説明

2液型塗床用導電性樹脂組成物、床材およびそれを用いた施工方法

【課題】 本発明の目的は、十分な可使時間と良好な塗布作業性を備え手塗り作業可能で、しかも高硬度の硬質床を得ることが可能で、導電性のむらの無い、平滑な塗床を与える2液型塗床用導電性脂組成物、床材およびそれを用いた施工方法を提供することにある。
【解決手段】 本発明はビスフェノール系ポリオール(a−1)と、天然油脂肪酸もしくはその誘導体(a−2)からなる液状のポリオール、及び活性アルミナ粉末(a−3)、イオン性化合物含有ポリオール溶液(a−4)とからなるポリオールコンパウンド(A)、及びポリイソシアネート化合物(B)とを含有し、前記(a−1)及び/又は(a−4)に由来する−O−C−C−O−構造を前記(A)及び前記(B)の合計量に対して0.04〜1mol/kg含有することを特徴とする2液型塗床用導電性樹脂組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、十分な可使時間と良好な作業性を備え、しかも、硬質塗床となり、導電性のむらの無い塗床用導電性樹脂組成物、床材およびそれを用いた施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン系の硬質塗床剤としては、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物と天然油からなるポリオール成分とポリイソシアネート成分するとからなるポリウレタン系被覆組成物が開示されている。(特許文献1)
【0003】
しかし、この技術は確かにショアーD硬度70以上の高硬度の硬質床材として有用であるが、特に夏期即ち高温、多湿の条件下で発泡現象が生じやすく、硬質にする為に多量のポリアミンが必要となり、そのため可使時間が確保できず塗布作業性に劣る欠点があり、導電性を持たない床でもある。
【0004】
そこで、導電性の硬質ウレタン塗床を得るために、金属繊維を入れる試みをしたもの、例えばステンレスファイバーを入れたものが知られている。(特許文献2)
【0005】
しかし、この技術は、可使時間、塗布作業性、即ち、刷毛塗り等の塗布時間を要する際の手塗り作業性が悪いといった問題があった。
【0006】
【特許文献1】特公平1−27109号公報
【特許文献2】特開2005−226025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、十分な可使時間と良好な塗布作業性を備え手塗り作業可能で、しかも高硬度の硬質床を得ることが可能で、導電性のむらの無い、平滑な塗床を与える2液型塗床用導電性脂組成物、床材およびそれを用いた施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、ビスフェノール系ポリオール(a−1)と、天然油脂肪酸(a−2)からなる液状のポリオール、及び活性アルミナ粉末(a−3)、イオン性化合物含有溶液(a−4)とからなるポリオールコンパウンド(A)、及びポリイソシアネート化合物(B)とを含有し、前記(a−1)及び/又は(a−4)に由来する−O−C−C−O−構造を前記(A)及び前記(B)の合計量に対して0.04〜1mol/kg含有することを特徴とする2液型塗床用導電性樹脂組成物、床材、およびそれを用いた施工方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、前記(a−1)及び/又は(a−4)に由来する−O−C−C−O−構造を前記(A)及び前記(B)の合計量に対して0.04〜1mol/kg含有することにより、十分な可使時間と良好な塗布作業性を備え、かつ高硬度の硬質床を得ることができ、導電性のむらの無い、平滑な塗床を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
前記ビスフェノール系ポリオール(a−1)とは、ビスフェノール系エポキシ樹脂と高級脂肪酸とを反応したポリオール、あるいはビスフェノール系化合物にアルキレンオキサイドを反応して得られるポリオールである。前記エポキシ樹脂は、エポキシ当量が好ましくは160〜700のものである。ビスフェノール型エポキシ樹脂と高級脂肪酸とを反応させて得られる反応物は、エポキシ樹脂のエポキシ基と高級脂肪酸のカルボン酸基との反応により、二級水酸基を生成して有する。
【0011】
