説明

2階建て集合住宅の排水管設備及びその排水管設備に用いられる多口管継手

【課題】2階建て集合住宅において、排水器具から大量に排水が流入してもスムーズに排出することができ、且つ、各排水器具の排水トラップが破封しにくい排水管設備を、通気管や通気弁のような特別の通気装置を設けることなく構成する。
【解決手段】1階と2階の床下のスペースUF1,UF2のそれぞれには、台所流し、浴室、洗面台等の複数の排水器具のそれぞれが接続された複数の排水横枝管13a,13b,23a,23bが配されて、そのそれぞれが第1の多口管継手11ないし第2の多口管継手21の胴部39の外周に設けられた横枝管受け口33,35に接続されている。胴部39は直管状であって、その径が第1の多口管継手11と第2の多口管継手21との間に介装された排水立て管15よりも大きく、また、横主管17の径も排水立て管15よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2階建て集合住宅の排水管設備及びその排水管設備に用いられる多口管継手
に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2階建て集合住宅の排水管設備は、2階の各住戸に設置された台所流し、浴室又は洗面台等のいわゆる水回り器具(排水器具)が、床下に配設された一本の排水横枝管の中間に次々に接続されており、複数の排水器具から排出された排水(器具排水)を排水横枝管で合流させたうえで、排水立て管に流入させる構成が一般的であった。これは、従来の2階建て集合住宅では、その建築構造上、2階の床下のスペースが小さく、どうにか排水横枝管の排水勾配を確保できる程度であったために、このように各器具排水を床下の排水横枝管で合流させて、よりコンパクトな継手を介して排水立て管に流入させる配管構成が、長年の間、2階建て集合住宅での常識となっていたためである。
【0003】
しかし、かかる配管構成では、排水立て管の下端にはL字形に屈曲した脚部継手を介して横主管に接続されており、排水立て管中を垂直に流下した排水は、脚部継手で急激に流れ方向を横方向に変えられ、建物の外へと導かれる。そのため、排水立て管を流下する排水(立て管排水)の量が多すぎると、脚部継手の屈曲部分において排水が一時的に滞留して管を閉塞し、管内の圧力が急激に変動して排水器具の排水トラップの破封を引き起こす問題があった。この問題に対し、下記特許文献1には、立て管排水を旋回させることで管内の通気を確保することが提案されている。かかる技術によれば、通気管や通気弁のような通気装置を用いることなく、立て管排水の量が多すぎる場合に生じる排水トラップの破封の問題を解決することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−342984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一本の排水横枝管に複数の器具排水を合流させたうえで排水立て管に流入させる従来の配管構成においては、排水横枝管に対して、一つの排水器具から大量の排水が流入すると、他の排水器具からスムーズに排水できなかったり、或いは、排水横枝管に大量の排水が一気に流入することで、排水横枝管が閉塞されて管内の圧力が急激に変動し、誘導サイフォン作用により、各排水器具の排水トラップの破封を招くという問題があった。このような排水横枝管で生じる問題には、上記従来技術では対応することができず、上記従来の配管構成をとる限りにおいて、根本的に解決することはできなかった。
【0006】
そこで、本発明者らが上記排水横枝管で生じる問題を解決すべく鋭意検討していたところ、折しも、2階建ての集合住宅では、上下階の騒音や漏水の問題を解決すべく1階と2階との層間に薄いPC板(プレキャストコンクリート板)を配するなど、建築構造が変わりつつあった。それにより、2階の床下のスペースに依然として限りはあるものの、従来に比べると若干拡がる傾向にあった。本発明者らは、この若干ではあるが従来よりも拡がった床下のスペースに着眼し、従来の2階建て集合住宅の配管構造の常識に全く囚われない新規の配管構成を想起した。その結果、立て管排水の量が多すぎる場合に生じる排水トラップの破封の問題と、排水横枝管に大量の排水が一気に流入することによる排水トラップの破封の問題とを同時に解決することのできる排水管設備を、通気管や通気弁のような特別の通気装置を設けることなく構成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の課題は、2階建て集合住宅において、排水器具から大量に排水が流入してもスムーズに排出することができ、且つ、各排水器具の排水トラップが破封しにくい排水管設備を、通気管や通気弁のような特別の通気装置を設けることなく構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は次の手段を採用する。
