説明

2重釜式焼却炉

【課題】可燃廃棄物の焼却処理能力を増強し、焼却炉表面が高温にならないで、かつ劣化した部分を簡単に補修できる構成の焼却炉のシステムを提案する。
【解決手段】焼却炉を外釜と内釜の2重構造にし、内釜は太いパイプを切断したようなリング状のものを単純に積み上げて形成し、外釜と内釜の隙間には灰が溜まって1種の断熱材の役目をするようになっている。また有炎燃焼の終ってできた炭化物は焼却炉の下から取り出しスクリューコンベアーで、焼却炉から隔離された場所:焼却灰残渣余熱部に運ばれてそこで灰になるまで緩やかな燃焼が続けられるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は可燃廃棄物の焼却処理をするための焼却炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、縦型、横型、1重釜、2重釜等さまざまな焼却炉が提案され、使用されてきた。しかしダイオキシン等の有害物質の排出基準が厳しくなるにつれ、燃焼が不完全な単純な形式の焼却炉は使用できなくなってきた。
【0003】
それに対し、可燃廃棄物をより完全に燃焼させる事のできるように工夫してある直接燃焼式や乾留式などの焼却炉が色々と提案されているが、大体が大規模で、構造的にも複雑なものが多かった。
【0004】
本発明者が以前発明した助燃筒内蔵焼却炉(特公2005−291687)は簡単な装置ながら助燃筒を設けた事により、可燃廃棄物をガス化して完全燃焼させ、ダイオキシン等の発生も基準以下に押さえられる等の長所を持つが、焼却炉の壁が1重の鉄製であるため、長時間の高温使用により部分的に錆びたり、変形が発生する等の劣化が起こった。使用不可になった時点で焼却炉を作り直すしか方法が無かった。そして実際の使用時に焼却炉の壁が高温になると、当然その周りの作業環境も悪くなった。
【0005】
また別の問題として一般的に可燃廃棄物の有炎燃焼が終って炭化した後、完全に灰になるまでの時間は有炎燃焼時間よりも長く、運転中の焼却炉の中は半分以上が無炎燃焼中の炭化物で占められていた。焼却炉の焼却能力は炭化物をいかに早く燃焼させられるかに掛かっており、それを燃焼させるために空気を吹き込むとそれが非常に高温になり、焼却炉を早く劣化させる原因ともなっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
焼却処理能力を増強し、焼却炉表面が高温にならないで、かつ劣化した部分を簡単に補修できる構成の焼却炉のシステムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以上の問題に鑑みてなされたものであり、焼却炉を外釜と内釜の2重構造にし、内釜は太いパイプを切断したようなリング状のものを単純に積み上げて形成し、外釜と内釜の隙間には灰が溜まって1種の断熱材の役目をするようになっている。
【0008】
また有炎燃焼の終ってできた炭化物は焼却炉の下から取り出しスクリューコンベアーで、焼却炉から隔離された場所:焼却灰残渣余熱部に運ばれてそこで灰になるまで緩やかな燃焼が続けられるようにしてある。
【発明の効果】
【0009】
上記発明の焼却炉によれば、外釜と内釜の間には灰が詰まって1種の断熱材として働くため外釜はそれ程熱くならず、逆に内釜は熱が外に逃げないため温度が高温のまま保たれ可燃廃棄物の燃焼には好都合である。
【0010】
内釜の劣化は全体が1度に起こるわけではないので、随時点検を行うとき焼却炉の上部を外し、劣化した内釜の円筒のみ取り替え、あるいは組替えて、短時間で焼却炉を補修することができる。
【0011】
また有炎燃焼の終った炭化物は焼却炉の下部から取り出され、焼却灰残渣余熱部に運ばれて緩やかな燃焼が続けられるようにしてあるので、可燃廃棄物の処理能力は飛躍的に高まる。かつ炭化物の高温燃焼が避けられるので焼却炉の寿命が長くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお各図は、各構成要素の形状、及び位置関係をこの発明が理解できる程度に概略的に示したに過ぎない。