前記ビスフェノール系エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどの各種ビスフェノール化合物に、エピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物であり、公知慣用のもので、それらを単独で用いても、二種以上併用してもよい。
【0012】
一方、ビスフェノール型エポキシ樹脂に反応させる高級脂肪酸としては、エチレン性不飽和結合を有する炭素数10〜25の高級脂肪酸が好適であり、その具体例としては、リシノール酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などのひまし油脂肪酸、大豆油脂肪酸等が挙げられるが、さらに好ましくは、水酸基も有する高級脂肪酸であり、リシノール酸がそれにあたることから、ひまし油脂肪酸の使用が望ましい。
【0013】
該脂肪酸の炭素数が10より小さいとポリオール成分の疎水性が損なわれ、塗膜表面の発泡改善に対する効果が低減するし、炭素数が25より大きくなるとポリオール成分の粘度が高くなり、作業性を著しく損なう。
【0014】
高級脂肪酸がエチレン性不飽和結合を有すれば、ポリオールの粘度が低減されて、床材としても使用しやすくなるが、本発明の効果を損なわない範囲においては、ラウリン酸、パルミチン酸、デカン酸等のやし油脂肪酸のような飽和高級脂肪酸を用いてもよい。
【0015】
さらに、上記の高級脂肪酸が水酸基を有するものであれば、得られるポリオールの官能基数が多くなり、ウレタン樹脂としての硬質化に有効である。
【0016】
ここでいう水酸基は、二級水酸基が好ましく、一級水酸基に比べ反応性の遅い二級水酸基がポリオールに導入されるため、官能基数を多くしても床材として十分な可使時間を保つことができる。
【0017】
なお、本反応ではエポキシ基とカルボン酸基との反応比率は、1/1〜1/0.7の範囲が好ましく、さらに好ましくは1/0.95〜1/0.9の範囲である。この範囲を外れると床材に使用した際に充分な床硬度が得られない。本反応の終点は、反応生成物の酸価が、0.5(KOHmg/g)以下となったところが好ましい。
【0018】
前記ビスフェノール系化合物にアルキレンオキサイドを反応して得られるポリオールとは、ビスフェノール系化合物にアルキレンオキサイドの1種以上を好ましくは11〜16モル付加反応して得られるポリオールである。前記ビスフェノール系化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどが挙げられ、それらを単独で用いても、二種以上併用しても良い。また、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられ、それらを単独で用いても、二種以上併用しても良い。
【0019】
本発明では、その他のポリオールを本発明の効果を損なわない範囲で併用できるが、その際ビスフェノール系ポリオールである場合、前記(a−1)と異なるものであり、その付加モル数は、ビスフェノール系化合物のフェノール性水酸基にアルキレンオキサイドを1モル以上付加、好ましくは2〜10モル付加反応したものである。
【0020】
天然油脂肪酸もしくはその誘導体(a−2)とは、ひまし油、大豆油、やし油等の天然油およびそれらの誘導体を指称し、水酸基を有するものであり、なかでも、二級水酸基を有するひまし油およびその誘導体が好ましい。また、天然油脂肪酸としては、エチレン性不飽和結合を有する炭素数10〜25の天然油脂肪酸が好ましく、その具体例としては、リシノール酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などのひまし油脂肪酸、大豆油脂肪酸等の脂肪酸が挙げられるが、さらに好ましくは、水酸基も有する天然油脂肪酸であり、リシノール酸がそれにあたることから、ひまし油脂肪酸の使用が望ましい。
【0021】
前記脂肪酸の炭素数が10より小さいとポリオール成分の疎水性が損なわれ、塗床面の発泡改善に対する効果が低減するし、炭素数が25より大きくなるとポリオール成分の粘度が高くなり、作業性を著しく損なう。
【0022】
この天然油脂肪酸の誘導体とは、例えば、天然油と多価アルコール(グリセロール等)とのエステル交換反応物、天然油の重合体、天然油のジシクロペンタジエン付加物などが挙げられる。好ましくはひまし油の誘導体であり、例えば、ひまし油と多価アルコールとのエステル交換反応物、ひまし油の重合体、ひまし油のジシクロペンタジエン付加物などが挙げられる。
【0023】
