏光光により実現され、位相変調は円偏光光により実現される。0〜πの位相値は、−45度〜+45度の回転角範囲を実現するように設定されなければならない。
【0098】
図2は、二値で切り替え可能な面配向を有する、本発明に係るPSS LCディスプレイの詳細を示す。面配向の一方の好適な配向VR1は、他方の好適な配向VR2に切り替えられてもよい。電界が適用されない場合(上部中央及び下部中央)、LC分子は、これらの好適な配向VR1又はVR2のいずれかに対して平行に配向する。電界が適用される場合、LC分子は、これらの好適な配向VR1及びVR2のそれぞれに対して、対応する角度をなして配向される。
【0099】
本例において、VR1とVR2とがなす角度は90度である。これは、好適な面配向VR1がアクティブである場合、及び正の最大電圧が印加される(右上隅の図に示されるように、0度+45度)場合に得られるLCの配向が、好適な面配向VR2がアクティブである場合、及び負の最大電圧が印加される(左下隅の図に示されるように、90度−45度)場合に得られるLCの配向に対応していることを意味する。一般に、LC分子の配向は、特定の面配向と特定の電界とを組み合わせることにより、180度の角度範囲で変化しうる。この角度範囲は、0〜2πの範囲の位相変調に対して十分である。
【0100】
例えば面配向は、短い電圧パルスを双安定表面層に印加することにより設定されてもよく、バルクLCの直接制御は順次実行されてもよい。
【0101】
図3は、パンチャラトナム[4]に係る位相変調の一般的原理を再度示す。円偏光光はλ/2板上に入射する。円偏光光の回転方向は変化する。また、λ/2板の光軸の角度に依存する位相が面内で発生する。光軸が角度φだけ傾けられる(図3において右側の図)場合、出口の位相は角度2φだけ変化する。
【0102】
図4は、図平面において電界を発生しうる2つの面内電極E1、E2を有する、従来技術のIPSモードLCDの画素の詳細を概略的に示す。この例において、既定の面配向VRは、電界の方向に対して厳密に90度をなす。そのような配置において、電界における分子の時計方向及び反時計方向の回転はエネルギー的に等しい。従って、種々の配向を有する領域、具体的には図の右上及び右下に示された配向が形成されうる。
【0103】
図5は、面配向VR’が電界の配向に対して90度から小角度(プレチルト)だけ逸れる、従来技術のIPSモードLCDの画素の詳細を概略的に示す。このプレチルトは、分子の時計方向の回転をエネルギー的に好む。図5から分かるように、LC分子が、面配向と電界に平行な配向との間の範囲でのみ配向しうるため、IPSセルはほぼ90度の最大回転角のみを実現できる。しかし、一般に45度は、振幅変調に対して既に十分である。
【0104】
図6は、切り替え可能な面配向VR1及びVR2を含むIPSモードディスプレイの画素の詳細を概略的に示す。配向は、電界に対する垂直方向周りに、小角度分だけ切り替えられる。面配向VR1がアクティブである場合、電界が適用される際のLC分子の回転方向は時計回りが好ましい。面配向VR2がアクティブである場合、電界が適用される際のLC分子の回転方向は反時計回りが好ましい。
【0105】
例えばこのコンテキストにおいて、二値挙動を示す、すなわち電極表面に対して−ε及び+εの角度をなす2つのプレチルトの状態間で切り替えを行う表面層が利用可能である。
【0106】
これにより、−90度〜−ε及び+ε及び+90度の角度範囲を実現できる。このとき、εは好適な配向VR1及びVR2における電界の法線に対する角度である。これらの角度は、例えば2度〜5度の範囲等、非常に小さくてよい。これにより、π周辺の小さい間隙を除いて、0〜2πの位相変調が可能になる。位相偏向器において、LC配向の連続らせんが形成されるような影響を、隣接するLC分子からも受けることで、上記間隙は閉じられる。
【0107】
あるいは、−ε〜+εの角度範囲でプレチルトが連続的に変化しうる表面層が使用されてもよい。このとき、第1のプレチルト(電界の適用なし)は電極に対して平行であってもよい。電極に対するLCの小角度、具体的には−ε〜+εの範囲は、表面層のプレチルトの設定によってのみ実現されうる。−90度〜−ε及び+ε〜+90度の角度範囲は、表面層のプレチルトが+ε又は−εに設定され、さらに面内電界によってLCが直接制御される、「二値ケース」のように実現される。
【0108】
図7Aは、この例のVAモードLCを備える従来の位相偏向器を示す。0〜2π間の位相変調は、図平面から外側にLCを傾けることにより実現される(図は図平面へのLCの投影を示し、影が短いほど図平面から外側に傾いている)。