本発明は、2階建て集合住宅の排水管設備であって、1階の床下のスペースと2階の床下のスペースとに配設された第1の多口管継手と第2の多口管継手とを備えるとともに、該第1の多口管継手と該第2の多口管継手との間に介装された排水立て管と、前記第1の多口管継手の下側に接続された横主管と、を備え、前記第1の多口管継手と前記第2の多口管継手は、その胴部の外周に排水横枝管を接続することのできる横枝管受け口を複数備えており、1階と2階の床下のスペースのそれぞれには、台所流し、浴室、洗面台等の複数の排水器具のそれぞれが接続された複数の排水横枝管が配されて、前記第1の多口管継手ないし前記第2の多口管継手の横枝管受け口に接続されており、前記第1の多口管継手と前記第2の多口管継手の横枝管受け口の設けられた胴部は直管状であって、径が前記排水立て管よりも大きく、前記横主管は、径が前記排水立て管よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
かかる排水管設備によれば、一本の排水横枝管に対して基本的に一つの排水器具が接続されており、各排水横枝管が、複数の横枝管受け口を備える多口管継手の各横枝管受け口に接続されている。一本の排水横枝管に対して基本的に一つの排水器具が接続されているため、排水横枝管において、他の排水器具の排水(器具排水)による誘導サイフォン作用が生じることがなく、排水器具の排水トラップが破封するのを防ぐことができる。また、他の器具排水に妨げられることなく、各排水器具において常にスムーズに排水することができる。また、複数の排水横枝管を多口管継手において同一管底レベルで接続することができ、排水横枝管の排水勾配を確保しやすい。
【0010】
かかる排水管設備では、各器具排水は各排水横枝管内を横方向に流れ、多口管継手で合流し、向きを変えて下向きに速度を上げて流れることとなる。ここで、排水横枝管が接続された多口管継手の胴部は、下向きの排水経路を形成する排水立て管よりも径の大きい直管状であるから、流入する排水によって、排水経路が閉塞されにくく、管内の圧力変動を抑制することができる。そして、流下した排水は、第1の多口管継手の下側に接続された横主管へ案内され、横方向へ向きを変え、速度を落として流れることとなる。ここで、下向きの排水経路を形成する排水立て管よりも、その先の横向きの排水経路を形成する横主管の径が大きいため、排水が横方向に方向へ向きを変えて速度が低下しても、その排水により横主管は閉塞されにくい。したがって、排水器具から排水が大量に流入してもスムーズに排水することができ、且つ、各排水器具の排水トラップが破封しにくい。
【0011】
また、かかる排水管設備に用いられる好ましい多口管継手として、外周に横枝管受け口を複数備える直管状の胴部を備えており、該胴部の管軸方向の一端側に設けられた排水立て管を挿入して接続することのできる立て管受け口と、他端側に設けられた該胴部と同径の直管状に延設された管状部とを有し、前記胴部及び前記管状部の径は、前記立て管受け口に接続される排水立て管よりも大きく、2階の床下のスペースには前記管状部が上で前記立て管受け口が下になるように配設され、1階の床下のスペースには前記立て管受け口が上で前記管状部が下になるように配設されることを特徴とする2階建て集合住宅用多口管継手がある。
【0012】
かかる多口管継手によれば、上下反転させることで、1階の床下のスペースにも2階の床下のスペースにも配することができ、上記排水管設備における第1の多口管継手と第2の多口管継手として用いることができる。したがって、多口管継手の種類が増えるのを抑制することができる。また、第1の多口管継手として1階の床下のスペースに配された多口管継手は、管状部が下になっており、管と管とを接続するため従来の接続手段をそのまま適用することによって、容易に横主管と接続することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の排水管設備によれば、通気管や通気弁のような特別の通気装置を設けることなく、排水器具から大量に排水が流入してもスムーズに排出することができ、且つ、各排水器具の排水トラップが破封するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る排水管設備の正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る多口管継手の平面図である。
【図3】図2に示される多口管継手のIII−III線断面図である。
【図4】図2に示される多口管継手のIV−IV線断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る多口管継手の閉止蓋の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1に示される本実施形態の排水管設備H1は、2階建て集合住宅に備えつけられた排水管設備である。この集合住宅には、図示は省略するが、1階と2階のそれぞれに、例えば、大便器、台所流し、浴室、洗面台等の複数の排水器具が備えつけられている。1階の床FL1は、根太(図示省略)で支持された合板からなる下張材1の上面に、合板に樹脂等で形成されたフロア材が積層されてなる床材3が張られてなる。この明細書では、1階の床FL1の下のスペースUF1を1階の床下のスペースUF1と称する。2階の床FL2は、1階の床FL1と同様に、下張材1の上面に床材3が張られてなる。そして、その下には、間隔を置いてコンクリート板Cが配されている。この明細書では、2階の床FL2とコンクリート板Cとの間のスペースUF2を2階の床下のスペースUF2と称する。コンクリート板Cの下面には下張材5が配されており、図示は省略するが、1階の天井材が支持されている。
