説明

2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料及びこれを用いたポリウレタン系絶縁電線

【課題】 有機溶剤の使用量が少なく2液混合後の粘度変化が比較的小さいポリウレタン系電気絶縁塗料、及び有機溶剤残存量を低減化したポリウレタン系絶縁電線を提供する。
【解決手段】 (a)イソシアネート基含有化合物と(b)活性水素含有化合物からなる2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料である。ポットライフ試験において(a)イソシアネート基含有化合物と(b)活性水素含有化合物とを混合したときの粘度上昇の比(=2液混合1時間後の粘度/2液混合直後の粘度)が50以下である。
また、この2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料を導体上に直接又は他の絶縁層を介して塗布し、焼付けて、絶縁層を形成したポリウレタン系絶縁電線である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境や人体に有害な有機溶剤の残存を低減化したポリウレタン系絶縁電線、及びこの絶縁電線の絶縁層の形成に使用する(2液混合後の)粘度変化の少ない2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンエナメル線絶縁塗料は、銅線やアルミニウム線などの電気伝導体(導体)に塗布焼付けして、導体上にポリウレタンの電気絶縁皮膜を形成させて、電気・電子機器等の電気絶縁電線として幅広く使用されている。多くのポリウレタンエナメル線用絶縁塗料は樹脂濃度が10〜50%程度であり、残りはフェノール、クレゾール、キシレノール酸などを主体とし、キシレン、ソルベントナフサ等の混合物を希釈剤とした有機溶媒からなっている。しかし、これらの有機溶媒は絶縁皮膜の形成に寄与することはなく、例えば、導体に塗布して、電線焼付炉を通過させることにより、加熱焼き付けて絶縁層を形成させる過程で多量の有機溶剤を蒸発させる。この蒸発させた有機溶剤は、通常燃焼触媒等を使用して燃焼処理をするが、この加熱蒸発や燃焼処理の際、大量のエネルギーを消費し、また燃焼触媒も高価なことより高コストとなり経済効率が悪い。また、燃焼処理することにより、炭酸ガスや窒素酸化ガス、さらには一部未燃焼の溶剤が大気中に放出されることにより、地球温暖化や大気汚染や水質汚染等の環境汚染や、人体への有害性や作業環境の悪化等の安全衛生面等で大きな問題となっており、有機溶剤の使用量をできるだけ少なくすることが要求されている。また、これらの有機溶剤は高価であるため、有機溶剤の多量な使用により樹脂溶液が高価になるという問題もある。近年、地球温暖化現象や環境に悪影響を及ぼす物質などの環境に対する関心の高まりにより、環境負荷物質を低減する活動が盛んに行われている。絶縁塗料においても使用される有機溶剤の量の削減や、環境に対する影響のより少ない代替物質への変更などが種々提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
また、従来のポリウレタンエナメル線用絶縁塗料は、有機ポリイソシアネートのイソシアネート基をフェノール、クレゾール、キシレノール酸等のフェノール類でマスクして(ブロックして)安定化させたブロック有機ポリイソシアネート化合物とポリオール等の活性水素を有するプレポリマーとを共存させて1液化したものを絶縁塗料として使用しているが、ブロック有機ポリイソシアネート化合物及び活性水素含有プレポリマーは、それ自体が高粘度であるため、導体に対する塗布作業性を上げるため、多量の有機溶剤を使用しており、また、イソシアネート基を安定化させるために使用した毒性の高いフェノール類は、焼付けの際、高温に加熱しても、完全に解離して放散することがなく、絶縁皮膜中にかなりの量が残存してしまう、いわゆる残存溶剤量が高いという問題がある。この絶縁層中に残るフェノール類は、電気製品や電子機器などを使用中に、徐々に室内等の環境中に放出され、使用者が曝露されることにより、健康被害を及ぼし、さらに大気汚染や作業環境の悪化の一因とされる環境負荷物質になってしまう。
なお、2液ポリウレタン絶縁塗料も提案されているが、塗布焼付けに際して、有機ポリイソシアネート溶液と、活性水素含有プレポリマーとを混合したとき、短時間で粘度上昇が起こり、導体に対する塗布が困難となる不都合が生じていた。
【0003】
【特許文献1】特開昭58−133876号公報
【特許文献2】特開平04−11676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記従来公知技術の問題点を解決すべく、有機溶剤の使用量が少なく、かつ、2液混合後の粘度変化が比較的小さいポリウレタン系電気絶縁塗料を提供すること、及びこの電気絶縁塗料を使用して有機溶剤残存量を低減化したポリウレタン系絶縁電線を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題に鑑み鋭意検討した結果、絶縁塗料をイソシアネート基を含む溶液(A)と活性水素を含む溶液(B)とに分け、溶液(A)に特定のイソシアネート化合物を用いることにより、溶液Aと溶液Bを混合した後の粘度上昇比率を特定の値以下にできること、そしてこれを満足した絶縁塗料が、粘度変化が少なく、塗布及び焼付け作業性が良好で、かつ有機溶剤の使用量が少ない優れたポリウレタン系電気絶縁塗料となること、更に焼付け後の皮膜に残留する有機溶剤量が極めて少ないポリウレタン系絶縁電線が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は次の(1)〜(6)である。