【0109】
図7Bは、結果として得られる位相プロファイルを示す。2πから0への遷移点において、要望通りに位相φを変調できるように、LC配向における90度のジャンプがあるべきである。しかしながら、LC分子間の弾性力が配向におけるこのようなジャンプを許容しないため、図において黒縞のLC分子により示された平滑効果があるだろう。減少する稜線AA(フライバック領域)は位相プロファイルにおいて発生する。ホログラムディスプレイにおいて、光は、このフライバック領域において要望通りには偏向されない。回折効率が低下し、異なる観察者の眼球への不要なクロストークが発生する可能性がある。
【0110】
図8A及びBは、円偏光光の変調に基づく従来技術のLCPGを示す。180度のLC分子の回転(図8Aを参照)は、2π位相(図8Bを参照)に対応する。LC分子は連続的に回転し続けるため、2π/0遷移点における位相プロファイルには欠陥はない(図8Bを参照)。従来のLCPGは、1度限りのの光誘起配向により規定される固定の格子周期を有する。一般にホログラムディスプレイにおいて光アドレスされた可変LCPGを使用することが可能であるが、要求される応答時間は達成されないだろう。
【0111】
図9は、従来技術のV−COPAを示す。LCPGは、そこに電界を適用することにより部分的に形成される。しかし、予め決定可能な面配向は、電界において発生するLCPGに対して依然として必要だろう。
【0112】
図9は、電界が存在しない間の分子の配向を示す。この配向は、主に図平面に対して直角をなす。しかし特定の位置において、LC分子は、面法線に対して、面配向により発生した上方向(1’)又は下方向(1”)に僅かに傾斜される。他の位置では、LC分子は、基板の表面に対して厳密に垂直に配向されてもよい(1)。
【0113】
図10は、従来技術のV−COPAを示す。ここで、分子は負の誘電異方性を有する。図10は、1つの格子周期の電界における分子の配向を示す。分子は、面外電界により図平面で傾く。しかし、該図平面において特定の配向を実現するためには、0度〜360度の範囲で連続的な回転が実現されなければならない。これは、実際の格子周期に依存して可変配向が該図平面内で実現されなければならないことを意味する。これは、例えば位置4及び4’において更なる面内電界を適用することにより部分的に実現される。しかし、位置1’及び1”における配向は、最初に電界なしの条件において面配向に従って事前に傾斜されることにより設定される。連続的な回転は、弾性力により発生したこれらの位置の間(例えば、1’〜4の左)で行われる。
【0114】
図11は、従来技術のV−COPAの格子周期が変動する際に現れる問題を示す。いくつかの位置において、面配向により規定される配向(点線/薄灰色)と格子周期に必要な配向との間には不一致がある。これは、周期変化を伴う位相プロファイルが局所的にのみ生成されるからである。全体的に見ると、欠陥がある。
【0115】
図12は、本発明に係る該問題の解決策を示す。表面配向は、3つの面配向1、1’、及び1”間の画素毎のスイッチングにより、実際の格子周期に一致されてもよい。このようにすることで、図11に示される不一致を回避でき、格子周期の大域的な変化は欠陥を伴わず実現できる。本発明によって変形されたこのようなV−COPAは、ホログラムディスプレイにおける観察者追跡に適する。
【0116】
上述したように、面内電界により制御されるLCにおいて、LC分子の長軸の配向は、LCの制御可能な面配向と組み合わせて最大180度の角度範囲で設定されうる。該制御可能な角度範囲により、このような電極配置を利用する可変偏光格子が実現できる。
【0117】
次に、要求される電極配置及びLC分子の制御の詳細に焦点を当てる更なる実施形態を説明する。
【0118】
図13は、[6]に係る従来技術を図示したものであり、スペーサSPにより規定された距離をおいて配置された2つのガラス基板GSを有するLCセルの断面を示している。ここで、2つのガラス基板の内表面は、平面電極EO及びEU、及び制御可能な表面配向層又は配向手段FLCPO及びFLCPUにより覆われる。ネマティックLCを含む層NLCは、制御可能な配向手段の間に配置される。制御可能な配向手段EO、EUは、ここでは強誘電性液晶ポリマー(FLCP)で構成される。
【0119】
ここで、2つの配向手段FLCPO、FLCPUは、2つの平面電極EO、EU間の面外電界を介して制御される。ネマティックLC自体は、例えば電界により直接制御されるのではなく、配向手段FLCPO、FLCPUとの相互作用を通じて間接的にのみ制御される。