【0016】
排水管設備H1は、1階の床下のスペースUF1に配設された第1の多口管継手11と、2階の床下のスペースUF2に配設された第2の多口管継手21とを備えるとともに、第1の多口管継手11と第2の多口管継手21との間に介装された排水立て管15と、第1の多口管継手11の下側に脚部継手19を介して接続された横主管17と、1階と2階の各床下のスペースUF1,UF2に配された複数の排水横枝管13a,13b,23a,23bとを主体として構成されている。
【0017】
各階の床下のスペースUF1,UF2に配管された排水横枝管13a,13b,23a,23bは、それぞれその一端がその階に設置された一つの排水器具と接続されており、他端がその階に設置された第1の多口管継手11ないし第2の多口管継手21に接続されている。したがって、2階に設置された各排水器具の排水は、それぞれ排水横枝管23a,23b内を流れて第2の多口管継手21で合流して排水立て管15内を流下し、更に、この流下してきた排水と、排水横枝管13a,13b内を流れてきた1階の各排水器具の排水とが第1の多口管継手11で合流する。そして、L字形に屈曲した脚部継手19を介して第1の多口管継手11の下側に接続された横主管17に流入し、建物の外へ排水される。以下、この排水管設備H1を構成する各部材について説明する。
【0018】
<排水横枝管13a,13b,23a,23bについて>
排水横枝管13a,13b,23a,23bは、基本的には、それぞれその一端が一つの排水器具に接続されており、1階ないし2階の床下のスペースUF1,UF2において、排水勾配を確保して横方向(水平方向)に配管されている。そして、他端は、第1の多口管継手11ないし第2の多口管継手21の横枝管受け口33,35に挿入されて第1の多口管継手11ないし第2の多口管継手21に接続されている。排水横枝管13a,13b,23a,23bとしては、例えば、硬質塩化ビニル管を用いることができる。
【0019】
<排水立て管15について>
排水立て管15は、第1の多口管継手11と第2の多口管継手21とに介装され、垂直に配設されている。排水立て管15としては、例えば、直管状の硬質塩化ビニル管を用いることができる。
【0020】
<横主管17について>
横主管17は、1階の床下のスペースUF1において排水勾配を確保して横方向に配管されており、その一端が脚部継手19を介して第1の多口管継手11の下側に接続されている。横主管17は、排水立て管15よりも径が大きく、好ましくは、横主管17の直径が排水立て管15の直径の1.2〜1.6倍である。本実施形態では、排水立て管15の呼び径が75であるのに対して横主管17の呼び径は100であり、呼び径が1サイズ大きい管が用いられている。横主管17としては、例えば、硬質塩化ビニル管を用いることができる。
【0021】
<脚部継手19について>
横主管17と第1の多口管継手11とを接続する脚部継手19は、同径の管をL字状に接続することのできる継手である。脚部継手19は、L字形に屈曲した管状の胴部19aを備えるとともに、該胴部19aの両端に拡径された受け口19b,19cを備える。一方の受け口19bには横主管17が挿入して接続され、他方の受け口19cには後述する第1の多口管継手11の直管部45が挿入して接続されている。
【0022】
<第1の多口管継手11及び第2の多口管継手21について>
本実施形態では、1階の床下のスペースUF1に配設された第1の多口管継手11と、2階の床下のスペースUF2に配設された第2の多口管継手21として、同形の多口管継手31を上下反転させて用いている。そこで、まず、この多口管継手31について説明する。
【0023】
図1において第2の多口管継手21として示されるように、多口管継手31は、排水横枝管23a,23bの直管状の端部を挿入して接続可能な横枝管受け口33,35,37を備えている。本明細書では、多口管継手31の管軸方向において、横枝管受け口33,35,37の設けられた部位を胴部39と称する。胴部39は、直管状であり、その径は横主管17と等しい。胴部39を挟んで軸方向の一端側には立て管受け口41が設けられており、他端側には直管部45が設けられている。立て管受け口41は、胴部39よりも径の小さい排水立て管15を挿入して接続可能となっており、テーパ部43を介して胴部39と接続形成されている。図3に示されるように、直管部45は、胴部39を同径のまま延長した直管状であり、その径は横主管17と等しい。そして、直管部45の管軸方向の長さDは、少なくとも、後で詳述する脚部継手19の受け口19cに挿入して接続することのできる長さである。本実施形態では、直管部45の管軸方向の長さDは50mmである。