(1) (a)イソシアネート基含有化合物と(b)活性水素含有化合物からなる2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料であって、ポットライフ試験において(a)イソシアネート基含有化合物と(b)活性水素含有化合物とを混合したときの粘度上昇の比(=2液混合1時間後の粘度/2液混合直後の粘度)が50以下であること、を特徴とする前記2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料。
【0007】
(2) 前記(a)イソシアネート基含有化合物が、有機ポリイソシアネートとポリオール化合物とを水酸基に対してイソシアネート基過剰の条件下で反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーである、前記(1)の2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料。
【0008】
(3) 前記有機ポリイソシアネートが、芳香族系ポリイソシアネートである、前記(2)の2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料。
【0009】
(4) 前記芳香族系ポリイソシアネートが、2,4′―ジフェニルメタンジイソシアネートを少なくとも含有するジフェニルメタンジイソシアネート類である、前記(3)の2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料。
【0010】
(5) 前記(1)〜(4)のいずれかの2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料を導体上に直接又は他の絶縁層を介して塗布し、焼付けて、絶縁層を形成してなるポリウレタン系絶縁電線。
【0011】
(6) 前記絶縁層が、残留溶剤としてフェノール類を含有しない絶縁層である、前記(5)のポリウレタン系絶縁電線。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、有機溶剤の使用量が少なく、かつ、2液混合後の粘度変化が比較的小さいポリウレタン系電気絶縁塗料を提供すること、及びこの電気絶縁塗料を使用して有機溶剤残存量を低減化したポリウレタン系絶縁電線を提供することができる。そのため、本発明のポリウレタン系電気絶縁塗料は大気中への有機溶剤のむだな放散が防止されて、地球環境や安全衛生面だけでなく、経済的でもある。また、この電気絶縁塗料を使用してポリウレタン系絶縁電線を製造する際に、塗料の混合、塗布の作業が行いやすく、焼付けなどのためのエネルギー効率の点でも著しく改善されることとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料は(a)イソシアネート基含有化合物と(b)活性水素含有化合物とからなるものであり、まず、本発明における(a)イソシアネート基含有化合物について説明する。
(a)イソシアネート基含有化合物としては、有機ポリイソシアネートを使用することもできるが、有機ポリイソシアネートとポリオール化合物とを水酸基に対してイソシアネート基過剰の条件下で反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーが好ましい。
【0014】
この有機ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、或いはこれらの混合物等のジフェニルメタンジイソシアネート類、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、或いはこれらの混合物等のトルエンジイソシアネート類、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。また、これら有機ジイソシアネートのアダクト変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、カルボジイミド変性体等のいわゆる変性イソシアネートも挙げられる。更に、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、クルードトルエンポリイソシアネート等のような、いわゆるポリメリック体といわれるポリイソシアネートも挙げられる。
これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
これらのうち、得られるポリウレタン系絶縁電線のはんだ付け性と耐熱性が良好な点、及び後述する(b)活性水素含有化合物と混合したときのポットライフが長い点で、芳香族系ポリイソシアネートが好ましく、更に4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート又はこれらの任意の2種以上の混合物等のジフェニルメタンジイソシアネート類が好ましく、特に2,4′―ジフェニルメタンジイソシアネートを少なくとも含有するジフェニルメタンジイソシアネート類(混合物)(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートと2,4′―ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物)が好ましい。
【0015】
