説明

2線式配線器具

【課題】短絡電流による2線式配線器具の破損の防止を図る。
【解決手段】商用電源11から電力を給電する2個の電源ラインの接続端子T1,T2に人感検出機能付負荷開閉装置100が接続された2線式配線器具にあって、人感検出機能付負荷開閉装置100内に、負荷12への給電あるいは非給電に対応してオン、オフするスイッチング用のトランジスタQ1を備える。トランジスタQ1を流れる電流の瞬時値を、コンパレータCBの出力から、平均値をコンパレータCAの出力からそれぞれ得て、これら瞬時値と平均値に基づく制御によりトランジスタQ1の電流耐量を定格内に収めることで、トランジスタQ1に流れる短絡電流による人感検出機能付負荷開閉装置100の破損を防止することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の一実施形態は、電力を供給する2個の電線ラインの接続端子を備えた2線式配線器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の2線式配線器具は、電力を供給する2個の電源ラインの接続端子を備えるのみで、人感検出機能を備えた負荷開閉装置における電源部と操作部と負荷開閉部とを内蔵させ、人感検出機能の検出結果に基づき負荷の開閉制御が行われている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−133473公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、負荷が短絡した場合に発生する短絡電流が長時間に渡って負荷および2線式配線器具に流れることになり、2線式配線器具が破損する恐れがある、という問題があった。
【0005】
この発明の目的は、負荷短絡電流が生じた場合に瞬時に短絡電流による影響を抑えて自己の破損を防止可能とした2線式配線器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一実施形態は、制御電極に供給される信号に応じた開閉により負荷に対して電源から電力を給電、非給電する非自己保持形のスイッチング素子と、前記スイッチング素子に流れる負荷電流に基づく信号を平均化して得られた第1の設定値と第1の基準値を比較し、比較結果で前記スイッチング素子を制御する第1の制御手段と、前記スイッチング素子に流れる負荷電流に基づく信号の前記第1の設定値よりも高い値の第2の設定値と前記第1の基準値よりも高い第2の基準値とを比較し、比較結果で前記スイッチング素子を制御する第1の制御手段と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の一実施形態によれば、短絡電流があった場合に、短絡電流による影響を瞬時に抑えて負荷の破損を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の2線式配線器具に関する一実施形態について説明するための回路構成図である。
【図2】一実施形態の作用について説明するための説明図である。
【図3】この発明の2線式配線器具に関する他の実施形態について説明するための回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1および図2はこの発明の2線式配線器具に関する一実施形態について説明するためのもので、図1は回路構成図、図2は同作用について説明するための説明図である。
【0011】
図1に示す100は、2線式配線器具に相当する人感検出機能付負荷開閉装置である。人感検出機能付負荷開閉装置100は、2個の電力給電ラインを接続するための接続端子T1、T2を備えるもので、接続端子T1とT2間には商用電源11,負荷12を直列に接続する。
【0012】
人感検出機能付負荷開閉装置100の内部は、接続端子T1、T2からダイオードブリッジで構成される整流回路部13が接続され、ここで、商用電源11の交流電圧を直流電圧に変換させる。整流回路部13の出力は、2次的な電圧を生成する電源部14に供給する。電源部14は出力端子T3,T4を有し、人感検出機能付負荷開閉装置100内で使用する電力を供給する。すなわち、出力端子T3からは例えば5Vの直流電圧VDDを、出力端子T4からは所定の例えば7〜12Vの直流電圧をそれぞれ出力するものとし、必要に応じて内部に3端子レギュレータ等を備える。
【0013】
電源部14の出力端子T3から出力される直流電圧VDDは、赤外線センサ15の電源として供給する。赤外線センサ15は、感知領域内を通過する人体から放射される赤外線を検出し、人感検出信号として出力OSから出力するものである。