【0024】
本実施形態の多口管継手31の胴部39には、管軸回りの3方向に横枝管受け口33,35,37が設けられている。この多口管継手31では、相互に対向して位置する横枝管受け口33,35よりも、これらの横枝管受け口33,35とは直交し、内壁面と対向する横枝管受け口37の方が大径の排水横枝管を接続可能なサイズとされている。本実施形態では、具体的には、横枝管受け口33,35は呼び径50、横枝管受け口37は呼び径75の排水横枝管に対応している。各横枝管受け口33,35,37は、管軸方向の立て管受け口41側の端部が同一レベルに設けられている。多口管継手31は、上記横枝管受け口33,35,37のサイズ設定により、相互に対向して位置する横枝管受け口33,35には、主として、台所流し、浴室、洗面台等の雑排水用の排水器具が接続されるのに対し、内壁面と対向する横枝管受け口37には、大便器も接続可能となっている。この相対的に大径の排水横枝管に対応した横枝管受け口37に対向する内壁面には、図2に示されるように、管内方に張り出す一対の流入防止壁47a,47bが設けられている。流入防止壁47a,47bは、図4に示されるように、横枝管受け口37に対向する内壁面に投影された横枝管受け口37の両側において管軸方向に延びて設けられており、投影された横枝管受け口37の上端位置から下端位置よりも下まで延びている。この流入防止壁47a,47bにより、横枝管受け口37から一気に大量の排水が流入して横枝管受け口37に対向する内壁面に衝突したときに、その排水が内壁面に沿って左右に分岐して側方の横枝管受け口33,35に逆流するのを防止することができる。かかる構成の多口管継手31は、例えば、排水用硬質塩化ビニルで形成することができる。
【0025】
多口管継手31は、図1に示されるように、1階の床下のスペースUF1においては、立て管受け口41が上で、直管部45が下になるように配設されて第1の多口管継手11とされている。そして、この第1の多口管継手11の上部に位置する立て管受け口41に排水立て管15の下端部が挿入されて接続されている。なお、排水立て管15は、その大部分が1階の床上に配設されているが、1階の床FL1に形成された貫通孔CH1により1階の床下のスペースUF1に配設された第1の多口管継手11との接続が許容されている。また、第1の多口管継手11の下端に位置する直管部45は、脚部継手19の受け口19cに挿入されて脚部継手19に直に接続されている。
【0026】
多口管継手31は、2階の床下のスペースUF2においては、立て管受け口41が下で、直管部45が上になるように配設されて第2の多口管継手21とされている。この第2の多口管継手21の下端に位置する立て管受け口41は、コンクリート板C及び下張材5に形成された貫通孔CH2を貫通して垂下しており、排水立て管15の上端部が挿入されて接続されている。一方、第2の多口管継手21の上端に位置する直管部45は、臭気漏れを防ぐためにキャップ25で閉鎖されている。
【0027】
以上の構成の排水管設備H1によれば、以下の作用効果を奏する。
まず、各排水横枝管13a,13b,23a,23bからの横向きに流れる排水が合流する第1の多口管継手11及び第2の多口管継手21胴部39は、下向きに排水を流す排水立て管15よりも径が大きく、排水の流入に伴う管内の圧力変動を抑制することができる。そして、横主管17の径が排水立て管15の径よりも大きいため、流下した排水が横主管17に案内されて速度を落として横方向に流れ始めても、横主管17が完全に閉塞されることはなく、管内の圧力変動を抑制することができる。そのため、排水器具から排水が大量に流入してもスムーズに排水することができ、且つ、各排水器具の排水トラップが破封しにくい。更に、かかる作用効果を得るにあたり、本実施形態の排水管設備H1は配管の内外に空気を流通させるための特別の通気構造を要しない。そのため、第2の多口管継手21は、空気の流通スペースを確保する目的で2階の床FL2の下面との距離が制約されることはなく、第2の多口管継手21の上端部を床FL2に極近接して配設することができる。したがって、限られた2階の床下のスペースUF2にも配設しやすい。
【0028】
また、上記実施形態では、1階の床下のスペースUF1に配設された第1の多口管継手11と、2階の床下のスペースUF2に配設された第2の多口管継手21として、同形の多口管継手31を上下反転させて用いている。そのため、多口管継手の種類を少なく抑えることができる。また、多口管継手31は、第1の多口管継手11として1階の床下のスペースUF1に配設された状態では、直管部45が下側に位置し、脚部継手19に直に接続することができる。したがって、別部材の管などを介することなく継手同士を直接繋ぐことができ、排水管設備H1を構成する部品点数を少なく抑えることができる。
【0029】
なお、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内でその他種々の実施の形態が考えられるものである。