天然油脂肪酸が、エチレン性不飽和結合を有すればポリオールの粘度が低減されて、床材としても使用しやすくなるが、本発明の効果を損なわない範囲においては、ラウリン酸、パルミチン酸、デカン酸等のやし油脂肪酸のような飽和天然油脂肪酸を用いてもよい。
【0024】
さらに、上記の天然油脂肪酸が二級水酸基を有するものであれば、得られるポリオールの官能基数が多くなり、ウレタン樹脂床として硬質化に効果がある。なお、本発明では、一級水酸基に比べ反応性の遅い二級水酸基のみをポリオールに導入しているため、官能基数を多くしても床材として十分な可使時間を保つことができる。
【0025】
ビスフェノール系ポリオール(a−1)と天燃油脂肪酸もしくはその誘導体(a−2)と混合割合は、水酸基の当量%の比で(a−1)/(a−2)=4/6〜8/2であることが好ましく、かかる範囲内をはずれると、適度の粘度とならず塗布作業性に劣り、疎水性が損なわれ塗膜表面が発泡するので好ましくない。
【0026】
ここでいう水酸基の当量%の比とは、下式で示される比のことをいう。
式 (x/X)/(y/Y)
但し、
x:(a−1)成分の重量部、X:(a−1)成分の水酸基当量
y:(a−2)成分の重量部、Y:(a−2)成分の水酸基当量
【0027】
本発明の活性アルミナ粉末(a−3)とは、化学式Al23で表される化合物で、α、β、γ、δ、κ、θ、χ、η、ρなど多くの結晶系が知られているが、特に常温で水、ガスの吸着能が高い、ρ、χ、γ、ηが好ましく、特にρアルミナが好ましい。ρアルミナを主成分とするものは一般に水硬性アルミナと称されており、本被覆材に最適である。しかしながら、水吸着能が高い反面、水和反応が進みやすくバイヤライトやベーマイトなどいわゆる水酸化アルミニウムの結晶が生じるため、吸湿性の高いポリオールを使用すると塗膜表面がくもり、光沢のある塗膜が得られない傾向にある。すなわち、光沢を維持するためには、本樹脂組成物の如く疎水性の高い樹脂を使用する必要がある。また、活性アルミナ粉末の平均粒径は、150μm以下、さらに好ましくは50〜0.1μmのものが好適である。平均粒径が150μmより大きいと、前記(a−1)及び(a−2)から成る常温液状のポリオールと活性アルミナ粉末(a−3)の混練により得られるポリオールコンパウンド(A)において、貯蔵中に沈降の問題が生じる可能性が高い。また、活性アルミナ粉末(a−3)の含有量は、樹脂組成物に対し好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜25重量%が好ましい。5重量%より少ないと塗膜が発泡する可能性があり、30重量%より多いと塗布作業性が低下し、均一な塗床面を得ることが難しくなり、伸びや引裂強度等の物性も低下する傾向にある。
【0028】
イオン性化合物含有溶液(a−4)とは、好ましくはプロピレングリコールの誘導体及び又はエチレングリコールの誘導体にイオン性化合物を溶解した常温液状のものである。イオン性化合物とは、有機塩類である。有機塩類とは、有機カチオン又は/及び有機アニオンを含む化合物である。有機カチオンの例としては、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、カルボカチオン等が挙げられる。また有機アニオンの例としては、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、リン酸塩基、スルホンイミド塩基、スルホニルメタン酸塩基、ボレートアニオン、アルミネートアニオン等が挙げられる。
【0029】
帯電防止性能から、金属カチオンと炭素を含む有機アニオンとからなるイオン性化合物を用いるのが好ましい。イオン性化合物のカチオンは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のカチオンであるのがより好ましく、中でもイオン移動度の高いリチウムカチオンが好ましい。またポリオールへの溶解性やカチオンの電離度の面から、イオン性化合物のアニオンとしては、好ましくはフッ化アルキル基を含んだ有機アニオンである。そうしたものには、例えば、メタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブチルスルホン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド等が挙げられる。この添加量は、好ましくは組成物100質量部に0.01〜5質量部である。市販品としては、サンコノールPGDB−20R(Li塩のジプロピレングリコールジベンゾエート溶液)である。
【0030】