前記ポリオール化合物としては、得られるポリウレタン系電気絶縁塗料の貯蔵安定性及び塗布焼付け作業性が良好な点から、数平均分子量1,000以下の低分子ポリオール類、更に数平均分子量500以下の低分子ポリオール類が好ましい。具体的に例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド或いはプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、後述の(b)活性水素含有化合物として挙げたポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、炭化水素系ポリオールで数平均分子量が1,000以下の低分子量のものなどが挙げられる。
これらのうち、得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの粘度が低い点で、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールが好ましく、特にトリメチロールプロパンが好ましい。
なお、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの変成用として、数平均分子量が1,000を超えるポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソブチレンポリオールなどのポリオールを使用することもできる。
これらはいずれも単独で或いは2種以上を混合して使用することができる。
【0016】
有機ポリイソシアネートとポリオール化合物との反応における、イソシアネート基と水酸基の当量比は、イソシアネート基/水酸基=1.1/1〜10/1、更に1.8/1〜5/1が好ましい。
前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート含量は、固形分100質量%換算で1〜30質量%、更に5〜25質量%であることが好ましい。
【0017】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの製造方法としては、前記有機ポリイソシアネートと前記ポリオール化合物とを例えば50〜200℃に加熱して反応させる方法が挙げられる。
この反応の際、必要に応じてポリウレタンやポリウレアの製造において公知の、オクチル酸亜鉛などの金属の有機系物質やトリエチルアミンなどの三級アミンを、反応を促進する触媒として使用することができる。
また、このイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの製造において、溶剤を使用しないで反応させることもできるし、製造をし易くするためn−ヘキサン等の脂肪族系溶剤、シクロヘキサン等の脂環族系溶剤、キシレン等の芳香族系溶剤、メチル1,3−ブチレングリコールアセテート等のエステル系溶剤、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、灯油、工業ガソリン等の石油留分系溶剤など従来公知のイソシアネート基と反応しない有機溶剤の存在下に反応させることもできる。不揮発分が低いと経済性に悪影響を与え、絶縁塗料を導体に塗布し焼付け後形成した絶縁皮膜中の残留溶剤が多くなる。
このイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの製造装置としては、上記の反応が達成できればいかなる装置でもよく、例えば、攪拌装置の付いた反応釜やニーダー、一軸又は多軸押し出し反応機などの混合混練装置が挙げられる。
【0018】
本発明における(b)活性水素含有化合物としては、具体的には、高分子ポリオール類、低分子ポリオール類、低分子ポリアミン類、低分子アミノアルコール類等が挙げられ、これらのうち、高分子ポリオール類が好ましい。
高分子ポリオール類としては、具体的に例えば、ポリエステルポリオール、ポリイミドポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、炭化水素系ポリオール、ポリ(メタ)アクリルポリオール、動植物ポリオール、これらのコポリオール等が挙げられ、これらのうち、ポリエステルポリオールが好ましい。
これらは単独で或いは任意の2種以上を混合して使用することができる。
【0019】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、酸成分として、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸、又はこれらのポリカルボン酸のメチルエステルやエチルエステルなどの低分子アルキルエステル、酸無水物等のポリカルボン酸誘導体などのカルボン酸やカルボン酸誘導体の1種以上と、アルコール成分として、前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー製造の際にポリオール化合物として使用される数平均分子量1,000以下の低分子ポリオール類、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングルコール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソブチレンポリオールなどの数平均分子量1,000を超える高分子ポリオール類などのポリオールの1種以上とを、無触媒で或いは金属系物質を反応触媒としてエステル化反応(エステル交換反応も含む)させて得られるポリエステルポリオールや、前記の酸成分とアルコール成分に加えてヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミンなどの低分子ポリアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの低分子アミノアルコール類などの1種以上を反応させて得られるエステルアミドポリオールなどのアミド結合を含有したポリエステルポリオールも挙げられる。