例えば、横枝管受け口37は、異径管接続具を用いてサイズダウンして雑排水用の排水器具を接続してもよい。その場合、例えば、図1に二点鎖線で示されるような異径管接続具51が好ましく用いられる。異径管接続具51は、横枝管受け口37に挿入接続可能な相対的に大径の直管状である大径部51aと、接続する排水横枝管と同径の直管状である小径部51bとが、外周の1点が重複するように軸方向に無段で接続形成されている。この無段部位51cが管軸方向の立て管受け口41側に位置するように大径部51aを横枝管受け口37に挿入して異径管接続具51を横枝管受け口37に装着することで、小径部51bが他の横枝管受け口33,35に接続される排水横枝管13a,13b,23a,23bと同一高さレベルに配置され、横枝管受け口37から外方へ突出する。そして、この小径部51bと排水横枝管とを、同径管を接続するためのソケット等の接続手段を介して接続することで、横枝管受け口37とは合致しないより小径の排水横枝管と接続することができる。
【0030】
また、多口管継手31に設けられる横枝管受け口33,35,37は、上記実施形態で例示したサイズに限定されるものではない。横枝管受け口33,35,37は、例えば、呼び径50、65、75から選択的組み合わせによって設けることができる。
【0031】
また、横枝管受け口33,35,37の全てに必ずしも排水横枝管を接続しなければならないわけではなく、使用しない横枝管受け口33,35,37は、例えば、図5に示されるような閉止蓋53を装着して閉止される。図4に示されるように、閉止蓋53は、横枝管受け口33に内嵌される筒状であり、その一端部53aが閉塞されている。閉止蓋53は、その閉塞された一端部53aが多口管継手31の内方に位置するように挿入され横枝管受け口33を閉塞する。閉止蓋53は、筒状の内側において一端部53aから外方へ張り出して把手53bが設けられており、この把手53bを摘んで横枝管受け口33に押し込むことで、横枝管受け口33に容易に装着することができる。
【0032】
また、第2の多口管継手21の上端部を閉鎖するキャップ25には、開閉可能な掃除口を設けることもできる。その場合、掃除口から洗浄ノズルを差し込み、第2の多口管継手21、排水立て管15、第1の多口管継手11及び横主管17の内部を掃除することができる。
【符号の説明】
【0033】
11 第1の多口管継手
13a,13b 排水横枝管
15 排水立て管
17 横主管
19 脚部継手
21 第2の多口管継手
23a,23b 排水横枝管
25 キャップ
31 多口管継手
33,35,37 横枝管受け口
39 胴部
41 立て管受け口
43 テーパ部
45 直管部
47a,47b 流入防止壁
FL1 (1階の)床
FL2 (2階の)床
H1 排水管設備
UF1 1階の床下のスペース
UF2 2階の床下のスペース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2階建て集合住宅の排水管設備であって、
1階の床下のスペースと2階の床下のスペースとに配設された第1の多口管継手と第2の多口管継手とを備えるとともに、該第1の多口管継手と該第2の多口管継手との間に介装された排水立て管と、前記第1の多口管継手の下側に接続された横主管と、を備え、
前記第1の多口管継手と前記第2の多口管継手は、その胴部の外周に排水横枝管を接続することのできる横枝管受け口を複数備えており、1階と2階の床下のスペースのそれぞれには、台所流し、浴室、洗面台等の複数の排水器具のそれぞれが接続された複数の排水横枝管が配されて、前記第1の多口管継手ないし前記第2の多口管継手の横枝管受け口に接続されており、前記第1の多口管継手と前記第2の多口管継手の横枝管受け口の設けられた胴部は直管状であって、径が前記排水立て管よりも大きく、前記横主管は、径が前記排水立て管よりも大きいことを特徴とする2階建て集合住宅の排水管設備。
【請求項2】
請求項1に記載の2階建て集合住宅の排水管設備に用いられる多口管継手であって、
外周に横枝管受け口を複数備える直管状の胴部を備えており、該胴部の管軸方向の一端側に設けられた排水立て管を挿入して接続することのできる立て管受け口と、他端側に設けられた該胴部と同径の直管状に延設された管状部とを有し、
前記胴部及び前記管状部の径は、前記立て管受け口に接続される排水立て管よりも大きく、
2階の床下のスペースには前記管状部が上で前記立て管受け口が下になるように配設され、1階の床下のスペースには前記立て管受け口が上で前記管状部が下になるように配設されることを特徴とする2階建て集合住宅用多口管継手。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−179273(P2011−179273A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46351(P2010−46351)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(390013516)株式会社小島製作所 (19)
【出願人】(595106969)大東建託株式会社 (5)
【Fターム(参考)】