本発明の組成物では、前記ビスフェノール系ポリオール(a−1)及び/又はイオン性化合物含有溶液(a−4)に由来する「−O−C−C−O−構造」を前記(A)及び前記(B)の合計量に対して0.04〜1mol/kg含有することを特徴とするものである。この0.04mol/kgより少ないと床として導電性に劣り、1mol/kgより多いと床としての硬度が得られないものである。この「−O−C−C−O−構造」は、前記(a−1)(a−4)で使用するエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エチレングリコール、プロピレングリコールに由来するものである。
「−O−C−C−O−構造」含有量の計算方法は、具体的に次のように計算される。
例えば、「−O−C−C−O−構造」のモル数は、(1)プロピレングリコールジベンゾエートは「−O−C−C−O−構造」を2mol有しており、分子量が342であることから当該構造は0.0058mol/g=5.8mol/kgである、(2)ビスフェノールAにプロピレンオキサイドを13モル付加したものは分子量982の中に「−O−C−C−O−構造」を11モル有することから、当該構造は0.0112mol/g=11.2mol/kgである。
当該構造を含まない樹脂成分100質量部、炭酸カルシウム50質量部、活性アルミナ粉末(平均粒径15μm)40質量部、Li塩をジプロピレングリコールジベンゾエートに20%溶解したLi塩溶液(三光化学工業株式会社製サンコノールPGDB−20R)2.1部を混合したコンパウンド192.1部に対してクルードMDIを48部混合する場合、ジプロピレングリコールジベンゾエートの含有量は、
ジプロピレングリコールベンゾエートの量/(コンパウンド+ポリイソシアネート)の量
[(2.1×80%)/(192.1+48)]×100=0.7重量%である。
従って、当該組成物中の当該構造濃度は、
5.8mol/kg×0.007=0.04mol/kgとなる。
また、当該構造を含まない樹脂成分95重量部、ビスフェノールAにプロピレンオキサイドを13モル付加したものを5重量部混合したものを炭酸カルシウム50質量部、活性アルミナ粉末40質量部、Li塩をジプロピレングリコールジベンゾエートに20%溶解したLi塩溶液(三光化学工業株式会社製サンコノールPGDB−20R)2.1部を混合したコンパウンド192.1部に対してクルードMDIを48部混合する場合、ジプロピレングリコールの含有量は0.7重量%である。またビスフェノールAにプロピレンオキサイドを13モル付加したものの含有量は2.1%である。
従って当該混合物中の当該構造濃度は、
5.8mol/kg×0.007+11.2×0.021=0.24mol/kg
となる。
【0031】
他方、本発明の樹脂組成物を構成するポリイソシアネート化合物(B)としては、脂肪族系、脂環式系または芳香族系の各種のポリイソシアネート、あるいはそれらの混合物などが挙げられる。
【0032】
脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などであり、脂環式系ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)や水添ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)などであり、芳香族系ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)またはポリフェニルメタンポリイソシアネート(クルードMDI)などであり、あるいは、各種のジイソシアネートの二量体化合物、ビューレットまたはイソシアヌレート構造を有する三量体化合物や、各種ジイソシアネートとポリオールとの付加反応化合物や、さらには、既知の方法により得られる種々の変性体化合物などである。
【0033】
特に床面で耐黄変性を重視しない場合には、価格、塗装作業性、硬化性ならびに硬化塗膜の物性などの面で、クルードMDIや変性MDIなどの芳香族系のポリイソシアネートの使用が望ましい。
【0034】
また、液状のポリオールには、前記した(a−1)および(a−2)以外にも、粘度低減等の目的で必要に応じ、他のポリオールを、本発明の効果を損なわない範囲で使用することも、一向に差し支えない。
【0035】