なお、酸成分やアルコール成分としては、ポリエステルポリオールの変性用として、n−ステアリン酸やステアリルアルコールなどのモノカルボン酸類やモノアルコール類なども使用できる。
また例えば、これらの低分子ポリオール類、低分子ポリアミン類、低分子アミノアルコール類を開始剤として、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオールも挙げられる。
前記の酸成分とアルコール成分のうち、得られるポリウレタン系絶縁電線の耐熱性が良好な点で、酸成分としてはポリカルボン酸及び/又はポリカルボン酸誘導体が好ましく、アルコール成分としては数平均分子量1,000以下の低分子ポリオール類が好ましい。
【0020】
ポリエステルポリオールの製造において、アルコール成分と全酸成分とのエステル化反応は、カルボキシル基(カルボン酸誘導体からのカルボキシル基を含む)に対して、アルコール性水酸基過剰の条件で反応させるのが好ましい。これは、分子中にエステル結合を有する化合物の分子鎖中に水酸基を残存させ、焼付け時にこれと(a)イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基とを反応させてウレタン結合を生成させるためである。
また、塗布焼付け作業性とはんだ付け性の点から、アルコール性水酸基/カルボキシル基(カルボン酸誘導体からのカルボキシル基も含む)の当量比を1.2/1〜5/1、更に1.5/1〜3/1、特に1.5/1〜2.5/1の範囲で反応させるのが好ましい。
ポリエステルポリオールの製造は、前記のアルコール成分と酸成分とを無触媒下で或いは金属系物質をエステル化反応触媒として、100〜250℃の温度で加熱反応させることにより好適に行われる。使用する原料により、脱水縮合反応或いはエステル交換反応となる。反応溶媒としては、前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの製造のときと同様の溶剤が使用でき、そのまま塗料の(b)活性水素含有化合物として有機溶剤を含んだまま使用することができる。
本発明において、前記のエステル化反応触媒として使用しうる金属系物質とは、金属、金属の無機系化合物及び金属の有機系化合物の群から選択される1種以上を意味し、具体的に例えば、金属マグネシウム、金属カルシウム、金属バリウム、金属チタン、金属ジルコニウム、金属マンガン、金属鉄、金属銅、金属亜鉛、金属鉛、金属アルミニウム、金属珪素、金属錫、金属ビスマスなどが挙げられ、金属の無機系化合物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、三塩化チタン、炭酸マグネシウムなどの前記の各種金属の酸化物、水酸化物、塩化物、炭酸塩などが挙げられ、金属の有機系化合物としては、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、テトラ−n−ブチルチタネート(TBT)などの前記の各種金属のアルコキシド、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、チタンテトラ(アセチルアセトネート)などの前記の各種金属のキレート化合物、酢酸マグネシウム、オクチル酸バリウム、酢酸マンガン、酢酸鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉛、オクチル酸ジルコニウム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸鉛などの前記の各種金属と有機酸との塩、ジブチルチタンジラウレートなどの前記の各種金属の有機金属と有機酸との塩などが挙げられる。
これらは単独で或いは2種以上を混合して使用することができる。
これらのうち、毒性が低く、取り扱い性のよい点で、金属の有機系化合物が好ましく、更にエステル化の反応促進効果に優れている点と得られるポリウレタン系絶縁電線の性能を維持する点で、チタンの有機系化合物とマンガンの有機系化合物が好ましく、特にテトラ−n−ブチルチタネート(TBT)と酢酸マンガンが好ましい。なお金属鉛及び鉛化合物は環境負荷物質低減のために使用しないことが好ましい。
エステル化反応触媒の使用量は、酸成分の合計100質量部に対し、0〜10質量部、更に0.01〜1質量部が好ましい。10質量部を超えると、(a)イソシアネート基含有化合物と混合したとき反応遅延効果を悪化させる。
【0021】
ポリイミドポリエステルポリオールは、アルコール成分と、イミド結合含有ポリカルボン酸及び/又はイミド結合含有ポリカルボン酸誘導体(イミド結合含有ポリカルボン酸のエステル、酸無水物等)などのイミド結合含有カルボン酸及び/又はイミド結合含有カルボン酸誘導体と、必要に応じて更にカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体とを反応させて得られる。
このアルコール成分としては、前記のポリエステルポリオールの製造に使用されるアルコール成分と同様のものが挙げられるが、焼付け後の耐熱性が良好な点で、前記のポリオールが好ましく、更に前記の数平均分子量1,000以下の低分子ポリオール類が好ましい。