【0120】
図14A乃至Cは、可変制御可能な偏光格子についての本発明の別の実施形態を概略的に示す。図14A乃至Cは、図13に示された層状構造と同様の層状構造を有する。図14A乃至Cは正面図であるため、層状構造はこの図に示されない。しかし図13とは対照的に、本実施形態では平面電極を特徴的に示さないが、矩形の箱として示される、縞状の、ここに制御可能な電極E1〜Enのほんのいくつかが、図の縦方向に示される。電極E1〜Enは、いずれかのガラス基板に適用される。上部ガラス基板及び下部ガラス基板上の電極E1〜Enは上下に(一致して)あり、正面図では別個に示されない。電極E1〜Enは、透明な材料で作られるか、少なくとも使用される光について透過構造を有し、例えばインジウムスズ酸化物(ITO:indium tin oxide)で作られる。
【0121】
LC配向は、切り替え可能なプレチルトが設定される、即ちLC分子の回転方向が時計回りか反時計回りに設定される面外電界と、LC分子の所望の回転角が最終的に実現される面内電界との組合せにより、図5及び図6に示された原理に従って規定される。また、LC分子の回転角が横方向の位置に応じて連続的に変化して設定されるように、弾性力は個々のLC分子間でも働く。
【0122】
図14Aは、特定の面配向により誘起されるような、電界がない状態におけるLC分子の均一な初期配向を示す。この状態は、電界がない状態での面配向を示す。図示されるような、電界により制御される連続的な可変面配向の場合、電界がない状態における面配向は、電極E1〜Enに対して平行になるように選択されることが好ましい。(電界がOFF状態に切り替えられる際に変化せずに留まる)二値で切り替え可能な面配向の場合、LC分子は、電界がない状態におけるこれらのスイッチング状態のうちの1つであってもよく、すなわち電極E1〜Enの縦軸に対して小角度を示してもよい。
【0123】
図14Bは、切り替え可能な配向手段の制御によって、偏光格子の制御に適したプレチルトが生成される方法を示す。面外電界は、上部基板及び下部基板上の対応する電極E1〜En間に適用される。切り替え可能な配向手段は、電圧の符号に応じて、表面のLC分子に小さな時計回り又は反時計回りのプレチルトを与える。偏光格子において、LC分子の180度回転、すなわちゼロ位置から開始して、格子半周期に対応する時計方向の回転、及び残りの格子半周期に対応する反時計方向の回転は、1つの格子周期内で要求される。図14Bは、設定される格子周期が電極距離の4倍に正確に対応している例を示す。しかし、一般に格子周期は、電極距離の整数倍でなくてもよい。
【0124】
ここで、正の面外電圧は、2つの電極(すなわち、「+」の上部電極と、O+として示された電極)に印加され、負の面外電圧は、以下の2つの電極(すなわち、「−」の上部電極と、O−として示された電極)に印加される。配向手段は、それにより制御されるかあるいは切り替えられ、LC分子は、小角度だけ適宜時計回り又は反時計回りに傾斜される。電極間に存在する分子は、LC分子間の弾性力により更に移動する。
【0125】
図14Cは、LC層において偏光格子を作成するために最終的に面内電界が適用された後のLCの配向を示す。要求される局所的な回転角に依存する可変強度の面内電界は、同一の基板上で2つの隣接電極間に適用される(図14では、強い電界についてはI++、中程度の電界についてはI+、及び電界が存在しない場合はI0を用いて概略的に示される)。強い面内電界I++は最大90度のLC分子の回転を与え、より弱い電界I+は強度に応じてより小さな回転を与える。面内電界は、電極間のLC分子に直接影響を及ぼす。弾性力によって、電極E1〜Enの直下にある分子も同様に移動する。配向の回転方向に影響ないため、面内電界の符号は自由に選択されてもよい。配向の回転方向は、図14Bに示された小さなプレチルトによってのみ規定される。
【0126】
上述したものは可能な一実施形態を示すが、その実施形態はいくつかの欠点を有する。特に、配向手段を切り替える面外電界は、LC分子が傾斜されるだけでなく、更に処理を妨害しうる面外への回転がなされるように、LC分子自体に更に影響を及ぼしうる。
【0127】
従って、図15A乃至Cは、電界に対して直角に配向する、負の誘電異方性を有するLC分子を含む一実施形態を示す。ここで、図15Aを参照すると、面配向は、実質的な直線電極E1〜Enの長軸に対して垂直になるように選択される。図15Bを参照すると、再度面外電界により切り替えられる配向手段は、時計回り又は反時計回りになるように回転方向を規定する。電界に対して垂直に配向する傾向のために、ここでは電界によってLC分子が面外に回転する危険性はない。図15Cは、偏光格子がアクティブである場合の状況を示す。
