説明

2軸材料強度試験機

【課題】 高精度な2軸材料強度試験を簡単に行うことができる省スペース型の材料強度試験機を提供する。
【解決手段】 試験片の端部を挟むチャックと、該チャックを先端部に有するピストンロッドと、該ピストンロッドを前進・後退可能に装着したシリンダとを備えたチャック移動機構を4組用意し、そのうちの2組のチャック移動機構をチャックの先端部を互いに向かい合わせてハウジングの上、下に設け、試験片に縦方向の荷重を負荷するようにし、残りの2組のチャック移動機構をチャックの先端部を互いに向かい合わせてハウジングの左、右に設け、試験片に横方向の荷重を負荷するようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、2軸方向の荷重を試験片に負荷して、疲労試験や引張り試験などの材料強度試験を行う2軸材料強度試験機に関する。
【0002】
【従来の技術】機械や構造物に用いられる材料の材料強度試験は、普通1軸応力下で行われている。たとえば、材料強度試験のうち、疲れ強さや疲労き裂の進展速度などを求める疲労試験には、図10に示す1軸疲労試験機が一般的に用いられている。
【0003】1軸疲労試験機は、上のチャック147 で試験片103 の上端部をつかみ、下のチャック147 で試験片の下端部をつかみ、ピストンロッド142 を内装したシリンダ141 を油圧サーボバルブで制御し、ピストンロッド142 に連結した主軸部材145を介して下のチャック147 を前進・後退させて、縦方向の繰り返し荷重を試験片103 に負荷するものである。
【0004】なお、1軸疲労試験機においては、1軸方向にのみ繰り返し荷重を試験片103に負荷すればよいので、各部材の自重を考慮し、各部材が縦方向に並ぶようにシリンダ141 が唯一つハウジング101 の下部にピストンロッド142 を縦にして取り付けてある。図10で、106 はシリンダ141 の前進・後退を制御する油圧サーボバルブを内蔵したスタンド、107 はアキュムレータ(配管内の油圧の変動を吸収する)であり、143 はピストンロッド142 に主軸部材145 を取り付けるフランジ、144 は試験片103 に負荷する荷重を検出するロードセル、146 はチャック取り付け治具である。
【0005】近年、構造物の使用環境や機械の使用条件が過酷化し、機械や構造物に複雑な破壊現象が生じるようになってきている。実際の機械や構造物には繰り返し荷重が1軸方向から作用することは少なく、さまざまな方向から荷重が作用するのが普通である。実際の機械や構造物における材料の疲れ強さや引張り強さ、伸びなどの強度・変形特性は、1軸応力下でのものとはかなり異なっているため、機械や構造物の安全性や信頼性を高めるためには、2軸方向から荷重を負荷し、2軸応力下で材料強度試験を行い、1軸応力下での強度・変形特性と比較することが重要である。
【0006】そこで、互いに直交する2軸方向に繰り返し荷重を試験片に負荷する2軸疲労試験機が必要となった。しかしながら、互いに直交する平面が水平となるように、シリンダをハウジングに取り付けた横型の2軸疲労試験機では、広い設置スペースが必要なことに加えて、試験片の取り付けが困難であったり、水平方向に繰り返し荷重を試験片に負荷する構造が悪く、高精度な2軸疲労試験が行えないという問題があった。なおかつ、水平方向に圧縮繰り返し荷重、垂直方向に引張り繰り返し荷重を組み合せて材料の疲労試験が可能な機構はなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的は、従来技術の上記問題点を解消することにあり、高精度な2軸材料強度試験を簡単に行うことができる省スペース型の2軸材料強度試験機を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、竪型のハウジングの中央部に設けた空間内で、試験片に縦方向と横方向の荷重を負荷する2軸材料強度試験機であって、前記試験片の端部を挟むチャックと、該チャックを先端部に有するピストンロッドと、該ピストンロッドを前進・後退可能に装着したシリンダとを備えたチャック移動機構を4組用意し、そのうちの2組のチャック移動機構を前記チャックの先端部を互いに向かい合わせて前記ハウジングの上、下に設け、前記試験片に縦方向の荷重を負荷するようにし、残りの2組のチャック移動機構を前記チャックの先端部を互いに向かい合わせて前記ハウジングの左、右に設け、前記試験片に横方向の荷重を負荷するようにしたことを特徴とする2軸材料強度試験機である。