イミド結合含有カルボン酸としては、ジアミン1モルに対して無水トリメリット酸2モルを反応させて得られるものなどが挙げられる。この際、前記のポリエステルポリオールの製造に用いられる酸成分も併用できる。このジアミンとしては、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられ、これらは単独で或いは2種以上混合して用いることができる。
カルボン酸又はカルボン酸誘導体としては、例えば、前記ポリエステルポリオールの製造に使用されるものが挙げられ、これらも単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらポリイミドポリエステルポリオールのうち、得られるポリウレタン系絶縁電線の耐熱性が良好な点で、ポリオールと、イミド結合含有ポリカルボン酸及び/又はイミド結合含有ポリカルボン酸誘導体とから得られるポリイミドポリエステルポリオールが好ましい。
【0022】
ポリウレタンポリオールとしては、前記ポリエステルポリオールの製造に使用されるアルコール成分として挙げたものと同様の化合物の1種以上と、前記有機ポリイソシアネートとして挙げたものと同様の化合物の1種以上とを、イソシアネート基に対して水酸基過剰の条件で反応させて得られる分子鎖にアルコール性水酸基を残存させたものが挙げられる。
【0023】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、前記ポリエステルポリオールの製造に用いられる低分子ポリオール類とホスゲンとの脱塩酸反応、或いは前記低分子ポリオール類とジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。
【0024】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、前記ポリエステルポリオールの製造に用いられる低分子ポリオール類、低分子ポリアミン類、低分子アミノアルコール類を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合させたポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオール、これらを共重合したポリエーテルポリオール、更に、前記ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオールが挙げられる。また、ポリエステルポリオールやポリイミドポリエステルポリオールの変性用として、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどのモノアルコール類を開始剤として、プロピレンオキサイドなどのエポキシドを開環重合させたポリオキシアルキレンモノオールなども使用できる。
【0025】
炭化水素系ポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオール等のポリアルキレンポリオールなどが挙げられる。
【0026】
ポリ(メタ)アクリルポリオールとしては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等の水酸基を含有した(メタ)アクリル酸エステル系化合物の1種以上のモノマーと、これら以外のエチレン性不飽和化合物の1種以上とを、ラジカル重合開始剤や溶剤などの存在下又は不存在下にバッチ式重合又は連続重合等の公知のラジカル重合の方法により反応させて得られるものが挙げられる。
【0027】
動植物系ポリオールとしては、例えば、ヒマシ油系ジオールが挙げられる。
【0028】
これらの(b)活性水素含有化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量は150〜30,000、更に200〜10,000、特に300〜5,000が好ましく、水酸基価(KOHmg/g)は5〜1,000、更に100〜800、特に150〜500が好ましい。数平均分子量が30,000を超えると、又は水酸基価が5を下回ると、得られるポリウレタン系電気絶縁塗料の粘度が高くなって塗布焼付け作業性が悪くなり、数平均分子量が150を下回ると、又は水酸基価が1,000を超えると、塗布焼付け後のポリウレタン系皮膜が脆いものとなってしまう。
なお、本発明において、有機溶剤は(a)イソシアネート基含有化合物と(b)活性水素含有化合物の合成の際、それぞれ所定の不揮発分になるように使用してもよいし、また、どちらか一方を高濃度で製造し、他方を低濃度で製造して、両者を混合したとき所定の不揮発分となるように使用してもよい。また、どちらか一方或いは双方を高濃度で製造しておいて、製造後或いは混合の時に有機溶剤を足して所定の不揮発分となるようにしてもよい。どの方法を採用するかは製造のし易さや貯蔵のし易さなどを勘案して適宜選択をすればよい。
本発明における有機溶剤の使用量は、環境汚染の防止と絶縁層中の残留溶剤を低減させる点で、(a)イソシアネート基含有化合物と(b)活性水素基含有化合物とを混合したとき、不揮発分が60質量%以上となるように使用するのが好ましい。
【0029】
本発明の2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料には、(a)イソシアネート基含有化合物と(b)活性水素含有化合物のいずれか一方又は双方に、有機溶剤以外の添加剤として、例えば硬化促進触媒、天然ろう、鉱油系ワックス、高級脂肪酸及びその誘導体、潤滑性樹脂微粒子などの潤滑性付与剤、ポリビニルホルマール、ポリアミド、エポキシ樹脂などの物性改良剤、更に各種の染料や顔料などの着色剤を配合することができる。本発明においては2液混合後の粘度上昇を抑えるため硬化促進触媒は使用しないほうがよいが、本発明の目的を損なわない範囲で使用することができる。
