説明

2線式伝送器

【課題】外部回路に対してシリーズ接続される出力回路を用いて伝送電流を制御する2線式伝送器の劣化や腐食等の異常を検出することを目的とする。
【解決手段】本発明の2線式伝送器1は、外部回路2から2本の伝送線L1、L2を介して電源の供給を受けると共にセンサ3の計測値に基づく伝送電流i1を外部回路2に伝送する2線式伝送器1であって、伝送電流i1を制御する外部回路2にシリーズ接続される出力回路6と、出力回路6の出力側の電圧を所定の電圧となるようにシャント電流を流して制御するシャントレギュレータ電源と、シャント電流i4を検出して、シャント電流i4と伝送電流i1とに基づいて2線式伝送器1の消費電流を得る信号処理回路4と、を備えていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本の伝送線を介して外部回路から電源の供給を受けると共にセンサの計測値に基づいて伝送電流を伝送する2線式伝送器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2線式伝送器は外部回路から2本の伝送線を介して電源の供給を受けると共に4〜20mAの伝送電流を伝送するものである。図3は、従来の2線式伝送器の構成を示すブロック図である。この図の2線式伝送器101は外部回路102と伝送線L1およびL2で接続されている。外部回路102には2線式伝送器101の回路電源を供給するために必要な直流電源Ebと受信抵抗R1とが直列に接続されている。また、外部回路102の端子T1、T2は伝送線L1、L2を介して2線式伝送器101の端子T3、T4に接続されている。
【0003】
2線式伝送器101は、センサ103と信号処理回路104とEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)105と出力回路106と電源回路107と制御回路108とLCD(Liquid Crystal Display)109とを備えて構成している。センサ103は圧力や流量等の物理量を電気信号に変換して、信号処理回路104に出力する。
【0004】
信号処理回路104はこの電気信号に対してEEPROM105に記憶されている直線性補正値を読み込んで、信号処理を行う。そして、この信号処理された信号が出力回路106に出力される。なお、この信号はLCD109に対しても出力されて、この信号の値を表示することができるようになっている。
【0005】
出力回路106は信号処理回路104からの信号に基づいて、伝送電流i1を制御する。出力回路106は外部回路102に対してシリーズ(直列)で接続されており、2線式伝送器101の内部で使用可能な伝送電流(4mA〜20mA)i1に制限する。この制限された伝送電流i1が出力回路106の出力側に流れる。
【0006】
電源回路107は信号処理回路104が必要とする電圧(例えば、3ボルト)を供給する。制御回路108は抵抗R2と直列接続されており、これら制御回路108と抵抗R2とによりシャントレギュレータ電源を構成する。このシャントレギュレータ電源が出力回路106の出力側の電圧Vbを制御している(例えば、Vb=5ボルトとなるように制御している)。
【0007】
以上のような2線式伝送器は厳しい環境・雰囲気下に設置されて使用されることが多い。このような過酷な環境下で長期に渡って運用すると、部品の経年変化を起こすとともに密閉劣化を招来し、2線式伝送器内部に腐食性ガスの侵入による腐食といったことが原因で伝送器の故障に至ることがある。
【0008】
2線式伝送器101が突然故障することは、この2線式伝送器101が取り付けられている電気、ガス、水道、下水道、石油産業等のプラント設備等に安全上、経済上、多大な損失を与えることになる。このような問題に対して、特許文献1に電気回路ユニットが開示されている。この電気回路ユニットでは、温度センサと湿度センサの測定値と時間の関数の積算値を演算することにより、電気回路の寿命を予測している。
【0009】
また、故障発生前にプロセス装置の故障を予測するための診断技術が特許文献2に開示されている。この特許文献2の技術では、零入力消費電流を測定して、この零入力消費電流の変化に基づいて、電子部品またはその他の故障があるかを予測して、オペレータに警告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−174652号公報
【特許文献2】特表2007−501980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の電気回路ユニットは、温度および湿度に基づいて、電気回路の寿命を予測することができる点で有利な効果を奏する。ただし、2線式伝送器101の異常は部品の劣化や腐食等といったことでも発生するものであり、特許文献1の電気回路ユニットでは、これら部品の劣化や腐食等を要因とする異常の検出精度が低くなる。