【0009】また、前記4組のチャック移動機構のうち、少なくとも前記ハウジングの左、右に設けたチャック移動機構のチャックとピストンロッド間に主部材を設け、該主部材をガイドユニットを介して横方向へ摺動自在に前記ハウジングに取り付けることが好ましい2軸材料強度試験機である。また、前記4組のチャック移動機構の各チャックを、後端部に雌ねじを設けかつ中央部に溝を形成すると共に先端部における端面と内壁面を係止面としたC字形断面のメンバと、両側の傾斜した側面を係止面とする楔状断面のメンバと、後端部における端面と内壁面を係止面とし、かつ該内壁面につながる側面を前記試験片との合わせ面としたL字形断面のメンバと、中央部に溝を形成して両側の内壁面を係止面とすると共に後端部を前記C字形断面のメンバの溝に挿入可能で、かつ先端部の側面を前記試験片との合わせ面とした逆C字形断面のメンバとの4つのメンバからなるものとすることが好ましい2軸材料強度試験機である。
【0010】また、前記4組のチャック移動機構の各シリンダに油圧サーボバルブを設けて疲労試験を行うことが好ましい2軸材料強度試験機である。また、前記4組のチャック移動機構の各シリンダに油圧サーボバルブを設けず、圧油を溜める複数のアキュムレータと、該複数のアキュムレータに連結させた2つのマニホールドと、該2つのマニホールドからの圧油をそれぞれ制御する電磁弁を設け、該電磁弁を操作して前記アキュムレータからの圧油を各シリンダーに供給して動的な強度試験を行うことが好ましい2軸材料強度試験機である。
【0011】
【発明の実施の形態】まず、本発明の2軸疲労試験機について、図1〜図4を用いて詳細に説明する。図1、図2R>2は、本発明の2軸疲労試験機の正面図および側面図である。また、図3、図4は、本発明の2軸疲労試験機におけるチャック移動機構の正面図および側面図である。ただし、図4では、図3に示したチャック連結棒46、チャック47、試験片3を取り外して示してある。
【0012】ここで、1はハウジング、2は空間、3は試験片、4、4’はハウジング1の左、右に設けたチャック移動機構、5、5’はハウジング1の上、下に設けたチャック移動機構である。また、6は油圧サーボバルブスタンド、7はアキュムレータ、41は油圧シリンダ、42はピストンロッドであり、43はフランジ、44はロードセル、45は主部材である。
【0013】また、46はチャック連結棒、47はチャック、48はスライド部材、49はスライドガイド、49A はグリースニップル(潤滑剤供給口)、50はスライドガイド取り付け部材である。ここで、ハウジング1における縦方向のY軸と横方向のX軸は空間2内のO点で互いに直交する軸である。
【0014】ハウジング1は正面形状が略8角形であり、ハウジング1の左右の斜め下部に脚部を設けてあり、ハウジング1の脚部をアンカーボルトで床に固定することにより、X軸を水平に、Y軸を垂直にして立設可能である。また、ハウジング1は、図1に示す左右の幅寸法および上下の高さ寸法に比べ、図2に示すように奥行き寸法が小さく、X−Y平面内の縦方向および横方向の内力に対して十分な剛性を有するフレーム構造とされている。