従って、この発明は以下の実施の形態には何ら束縛されない。
【実施例】
【0013】
本発明の2重釜式焼却炉を図面に基づいて説明する。図1は本発明を示した概念図で、外釜1は円筒形で直径1.5m、高さ3mあり、厚さ10mmの鉄板を丸めて作ってある。その内側に厚さ15mmの鉄板を丸めて作った直径1.4m高さ30cmのリング状の内釜用円筒2がスペーサー金具3を介して下から順次積み上げて内釜を形成するようにしてある。上2段ほどの内釜用円筒は助燃筒4とかバーナー10の妨げにならないよう一部切欠いてある。外釜と内釜の間には5cm程の隙間がある。
【0014】
スペーサー金具の斜視図が図2に示してある。このスペーサー金具は厚さ15mm程の鉄板を切り抜いて作ってあり、上下の内釜用鉄製円筒の縁が嵌りこめる凹部を上下に持ち、Aの凹みが下側の内釜用円筒の縁に嵌り、Bの凹みに上側の内釜用円筒が載る。上下凹部の底間Cの間隔が1cm程あり、上下に積み重なっていく内釜用円筒間の間隔を一定に保つ。内釜と外釜の隙間部に出る部分Dの幅が内釜と外釜の間の壁が接近し過ぎないよう隙間を保つ役目をする。このスペーサー金具に穿けられた丸穴17は内釜を吊り上げるときのフックをかける穴として使うと便利である。
【0015】
焼却炉の上部の入口は助燃筒4の付いた蓋5で閉じるようになっており、可燃廃棄物投入時に蓋は蝶番6を中心に回転して開閉できるようになっているが、その際外気が焼却炉に入らないよう配慮してある。
【0016】
可燃廃棄物は廃棄物投入筒7の中をスクリューコンベアーやプランジャーのようなもので送られて焼却炉中に投入されるが、蓋5が閉まっている時は蓋5に取り付けられて一体となっている廃棄物押さえ板8で廃棄物投入筒7の出口を塞いである。
【0017】
蓋5を開ける時は助燃筒4と廃棄物押さえ板8の付いた蓋が蝶番6を中心に上方に回動しても、気密が保たれるように焼却炉の入口全体をカバーする入口カバー9が廃棄物投入筒7に接続してある。入口カバー9の中を廃棄物押さえ板8の付いた蓋5が内接しながら上方に回動して,廃棄物投入用の入口が開く。
【0018】
蓋5に取り付けてある助燃筒4にはバーナー10から炎が、時には空気が吹き込めるようになっている。また焼却炉の底部には、外周にヘリカルなフィンの付いた第2助燃筒11が設置してあり、バーナー12から炎または空気が吹き込めるようになっている。第2助燃筒に直結してあるモーター13で右回転,左回転させることが出来、炭化物や灰を砕いたり、また取り出し口14から炭化物や灰を取り出すのに使用される。
【0019】
可燃廃棄物は廃棄物投入筒7を通って炉内に投入され、炉内一杯になった段階で助燃筒4の付いた蓋5が閉じられて助燃筒で可燃廃棄物は押さえ込まれる。バーナー10を点火すると,助燃筒4の中を炎が走り可燃廃棄物は着火して燃焼が始まる。燃焼は順次下方に進行し、可燃廃棄物から発生したガスは助燃筒で燃焼し、不完全燃焼分はさらに2次燃焼筒15内で完全燃焼する。
【0020】
有炎燃焼が焼却炉下部まで進行すると可燃廃棄物の嵩が減るので随時蓋5を開けて可燃廃棄物を追加投入する。必要に応じては第2助燃筒に第2バーナー12から炎を吹き込んだりあるいは空気を吹き込んだりして燃焼促進を図る。
【0021】
焼却炉下部の可燃廃棄物の有炎燃焼が終わり、炭化物や灰になった段階で、モーター13を左右回転させて、第2助燃筒に付いたフィンで炭化物や灰等の残渣を砕き、さらに残渣物を残渣物取り出し口14に導き、残渣物を落下させ、残渣物移送用スクリューコンベアー16で,図示はしてないが、残渣物を焼却灰残渣余熱部に移送させて堆積させ、残渣物中に残る炭化物をゆっくり、全て灰になるまで燃焼させる。残渣物移送装置を可動式にしておけば、焼却灰残渣余熱部は広い面積にわたって取る事が出来、焼却炉の処理能力一杯に可燃廃棄物を処理できる。