【0014】
整流回路部13の出力と電源部14の入力間との間には、負荷12を開閉させるMOS型FETによるスイッチング素子であるトランジスタQ1のドレイン電極が接続され、トランジスタQのソース電極と基準電位点との間にはバイアス用の抵抗R1が接続される。トランジスタQ1のソース電極と抵抗R1の接続点は、コンパレータCAの非反転入力に抵抗R2を介して接続されるとともに、コンパレータCBの非反転入力に接続される。
【0015】
また、コンパレータCAの非反転入力はコンデンサC1を介して基準電位点に接続される。抵抗R2とコンデンサC1は、平均化回路16を構成する。平均化回路16の出力は、入力される負荷電流を平均化して非反転入力に供給させる。
【0016】
さらに、電源部14で生成された直流電圧VDDは、抵抗R3〜R5の直列回路を介して基準電位点に接続される。抵抗R4とR5の接続点はコンパレータCAの反転入力に、抵抗R3とR4の接続点はコンパレータCBの反転入力にそれぞれ接続される。この接続により、コンパレータCAの非反転入力には、抵抗R3〜R5に基づく第1の設定値として例えば0.2Vが、コンパレータCBの非反転入力には、抵抗R3〜R5に基づく第2の設定値として第1の設定値よりも高い例えば0.5Vがそれぞれ供給される。コンパレータCAは非反転入力が0.2Vを越えた場合に、コンパレータCBは非反転入力が0.5Vを越えた場合に比較出力からHレベルそれぞれ出力する。
【0017】
コンパレータCAの比較出力はダイオードD1のアノードに、コンパレータCBの比較出力はダイオードD2のアノードにそれぞれ接続される。ダイオードD1,D2のカソードは、共通接続されて出力がトランジスタQ1のゲートに接続されたインバータINVの入力と抵抗R6の一端とに接続される。ダイオードD1,D2は、ダイオードオア回路を構成する。抵抗R6の他端は、エミッタ電極が基準電位点に接続されたNPN型トランジスタQ2のコレクタ電極に接続されるとともに、エミッタが基準電位点に接続されたNPNトランジスタQ3のコレクタと一端が直流電圧VDDに接続された抵抗R7の他端との間に接続される。
【0018】
トランジスタQ2のべース電極は、コンデンサC2を介して基準電位点に接続されるとともに、抵抗R8を介してトランジスタQ1のソース電極と抵抗R1の接続点に接続される。また、トランジスタQ3のべース電極は、抵抗R9を介して所定の定電圧を生成する出力端子T4に接続されるとともに、図示極性のダイオードD3を介して赤外線センサ15の出力OSに接続される。
【0019】
コンパレータCAの反転入力と非反転入力にそれぞれに印加される電圧に基づき決定されるコンパレータCAの出力でトランジスタQ1を制御する系統は、第1の制御手段を構成する。コンパレータCBの反転入力と非反転入力にそれぞれに印加される電圧に基づき決定されるコンパレータCBの出力でトランジスタQ1を制御する系統は、第2の制御手段を構成する。
【0020】
ここで、トランジスタQ1のゲート電極に印加される電圧がL(ロー)レベルである場合を考える。この場合のトランジスタQ1はオフ状態であり、商用電源11の交流電圧は整流回路部13で直流電圧に変換し、この直流電圧を逆流防止用のダイオードD4を介して電源部14に供給する。電源部14では2次的な電源である例えば5Vの直流電圧VDDを出力端子T3から、例えば7〜12Vの間で変動する直流電圧を出力端子T4からそれぞれ出力する。このとき、赤外線センサ15には、直流電圧VDDが印加され、人感を検出することが可能な状態下にある。
【0021】
赤外線センサ15は、人を検出した場合には出力OSから人感検出信号であるH(ハイ)レベルを出力する。ダイオードD3のカソードがHレベルであることから、アノードはHレベルとなり、トランジスタQ3のベース電極もHレベルとなり、トランジスタQ3はオンする。トランジスタQ3のオンにより抵抗R7とトランジスタQ3のコレクタ電極間の電圧がHレベルとなる。これにより、インバータINVの入力はLレベルに、インバータINVの出力はHレベルとなり、トランジスタQ1はオンの状態となり、負荷12に電力を供給する。トランジスタQ1がオンすると、トランジスタQ2がオンしてトランジスタQ1のオン状態を、予め設定された期間保持するようになされている。
【0022】
このとき、コンパレータCAには直流電圧VDDによる抵抗R3〜R5に基づく分割電圧が第1の設定電圧として印加され、コンパレータCBには直流電圧VDDによる抵抗R3〜R5に基づく分割電圧が第2の設定電圧として印加されている。コンパレータCA,CBの非反転入力に印加される抵抗R1を流れる負荷電流を電圧降下させて得られた検出電圧が、反転入力に印加される電圧に比べて低い場合、それぞれの出力はLレベルの状態となる。