【0015】本発明の2軸疲労試験機では、図1に示すように、試験片3の端部を挟むチャック47と、該チャック47を先端部に有するピストンロッドと、該ピストンロッドを前進・後退可能に装着したシリンダ41とを備えたチャック移動機構4、4’、5、5’を用意し、そのうちの2組のチャック移動機構5、5’をチャック47の先端部を互いに向かい合わせてハウジング1の上、下に設け、試験片3に縦方向の荷重を負荷するようにし、残りの2組のチャック移動機構4、4’をチャック47の先端部を互いに向かい合わせてハウジング1の左、右に設け、試験片3に横方向の荷重を負荷するようにした。
【0016】その際、チャック移動機構5、5’におけるピストンロッドの軸をY軸に一致させてシリンダ41をハウジング1の上、下に取り付けてあり、また、チャック移動機構4、4’におけるピストンロッドの軸をX軸に一致させてシリンダ41をハウジング1の左、右に取り付けてある。各シリンダ41は、図1,図2に示すように、ハウジング1の側面にボルトで締結されている。
【0017】本発明の2軸疲労試験機では、図1に示すように、チャック移動機構4、4’のチャック47で試験片3の左端部、右端部をつかみ、油圧の作用方向を油圧サーボバルブスタンド6内で切り替えることにより、ピストンロッドを前進・後退可能に装着したシリンダ41の作動方向を変え、試験片3に横方向の荷重を負荷すると共に、チャック移動機構5、5’のチャック47で試験片3の上端部、下端部をつかみ、同様に、油圧の作用方向を油圧サーボバルブスタンド6内で切り替えることにより、ピストンロッドを前進・後退可能に装着したシリンダ41の作動方向を変え、試験片3に縦方向の荷重を負荷するように構成してある。
【0018】そして、本発明では、シリンダ41の作動方向を油圧サーボバルブにより切り替えるようにしてあり、また、アキュムレータ7により配管内の油圧の変動を吸収し、疲労試験機の振動を抑制しているため、たとえば、繰り返し荷重のサイクルを0〜10Hz、荷重を最大で 49kNとした金属材料用の2軸疲労試験機とすることが可能である。
【0019】本発明の2軸疲労試験機は、次の■および■のような繰り返し荷重を負荷しない材料強度試験、および繰り返し荷重の負荷を■〜■とする疲労試験を行うことができるので、2軸材料強度試験機でもある。
■;2軸の静的な引張り試験■;2軸の静的な圧縮試験■;2軸方向を共に引張り荷重とする疲労試験■;2軸方向を共に圧縮荷重とする疲労試験■;2軸の一方を引張り荷重とし、他方を圧縮荷重とする疲労試験■;2軸の一方と他方との負荷周期が異なる疲労試験、たとえば、一方が2Hz、他方が5Hzの負荷周期ここで、本発明の2軸疲労試験機においては、図1に示すように、互いに直交する方向にそれぞれ2つのチャック移動機構4、4’およびチャック移動機構5、5’を設けてあるために、試験時に試験片3の中心を空間2内のO点に一致させて試験を行うことが可能であるので、高精度な2軸疲労試験が行え、また、試験片3の中心を空間2内のO点に一致させて互いに直交する方向に荷重を負荷可能であるので、試験片3を介して互いに直交する方向からチャック47を経てピストンロッドに作用する荷重を抑制できるために、ピストンロッドが曲がって、疲労試験が継続できなくなることもない。
【0020】一方、2軸疲労試験機において、たとえば、縦方向にチャック移動機構5のみを設け、チャック移動機構5’を設けず、試験片3の下端部を固定し、チャック移動機構5により繰り返し引張り荷重を試験片3に負荷した場合には、試験片3が上方向のみ伸び、試験片3の中心が空間2内のO点からずれ(以下、中心ずれという)、高精度な2軸疲労試験が行えないばかりでなく、上方向に無理な引張り荷重が試験片3を介してハウジング1の左右に設けたチャック移動機構4、4’に作用し、ピストンロッドが変形し、疲労試験が継続できなくなってしまうのである。また、縦方向と同様に2軸疲労試験機において、たとえば、横方向にチャック移動機構4のみを設け、チャック移動機構4’を設けず、試験片3の右端部を固定し、チャック移動機構4により繰り返し引張り荷重を試験片3に負荷した場合も上記と同様に試験片3に中心ずれが生じ、高精度な2軸疲労試験が行えないばかりでなく、ハウジングの上、下に設けたチャック移動機構5、5’のピストンロッドが変形し、疲労試験が継続できなくなってしまうのである。