【0022】
このように燃焼が定常状態になると、随時上部投入口から司燃廃棄物を投入し,下部から炭化物や灰を焼却灰残渣余熱部に移送させて、ほぼ連続的に焼却処理を行う事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上説明したように、本発明の2重釜式焼却炉によれば有炎燃焼の終った炭化物や灰を焼却炉から取り出してしまうので、通常の焼却炉と比べると焼却物処理能力は大きくなり、且つ炉の痛みは少なく、また痛んだときも簡単に補修が行える。この炉は材料として鋼材を使っているので、ダイオキシン等の汚染の心配は無く、すべて廃材として分解し、再使用の為に回収できる。従って廃棄コストは一般の焼却炉に比べると数段安く、経済的なメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】2重釜式焼却炉を示す概念図。
【図2】スペーサー金具の斜視図。
【符号の説明】
【0025】
1 外釜
2 内釜用円筒
3 スペーサー金具
4 助燃筒
5 蓋
6 蝶番
7 廃棄物投入筒
8 廃棄物押さえ板
9 入口カバー
10 バーナー
11 第2助燃筒
12 第2バーナー
13 モーター
14 取り出し口
15 2次燃焼筒
16 残渣物移送用スクリューコンベアー
17 フック用穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に可燃廃棄物を投入するための投入口と、下部に燃焼の終ったものを取り出すための取り出し口のある縦型円筒形の焼却炉に於いて、焼却炉体が外釜と内釜の2重構造になっており、外釜は厚さ約10mmの鉄板で作られた直径1.5〜2m、高さ3mほどの円筒であるのに対し、内釜は厚さ約15mmの鉄板を丸めて作った外釜の直径より10〜20cm小さな直径を持った、高さほぼ30cmの内釜用円筒を、外釜内に、外釜と同心円状に一段づつ、内釜用円筒の円周上に嵌められた3〜5個のスペーサー金具を介しながら、順次下から積み重ねて、内釜を形成してあり、外釜と内釜の間に一定の隙間がある事を特徴とする2重釜式焼却炉。
【請求項2】
前記の内釜用鉄製円筒のスペーサー金具は、上下の内釜用鉄製円筒の縁が嵌りこめる上向きと下向きの凹部を上下に持ち、上下凹部の底間の間隔が1cmほど取ってあって、内釜用鉄製円筒同志が密着しないようにあり、且つ内釜と外釜の隙間が狭くなりすぎないように、内釜と外釜の間に出る部分が一定幅取ってある事を特徴とする請求項1記載の2重釜式焼却炉。
【請求項3】
前記焼却炉が焼却炉下部の取り出し口に、有炎燃焼後の炭化物や灰を取り出して移送させるための例えばスクリューコンベアーのような移送装置がさらに取り付けてあり、焼却炉の上部投入口から投入された可燃廃棄物が炎を上げる燃焼をしながら順次焼却炉下部に移行していき、底に到達した、既に有炎燃焼は終っているが、完全には燃えきっていない炭化物、あるいは灰を取り出し、移送装置で焼却炉の横に設置してある焼却灰残渣余熱部に移送させて、ゆっくり炭化物が自然燃焼して灰になるように焼却残渣物処理装置が併置してある事を特徴とする請求項1又は2記載の2重釜式焼却炉。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−240134(P2007−240134A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103610(P2006−103610)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(503402699)千歳工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】