本発明においては硬化促進触媒は2液混合後の粘度上昇を抑えるため使用しないほうがよいが、本発明の目的を損なわない範囲で使用することができる。硬化促進触媒としては、例えば、前記ポリエステルポリオールのエステル化反応触媒として挙げたものと同様の金属系物質や、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ−(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)等の三級アミンや、これら三級アミンのオクチル酸塩、オレイン酸塩、蟻酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などの各種酸性化合物の塩類が挙げられる。硬化促進触媒についても環境負荷低減のため金属鉛や鉛化合物を使用しない方が好ましい。
【0030】
本発明のポリウレタン系絶縁電線の製造方法としては、従来公知のあらゆる方法を採用することができる。具体的に例えば、2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料の(a)イソシアネート基含有化合物と(b)活性水素含有化合物とを混合した後、或いは混合しながら導体上に直接又は他の絶縁層を介して、フェルト絞り方式やダイス絞り方式などにより塗布し、連続的に、200〜550℃の温度の1台又は複数台の加熱、焼付け炉中に、複数回、好ましくは10回以下通す(10パス以下)、更に好ましくは5回以下通す(5パス以下)ことによって、塗布、焼付けして所望の電気絶縁皮膜(層)を形成させることにより、ポリウレタン系絶縁電線が得られる。当該2液混合後の粘度上昇の比は50以下であり、更には30以下が好ましいが、50を超えると塗料を塗布し焼付ける作業中に著しい粘度上昇が生じ、電線を安定して連続的に生産することが難しくなる。なお(a)イソシアネート基含有化合物と(b)活性水素含有化合物との混合比は、(a)イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基と(b)活性水素含有化合物の水酸基の当量比を、イソシアネート基/水酸基=0.3/1〜1.5/1、更には0.5/1〜1.3/1とするのが好ましい。
本発明においては、ブロックポリイソシアネートを使用していないため、前記の製造方法により得られるポリウレタン系絶縁電線の絶縁層中の残留溶剤中には毒性の高いフェノール類を含有せず、かつ残留溶剤量が少ない、具体的には残留溶剤量が200ppm以下、更に100ppm以下、より更に50ppm以下、特に全く含有しない、ポリウレタン系絶縁電線を好適に製造することができる。
なお、本発明の2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料による皮膜の厚さ、或いはこれ以外の皮膜との合計の厚さは、使用する銅線などの導体の太さや要求性能により適宜選択すればよい。このような皮膜厚さは1回の塗布及び焼付けで形成されない場合には、必要回数繰り返して塗布及び焼付けを行えばよい。
導体としては、例えば、銅、ニッケルメッキ銅、アルミニウム、金、金メッキ等の一般に電線の導体として使用されるものを挙げることができる。
他の絶縁層としては特に制限はないが、例えば、ポリビニルホルマール系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエステルイミド系、ポリエステルアミドイミド系、ポリヒダントイン系、ポリアミドイミド系、ポリイミド系等の絶縁皮膜層を好適に挙げることができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明について実施例等により更に詳細に説明する。
合成例1
攪拌機、温度計、窒素シール管及び加温装置付きの反応容器内に、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製ミリオネートMT)1250g、トリメチロールプロパン(広栄化学工業社製)150gを仕込み、窒素気流下で加熱し、80℃で2時間反応させた。この後、反応容器内に、メチル1,3−ブチレングリコールアセテート(ダイセル化学工業社製)300g、メチルイソブチルケトン(協和発酵工業社製)300g加えて生成イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを溶解し、NCO含有量20質量%、粘度400(mPa・s/30℃)、不揮発分70質量%のイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー溶液(a1)を得た。
【0032】
合成例2
合成例1と同様な反応容器内に、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製ミリオネートMT)615g、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物(BASFイノアックポリウレタン社製ルプラネートMI)615g、トリメチロールプロパン(広栄化学工業社製)150gを仕込み、窒素気流下で加熱し、80℃で2時間反応させた。この後、反応容器内に、メチル1,3−ブチレングリコールアセテート(ダイセル化学工業社製)300g、メチルイソブチルケトン(協和発酵工業社製)300g加えて生成イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを溶解し、NCO含有量20質量%、粘度300(mPa・s/30℃)、不揮発分70質量%のイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー溶液(a2)を得た。