【0012】
特許文献2のプロセス装置では、零入力消費電流を測定して、この零入力消費電流に基づいて、電子部品の故障の予測を行っている。ただし、この特許文献2のプロセス装置では、同特許文献2の図3にも示されるように、シャントレギュレータ4−20mA制御器は外部回路に対してシャント(並列)接続されており、伝送電流をシャントで流すような構成になっている。
【0013】
一方、図3で説明したような2線式伝送器101は、伝送電流i1を制御する出力回路106が外部回路102に対してシリーズ(直列)接続されており、伝送電流i1をシリーズで流す構成になっている。従って、特許文献2のプロセス装置と図3のような2線式伝送器101とではその回路構成が大きく異なっている。
【0014】
従って、伝送電流を制御する回路(特許文献2のシャントレギュレータ4−20mA制御器)が外部回路に対してシャント接続されているプロセス装置で零入力消費電流を測定する手法を、伝送電流i1を制御する出力回路106が外部回路102に対してシリーズ接続される図3のような2線式伝送器101に適用するためには、回路構成を大幅に変更することを余儀なくされる。
【0015】
そこで、本発明は、外部回路に対してシリーズ接続される出力回路を用いて伝送電流を制御する2線式伝送器の劣化や腐食等の異常を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以上の課題を解決するため、本発明の2線式伝送器は、外部回路から2本の伝送線を介して電源の供給を受けると共にセンサの計測値に基づく伝送電流を前記外部回路に伝送する2線式伝送器であって、前記伝送電流を制御する前記外部回路にシリーズ接続される出力回路と、前記出力回路の出力側の電圧を所定の電圧となるようにシャント電流を流して制御するシャントレギュレータ電源と、前記シャント電流を検出して、このシャント電流と前記伝送電流とに基づいて前記2線式伝送器の消費電流を得る信号処理回路と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
この2線式伝送器によれば、外部回路にシリーズ接続される出力回路を備える2線式伝送器の消費電流をシャント電流と伝送電流とに基づいて検出している。消費電流を検出することで、この検出した消費電流に基づいて、2線式伝送器の異常(或いは故障)を判定することができるようになる。
【0018】
また、前記信号処理回路は、この信号処理回路が検出した前記消費電流とこの消費電流の正常範囲とを比較して、前記2線式伝送器に異常を生じているか否かの診断を行うことを特徴とする。
【0019】
信号処理回路は、消費電流が正常であるときの範囲を正常範囲として、検出した消費電流が正常範囲外であるか否かに基づいて、2線式伝送器に異常を発生しているか否かの診断を行うことができる。
【0020】
また、前記信号処理回路は、前記2線式伝送器の内部の温度を計測する温度計が計測した温度に対応する前記消費電流の正常範囲に基づいて、前記2線式伝送器に異常を生じているか否かの診断を行うことを特徴とする
【0021】
消費電流は温度によって変化するため、低温のときの消費電流の正常範囲と高温のときの消費電流の正常範囲とは異なる。このため、信号処理回路は、温度に対応する正常範囲と検出した消費電流とを比較して異常の診断を行うことで、診断精度を向上させることができる。
【0022】
また、前記信号処理回路は、前記2線式伝送器の異常を検出したときに、前記2線式伝送器の内部の湿度を計測する湿度計が計測した湿度の情報に基づいて、前記2線式伝送器の異常の原因が湿度であるか否かを判定することを特徴とする。
【0023】
消費電流に基づいて検出される2線式伝送器の異常には湿度による腐食を要因とする場合もある。消費電流に基づいて異常が検出されたときには、湿度計を参照することで、検出した異常の原因が湿度であるか否かを判定できるようになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、外部回路にシリーズ接続されている出力回路により伝送電流を制御する2線式伝送器の消費電流をシャント電流と伝送電流とに基づいて検出することで、2線式伝送器の劣化や腐食等の異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態の2線式伝送器のブロック図である。
【図2】変形例の2線式伝送器のブロック図である。