使用する他のポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール等の短鎖ポリオール類、長鎖のポリオキシアルキレンエーテルポリオール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、ポリオール型キシレンホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
【0036】
ポリオールコンパウンド(A)の硬化剤成分である(B)成分のポリイソシアネート化合物は、該ポリイソシアネートのイソシアネート当量と、前記(A)の水酸基当量との比が0.7〜1.5、好ましくは0.9〜1.2となる量だけ使用されるが、これが0.7未満である場合には、硬化不十分となるし、一方、1.5を超える場合には、塗膜が脆くなり易く、物性の低下も著しくなり易く、いずれの場合にも、物性などに悪影響を及ぼすことになる。
【0037】
本発明では、さらに充填材を添加しても良い。必須成分である活性アルミナ粉末(a−3)の効果を損なわない範囲で、合成ゼオライト粉末、炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、沈降性硫酸バリウム、クレー、シリカ、タルクなどが添加できる。
【0038】
さあにその他の添加剤としては、アゾ系、銅フタロシアニン系、弁柄、黄鉛、酸化チタン、亜鉛華またはカーボンブラックの如き有機ないしは無機系の着色顔料、および、鉛丹、鉛白、塩基性クロム酸塩、塩基性硫酸鉛、ジンククロメート、亜鉛末またはMIOの如き防錆顔料、さらには、チキソ付与剤、レベリング剤、吸湿剤、シランあるいはチタネート系カップリング剤などの各種助剤をも、必要に応じて、添加することができる。さらに必要に応じ、ジブチルチンジラウレートまたはジブチルチンジアセテートの如き有機金属化合物や各種アミン類などの硬化触媒を始め、ジオクチルフタレート、アスファルト、またはタールの如き可塑剤成分や、A重油または芳香族炭化水素の如き石油系希釈剤成分などを、本発明の効果を損なわない範囲で使用することも、一向に、差し支えない。
【0039】
上記の充填材、添加物等は、主に(A)成分にあらかじめ練り合わせて使用される。そして、(B)成分と、コンクリート等の基体に刷毛、ローラーで塗布される。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、塗り床材として有用なものであるが、特にエポキシ樹脂に替わる高硬度の被覆材として効果を発揮するものである。
【0041】
本発明の組成物を用いて得られる床材の使用にあたっては、施工現場で(A)、(B)成分を所定の混合比で常法の混合機器により常温で混合し、可使時間内に下地、例えばコンクリート、金属、プラスチック、FRP、木質物等の下地に、プライマーとして表面抵抗値が105Ω以下の導電性プライマーを塗布した後に、この上に塗布して硬化させ、床面を形成する。本発明では、スプレー塗装のみならず、コテ塗りまたは刷毛塗り等の手塗りによっても塗布できる十分な可使時間を有している。
【実施例】
【0042】
(参考例1)
エポキシ当量が188なるビスフェノールA型エポキシ樹脂の40質量部とひまし油脂肪酸の60質量部とをトリフェニルフォスフィンの0.2質量部の存在下に窒素バブリングしながら110℃で15時間反応させて得られる酸価0.1、水酸基当量265のエポキシエステルの48質量部と水酸基当量350のひまし油の52質量部をブレンドして、水酸基当量が309の樹脂成分を得た。
【0043】
(実施例1)
参考例1で得られた樹脂成分100質量部、炭酸カルシウム50質量部、活性アルミナ粉末(平均粒径15μm)40質量部、Li塩をジプロピレングリコールジベンゾエートに20%溶解したLi塩溶液(三光化学工業株式会社製サンコノールPGDB−20R)2.1部をプラネタリーミキサーを用い真空脱泡しながら均一混合したコンパウンドとクルードMDIをイソシアネート当量と水酸基当量の比率を1.15として十分に均一混合させた塗り床用導電性樹脂組成物(EO骨格換算−O−C−C−O−構造:0.04mol/kg)を、プライマーとして表面抵抗値が105Ω以下の導電性プライマーを塗布したものの上に1mm厚に塗布する。25℃にて1週間養生した後、導電性プライマーと表面の漏洩抵抗値を絶縁抵抗計にて500Vの電圧をかけてその抵抗値を測定した。その結果、漏洩抵抗値は1.9×109Ωであり、表面のショアーD硬度は74であった。
【0044】
(実施例2)検討して書き直してください。