【0023】
赤外線センサ15による人感検出信号が人を検出しない状態のLレベルとなった場合は、ダイオードD3のカソードがLレベルであることから、アノードはLレベルとなり、トランジスタQ3のベース電極もLレベルとなり、トランジスタQ3はオフする。トランジスタQ3のオフに伴い、抵抗R7とトランジスタQ3のコレクタ電極間のHレベルとなる。これにより、インバータINVの入力はHレベルに、インバータINVの出力はLレベルとなり、トランジスタQ1はオフする。
【0024】
トランジスタQ1がオンの場合は、抵抗R1に流れた電流による電圧降下で、トランジスタQ1のソース電極と抵抗R1との間に発生した電圧に基づき、コンパレータCA,CBのそれぞれ非反転入力に供給する。トランジスタQ1を流れる負荷電流が通常の状態であれば、コンパレータCA,CBは、非反転入力に印加される電圧は反転入力に印加される電圧よりも低い。このためコンパレータCA,CBは、非動作状態にあり、インバータINVは赤外線センサ15の出力情報あるいは保持回路(トランジスタQ2)に基づく動作を行う。
【0025】
逆に、トランジスタQ1を流れる負荷電流が通常よりも高くなった場合のコンパレータCA,CBの非反転入力に印加される電圧は、反転入力に印加される電圧よりも高くなる。コンパレータCA,CBは、比較出力からHレベルを出力する。インバータINVの出力はLレベルとなることから、トランジスタQ1はオフして負荷12に過電流が流れることを防止することができる。例えば定格容量の異なる負荷を誤って装着して過電流が流れ、その平均値が第1の基準値を上回った場合にはコンパレータCAの出力がHレベルとなる。
【0026】
ところで、図2に示すように、トランジスタQ1がオンの状態で、(a)に示す商用電源11の電圧100Vおよびこの電圧に伴う(b)に示す電流が人感検出機能付負荷開閉装置100に印加されようとしている段階で、例えば負荷12の短絡などの理由から、(c)に示す短絡電流が発生したとする。
【0027】
すると、突入電流が例えば5Aになったところで、コンパレータCBの非反転入力に印加される電圧は、反転入力に印加される電圧である0.5Vよりも高くなる。このためコンパレータCBの出力はHレベルに、インバータINVの出力はLレベルとなり、トランジスタQ1をオフする。これにより、負荷12に流れる突入電流は、図2(c)に示すように0レベルとなり、人感検出機能付負荷開閉装置100の破損を防止することができる。これは、スイッチング素子としてのトランジスタQ1がサイリスタやトライアックのような自己保持形ではなく、制御電極に供給される信号に応じて開閉を制御されるMOS型FETのような非自己保持形であることから瞬時オフを達成できるものである。コンパレータCBの反転入力に印加される基準電圧である0.5Vを越えた電圧が非反転入力に印加される時間は数μs程度と極めて短時間であることも負荷12へ負担がかかることを抑えることができる。
【0028】
このように、負荷電流に短絡電流が流れた場合でも短絡電流のピーク値に達する前に瞬時値を検出するコンパレータCBが動作して直ちにトランジスタQ1で負荷12を閉じるようにした。このため、スイッチング素子としてトライアックを用いた場合のような従来は図2(d)に示すように数百Aの短絡電流が、例えば10msという長時間に亘って負荷12に流していたことに対し、比較的低い短絡電流値を短時間しか流さないようにした。図2(d)の電流遮断はヒューズの溶断と想定したものである。負荷電離の瞬時値と平均値に基づく制御によりトランジスタQ1の電流耐量を定格内に収めることが可能となり、2線式配線器具の破損を防止することができる。
【0029】
この実施形態では、短絡電流を瞬時に減少させることで2線式配線器具に高い電流が流れることを抑えることができるとともに、短絡電流の流れる時間も短くでき、2線式配線器具に係る負担の軽減をでき、2線式配線器具の破損を防止することができる。
【0030】
図3は、この発明の2線式配線器具に関する他の実施形態について説明するための回路構成図である。なお、上記実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付し、ここでは異なる部分を中心に説明する。
【0031】
この実施形態は、コンパレータCBの非反転入力とトランジスタQ1のソース電極と抵抗R1の接続点との間に抵抗R10を接続するとともに、コンパレータCBの出力と非反転入力との間に正帰還用の抵抗R11を接続したものである。コンパレータCBは、抵抗R10,R11を接続したことにより、ヒステリシスコンパレータ17を構成する。ヒステリシスコンパレータ17は、比較出力が負から正になるときの比較の閾値と、正から負になるときの比較の閾値を少し違えるようにしている。
【0032】
この場合、コンパレータCBの非反転入力が、反転入力よりも上昇した場合は、コンパレータCBの比較出力がHレベルとなる。このHレベルが抵抗R11を介してコンパレータCBの非反転入力に正帰還されることから、コンパレータCBはラッチが掛けられた状態となる。この状態は、例えば負荷11が取り外され、商用電源11が人感検出機能付負荷開閉装置100に給電されなくなるまで持続する。
【0033】
さらに、コンパレータCBにヒステリシス機能を持たせたことにより、短絡電流があったとしても、その電流値がトランジスタQ1をオフにするほどでもないノイズ的な値の場合は、そのままトランジスタQ1をオンし続けるようにすることができる。これにより、ノイズ的な負荷異常に対して、トランジスタQ1が保護動作を継続することが防止でき、負荷12が異常ではない状態下でのトランジスタQ1の発熱を防止することができる。
【0034】
この実施形態では、負荷電流の瞬時値を検出するコンパレータCBの非反転入力側にヒステリシスを持たせるとともに、ラッチ機能を持たせたことで、ノイズ的な負荷異常に対する保護動作を回避するとともに、負荷が閉じられた場合は負荷が取り外れるまでは給電させないようにすることができる。
【0035】
この発明は、上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、コンパレータCA,CBの非反転入力に供給される比較入力値は、抵抗R1の両端に発生する負荷電流による電圧降下電圧基づいたが、変流器等を用いるようにしても、あるいは負荷電流そのものではなく負荷電流に対応した電流を用いるようにしても構わない。負荷を開閉させるスイッチング用トランジスタとしてMOS型のFETを用いたが、制御端子に印加される制御信号で出力を制御可能なスイッチング素子であれば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタやパワートランジスタなどでも構わない。
【0036】
また、人感用のセンサとしては、赤外線センサを例として挙げたが、超音波センサや可視光センサなどでもよい。さらに、赤外線センサと可視光センサを組み合わせた人感センサとしても構わない。しかし、この発明はセンサを備えたものに限定されるものではない。
【0037】
この発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
100 人感検出機能付負荷開閉装置
11 商用電源
12 負荷
13 整流回路部
14 電源部
15 赤外線センサ
16 平均化回路
17 ヒステリシスコンパレータ
T1,T2 接続端子
T3,T4 出力端子
Q1〜Q3 トランジスタ
R1〜R11 抵抗
CA,CB コンパレータ
C1,C2 コンデンサ
INV インバータ
D1〜D4 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御電極に供給される信号に応じた開閉により負荷に対して電源から電力を給電、非給電する非自己保持形のスイッチング素子と、
前記スイッチング素子に流れる負荷電流に基づく信号を平均化して得られた第1の設定値と第1の基準値を比較し、比較結果で前記スイッチング素子を制御する第1の制御手段と、
前記スイッチング素子に流れる負荷電流に基づく信号の前記第1の設定値よりも高い値の第2の設定値と前記第1の基準値よりも高い第2の基準値とを比較し、比較結果で前記スイッチング素子を制御する第1の制御手段と、を具備したことを特徴とする2線式配線器具。
【請求項2】
前記第2の制御手段には、一旦該第2の制御手段が前記スイッチング素子を非給電とする動作をした場合に、前記電源が遮断または前記負荷が取り外されるまでラッチするラッチ機能を備えたことを特徴とする請求項1記載の2線式配線器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−90479(P2012−90479A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236699(P2010−236699)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】