【図3】従来技術における2線式伝送器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は実施形態の2線式伝送器1を示している。2線式伝送器1は外部回路2と伝送線L1、L2を介して接続されている。外部回路2の端子T1と2線式伝送器1の端子T3とが伝送線L1により接続されており、外部回路2の端子T2と2線式伝送器1の端子T4とが伝送線L2により接続されている。
【0027】
2線式伝送器1は、外部回路2から電源の供給を受けると共に4〜20mAの伝送電流i1を伝送する。外部回路2には2線式伝送器1の回路電源を供給するために必要な直流電源Ebと受信抵抗R1とが直列に接続されている。また、2線式伝送器1は、センサ3と信号処理回路4とEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)5と出力回路6と電源回路7と制御回路8とLCD(Liquid Crystal Display)9とを備えて構成している。
【0028】
センサ3は圧力や流量等の物理量を電気信号に変換する。センサ3はこの電気信号(センサ信号)を信号処理回路4に出力する。信号処理回路4は、不揮発性のメモリであるEEPROM5から直線性補正値を読み込んで、センサ3からのセンサ信号に対して信号処理を行う。
【0029】
この信号処理を行うことで、信号処理回路4は伝送電流i1を制御する信号(伝送電流制御信号)を出力回路6に対して出力する。なお、この伝送電流制御信号はLCD9に対しても出力されており、表示装置としてのLCD9に伝送電流の値を表示させることができるようになっている。
【0030】
出力回路6は、信号処理回路4が出力した伝送電流制御信号を入力して、伝送電流i1を4〜20mAに制御する。出力回路6は外部回路2に対してシリーズ(直列)で接続されている。2線式伝送器1の内部で使用可能な電流は伝送電流i1に制限されているため、出力回路6は外部回路2からの電流を伝送電流i1で流すように制御している。
【0031】
電源回路7は信号処理回路4が必要とする電圧(例えば、3ボルト)を供給する。この電圧に基づいて信号処理回路4は動作を行う。制御回路8は抵抗R2と直列接続されており、これら制御回路8と抵抗R2とによりシャントレギュレータ電源を構成する。このシャントレギュレータ電源は、出力回路6の出力側の電圧がVbとなるように制御している。例えば、電圧Vbが5ボルトとなるように制御している。
【0032】
図1に示すように、出力回路6の出力側にはセンサ3と電源回路7と制御回路8とが接続されている。センサ3は出力回路6の出力側の電圧Vb(例えば、5ボルト)に基づいて動作しており、このセンサ3に流れる電流をi2とする。また、信号処理回路4に必要な電圧(例えば、3ボルト)を供給する電源回路7に流れる電流をi3とする。さらに、シャントレギュレータ電源が制御のために抵抗R2に流す電流(シャント電流)をi4とする。
【0033】
シャントレギュレータ電源を構成する抵抗R2は一端が制御回路8に接続されており、他端が接地されている(図中のCOM)。信号処理回路4にはADC(アナログデジタル変換器)11が設けられており、抵抗R2の制御回路8側の電圧がVaとして入力される。ADC11は入力した電圧Vaをデジタル信号に変換して、信号処理回路4の内部で使用する。
【0034】
以上が構成である。次に、動作について説明する。2線式伝送器1は、過酷な環境・雰囲気下に設置されて使用されることが多い。このような過酷な環境下に2線式伝送器1を設置した状態で長い時間が経過すると、部品の経年変化を起こすとともに密閉劣化等を招来し、2線式伝送器1の内部回路に腐食性ガスの侵入による腐食等といったことが原因で故障に至ることがある。
【0035】
2線式伝送器1が突然故障することは、2線式伝送器1が取り付けられている電気、ガス、水道、下水道、石油産業等のプラント設備等に安全上、経済上、多大な損失を与えることがある。このために、2線式伝送器1に劣化や腐食等の異常が発生しているか否かを診断することは極めて重要である。この異常の診断を行うことで、予防保全のための警告を行うことができ、また異常時、故障時のフェイルセーフ動作を行うことができる。
【0036】
図1に示すように、出力回路6は信号処理回路4から出力される伝送電流制御信号に基づいて、外部回路2から供給される電流を伝送電流i1(4mA〜20mA)に制御する。この出力回路6により伝送電流i1が制御された後に、出力回路6の出力側は3つの電流i2、i3、i4に分岐する。よって、以下の式(1)が成立する。
i1=i2+i3+i4・・・(式1)
【0037】