【0021】本発明の2軸疲労試験機におけるチャック移動機構について図3、図4を用いてさらに詳細に説明する。図3、図4には、図1の左のチャック移動機構4について示してあるが、図1の下のチャック移動機構5’はチャック移動機構4をX−Y面内で反時計回りに90°回転させてハウジング1に取り付けたものであり、また、上のチャック移動機構5は、チャック移動機構4をX−Y面内で時計回りに90°回転させ、かつアキュムレータ7および油圧サーボバルブスタンド6の取り付け位置を図1のように変更したものである。さらに、右のチャック移動機構4’は、チャック移動機構4をX−Y面内で時計回りに180 °回転させ、かつアキュムレータ7および油圧サーボバルブスタンド6の取り付け位置を図1に示すように変更したものである。
【0022】そこで、図3、図4に示す左のチャック移動機構4について説明し、他のチャック部移動機構4’、5、5’についての説明は省略する。チャック移動機構4は、図3に示すように油圧シリンダ41を備えている。油圧シリンダ41は、外面を円形状に切り欠いた開口から挿入されるとともに、内面を略矩形状に切り欠いた開口に向けたピストンロッド42を備え、かつピストンロッド42の軸をX軸に一致させてハウジング1の外面に取り付けてある。また、油圧シリンダ41は、油圧サーボバルブスタンド6内で油圧シリンダ41に供給する油の方向を短時間で切り替えて、図示しない油圧源から供給される圧油によりピストンロッド42を図の左右方向に繰り返し移動可能に構成してある。
【0023】ピストンロッド42の先端部には、図3に示すハウジング1の窓から見えるように、フランジ43が設けてあり、フランジ43には断面が略矩形の柱状の主部材45がロードセル44を間に挟んで取り付けてある。主部材45の断面積は、ピストンロッド42の断面積より大きく、主部材45には、ロードセル44を取り付けた側とは反対側の端面に雌ねじが設けてある。
【0024】チャック移動機構4は、この主部材45の雌ねじにチャック連結棒46をねじ込むとともに、チャック連結棒46にチャック47をねじ込むと、油圧シリンダ41のピストンロッド42から主部材45を介しチャック47までの各部材が一体となる構造にしてある。ここで、本発明の2軸疲労試験機では、チャック移動機構4の主部材45をガイドユニットを介して横方向へ摺動自在にハウジング1に取り付けてある。
【0025】ガイドユニットは、図3、図4に示すように、主部材45の側面に取り付け可能な矩形状断面の柱状のスライド部材48と、スライド部材48を装着可能な溝を一側面に設けた矩形状断面の柱状のスライドガイド49と、スライドガイド49の他の側面と嵌合する一側面を有し、かつ、他の壁面をハウジング取り付け面としたスライドガイド取り付け部材50とを各2組備え、1組のガイドユニットのスライド部材48を主部材45の上側面に取り付け、他の1組のガイドユニットのスライド部材48を主部材45の下側面に取り付け、それぞれのガイドユニットのスライドガイド取り付け部材50をハウジング1にボルトで締結してある。
【0026】なお、スライド部材48の両側面に設けた円弧状断面の小溝には、スライドガイド49の溝の側壁に設けた凸部を係合させてあり、スライドガイド49に設けたグリースニップル(潤滑剤供給口)49A より、グリースや潤滑剤等を注入し、主部材45を取り付けた面と反対側のスライド部材48の一側面とスライドガイド49の溝底間、およびスライド部材48の円弧状の小溝を設けた両側面とスライドガイド49の溝の側壁間をグリースや潤滑剤等により潤滑するようにしてある。