【0033】
合成例3
攪拌機、温度計、窒素シール管及びコンデンサー付きの反応容器に、無水フタル酸(三菱ガス化学社製)592g、トリメチロールプロパン(広栄化学工業社製)536g、1,6−ヘキサンジオール(宇部興産社製)236gを仕込み、触媒を使用しないで窒素気流下で加熱し130℃で原料の溶解を確認後、副生成物である水を系外に除去しながら200℃まで5時間かけて昇温し、そのまま200℃で反応を続けた。内容物の酸価が5KOHmg/g以下となった後、減圧反応を行い、反応を終結させた。反応容器内に、メチル1,3−ブチレングリコールアセテート(ダイセル化学工業社製)280g、メチルイソブチルケトン(協和発酵工業社製)277gを加えて溶解させ、OH価368(mgKOH/g)、粘度2000(mPa・s/30℃)、不揮発分70質量%のポリエステルポリオール溶液を得た。
【0034】
実施例1
合成例1で得たイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー溶液(a1)と合成例3で得たポリエステルポリオール溶液からなる2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料Aを、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー溶液(a1)とポリエステルポリオール溶液を1:1の質量比〔当量比(イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基/ポリエステルポリオールの水酸基)=0.75〕で混合し、ワニスバスに注入した。
注入した混合溶液を0.40mmφの銅線上に、下記に示す条件で8パスで塗布、焼付けして、皮膜厚25μのポリウレタン系電気絶縁電線を製造した。なお、絶縁電線の製造は下記のダイス配列について行った。
〔塗布、焼付け条件〕
(1)ダイス配列
8パス:0.42mmφ×1、0.43mmφ×2、0.44mmφ×2、0.45mmφ×2、0.46mmφ×1
(2)焼付け炉:横型熱風循環路(炉長3.3m)
(3)炉温:420℃
(4)線速:120m/min
【0035】
実施例2
合成例1で得たイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー溶液(a1)と合成例3で得たポリエステルポリオール溶液からなる2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料Aを、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー溶液(a1)とポリエステルポリオール溶液を1:1の質量比〔当量比(イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基/ポリエステルポリオールの水酸基)=0.75〕で混合し、ワニスバスに注入した。
注入した混合溶液を0.40mmφの銅線上に、下記に示す条件で4パスで塗布、焼付けして、皮膜厚25μmのポリウレタン系電気絶縁電線を製造した。なお、絶縁電線の製造は下記のダイス配列について行った。
〔塗布、焼付け条件〕
(1)ダイス配列
4パス:0.44mmφ×1、0.45mmφ×1、0.46mmφ×1、0.47mmφ×1
(2)焼付け炉:横型熱風循環路(炉長3.3m)
(3)炉温:420℃
(4)線速:120m/min
【0036】
実施例3
実施例1において、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー溶液(a1)の代わりに、合成例2で得たイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー溶液(a2)を使用して2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料Bとした以外は同様にして、皮膜厚25μmのポリウレタン系電気絶縁電線を製造した。
【0037】
実施例4
実施例2において、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー溶液(a1)の代わりに、合成例2で得たイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー溶液(a2)を使用して2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料Bとした以外は同様にして、皮膜厚25μmのポリウレタン系電気絶縁電線を製造した。
【0038】
比較例1
実施例1において、2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料Aを使用する代わりに、1液ポリウレタン系電気絶縁塗料であるAPU−3147S(オート化学工業社製、不揮発分47質量%、粘度5500mPa・s/30℃)を使用して、下記のダイス配列で、8パスで塗布、焼付けした以外は同様にして、皮膜厚25μmのポリウレタン系電気絶縁電線を製造した。