これらの電流i1〜i4のうち、電流i2はセンサ3で消費され、電流i3は信号処理回路4、EEPROM5、LCD9で消費される。よって、2線式伝送器1の消費電流は「i2+i3」となる。なお、シャント電流i4は、シャントレギュレータ電源が電圧Vbに制御するために抵抗R2に流す余剰の電流になるため、2線式伝送器1の消費電流を構成しない。前述した式(1)のシャント電流i4を左辺に移行すると、以下の式(2)となる。
i2+i3=i1−i4・・・(式2)
【0038】
このうち、伝送電流i1は信号処理回路4が出力する伝送電流制御信号に基づいて、出力回路6が制御している電流になる。よって、信号処理回路4が出力する伝送電流制御信号と伝送電流i1との関係は設計上既知であるため、伝送電流i1は予め信号処理回路4が認識している値になる。
【0039】
一方、信号処理回路4のADC11には抵抗R2の制御回路8側の電圧Vaが入力されている。この電圧Vaとシャント電流i4との関係は「i4=Va/R2」となる。このうち抵抗R2は既知であるため、信号処理回路4は、ADC11によりデジタル信号に変換された電圧Vaを入力することで、シャント電流i4を得ることができる。
【0040】
従って、式2の右辺の伝送電流i1とシャント電流i4とを得ることができるため、「i1−i4=i1−(Va/R2)」の演算を行うことで、2線式伝送器1の消費電流「i2+i3」を得ることができる。信号処理回路4は消費電流「i2+i3」をEEPROM5に記録すると共に、消費電流が正常範囲であるか否かの比較を行う。
【0041】
消費電流「i2+i3」は2線式伝送器1が正常に作動しているときの範囲(正常範囲)があり、この正常範囲は既知として得られている。この正常範囲は信号処理回路4が認識しており、信号処理回路4は消費電流「i2+i3」が正常範囲の範囲内であるか、範囲外であるかを判定する。
【0042】
消費電流「i2+i3」が正常範囲内であれば格別の問題はないが、正常範囲外となったときには、2線式伝送器1の劣化や腐食等の異常を生じていると診断する。異常と診断されたときには、警告等を発することで予防保全を行うことができる。また、異常時、故障時のフェイルセーフ動作を実現することができる。
【0043】
このとき、消費電流「i2+i3」は実際に消費されている電流を計測しているものではなく、単にシャント電流i4が流れる抵抗R2の制御回路8側の電圧Vaを計測して得るようにしている。実際に電流を計測して消費電流を得るような場合には、センサ3に流れる電流i2と電源回路7に流れる電流i3とを計測する必要がある。例えば、電流を感知する抵抗器の電圧低下を監視することにより、電流の計測を行う。従って、電流i2、i3を直接的に計測するためには、電流の監視機構を少なくとも2箇所には設ける必要がある。
【0044】
本実施形態では、抵抗R2の制御回路8側の電圧Vaを入力するだけで、簡単に消費電流を演算することができる。つまり、格別な電流監視機構を2箇所以上に設ける必要がなく、簡単な回路構成で消費電流を得ることができる。そして、得られた消費電流に基づいて、2線式伝送器1に異常が発生しているか否かを検出することができる。
【0045】
本実施形態の2線式伝送器1の構成は、図1に示したような構成となっており、外部回路2に対して出力回路6がシリーズ(直列)で接続されている。よって、電圧Vbを制御するシャントレギュレータ電源に流れるシャント電流i4を電圧Vaで検出することで、外部回路2に出力回路6がシリーズ接続されている2線式伝送器1の回路構成で簡単に消費電流を得ることができる。
【0046】
ところで、2線式伝送器1の異常は消費電流「i2+i3」に基づいて検出しているが、2線式伝送器1の使用環境の温度によっては、消費電流が大きく変化する。その結果、温度変化によって、2線式伝送器1に異常を生じていないにもかかわらず、異常と診断されることがある。また、その逆もある。特に、昼夜で温度変化が激しい使用環境下においては、消費電力が大きく変化することがある。
【0047】
そこで、センサ3に温度計を設ける。この温度計としては、温度補正用温度計を用いることができる。そして、信号処理回路4は温度に対応した消費電力の正常範囲を記憶する。例えば、高温、室温、低温のそれぞれの温度においては、消費電力の正常範囲が異なるため、各温度の消費電力の正常範囲を記憶する。各温度の消費電力の正常範囲は2線式伝送器1が正常な状態で、高温、室温、低温のときの消費電流を計測することにより得ることができる。例えば、2線式伝送器1の製造時において、温度補正を行うときに各温度の消費電力の正常範囲を得ることができる。なお、温度計はセンサ3とは別に設けてもよく、2線式伝送器1の温度を計測する温度計を用いればよい。
【0048】
そして、実際に2線式伝送器1を使用しているときには、信号処理回路4はセンサ3に設けた温度計が計測する温度の情報(温度情報)を取得する。そして、消費電流「i2+i3」を判定するときには、温度情報に対応する正常範囲内であるか否かに基づいて、2線式伝送器1の異常を判定する。