【0027】本発明の2軸疲労試験機では、ハウジング1の右に設けたチャック移動機構4’についても、チャック47とピストンロッド42間に主部材45を設け、主部材45をガイドユニットを介して横方向へ摺動自在にハウジングに取り付けてある。チャック移動機構4’の主部材45とガイドユニットとの取り付け位置の関係は、チャック移動機構4の主部材45とガイドユニットとを時計回りに180 ℃回転させたときの関係となる。
【0028】そこで、本発明の2軸疲労試験機では、ハウジング1の左、右に設けた設けたチャック移動機構4、4’のチャック47の自重および試験片3を介して縦方向の荷重がチャック47に作用した場合であっても、チャック移動機構4、4’の主部材45をガイドユニットを介して横方向へ摺動自在にハウジング1に取り付けてあるため、チャック移動機構4、4’のピストンロッド42が縦方向に変形することがない。
【0029】また、本発明の2軸疲労試験機では、試験片3の形状やチャック47の形状等により、X−Y面に対して垂直なZ軸方向にある程度の荷重が加わった場合であっても、同様の理由により、チャック移動機構4、4’のピストンロッド42がZ軸方向へ変形することもない。またさらに、本発明の2軸疲労試験機では、チャック移動機構4、4’の主部材45をガイドユニットを介して横方向へ摺動自在にハウジング1に取り付けてあるため、試験時にチャック移動機構4、4’のチャック47に縦方向への荷重およびZ方向への荷重が作用した場合でも、試験片3に中心ずれが発生せず、高精度な2軸疲労試験を行うことができる。
【0030】本発明の2軸疲労試験機では、4組のチャック移動機構のうち、少なくともハウジング1の左、右に設けたチャック移動機構4、4’のチャック47とピストンロッド42間に主部材45を設け、主部材45をガイドユニットを介して横方向へ摺動自在にハウジング1に取り付けることが好ましいのは上述のとおりである。主部材45およびスライドガイド取り付け部材50の材質としては、機械構造用炭素鋼材(S45C、SS41B )や一般鋼材を用いることができ、スライド部材48およびスライドガイド49の材質としては、ベアリング鋼を用いることができる。
【0031】本発明の2軸疲労試験機では、ハウジング1の上、下に設けたチャック移動機構5、5’がハウジング1の左、右に設けたチャック移動機構4、4’と異なるのは、チャック移動機構5、5’においてはチャックの自重がピストンロッド42の軸方向に作用するので、ピストンロッド42を曲げるように作用しないことである。しかし、ハウジング1の上、下に設けたチャック移動機構5、5’に試験片3を介してある程度の横方向の荷重が作用した場合には、チャック移動機構5、5’のピストンロッド42が横方向に変形してしまう場合がある。もしくは、チャック移動機構5、5’に試験片3の形状やチャック47の形状等により、X−Y面に対して垂直なZ軸方向に所定以上の荷重が加わると、ピストンロッド42がZ軸方向に変形することもあり得る。
【0032】そこで、本発明の2軸疲労試験機では、ハウジング1の上、下に設けたチャック移動機構5、5’においても、チャック47とピストンロッド42間に主部材45を設け、該主部材45をガイドユニットを介して縦方向へ摺動自在にハウジング1に取り付けて、試験時にチャック移動機構5、5’に横方向への荷重およびZ方向への荷重が作用した場合でも、ピストンロッド42が横方向へ変形することも、Z軸方向に変形することも防止するのがよい。
【0033】本発明の2軸疲労試験機において、チャック移動機構5、5’のチャック47とピストンロッド42間に主部材45を設け、該主部材45をガイドユニットを介して縦方向へ摺動自在にハウジング1に取り付けることにより、横方向にある程度の荷重が作用した場合やZ軸方向に所定以上の荷重が加わった場合でも、試験片3に中心ずれが発生せず、高精度な2軸疲労試験を行うことができる。