参考例1の樹脂成分95質量部、ビスフェノールAにプロピレンオキサイドを13〜14モル付加させて得られた水酸基当量100のビスフェノール型ポリオール(アデカ株式会社製:BPX−1000)を5質量部混合したものを実施例1の樹脂成分100質量部として使用する以外は実施例1と同様に塗り床用導電性樹脂組成物(EO骨格換算−O−C−C−O−構造:0.24mol/kg)を用いて試験板を作成した。その結果、漏洩抵抗値は3.0×108Ωであり、表面のショアーD硬度は70であった。
【0045】
(実施例3)
参考例2で得られた成分を用いて、Li塩の20%溶液の代わりに脂肪族アミン系イオン性液体IL−A2(広栄化学工業株式会社製)4.2質量部を混合した塗り床用導電性樹脂組成物(EO骨格換算−O−C−C−O−構造:0.24mol/kg)を用いて実施例2と同様に試験板を作成した。その結果、漏洩抵抗値は4.7×108Ωであり、表面のショアーD硬度は72であった。
【0046】
(参考例3)
水酸基当量143のポリプロピレングリコールの31質量部と、水酸基当量350のひまし油の69質量部をブレンドして、水酸基当量242なる成分を得た。
【0047】
(比較例1)
参考例3の成分を用いて、コンパウンド中の水酸基価を実施例1に合わせるため、同成分92質量部、炭酸カルシウム58質量部変更した以外は実施例1と同様に試験板を作成した。その結果、漏洩抵抗値は5.0×108Ωであるが、表面のショアーD硬度は40であり、塗り床として使用困難な硬度であった。
【0048】
(比較例2)
参考例1の樹脂75質量部と実施例2で用いたプロピレンオキサイドを13〜14モル付加させて得られた水酸基当量100ビスフェノール型ポリオール(アデカ製:BPX−1000)を25重量部混合したものを実施例1の樹脂成分100質量部として使用する以外は実施例1と同様に塗り床用導電性樹脂組成物(EO骨格換算−O−C−C−O−構造:1.2mol/kg)を用いて試験板を作成した。その結果、漏洩抵抗値は2.0×108Ωであったが、表面のショアーD硬度は55であった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、前記(a−1)及び/又は(a−4)に由来する−O−C−C−O−構造を前記(A)及び前記(B)の合計量に対して0.04〜1mol/kg含有することにより、十分な可使時間と良好な塗布作業性を備え、かつ高硬度の硬質床を得ることができ、導電性のむらの無い、平滑な塗床を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノール系ポリオール(a−1)と、天然油脂肪酸もしくはその誘導体(a−2)からなる液状のポリオール、及び活性アルミナ粉末(a−3)、イオン性化合物含有溶液(a−4)とからなるポリオールコンパウンド(A)、及びポリイソシアネート化合物(B)とを含有し、前記(a−1)及び/又は(a−4)に由来する−O−C−C−O−構造を前記(A)及び前記(B)の合計量に対して0.04〜1mol/kg含有することを特徴とする2液型塗床用導電性樹脂組成物。
【請求項2】
前記液状のビスフェノール系ポリオール(a−1)が、ビスフェノール系エポキシ樹脂と高級脂肪酸との反応したポリオール、もしくはビスフェノール系化合物と、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドとを反応させて得られるポリオールのいずれかである請求項1記載の2液型塗床用導電性樹脂組成物。
【請求項3】
イオン性化合物含有溶液(a−4)が、プロピレングリコールの誘導体及び/又はエチレングリコールの誘導体にイオン性化合物を溶解した溶液である請求項1〜2いずれか1項に記載の2液型塗床用導電性樹脂組成物。
【請求項4】
天然油脂肪酸が、少なくとも一個以上のエチレン性不飽和基を持つ炭素数10〜25の脂肪酸であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の2液型塗床用導電性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載の2液型塗床用導電性樹脂組成物を主成分とする床材。
【請求項6】
請求項1〜4いずれか1項に記載の2液型塗床用導電性樹脂組成物を床に塗布してなることを特徴とする床施工方法。

【公開番号】特開2009−235317(P2009−235317A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86279(P2008−86279)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】