【0049】
これにより、例えば昼夜で温度変化が激しい使用環境下で2線式伝送器1を使用したときに、該当する温度に対応する正常範囲に基づいて消費電流を比較することができる。このため、消費電流の異常が検出されたときに、その要因が温度変化によるものか否かを判定できる。これにより、2線式伝送器1に発生している異常の診断制度が向上する。
【0050】
また、センサ3に湿度計を設けることもできる。この湿度計により計測した湿度の情報(湿度情報)を記録する。この湿度情報は長期に渡って記録可能になっている。そして、信号処理回路4は、消費電流「i2+i3」が正常範囲外であるときに2線式伝送器1の異常を検出する。このときに、記録された湿度情報に基づいて、信号処理回路4は、2線式伝送器1の異常が湿度を要因としていることを認識する。なお、湿度計はセンサ3とは別に設けてもよく、2線式伝送器1の湿度を計測する湿度計を用いればよい。
【0051】
2線式伝送器1が高湿の環境下で運用されている場合には、例えば回路パターン間の腐食による絶縁抵抗の低下といった異常を生じる。これは、湿度による腐食を要因とするものであり、信号処理回路4はセンサ3の湿度計(が記録している湿度情報)を参照することで、2線式伝送器1の異常が湿度を要因としていることを認識する。
【0052】
次に、応用例について説明する。図2は応用例の2線式伝送器1を示している。この図に示すように、伝送線L1にノイズ源21が存在しており、このノイズ源21により2線式伝送器1にノイズが印加された場合、出力回路6および制御回路8を介してシャント電流i4にノイズの影響が出現する。
【0053】
信号処理回路4は電圧Vaを入力することで、シャント電流i4を検出している。よって、このシャント電流i4にノイズが出現した場合、信号処理回路4がこのノイズを認識することができる。信号処理回路4はノイズの影響を信号処理することで、ノイズの大小を認識することができる。このときに認識したノイズが大きい場合(例えば、設定したノイズの閾値よりも高い場合)、フェイルセーフ動作を行うように制御するようにしてもよい。
【0054】
また、落雷等により、外部回路2を構成する直流電流Ebに瞬断(瞬時電圧低下)の影響が生じた場合には、この影響はシャント電流i4にも作用する。そこで、信号処理回路4はシャント電流i4の変化が瞬断と判定できる変化であるかに基づいて、直流電流Ebに瞬断が生じているか否かを判定することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 2線式伝送器
2 外部回路
3 センサ
4 信号処理回路
6 出力回路
7 電源回路
8 制御回路
21 ノイズ源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部回路から2本の伝送線を介して電源の供給を受けると共にセンサの計測値に基づく伝送電流を前記外部回路に伝送する2線式伝送器であって、
前記伝送電流を制御する前記外部回路にシリーズ接続される出力回路と、
前記出力回路の出力側の電圧を所定の電圧となるようにシャント電流を流して制御するシャントレギュレータ電源と、
前記シャント電流を検出して、このシャント電流と前記伝送電流とに基づいて前記2線式伝送器の消費電流を得る信号処理回路と、
を備えたことを特徴とする2線式伝送器。
【請求項2】
前記信号処理回路は、この信号処理回路が検出した前記消費電流とこの消費電流の正常範囲とを比較して、前記2線式伝送器に異常を生じているか否かの診断を行うこと
を特徴とする請求項1記載の2線式伝送器。
【請求項3】
前記信号処理回路は、前記2線式伝送器の内部の温度を計測する温度計が計測した温度に対応する前記消費電流の正常範囲に基づいて、前記2線式伝送器に異常を生じているか否かの診断を行うこと
を特徴とする請求項2記載の2線式伝送器。
【請求項4】
前記信号処理回路は、前記2線式伝送器の異常を検出したときに、前記2線式伝送器の内部の湿度を計測する湿度計が計測した湿度の情報に基づいて、前記2線式伝送器の異常の原因が湿度であるか否かを判定すること
を特徴とする請求項2または3記載の2線式伝送器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−97520(P2013−97520A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238829(P2011−238829)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】