【0034】その際、チャック移動機構5、5’の主部材45とガイドユニットとの取り付け位置の関係は、チャック移動機構4の主部材45とガイドユニットとを時計回りに90°もしくは反時計回りに90°回転させたときの関係とすればよい。また、本発明の2軸疲労試験機に用いるチャック47は、図5、図6に示す形状のメンバからなるものにするが好ましい。このチャック47のメンバ形状は、板材料の2軸疲労試験を行うのに好適であり、各メンバの材質は、機械構造用炭素鋼材(S45C)とすることができる。
【0035】チャック47は、図5の正面図に示すように、チャック連結棒46の軸を通る直線に対し上下線対称としてあり、先端部で試験片3の一端部をつかみ、後端部をチャック移動機構の主部材45にチャック連結棒46を介して連結するような構造である。チャック47は、図6の断面図に示すように、後端部にねじ溝を設け、かつ中央部に溝を形成し、先端部における端面と内壁面を係止面としたC字形断面のメンバ47A と、両側の傾斜した側面を係止面とする楔状断面のメンバ47D と、後端部における端面と内壁面を係止面とし、かつ該内壁面につながる側面を試験片3との合わせ面としたL字形断面のメンバ47C と、中央部に溝を形成して両側の内壁面を係止面とすると共に後端部をC字形断面のメンバ47A の溝に挿入可能で、かつ先端部の側面を試験片3との合わせ面とした逆C字形断面のメンバ47B との4つのメンバからなる。
【0036】各メンバ47A 、47B 、47C 、47D には、図5R>5に示す位置に六角穴付きボルト11、12、13を挿入する貫通孔が設けてあり、メンバ47B には六角穴付きボルト11、12、13の頭を挿入可能とし、メンバ47A 、47C 、47D には対応する六角穴付きボルトのナットを挿入可能としてある。そこで、本発明の2軸疲労試験機では、チャック47に試験片3を取り付けて、疲労試験を行う際、メンバ47A の溝と先端部をそれぞれメンバ47B の後端部と溝に係合させ、相互に係止面ABで係止させて六角穴付きボルト11でメンバ47A にメンバ47B を仮締めする。次いで、メンバ47B の溝にメンバ47C の後端部を挿入し、相互に係止面BCで係止させると共に、メンバ47B の先端部の側面とメンバ47C の内壁面につながる側面間に試験片3を挟んでメンバ47B にメンバ47C を六角穴付きボルト13で仮締めする。さらに、メンバ47A の先端面とメンバ47C の後端面間に楔状のメンバ47D の側面を接触させてメンバ47D を配置し、六角穴付きボルト12を締め付けて、メンバ47A とメンバ47C 間に楔状のメンバ47D を押し込んで上記2ヶ所の係止面および楔状のメンバ47D の側面と接触する端面を確実に接触させる。次いで上記の仮締めした六角穴付きボルト11、13の締め付けと、六角穴付きボルト12の締め付けを繰り返して、各部分を確実に固定する。
【0037】すると、2軸疲労試験を行う際、試験片3に負荷する引張り荷重は、図6でチャック移動機構を左方向に移動させることにより、メンバ47A から係止面ABを介してメンバ47B に伝搬し、メンバ47B から係止面BCを介してメンバ47C に伝搬し、メンバ47B とメンバ47C 間の摩擦力により、試験片3に伝搬する。また、2軸疲労試験を行う際、試験片3に負荷する圧縮荷重は、図6でチャック移動機構を右方向に移動させることにより、メンバ47A の先端面からメンバ47D に伝搬し、メンバ47D の側面からメンバ47C に伝搬し、メンバ47C から係止面BCを介してメンバ47B に伝搬し、メンバ47B とメンバ47C 間の摩擦力により、試験片3に伝搬する。
【0038】そこで、試験片3にはメンバ47B とメンバ47C 間の摩擦力により引張り荷重や圧縮荷重が伝搬することとなり、六角穴付きボルト13からは試験片3に荷重が伝搬しないため、六角穴付きボルト13が疲労破断して試験が中断することを少なくできる。なお、本発明に用いるチャックは図5、図6に示すメンバからなるものに限定されず、試験片3の形状に応じて変えることができる。チャック移動機構とチャック47に試験片3を取り付けるには、図7に示すチャック連結棒46のねじ込む長さを調整すると、チャック移動機構を移動させることなく、簡単に試験片3を取り付けることができる。締め付けナット46A はチャック連結棒46と主部材45間、およびチャック連結棒46とチャック47間を確実に固定するものである。チャック連結棒46の中央部の径は、図7に示すように、疲労試験の際に異常が発生した場合、チャック移動機構のシリンダやガイドユニット等の重要部材が損傷を受ける前に、チャック連結棒46の中央部が破断するようにしてある。