ダイス配列(8パス):0.43mmφ×1、0.44mmφ×2、0.45mmφ×2、0.46mmφ×3
【0039】
〔ポットライフ試験〕
実施例1と3で得た2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料AとB及び比較例1の1液ポリウレタン系塗料であるAPU−3147Sそれぞれのポットライフ試験を下記の手順で行った。
1)イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー溶液(a1又はa2)、ポリエステルポリオールを個別にガラス製容器に入れ、30℃±1℃の制御された恒温水槽に1時間浸し、粘度を安定化させた。
2)粘度を安定化させたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー溶液(a1又はa2)とポリエステルポリオールを実施例通りの割合で量り取り、瞬時に攪拌機で1分間混合した。
3)得られた混合物をただちにガラス製容器に入れ、30℃±1℃の制御された恒温水槽に浸した。
4)混合終了後1分後にB型粘度計(ローターNo3、6〜60rpm、3分後)で粘度を測定した。
※なお、B型粘度計の起動から数値の読み取りに要する時間は3分であるため、ポットライフ測定に掛かる総時間は混合を開始してから5分である。この測定終了時間をポットライフ試験の初期時間(0分)とし、以後、30分後、60分後の粘度を測定した。
これらの試験結果をまとめて表1に示す。
【0040】
〔性能試験〕
実施例1〜4及び比較例1で製造したポリウレタン系絶縁電線を用いて、耐軟化性試験、絶縁破壊電圧試験、はんだ付け性試験及び電気絶縁皮膜中の残留溶剤測定を行った。
耐軟化性試験:
JIS C3003:1999「エナメル線試験方法」11.2B法、b)交差法による。おもりの質量は1種で試験。
絶縁破壊電圧試験:
JIS C3003:1999「エナメル線試験方法」10.2B法、b)2個より法による。
はんだ付け性:
JIS C3003:1999「エナメル線試験方法」14.2B法による。
不揮発分測定:
JIS C2351:1994「エナメル線用ワニス」7.3不揮発分試験による。
電気絶縁皮膜中の残留溶剤測定:
得られたポリウレタン系電気絶縁電線を5g量り取り、密閉できる容器(今回使用したのはアルミキャップ付き25cmバイヤルビン)に入れた。この容器を150℃−60min加熱した。
加熱により電気絶縁皮膜から発生した残留溶剤をガスクロマトグラフィー法で測定した。
※今回使用したガスクロマトグラフ装置は島津製作所製GC−14B、測定条件は、島津製作所製HR−1701カラム、キャリヤーガスヘリウム、流量40ml/min、検出器FID、インジェクション180℃、スタート温度45℃、昇温速度5℃/min、最終温度160℃である。
残留溶剤量(ppm)=GCによる測定(μg)/皮膜質量(g)
皮膜質量=電線質量(g)×(皮膜付着率/100)
皮膜付着率(%)=1.3π(D−D)/〔8.89πD+1.3π(D−D)〕×100
:導体径 D:電線外径
得られた測定結果からポリウレタン系電気絶縁皮膜中の残留溶剤濃度を求めた。
原料組成及び上記性能試験結果をまとめて表2に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)イソシアネート基含有化合物と(b)活性水素含有化合物からなる2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料であって、
ポットライフ試験において(a)イソシアネート基含有化合物と(b)活性水素含有化合物とを混合したときの粘度上昇の比(=2液混合1時間後の粘度/2液混合直後の粘度)が50以下であること、を特徴とする前記2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料。
【請求項2】
前記(a)イソシアネート基含有化合物が、有機ポリイソシアネートとポリオール化合物とを水酸基に対してイソシアネート基過剰の条件下で反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーである、請求項1に記載の2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料。
【請求項3】
前記有機ポリイソシアネートが、芳香族系ポリイソシアネートである、請求項2に記載の2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料。
【請求項4】
前記芳香族系ポリイソシアネートが、2,4′―ジフェニルメタンジイソシアネートを少なくとも含有するジフェニルメタンジイソシアネート類である、請求項3に記載の2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の2液反応型ポリウレタン系電気絶縁塗料を導体上に直接又は他の絶縁層を介して塗布し、焼付けて、絶縁層を形成してなるポリウレタン系絶縁電線。
【請求項6】
前記絶縁層が、残留溶剤としてフェノール類を含有しない絶縁層である、請求項5に記載のポリウレタン系絶縁電線。

【公開番号】特開2006−45484(P2006−45484A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275050(P2004−275050)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000103541)オート化学工業株式会社 (83)
【Fターム(参考)】