【0128】
それにもかかわらず、これらの実施形態は、適用される面内電界及び面外電界が相互作用し、互いの好ましい効果を妨害するという欠点を有する。
【0129】
図16は、従来技術において既知のフリンジ電界(FFS)電極配置有する切り替え可能な配向手段を示す。配向手段の制御に小さい電圧のみが必要であるため、この種の配置は、従来技術を示す引用された文書において選択される。下部基板GSは、ベース電極GEにより覆われ、その上には絶縁層ISOL及びストライプ電極SEがある。上部基板GSは、固定の配向層fALを有する。ベース電極GEとストライプ電極SEとの間の面外電界は、切り替え可能な配向手段FLCPを含んでさらに続く。従来技術によると、配向手段FLCPは、画素の領域全体にわたり均一に切り替えられる。
【0130】
図17は、平面電極GEと、従来のフリンジ電界とは大きく異なり、ここではいずれかの基板GS上に取り付けられた個別制御可能なストライプ電極SEとを有する一実施形態を示す。しかし、面内電極SEは、一方の電極GSのみに選択的に配設されてもよい。ここで、面外電界は妨害効果を有さないようにLC層NLCまで広がらないということが利点である。面内電界は、予め決定可能な格子周期を有する偏光格子を作成するように、個別制御可能なストライプ電極SEにより発生されてもよい。
【0131】
図18は、装置断面であり、層状構造及び配向手段を制御する際の等電位線のシミュレーションを示す。この例において、設定される格子周期は電極距離の6倍である。平面ベース電極GEと異なり、3つのストライプ電極SEは、負の電圧を供給される一方で正の電圧を供給される。基板GSに対して平行に走る等電位線は、電界の面外成分を示す。図から分かるように、電極SEの上に面外電界がある。これことは、格子半周期については時計回りの回転方向、残りの格子半周期については反時計回りの回転方向を規定する。
【0132】
図19は、LC層における実質的な面内電界(等電位線が基板GSに対して垂直に走る)、及び実質的な切り替え可能な配向手段における面外電界(等電位線が基板GSに対して平行に走る)を有する制御状況を示す。LC分子の配向は針状で概略的に示される。左側の点における針は図平面を超え、右側の点における針は図平面の前方に向かい、及び中央のLCの針は図平面に平行にあることが分かる。これは、1セットの格子周期内でLC分子についての、180度の好ましい回転を明示する。
【0133】
図18及び図19に示された2つの種類の電界は、実質的に二段制御を提供するように選択的に実現されてもよいし、あるいは図19に示された種類の電界は、所望の面外電界及び面内電界を既に有するため、単独で使用されてもよい。本実施形態の簡略された態様では、第2の基板の面内電極なしで実行可能であることが好ましい。これは、2つの基板の機械的な配向が不要になる。
【0134】
最後に、上述の実施形態は請求された教示を示すためだけに理解され、且つ請求された教示はこれらの実施形態に限定されるものではないことを述べておく。
【0135】
[引用]
[1]ピーエッチ・ジェイ・マーティン(Ph. J. Martin)著、「液晶配向に係る近年特許(Recent Patents on Liquid Crystal Alignment)」、材料化学に係る近年特許(Recent Patents on Material Science)、1、2008年、21−28
[2]エル・エム・ブリノフ、ブイ・ジー・チグリノフ(L.M. Blinov, V.G. Chigrinov)著、「液晶材料における電気光学効果(Electrooptic Effects in Liquid Crystal Materials)」、シュプリンガー・ベルラグ(Springer Verlag)、1994年
[3]ジョンヒュン・キム(Jong-Hyun Kim)、米山慎、横山浩著、「マイクロパターン化された表面配向を利用した3安定ネマティック液晶素子(Tristable nematic liquid-crystal device using micropatterned surface alignment)」、ネイチャー誌、420、2002年、p.159−162
[4]エス・パンチャラトナム(S. Pancharatnam)著、プロシーディング・インド・アカデミー・化学(Proc.Ind.Acad. Sci)、1955年、p.137
[5]エル・シー、ピー・エフ・マックマナモン、ピー・ジェー・ボス(L. Shi, P.F. MacManamon, P.J. Bos)著、「可変面内勾配を有する液晶光学位相板(Liquid crystal optical phase plate with variable in-plane gradient)」、ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス(J. Appl. Phys.)、104、2008年、0033109
[6]エル・コミトフ(L. Komitov)、ジャーナル・オフ・ザ・エスアイディー(Journal of the SID)、2008年、p.919−925
[7]ジェイ・エー・ストックリー、エス・エー・サラティ、ジー・ディー・シャープ、ピー・ワン、ケー・エフ・ウォルシュ、ケー・エム・ジョンソン(J. E. Stockley, S. A. Serati, G. D. Sharp, P. Wang, K. F. Walsh and K. M. Johnson)、「広帯域ビームステアリング(Broadband beam steering)」、プロシーディング・エスピーアイイー(Proc SPIE)、Vol.3131、1997年

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元及び3次元の少なくともいずれかの画像コンテンツを提示するディスプレイで用いられる光変調器であって、
前記光変調器は、2つの対向する基板(GS)及び電極(SE)を有し、
前記2つの基板(GS)の間には、少なくとも1つの液晶層(NLC)が設けられ、
予め決定可能な液晶のプレチルト(VR1)を設定するために、前記液晶層(NLC)に面する前記基板(GS)の面には配向手段(FLCPO、FLCPU)が設けられ、
前記液晶の配向は、前記電極により生成された電界を介して、予め決定可能な範囲で制御されることが可能であり、
前記配向手段(FLCPO、FLCPU)は制御可能な形式であって、前記液晶のプレチルト(VR1)が変更可能なように制御可能であり、
前記液晶のプレチルト(VR2)が変更された場合、前記液晶の配向が所定の範囲外で配向可能なように、あるいは前記液晶のプレチルト(VR1、VR2)が所定の位置に応じた予め決定可能な方法で設定可能なように、電界における前記液晶の配向は制御可能である
ことを特徴とする光変調器。
【請求項2】
前記配向手段(FLCPO、FLCPU)は、前記液晶が決定論的な方法で回転可能なように制御可能であることを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
規則的に配置された画素であって、前記光変調器と相互作用する光の位相変調用に作られた画素が、該画素の表面全体に渡って、実質的に同一の方法で、前記画素と相互作用する光を好適に変調することを特徴とする請求項1または2に記載の光変調器。
【請求項4】
反射作用原理を有し、
該反射作用原理において、
前記液晶層(NLC)は、可変λ/2板の機能を実現し、
変調される円偏光光は、前記液晶、及び前記液晶層の後段に配置されたλ/4板を通過し、反射層により反射され、再び前記λ/4板及び前記液晶層を通過する
ことを特徴とする請求項3に記載の光変調器。
【請求項5】
反射作用原理を有し、
該反射作用原理において
前記液晶層(NLC)は、可変λ/4板の機能を実現し、
変調される円偏光光は、前記液晶を通過し、反射層により反射され、再び前記液晶層(NLC)を通過する
ことを特徴とする請求項3に記載の光変調器。
【請求項6】
前記光変調器と相互作用する光は、実質的に前記光変調器の画素の断面全体に渡って、実質的に一定の位相値を用いて変更可能であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の光変調器。
【請求項7】
可変周期の回折構造が書き込み可能な、国際公開第2010/149587号の明細書あるいは特許請求の範囲の請求項1乃至36のいずれか1項に回折装置として記載される位相偏向器を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光変調器。
【請求項8】
実質的な直線電極(E1乃至En)及び面電極の少なくともいずれかが、少なくとも1つの基板に設けられることを特徴とする請求項7に記載の光変調器。
【請求項9】
面配向は、
前記光変調器の第1の局所領域において前記液晶が、予め決定可能な第1のプレチルト(VR)を有して実質的に配向され、
前記光変調器の第2の局所領域において前記液晶が、前記第1のプレチルト(VR)に対して第1の角度(−ε)回転された、予め決定可能な第2のプレチルト(VR1)を有して、前記配向手段により配向され、
前記光変調器の第3の局所領域において前記液晶が、前記第1のプレチルト(VR)に対して、前記第1の角度(−ε)と反対方向に、前記第1の角度(−ε)と実質的に同一の絶対値を有する第2の角度回転された、予め決定可能な第3のプレチルト(VR)を有して、前記配向手段により配向される
ように設定されることを特徴とする請求項7または8に記載の光変調器。
【請求項10】
予め決定可能な前記液晶の第1の配向は、基板の面法線に対して実質的に平行あるいは垂直であることを特徴とする請求項9に記載の光変調器。
【請求項11】
予め決定可能な前記液晶の第1の配向は、実質的な直線電極(E1乃至En)の縦方向に対して実質的に平行あるいは垂直であることを特徴とする請求項9に記載の光変調器。
【請求項12】
局所的に異なる強さ及び方向の少なくともいずれかを有する電界が適用されることにより、0度から360度の間の前記液晶の連続的な角度分布が、可変制御の格子周期を有する前記プレチルトに関連して実現されるように、前記液晶は予め決定可能な方法で配向可能であることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載の光変調器。
【請求項13】
少なくとも1つの温度センサが、前記光変調器の制御中に計測された現在の温度を考慮するために、前記光変調器の現在の温度を測定するように設けられることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の光変調器。
【請求項14】
前記光変調器への紫外光の入射を防止するUVフィルタを設けることで、前記光変調器の材料の化学的老化の速度を低減することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の光変調器。
【請求項15】
強誘電性液晶(FLC)分子あるいはカーボンナノチューブ(CNT)が、官能基を含む結合手段を介して、ポリイミド配向手段と直接化学結合されることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の光変調器。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載の光変調器を有することを特徴とする、特に立体視用途あるいはホログラム用途のディスプレイ。
【請求項17】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載の光変調器を動作する方法であって、
a)予め決定可能な液晶の少なくとも1つの配向、及び場合によっては配向手段を用いて前記予め決定可能な液晶の少なくとも1つのプレチルトを設定する工程と、
b)前記予め決定可能な液晶の配向と異なる配向を設定する工程と、
c)前記予め決定可能な液晶の配向と異なる配向が、液晶配向の所定の範囲外である場合に、前記予め決定可能な液晶の配向と異なる配向が設定可能なように、前記配向手段を用いて、予め決定可能な前記液晶のプレチルトを設定する工程と、を有する
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15C】
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【図11】
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【図13】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2013−506165(P2013−506165A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531420(P2012−531420)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064504
【国際公開番号】WO2011/039286
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(507230267)シーリアル テクノロジーズ ソシエテ アノニム (89)
【氏名又は名称原語表記】SEEREAL TECHNOLOGIES S.A.
【Fターム(参考)】