【0039】以上説明した本発明の2軸疲労試験機としては、たとえば、ハウジング1の材質を鉄製とすることで、ハウジングの左右の間隔を1800mm、高さを2000mm、奥行き300mm 、繰り返し荷重のサイクルを0〜10Hz、荷重を最大で 49kNにすることができる。以上説明した本発明の2軸疲労試験機の油圧シリンダ41は、油圧サーボバルブで油圧シリンダ41に供給する油の方向を短時間で切り替えて、図示しない油圧源から供給される圧油によりピストンロッドを移動させている。このため、ピストンロッドを高速度で移動させることは困難である。
【0040】そこで、本発明の他の2軸材料強度試験機においては、油圧シリンダに油圧サーボバルブを設けず、図8に示すように、ピストンロッドを高速度で移動させることが可能な容量の圧油を溜める複数のアキュムレータACC1〜ACC4と、複数のアキュムレータに連結させた2つのマニホールドMANX、MANYと、2つのマニホールドからの圧油をそれぞれ制御する電磁弁SOL2X 、SOL2Y とを設け、該電磁弁を操作して各シリンダに供給する圧油をアキュムレータACC1〜ACC4とした。各シリンダに供給する圧油をアキュムレータACC1〜ACC4とした場合、動的な材料強度試験を行うことができるが、繰り返し荷重を試験片に負荷する疲労試験を行うことはできない。
【0041】なお、本発明の他の2軸材料強度試験機においては、ピストンロッドを低速度で移動させて静的な材料強度試験を行うこともでき、この場合には、電磁弁SOL1XL、SOL1XR、SOL1YU、SOLYL を操作する。ピストンロッドを高速で移動させて動的な材料強度試験を行う場合には、電磁弁SOL2X 、SOL2Y を操作する。図8でVAL は低速時の圧力調整弁であり、VAH は高速の試験を行う際、アキュムレータACC1〜ACC4に供給する油圧の圧力調整弁である。
【0042】本発明の他の2軸材料強度試験機では、図9R>9に示すように、ピストンロッドの移動速度が遅い静的試験とピストンロッドの移動速度が速い動的試験との切替、1軸と2軸の切替、圧縮と引張りとの切替を行い、荷重を負荷して材料強度試験を行うこともできる。また、本発明の他の2軸材料強度試験機としては、たとえば、ハウジングの材質を鉄製とすることで、ハウジングの左右の間隔を1860mm、高さを2500mm、奥行きを1300mm、チャックの移動速度を最高1000mm/s、荷重を最大200kNとすることができる。
【0043】
【発明の効果】本発明の2軸材料強度試験機によれば、竪型としたので狭い場所にも設置でき、高精度な2軸材料強度試験を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の2軸疲労試験機の正面図である。
【図2】図2は本発明の2軸疲労試験機の側面図である。
【図3】図3は本発明の2軸疲労試験機におけるチャック移動機構の正面図である。
【図4】図4は本発明の2軸疲労試験機におけるチャック移動機構の側面図である。
【図5】図5は本発明の2軸疲労試験機に用いて好適なチャックの正面図である。
【図6】図6は図5のA−A矢視断面図である。
【図7】図7は本発明に用いて好適なチャック連結棒の正面図である。
【図8】図8は本発明の他の2軸材料強度試験機における油圧回路図である。
【図9】図9は本発明の他の2軸材料強度試験機における試験フロー図である。
【図10】図10は従来の疲労試験機の正面図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 空間
3 試験片
4、4’、5、5’ チャック移動機構
6 油圧サーボバルブスタンド
7 アキュムレータ
41 油圧シリンダ
42 ピストンロッド
43 フランジ
44 ロードセル
45 主部材
46 チャック連結棒
47 チャック
48 スライド部材
49 スライドガイド
49A グリースニップル(潤滑剤供給口)
50 スライドガイド取り付け部材
46A 締め付けナット
11、12、13 六角穴付きボルト
13A 貫通孔
47A 、47B 、47C 、47D メンバ
ACC1〜ACC4 アキュムレータ
SOL1XL、SOL1XR、SOL1YU、SOL1YL 低速用の電磁弁
SOL2X 、SOL2Y 高速用の電磁弁
VAL 、VAH 圧力調整弁
MANX、MANY マニホールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】 竪型のハウジングの中央部に設けた空間内で、試験片に縦方向と横方向の荷重を負荷する2軸材料強度試験機であって、前記試験片の端部を挟むチャックと、該チャックを先端部に有するピストンロッドと、該ピストンロッドを前進・後退可能に装着したシリンダとを備えたチャック移動機構を4組用意し、そのうちの2組のチャック移動機構を前記チャックの先端部を互いに向かい合わせて前記ハウジングの上、下に設け、前記試験片に縦方向の荷重を負荷するようにし、残りの2組のチャック移動機構を前記チャックの先端部を互いに向かい合わせて前記ハウジングの左、右に設け、前記試験片に横方向の荷重を負荷するようにしたことを特徴とする2軸材料強度試験機。
【請求項2】 前記4組のチャック移動機構のうち、少なくとも前記ハウジングの左、右に設けたチャック移動機構のチャックとピストンロッド間に主部材を設け、該主部材をガイドユニットを介して横方向へ摺動自在に前記ハウジングに取り付けることを特徴とする請求項1に記載の2軸材料強度試験機。
【請求項3】 前記4組のチャック移動機構の各チャックを、後端部に雌ねじを設けかつ中央部に溝を形成すると共に先端部における端面と内壁面を係止面としたC字形断面のメンバと、両側の傾斜した側面を係止面とする楔状断面のメンバと、後端部における端面と内壁面を係止面とし、かつ該内壁面につながる側面を前記試験片との合わせ面としたL字形断面のメンバと、中央部に溝を形成して両側の内壁面を係止面とすると共に後端部を前記C字形断面のメンバの溝に挿入可能で、かつ先端部の側面を前記試験片との合わせ面とした逆C字形断面のメンバとの4つのメンバからなるものとすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の2軸材料強度試験機。
【請求項4】 前記4組のチャック移動機構の各シリンダに油圧サーボバルブを設けて疲労試験を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の2軸材料強度試験機。
【請求項5】 前記4組のチャック移動機構の各シリンダに油圧サーボバルブを設けず、圧油を溜める複数のアキュムレータと、該複数のアキュムレータに連結させた2つのマニホールドと、該2つのマニホールドからの圧油をそれぞれ制御する電磁弁を設け、該電磁弁を操作して前記アキュムレータからの圧油を各シリンダーに供給して動的な破壊試験を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の2軸材料強度試験機。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図4】
image rotate


【図3】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図10】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate